1.君子という女

キミコ、それは謎の女。

キミコさんの名は論語の文中、繰り返し現れます。あるときは孔子自ら、あるときは弟子の口から語られています。論語とは、キミコさんの何たるかを後世の人間に伝える貴重な資料であるといえましょう。

では、キミコさんとは一体何者なのか。
残念ながら、キミコさんに関する詳細な伝記は残っていません。古来数え切れぬほどの書にその名を残しているにも関わらず、かの『史記』にすら、伝は残っていないのです。
そこで、詳細な記述が数多く見られる論語を読み解きながら、キミコさんの実像に迫りたいと思います。

では、「論語」を実際に見てみましょう。

「人知らずして慍らず、また君子ならずや」(学而)

意味:人が知らないところで不平を言っているのは、キミコさんチックだね。
解説:「論語」の冒頭、いきなりキミコさんは現れます。どうもキミコさんは人の見てないところでブチブチ文句を言う人だったようです。
ちなみに「慍」はイキドオルともウラムとも読まれます。

「君子多ならんや、多ならざるなり」(子罕)

意味:キミコさんは大勢いるだろうか。いやいや、そんなことはない。
解説:ここで一つの疑惑が浮上します。果たしてキミコさんは一人しかいないのでしょうか?どうも大勢いないことは確かですが、数人のキミコさんが同時に存在する可能性はある、との解釈も成り立ちます。しかし本論では、キミコさんは一人である、との説を採ります。

さて、それではキミコさんの人となりを、その経歴から見てみましょう。

「君子は本を務む、本立ちて道生ず」(学而)

意味:キミコさんは本の仕事をしていた。本を立てて道を作っていた。
解説:本の仕事というのは出版関係か、あるいは図書館司書ではないでしょうか。相当にな仕事だったらしく、本を立てて道を作って遊んでいたようです。器用ですね。

「君子は言を以て人を挙げず」(衛霊公)

意味:キミコは証言だけで人を逮捕したりはしなかった。
解説:どうやらキミコさんは警察官、しかも刑事(デカ)だったようです。証言だけで安易に逮捕しないあたりは、さすがとしか言いようがありません。

「君子は能なきを病う、人の己を知らざるを病えず」(衛霊公)

意味:キミコさんは能無しを病気にすることができた。だが、自分のことを知らない人間には効果がなかった。
解説:キミコさんは呪術師でもあったようです。自分のことを知らないと効果がない、というのも何となく呪術っぽいです。無能な人間を病気にして苦しめるのですから、一概に悪い呪術師とは言えないですが、怖いですね。

「君子重からざればすなわち威あらず、学べばすなわち固ならず」(学而)

意味:キミコさんは体重がなかったので破壊力がいまいちだった。そこで学習して、柔軟性を身につけた。
解説:さて、警官であったキミコさんは、当然ながら格闘技の心得があったようです。軽量級ゆえのハンディを、地道な研究と鍛錬によってカバーするとは、心から拍手を送りたくなりますね。

さて、ここで問題となるのはその職歴です。出版関係、刑事、呪術師という三つの職に就いていたのは明らかですが、少なくとも出版関係(司書?)時代は相当に暇だったところから、刑事時代と重複することはないようです。
一方、呪術師という職業は、生まれつきの資質や家系に左右される仕事ですから、これは他の職業との重複は考えられ、また早い時期に呪術を会得したと想像されます。
従ってキミコさんの職歴は、
・呪術師→出版関係→刑事
・呪術師→刑事→出版関係

のどちらかと考えられますが、キミコさんの性格から見ると、本で道を作ってしまうほど暇な出版関係の仕事に耐えられず、それを辞めて刑事になったのではないでしょうか。

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