Northern Cross
- Under white snow, The Swordz begin final danse. -

Movie≫【前編】【後編

部下こうさくいん「臨時エレガントでしゅねー」
ボス「うむ。緋親衛隊長のRLは未見であったのでこの面子でやることになったのだ。舞台は雪のロンドン。今や、箱庭の街N◎VAから運命の舞台は大きく広がった。こういう旅の話は風情があってとてもよいな」
こうさくいん「キャスティングもすごいでしゅー。レオナも出演でしゅー(>_<)」
ボス「うむ。なんと村雨が引退するそうだ。豪華共演と粋なレポートで見送ってあげようではないか。辛い、辛いのう。ターゲットが一人減ってしまった‥‥」
こうさくいん「というわけで、レポートも気合入りまくりなのでしゅねー」
ボス「FLASHの力に驚愕せよ! ちなみにやっているのは一番簡単な動作だ。プロから見たらできて当然であるゆえ手放しでは感嘆せぬがよい。いろいろ難しいのう。ファイルサイズ減少の工夫がよく分からぬ(笑)」
こうさくいん「映画のようなオープニング! N◎VAチックでしゅね〜。談合プレイで準備もバッチリでしゅ〜〜(笑)」



And so, they appeared on the Staj of Wheel of Fortune .....

Handle: “黒の死神”村雨 【Profile
Style: カタナ=カタナ=カタナ◎● Aj: 25 Jender:
 長身を漆黒のフェイトコートに包み、ミラーシェードにウェットな感情を隠した凄腕のカタナ。元復讐鬼。何をも断ち斬る妖刀“時雨”と名刀“秋水”、脚に仕込んだMDガイストと全身に仕込まれたサイバーが二天一流によって解き放たれる時、男は黒き死神と化す!
 業深き剣鬼として闇をさ迷ってきた人生に終止符を打つため、遂に引退を決意。ほぼ最後の仕事として、殺人鬼ロンドンジャック・ザ・リパーの殺害依頼を受ける。雪のロンドンH@ZEと大陸鉄道の旅の中で、黒の死神はシェードの瞳で何を見るのか‥‥?
Player: X 【天真名井にて
▼最近は爪のアレにチャンレンジの同志エクスノフスキーです。村雨クンのデータは当サイトの『運命の輪の舞台の上で』にも170pts版があります。
なんと、「TRPG始めた頃から使っているメインキャラだし、いいかげん悲惨な人生から引退させて休ませてあげたい」などとフヌケたことを言い出しました。
 か、悲しいです。(T_T) 典型的なソロ的キャラクターとして、桃花源で、オフラインアクトで、その剣舞とカタナの魂を魅せてきた村雨。その彼がいなくなったら‥‥‥‥もう、もう、からかえるのが神狩ぽんしかいないじゃないでしゅか。(おい)

 という訳で今回はガゼン回りが盛り上げるのです。今回は最強バージョンなので武器も黒の剣“時雨”に真・降魔刀“秋水”。漆黒のコートはSPOONコート。最後の剣舞がここに始まる!

Handle: “Shield Maiden”レオナ・ソール 【Profile
Style: カブト=カブト◎●,ミストレス Aj: 24 Jender:
 かつての騎士への憧れから人の想いを護る騎士になることを決意した、ワーデン所属の鋼の左腕持つ若き女ボディガード。ヌーヴ出身。冷静で寡黙に見えるが実は感情的で後先を考えないことがある。恋愛にコンプレックスを持っており、若い娘、盾の乙女としての面を男性に見せることが少ない。
 クリスマスにコートを贈ってくれた霧の騎士ゲオルグ・ブレナンの母違いの妹、アリシア・レオーネを護衛するため、倫敦にやってきた。
Player: 九龍 【九龍の好き放題勝手ページ
▼RIファミリーの部下くりゅクンです。今回はもう経験点上限なしになったので、Exp230の“レジェンドモード”(ってナニよ)のレオナの登場です。ファミリーの部下こうさくいん君が喜びますね。レジェンドモードになると鉄扇相当のバックブレードにイージス相当の騎士盾、スダリオン相当のベストにティルヴィング相当の剣で有利蟲に相当蟲の嵐。電脳剣バディの“SALLY”は3Dプロジェクタから飛び出す身長15cmのヴァルキリー。緋'zキャストのゲオルグの病弱な妹の護衛ということで登場です。アリシアの母とレオナの母が姉妹で二人は従姉妹同士。ゲオルグとレオナに血縁はなしとなります。
こうさくいん「ゲオルグと親戚になったですとー。誤解させるようなことを言っちゃだめでしゅ〜(>_<)」 ←バカ

Handle: “暗がりの監視者”フェリシア・サテンドール
Style: クグツ◎●,バサラ,カブトワリ Aj: 22 Jender:
 夜の力を操るレ・トロン・ド・ルテチア特殊環境開発課課長。そのくすんだ銀髪からサテンの人形の名を持つ。ルテチア第八開発プラントで試験的に開発されたバイオIANUSを埋め込み、狙撃能力も高い。
“星詠みの”アスタロテの直属の部下であり、彼女の予言により、失踪したエージェント“レッドアイ”キーン・ファロンとディスクを探して雪のロンドンを歩むことに。
Player: F. 【HARLEQUIN'S EMPIRE
▼殺し屋/カブト/チームを組む企業人&フェイト、とキャスティングに制限の多い今回のシナリオ。企業人の役だけ“ペット”(笑)F.クンの新キャラです。御霊相当のIANUSでやっぱり相当蟲。ケースの中にSMGを仕込んでいます。回りがすごいキャストなので少しびびってました。がんばれがんばれ。我々がプレイしたらどうなるのか、ここに示してやるのだ。

Handle: “デス・ロード”アレックス・タウンゼント 【Profile
Style: カブト=カブト◎,バサラ● Aj: 32? Jender:
 死神の使いを名乗るカブト。E&Bの対テロ特殊部隊SMFで技術を身に付けた。死神との盟約のため、そして裁きのために、その力と夜の魔法を振るう。ブリテンにいた頃の古い知り合いであるレッドアイを探すため、フェリシアと共に動くことに。恋人を失い傷心のまま後にして幾年も過ぎた故郷の土を、今再び踏むことになった。
▼フェイト役は後ろ暗い仕事もこなせるならフェイトでなくてもよい、アーンド記録に残すならガゼン思い入れのあるキャストで! ということで彼になりました。ブリテンに行く話はまたやりたいですなぁ。ぜひロンドンH@ZEを作ったiwate-u勢の雄(笑)と同席できる機会に。

Ruler: 緋(あか) 【redman's homepage
▼緋親衛隊長の見参であります。誰の親衛隊長なのかよく分かりません。(笑) 2月に本人不在で行われたARUさんのLost DreamのOFF会で使用したシナリオを再調整して使用。既にブレカナの本格シナリオが置いてある自サイトにも、このシナリオはUp予定だそうです(たぶん)。面子とキャストが違えばいったいどこまで変わるのか?
 GF4期第3号(だっけ)のN◎VA記事で特集された『プレ・プレアクト』。アクト開始より前に、推奨するキャストのスタイルやコンセプト、シナリオの大筋などを情報提示し、よりスムーズでクォリティの高いアクトを目指し調整するものです。確かにマスターに慣れた人は意識せずに行っていますね。
 今回はWeb上でこのプレ・プレアクトをガゼン念入りに行っています。キャストの決定や相互コネからそれぞれに合わせたオープニングや設定の活用、シナリオの微調整や演出の用意まで‥‥なんかボク知らないけど台詞の言い合いのスパーリングとかもしてたらしいゾ。(笑)
 その成果は‥‥もちろんこのノーザンクロスの輝きに!

Kaution: 当RI財団での展開におけるニューロエイジ世界は、他サークル/サイトさんの設定とリンクしています。故にヨコハマLU$TとキャンベラAXYZにはより詳細な設定があり、北米連合にはエイジス、エール及びブリテン連合王国にはロンドンH@ZEという都市があります。E&B関連の設定はiwate-u勢の双翼(笑)、斎藤一条さん【百鬼夜行】作によるものです。今回登場するキャストの一人、アレックスの故郷のブリテンの設定にもそれは適用されています。
 今回のシナリオ『ノーザン・クロス』は緋さん作のものであり、こちらはグランドXで広がったワールドモード対応に、フレーバー的なもので詳細な設定のない“倫敦”を舞台にしています。
 よってアクト中とこのレポート中では、汎用的な“倫敦”をロンドンH@ZEに相応しいように多少の変換を行い、フォローを入れています。そのへんをラジャーして雪のブリテンに進んでください。

 
 
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Northern X

〜ノーザン・クロス〜


 雪と氷の大地、E&B連合王国。霧の古都ロンドンH@ZEは雪に埋もれていた。
大きな鐘が七時を告げるハイドパーク周辺の広場。ぼろぼろのコートを纏い、ふらふらと必死に歩く赤い目の男。その行く手で、露天商から出てくる青い眼の少女。
 彼女が振り向いた瞬間、女王陛下の誕生日を告げる花火が夜空一面に上がった。色とりどりの光の中で衝突する二人。地面に散らばる互いの持ち物。二人は互いに謝罪をし、それぞれの持ち物を拾う。
 流れているニュースは同じだった。

『全世界を被った異常気象は依然弱まる気配を見せません。各地で雪が降り、世界の主要主要メガプレックスでも交通が麻痺した状態が続いています。真教教徒の中には、これを預言書に書かれた一節と重ねるものもおり‥‥』
『連続殺人犯として手配中の“ロンドンジャック・ザ・リパー”は未だ犯行を続けています。スコットランドヤードは犯人の割り出しを急ぐと共に、ロンドン市民に警戒を呼びかけ‥‥』


 BAR《オールド・ギース》の店内。ブリテンの対テロ特殊部隊Special Manuever Forceを引退した隊員が営むこの店は、俺達には馴染みの店だった。
「なあアレク。うちの小さな姫君が言うにはさ、兄貴の俺は悪い“工作員”で“デス・ロード”がヒーローなんだってさ。まったく、誰が養ってると思ってるんだろうな」
「おいおい、よしてくれよ。育て方を間違ったんじゃないのかい?」
「ハハ‥‥緑の瞳の小さな君は兄貴には厳しくてね。ま、あのくらいのガキはちょっとぐらい生意気な方が可愛いさ」
 “レッドアイ”キーン・ファロン。ルテチアの腕利きのエージェント。だがその赤い目の奥には優しさが消えていない。あの頃はよくこうして会っていた。俺とキーン、彼の唯一の家族である妹のエリィ、そして、ジュディ。
「で、真面目な話だが。俺達が入手したブラックリストにも、ジュディ・ラニアーの名が入っていた。彼女も危ない事件には首を突っ込みすぎない方がいいぜ。彼女もお前の言うことなら聞くだろう?」
「俺が言っても聞きはしないよ‥‥。大体トーキーってのは、大抵そういうもんじゃないのかな」
「そうか。お前達から見たら余計なお節介だろうが、俺も心配性でさ。早く身を固めたらどうだい? 似合いのカップルだぜ。おっと‥‥話をすればなんとやらだ」
 ドアのベルが軽い音を立てた。入ってきたのはエリィと同じ緑の瞳をした彼女だった。猫のような緑の瞳、快活なあの緑の瞳‥‥

   
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「すみませんね、こんな所に呼び出して‥‥。母は寂しがり屋だったから、毎年ここに来て花を添えることに決めてるんです」
「‥‥きっと、強い方だったのでしょうね。あなたのお母さんなのだから」
 『グランド・クロス』とも呼ばれる異常気象が、世界を白い衣に包んでいた。白一色に染め上げられたロンドン郊外の静かな墓地。ゲオルグ・ブレナンの母ジュリアの命日の日、レオナ・ソールは共に墓の前に佇んでいた。彼女と血の繋がりはないが、親族なのは同じだ。
 ジュリアと死別した後、彼の父アレッサンドロと別の女性が結婚し、ゲオルグと腹違いの妹にあたるアリシア・レオーネを産んだ。その女性はレオナの母の妹なのだ。ゲオルグに請われ、レオナは病弱なアリシアを守護しにゆくところだった。
「アリシアのことをお願いします。例え母親が違っても、俺には本当の妹なんです。俺には貴方以外に頼めるような人がいないし、貴方ならアリシアも信頼してる。あと‥‥これを」
 霧の騎士が手渡したのは教皇領製だというふたつの真教のロザリオ。知り合いのユカ・プルデーレが言うには、持ち主を護る特別な力があるという。
「大丈夫。あなたの誓いは、私が果たすわ」
 レオナはにっこりすると、鋼の左腕から手袋を取った。手の甲に流れる戦乙女の紋章。それは、盾の乙女の誓いのしるし。
「でも、貴方のことも心配だ。貴方が盾の乙女である限り、アリシアは無事だろうけど、それだけじゃ意味がない。アリシアだって貴方が無事でないと悲しみます。ご無事で、レオナさん」


 入りかけた《オールド・ギース》の店内はほとんど変わっていなかった。あれ以来‥‥俺がブリテンを後にしてから、本当にあれ以来だった。
 ポケットロンに連絡。画面に現れたのは20代の女のエグゼクだった。あの神秘的な容貌‥‥珍しい。ルテチア特殊環境開発課の“星詠みの”アスタロテその人だった。
「ルテチアが俺になんの用だ」
『嫌われたようね‥‥その理由も調べさせてもらったわ。企業の軋轢は確かに、あなたが亡くした彼女のような人を生む。今回もそう、あなたに相応しい仕事ではないけど、“死の卿”の力が必要なの』

"Death Lord"

 彼女は俺の旧友でもあったキーン・ファロンが行方をくらませたことを告げ、ルテチアの社屋に来るように告げる。
「ひとつ聞こう。この俺が呼ばれたのも、星の導きかい」
『ええ。星はあなたを必要としているわ』
 俺が企業人を好まなくなったのも、確かにあの頃からだった。だが、旧友が絡んでいるとあっては見過ごすわけにはいかない。


"Blakk Death" Murasame


 ロンドンH@ZE近くのヒースロー国際空港。E&B発の全便は雪のために欠航し、旅客たちは足止めされた状態となっていた。
 仕事でN◎VAを離れていた村雨は一人、ロビーの席で物思いに耽っていた。
 黒の死神として、修羅の道を歩んできたこれまで。復讐の為に剣の道を極め、その復讐が果たされた後も、剣鬼は闇の世界を、修羅たちと刃を交えながらずっと歩んできた。だがそろそろ、人を斬る以外のこともできないのだろうか‥‥?
 沈思を破ったのはウォッチャーへのコールだった。遥かなカムイST☆R、フィクサーのガブリエル・モーラムからの仕事の依頼。犠牲者の両親から頼まれた、警察に先んじた切り裂きジャックの殺害依頼。剣鬼に相応しいいつもの仕事だった。

『チャンネル13を見て』
 ドルフの視線をやると、大きなスクリーンにニュースがちょうど映っていた。
『ロンドンH@ZEを震撼させているロンドンジャック・ザ・リパーの最新情報です。遂に捜査に乗り出した広域警察FROSTの協力を受け、スコットランド・ヤードは犯人の割り出しを終了しつつある模様。早急な解決が望まれます。次は世界規模の異常気象のニュースです。グリニッジ王立気象研究所によると‥‥』
「私が引退したがっているのは分かっているだろう。まあ、ターゲットは大方分かったようなものだな」
『ええ。偽者の死神に、本物の死神の力を見せてあげて。ロンドンのゴミ掃除。簡単な話よ』
「了解した。‥‥これが最後の仕事かもしれんな‥‥」


 保護された自国企業が勢力を保つE&Bでは、世界の列強企業は若干の劣勢を強いられている。
レ・トロン・ド・ルテチア支社の特殊環境開発課。カーテンの開かれることのない、常に薄闇の中に沈んだ部署。
 上司であるアスタロテに会いに出掛ける途中、フェリシア・サテンドールは先輩にあたる同僚エリックと会い、言葉をかわしていた。
“プロメテウス”エリック・マクベイン。原初の火を盗んだ神の名を持つ彼もまた、力を使う。
「フェリシア。お前は今の社内をどう思う?」
「安定していないのは間違いないわね」
 現在の彼女たちの回りは、旧態依然とした勢力と新進気鋭の勢力のふたつが合争っている状況だった。
「お前なら、白の石と黒の石、どちらを取る?」
「死んでもどちらも取らないでしょうね」 

"Watcher of Darkness" Felicia Shattendowl

 プロメテウスは苦笑した。
「例えばの話さ。上司の命令なら仕方ないし、それは現実に起こり得る問題ではあるが。だがね、そうなったら俺はお前に黒い石を取らせてみせる。命懸けのゲームになりそうだがね、やってみる価値はある。できなかったら、俺かお前が死ぬだけさ」
 ルテチア内の噂では、新開発されたディスクが社内の何者かに奪取されたらしい。特殊環境開発課も、それの回収に動きそうな気配だった。特殊環境課はどちらの勢力の配下でもなく、必要になれば協調もする。同じ社の人間を相手にすることもあった。
「また、同僚を相手することになるんだろうな。お前だったらどうする? 同僚にも銃を向けられるか?」
 フェリシアはミラーシェードを掛けるとその奥に表情を隠し、くすんだ銀髪を翻すと星読みのアスタロテの元へ向かった。


 特殊環境開発委員のアスタロテの話もその件だった。奪取されたのは1世代前のピンク色のディスク。だが、特殊な技術で開発されたそれは、現状のデータチップの1万倍の記憶容量を持つ。現状のシェアに満足していたルテチアは発表を控えているが、明るみに出れば世界が大きく変わるのは間違いない。
 盗み出したのは高い任務達成率を誇る腕利きのエージェントだった“レッドアイ”キーン・ファロン。かつてフェリシアの教官でもあり、世話になった先輩であった。家族は病弱な妹が一人。なぜ、彼が長年務めた社を裏切るようなことをしたのかは分かっていない。
前金で1プラチナムという破格の準備金を受け取り、フェリシアは詳細を確かめた。
 レッドアイと関係のあるカブトの男を呼んである。彼と協力して解決に当たれと。
「ただ‥‥死神の使いは気まぐれだと聞いているわ。“デス・ロード”がもしも裏切ったら、あなたの手ですみやかに処理しなさい」
 二人の企業人の話が終わった時、件の協力者が広間に現れた。薄闇の満ちる会議室よりも濃い夜の色をしたコート。協力者はフェリシアの知り合い、同じ力を操る魔法使いだった。

   
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 ロンドンH@ZEを覆う吹雪は止むことがなかった。微かに血の染みの浮き出た灰色のコートを巻き付け、路地裏をふらふらと歩く赤い目の男。日の当たらない一室へと入った彼は、懐から取り出したピンク色のデータディスクをタップにセットする。表示された画面を見て、男は歓喜とも嘆息とも見える複雑な表情を浮かべた。
 腕利きのエージェントである普段の彼であれば、一瞬で反応できたのだろう。だが重傷を負っていた彼は侵入者に反応が遅れた。
「つまり、こーゆーコトさ。アンタはここで終わり、オレの仕事もここで終わり。オーケー?」
 入ってきたのは首筋に結線用のワイヤを下げたニューロキッズだった。ショットガンが火を噴き、脇腹に大穴を開けられた赤目の男は血溜りの中に崩れ落ちた。
「Haha、ちょろいもんだゼ! 後はこのディスクを‥‥待てよオイ。Oh,ゴーッド! なんだこいつは!? ただの‥‥」


 レ・トロン・ド・ルテチア社内の別の一室。
 完全武装で正装したレオナ・ソールは、目の前に現れたサーコートの男と対面していた。ルテチアでかなりの地位にあるエグゼク、アレッサンドロ・レオーネ。アリシアとゲオルグの父、彼女自身からは叔父に当たる。
「君の事は調べさせてもらった。災厄の街での活躍は聞いたよ」
「‥‥調べるまでもないでしょう」レオナは弥勒サングラスを外した。「亡くした妻の命日ぐらい、来たらどうですか」
 アレッサンドロの話は今年17になる娘のアリシア・レオーネの護衛だった。先天性の治療不能の病気を患い、ずっと病院で暮らしていた彼女の治療法がやっと分かった。ジェットが使えない今は、大陸鉄道でロンドンを離れ、夏を通過し、最終的にはキャンベラAXYZの軌道エレベータから軌道へ上るしかない。
 ルテチア社内の争いが激化している現在では、社の者やセキュリティすら信用できない。また、マヤカシの異能力を持つ彼女の力を狙う勢力も考えられる。今日の便ですぐ出発してほしいと。
「自分勝手な願いなのは分かっている。だが私としても、娘を救いたいのだ」
「‥‥どうせ、叔父様と私は他人ですからね」
「頼むぞ」

   
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 ロンドンジャック・ザ・リパーの手口から、本物の医師の技術を持つ者の犯行という見方が強かった。ストリートで闇病院を営むタタラの中でそこまでのことができるのは‥‥治安が最悪のロザーハイズ周辺エリアの、グラハム医師ではないだろうか?
 雪降るストリートを独り歩く村雨は、路地裏で立ち止まった。いつの間にか人通りは途絶え、行く先でやはり立ち止まっている男だけになっている。
 病的な鋭さを持った容貌。剣鬼特有の憑かれたような瞳。舞い落ちる粉雪すら、彼の回りに満ちる殺気に行く手を譲っていた。
 村雨の脳裏に、ニューロエイジの闇に棲まう剣の鬼たちの一人が浮かびあがった。“鳳凰”イザナギ。魂を切り裂く“蒼月”“雪花”の二振りの邪剣を操る二刀流の奥義を極めた男。その腕は、裏の世界でも最強に等しい。
「‥‥珍しいところで珍しい男に会うものだな」
 黒の死神の問いには答えず、イザナギはゆっくりと歩を進めてきた。重心をまったく移動させない達人の歩み。道を譲る気配は皆無。
 互いが路地の中ほどまで歩いた頃。二人の剣鬼は同時に上を見上げた。
 建造中だったビルディングの資材置き場が、重なる雪の重みに耐えかねて分解したのだ。まっすぐに、ウォーカーの砲身よりも太い鉄柱が数十本落ちてくる。
「‥‥どうする、“黒の死神”」
 初めて笑みをもらす“鳳凰”。村雨の答えは抜き放たれる妖刀“時雨”と名刀“秋水”の舞いの始まりだった。それに応えるように、“鳳凰”の邪剣が踊り出す。

 達人同士の剣舞は一瞬だった。雷光が縦横に走り、吹き上げられた粉雪が二人の回りで舞い、そして蒸発していく。さらに互いに数合斬りあった後、全ての刀は鞘に収まっていた。地面には寸断された鉄柱が幾重にも積み重なっていた。
「くくく。このような極北の地でまみえるとは面白い。噂は聞いているぞ。いつか、死合ってみたいものだ。ここで一戦交えるのもよいが‥‥それでは興がなさすぎる」
 人斬りの笑みをもらし、闇に消えていく“鳳凰”。村雨は答えず、ただドルフの瞳を光らせ、もう一人の剣鬼を見送るだけだった。

"Blakk Death" Murasame


"Watcher of Darkness" Felicia Shattendowl

「同じ力を修めた者同士が出会うのも、予言通りなのかな」
「私はあの上司の決めたことには疑問を持たないのです。これも、夜の力の不思議でしょうか‥‥」
 俺とフェリシアは雪のロンドンH@ZEを聞き込みに回った。大英博物館、大通りを巡察するロイヤル・ガーズ。俺の剣を作ったB-WORKSの直営店のショーウィンドー。ホロの中で、レッド・ダリアのドレスで踊るホワイトローズ家の令嬢‥‥。何もかもが、あの頃と同じだった。
 あれから何年経っただろうか。もう行くことはないかもしれないと思っていたが、H@ZEを見た途端にその思いは吹き飛んだ。過ぎし日の王、そして未来の王の眠る地。祖国を捨てることを拒んだ“アーサー”たちの国。この白銀の大地こそ、俺の故郷だった。 


 街頭では切り裂きジャックのニュースが流れていた。ロンドンH@ZEでは、ジャック病という奇病が毎年少しだが騒がれている。この古都をたゆたう霧の中で、何かの力を受けてしまった何人かが、毎年殺人鬼と化して暴れてしまうのだ。あの奇病と関係あるのだろうか。それとも、今度は噂でない本物の復活なのだろうか。
 レッドアイがディスクを奪取した直後に、ルテチアの社屋から妹のエリィが失踪している。治療不能の病に掛かっていたエリィを安全なところに匿うとしたら、ストリートの病院あたりがありえる線だ。
 レッドアイは現在アスタロテの配下にいたが、二重スパイの任務もこなした彼は同時にアレッサンドロというエグゼクとも繋がりがあったという。もしや盗んだディスクを、社内の他勢力に売り払うつもりだったのだろうか?


 フェリシアの協力でレッドアイの足取りが少しづつ掴めてきた頃。俺はもう一度ウェストエンドのソーホーにある《オールド・ギース》に寄ると、マスターに挨拶した。
「あれから何年経つんだ? 確かに彼女は残念なことをしたが‥‥まあ、人生はいろいろあるもんだ。アレク、お前さんにはずっと、ここにいてほしかったよ」
「SMFはどうしてる。相変わらず、ELF(エール解放戦線)相手に大活躍かい」
「ぼちぼちだな。フーリンの奴は未だに影も形も見せていない。お前さんが残していった記録も、役に立ってるよ。ロイヤル・ドラグーンやロイヤル・ガーズとは、相変わらずよいお友達にはなれずじまいだ」
「フフ‥‥女王陛下の近衛竜騎兵隊には、流石に敵わずか」
「いいや分からんぞ。お前さんならひょっとしたら入れたかも知れんぞ?」
「おいおい、N◎VAでも噂は聞いてるぜ。今でも合格者は1000人に1人なんだろう?」
「それよりアレク。身は固めたのかい。なんならエリィはどうだ? あんたにもずっと会いたがってたよ。今年で‥‥二十歳位になるのか? あの頃はちっちゃな子だったが、今じゃあ立派な娘だよ」
「よしてくれよ‥‥。レッドアイに顔向けができないぜ」


 病気の進行を止める薬を投与され、ずっと病室で暮らしていたアリシアには何もかもが目新しい光景だった。
 レオナただ一人に護られ、二人は大陸鉄道の発車駅へ、近道の地下鉄へと急ぐ。
「なんだか心配になってきました。駅まで大丈夫でしょうか‥‥」
「だいじょうぶ。私は、プリンセス・アリシアを守る騎士の一人よ」
「そうですね。私も、レオナさんなら安心して命を預けられます」
 人の気配に気付き、レオナは彼女と物陰に潜んだ。誰もいない地下鉄のホームに、クグツ姿の人影が見えた。ルテチアの敵勢力だ。彼らをやり過ごすと、レオナは作戦を変えてストリートを進むことにした。

   
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 目指すグラハム医師のシャドウ・クリニックはロザーハイズの一角にあった。
 ちらりと村雨が覗くと、温和そうな医師が緑の目の若い女性を診察していた。受付を適当にごまかした村雨は、待合室に行くと見せかけ、気配を隠して診察室に近づく。黒の死神は、院内に満ちる微かな血の匂いを捉えていた。
グラハム医師は、椅子に座った娘の後ろに回っていた。
「ところで‥‥ミス・ファロン。この世でもっとも綺麗なものはなんだと思います?」
「そうね、何かしら‥‥。宝石かな?」
 壁に掛かっていたククリ刀を手に取った瞬間、温和な医師の表情が一変した。
「ハハハァ、そうだよな。特に、緑の目なんてサイコーッだ。えぐるとエメラルドみたいに輝くのさ。お前の目はいったい、どんな宝石みたいに見えるのかなァァ〜?」
 剣の道を修めた者は、同じ道を歩む者を見分けることができる。扉を蹴破って中に飛び込んだ村雨は、相手が自分と同じカタナであることに気付いた。目の前にいるのは温和な医師ではなく、正真正銘の殺人鬼だ。
 時雨と秋水が抜き払われ、幾重もの攻撃をぎりぎりで弾く。躱しきれずに、漆黒のコートに幾筋か線が走る。
「ハッハッハァ! 来たな、黒の死神。お前のことは知ってるぞ。俺を探してたんだな。こいつは、たァ〜のしくなるな。俺に死を告げてみろ! さァ告げてみろ! 俺も告げてやる。俺とお前は同じなんだからなァ!」


 俺とフェリシアは薄暗いストリートを急いでいた。こういう場所は、ロンドンもN◎VAもあまり変わらない‥‥だが、ロンドンでは、ニューロキッズのことをパンクと呼んでいる。
 俺はエリィのことを思い出していた。レッドアイや‥‥ジュディと会っていた頃、よく彼女は兄にくっついて来ていた。あの頃は小さな娘だったが‥‥その緑の瞳は、ジュディによく似ていた。
「‥‥エリィ」
 遠くでGR社のネオンが光っていた。拡張された聴覚がどこかで響く剣の音を捉えた。胸騒ぎがした俺はフェリシアと顔を見合わせた。
「ええ。急ぎましょう」


 夜の光と共に医院に現れた二人。ロンドンジャック・ザ・リパーは新たな獲物の出現に奇声を上げていた。
「楽しい、楽しいぞォ。肉袋がひとォつ、ふたつ、みっつ、よっつ、よォッつもあるじゃないかァ!!」
 フェリシアが暗がりに退き、銃を取り出す。アレックスと村雨はちらりと目をやりあうだけだった。プロ同士の会話は、いつも少ないものだ。
 常人の目には見えぬ達人同士の戦いが始まった。宙空で幾筋もの火花が同時に散り、ククリ刀と妖刀が攻めぎあう。
 攻勢に転じた村雨の攻撃を全て受け流し、空中で身を転じたジャックは緑の瞳の少女にそのサイバーの手を伸ばす。防御に飛び込んだアレックスの手が振られる前で盛大に火花が散り、グラハム医師は身を引いた。
 元力で隠されていた見えないロングソードに夜の炎が灯ると同時に、殺人鬼のサイバーアームの指先で回転が止まった。複雑な機構を持ったタタラ・ハンド。人体に埋め込まれたIANUSの直接破壊を狙っていたのだ!
 幾合かさらに刃を交えた後。不利を悟ったジャックは窓に退くと指を鳴らした。
「相手が悪いかなァ〜? 追ってこれるなら来てみろ、死神どもォォ!」
 身を翻すと同時に、殺人医師の姿は宙に消えた。天井の吹き抜けから割れたガラスの雨が降り注ぐ。咄嗟にエリィを庇うアレックス。ブラックホールを宙に呼び出し、直撃を防ぐフェリシア。村雨はただ一人、二振りの剣で自分に降り注いだガラス片を全て弾き返すと、黒い嵐の如く飛んだ。
「後は貴殿らに任せる」
 殺人鬼を追い、黒の死神の追跡が始まった。

   
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 クグツ達の追手は消えていた。きっと、二人を発見できずに退散したのだろう。
 レオナとアリシアはストリートの廃屋に避難していた。震える少女の肩にレオナは自分のオペラクロークを掛け、雪に呑まれてゆくロンドンを見つめる。
「雪って、こんなに寒いものだったんですね。病室からはずっと見てるだけだったのに。私、贅沢な悩みかもしれないですけど、とても面白いんです」
「アリシア‥‥。大丈夫、今日だけじゃなくて、これからもずっと感じられるわ。でも雪が冷たくて痛いなんて思い込みよ。ほら、倫敦はとても暖かい街だもの」
「でも、レオナさんがいなければ、こんな台詞も言えませんよね。私は一人では身を護ることもできないのに。レオナさんは強い人です。私も、強くならなきゃ‥‥」
「‥‥アリシア。私が誰かを守れるのは、私が強いからじゃなくて、私を誰かが守ってくれるからよ」


 村雨が飛び出していった後、ようやく俺は彼女の顔を確認できた。幸い怪我はないようだ。
「‥‥アレク? ‥‥アレクなの?」
 歳月は彼女を大きく変えていた。レッドアイのコートにしがみつく少女だったエリィは、立派な娘に成長していた。だが、その緑の瞳は変わっていなかった。むしろジュディにいっそう似てきたような気がした。彼女と同じ、あの緑の瞳‥‥
「エリィ‥‥あの時以来か? 大きくなったな‥‥。それに、その‥‥とても‥‥ああ、いや」
 額の血が視界を遮り、俺の回想を中断した。
「血が出てるじゃないですか! 大丈夫?」
 手当てが終わった頃。ずっと黙って控えていたフェリシアの控えめな声が、俺にBizの最中だということを思い出させた。
 キーン・ファロンは多額の金を工面するために、ディスクを盗み出し、ルテチアの誰かに引き渡す予定だったらしい。金の使い道は‥‥エリィが先天的に罹っていた珍しい病気を治す為だった。あの頃は元気だったエリィも、今では薬だけでは進行を押さえ切れなくなってきたらしいのだ。
「兄さんの連絡先は知ってます。お願いします。兄さんの約定の時はまだこないって、私は信じています」
「ああ。俺も信じている。いや、この俺がそうはさせない」


 雪が収まった夕暮れのハイドパークは市で賑わっていた。レオナが見上げる前で、女王陛下の誕生日を祝う花火が上がり、紋章をつけた近衛竜騎兵隊が広間を行進してゆく。時刻を告げる鐘の音が、辺りに鳴り響いていた。
「失敗しちゃいました‥‥あそこで人とぶつかっちゃって。買ったものをお互い、全部地面に落としちゃいました」
「ダメよ、気をつけないと」
「オーロラのホログラフのディスクを買ったんです。大陸鉄道から見えるはずですけど、今は雪で見えないみたいですし」
「アリシア、これが最後じゃないわ。また、見る機会はあるわよ」
「あと、レオナさんには、これ」
 彼女が買ってきたのはロザリオ型のイヤリングだった。レオナは微笑み、ひとつを自分の左耳に付けると、もうひとつをアリシアの右耳につけた。
 どうやらクグツの追手は撒けたようだ。大陸鉄道の発車駅までもう少しだった。




‥‥切り裂きジャックはどうなったのか気になりつつ【後編】へ
 
 

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...... - Northern X - Under white snow, The Swordz begin final danse!! ......

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