What's Your Dance Style?
ホワッツ・ユア・ダンス・スタイル?
】【】【】【4】


Lady Phantom -Tokyo N◎VA in London H@ZE
〜レディ・ファントム〜

 事情聴取したジリオラ・セルフの話では、彼女は翌日昔馴染みに会いに行くとのことだった。バイロン刑事の同僚の張り込みが功を奏した。ジリオラの行く先は橋の向こうのストリート、治安の悪いロザーハイズ。
 連絡を受けたバイロン刑事は尾行を開始した。様々な店舗の並ぶストアーズの奥、入り組んだ路地裏。容疑者は二人の人物と接触していた。
「‥‥分かった。エリーゼをしばらく貸してやろう。後、どれくらい続けるつもりだ」
「‥‥貴族を根絶やしにするまでよ」

"No Away"Giriola Serf - Former SMF Bomb Specialist

Biron Winerod - Police Detective of Scotland Yard

 物陰から見守るバイロン刑事は驚いた。現在のエール解放戦線の実質上の指揮官、“猛禽”のグリフィス・アルバンその人ではないか。横に控えている紫の目の女は、“御者”と呼ばれる腹心の部下エリーゼだ。
 金と、何かの物品の引き渡しを終え、テロリストたちは去っていった。その後、容疑者はジャンクヤードを回り、様々な品物を買い込んでロザーハイズを出ていった。爆発物製造に関するとおぼしき品物も混じっている。

 ELFは思いのほか執念深かった。十分注意していたはずなのだが、尾行していたことは敵に感付かれていた。路地裏でバイロンを待ち構える“御者”エリーゼ。突き出される短剣の激痛に、バイロンは路地に倒れ伏す。車のエンジン音が去ってゆき‥‥そして、近付いてくる足音を刑事は聞いた。彼に気付いて走って来たのは、近付いてくる夜と同じ色をしたコートを着た男だった。


「大丈夫か、バイロン刑事?」
 俺の腕の中で、彼は息を吹き返した。不思議なことに――彼が押さえていた腹に傷は少しもついていなかった。相手は魔法使いなのだろうか。
 話を聞いた俺は驚いた。ジリオラが、元SMF隊員のジリオラが、ELFの大物プレイヤーと接触していたのだ。
 立てるようになったバイロン刑事がヤードに連絡をとった。すぐにジリオラ・セルフは爆弾事件の犯人として指名手配された。

   
GreenBtn
 

 夕闇のロンドンH@ZE、ウィンザー家にほど近い一角。不吉な予感を感じてカレルが主を連れ出した後、一区画全体が爆破された。
 黒煙の中、黒いインバネスを翻して去ってゆくファントム。カレルがリムジンを出し、フィリスが連絡を取りつつ追跡する。
 追手を待っているかのように路地を曲がってゆくファントム。連絡を受けたバイロン刑事も、夜の力で現れたアレックスも加わる。やがて、路地裏で一行は幽鬼を取り囲んだ。
 ファントムは赤い髪をしていた。
「‥‥ジリオラさん?」
 主の前で剣に手を掛けたカレル・レンが問い掛ける。
 仮面のファントムは無言で追跡者を見渡した。無言の元SMF隊員の方を向くと、ファントムは彼にだけ見えるように仮面をゆっくりと外した。


「‥‥あなたは何も言わないの、アレックス」
「‥‥ロンドンを騒がすファントムが相手なら、デス・ロードの弾丸は撃ち抜くだけだ」
「そう‥‥ではさしずめ私は、レディ・ファントムね」
 インバネスから抜き撃ちされたストッパーが俺を狙う。咄嗟に手を振る俺の前に夕闇よりも濃い夜の帳が満ち、銃弾が地面に落ちる。だが闇が晴れた時、彼女の姿は忽然と消えていた。残っているのはファントムの仮面だけだった。
「何があったんだ‥‥」
「証拠物件です。回収させてもらいます」
 バイロン刑事が、俺の手から仮面を取り去っていった。

"Death Lord"Alex Townsend - Former SMF Member, Now belongs to Sphere of Nite & Death

   
GreenBtn
 

 事件の早期解決を望むアリエノール特別捜査官に、バイロン刑事は容疑者がELFと接触していたことを話す。
「なる程、道理でELFからは犯行声明が出ないわけね。彼らは援助をしただけという事」
 ヤード捜査課にはフィリスとカレルも赴いた。過去のニューテムズ河遊覧船襲撃事件のことを話すフィリスに、FROST特別捜査官は自分の権限では触れられないことを告げる。

 しばし熟考した後に、フィリス・ウィンザーは決心した。
「では、ウィンザー家の名において、Lady Snowdropの名において、ニューテムズ河遊覧船襲撃事件の捜査権を徴収いたします。全権をわたくしが掌握すると共に、あなた方二人に専属捜査を任命します」
 祖国を見捨てることなく残った永遠の王アーサーの末裔達は大きな力を持つ。ニューロエイジの大企業の重役たちと同様、いやそれ以上の力。だが彼らは、金で物事を動かすのではない。彼らが護ってきた伝統に、彼らの名そのものに、力があるのだ。

Phillis Windsor -Next Head of Windsor Family
Arienole Zofy Savogue - Special Investigator of FROST

「そんな、聞いてないっすよ!」慌てるバイロンの横で、アリエノールは了解と即答する。
「真実を追いたいならば彼女に従うべきです、バイロン・ワインロッド刑事」 “アイス・メイデン”は恭順のしるしに一礼した。
「賢明な御判断です、サー・フィリス・ウィンザー。私がもし貴女の立場にあれば、そうするでしょう。舞い降る雪の君、この事件が解決された暁には、是非お茶など御一緒したいものです」


 引退したSMF隊員が営むバー《オールド・ギース》には前に来た時も寄ったが、そのマスターから伝言が入った。俺への預かり物があるという。
 預かり物は、紙に流れるような筆跡で書かれた手紙だった。

『ハイドパーク近くの墓地にて待つ。夜の闇に住まうファントムを止められると考えるならば、デス・ロードよ来られたし。

――レディ・ファントム』

 もう真夜中――ロンドンの霧の中に潜む幽鬼たちの時間だ。俺はロード・ウィンザーたちに連絡すると、墓地へと向かった。

   
GreenBtn
 


 十字架が並ぶ墓地。夜の時間、渦巻く霧の時間。その中に、黒衣のファントムが待っていた。
「お待ちしていました。夜の闇に住まいし悪霊たちが動き出すこの場所なら、幽鬼と死の使いが会うには相応しいでしょう」
「君もオペラが好きだったとは意外だな」
「‥‥アレク。あなたなら、私の気性の激しさは知っているはず」
 レディ・ファントムの仮面の下の声が、アレックスのよく知るものに変わった時。男の声が、二人に割って入った。
「待てっ!」 バイロン刑事が手錠を取り出す。「君はテロ事件の犯人だ。それ以上でもそれ以下でもないっ!」
 だが、ジリオラの答えは、彼の足元に撃ち込まれた数発の弾丸だった。
 そして、「加勢する」とだけ告げ、ジリオラの横に現われる人影が刑事を目標と定める。ELFの要注意人物エリーゼだ。仕方なく立ち向かうバイロン刑事。だが、彼女の背後の霧に現れた幻影が、全ての攻撃を防いだ!


 揺らめく霧の中でファントムを視認するのが一瞬だけ遅れた。拳銃の銃声が響き、俺の水晶の盾にひびが入っていた。燃え上がったドルイドのお守りが致命的な弾丸を防ぐ。
 狙って射撃。だが墓地に満ちる夜気と同じ色をしたインバネスを翻し、ファントムは渦巻く霧の中に消えた。そして再び霧の中から、見えない弾丸が襲ってくる。
 その時だった。霧を断ち切る閃光が走り、剣の一閃が俺を救ってくれた。
「ウィンザー家守護役、カレル・レン‥‥加勢いたします」
「騎士には相応しくない戦場だ。すまない」
「女性に斬りかかるのは、気が退けますが‥‥」
 あの銀髪の若者だった。銀の騎士の剣が、揺るがぬ信念に支えられた剣が霧を払い、その中に挑む力を与えてくれた。サー・フィリス・ウィンザーが、忠実なる僕に声援の声を送る。
「ジリオラ。ブリテンに降る雪は変わらないが、君の心は変わってしまったんだな」
 俺はファントムの仮面に銃を向けた。一発目は加勢に現れたあの女が防いだ。二発目に込められた夜の力が、仮面の力を打ち破った。


 踊るように墓地に倒れていくレディ・ファントム。同時に渦巻いていた霧は退き始め、割れた仮面の奥のジリオラ・セルフの顔を露にする。バイロン刑事と戦っていたエリーゼは形勢不利と見るや、退いていく霧と共に姿を消した。
「とどめは刺さないで、アレク‥‥思い出の中に浸らせて‥‥」
 近付き、銃を向けるアレックスに向かい、瀕死のジリオラは呟く。
「いいえ。レディ・ファントムは死んでも、ジリオラ・セルフは死なないわ。生きて罪を償いなさい」
 カレル・レンを従えたフィリス・ウィンザーが、静かだが強い調子で告げる。
「いいえ。マーカスが死んだ時‥‥いえ、ウェス・ロスが死んだとき、ジリオラ・セルフも死んだの‥‥」
 全ての爆弾事件は彼女の手によるものだった。家族を失った恨みから、貴族だけを狙って犯行を重ねていたのだ。
 マーカス・アルド・ウィルホード伯爵邸の爆破も、貴族だけが死ぬように綿密に計算された――だが、偶然がひとつ。心を失った彼女を愛したマーカス伯が、爆破の瞬間にその部屋に入っていたのだ。


 俺はBOMBを彼女に向けていた。湿った地面に彼女の血が広がっていく。頭に2発――皮肉なものだ。SMFで射撃訓練をする時と、同じ撃ち方だった。
「‥‥アレク、SMFの名を汚してごめんね‥‥」
 デス・ロードは死神の使いだ。だが、俺は彼女を撃てなかった。ずっと昔、共に戦った第22連隊の仲間を撃つことができなかった。
 俺は銃を降ろすと背を翻し、十字架の群れの中を去っていった。晴れていく霧の向こうから、サイレンの音が近付いていた。

   
GreenBtn
 


 ウィンザー家の名において開始されたニューテムズ河遊覧船襲撃事件の捜査は、その後事件の裏側まで行き着いた。秘密クラブ"HIDE FIRE CLUB"の名までは明かすことができなかったものの、当時金を積んでいた貴族の名を突き止めることができたのだ。
“リッチ”ジョージ・クロフォード。金と暇を持て余し、自らの手を道楽から血に染める死王公。彼の手引きで精紳異常者が船に乗り込み、ジョージ卿は事件現場の報道をワイン片手に見ていたのだ。
 逮捕起訴することはできなかったが、秘密クラブから除名されるか、何かしらの損害は被ったのだろう。卿のその後の消息は途絶えた。
「それでは、サー・フィリス・ウィンザー。私との約束を守っていただきましょうか」
 アリエノール・ゾフィー・サヴォーグ特別捜査官が、捜査権徴収の時の約束を思い出させる。フィリスは、彼女とお茶を飲みに行くことにした。


Arienole Zofy Savogue - Special Investigator of FROST

 バイロン・ワインロッド刑事が懸命に応急処置したお陰で、ジリオラ・セルフ容疑者は命だけは取り留めた。植物人間の状態で、彼女はロンドンの病院に収容された。
 ある日のこと。バイロン刑事のオフィスに、小さな子供を連れた一組の老夫婦がやってきた。少年は緑の瞳に赤い髪をしていた。
 ある日保護した少年を孫と思って可愛がっていたが、ニュースを見て出頭してきたのだという。少年を見つけたのは、遊覧船襲撃事件のすぐ後だったのだ。
 昏睡状態のジリオラ・セルフに子供を会わせ、血液鑑定から確定された。当時の死者の中に見当たらず、行方不明のままだったジリオラの息子だったのだ。

「彼女はいつか必ず目覚めるでしょう。もう一人ではないのだから」
 老夫婦と子供の様子を見ながら、アリエノール・ゾフィー・サヴォーグ特別捜査官は束の間、優しい表情を見せる。
「‥‥バイロン刑事。何か?」
 広域警察FROSTの“アイス・メイデン”は振り向いた。
「なんでもありませんよ」ヤードの刑事は答えた。
「やっと、あなたの人間らしい表情が見れましたからね」

Biron Winerod - Police Detective of Scotland Yard



 花束を側の花瓶に置くと、俺は残りの半分を持って病院を後にした。
花を添えるべき場所がもう一つある――この前は、行くことができなかった。
 ハイドパーク側の墓地は、夜とはまったく違った趣を呈していた。渦巻く霧もなく、夜の闇に潜む幽鬼ももういない。
 後で分かったのだが、ジリオラ・セルフが指定した場所は、前夫ウェス・ロスの墓の近くだった。今は亡き夫の側で、共に死神に迎えられることを願っていたのだろうか。
 俺が向かうのはウェス・ロスの墓ではない。少し離れたところにある、ひとつの墓。本当に久し振りだった。ブリテンを離れてから、ここに来るのは初めてかもしれない。

『ジュディ・ラニアーここに眠る 汝の尊い思い出と共に』
 雪がまだ残る墓石にエーデルワイスの花を添えると、俺はしばしその場に留まった。彼女の思い出がまざまざと甦ってきた。あの内面の好奇心を映す緑の瞳、快活な笑顔‥‥。ずっと前に、俺が失ったものだ。

――ジュディ。君を亡くしてから、俺はずっと暗い夜をさ迷ってきた。夜をさ迷い、災厄の街に辿りついた時、やっと、星を見つけたよ。

"Death Lord"Alex Townsend - Former SMF Member, Now belongs to Sphere of Nite & Death


Phillis Windsor -Next Head of Windsor Family

 追憶を振り払い、彼女の墓を後にしようと振り返った時。俺は二人の人物がそっと佇んでいるのに気がついた。上品な白の衣装に身を包んだ名家ウィンザー家の次期当主と、その側に控える銀髪の騎士。ずっと気付かなかった。
「サー・フィリス・ウィンザー‥‥それにカレルも。来ていたのか‥‥」
「驚かせて、しまったようですね‥‥。N◎VAへお帰りですか?」
「ああ。果たすべき務めも、あるからな」
「そうですか‥‥。ではデス・ロード、いつかまたこのブリテンにいらしてください。貴方が夜空の星を、掴んだ時に」
「‥‥ああ。約束しよう、舞い降る雪の君」


 去ってゆく死の卿を見送り、フィリス・ウィンザーは静かな墓地を見渡した。死の優しい手に迎えられた人々が静かに眠る墓地は、静謐な雰囲気に満ちていた。
「‥‥また、このような事件が起こることも、あるのでしょうか」
「ええ」 ウィンザー家を護る騎士は、自らが誓いを立てた銀の剣に触れ、静かに微笑んだ。
「でもその時もまた、私がフィリス様をお護りいたします」

Karel Ren - Guadian Knight of Windsor Family


 俺が墓地を出た時。道端に黒塗りの高級車が待っていた。後部座席のウィンドウが開き、ブリテンきっての暇人が楽しそうに声を掛けて来た。
「やあ、アレックス! ちょうど私もN◎VAへ行くところなんだ。一緒に行こうじゃないか」
「ユージーン卿‥‥それはありがたいが、空港まではだいぶあるぜ」
「何を言っているのかな、N◎VAまで一緒に行くのさ! いい道連れができて幸運だね。ささ、乗ってくれ給え」
 俺は少し呆れた。グイン・フィツジェラルド家当主、国教会司教の秘蔵っ子。ローゼンクライツ・アンド・ギルデンスターン・カンパニーの相談役。ブリテン有数の権力者がこの調子で、我らが祖国は大丈夫なのだろうか?

 仕方なく車に乗り込むと、相変わらず主の命を静かに待つ執事のアルバート・フォーリーが、前方の運転席から軽く会釈してきた。
「あー、アルバート。燃料が足りなかったら、途中まででいいんだぞ」
「生憎ですが、サー。私は主人の命に逆らえるようにはできていないのです」
「そうかい。ではせいぜい頑張ってブリテンの執事の伝統を守ってくれ」
「かしこまりました」
 彼の主、ブリテンを代表する暇人であるサー・ユージーン・グイン・フィツジェラルドは緑の瞳を楽しそうに輝かせ、俺の肩を叩いた。
「さあさあ、ゆっくりしてくれ給え。余韻に浸るのは少しでいい。楽しい旅にしようじゃないか。せっかくだから、君の優しい星にも挨拶していきたいしね」
 俺は黙って煙草に火を点けた。いや、ユージーン卿の車は禁煙だったかな?
「‥‥アルバート、早く出してくれ」
「かしこまりました」
 運転席から声が聞こえ、グレイホース製の名車は滑るように走り出した。雨の多いロンドンH@ZEにしては空は晴れ渡っており、旅にはおあつらえ向きの天気だった。

 
 
And Here, The curtain dropped,
in the Mystical Myst of London H@ZE ....
-XYZ-

Illustrated by:
Soua(Karel)
and
Saitoh Ichijou(Other Personages)

Special thanks to:
IWATE-U's

   
GreenBtn

 

おいでませブリテン。

月桂樹の冠を被って気分はすっかり英国旅行のひよこ総帥。
ちなみに左下の二人、大きい方が斎藤一条さん、小さい方が不破(仮)さんだ。

 2ndもまだやっているせいか、アクト中は「あー今はもう推理技能ないんだよねー」「じゃあ知覚で追憶の代用を‥‥」などといった懐かしいやりとりが続きました。
 ゲームに慣れてくるとキャストの経験点の分布も高くなり、やれ達成値上昇だの有利だの反則な組み合わせや激烈に強いゲストとの本気の殺し合いといった、ある意味想像力とは反対の面に目がいきがちですが、割合おとなしめの岩手Dance Styleがその分新鮮に感じられます。物語は霧煙る異国の情緒あるものとなりました。やっぱり旅の話はいいですね。
 肝心のE&B設定ですが、なんか考え付かないとかいって割と進行停滞気味のようです。ほら世界が繋がるんだからがんばるのだ! twiLiteロンドンも開園するし(笑)
 帰りはちゃんと指定席に乗って帰れました。さらば、岩手の雄大な大地。贈る言葉はもちろん‥‥のびの〜びだ!



‥‥【】【】【】【4】

Animation Bar (Blue)
...... What's Your Dance Style? / "Lady Phantom" Part.2 ......

レポートのページへ戻る

dice-jp.com > Iwasi Studio > Report > What's Your Dance Style? / Lady Phantom 2
Back to RI-Foundation TOP > NOVA