Open the Gate -Pz TNR!! Offline Meeting-
〜オープン・ザ・ゲイト〜


 某Ma*iaxと某Logic*YSTEMの手助けのアウトソーシング業務(笑えません)の合間の暑い休日。東京で活動中のサークルBLOSSOMのパキラさんのサイトのOFF会(とゆーかN◎VAオンリーCONかもしれません)が開かれました。来たのは主催側から見るとだいたいサークルBLOSSOM/EARTHの見た顔ばかりだったようです。RLも全員サークルの方でしたね。ここは帝都のWebノバラーの把握のためにもお邪魔するのデース。RIファミリーの部下のくりゅりゅんとF.ちんもきまちた。んーチミたち人様のOFF会なんだから遅刻しないように(笑)
 会場は去年聖槍帝さん主催のN◎VAオンリーCONの時と同じでした。まあ世の中そんなもんですな。

K a u t i o n !!

 このシナリオはデータ等変更の後にまた使用することもあるそうです。MS-4さんとよくゲームをしている方は ここで止める/最後まで読むけどさくっと忘れる などの適切な方策をお取り下さい。
 ダイジョウブ。夜の王の前にひざまづいて<※血脈:夜の一族><※畏怖><※紙一重>で黒の剣で頬を撫でられたりすればもう一発でグルグルと目が回り出して‥‥


And so, they appeared on the Staj of Kamui STAR .....

Handle: “墜ちた閃光”周防 朔柾(すぼう・さきまさ)
Style: カブトワリ◎●,バサラ,チャクラ Aj: 28 Jender:
 電磁の元力弾を使う拳銃使い。かつての戦いで使いすぎたドラッグのせいで腕の震えを感じ、ガンファイターとしては落ち目なのを感じて探偵に転身。三流の日々を送っている。だがその閃光は衰えてはいない。電磁の力を乗せた弾丸は、何をも貫くのだ。かつてNRと戦った経験あり。
Player: マッチ
▼サークルEARTHのマッチさんという方が同じテーブルでした。最近コロッセオでも見かけましたね。

Handle: “虚実の伝い手”空城真殊(うつぎ・まこと) 【Profile
Style: トーキー◎,カリスマ,マヤカシ● Aj: 24 Jender:
 読者の心を打つレポートで名を馳せつつあるフリーの若き報道記者。だが彼女は“美しい物語”を見出し、紡ぐことにしか興味がなく、そして物語を愛する人々もそれを自分に求めていると固く信じている。ゆえに事実の改竄も厭わず同業者からは快く思われぬ面も。世の中を他人事のようにしか捉えられない人格破綻者でもある。
Player: 羽沢ミナト 【黒幕ホワイト
▼サークルBLOSSOMでもサークルEARTHでも他でもN◎VAをたくさん遊んでいるミナトさんです。ゲームをやり始めた頃はみんなそうなのかなぁ。今回は二大カブトと共演するコトになってしまってドキドキだそうです。んんー、だれのことでしゅかー(笑)
 空城嬢のイェロマーグ派の詩人の如き物言いは深淵ファン的にHitでした。いえー。

Handle: “嘆きの壁”NR (ノアール) 【Profile
Style: カブト=カブト◎,カタナ● Aj: 27 Jender:
 和名、来城 乃亜。黒髪オールバック、190を越える長身、アーリア系ヌーヴ人の青年。コーティングされたそのサイバーの両腕は黒く輝く。
 普段はアイスクリームが好物の好青年だが、ストリート時代から斗波流一刀術を極めた剣士。彼が護衛相手の前に立ちはだかるその時、暗殺者たちは一様に嘆きの声を上げるという。そう、彼こそ嘆きの壁のNR。ストリートで名を知られた超一流のカブトなのだ。
 人を護る為に剣を振るうようになってから影を潜めたものの、カタナであるその本質は変わっていない。自ら封じた斗波流ニ刀術が今ふたたび閃く時、嘆きの声すらが断ち斬られる!
Player: パキラ 【P'sTNR!!
▼東京で活動中のサークルBLOSSOMの代表、パキラさんです。BLOSSOMの名はよくあちこちで聞きますね。前によくWebでバキラと間違われていました。(ヲレも‥‥) NRはサークルの例会でもよく使ってきたキャラだとか。受けよりもカバーリングを主に使います。
「この二人が共演したら互いに燃えるでしょうねぇ」と互いに思っていたら今回は晴れてカブト二人の共演となりました。ルール的にもかなり強いです。その上今回は<※※二天一流>まで開眼、デス・ロードなんて霞んで見える320Expの最強バージョン。プロっぽいキャスト同士の共演は燃えるのです。いえー。

Handle: “デス・ロード”アレックス・タウンゼント 【Profile
Style: カブト=カブト◎,バサラ● Aj: 32? Jender:
 死神の使いを名乗るカブト。E&B陸軍のカウンター・テロ部隊SMFで技術を身に付けた。死神との約定を護るため、そして裁きのために、その力と夜の魔法を振るう。極めて冷静なため、一見冷淡にも見える人物。
▼なんだかんだ言って出番の多いアレックスです。フリーランスだから導入しやすいというのはありますが。舞台はカムイST☆Rでアストラルやナイトワーデンと関連するキャストが推奨、ということで彼に相成りました。じゃあこっちは負けじと<※※ク・フレ>でも‥‥なんてのは大人げないので魔法使いらしく脇に控えておりませう。
 M○●Nも行ったしブリテンにも帰ったしオーストラリアの土も踏んだし、なんかもう世界に羽ばたいてますね。いやだがしかし‥‥RI財団キャストを代表する一人である彼にならその資格はあるはず!

Ruler: MS-4 【N◎VA Fan Beginners
▼やはりサークルBLOSSOMで活動中のMS-4さんがシナリオを作ってきてくれました。非ゲーマーな雰囲気を漂わす夏瀬氏の密告もとい報告通りの方でした。(よい意味で) NFBの日記はよく帝都のN◎VA星人がちらちら出てくるのでジツはこっそり読んでいます。てへ(笑)
 予告通り、プレイスタイルはかなりシステマチックに。アクトへのアプローチがある意味僕などと逆の面がありますね。
 今回はプレプレアクト段階でキャストも事前に決定し、しかもカブト4枚でかなり堅いのでそりゃもうゲストの作りこみもキチキチ。ジネティック相当蟲のドラゴンからヴァルキリー、ペルセウス相当常備化のエニグマまでもう目がグルグル回りそうです。ラスボスのナイト・ロードに至っては黒の剣とモルフェウスで《不可知》状態から<※※ニ天一流>してきます。そりゃもう倒れるデスよ、ガゼン。


Red Moon...
 


 何処とも知れぬ暗い部屋。一匹の猫を膝に乗せた恰幅のいい男が語るのは、後にカムイST☆Rとなる地に存在した『姫巫女』の話だった。
 その地に住まうアヤカシたちを率い、その中心となっていた彼女はやがて没し、アヤカシたちも散り散りになった。そして起こった災厄。さらに流れる年月。世界の裏に隠れていたアヤカシたちも、その姿を時折表舞台に現すようになった。
 だが、姫巫女は滅んでいない。彼女は『姫』と『巫女』、二人の人間の女性に生まれ変わり、アヤカシたちの心の支えとなっているのだ。
 大写しになる膝の上の猫。その瞳は金の色。神秘の世界に属する色‥‥

 

Open the Gate direkted by MS-4
〜 オープン・ザ・ゲート 〜


 周防は白き狼の御門忍から依頼を受けていた。最近カムイST☆Rでは謎の殺人事件が続発している。シリウス財団系列の品種改良技術株式会社のエグゼクに会い、彼の指示に従って事件の解決を計ってほしいと。
 エグゼクの名は館山彰一。とりたてて言うこともないふつうの企業重役らしいのだが‥‥


「それにしてもあちーな‥‥」
 常春のはずのN◎VAもなぜか最近は気温が高い。好物のアイスを食べながら、メモリアルパークのセミの声に耳を傾けていたNRは、馴染みのナイト・ワーデン社長、ブロッカーから連絡を受ける。最近のニュースで流れている通り、ST☆Rで謎の事件が続いている。ワーデンと互いに協力し合っているクルス・リスク・コントロール(KRK)も捜査には当たっているが、人員が手一杯だというのだ。
「でも、社員じゃない俺でいいのかい?」
『いや、今連絡が取れる中で一番の腕を持つのは確実にお前だけだ』
 亜軌道ジェットの便も手配してあった。星の都カムイST☆Rでの、護衛ではない珍しい仕事。NRは自分の中の剣を持つ手の部分がうずくのを感じつつ、用意に向かった。  

"Wall of Sadness"NR  go to the Star


Death Lord desidez that go to the City of Star...

 千早重工の社長直々に連絡が入ったのは、俺が夜のN◎VAを歩いている時だった。モスグリーンのスーツに、あの元殺人者の狼の瞳を隠すミラーシェード。まだ“死の右腕”と呼ばれていた頃から何回か会ったことはあったが、あの穏やかな態度は変わらない。
 千早ST☆R支社のチハヤ・ランドマークの人間にも、事件の被害者が何人か出ているという。報酬は1ゴールド。便の手配はすぐにするそうだ。
「社員でもない人間に頼むとは大事だな」
「ええ‥‥。今回は私の個人的な依頼に近くなります」
 ミラーシェードは相変わらず何も語らなかった。企業世界の住人たちにも、デス・ロードの名は知られているのだろうか。千早の子飼いになるのはごめんだが、昔からの知り合い自らが頼んできたとあっては断るわけにもいかない。


 空城真殊は既にカムイST☆Rで、知り合いの藤堂正臣隊員から事件の話を聞いていた。元SSS隊員だった彼はウォーカー乗り目指してシノハラ・セキュリティ・サービス・ST☆R支社(S4)へと転向するも挫折し、現在は適当に一般調査員の仕事を続ける毎日だ。
 半月前から続発している事件にS4はかかりきりだが、まだ解決していない。トーキーとしての力を活かし、情報の収集と事件解決をサポートしてほしいという。分かった事実はST☆R最大の報道企業インフォST☆Rに流さず、まず自分に直接教えてくれとのことだった。


Red Moon...
 


 亜軌道ジェットの中では、もうすぐやってくる皆既月食のニュースが流れていた。そして映し出されるST☆Rから撮影した満月の映像。それはなぜか血の如く紅かった。魔法の世界と縁がない普通の人間でも、あの紅い月を見れば何かを感じるだろう。
 古来より月の満ち欠けは運命の天輪が巡る前兆とされてきた。この皆既月食も、もしかしたら何かを語っているのかもしれない。それに目的地は星の都、カムイST☆Rだ。
「お客様、大変お待たせいたしました。アイスクリームお持ちいたしました。ラムレーズンでよろしかったですね‥‥」
 少し慌てたアテンダントの声が聞こえ、考え込んでいた俺は席から振り返った。飛行機まできてわざわざアイスを食べる物好きがいたようだ。


 周防は品種改良技術株式会社へ赴き、アポ通り館山彰一なるエグゼクと会った。膝の上に猫を抱えた彼は詳しく事件を話してくれたが、やはり大した事はまだ掴めていないという。

 
"Wall of Sadness"NR arrived

 機内でもアイスに舌鼓を打ってST☆Rの地に降り立ったNRは約束通りKRKに向かった。新石狩国際空港のセキュリティを通れないので大方の武器を置いてきたのは心もとないが、ST☆Rの中で買うという手もある。
 被害者はスラムの犯罪者などに多かった。かつてこの都市を襲った神災の影響で、精神が他人のものと入れ替わってしまった被害者にも多いという。どうやら霊的なものと関係があるらしい。
 あくまで現実世界で、嘆きの壁としてその力を振るってきたNRは、自分と縁もなく探る力もない世界が関わってきたことに嘆息する。

 


 新石狩空港のチェックは思いのほか厳重だったが、すべての武器を普段通りに持ちこむことができた。俺の魔法の力と、この夜の色をしたコートのお陰だ。ST☆Rでもう一度装備を揃えるとなると、ずいぶん手間も掛かる。
 チハヤ・ランドマークで話を聞く。千早の不利益がこれ以上増えないように、独自に調査して欲しいということだった。
 既に一人殺された重役の写真を見せてもらった。カメラの端に現れた黒い塊。一瞬でそれはエグゼクの眉間を貫き、一撃で絶命させている。
 拡大写真の目盛通り、穴の大きさは6mm程度だった。弾痕を見てすぐに分かった。銃弾に元力を乗せて撃った時特有のものと同じだ。俺のような能力者や、あるいは最近稀に出回っている弾丸そのものに元力が込められたものを使った狙撃かもしれない。
 だがいずれにせよ、銃弾自体は普通残るはずだ。どんな手を使ったのだろうか?


 空城真殊は世話になったことのあるNRを伴い、ST☆R最大の報道会社、インフォST☆Rに赴いて調査を続けていた。一休みしてロビーにいた時。見覚えのある黒いコートの男が不意に視界に現れた。込み合う正面入り口を抜けた風もなく、驚く受付の女性と話をしている。N◎VAで危険な物語に伝い手として関わることになった時‥‥何度か守ってもらった相手だ。


「相変わらず、魔法のような登場ね」
 過去の似たような事件を探そうかと尋ねていた俺は、聞き覚えのある声に振り返った。
 立っていたのは若い女性だった。“虚実の伝い手”空城真殊。何度かあのトーキーを護衛したことがある。その黒い髪と紫の瞳は俺にとっては別の女性を連想させるが、目の前の彼女の方が少し背が高い。そして、そのどこか吟遊詩人めいた物言いが、俺の記憶に残っていた。
 彼女も、そして横に控える友人だという青年も、どうやら俺と同じような目的でST☆Rに来たらしい。
 俺はその青年に目を移した。行きのジェットの中で見かけた男だ。俺から見ても見上げる大男だった。髪を後ろで束ね、窮屈そうにスーツを着崩している。黒光りする両腕は恐らくサイバーによる増強にメタルマックスのコーティング。他にもあちこちを強化しているだろう。
 思い出した。嘆きの壁のNR。ブロッカーの信も厚いストリートの凄腕のカブトの一人。斗波流一刀術を操る男だ。
「そうか、君の知り合いだったのか」
 空城真珠が楽しそうにうなずき、青年は気さくに声をかけてきた。
「へぇ、あんたが噂のデス・ロードね‥‥そういや、紹介してもらってなかったかな」
「アレックスだ。よろしく」
 俺がサイバーの右手を差し出すと、少しためらってから、青年はやはりサイバーの手を差し出した。その鋼の手に刻まれた闘いの歴史と微妙な動き。彼の黒い瞳の一番奥に満ちている静かな自信。あの瞳を見た時に分かった。そして、彼もまた、俺の中に何かを見つけているのだろう。
「流派はヌーヴのものかい」
「いや、N◎VAだ。ヌーヴには、実は行ったことすらないんだ」
「そうか。‥‥楽しめそうだな」
 互いに静かな笑みをかわし、俺たちは手を放した。

「こんな英雄が二人も揃うなんて、さぞかし華やかな物語ができあがることでしょうね」
 インフォST☆Rの上階に向かいながら、空城真殊が踊るように振り返ると声をかける。
「間違っても、俺は英雄じゃないな」
 NRが大げさに肩を竦める。
「同感だ」
 俺たちは彼女に続いた。


Red Moon...
 


 紅い月の輝くカムイST☆の夜。レッドエリアはいつにない騒音に包まれていた。
『番組をご覧の皆さん、今夜の暴動はスマイルする余裕もありまへん。いてっ! なんやこっちまで飛んできたで!』
 コンドーム禁止マークのジャケットに今夜は鍋まで被って武装したN◎VAスポ少年レポーター、“スマイル”こと九条誠司(くじょうせいじ)【Profile】はこれ以上の現場取材を断念すると遮蔽を探して駆け出していった。
 スラムのスクワッターたちが起こした暴動は400人規模までに拡大していた。皆狂ったように目をギラギラさせ、互いに傷付けあっている。
 遂に発砲。迷い込んだ少女に向けられた流れ弾を、クマのぬいぐるみが主人を庇うように受ける。そして発砲者もまた、別の狂人にショットガンで頭を撃たれ‥‥

 空城真殊がカメラを回す中、一行もその場に居合わせていた。暴動の現場を覆う異様な雰囲気に、霊的感知力を持つ空城真殊らは自分たちも長い時間いると影響を受ける恐れがあるのを確信する。
 少女を庇い銃弾に倒れたクマのぬいぐるみを持ち上げたNRは驚いた。小さなクマは自分で体の中の弾を取り出すと、自分の足で立って喋り出すではないか。昔雑誌で見た、災厄前の前世代プロトコル時代のメールソフトのようだった。
 モカと名乗ったクマは人形の一族に属するアヤカシだった。この暴動の犠牲者も、月へのよい生贄になってしまうという。
「これも月の波動の影響なのか‥‥?」
 元力弾が込められた銃を手に、周防は暴動が収まりかけた周りを見渡す。
「ルナティックとは、よく言ったものね」
 大地を紅く照らす月を見上げ、虚実を語る詩人が呟く。そしてスラムには人気が消え、辺りは突如として静まり返った‥‥


「なぁMr.タウンゼント。あれは俺にはトカゲにしか見えないんだが‥‥??」
 月を見上げたNRに言われ、俺はようやく紅い月の中に見えるものに気が付いた。サイバーの視覚を増強するまでもなかった。確かに見えた。鉤爪のついた大きな翼を羽ばたかせ、それは確かにこちらに向かってどんどんと大きくなっていた。
 魔法の世界に近しい俺でも、これほどのものは初めて見た。俺たちの前に着地すると、大きな咆哮を上げる。尻尾の一撃で辺りの建物が煙を上げて薙ぎ払われた。
「騎士に魔法使い、そしてドラゴンまで‥‥美しい物語にぴったりよね」
 歌うように、空城真殊が目の前のアヤカシの感想をもらす。確かに叙事詩にすれば素晴らしいだろう‥‥だが、彼女は考えたことはないのだろうか? それを伝えるべき吟遊詩人が、旅路の途中で竜の牙に掛かって果てることは。前に彼女を護衛した時も、同じようなものだった。
「さすがはカムイST☆R、魔法の都だな」
 俺はコートの下から剣を抜いた。その刀身に黒い炎が燃え上がる。
「タウンゼント。先に行かしてもらう」
「ああ」
 オメガREDを展開したNRが、いち早く動いた。斗波流一刀術を極めた彼ならば、竜殺しの名もまた相応しいはずだ。
 だが、その迅速な一撃を竜は見事に受け止めた。牙で高速振動剣をくわえ込み、なおかつ右腕の爪でまったく同時に嘆きの壁を打ち倒そうとさえする。
 仕方なく俺がカバーに入った。盾を構えた俺ごと後退してしまうほどの強い衝撃。傷が大きいが、仕方がない。
 強敵だった。空城真殊が生み出す幻覚の力も、周防が雷光の力を込めて放った元力弾も、堅い鱗に護られた竜には致命傷には至っていない。
「夜の魔剣なら、その鱗を貫けるだろうか」
 俺はブリテンで鍛えられた魔法のロングソードの刃を返した。鱗の間と思われるところに、そのまま一気に刺し通す。
 手応えは確かにあった! 竜は痛みに大きく咆哮し、身をよじらせた。だが次に起こったことは予想を超えていた。竜の巨体が突然霧に変わったのだ。数瞬後には、こだまする吼え声以外には何も残っていなかった。

「すまなかった」
 危うく難を逃れたNRが、背後から声をかけてくる。
「いや、気にすることはない」
 俺は剣を降ろし、竜が消えていった方向を一瞥した。神秘の世界の獣が暴れていたことなど嘘のように、スラムの廃墟が広がっているだけだった。そして――頭上からそれを照らす、あの紅い月。


 一行は周防がレッドエリアに所有しているマンションにひとまず集まった。アレックスは洗面所を借り、竜に受けた傷を自分で治療する。
 周防は依頼人の御門忍に連絡を取り、一連の怪現象を報告した。どうやらあの紅く輝く月が何かを呼び寄せる門であり、門を開くにはカムイST☆R内でまだ多くの生贄が必要らしい。
「なあ。この街には詳しくないんだが‥‥どこかで剣を売ってないか? 無闇に振るわないが、そうもいかないようだ」
 NRがいきなり発した現実的な質問に、周防は拍子抜けする。アレックスと違い空港で武器を持ちこめなかった彼は、ほとんどの武装を置いてきていたのだ。

 ST☆R西部の狸小路で、一行は物資を調達した。降魔刀に義経短刀、次々と刀を検分していくNRに渋い顔をしながらも、店の親父は全てを揃えてくれた。
 空城真殊はS4の東条隊員に連絡を取るが、S4の調査は相変わらず進んでいなかったようだ。スラムにドラゴンが出たという怪情報を笑い飛ばし、彼の通信は終わった。


 元力弾とおぼしきあの技で目標を殺すST☆Rの暗殺者‥‥一人見つかった。エレメンタラー。誰もその姿を見たことがなく、完全に詳細不明の暗殺者。様々な元力を用いる呪殺師で、闇の精霊も使うという。
 俺や周防のような元力使いなのだろうか。それとも秘幽体を操っているのか‥‥星幽界から干渉する術を持っているのか?


 続いて品種改良技術株式会社に赴いた一行は、突然の暗殺現場に出くわす。ソファに座っている館山彰一には首から上がなかった。そして、部屋にいる黒服の男たち。
「貴様ら、なんのために殺した!」
 NRの怒りの刃が疾り、一撃で男たちを絶命させる。立っている者がいなくなった時、黒檀の机の下から黄色いスカーフを巻いた猫が出てきた。しかもそのまま、二足で立ちあがるではないか。
「ニャー、驚かせたみたいだニャー。大丈夫、私が館山彰一なんだニャー。あそこで首を斬られてるのはドローンなんだニャー」
 金色の瞳を瞬かせながら、猫が説明する。彼が指を鳴らすと、別室からすっかり同じ服装をしたエグゼクのドローンが現れ、首を切られた同型を片付け始めた。
 一行は顔を見合わせ、空城真殊が妖精の一族に属するケット・シーに話を聞き出した。

 ST☆R周辺には土着のアヤカシたちが住んでいる。かつて彼らを率いていた『姫巫女』が人間の『姫』と『巫女』に分かたれて転生して以来、双方に属するアヤカシの間で争いが絶えなくなった。姫側には龍の一族。巫女側には妖精と人形、獣の一族。神災が起こってからは休戦状態が続いていたが、最近また姫側が一方的に争いを始めたという。このケット・シーの館山やぬいぐるみのモカらが属する巫女側の戦力を減らすのが目的らしい。
 人間に転生した『巫女』の名は神崎美子。姫巫女の中の慈愛の心を受け継いだ若い女性だが、今は何処かに封じられているという。
 そして『姫』と呼ばれるもう一方は誰かに心を奪われており、また彼女をそそのかす第三勢力が協力しているらしい。
 ST☆Rで続発する殺人事件はやはり、生贄の魂を集めるためだった。血や闇に染まった魂はことのほか贄として絶好であり、多くの魂が集まるその時、門が開き、月から神が現れてふたたび神災を呼び寄せてくれるという。
「だとしたら、俺は姫側を許さない」
 刀に手を掛け、NRが呟いた。


「ところで館山氏。‥‥エレメンタラーという呪殺師のことを知らないか?」
「お前がそう聞くのは天輪の導きでもう分かっていたニャー。もう調べておいたニャー」
「ほう。さすがだな」
「奴は宗教関係者なのニャ。エムナントカエーに属しているのニャー。一緒になって、巫女側のアヤカシを洗脳してるのかもしれないんだニャー」
 そいつも姫側の人間だった。M∵C∵Aの人間が姫側をそそのかし、生贄を集めているなら説明もつく。世界に散らばりそれぞれが正統を名乗っているM∵C∵Aだが、彼らの究極の目的はしごく簡潔だ。月から神とやらを呼び寄せることができれば、世界も滅ぼせるかもしれない。
 カムイST☆Rの近くには、災厄前に札幌と呼ばれていた都市の廃墟がある。彼らの本拠はそこである可能性が高いということだ。だが札幌旧市街といえば別名は“ハザード・シティ”‥‥星幽界側に存在する札幌は、災厄が起こった恐怖の一日、“ドゥームズ・デイ”を永劫に繰り返しているとも言うではないか?


 館山氏であるはずだったドローンを殺害した男たちもMCAの手先のようだった。その持ち物を手に取ると、空城真殊は精神を集中する。霊的能力の高い彼女は、その糸を辿ることができる。
「さあ見せて、あなたたちの物語を」
 彼女の脳裏に様々なイメージが現れては消えていった。はっきりと浮かび上がるSSSSの文字。見覚えのある建物の風景。ではそもそも彼女に仕事を頼んできた東条隊員もMCAの手先だったのだろうか。彼女が探った姫側、巫女側両方の情報を利用するつもりだったのだろうか?
 NRは一行を見渡すと、その意志を確認した。
「俺は剣で人を守れるなら、何処までも行く。どうだ?」
「物語には伝い手が必要よ。終幕までは、まだ長いのだから」
 空城真殊の紫の瞳は、吟遊詩人の喜びに満ちていた。
「エレメンタラーという暗殺者は殺す。その先は物語次第だな」
 デス・ロードの一歩退いた態度は変わらなかった。周防も同意し、四人は終幕に共に向かうことにした。
「一緒に来るとして、誰かを傷つける覚悟はあるのか?」
 NRは幾度も運命の舞台で出会った若いトーキーを見下ろした。
「誰も傷つかない物語なんて無いわ」
「そういう意味で言ったんじゃないさ‥‥」


「に、逃げろー」
 外に出た一行は、クマのモカが必死に逃げてくる場面に出くわす。
その背後には、空から一人の神々しい女性がゆっくりと降りてくるところだった。光に包まれた輝く鎧と槍、羽根飾りのついた兜。
『逃げるな、人形の一族。おまえの魂をもらいにきた』
 その深みのある声は、まさに大神オーディーンに仕える戦乙女のものだった。
「人が殺されそうになっているのに、放っておくわけにはいかないな」
 NRは背後にクマのぬいぐるみを庇う。
「あいつは妖精の一族だけど、姫に洗脳されちゃったんだ。もう正気には戻ってくれないんだ」
 ヴァルキリーは手を翻し、手にした大槍を投じてきた。ガングニールの槍もかくやの一撃。だが、サイバーで骨格から表面装甲まで強化されたNRの黒い腕が動き、その槍を素手で発止と受け止める。
「言ったはずだ」
『‥‥不利のようだな。おまえたちの魂はまたいずれもらうとしよう』
 槍を受け止めた大柄な戦士と、その傍に現れた仲間たちを認めると、ヴァルキリーは身を翻した。天上の光と共に彼女の姿は消え、後には宙に舞う数枚の羽根だけが残った。
「頼むよ。あの魂を解放してあげて。もう、戦って眠らせてやるしかないんだ」
 クマのモカはNRに懇願する。
「姫たちの居場所もわかった。直接仕えてる誰かと一緒に札幌にいるんだ。あそこの時計台の中に、巫女様も閉じ込められているんだ」


Red Moon...
 


 車を運転できるのは俺しかいなかった。手に入れたセダンで星の都を離れ、札幌へ向かう。
 もうすぐ目的地という時、道の向こうで俺達を待っている相手がいた。
 光り輝く甲冑を纏った女はあの時のヴァルキリーだ。そしてその横に光り輝く騎士がもう一人――だが、それはヴァルキリーより何倍も大きな鋼鉄の巨人だった。ヨコハマの闘技場で見たペルセウスに似ている。
 だが、あれはウォーカーではない。空城真殊と周防にはきっと分かっただろう。機体を包むあの燐光は、秘幽体独特のものだ。
 ハンドルを切り、斜めに停車。すぐに車外に出る。その時、俺は気配を感じた。妖精の粉の入ったお守りが、もうひとつの世界に潜んでいる相手を教えてくれた。エニグマンサーの他にまだ一人。恐らく、あの呪殺師だ。
「NR、気をつけろ。もう一人いる」
「ああ‥‥。クマとの約束を、果たさなきゃな」
 星幽界を見る手段を持たない青年は降魔刀を手に、ヴァルキリーを見据えた。


「覚えておいてやろう、お前の生を。悲しんでやろう、お前の死を」
 静かに言い放つとNRはニ刀を抜き放った。降魔刀をヴァルキリーの槍が受け止めた時、左の短刀が唸る。斗波流の剛剣『捷波』は戦乙女の纏う堅い甲冑を打ち破った。
 周防はとっておきの餓鬼玉を込めて撃つが、ウォーカーの堅い装甲に阻まれて破壊には至らない。
「偽りの騎士よ、道をあけなさい」
 空城真殊が進み出、鋼鉄の巨人を指差す。吟遊詩人のことばはそれ自体が力を持つ。だがその背後に現れた神の影が、ことばの持つ力を打ち破った。
 巨人はその剣を振り上げ、ヴァルキリーと激しく戦うNRに振り下ろす。装備していたのはウォーカーすら切り裂くアルゴンブレード。
だが――「邪魔をするな」とだけ呟いたNRの降魔刀が触れ合った途端、アルゴンブレードは一撃で砕け散った。さらに踊る左の義経短刀が、今度はヴァルキリーの盾をも打ち砕く。
『お前の魂は、わたしがもらうッ!』
 残った大槍を掲げ、ヴァルキリーは宙に舞い上がった。その体が光り、背中に純白の羽根が広がる。そのまま突進。二刀でも受けきれず、NRの額が割れる。
「いい太刀筋だ」
 距離を開けた時、星幽界から撃ち込まれた2発の弾丸が別々の方向から襲ってきた。アレックスとNRが互いに動き、互いに向けられた弾丸を叩き落とす。
 アレックスは銃を手にエレメンタラーを探していた。一発命中させられたので、だいたいの位置は掴めている。予想範囲の中から更に襲ってくる黒い弾丸。だが、アレックスが属する領域と同じ力の込められたその弾丸は途中で力を失い、夜の色をしたコートの前で光を失った。
「駄目。私は物語に愛されているの」
 鋼鉄の騎士からの致命的な攻撃を、空城真殊の背後に浮かび上がった吟遊詩人の神の幻影が打ち消す。そして続く周防の射撃。ようやく損傷が見え始めた。


「エレメンタラー、死神がお前を求めているぜ」
 俺は手を振り、力を解放した。夜の色をした槍が出現し、星幽界に撃ちこまれる。一撃目は奴の力の前に消えた。だがニ撃目に手応えがあった。死体は何処にも見えないが、頭から貫かれて絶命したはずだ。
 周防が弾丸に雷光の嵐を乗せて放ち、ウォーカーを貫く。激しい音響と共に雷が落ちた。秘幽体とはいえ、その中身は機動歩行戦車と同じだったのだろう。爆発音と共に、鋼鉄の騎士は沈黙した。
 残ったのはあの戦乙女だ。待つまでもなかった。NRが疾り、右の降魔刀と左の短刀が閃く。
「斗波流ニ刀術奥義だ。この狂花、見て死ね」
 真に剣を極めた者の闘いは舞にも等しい。そう、俺が二度だけ見たあの黒の死神の剣舞のようだった。両手の刃が同時に舞い、遂にヴァルキリーの体を貫く。戦乙女は倒れ、その解放された魂はヴァルハラへと帰っていった。


Red Moon...
 


 敵を破り、遂に旧札幌市街へと到着する一行。そこは静かな廃墟だった。
 『巫女』が封じられているという時計台は沈黙し、時を刻むのを止めていた。大いなる力による結果が、時計台を中心に張られていた。
 紅い月の照らす元に、佇んでいる人影が二人。上半身をはだけ、黒衣を羽織った細身の男。その回りには月光すらも行く手を譲り、闇が満ちている。
 彼に寄り添うように立っている黒髪の女性は日本人形の如き姿だった。彼女が『姫』なのだろう。そして彼女が手にした錫杖を一振りすると、中から竜が飛び出してくる。スラムで一行と対峙したあのドラゴンだった。
「ヴァルキリーは苦痛から解き放ってやったぞ」
 語気荒く、NRが刀を手に告げる。
「フフ。我が名はリュシアン。“ナイト・ロード”のリュシアン」
 夜の一族は微笑むと、姫の体を引き寄せた。
 姫の心を惑わせ、MCAの手先を引き入れ、今回の事件を操っていたのも彼だった。S4の東条隊員もMCAのエージェントだったのだ。楽しそうに彼は語った。より多くの生贄が集まり、あの紅い月の門が開く時こそ、再びST☆Rを壊滅させるほどの神災が起きると。
「血と闇に汚された魂が集まれば集まるほど、あの紅い月の輝きも増す」
 ナイト・ロードは、剣士の脇に控えている夜色のコートの男を一瞥する。
「君の魂は実に汚されている‥‥生贄にはぴったりだよ」
「ほう」
 だがデス・ロードはその剣に手を掛け、目を細めるだけだった。
 お前を許すわけにはいかないと、周防が愛銃を抜き撃ちする。だがリュシアンは霧に転じ、一瞬後に側に現れた。
「ならば斗波流ニ刀術、見て死ね」
 NRが襲いかかろうとするが、『姫』が守護神に請い願った力が嘆きの壁を止めた。力を他人に使った『姫』はそのまま崩れるように倒れ、動かなくなる。
「愛ゆえだよ」 リュシアンは笑った。「彼女は夜の王である私を愛していた。だからこうして命をも捧げてくれたのさ。そこが、人間の不可解であり面白いところでもあるのだがね」
 言いつつ抜剣。漆黒の鞘から抜かれたのは、何よりも黒い魔剣。だが嘆きの壁を狙った致死の斬撃はデス・ロードの盾に防がれた。
「約定を果たせ、NR」
 黒の剣を下ろし、ナイト・ロードは踊るように後ずさる。はだけていた上衣が、生きているかのようにするすると夜の王の体を覆った。
「貴方は多くのものを物語から奪った‥‥だから、貴方の物語は語られないわ」
 虚実の伝い手が、はっきりした声で告げる。
「物語? 君の伝える物語など興味はないよ」
 リュシアンは大理石の岩のテーブルの上にあった紅い液体を飲み干した。夜の一族の体に、一層の力がみなぎる。
「さあ、血のロンドを踊ろうじゃないか」


「闇の王の使いよ。夜の王の前にひざまずくがよい」
 グラスを飲み干したリュシアンの動きは軽く、どんな神経加速装置よりも速かった。俺のコートと同種の黒衣をはためかせ、黒の剣が舞うように襲い掛かる。同時に奴の左手が形を変えだし、細い剣の形を取った。
 だが、燕返しの秘剣で両手から繰り出される致命的な斬撃は、全てが壁の前に阻まれた。四つの火花が同時に散る。俺の前に嘆きの壁が立ちはだかってくれたのだ。俺への借りを返そうとでもいうのだろうか。夜の王は嘆きの声など上げなかったが、強敵の前に剣を退いた。
 ちらりと目をやる。あの竜は、周防が元力弾で相手をしてくれているようだ。俺は力を集中した。
「では夜の王の力、見せてもらおうか」
 ブリテンで鍛えた魔剣を、魔法が夜の大気と同じ色に霞ませる。同時に生きているようにゆらめく夜色のコートが伸び、奴の前でひらりと踊った。その隙をついて斬撃。ナイト・ロードの左手がそれでも伸び、流体金属の剣が俺の剣を弾こうとする。
 それも計算の内だった。弾かれた一撃は逆に反れ、奴の体へと吸い込まれる――はずだった。
 竜の咆哮が聞こえ、俺達は同時に身を退いた。竜の息が大地を舐め、炎が走っていく。
 あの炎が止んだ時だった。紅い月の照らす大地のどこからも、リュシアンの姿が消えていた。
 俺が覚えているのはそこまでだった。


 影の中から現れるナイト・ロード。夜の一族の力の込められた黒の剣が一閃し、その魔力でアレックスを凍りつかせる。続いて左の剣が踊り、その体を深々と貫いた。夜の色をしたコートを大量の血で染め、デス・ロードはゆっくりと地面に倒れ伏した。


「貴方はもう物語に登場しない。だから貴方の物語は語られないわ」
 空城真殊が詰め寄り、リュシアンをひたと見据える。サイバーウェアが起動。夜の王にのみ聞こえる言葉で、吟遊詩人の力あることばがゆっくりと語られた。
「償いなさい。貴方が奪った物語のために!」
「物語だと? 人間の創った物語などくだらんッ!」
 ナイト・ロードの両目に、徐々に月の狂気の光が満ちていく。
「くだらん‥‥そんな物語など‥‥くだらん‥‥」
 剣を落とし、がっくりと膝を落とすリュシアン。その目は焦点を失い、ただ紅い月を見上げ、見果てぬ何かを呟くだけだった。


「‥‥終わったのか?」
 刀を下ろし、NRは月光の照らす戦場を見渡した。主をなくし、戦意を消失した竜は悲しげに一声吼えると、巨体を揺らして辺りをうろついている。
 朽ち果てた時計台。月を見上げて何かを呟き続ける夜の王。そして、肩を並べて戦った今回の相棒が、一流と名高いはずの死の卿が、冷たい地面の上で動かなくなっていた。


Red Moon...
 


 シルクハットを取り、ケット・シーの館山が歩み出る。その後ろから、様々な一族に属するアヤカシたちが、『姫』をそそのかした力が消えたことを知り、ぞろぞろと現れた。
「『巫女』様はあの時計台の中に閉じ込められているんだニャー。あまりに強い魔力の鎖で、誰にも破れないんだニャー」
 猫の手が指差す先に、時を刻まなくなって久しい時計台が月光を浴びていた。
 車から救急キットを持ってくると、NRは必死にアレックスを治療する。治療の甲斐あり、彼は危ういところで息を吹き返した。肩を貸し、なんとか立ち上がらせると、アヤカシたちが待つ時計前広場へと連れてくる。


「すまない‥‥何があったんだ」
 NRに支えられて立ちあがり、夜の王が排除されたことを聞きながら、俺は苦々しく辺りを見回した。
 このデス・ロードが倒れたのだ。このような敗北の仕方はあの時以来――ヨコハマであの鳳の紋の男と対峙した時以来だ。俺のカブトとしての戦いの中でも滅多にないことだった。
 話を聞き、神秘の世界の住人たちを見る。ケット・シーの金色の瞳が、期待のこもった眼差しでこちらを見ていた。その後ろの様々なアヤカシたちも、こちらに注目していた。
「魔法使いは脇役のはずなんだがな‥‥」
 仕方なく痛む腕を掲げ、精神を集中する。
「死と夜の領域に属するデス・ロードの名において命ずる。時計よ、ふたたびその時を刻み、隠された門を開け」
 夜の力が収束し、見えない結界を打ち破る。止まったままだった時計の針が回り始め、時刻を告げる鐘の音が夜の大地に響き渡った。


 姫巫女の慈愛の心を受け継いだ『巫女』が帰ってきた。アヤカシたちは歓声を上げ、彼女の元へ集まる。
 『巫女』は一行に礼を言い、しばらくアヤカシたちを率いて星幽界へ帰ることを告げる。自分の姉であった『姫』の倒れた姿を見やると、彼女は「姉は愛を貫いたのです」と悲しげにもらした。
「さあ、帰りなさい。もうすぐ破滅の日がやってきます。昇天の十字架を見たとき、あなたたちもこの街に囚われてしまう」
「そうだニャー。車はドロイドに運転させるから、乗っていくといいニャー。巫女様が帰ってきたから、安心して帰れるニャー」
 様々なアヤカシたちが、喜びを表現している。
「みんなの想いが、巫女を呼んだのよ」
 虚実の伝い手は満足そうに、紫の瞳で終幕間際の舞台を見渡した。


 精神を破壊されたリュシアンは地面に膝をつき、ぶつぶつと何かを呟くだけだった。
 NRは側に落ちていた剣を拾った。鞘も刀身も、何よりも黒い。世界に伝わる魔剣のひとつだ。NRはゆっくりと鞘に収めた。小気味よい音をたて、黒の剣はその刀身を隠す。
「お前とは、永遠に分かり合えないだろうがな」
 強敵との闘いの記念に自分のものとすると、嘆きの壁は一行の待つ車へと向かった。

 残ったアレックスは再び自らの剣を抜いた。一瞬で灯る夜の炎。そのまま一閃。夜の一族の命を失った虚ろな目は、ただ紅い月を見上げるだけだった。
「さらばだ、夜の王」
 それだけ言うと死神の使いは身を翻し、痛む体を押さえて歩き出した。


 館山彰一だと世の人々が信じているドローンが運転する車が走り出し、一行は紅い月の元をST☆R目指して帰路についた。
「やれやれ、疲れたなー」
 大きく息を吐くと、NRは懐から溶けない特別製のアイスをすっと取りだした。もちろんラムレーズンにトッピングはチョコチップ。戦いの後では、好物もひときわ美味しかった。


Red Moon...
 


 周防朔柾は自宅にいた。そもそもの依頼主の御門忍にことの顛末を話す。過去の世界からやってきた指導者は悲しそうな顔を浮かべ、周防の労をねぎらった。
 そこへNRが顔を出す。飛行機でST☆Rを発つ前に、寄ってきたのだ。
「今回は世話になった。あんたの銃にもずいぶん助けられたよ」
「銃はもう駄目だ。探偵に転向するさ」
「腕は落ちちゃいないぜ。俺から見れば、今でも閃光のままだったさ」
「そうでもないさ‥‥」


 N◎VAに戻ったアレックスは千早アーコロジーに赴き、出来事をかいつまんで千早雅之社長に話した。
「なかなかに厄介な目に遭ったよ」
「そのようですね‥‥。星の都カムイST☆Rでは、あなたの夜の魔法の力も少々薄まったと見えます」
 ミラーシェードの瞳は、相変わらず静かだった。
「ああ。その通りだ」
 苦い顔で頷き、彼は別れを告げた。まだ治りきらない体の痛みを押さえ、デス・ロードは去っていった。


 空城真殊はST☆Rの墓地で、藤堂隊員の墓の前に立っていた。やはり彼がM∵C∵Aの構成員だった。札幌に向かう途中、遠隔地から操るエニグマのウォーカーで襲ってきたのも彼だった。
「貴方は物語の紡ぎ手としては三流だったわ。でも、貴方のことは覚えておいてあげる。私の伝う物語の中に、刻まれるのだから」
 彼女の取材結果はインフォST☆Rで報道された。アヤカシ関連の出来事は全て、M∵C∵Aの仕業ということになっていた。主を失い、各地で自らが正統だと名乗るM∵C∵Aの各派が、これにより騒ぎ立てることとなった。


 N◎VAは今日もやけに気温が高かった。ハザードメモリアルパークに響く本物か、あるいはスピーカーのセミの音が、暑さを強調する。
「やれやれ、あちーなー」
 タンクトップにイージーパンツのラフな格好でベンチに座ったNRはセミの声に耳を傾けていた。ブロッカーへの事後連絡も済み、今日もアイスが美味い。
 ふと見ると黒いコートを脇に抱え、ST☆Rで共に戦ったカブトがやってくるではないか。


"Wall of Sadness"NR most likes Ram Raisin

「よう、アレックス! 体は大丈夫か?」
「ああ、NR」 デス・ロードは手にした大きなボックスを掲げた。
「君には命を救われた。せめてもの礼だ。つまらんものだが、受け取ってくれ」
 アイスボックスの中はNRが何より好きなアイスクリームで詰まっていた。
「こいつはありがたい! ‥‥さっそく‥‥ひとつ‥‥その‥‥‥‥?」
 メタルマックスの手で中を掻き回していたNRの声がやがて疑惑を帯び、その手が止まる。
「あー、適当に選んでもらったんだが、何かまずかったかな?」
 死神との約定の護り手として評判の死の卿は、怪訝な顔で嘆きの壁の顔を見返した。

「ラムレーズンがひとつも入ってないじゃないか! 頼むよアレックス。俺の一番のお気に入りはラムレーズンにチョコチップのトッピングだ。二段重ねでバニラもいいな。今度からはそれをバケツで頼むよ」
「そうか‥‥。すまん。そこまで気が回らなかった」
 そうだった。この青年はこれほどの腕を持ちながら、何故かアイスの好みにずいぶん煩いらしいのだ。贈る前にブロッカーにでも聞いておけばよかったのだろうか。いずれにせよ、もう遅い。
 やれやれ。慣れないことはするものじゃないな‥‥

Death Lord Mistaked ...




And Here, The curtain dropped,
in the Majikal Lite of STAR ....
-XYZ-

Spesial Thanks to:
NFB
(N◎VA Fan Beginners)




 開始後すぐに思ったのですが、進行や演出は淡々と、逆にルール適用は正確に行われ、非常に新鮮な印象を受けました。考え方の根底が違うとマスタリングもやはり違うのですね。携帯判定を久しぶりに真面目にやってしまったなぁ。とかいって隠密+10を重ねて全成功してみるのですが(マテ)
 “ペルセウス”ウォーカーを常備化したエニグマや、<※※干渉>を重ねてアストラル界から撃ってくる呪殺師、<※紙一重><※彫像><※血脈:夜の一族>を重ねた黒の剣で動きを止め、<※※二天一流>の左手の剣で止めを刺す最後の敵ナイト・ロードなど、ルール的な作り込みはかなり多彩です。(その割にウェットな敵が多いのが面白いですね。)
 神業も全員全消費、獲得経験点も12点(NRは13)というかなりゴージャスな話でした。初対面の相手と場でなければもっと演技やら何やらに力を入れられたなと思うでゴザル。それにルーリングのスタイルによるその卓の雰囲気もありますからね。

 その後はファミレスで食事など。よく考えたら同日に行われたサークルEARTHレディースCONはうちにコンベンション情報掲載依頼が来ていたよ。いろいろいろいろあってグルグルしている頭の中で繋がらなかった(笑) だがMOONSHINE5プレ版BlakkListzはちゃんと入稿日の校正も済んだ! あの紙面とあのイラストとあの内容で出るぞ!

 まったくの個人的な余談ですが、オフラインのアクトでアレックスが倒れたのは久し振りかもしれません。1stの昔から数えても‥‥初めてとは言わないが滅多になかったような‥‥?




Animation Bar (Blue)
...... Pz TNR Offline Meeting / Open the Gate ......

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