Under a Blood Red Moon

scenario name from "Chicago Chronicles", of Vampire:The Masquerade and Werewolf:The Apocalypse

〜小粋にエレガントPLAY第7回 血の如く紅き月の下で〜
Movie】【前編】【後編】


 N◎VA最高の幻術師、青の魔道師こと占いじじぃ。だがしかし、彼も天草流と茶の味を分かち合った仲だ。
 老師の後ろには小奇麗なドレスを着た10代の少女がいた。だが、彼女は災厄の街の夜の世界で最も危険な相手だった。血族たちが集うサロン・ドルファンのあるじ。年経たエルダー・ヴァンパイアであるアルドラ女大公だ。
 星也が思わず銃に手を掛け、ゲオルグが魔剣シグムンドを抜くと一歩前に出る。
「女大公‥‥あなたが動かしているのかっ?」
「ええいゲオルグも待てい。双方場をわきまえい。ワシには空気が見えぬのじゃ」
 剣柳斎が場を一喝し、一触即発の雰囲気が和らいだ。
 アルドラ女大公率いるサロンの手のものは、この件に一切関わっていなかった。暴れだした人狼や吸血鬼はアヤカシの本能を刺激され、獣と変わらぬ存在として殺戮を繰り返しているらしい。N◎VA全体にそのような力を及ぼせるのは、神しかいない。
「いつもいつも後手だねぇ」
 シガレットチョコをくわえたユカがため息をつく。
「彼らに戦士の歌が聞こえてくるというのかな」
 呟くゲオルグの前で、青の魔道師は謎めいた予言を語った。

裁きの雷が空を満たす時
穢れを払いしものが目覚めるだろう
栄華の都は落とし子で満たされ
月の神は血の涙もて嘆くだろう

「人間の力でやるしかないのか‥‥」
 霧の騎士は魔剣シグムンドの柄を握り締めた。


Symbol of Red Taron & Black Spiral Dancers


 その日の夕方、アヤカシの騒ぎはN◎VA全域に拡大した。その上‥‥N◎VA以外のメガ・プレックスでも起こり出したんだ。
 アサクサの隅田川近く、『村雨道場』と表札の書かれた道場。あたり一帯に出現した人狼はみな、超一流の剣客であるここの主の手で一刀のもとに斬り捨てられていた。
 ぼくは真っ二つになった人狼の死体を調べると、お守りに手をやって精神を集中した。体の中の血の、神秘の世界に属する部分に、自分の内なる声に耳を傾ける。
 隅田川の南。淀んだ水の流れ。レッドエリアだ。あの中のどこかに、何かがある。


 星也はRV-Iを南に向けると、勢いよく水素タービンのエンジンを吹かした。来崎煉は脚に内臓されたIDA-10を起動するとそれに続く。天草剣柳斎も負けじと、両腕を組んだまま走りだした。
 魔法陣の中に姿を消したゲオルグとユカはレッドエリアの上空に姿を現した。既にレッドエリアじゅうにアヤカシが出現し、大変なことになっている。手元のポケットロンに転送した地図と重ねて出現地域をチェック。下水道と‥‥その先にあるハザードメモリアルパークに光点が集中していた。
 一行は死体で溢れるスラムを進んだ。行く先は廃ビルに住んでいるスラムの元締め、片目の隈(くま)さんのところだ。
 横開きの扉に戸惑うユカたちを尻目に、剣柳斎はこれぞ禅の心とばかりに中に入った。
「おお、おぬしじゃったか!」
 スラム内外の様々な噂に通じているクロマクも、もちろん天草流の心を持つ同志だ。隈は今時珍しい紙の地図を取り出すと、一行に説明しだした。
 メモリアルパークは以前あった何かを改造して造られた。地下には未だ空洞が残っており、そこに何かがいるという。
 入り組んだ道筋だったが、パークの地下までは下水道を通って行くことができた。幸い、入り口も近くのマンホールからで大丈夫だ。
「ねえ。まさか白いワニなんていないよね」
 問い掛けるユカに、片目の隈さんはニヤリと笑った。
「安心しろ。もういないさ」


こうさくいん「推定40歳、片目のクマさんはこう見えてクロマク,カリスマ,カブキ、今度は何と! 記念すべきエクスノフIRCアクト第一話『Terrible Insects』【後編】シーン7に出てきたのでしゅ!」
ボス「今度はそう来たか。うむ。聖人ジョニィの守護を誓った白騎士ブレンヒルドに、コルシオーネの裏切り者の情報を教えてくれた人物だったな。な、懐かしい‥‥(笑)」
こうさくいん「いい話だったでしゅねー。聖人ジョニィが気障なのでしゅ〜」
ボス「ふふふ。天使の子のジョナサン・コルシオーネももっとオフラインで舞台に上らせたいところだ。どうも財団キャストにも活躍の機会の多い者と少ない者がいるな。やはり立場に縛られたキャストは制約が多いのか‥‥」
こうさくいん「んんーんーんー、誰かや誰かの人気が密かに高いからじゃないんでしゅか〜〜〜(笑)」


 遂に隅田川からはディープ・ワン――災厄前の書物に出てくる海の怪物まで出現してきた。大変なことになった。ヨコハマLU$Tや北米、ブリテンでもアヤカシが暴れ出したという。キャンベラAXYZのあるオーストラリアでは、遺跡から本物のスプリガンを始めとする怪物が出てきたらしい。
 腐臭が鼻をつき、濁った川が足元でごうごうと音を立てるN◎VAの下水道を、ぼくたちは進んだ。しばらく進んだ先に怪物の死体があった。
 魚と蛙と人間が悪夢の中で交じり合ったような奇怪極まりない容貌。手と足にはひれがついており、水陸両方に適した体になっている。深きものども――ディープ・ワンだ。災厄前のクトゥルフ神話の怪物が目の前で現実の死体となっていた。近くにはアサルトライフルを持った兵士たちの一団の死体が転がっている。相討ちだったのだろう。特徴のある軍服や優れた装備ですぐわかる。203連隊の治安維持軍だ。
 奥に進む前に、ぼくは彼らの認識票を探すと持っていくことにした。どんなに酷いことをしてきたとしても、N◎VA軍もハウンド同様、この街を護ってきた。弔わなくてはいけない。あとで名前ぐらいはわかるだろう。

 地図によるとメモリアルパークの地下に当たるところまでやってきた時。視界が開けた。壁が滑らかで繋ぎめのない人為的なものに変わり、地下全体がぼうっと輝き出す。
 壁のスクリーンには、世界全体で起こったアヤカシ出現の様子が照らし出されていた。そして、その横に控える魔女が一人‥‥
「誰だ!」
 ぼくは銃を抜いた。


Symbol of Red Taron & Black Spiral Dancers


 一行を待っていた魔女はM∵C∵A四騎士のひとり、黄泉彩音(ヨモツ・アヤネ)だった。ハヤサスラ(速佐須良姫命)の神に仕えているという。
「‥‥ハヤサスラ様の声が聞こえる。貴様ら人間たちはこの星を汚し続けた。地球の意志に従って貴様らを殺すとしよう!」
 ローブの陰から現れる曲刀。そして魔女につき従うように、二匹の人狼が現れた。一匹は巨大なグレイブを両手で構え、真っ黒なもう一匹は一際鋭い鉤爪と皮膜を備えている。
「電波系ね」
 ユカはサンダーボルトライフル“雷辰爪”を構えるとぼそりと呟いた。
「なんにせよ、これ以上やらせるわけにはいかない」
 ゲオルグはいつものようにユカを法衣と盾の陰に引き寄せ、黒の魔剣シグムンドを抜いた。

ボス「グレイブを持ったワーウルフはトライブは人類抹殺を唱えるレッドタロン風、皮膜がある方がワームに汚されたブラックスパイラルダンサーズ風だそうなのでそのようにせよ」
こうさくいん「そのようにって言われても困るでしゅー。別のゲーム世界じゃないでしゅか〜!(笑)」
ボス「いや、RLが自分から言っているのだから仕方ないではないか。しかしWofDネタはしばらく続きそうだな。ていうかまずわしがやりそうではないか(笑)」


「逮捕令状をとる必要も、なさそうだな‥‥」
 星也の銃が輝き出し、秘幽体がその形を取る。だがワーウルフは驚異的な反射神経で射撃を避け、逆に襲い掛かってきた。ゲオルグの剣が唸り、その一撃を防ぐ。
 来崎煉の両腕のラバーが弾け飛び、中から千早オービットで作り出された改造型サイバーウェポンが飛び出す。だが、重サイバー戦士である彼女の猛攻にすら、ワーウルフの強い生命力は持ちこたえた。逆に黄泉彩音の燕返しの斬撃が、彼女に重傷を負わせる。
 星也の秘幽体が拳銃を独りでに動かし、光の槍を続け様にワーウルフの胸に撃ち込む。それでも人狼は止まらず、相討ちを狙って咆哮と共にグレイブを頭上に振りかざした。倒れた来崎煉が投げた短刀でようやく動きが止まった。そのまま、アヤカシは霧と化して消える。
「おぬしら! 天草流の力を見せいっ!」
 台詞の真偽はともかく、剣柳斎老人の一喝の声が一行に力を与える。銃を降ろしたユカは元力を使った。黒いワーウルフの体が紅蓮の炎に包まれ、そのまま姿を消す。
「ええいッ!」
 自分ひとりとなった魔女は、ユカを一体となって守るゲオルグに捨て身の攻撃を仕掛けてきた。二筋の斬撃が宙に舞う。
「過去の英雄はこんな時も、自分で道を切り開いたはずだ!」
 次の一瞬に起こったのはぴったりと息の合った反撃だった。真紅の小悪魔を庇いつつ、魔法の盾で攻撃を受け止めて身を翻す霧の騎士。サーコートの陰からユカが炎の弾丸を打ち返し、さらにゲオルグの黒の魔剣が一閃する。その上、霧を纏ったゲオルグの残像が頭上からとどめの一刀を浴びせた。
「ハヤサスラの神! 我の命を引き換えにその力を強めよ!」
 魔女は自らの命を神に差し出し、床に崩れおちた。


こうさくいん「SSSづいている今日のゲオルグは<※一心同体>4Lvでしゅねー」
ボス「これで盾による<メレー>+<回避>と回避サポートの二段階有利を入れた回避行動が護衛相手の代わりにできるようになる。なるほど使えるな。しかし護衛相手といつも距離を置いているデス・ロードにはやらせないことにしよう(笑)」
こうさくいん「これを使ってゲオルグに回避してもらってユカは<■自動反撃>、ゲオルグ自身は<■ク・フレ>+<※空蝉>で残像と一緒に黒の剣で2回反撃! 超コンビネーション反撃コンボでしゅ‥‥(ブルブルブル)」
ボス「なんという技だ‥‥(呆然) まるでPS2のデッドオアアライブのタッグ技のようだ。そういえば買ってから全然やってないのう」
こうさくいん「星也くんもエニグマ発動でしゅねー。1カット目からARが増えて攻撃できるのは強いでしゅよー?」
ボス「全員のプロットが尽きたころに発現させると、リアクションを封じてから一方的に攻撃できるな。‥‥いや、だがそれもイメージと違うような‥‥」
こうさくいん「一番オカシイのは天草老人の一喝攻撃でしゅね。<交渉>+<※集団催眠>+<※応援>で達成値20、敵味方全員の手札を2枚ずつ交換するのでしゅ!」
ボス「1枚分の精神ダメージと引き換えだな。全員がたじろいだり憎しみがわいたりしながらカット進行が続く‥‥だがしかしッ! この技の欠点が使用中に判明した!」
こうさくいん「エニグマにも効いてしまうのでしゅー。エニグマへのダメージは全部、主への肉体戦ダメージに変換されてしまうのでしゅ〜〜(泣笑)」
ボス「ダメだ! ジジィの一喝で星也巡査が顔面損傷や嗅味覚消失になるのはいかん! < ※霊護>を使え。エースでも使うのじゃ(笑)」


 魔女のそばのDAKスクリーンには世界の様子が映し出されていた。館山港近くで張られていた日本軍の防衛線が、遂にディープ・ワンに破られた。千早アーコロジーとヨコハマLU$Tのイワサキ城下町にも、遂にアヤカシが侵入しだしたという。
「どうしよう。あたし、ロンギヌスの槍なんて持ってないよ」
 ユカは相棒のゲオルグを振り返った。
「なら俺達が槍になろう。皆で頑張ればきっと、神殺しの槍にだって負けないよ」
 そして、一行に弾王から連絡が入った。占いじじいからの伝言だった。新星帝都大学に、あの神を封じる方法が書かれた書物があるという。


こうさくいん「新帝大付属図書館の司書の十六夜深雪(いざよい・みゆき)はEYEランドでフィーバー!にも出てきたXノフキャストの十六夜冬也(いざよい・とうや)の姉。タタラ,フェイト,マヤカシでもう600Expレベルだそうでしゅ‥‥(ガクガクガク)」
ボス「ちなみに口調はごく普通の丁寧な物腰だそうだ。幻月方面のIRCアクトに出てくるのだな。やれやれ説明もだんだん飽きてきたぞ。ところでみゆきというとうちの愚妹と同じ名だな」
こうさくいん「そんなの関係ないでしゅよ〜(笑)」
ボス「さて、シナリオ内でこの段階になると、世界中のアヤカシが外なる神と月の波動でなにかしらの悪影響を受けてしまうそうだ。ほれ、キャストレベルでもあちこちにこっそりいるではないか」
こうさくいん「LU$Tが大変でしゅー。神狩ぽんがよけいコワくなるでしゅ〜(@_@) コロッセオはどうでしか?」
ボス「ぬぬ‥‥『リリーちゃんは機械帝国創立に目覚めましょう』『いきなり3年かかるジークの大改造にとりかかるリリー』などと好き放題言っておったわ。‥‥ナゼあんなに楽しそうなのだ‥‥」
こうさくいん「ひひひのひ〜」


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「ええ、こちらです。私が管理している開かずの第13書庫の中にあるはずです」
 ぼくたちは司書の女の人に案内され、禁書が集められた書庫へと入った。本の数も中身も何時の間にか変わっているというこの部屋だけは、目録がまだ作れずにいるという。
 祝詞で書かれた昔の日本の本が見つかった。来崎さんはこういうのに縁がないらしく、ぼくと天草老人にしか読めなかった。
 ハヤサスラの神はあらゆる罪を背負い、罪と共に去ってゆく神だという。はるか昔、平安時代に一度封印されたと記録にあった。どうやら封印自体に何かが起こって、少し壊れてしまったようだ。
 封印された場所は日本の佐須良(さすら)神宮。無限に鳥居が続く神宮だ。といってもN◎VAから日本本国に行ける訳がない。星幽界から行くくらいしか方法はないだろう。
 だが、どうすればいいのだろう? 今の世界では、星幽界へと自分の意識を解放するのは、一部の力あるマヤカシにしか不可能になっている。この世界のあちこちにアストラルへの門が隠されているともいうけど、すぐに行ける場所などあっただろうか?
 その時、ぼくは琴音さんが教えてくれた話を思い出した。ホログラフの雪が降るクリスマス、あのパレードの時、天上の星々が集ったこの前のライブの時。特別な夜にあそこに行くたびに、ぼくの中の何かが感じていたものは本当だった。
 謎めいたミリオン・ライト社が管理する魔法の遊園地。夢を護る最後の砦twiLiteには、アストラルへの門が隠されているという。

ボス「(驚愕)なんと! そう来たか! わしはてっきりエクスノフチックな方法で佐須良神宮に行くものと思っておったわ。おお、ここでクロスオーバーする手はずだったのか‥‥(感涙) まったく気付かなかったわ」
こうさくいん「ボ、ボス〜。そんな大事なこと気付かなくちゃだめでしゅ〜(悲鳴)」
ボス「おおそういえば。同志エクスノフから事前に許可願いがあったような気がするな」
こうさくいん「あああー。忘れちゃダメでしゅよ〜(泣笑)」
ボス「許せ。コ●ケの後の酒の席だったのでよく覚えておらぬのだ。(←おい) なっはっはっは!
さて若干名残惜しい気もするがここで明かすことにしよう。Luna+shinEtwiLite Inner Park InformationBBSでの書き込みの端々に出てきた噂は本当である。twiLite及び世界の姉妹園にはそれぞれどこかにアストラルの門が秘せられており、互いに行き来することもできるのだ。一部の方々には設定のリンクのすり合わせや財団製のシナリオのプレイを通して既に明かされてきたな。これで夢が世界に広がるのだ」
こうさくいん「世界をまたに掛けて、ワールドモードな物語が作れるのでしゅね〜〜」


 人々の様々な想いが力となって集う魔法の遊園地twiLite。魔法の力に護られているとはいえ、世界がこの状況にあって遊びに来ている人はいない。《愚者の門》を抜けた中は静まり返っていた。
 アルティシオン園長の強力な幻術の力も、琳叡貴部長が呼びかけた龍の同胞たちの力も、この遊園地を護るので精一杯なのだろう。そして、世界に広がった姉妹園でも同じような事態になっているのだろう。
 静かに水が流れる中央噴水庭園《星々の泉》。ユカが近くの従業員用出入り口を見つけ、螺旋階段から下に下りる。セキュリティ要員も、今日は誰もいなかった。
 泉の真下に広がるドーム。総ガラス張りの天上の上には、人々が願いを込めて投げ入れていったコインの山とたゆたう水面、その更に上の夜空の星の光。泉から流れ落ちる水が滝となって、ドーム広間の中央を貫いている。
 滝の真ん中、中空に青白い光が満ちていた。そう、星幽界の旅人たちの出発地点だ。

 アストラル界側のtwiLite本園も、似たようなものだ。星々の光を宿した噴水が静かに水を湛え、四方に道が伸び、途中で切れている。地面に描かれた道標や松明の光が、距離も時間も関係ないアストラル界で、幾つかある姉妹園へとたどり着く助けとなっている。
 だが、アストラル界はすでに汚されていた。至る所に黒い空隙ができ、暗い淀みが蠢いている。
「あ、天草師匠〜〜!」
 注意して進む中、剣柳斎が護衛に呼んだ弟子達の一人が暗黒に飲み込まれた。手を伸ばして助けを求める声も空しく、彼は消えていった。
「は、放せっ! ワシは近藤を救うのじゃ。近藤〜ッ! あやつには身重の妻がいたというに‥‥」
 やがて一行は目指す場所にたどり着いた。アストラルの世界ではN◎VAと本国の距離も関係ない。鳥居を模した巨大な門には、剣柳斎と星也にしか読めない言葉で、『この門をくぐるもの、全ての希望を捨てよ』と書いてあった。


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 現実世界に戻ってきたのはいいけど、まだ異世界にいるような気分だった。空にはやけに明るい星が輝き、一際大きな紅い満月がぼくたちを見下ろしていた。
 無限とも思える数の鳥居を抜け、佐須良神宮の中に入る。巨大な沼が目の前に広がっていた。大きな五つの石柱が沼を取り囲んでいる。右から二番目の柱だけが少しずれ、傾いている。
 沼全体が生きているようだった。ごぼごぼと瘴気が湧き上がり、あちこちで泡が弾けている。靄に紛れてよく見えなかったけれど、中央には巨大な何かがいた。不定形の何かが蠢き、身じろぎしている。
 何なのかは分からなかった。ぼくらには分からないはずだ。あれは、ぼくらの世界の外側に存在しているものなのだから。


 ゲオルグが沼の水の中に手を入れて浄化を試み、倒れた石を伝って傾いた石柱へと近付く。
 あと数歩で辿り付くというところで、霧の騎士の周りの水面が泡立った。動けぬ主に害をなす侵入者を取り込もうと、落とし子が三体姿を現したのだ。一体は完全な不定形、だがあとの二体は薄緑の体の中に、黒い獣の輪郭が見えた。先に一行が倒したワーウルフの体に取り付いていたのだ。



「まずいな。これぞ天草流奥義、破邪の型ッ!」
 天草老人が妙な構えから叫んだ裂帛の気合の声が、拳の一撃と同じように不定形の落とし子をばらばらに打ち砕く。
 来崎さんが声にならない咆哮を上げて石段を蹴って飛び上がり、かつてワーウルフだったものに飛び掛かった。
 ぼくは残った一体に照準を合わせた。右目の中の照星が目標を捕らえ、至天煌に光が満ちていく。
「‥‥どんなに汚れていても、N◎VAは僕らの街だよ」
 光の弾丸が外宇宙の神の落とし子を貫く。ばらばらになったそれは、ふたたび原始の海の中へ消えていった。
 ゲオルグさんがこちらを振り返って頷き、結界のほころびに魔剣シグムンドを突き立てる。込められた魔力が、崩れた結界を活性化させた。


 ゲオルグの頭に、声にならない神の絶叫が響いた。そして何故か、ユカの生み出した炎が彼の体を包み込む。
 愛剣を失い、石段を伝って沼から出てきたゲオルグは、小さな相棒を見下ろした。
「ユカ。俺を焼き殺すつもりか?」
 真紅の子悪魔は黙って相棒の顔を指差した。耳に手をやったゲオルグは驚いた。緑色の血が流れている。最後の瞬間、外なる神は自分の一部をゲオルグの体内に侵入させようとしていたのだ。



 twiLiteの門をくぐって戻ってきた時、ちょうど朝日が昇るところだった。《ムーンヴェイル》の立体スクリーンで、世界じゅうから落とし子が消えていったことが報じられていた。
 終わったのだ。しばらくしてようやく、ぼくは画面の中でそのニュースを伝えているのが姉さんだったことに気付いた。


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 世界を救ったユカ・プルデーレはコルシオーネ・ファミリーのシマに戻り、顛末を話した。タタラ街にある小さなキリストの教会に行ってみると、若頭の“聖人”ジョニィが祈りを捧げているところだった。
「結局‥‥人間は、神様の敵なんですかね」
「マリア様はこの世界をお見捨てにならなかったし、人間が生きることをお望みだった。そういうことだよ。よくやってくれた、ユカ」
「え、アタシ何もしちゃいませんよ」
「ふふ。聖人ジョニィは何でもお見通しだぜ? でも――」
 マフィアに見えない優男はユカの頭をなでると、その顔を覗きこんで手を伸ばした。
「――聖母マリアの前で煙草はいけないな」
「ちぇー。シガレットチョコなのに」
 真紅の子悪魔は口を尖らせ、二人を見下ろす聖母像を見上げた。


 来崎煉はふたたび、ヨコハマLU$T中華街を歩いていた。彼女への指名手配も復活した。自らのクローンを探し出し、滅ぼしていく孤独な戦いはまだ終わらない。
「また、駄目だった‥‥な」
 雑踏の中の見覚えのある姿。MIBは帽子の陰で笑うと、彼女に会釈してきた。
「あなた方の活躍は楽しませていただきました。人間はいつも同じ過ちを繰り返す。何千年も、同じことを‥‥」
 謎のエージェント“N”は姿を消した。
 千の顔を持つこの男の正体は、約定により今はまだ明かすことはできない。


 ブラックハウンドが被った被害は甚大だった。ぼくの知っている同僚でも、知らないところでも、多くの死者と負傷者が出た。
 一応報告書も書いたけれど、上には当然信じられなかったようだ。その筋の事件を収めたファイルに保管されて、それで終わりだろう。
 生活安全課もずいぶん寂しくなってしまったけど、ぼくたちはこの街を護らなければいけない。東教官一人の死に、悲しんでいるわけにもいかないな。
 ニュースでは事態が収拾しだした世界の様子を映していた。世界中の警察機構でも、同じような騒ぎになっているのだろう。ハウンドのヨコハマ支部、北米N.A.P.D.、ロンドンH@ZEのスコットランド・ヤード‥‥。遺跡からアヤカシが現れたオーストラリアは大丈夫だろうか。AXYZ市警察は機能を回復しただろうか。ケルビムは? そういえば、あの時出会った、ペネロープさんはどうしただろう‥‥


 復興が始まったN◎VAでは、V.F.E.が募金活動をしていた。霧の騎士ゲオルグ・ブレナンは1ゴールドを募金箱に入れると、日本の佐須良神宮があるであろう方向を向いた。
「この世界は、人間だけにしか直せないよ」
 身を翻し、吸血鬼のさらなる秘密でも解き明かそうと自宅に向かう。
 だが書斎に入ると、耳掻きをもったユカがにやにやしながら霧の騎士を待ち構えていた。


 弟子たちが建物の復興に精を出す天草流道場。剣柳斎老人は二人の茶飲み友達――“青の魔道師”占いじじいと“葛西爺”葛西正元と縁側で静かに茶を啜っていた。N◎VA最高の幻術師も、クリルタイの事実上の日本政府代理人も、その心はもちろん、天草流と通じている。
「剣柳斎殿。こたびは御自らの力によるところが大きいようでござるな」
「いや。ワシの力ではない。若き者どもの力が、この世界を救ったのだ。うむっ」
 その時、遠くから赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。慌てたように、弟子の一人が駆けてくる。
「師匠! 近藤の、近藤の子が生まれましたっ!」
「おお! 残された妻は身重であったが‥‥やったか! どれ」
 草鞋を慌てて履き、抱かれてきた赤子に駆け寄る。
「おお‥‥。滅ぶものがあれば生まれるものがある。これぞ人の世の理よ」
「師匠! 名はなんとつけましょう?」
「決まっている。亡き父の名を受け継ぐのじゃ。強く生きる志を受け継いで育つように‥‥。そう剛志(つよし)、剛志じゃ!」
「師匠!」
「師匠‥‥!」
 さんさんと降り注ぐ陽光の下、名前を付けられた赤ん坊の泣き声が天草流道場に響いた。占いじじいは旧友の変わらぬ様子に目を細め、ただ茶を啜るだけだった。




And Here, The curtain dropped,
under the lite of brilliant Sun ....
-XYZ-


こうさくいん「大きい話だったのでしゅね〜」
ボス「うむ。神々にも発狂せずに立ち向かえるのもN◎VAならではだな。アストラルへ向かう方法がtwiLiteの門だとは思いつかなかったわ‥‥(笑) twiLiteと言えば、【キャンベラAXYZ】で、オーストラリアの姉妹園twiLiteキャンベラが初の舞台となったプレイレポート第三話『星明かりに抱かれて』が公開されているぞ。魔法の遊園地にこそ相応しい話だ。見て感動するがよい」
こうさくいん「次の話がいよいよリゾートらしいでしゅ。今度こそペネル様も主役なのでしゅ。水着でしゅ〜(>_<)」 ←バカ



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...... Under a Blood Red Moon / Paj.2 ......

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