殺人予告申し上げます

 ようやく帝都も涼しくなってきた。本日は異色セッションの日だ。


こうさくいん「帝都では天羅病が流行ってるでしゅねー」
ボス「うむ。まるでビョーキだ。おそろしや。近々西の方で流行っているのか確かめてこよう」
こうさくいん「合気チットを渡すのは楽しそうでしゅねー」
ボス「未プレイゆえ評価は避けよう。いやだがしかしVampireも忘れてはいかんぞ。『Guide to Camarilla』『Guide to Sabbat』に加え『Werewolf: The Apocalypse』も発売が決まったではないか。素晴らしい‥‥あのワールド・オヴ・ダークネスの深奥の闇が日本語で味わえるのだ‥‥。(悦)
財団キャストのWofD化も考えたぞ。しかし問題があるのだ。例えばリリー・クローデット→イタレーションXと聞いて笑えるか? エクスノフ的アレックスは→アサマイト・アンチトリビューだそうな」
こうさくいん「そんなマニアックなネタわかんないでしゅよー。なに言ってるんでしゅか〜〜(笑)」
ボス「うむ。同志Xノフとしか通じぬではないか。さて本日は遠方より客人が参ったのでセッションの運びとなった。しんいちキャスト総出演に加え、岩崎製薬のワルモノ共が夢の共演なのだ」



And so, they appeared on the Staj of Shin-Ichi Kozm .....

Handle: “スモーキー”ブレイク
Style: フェイト◎●,カゼ,カブトワリ Aj: 20代後半 Jender:
 一人乗り小型VTOLを操るフリーのジャジーなバウンティハンター。何枚ものハンター認定票、ぼさぼさの鳥頭に身軽な細身、煙草を手放さないところからこの名がついた。賞金が入らないと食事が野菜炒めになる。元組織の一員で、出身社会は火星。
Player: F.
▼モエニストF.チンがあろうことか渋い男性キャラです。ゲヘナも近いのでしょうか!!(皆さんV:tM買いましょう)
 ブレイクは元クグツチャクラレッガーでスタイルチェンジを繰り返してExp172。封印された<※バンザイ>であの最終話もやれます。目指せ、P4ピストルで刀受け。ビシャス様! でもモデルは外見はスパ○クですが中身はジェッ○だそうです。びばっぷ!(T_T)

Handle: “疾駆の狩人”神狩 裕也(かがり・ゆうや)
Style: カタナ◎,アヤカシ,ヒルコ● Aj: 外見23? Jender:
 ヨコハマLU$Tで圧倒的な力を持つ岩崎製薬、和知一派のブラックオプ要員。スーツを着込んだ端正な容貌の若者で、人を狩るのを何よりの悦びとする。偽装工作の為に一般には「特殊任務用の最新型強化人間」という情報だけが流れている。
しかし! その血の源は伝説上の鬼女、紅葉。神狩一族は失われた鬼の血を引く妖のものなのだ!
Player: X 【天真名井にて
▼「悪役だが悪人ではない」(逆だっけ?)、アノ神狩ぽんです。<※血脈:鬼の一族>は今は4Lvですが500exp版だと12だとか。これで能力値を上げてから<※羅刹>して敵をいたぶりだします。凶星相当の鬼の殺気もまとっています。ブルブル。巻末のモンスターリスト行き決定です。しかし社会戦のリアクション時に血脈を使うってドーヨ?
 WofD版はプロジェニターの岩崎製薬に改造された悪アナークかと思ったら、ガイア所属のシェイプシフターだそうです。ざんねん。(皆さんV:tM買いましょう)

Handle: “暗影の住人”羽田恭介(はた・きょうすけ) 【Profile in Deep Blue Ocean
Style: クグツ◎,カゲ,ニューロ● Aj: 23 Jender:
 岩崎製薬LU$T支社営業部広報課の社員。ヘラヘラした青年だが、悪名高い和知真弓課長子飼いの部下であり、懐刀としてブラックオプに当たっている。両親と死別した後に和知真比人に育てられたため、その内面にはイワサキグループと和知課長への忠誠心しかなく、人間としての人格は完全に破綻している。現実世界/電脳世界における隠密活動を得意とすることからその名がついた。
Player: 九龍
▼続いて和知ぽんの部下二人目。これまた眼鏡が光る悪クグツです。Shadow Stalkerだけにストーカーしてきそうでコワイですね。和知課長の部下はこんなのばっかです。恐るべき岩崎製薬。倒ス!(ギラギラ)

Handle: “ロビンフッド”ジャン・R・シルヴィス 【Profile
Style: カブキ◎,バサラ,マヤカシ● Aj: 14 Jender:
 黒猫ジルを連れた、青い目をした少年道化師。占いじじいの弟子の一人でもあり、奇跡の風と幻覚を操りあちこちの公園で芸をして回っている。かつてのtwiLiteのパレードでも思わぬ活躍を見せた。
実は精霊なので年を取らないとか、霧の騎士ゲオルグと同一人物であるとか、ブレカナ世界の人だとか、様々な謎がある。(らしい)
Player: 緋 【redman's homepage
▼緋隊長です。最近は「邂逅マトリクス、邂逅マトリクス!」と目をギラギラさせながらビョーキのように呟いています。今回は僕RLのtwiLiteシリーズのアクトでは登場してもレポートには登場できないジャン少年です。
 ジャンもビョーキ度Up。カドケウスの杖相当の本人の力で全系統の元力を使うようになりました。謎の生き物相当だった相棒のジルはニューロデッキ相当&本人のトランスフォーム相当に。アクト中にどんどん経験点も使って幽屋まで買ってExp192までいきました。グルグル。

Handle: “広報部の華”静元 涼子 【Profile
Style: クグツ◎,トーキー,ミストレス● Aj: 30? Jender:
 オーストラリア本社の中堅企業ニューセンチュリー・バイオテック・コーポレーション広報部2課対外取材班の主任。自分の立場と仕事を楽しむキャリアウーマン。好奇心の強い快活な女性で、社内でも慕われている。ハウンドに勤める弟がいる。カブトの肩を持つことが何故か多いらしい。
▼星也巡査のお姉さんの登場です。今日はコワイ人が多いのでジャンくんと一緒にか弱くブルブルするのです。小柄な彼女の背に隠れて遮蔽になるよう、ジャンの背の設定が少し縮みました。(おい) そう、彼女は一緒に並ぶと背の差があるのです。(誰と?)

Ruler: しんいち 【SUN Station
▼京都は仏大一味からしんいちさんが偶然遊びに来ていました。ふだんの仏大Styleだとそれほどロールプレイをしなかったりいろいろ差があるそうでRLを不安がっていました。いやだがしかし。ぷりんせすしんいちなら運命の天輪を十分に操れるはず!


Blakk Cat
 
 

殺人予告申し上げます
〜 殺人予告申し上げます 〜


 歓喜の街トーキョーN◎VA。空を貫く摩天楼から、何百枚ものビラがばら撒かれた。風に乗り、ビラは災厄の街じゅうに広がってゆく。
 そこにはこう書いてあった。
『殺人予告申し上げます。トヤマ社5周年パーティにて。貴方のお越しをお待ちしております‥‥』


 そのビラがいきなり私の目の前に付きつけられたのは、そう、月報を出して先月の交通費を精算し終わった時だった。
「あ、あの、課長‥‥? この前の取材費でしたら、きっちり計算して請求しましたけど‥‥」
 振り向くとそこには見慣れた課長の顔。こういう時ってたいていろくな事が起こらないのよね‥‥。
 予想通り、次はトヤマ社のパーティを取材してきてくれというものだった。トヤマ社はこの5年で業績を確実に伸ばしてきた製薬会社。出資はほとんど岩崎製薬だと言われているわ。でも、こうやって堂々と殺人予告が出ているのよ?
「大丈夫大丈夫。今回はちゃんと護衛をつけるよ。ほら、ちょうど来てもらったところだ」
 私の名は静元涼子。所属は、ニューセンチュリー・バイオテック・コーポレーション広報部。私たちの取材した出来のいいニュースはマリオネットで報道されたり、系列会社のプラグドNC・ドットコムがWeb上から公開しているわ。たまに私のことを広報部の華だなんて言ってくれる人もいるけど、これはナイショね。


 静元涼子の頭にその時浮かんだのは、彼女を無言で護ってくれるいかにもカブト然とした護衛だったが、課長が手招きする先にいたのはどう見てもカブトに見えない男だった。細身の体によれよれの上着、寝起きと大して変わらないようなボサボサの頭と眠そうな目。くわえ煙草の灰が禁煙のオフィスに落ちる。
 咳払いをして気を取りなおした静元涼子はにこやかに微笑みを浮かべると名刺を差し出した。
「どうも。わたくし、広報部2課対外取材班の静元と申します。よろしくお願いしますね」
「ああ、ども‥‥オレ、ブレイクっていいます」
 ブレイクはポケットをあちこち探るが、出てきたのは昨日寄ったBARのレシートだけだった。仕方なく裏に連絡先をペンで書くと、ひきつった顔を隠して微笑む小柄な女性に差し出す。


 蟻の子一匹通さぬヨコハマLU$Tイワサキ城下町。欲望の街を見下ろす岩崎製薬総本社アーコロジーの窓際に位置する広報課では、い和知真弓課長が部下に指令を出しているところだった。目標はもちろん、岩崎製薬の後押しでスタートしたトヤマ社の殺人予告パーティだ。
「準備万端ですよー」
 業務用タップを上回る没入性能を誇るイワサキ製の“NG-Arm-a”高機能IANUSとのコネクターに、様々な仕込み武器を揃え、羽田恭介が声をかける。
「‥‥見てきて欲しいのか、それとも片付けてきて欲しいのか。それをはっきりしろ」
 瞳の一番奥に鬼の魔性を光らせながら、神狩裕也が告げる。
「君に任せるよ。何か面白そうなことになったら、続けて調べてきてくれ」
 神狩が少しも上司と思っていない男装の女課長の返事は、いつもの如くどこまでふざけているのか分からないものだった。


 ジャン・R・シルヴィスは魔法の遊園地twiLiteの芝生で寝転んでいた。回りにはホログラフの蛍が舞っている。
 顔の上を歩いていた黒猫のジルがいきなり叫び声を上げ、主人の顔をひっかいてから外敵に身構える。
 近付いてきたのはカブト風の男だった。持っているビラを園内に撒いて欲しいという。
 きっとミリオン・ライトに許可をもらったんだろうと納得したジャンは、中央噴水庭園に赴くと道行く人々にビラを配って回った。
 しばらくしてから自分で紙の内容をよく眺めたジャンは凍りついた。堂々と『殺人予告申し上げます』と書いてあるではないか。よく考えると、さっきの男の顔をよく思い出せない。
 おりしもドロイドのひよこくんがつぶらな瞳で道化師を眺めていた。
「‥‥メ、メーザー‥‥。ど、どうしよう。うわーい!」
 ビラを放り投げて逃げ出すジャン。風に乗ったビラは中空に広がり、園内全域に渡ってパーティのご案内を完璧に知らせる結果となった。
 園内じゅうを逃げ回っていたジャンはやがて後ろから肩をぽんと叩かれた。
「あー、君、署で詳しい話を聞かせてもらえるかな?」
 振り返ると、何度か会ったことのあるブラックハウンドの静元星也巡査が真面目な顔でジャンを見つめていた。


 どういうつてか知らないけど、一晩留置場にいたジャンくんを私が引き取ることになった。まあ何度か会ったことはあるし、別にいいのだけど。そういえばあの子、身寄りがないみたいだけど、普段はどうしてるのかしら?
 ジャンくんの手品の幻術で、彼が危険なビラを撒く羽目になったいきさつが空中に映し出される。
 でも変よね。カブトみたいな人を護る立派な仕事の人が、どうして殺人予告状なんか出すんでしょう?


 容疑が晴れた少年を伴い、静元涼子は込みあう署内を出口へ向かった。
「でも静元さん。僕カブトだなんて言ってないのに、どうしてそんなに分かるの?」
 ほとんど上背の変わらない背後の少年の一声に、広報部2課の要は一瞬ぎくりとする。
「いや、だってそれはその、ジャンくんの魔法の幻影はいかにもそれらしかったし‥‥」
「なんでかなー。なんでかな〜」
 背後でゆらゆらしながら、少年は保護者と共に出口に向かった。


Blakk Cat
 


 そして、トヤマ社創立5周年記念パーティ当日。芸人関係にはセキュリティも甘い会場にジャンはアルバイトとして、他の面々は礼装で会場に入った。
 同族経営をしている同社の現社長はトヤマ・リュウキ。専務は社長の従兄弟であるモテギ・ツヨシ。社長の息子のトヤマ・ハルキは事業に失敗した経営には不向きな男だが、それ相応の肩書きだけは持っている。ハルキの妻、トヤマ・クルスは慇懃無礼な貴婦人だ。二人の8歳になる息子はトヤマ・シズカ。
 ほか、シズカの従姉妹にあたるトヤマ・セイは才能ある18歳の女子大生だ――トヤマ一族は内部でいろいろと複雑な血縁関係があるらしい。
 そして、トヤマ・クルスと親しくしているのがハーフのクールビューティ、レイカ・グレイリーだ。
 トヤマ・シズカはあまり喋らない、不思議な子供だった。喜ばせてあげようとジャンは得意の手品を披露し、何もないところから薔薇を取り出してみせる。
 シズカはぎゅっとジャンの服を掴むと、自分の仕事を代わりにやってと頼んできた。次のイベントでおいらん道中をやるトヤマ・セイたち一行にジュースの差し入れをするのだ。仕方なくジャンはこぼれそうなグラス満載のお盆を運ぶ羽目になった。
 “NG-Arm-a”型IANUSの没入時の性能はストリートで流れている御霊に等しい。意識を保ったままイントロンした羽田は各方面の著名人の集う会場内をチェックした。いるいる――イワサキ本社のお偉方に、表向きは千早重工の経理課長の御剣初、C.F.C.傘下の管理センターWumbからは社長代理の西九条陸人‥‥。要人の護衛には、夫が闇の世界に消えてから“盾の貴婦人”と二つ名を変えた羽也や、なぜか妙堂院由耶まで酒を飲みに来ている。


 私を見ると手招きをしていたので、とりあえず忙しそうな社長さんは置いておいて専務さんのところへ行くことにした。二人とも同じぐらいの年で、若いとはとうてい言えない。
「このたびは5周年、おめでとうございます。わたくし、ニューセンチュリ・バイオテック・コーポレーション社から取材に参りました」
「おお、記者さんか! いっやー、最近の記者さんはわっかいなー。いや、ぜひワシを記事にしてくれよ! 次期社長は決まったようなもんだからな! おお、写真、一緒に撮らんのか?」
「‥‥いえ、アノ、わたくしもうオバサンですからそんな‥‥」
 やたら金のアクセの目立つ必要以上に豪華な服。私を上から下まで眺めるあの目つき。よくいるのよねーこういうの。握手してあげたら手を放そうとしないじゃない!
 同族経営にはよくあることだけど、一族内部での仲はあんまりよくなさそう。社長はもう先は短いとこの人は思ってるようね。やっぱり、もし本当に殺人事件が起こったりするなら、権力を狙った内部の者の仕業か‥‥
「おお、こっちは岩崎製薬の方か。こりゃどうもどうも」
 何回か会ったことのある羽田恭介さんがこっちに挨拶に来たので終わるかと思ったら、まだこの専務は私の手を放さない。ちょうどいいから、羽田さんの手と上手い具合にすり替え‥‥ようとしたら、羽田さんの眼鏡が光った。
「‥‥ダメですよ、静元さん」
 あの口元の薄ら笑い。なんでパーティにはこんな人ばっかり集まってるんでしょう‥‥


こうさくいん「しんいちさんからの情報でしゅー。こういう成金イヤオヤジのロールプレイは、まにコンRL陣だと司会のお兄さんのあの人が上手いらしいでしゅよ〜(笑)」
ボス「おお、そうなのか。ああ、そうだろうなぁ‥‥(遠い目)」
こうさくいん「あああー、ボスー、何を納得してるんでしゅか〜〜(笑)」


 ややあって殺人予告の時間となる。時計を確かめた静元涼子は急に不安を感じ、自分を護ってくれるはずの護衛を探した。いない。だが背後を振り返ると、壁に寄りかかったまま煙草を吹かしていたブレイクが手を上げてきた。
(‥‥そうよね。依頼人と距離を置くカブトの人だって、世の中にはいるものね)
 自分的に納得した彼女は次のイベント、おいらん道中を待った。災厄前の日本の風習を再現し、トヤマ・セイを先頭に10人の子役が、しゃなりしゃなりと練り歩くものだ。

 だがジャンの横を子役の一人が通った瞬間、その子は苦しみ出して床に倒れた。悲鳴があがり、会場は騒然となる。青ざめるセイの前で、子供は息を引き取る。
 客の中にいた医者が進み出て、死体を調べた。新種の毒によるものだった。
「‥‥面白くなってきたな」
 似合わない礼服にワイングラスで騒ぎを眺めていた神狩が、危険な笑いを浮かべる。


Blakk Cat
 


 翌日。一部始終を撮った私の映像をチェックしてみたけど、手がかりになるようなものはなかった。面倒なことになってきたわね‥‥
 会社を出た時、ちょうどブレイクさんのバイクが目の前で止まるところだった。いつもの眠そうな目にくわえ煙草だけど、何気なくスピンターンを決めてくれるじゃない。
「何だったら、乗ってきますかぁ?」
「そうね。じゃあ‥‥トヤマ社までお願いしようかな」
「オーケイ。ちょいと飛ばしますよ‥‥」
 私が後ろにちょっと乗って、アメリカン・スタイルのバイクは朝の道路を走り出した。街頭のスクリーンには、もう昨日の事件――犯行に使われた新種の毒薬のことが載っていた。
 でもこの人、どうして煙草を吸いながら運転できるんでしょう?


 トヤマ社の周りは警察が囲んでいた。容疑者の一人として事情聴取を受けていたジャンがようやく出てくる。到着した静元涼子たちは、神狩がその場にいることに戦慄する。
 鬼一族の人ならぬ殺気に押され、企業警察の隊員たちは浮き足立って道を空けた。神狩の後に一行は続き、社内に入る。
 モテギ・ツヨシ専務は本日は出社せず家で休んでいた。涼子たちはアポイントメントを取り、がらんとした社屋を後にする。トヤマ・セイに聞くことがあるらしい神狩は一人消えた。
 そして、活動を始めた一行の動きを一人のニューロが追い始めるが、まだそれは気付かれていない。


 どこかへ行ってしまった黒猫のジルを探していたジャンは、いつの間にかトヤマ邸の庭に迷い込んでいた。庭ではシズカ少年が屈んで一心に何かをしている。
 捕まえたジルを抱いてよく見たジャンは戦慄した。シズカ少年は迷い込んできたらしい野良猫を、ナイフでゆっくりとつぶしているではないか。
「なんてことをするんだよ!」
「こいちは最初から死にかけだった。迷い込んできたのが悪いんだよ」
「相手が人間だったら、そんなことしないだろ?」
 ジャンは魔法の力を使って野良猫の傷を治した。息も絶え絶えだった猫はどうにか元気を取り戻した。
「ほら、人に親切にすると、自分もうれしいだろ?」
「‥‥でも、ママは全然喜ばないんだ」
 少年は人間として学ぶべき多くのことを、母親から学ばないまま育ってしまったらしい。
 シズカ少年はママに喜んでもらえるよう、一緒に頼んでほしいとジャンに言ってくる。しばし考えた後、ジャンは頷いた。かつて“まどろむ人魚”神室 結にもらったコインをポケットから取り出し、風の魔法で二つに割るとシズカ少年に渡す。そこでトヤマ邸のメイドか、お茶が入った旨を伝える声が聞こえ、少年は立ち上がった。
「僕と君の友達の約束。友達との約束は、僕は絶対に守るよ。だから今度、お母さんに一緒に頼みに行こうよ」

 だがそこへ賊が侵入してきた。まだ若い娘がいきなりシズカ少年の側に降り立ち、そのままさらっていこうとしていたのだ。
「ネバーモア!」
 慌ててジャンが叫ぶと、魔法が呼び寄せた200匹の黒カラスが飛んでくる。だが賊の娘が手を一振りするとオメガR.E.D.が現れ、全部のカラスを一瞬で細切れに切り刻んだ。
「こんなの、あきら向けの仕事じゃないんだけどなー」
 ぶつぶつ言いながら、ナチュラルボーンキラーはシズカ少年の肩に手を掛け、そこで新たな敵――いや、広い意味での同僚の姿を認めた。神狩と羽田がやってきたのだ。
「キミ、名前は?」
「‥‥シズカ」
 少年の答えを聞いた途端、キュートでポップな暗殺者の表情が一変した。何やら人違いだったらしい。
「あ、あはは‥‥またね」
 わざとらしい挨拶でごまかすと、天真爛漫な殺人者は地を蹴って逃げ出した。
「‥‥あきら君。次は小遣い、ないですよ」
 羽田の眼鏡が光る。少女の名は日向あきら。刃物フェチで人を切り刻むのに抵抗のない殺人者。様々な変遷の後、イワサキに雇われた彼女は和知課長の子飼いとなり、その暗く穢れた刃として動いている。羽田や神狩と同じ、岩崎製薬内に巣食う悪の帝国の尖兵のひとりなのだ‥‥
 まだ腰を抜かしているジャンを、もう一人の尖兵が見下ろす。
「くくく。あのままでは殺されていたな」
 ジャンは神狩の人にあらざる笑みに、余計に戦慄するだけだった。


Blakk Cat
 


 モテギ・ツヨシ専務の家も予想通り、成金趣味丸出しの豪邸だった。ブレイクと静元涼子が足を止める先で、中から言い争う声が聞こえてくる。ジャンが風の精霊に呼びかけ、声を増幅してこっそり伝える。
「‥‥嫁入り風情が大きな顔をしおって! このまま家に居座るつもりか? セイの奴に財産が行ってしまうではないかッ!」
「あなたこそ、ロクな能力もないくせに! 今の社長の後を継いだって、すぐに終わるのがオチだわッ!」


 呼び鈴を押してからふつうに挨拶して、アポ通りの面会と話。だいぶ疲れているようだったけど、専務のオジサンは話をしてくれた。
犯人に心当たりはなく、一族の者が怖がっている。そして最近、特にトヤマ・クルスと北米ハーフのレイカ・グレイリーの仲がいい。きっと、息子のシズカを次期社長にしたいんだろうと‥‥
 まさに骨肉の争いね。小さな子供まで巻き込んで続くなんて‥‥はー、企業世界が嫌になる瞬間だわ。本当に優秀で、よく構造の考えられた企業なら、こういう企業活動以外の余計な要素の入る同族経営は、あんまりやらないものだけど。
 あの専務さんも、これから大丈夫かしら。推理小説だったら、次の標的になりそうな感じよね。


 一行の見えざる敵から、治安維持軍の石見少尉を通じた社会的な妨害が徐々に始まった。そして、第二の殺人が起こる。標的は予想に反し、トヤマ・ハルキ、トヤマ・クルス夫妻だった。そして、二人の息子シズカ少年は行方不明になる。

「‥‥岩崎の者ですが。お邪魔してよろしいですか」
 100年に1度の奇跡。丁寧な口調で用件を述べる神狩の前で扉が開き、セミロングの18歳の娘――トヤマ・セイが顔を出した。
 目の前に座っているのが鬼とも知らず、娘はお茶を出すと話し出す。薬学研究に夢中になっている彼女は、自分が次期社長になるのはほぼ確定だろうと思っていたようだ。シズカ少年とは仲は悪くないが、時々怖いことを言う子なのが不安だという。
 物音がした。勝手口から入ろうとしたブレイクが音を立ててしまったのだ。急いで呼び鈴を鳴らした涼子が、取り繕って取材で寄ったことを告げる。
「お邪魔しまーす。急にごめんなさいねー」
 愛想よく入ってきたNCB社のレポーター御一行は、鬼が茶を飲んでいる風景に戦慄する。
 迷い込んできた黒猫がセイの膝の上にちょこんと乗った。その正体は黒猫のジルに変身したジャンだ。心を読むと、自分が社長の地位に就いて研究を続けるのもよいが、経営能力のない自分に不安を抱いているようだった。やがてニャーと鳴いた黒猫は、自分で扉を開けて出ていった。
「ひとつ忠告しよう」 端正な容貌を持つ鬼の末裔は去り際に娘を振り返った。「警備を厳重にしておけ」


「私は超電子頭脳メタトロン。今日は君達に楽しい噂話を教えよう‥‥」
 見えざる敵からメタトロンを通し、今度はWebから静元涼子に対する悪い噂が流れ出した。彼女は弟の星也に電話をかけると、警察筋から汚名を返上にかかる。いつも彼女を慕って協力してくれる部下たちから連絡が途絶えてしまった。彼女に特別な相手がいることが発覚してしまったのだ。
 元から火星生まれのブレイクには噂も効かない。そして、体内を流れる鬼の血潮を怒りに燃え立たせた神狩が、敵の看破に成功する。
 亜弓・S・エヴァール。イワサキ秘書課の女性ニューロ。トヤマ社の出資元のイワサキ本社もこの件に絡んでいたのだ。
 そして、トヤマ社の北米ハーフのエグゼク、レイカ・グレイリーが、悪名高いレイド&ルーラーのスパイであることが掴めた。R&Rは今度の製薬ラボの研究者を探している。全ての糸が繋がった。


こうさくいん「日向あきらも亜弓・S・エヴァールもしんいち'zキャストでしゅねー」
ボス「うむ。RLのキャストが総出演するのは予告通りの定番なのでそのようにせよ。しかし亜弓もあのような悪人だったのか‥‥。桃花源で見たときはふつうの秘書だったのに‥‥。敵決定だ。ガゼン敵だ。打倒イワサキ!」
こうさくいん「あああー、誓わないでくれでしゅ〜(笑)」


Blakk Cat
 


 シズカ少年はどこへ消えたのだろう? ジャンは猫占いを決行することにした。と言っても、黒猫のジルを放り投げてから歩いていく方向についていくだけだ。
 ジルが向かった先はスラムだった。手がかりが足りない。知り合いを頼ることにしたジャンは電話を取り出した。掛けた先はクリス・ハーデル。かつて、ジャンがtwiLiteに隠された秘密を知り、ヨコハマLU$Tへ飛ぶことになった物語で共に戦った相手だ。
 LIMNETプファイル攻勢広報担当官は電話の向こうで噂のクリスメモを取り出した。最近のLU$Tに満ちる霧の謎から隅に置けない静元女史の弟の話まで、何でも書いてあるクリスメモにはもちろん、N◎VAの動静も押さえてある。R&Rのエージェントがシズカ少年と一緒にいた所が目撃されていたそうだ。
 少年奇術師は礼を言って電話を切り、精神を霊査の力に集中した。シズカ少年に渡したコインの片割れがあれば、二つのコインを繋ぐ糸が見える。胸のマーテル・クロスが光りだし、現れたウィルオー・ウィスプが主を導くようにふわふわと飛んでいった。


 スラムに近いところにある小さな真教教会。途方に暮れた私たちは、ベンチで一休みしていた。ブレイクさんは煙草を買ってくるとかいったまま帰ってこない。はー、この街じゅうをしらみつぶしに探す訳にもいかないし、どうしましょうねー。
「ニャー」
 ふと見ると一匹の黒猫。なんだかジャンくんと一緒にいるあの猫に似てるわね。くわえているのは小さなアメジストにルーンの刻まれたブリテン風のお守り‥‥って、あの人にもらった大事なお守りじゃないの! まさか私のハンドバッグから自分で取り出したの? 猫の手で??
「ちょっと。あ、待ちなさい!」
 ぴょんと飛び降りると、黒猫はお守りをくわえたまま走り出した。時々振り返りながら、そのまま茂みの向こうに消えていこうとしてる。
 どうしましょう。ブレイクさんは帰ってくる気配も全然ないし、でもここで私がいなくなったら‥‥
 ブレイクさんとあの人からの貰いもの。うん、もちろんあの人の方が大事よね。


 ふたつを天秤に掛けて即決した静元涼子は走っていく黒猫の後を追いかけた。
 いつの間にか一人と一匹がいる場所は住む人のいない廃屋の庭になっていた。海の向こうのE&Bのような、迷路のように曲がりくねった植木を抜け、高い木立の中を進む。木立の中には泉があり‥‥黒猫の姿はいつのまにか消え、北欧風の衣装を来た奇術師ジャンがそこに待っていた。
「ジャンくん? 私のお守りは‥‥それより、あなた、どうしてここに?」
「ロビンフッドの魔法ですよ」
 にこにこすると、身を翻したジャンは泉の方へ一歩足を踏み出した。途端にその姿は揺らぎ、影のように消える。
 一人残された涼子はしばし呆然とし、そして考えた。
(でもあの子、会った時から不思議な子だったし‥‥? でも、本当にあの子が魔法使い――そう、あの人みたいな魔法使いだとしたら、これも‥‥。うん。そうよ。ガゼンそうに違いないわ)
 決心した彼女は恐る恐る足を踏み出す。途端に星幽界の門を超え、彼女は元の世界に戻ってきた。N◎VAの見慣れた雑踏、ストリートの片隅の工場跡の門、そして、その前で困っているいつものジャン。


「‥‥ジャンくん? あなた、さっきの服どうしたの? 猫は?」
「なんです? ああ、それよりこの先みたいです」
 いつもの何気ない少年の笑顔がそこにあった。不思議な子よね‥‥その時、聞き覚えのあるエンジン音が背後から聞こえてきた。
「どうしてここが分かったの?」
「勘だよ」 バイクの上で煙草を吹かしているブレイクさんがそこにいた。やがて羽田さんたちもやってくる。この先に、シズカ少年がいるはずよ。


Blakk Cat
 


 工場跡地を進むと、そこに数人の男女がいた。シズカ少年とその横のレイカ・グレイリー。そして、クグツとカブトの男に数人の護衛。
「ジャンくん、あれが、あなたの言っていた_カブトっぽくないカブトの人?」
 涼子の問いに、ジャンはあの迷惑なビラを渡してきた男の顔をようやく思い出した。
 羽田恭介が進み出ると、岩崎製薬の者であることを告げ、わざわざ名刺を出す。
「とっておいてくださいよ」暗影に棲まうクグツの眼鏡が光った。「冥土の土産に」
 途端に仕込まれたワイルド・カード型の爆弾が爆発する。
「ちょっと待ってろよー!」
 敵の数がずいぶん多いことに気付くと、ブレイクはバイクを反転させてどこかへ消えた。


 カブトの男の姿が消えた。中空からガイストの刃と共に現れた彼はそのまま神狩に体当たりする。
 人ならぬものの血が飛び散った。衝撃で吹き飛び、神狩の死体は壁を突き抜けて見えなくなる。
 轟音と共に、半壊した建物の上に“V-9 バット”改造型の小型VTOLが現れた。狭いコクピットの中にはブレイクがいる。機体下部のターレットが回転し、FL30機関砲が火を吹く。だが、クグツを護る護衛たちはそれにも耐えた。
 クグツは右腕のサイバーアームを展開し、伸びた間合いでジャンを標的に定めた。ニューロエイジの人間なら誰でも埋め込んでいるIANUSシステムの直接破壊。だが、羽田の仕込みK-TAIから瞬時に伸びた刃がそれを弾く。
「あなたたち、レイド&ルーラーの引き抜き部隊なの?」
 ジャンの肩に手を置いた涼子の問いに、非合法要員たちは思わず頷く。
「だいじょぶだよ、静元さん」 肩の手を放し、ジャンは高らかに呪文を詠唱した。
「天に住まう精霊よ、その炎の嵐もて下界に力を示せ。そして見えざる衣をまといし者よ、その姿を現せ。クーフーリンの名においてかく成せ!」
 炎の嵐が天から降り注ぎ、護衛たちを直撃する。そして滅びの風が吹き、姿を消したカブトを露にする。
「あの程度で俺を殺せると思ったのか。馬鹿者めがッ!」
 轟音と共に壁全体が割れ、死んだはずの神狩が再び姿を現した。傷は全て消えている。鬼一族の強靭な生命力は人間を遥かに凌ぐのだ。そのまま跳躍し、伸びた爪が一気に間合いを詰める。カブトの男は鉄扇で辛くも防いだ。
 地面を撃ち抜く機銃のフルオート射撃を避け、クグツの男は今度は低空飛行のVTOLに乗り移るとWINDS駆動部分を一撃で破壊した。
「うおぉぉぉ〜!」
 煙を上げて工場の向こうに墜落していくVTOLから、逃げ出すブレイクの悲鳴が遠くに聞こえる。
「あんな手の込んだ予告状、いったい誰が作ったのよ!?」
 問い掛ける涼子に、カブトの男は機密事項を何故か答えた。
「あれはあのガキの趣味だ。殺しも全部あのシズカがやったのさ」
「嘘だ。そんなはずないよ!」
 愕然として叫ぶジャンに、R&Rの男は冷たく笑った。「‥‥お前達は、あのガキの怖さを知らないな。‥‥ッ!?」
 鬼の魔性を発現させ、この世のものならぬ咆哮をあげて神狩が横合いから襲いかかってきたのだ。腸を引きずり出さんとする爪の一撃を防いだ時、疾駆の狩人は牙の生えた口で笑った。
「そうか。これではどうだ」
上顎と下顎に両手を掛け、そのまま全力で引き裂く。本当に真っ二つになった体から盛大に血が飛び散った。後に残ったのはR&R特殊工作員の死体ではなく、人間の体の破片でしかなかった。
「地獄でいつまでもほざいているがいい」
 返り血を全身に浴び、神狩裕也は口元を歪めた。

 残るはIANUSジャック破壊能力を持つクグツが一人のみ。羽田が飛ばした名刺型爆弾は、R&Rの新型対爆ボディーアーマーに防がれる。だが、そこへ現れた神狩が背後から胸を一撃で突き刺し、絶命させる。
 倒れながらクグツの左腕からサイバーの刃が飛び出した‥‥だがそこで終わってしまった。ジャンの魔法でどこからともなく現れた大量の黒猫のぬいぐるみが、彼をその下に押しつぶしてしまったのだ。
 一行のIANUSVTOLバットへのハッキングを狙っていたニューロの妨害もそこで終わった。作戦は終了したのだろう。


Blakk Cat
 


 バットは墜落炎上したが、ブレイクは焦げてチリチリの頭でその中から歩いてきた。
「‥‥この子を手土産に、引き抜き先の研究所に高飛びする手はずだったのですがね‥‥」
 観念したように、ハーフのクールビューティ、レイカ・グレイリーが呟く。犯行に使われた新種の毒薬は、天才的な知能を持つトヤマ・シズカ少年が全て調合したものだった。殺人計画の立案はその母のトヤマ・クルス。一族の財産と会社の経営権を狙ったもの。だが――誤算があった。自分を愛さない両親を「親失格」とみなしたシズカ少年は、親をも自分で毒殺したのだ。
「ふざけるな。愛ってのは自分で勝ち取るものだ」
 吐き捨てるように言ったブレイクは煙草に火を点けようとして――全部焦げているのに気付く。
「一番の毒は彼の中にあったようですね。さて」
 羽田の眼鏡が光り、いつもの営業用の笑みが戻った。
「すぐご理解いただける通り、あなたがたの選択肢はゼロです。我々岩崎製薬もこうした事態には慣れているし、すぐ環境は用意できます。悪いようにはしませんよ。どうです?」
「いや」神狩が冷笑した。「地獄へ行く手もあるぞ」
 だがそこで、ジャンが飛び出すとシズカ少年の手を取った。
「待ってよ。お母さんのことも、セイさんのことも、好きだったんだろう? もう、永遠に会えなくなるんだよ?」
 シズカは少年奇術師の顔と、自分を別の会社に連れて行こうとする女エグゼクの顔を交互に見やった。
「セイさんが会社を継いで、一緒にいればいいじゃないか。この世に償えないことなんてないんだよ。知らなきゃいけないことは、これから学んでいけばいい」
 やがてシズカ少年は頷き、一度だけレイカ・グレイリーを振り返るとジャンの方に駆け寄った。そのまま二人は歩き出す。
 何か言おうとした羽田を神狩が制し、そのまま二人を行かせる。
「泣けるなら上等だ」
 吐き捨てるように呟くと、ブレイクは身を翻した。全部焦げていた煙草を箱ごと投げ捨てると、頭を掻きながら去ってゆく。
「‥‥はー。こんなの報道できないわね」
 静元涼子は嘆息し、その後に続く。役者たちは舞台から一人、また一人と立ち去った。
 最後に残った羽田はまだ稼動可能なトロンを認めた。IANUSジャックを介してイントロン。天才少年の作り出した化学式の全てが光のストリームとなり、イワサキ製IANUSの中に吸い込まれていった。少し経てば、岩崎製薬製の新型化合物として蘇るだろう。


Blakk Cat
 


 ニューセンチュリー・バイオテック・コーポレーション傘下のWebニュース配信企業プラグドNC・ドットコム。トピックスで流れたトヤマ社の殺人事件のニュースは光の海から世界に伝わり、多くのニューロの目に止まることとなった。真犯人は不明のまま報道されたが、毒殺に使用された新型化合物についての詳細も、化学者たちの興味を大いに引いた。
 企業世界での見えざるやりとりが幾つか飛び交う。だが結局、LU$T岩崎製薬の羽田恭介が持ち返った化学式は公表されれば事件との関連性を疑われると危惧され、岩崎製薬から表に出ることはなかった。
 事件の報道にはもうひとつ面白い点があった。取材を伝えたのは同社のスタッフでもNCB社の社員でもなく、匿名のフリーのトーキーだったということだ。


 ふぅ‥‥。やれることはやったけど、何も変わらないし、あまり後味のよくない仕事になってしまったわ。あの少年が本当の人間の心を得ることができるといいけど‥‥。せめてもの気晴らしに、イワサキさんの邪魔はちょっとだけしてあげたけどね。
 私が会社を出て、夕暮れの街を歩き出そうとした時。聞き覚えのあるエンジン音が響いてきた。私の真横でスピンターン。ブレイクさんだった。
「なぁんだ。しっかり報道されてるじゃないか」
 新しい煙草に火を点けると、あの人は感心したように頭上を眺めた。高層ビルの合間のホログラフのスクリーンに、ちょうど私の取材したニュースが流れているところだった。
「‥‥これぐらいじゃ、世界は変わったりしませんけどね」
「そんなこたぁないさ。伝えることに意味があるんだよ」
 あの人はいつもの眠そうな目で笑いかけてきた。私は気を取り直して、手を差し出した。
「おほん。今回はブレイクさん、貴方のような護衛のカブトの方に護られて光栄でしたわ。また、何か縁がありましたらよろしくお願いしますわね」
「あぁ‥‥。んじゃあ、またな」
「ええ。私も用があるのでこれで‥‥」
 スピンターン再び。煙とかすかな風を起こして、アメリカン・タイプのバイクは悠々とN◎VAの街の中に消えていった。


 紅く染まった欲望の街を見下ろす岩崎製薬アーコロジー。
 広報部の和知課長は壁際の席にゆったりともたれながら、部下たちのよこした概略報告書をぺらぺらとめくっていた。
「へぇー。面白い結果になったねー」
「‥‥例の化学式とやらについては彼がもっと詳細な書類を作る。そっちを見ることだ」
 神狩裕也が一瞥する先では、羽田恭介が「よよよー」と言いながら必死に“広報”活動の任務報告書を作っていた。
「唯一の心残りは」ドアに向かいつつ鬼一族の末裔は言った。「また死に損ねたことだ」
 和知課長は手をひらひらさせて笑いながら答えた。
「大丈夫大丈夫。機会ならいくらでも作ってあげるよ」
 チャイムが鳴り、通常のクグツの就業時間が終わったことを全社に告げる。
「さて、今日はみんなで飲みに行こうか。羽田君、そろそろ終わらない?」
 上司の誘いに、羽田恭介は必死になって書類作成に精を出すのだった。


ボス「ふふふ。はっちゃけた面々と一緒に騒いでは広報部の華の名がすたる(笑)。ここで神業を全使用といこうではないか。《完全偽装》で身分を消して《暴露》の後には、余った《ファイト》も使うのだ」
こうさくいん「使わせるのはジャンの《天変地異》! ああー、ボス、やったでしゅー。これが布石になったのでしゅよ〜」


 スラムにある小さな真教教会。花壇に水をやり終えたジャンは、ベンチで考え事をしていた。
「‥‥ねえジル。僕たちは正しいこと、できたのかな」
「ニャー」
 返事は少し先から聞こえてきた。ジルはN◎VA最高の幻術師、占いじじいの腕の中から答えてきたのだ。だが占いじじいは何も言わず、ジルを撫でて手を放すと何処かへ去っていった。
「ニャー」
 駆け寄ってきたジルはジャンのポケットに頭を突っ込むと何かを取り出した。細い鎖で繋がれた、小さな紫の宝石に魔法の秘文字の刻まれたお守り。あの年の割にどこかお茶目な、あの女の人が持っていたものだ。
「あ、あれ? なんでまだここにあるんだろう? 返しにいかなきゃ。どこだろう‥‥そうだ、あの遊園地にきっといるよ」
「ニャー」
 ジャンは相棒と一緒に駆け出した。折しも背後の教会には鐘が鳴り、迫る夕暮れの中で時刻を告げる。傷も治った猫を抱いたシズカ少年が、教えを習いにちょうど教会の門をくぐるところだった。
 お守りを手に、空を見上げた少年道化師は立ち止まった。
 そこには悩む少年を祝福するように――あるいは穢れた世界を清めるように、淡くも美しい虹が掛かっていた。


 超新星の街の夜を静かに、這うように飛ぶVTOL。目標を発見したVTOLはサーチライトを点灯させた。光の円の中に浮かぶのは一人の女性――R&Rの密偵だったエグゼク、レイカ・グレイリー。
「よぉ」
 彼女が光の元を見やると、くわえ煙草の半眼の男が、操縦桿にだらしなく手を置いてうずくまるようにしてコクピットからこちらを見ていた。
「‥‥もう私に用はないはずよ」
「いや、オレの気分の問題でね。‥‥オレはあんたが大嫌いだ」
 機体の下で回転するFL30機銃。一気にフルオート。大口径の銃で人間を撃てば、穴が開く程度では済まない。レイカはその場で踊るように舞い、そして死体に変わっていった。

 死体を確認したブレイクは高度を上げた。コクピットの中から回りを見渡す。中央区の不滅の光の反対側に――深まっていく黄昏の中に、虹が見えた。
「なんで人間は、虹みたいに綺麗に生きられないんだろうな」
 3回の横転の後に反転上昇。古ぼけたVTOLはどんどん小さくなってゆき、やがて光点となって消えた。


 何処かのトロン端末の前。情報集約型ディスクレイの中にはR&Rに社員として潜入していたレイカ・グレイリーの情報と、そして彼女が死亡した旨が新しく伝えられていた。
R&Rにダブルスパイは無理でしたね‥‥」
 イワサキ秘書課の亜弓・S・エヴァールは呟き、端末に指を走らせた。元部下のプロファイルの上に赤いDELETEの文字が浮かび上がり、ディスプレイは真っ暗になった。


 LU$Tの繁華街に飲みに繰り出す岩崎製薬広報課の懲りない面々。
 大切なお守りを返そうと走り出すジャンとついてくるジル。
 人に会うために魔法の遊園地に向かっている静元涼子。
 星になって消えたブレイクの機体の光は、空を仰いだ全員の上で光った。そして、欲望の街に蠢く闇の一番奥で狩りに向かう神狩裕也にさえ、その光は見ることができた。


And Here, The curtain dropped,
in faint lite of rainbow and star ....
-XYZ-



こうさくいん「(感動)あああー、ブレイクが最後にかっこいいでしゅよ!(合気チットを渡すジェスチャーをする)」
ボス「(感動)もっとしっかりせいと常々思っていたがようやくやりおったではないか!(合気チットを渡すジェスチャーをする)」
こうさくいん「最近やっとビバップを見たらしいでしゅからねー。参加者全員がこのジェスチャーしたでしゅ。『人は分かり合える』のでしゅ〜(笑) (合気チットを渡すジェスチャーをする)」
ボス「これもエレガントジェスチャーに加えるか?(ニヤリング) (合気チットを渡すジェスチャーをする)」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。天羅零もやりたいでしゅね〜(合気チットを渡すジェスチャーをする)」
ボス「いやいやいや。V:tMも忘れてはならぬぞ。こうしてセッションは無事に終わったのだ。傾向から普段はやらない社会戦/ニューロ戦/推理物の色が濃い新鮮な物語となったな」
こうさくいん「そういえば海の向こうのAXYZではリゾートだったらしいでしゅ。ペネル様対ミュー*ア、水着対決〜(>_<)」←バカ




Animation Bar (Blue)
...... Now, I say Murder Announcement / Playing wiz Prinsess......

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