When Kross the Midwinter Nite

〜小粋にエレガントPLAY第10回 真冬の夜(マローズ)を越えるとき〜

Movie】【一幕】【二幕】【三幕


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Seat for honorable guests, "Altair"
「! あいつは‥‥デスサイズか?」
 貴賓席から第三幕を眺めていたイェレミーヤ・ゲールマンは、現れた本物の死神が発する強烈な殺気に腰を上げた。
「千の死をもたらしたって言う伝説の殺し屋だ。防諜局の連中も本気のヤツを送り込んできたってワケだ‥‥。おい、ケツに火がつく前にここは行くぞ。車を回せ」
 ちらりと階下に目をやる。観客席の向こうの通路、シャンデリアの下に、喪服の二人組が見えた。そういえば今日は確かレオニードの葬式だ。あそこの子倅どもがもうここを嗅ぎ付けたのかもしれない。
 立ち上がるイェレミーヤの肩に、部下が慌ててコートを掛ける。轟然と肩をそびやかし、《リューリク》の幹部は始まるであろう壇上の戦いを前にオペラ座から消えていった。


Date# A.D.2062 Winter
Lokation# Suburbs of Krasyanosk
 クラスヤノスクの方角からは煙が消えなかった。何もかもが燃えたのだろう。《シルヴァー・ファング》も、街の住人も、全てが滅びたのだ。  軍の手の回っている街を目指すことはできなかった。吹雪の中で意識を失ったソーファを抱え、アーレイは小さな洞窟で寒さをしのいでいた。
 緊急用の装備キットはいつも大事なところで役に立つ。なんとか火を起こすことに成功すると、大男と少女は火を囲んで向きあった。
「父さん、母さん!」
 長く気を失っていたソーファが突然大声を上げた。意識が混濁状態にあったようだ。
「‥‥心配すんな。父さんも母さんも安全な場所にいる。それより体を温めろ」
 アーレイはそれだけ言うと焚き火を示した。やがて意識のはっきりしてきたソーファは、だが眼帯の大男の顔をじっと見返した。青い大きな目に、大粒の涙が滲んでくる。
「お、おい‥‥」
 ミトラス戦役を戦い抜いた片目の狼は嘘が下手なのか、それともこの6歳の少女には人の心を読む力があるのか? アーレイの嘘はたちどころに見破られてしまった。
「‥‥‥‥それより、ちょっとこい。傷の具合を見てやる」
 困ったアーレイは彼女と目を合わせられず、キットの中を救急品を探して掻き回した。
「ミトラスで覚えた手当てがこんなところで役立つたぁな‥‥」


Winter Wolf


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Parkin' place of "Altair"
 ブレイクは横っ飛びに飛んだ。身が軽いとこういう時に役に立つ。賞金稼ぎが立っていた場所にイェレミーヤの部下のフルオート掃射が降り注ぎ、高価な鉢植えが穴だらけになった。
 破れた窓から駐車場に飛び降りると、ミハイルがリムジンを回してきたところだった。イェレミーヤ一味は3台の車に分乗し、市場の方に全速力で逃げていく。
 ブレイクが窓から助手席にもぐりこむと、相棒のミハイルはエンジンを思いきり吹かした。タイヤが軋みをあげ、ブレイクの体がまだ入りきらないうちから猛烈な煙を上げて発進する。
 イェレミーヤ達の車はクラクションと共に市場に突っ込んでいった。ブレイクたちの車も後に続く。悲鳴と怒号と銃声と盛大に屋台の壊れる音となんだかよく分からない音が辺りに満ちた。
 面々の通った後は大粒のメロンが吹き飛ばされ、果物詰め合わせが空に舞い、丁寧に組み上げられた屋台が崩れ落ち、テントが壊され、消火栓の水が吹き出し、何かの羽毛が撒き散らされていった。
「派手になるぜ。イヨッホー!」
 窓から出した手で天に向けてショットガンを乱射しながら、ミハイルは陽気に叫んだ。その横でブレイクは懸命に逆立ちから姿勢を戻すと、車内に潜りこんだ鶏を捕まえようと四苦八苦していた。
 大混乱の市場を抜け、イェレミーヤの車はハイウェイに乗るところだった。偉大なるレオニードの息子たちの車も後を追う。
「さぁて、楽しいショータイムの始まりだ!」
 楽しげに運転しながら、相棒のミハイルはショットガンの銃床で弾痕だらけのフロントガラスを割り始めた。途端に外の風が吹き込んでくる。
「おいミハイル!寒ィんだよ!」
 悪態をつくとブレイクは懐を探した。奇跡的にまだ収まっていたサングラスを見つけると掛け、大きなドラムマガジン式のSMGを取り出すとフロントガラスの残骸から前に構える。
 再び楽しい銃撃戦が始まった。互いの車にさんざん穴を開けあった後、エンジンをやられた敵のリムジンは速度を失い、脇の方に消えていった。
 部下の車を盾にして逃げ延びたイェレミーヤ・ゲールマンの車はハイウェイを降りた。そのまま巨大な遊園地建設予定地――《ドリーム・セメタリー》へと消えていく。

 静まり返ったパーク予定地には妖気が満ちていた。穴だらけの車を止めると、二人は車を降りた。灰色一色の回りには、ゴミ同然となったピエロやアトラクションの残骸が累々と続いている。レオニード・アルサノフの死体が発見されたのも、この場所でだった。あの偉大な男は、この陰気な場所で眠らされたのだ。
「行くぜ」
 慣れた手つきで手の中に9-WHピストルを閃かすと、ブレイクは相棒に告げた。ミハイルは無骨なBOMBピストルを抜くと、後に続いた。


Silver Cross


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Russian Internal Intellijense Beaurou "Krimzon Blade"
 ロシア軍対内防諜局。裏世界の住人に《クリムゾン・ブレイド》の名で恐れられる非公式活動専門のセクション。端末の前にいるのは年齢不詳のくすんだ金髪の女性。裏世界の全ての勢力が畏怖をもってその名を語る伝説のフィクサー“マローズの檻”。ロシア社会の真の支配者。
 電子の海に張り巡らされた彼女の網に魚がかかった。面白い魚が防諜局のことを調べていた。魚の名を調べるのも、予定のうちだ。
「お目覚めかい?何か楽しいことがあったみたいだね」
 意識を電脳世界から戻して頭を上げる彼女の側で、控えていた少年の顔をした悪魔が言った。
「予定通り網に掛かった。フール・フール、君に頼みたい」
「‥‥殺せばいいんだね。行って来るよ」
 はるかな昔、ソロモンの魔道書に蛇の尻尾に翼ある鹿の姿を持つと記された悪魔は微笑んだ。少年のものには程遠い、その本質を表す微笑み。

 “マローズの檻”は目を閉じた。天地が逆転したあの年のことは忘れられない。あの赤い空、生存者を容赦なく滅ぼしたあの吹雪。半分になった母の顔、暖炉で燃える父の腕、軍人たちの下卑た笑い、血溜まりに立つ自分。
 彼女は孤立した寒村で奇跡的に災厄を生き延びた。ここまで来るには長い時間が掛かった。狂信的な改革論者だった彼女は雪の祖国を覆う網を作り上げた。『ミールシステム』と呼ばれた災厄以前からの衛星回線も利用した情報ネットワークがロシアの全てを彼女に伝え、軌道からの『ミョルニルの雷』がロシアの敵の全ての頭上に振り下ろされる。
 もう少しだ。信じられない額のあの遺産を入手できれば、雪の迷宮に閉ざされた祖国ロシアを変えることができる。
 赤い天使のアイコンに意識を投影した彼女はかく語る。
「私はこの世界がどれほど愚かかを知っている。だから、負けるわけにはいかないのだ」


Blue Ice


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Glorious staj of Opera House "Altair"
『‥‥戦乙女の涙は癒しの涙。人を治す為に泣き続けて、私はもう泣けなくなった。命を粗末にしすぎたから、大事な時に泣けなくなった』
『‥‥死神は答えた。“夜の闇に包まれて、命の火は消えてしまった。 さぁ、貴方の息吹を分けておくれ”』

 左手に召喚された大鎌に炎が灯った。千の死をもたらして来た業火の炎。死神は鎌を振り降ろし、哀しき戦乙女の命を奪わんとした。
 だがその時、舞台に夜色の嵐が巻き起こり、散った火花の煌きに観客はどよめいた。死神の鎌を遮ったのはフィン・マックールの剣ではなかった。フィアナ騎士団の鎧の代わりに夜の色のコート、神々に祝福された円形盾の代わりに強化クリスタルの盾。古代の物語に似合う扮装が欠けていたが、見事な剣戟に観客は喝采を送った。

「ほう‥‥。紅玉を守る騎士の登場という訳か」
 業火燃え盛る神々の大鎌クロゥ・クルーアッハを退き、闇色のローブをはためかせたインフェルナスは相手を認めた。だが、邪魔に入ったカブトの男はその言葉を無視するように剣を抜いた。
「死の鎌の主はこう続けた。
『だが、戦続きで死の門をくぐる戦士の数が多すぎる。戦乙女フェンリス、汝までが我が領土に来たる必要はない。今宵は約定にあらざる時なれば』

とな」
 言葉と共に夜の色をしたコートがわずかにゆらめき、同じ色の炎が、床に向けられた剣の刀身を這う。
「これが正しい台詞だ。それとも――急ごしらえで間違えたのかい」
 不敵な色を目に宿して歌姫の前に立ちはだかる男。息を飲む観客。自らに相応しい敵を認めたインフェルナスは口髭に笑みを浮かべると、闇色のローブを翻した。
「フフフ‥‥そうか、お前が“デス・ロード”か。噂は聞いているぞ。勝負は預けよう。宝玉を追って次なる舞台に来るがいい」
 死神との約定の護り手として知られるその男にだけ聞こえるよう囁き、死神は再び現れた闇色の波動の中に姿を消した。一陣の殺気が消えた後には戦乙女と、黒衣の戦士だけが残った。舞台の上で繰り広げられた大立ち回りに、観客は総立ちで拍手を送った。


 ちらりと観客席に目をやったアレックスは、自分が劇の続きを期待されていることにようやく気がついた。近付いてきた白きフェンリスの前で仕方なく膝をつき、透明な盾を脇に置く。
 夜そのものの色を宿したコートがマントの如くその後ろに流れ、デス・ロードは勿体ぶって剣を捧げ持った。“アズュラーンの威令”の名のみが知られる銀の入った黒き剣、妖魔の王たる闇の公子が作らせたという力ある剣が、真紅の涙を胸に留めた戦乙女の前に恭しく捧げられた。
「白きフェンリスよ、エリューナの紅玉はあなたの内なる光。その光にこそ、我らは忠誠を捧げましょう」
 舞台にゆっくりと幕が降り切るまで、観客席からの拍手喝采が続いた。

Now Death Lord went to Russia


Death & Twin Gem


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Anterroom of "Altair"
「やっぱり、この宝石が狙われています。確かにこのエリューナの紅玉には、隠された謂れがあるんです」
「ああ。奴もそう言っていた」
 どうなることかと思ったが、観客は劇の続きと喜んでいたようだ。襲ってきたあのダンディな口髭男の名も分かった。“デスサイズ”インフェルナス。神々の大鎌クロゥ・クルーアッハを持つ正真証明の死神。炎と闇、畏怖の魔力と獅子の殺気を備えた死神。あの殺し屋は本当に一千の死をもたらしてきたという。宝玉を狙って本格的に動き出したロシア対内防諜局に雇われたあの男が、このオペラ座にソーファを狙って堂々と現れたのだ。
 決心したソーファは自分の身の上を話し出した。彼女の出生とあの紅玉に何かがあるのは知っていたが、事実はそれ以上だった。
 ソーファ・ユーリィ・パヴロヴァ、ロシア皇家に連なるパヴロヴァ家の最後の生き残り。十年前、傭兵の同士討ちに偽装された《クラスヤノスクの惨劇》を生き延びた彼女は姉と離れ離れになり、生き残った傭兵に連れられて吹雪の中を脱出した。
 まだ6歳だった彼女はその後、その傭兵の尽力でまったく新しい身分を手に入れ、軍の捜索を生き延びた。そして、教会で孤児として育てられた彼女は強く生き、そして今このアルタイルの歌姫として舞台に立っていたのだ。彼女がずっと携えてきたエリューナの紅玉と、姉のフレデリカが持っていたはずのエリューナの蒼玉には、ロマノフ王朝の遺産への鍵がずっと隠されている。最近になってそれを嗅ぎ付けた各勢力が、動き出してきたという訳だ。
 俺の注意を引いたのは彼女を救った傭兵の名だった。傭兵部隊《シルヴァー・ファング》の最後の生き残り、アーレイ・ドレスデン。そうだ。LU$Tの闘技場でウォーカーを駆っていたあの大戦帰りの大男、バーでカイビリンガを傾けていたあの片目の狼が、かつてこの歌姫を救っていたのだ。


こうさくいん「オペラ座で戦いでしゅよ〜〜o(≧▽≦)9゛ でもレオナの晴れ舞台の方が見たかったでしゅ〜(>_<)」
ボス「アクト前に万全の準備がされていたのは正解だったようだ‥‥。さてこのインフェルナスはみたび現ることになるのだが、解説せよ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。伝説の殺し屋のスタイルはカゲ◎,バサラ,カタナ●。<※転移>で現れ<※転送>で武器召喚も自在。<※修羅>+<※元力:炎/正>で攻撃してくるのでしゅ。<※空蝉><※影化>に映画版だから<■二天一流>まで使ってくるでしゅよ! アウトレイジ相当の神々の大鎌、SPOONコート相当の闇色のローブ、まさにアレックスと同キャラ対決でしゅ!(≧▽≦)ノ」
ボス「何を言う。アレックスコズムは世界にひとつしかないらしいぞ」
こうさくいん「ひひひのひー。このシーンはマカブル→インヴァルの神業の応酬なのでしゅねー」
ボス「いかにも。さてこのシナリオでは、このように途中のイベントの中で神業を先に使っている場面が幾つかある。興味のある御仁は探してみるのも面白いだろう。確かにクライマックスでキャスト/ゲストが互いに全神業をぶつけあうだけが使い方ではないからな。相手の残り神業が減っていることを踏まえつつ戦うのも演出への余裕が持てるし、スムーズな進行の助けとなることもあるだろう。テストプレイだとこの死神が倒れたのは様々な場面でだったそうだぞ」
こうさくいん「あれれでしゅー。インフェルンスはよ、よく見ると防御系神業がないでしゅ‥‥Σ( ̄口 ̄;)」
ボス「う、うむ‥‥。テストプレイではオペラ座のシーンでカブトにインヴァル直後に即死系神業を使われた時もあったそうな」
こうさくいん「そ、それは‥‥(@_@)」
ボス「登場してすぐに轟沈だ。なんとマ〜ヴェラ〜スな展開なのだ‥‥(笑)」


Death & Twin Gem


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# House of Fredelica, Again
 シルヴィオ・プルデーレは再びフレデリカの屋敷を訪れていた。同じロシアの月が輝くテラス。ストラディバリウスの音色が夜の中に消えていくのに耳を傾けていた彼女は、探偵が帰って来たのに気付くと出迎える。
「手間を掛けますね。大丈夫ですか」
「調子は悪くないよ。一番気になるのは君のことだ」
 蒼い瞳の射貫くような視線。教皇領の氷の大地の祝福を受けたプルデーレ家の筆頭、蒼氷の騎士。嘆息したフレデリカはうつむくと、真実を話し出した。
「‥‥そう、あの子は大切な想い出。たったひとつの希望。だから、生きていって欲しかったの‥‥」
 十年前のクラスヤノスクで死んだフレデリカこそが、目の前の彼女だった。軍に命を救われた彼女は後にロシア対内防諜局《クリムゾンブレイド》に属し、今に至る。局長“マローズの檻”が下したエリューナの双珠探索の命。だがその過程で、フレデリカは生き別れとなった妹ソーファが身元を変えて生きていることを知った。彼女が今も、双珠の片方を大事に持ち続けていることを知った。そしてフレデリカは、防諜局の手が妹に回らぬよう、事実を隠蔽したという。
 エリューナの紅玉、エリューナの蒼玉、ふたつの宝石にはそれぞれ6桁の番号が隠されている。合計12桁。ロマノフの遺産への扉を開くのに必要な暗号は20桁。残りの8桁は、フレデリカの亡き母ヴァイオレットがどこかに隠したというのだが‥‥?
「‥‥そんなこと、どうして今になって話す気になったんだい」
 シルヴィオが胸につけたホログラフの水晶が、ゆっくりと月夜の下で回転していく。
「シルヴィオ、あなたの前にいると口が軽くなってしまうから‥‥」


Blue Ice


Date# A.D.2062 Winter
Lokation# Safehouse of somewhere
 アーレイ・ドレスデンと少女ソーファの旅は3週間続いた。6才の少女はそれでも懸命に吹雪の中を歩き、最後には逞しささえ見せるようになった。
 手の回っていない街に潜伏したアーレイは裏社会のフィクサーと取引をするところだった。相手の名はイェレミーヤ・ゲールマン。ロシア脱出の算段をつけられる男だ。ひとつしかない窓からの光が、暗い室内を照らしていた。
「確かにパスポートも作れる‥‥ただし高くつくゼ」
「一人でもか」
「バカ野郎。そこいらじゅうに手配が回ってンだよ」
 《リューリク》と呼ばれるロシアン・マフィア特有の灰色のトレンチコートを着込んだ赤い髪の男は冷酷に告げると、組んだ脚を組み替えた。
「‥‥ソーファ。行ってろ」
 アーレイは背後に待つ少女に合図した。
「うん、待ってる。ずっと、待ってる」 アーレイの目をじっと見る少女を、イェレミーヤの黒服の部下たちが抱えていく。
「その子に何かしやがったら、殺すからなッ」
 狼の瞳を光らせ、男たちを睨みつけるアーレイ。イェレミーヤの方に振り帰った彼は、ジャケットの胸元から鎖のついた宝石を取り出した。フレデリカが妹を頼むと託した宝石。吹雪の中に留まった彼女が残した世界にひとつの宝石。だが、値打ちがあるような品は、他にない。
「‥‥これなら足りるだろう。あの子に新しい身元を用意してやってくれ」
「こいつは‥‥エリューナの蒼玉か?」
 葉巻をもみ消したイェレミーヤは青い宝石の持つ輝きをまじまじと覗きこんだ。「いいだろう。国外に出ないなら話は簡単だ。余った分はアンタにやるよ。契約成立だ」
「‥‥クズ野郎」 押し殺した声でアーレイは呟いた。
「誉め言葉だな」 後にファミリーの幹部となる男は、新しい葉巻に火をつけるとニヤニヤと笑った。

「ほんとうに、ここまでありがとうございました」
 逃避行は終わろうとしていた。ぺこりと頭を下げるソーファ・ユーリィ・パヴロヴァ。その頭をくしゃくしゃに撫でると、疾風の狼は別れを告げた。
「ああ。あばよ、嬢ちゃん」
 戦友たちの眠る雪の国ロシアの言葉で、アーレイ・ドレスデンは最後に呟いた。
「‥‥ブードゥー・ラット・フストリチッツァ・スヴァーミー・イショー(Буду рад встретиться с вами ещё:また会える日を楽しみにしている)」
「‥‥ダ・スビンダーニャ(До свидания:また会いましょう)」
 10年後に再会することになる少女と狼は別れ、互いの道を歩み始めた。


Winter Wolf


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Resting room of "Altair"
「なるほど‥‥。あの疾風の狼が子守りも得意だったとはな‥‥」
 俺が言うと、ソーファはくすくすと笑った。辛い過去を微塵も感じさせない明るい表情だった。強い意志を持って、あの時から生きてきたのだろう。
 確かに、いかにも戦場で煙草を吹かしているのが似合いそうなあの眼帯の大男に、そんな過去があったと思うとなんとなくおかしい。だが彼のお陰で、天使の声を持つ歌姫としてこうして栄えある舞台に立っている、今のソーファがいるのだ。
 彼女は胸に掛けていたエリューナの紅玉を外すとシャンデリアにかざした。真に貴重な宝石は、特別なカットの方法でその価値を世界にひとつのものとしていることがある。カットの仕方から、6桁の番号がこの紅玉には隠されているのだという。
「あの時はアーレイさんに、今はこんな風にアレックスさんに‥‥いつも私以外の人に護られ、私以外の人が傷付いてしまう。お願いです。私とクラスヤノスクに行ってください。この宝石を差し上げます」
「おいおい‥‥」
 真摯な表情だった。俺はその手を急いで留めた。「ソーファ。紅玉が真に輝くのは、歌姫の胸においてだ」
 E&B連合王国を起点に、凍れる大陸を縦断する大陸鉄道が、このサンクト・ペテルスブルグを通っている。あの北十字星の戦いの時、あの二人の剣鬼が対峙し、俺があのパンクを葬ったあの戦いの時、乗った列車だ。今は廃墟となっているクラスヤノスクまではここから近かった。
「切符なら支配人のロズモンドさんが手配してくれます。行ってくれますか?」
「ああ。あの時客の前で、忠誠の約束をしてしまったしな」


Death & Twin Gem


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# "Dream Semetary"
 SMGのドラムマガジンに弾を流し込みながら、ブレイク達は陰気な《ドリーム・セメタリー》を歩いていた。どこまでも続く陰鬱な道。その時、背後で小枝の割れる音がした。
 血気に早ってBOMBを撃ち込もうとするミハイルを止め、ブレイクは新参者を待った。出てきたのは白い外套に身を包んだ、金髪蒼瞳の青年だった。
「うわっ‥‥撃たないでくださいよ」
 シルヴィオ・プルデーレ。かつて教皇領に飛んだ時に賞金稼ぎの仕事で衝突し、ブレイクが折れてから何かと縁のあった男だ。復讐に燃え、喪服姿で銃を構える二人組を前に、のんびりした面持ちの青年は慌てて両手を上げた。
 シルヴィオは自分が“エリューナの蒼玉”を探していることを話した。ロシア対内防諜局も双珠を求めていること。ロシアン・マフィア《リューリク》が軍と一時的な協力関係にあること。そして、イェレミーヤ・ゲールマンが蒼玉を持っている可能性の高いこと。自分も同行するつもりであること。
「奴を殺すつもりなんですね」
「ああ‥‥」煙草に火をつけたブレイクは答えた。
「殺し屋は昔に捨てた。血をたっぷり吸った火星の赤い砂に捨ててきた。だが今度だけは殺す。偉大な男の敵討ちだ。‥‥それよりあんた、丸腰で大丈夫なのか」
「僕の武器は体の中に流れてますよ」
“蒼氷の騎士”の名を受け継いだプルデーレ家の長男は不敵に微笑んだ。白い外套がゆらめき、その周りに一陣の冷気の風が巻き上がった。
 ゴミだらけの行く手に燐光が灯った。壊れた街灯のように、一行を導くように、行く先の道の両側に灯っていく。明かりの導く先が、ぼうっと輝いている。
「奴が招待状でも出したのかね」
 ブレイクは煙草を投げ捨てると、ゆらりと歩き出した。


Silver Cross


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# Russian Internal Intellijense Beaurou "Krimzon Blade"
 塵ひとつないロシア対内防諜局の廊下。行き交うのはいずれも緑と黒の軍服に身を固めた将校たち。その腰に光る剣、紅い刀身の特殊サーベルこそ《クリムゾン・ブレイド》の名の由来だ。
 小気味よい足音と共に廊下を進む“白きフェンリス”フレデリカ。すれ違うのは紅い瞳をした男、“邪眼使い”アーク。
「‥‥行くわ。私はあの子を助けに行く」
「彼らの目的地はクラスヤノスクだ。だがフェンリス。これでもう敵同士だ。容赦はしない」
 少ない言葉を交わし、隊員たちはそれぞれの道を進んでいった。

 ところ変わって局長室。豪華な机の向こうに座するのは年齢不詳の金髪の女性、“マローズの檻”の腹心。物想いに耽るその表情から内面は読み取れない。 ロシア連邦内の全ての情報を握るフィクサー、軌道上のある衛星内を本体に持つ防諜局局長はかく語る。
「―――かくて、白きフェンリスは放たれた。劇中で彼女は死んだ。涙で人を癒す戦乙女も、自分の傷は癒せなかった。彼女を癒すものは人の涙でしかなかったのに、人は誰も彼女の為に泣かなかったのだ。
だが、戦乙女の命と引き換えに世は救われた。諸悪は滅び、世に平安が訪れた。
―――ならば、滅びるのは私の方か」


Blue Ice


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# "Dream Semetary"
 主の召喚に応え、ゴミの小山が動き出した。壊れたピエロやぬいぐるみの残骸が起き上がり、主の元へと歩き出す。夢の残骸はその牙を剥き、聖域に忍び込んだ侵入者を引き千切ろうと待ち構える。
「来たね」
 イェレミーヤの横に立つ小さな少年がその主だった。“フール・フール”。抜けるような空色の瞳に強靭な意志を秘めた、蜂蜜色の髪の少年。だがその正体は古代バビロニアの時代より二千年紀を生きたエルダーのアヤカシ、ソロモン王の伝えた72の悪魔の一柱。雷と稲妻の魔力を持ち、天使の姿をを取る虚偽の悪魔だとも文献は伝えている。対内防諜局の切り札として、一時協力している切り札である彼は「楽しいから」という理由で命を奪う本物の悪魔だ。
「でもおかしいな、イェレミーヤ。君の顔に死相が見えるよ」
「うるせェ。ガキは黙ってろ。返り討ちにしてやるだけだッ」
 《リューリク》の幹部は吐き捨てるように言うと、地面に突き刺した日本刀に手を掛けた。フール・フールはクスクスと笑った。
 壊れたピエロたちが唸り声をあげる先に、燐光に導かれてやってきた侵入者たちが姿を現した。青白いオーラをまとった、白い外套の青年。銃を手にした喪服の男たちが二人。フール・フールにはどれもが、周りの壊れた玩具と同じにしか見えなかった。


こうさくいん「遊園地の残骸、夢のかけらの中で対決。今度はブギーポップのにほひがするでしゅね〜」
ボス「くくく。これも緋コズムに欠かせんな(ニヤリング) さて敵の解説をせよ」
こうさくいん「らじゃーでしゅー。面白そうだから防諜局に手を貸しているフール・フールはハイランダー◎,カブキ,アヤカシ●のエルダーな悪魔。<※魔翼>でふわふわ飛びつつ<※イノセント>な笑顔から<※血脈:龍の一族(炎/正)>逆回りしてくるのでしゅー。ゲストから先に行動してくるでしゅよ〜。聖域相当のセメタリーの中で動き出すピエロやマスコットのトループは<※魔器の一族>でしゅね〜」
ボス「マルンバの魔笛、別名タイムウォークの魔法の正体がこれだ! 空中に時計の幻影まで現れるそうな。きっとFFチックなグラフィックに違いないぞ。(ニヤリング) スローモーションになるとジョン・ウーコズムのポシビリティが強まるので銃撃戦にはちょうどよいな」
こうさくいん「ここはロシアでしゅよ〜(笑) 改良版フール・フールはハイランダーがバサラに変わるらしいでしゅ」
ボス「ちなみにフルフル(Furfur)という悪魔は実在するのでその向きの人はソロモンの魔道書や悪魔事典の類を見てみるがよい。あの魔道書は『深淵』の魔族諸侯の多くの源ともなっているな」
こうさくいん「プロファイルがスゴイでしゅよー。年齢2792、生まれ社会がちゃんと<社会:古代バビロニア>になってるでしゅ〜(笑)」
ボス「なんと愉快な奴。まるでメトセラのようだ。カルタゴ崩壊の時はどこにいたのだろうか。いやそれはともかく続いてブレイクの敵、イェレミーヤ・ゲールマンだ」
こうさくいん「レッガー=レッガー◎●,カタナ。リューリクの黒いトレンチコートに降魔刀の<※二刀流>使い。<※ダーティ・インファイト>を重ねてブレイクを苦しめるのでしゅ〜。<※リフレクション>で弾丸も跳ね返してくるでしゅよー」
ボス「ゆらりと斬りかかるイェレミーヤの日本刀、かろうじて銃で受け止めるブレイク。まさにBEBOP最終回の感動再びではないか。(ぽわぽわ〜ん) さらばだブレイク、鳥頭の賞金稼ぎ。女ばかりのカレのキャラ陣では珍しく気概のある漢(オトコ)だったが、もう逝くのか。映画版なのに‥‥」
こうさくいん「まだ死んでないでしゅよ〜(笑)」


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# "Dream Semetary"
「ようこそ、ここは夢の終わる場所。君たちの夢の終わる場所だよ」
 どこかうそ寒い笑顔を浮かべる少年の横で、偉大なるレオニードを殺した敵が待っていた。復讐に燃える息子たちを待っていた。
「よく来たな、子倅ども」
 数人の部下共々《リューリク》のメンバー特有の灰色のトレンチコートに身を包んだイェレミーヤは、地面に突き刺してあった日本刀の束の中から2本を引き抜いた。かつてN◎VAのある国がまだ東洋と呼ばれていた頃から世界に有名だった、鋭利な刀。2本の剣を構え、長い赤髪の下からブレイクたちを睨む瞳には、尋常でない剣呑な光が満ちている。
 回りで動き出すゴミの山にはミハイルが向かった。それを横目にブレイクは胸に手をやった。
「オレは甥ぐらいだよ」
 銀でできた十字架のネックレスを引きちぎり、流れるような手つきでイェレミーヤに投げつける。銀の閃光となった十字架は弧を描いて飛び、誰もいない遊園地にショーの始まりを宣言した。
「父の形見の戦いだ」
 イェレミーヤの刀が銀の閃光に向けて疾った。同時に銃火が閃き、戦いが始まった。


Silver Cross


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# In the Interkontinental Train, Destination:Krasyanosk
 サンクト・ペテルスブルグを発ち、シベリア国境近くにあるクラスヤノスクへと続く大陸鉄道。ソーファとアレックスを載せた列車は、日が西に傾く雪原をひた走っていた。
 雪原の色が変わる頃、車両に異変が起きた。強烈な気配に押されて他の客の姿が消えた時。一陣の闇と殺気が突如車内を覆ったのだ。
 向かいの席に小さな火が灯った。視線だけを動かしたアレックスの目に、ローブの口髭男が口元に火を寄せているのが映った。ゆらゆらと揺れるその影には大鎌が映っていた。死神が煙草に火を点けていた。
 打ち合わされる神々の大鎌と闇の公子の剣。千の死をもたらしたロシアの死神は闇色のローブを翻して立ち上がり、夜色のコートの後ろにアルタイルの歌姫を庇ったデス・ロードと対峙する。
「一等客席は禁煙のはずだぜ」
 油断なく魔剣を向けるアレックスに、インフェルナスは鎌を退くと何事か呟いた。世界の魔術を修めた死神の唱えるオーディンの技。途端にソーファが意識を失い、彫像のように凍りつく。
「‥‥貴様。ソーファに何をした」
 一歩踏み出すアレックス。だがその頭に、後ろから大型拳銃が突き付けられた。その顔に緊張の色が走る。廊下から現れたのは、ロシア軍の緑の制服に身を包んだ赤い目の男だった。
「ダ・スビンダーニャ」 邪眼使いのアークは言った。
「噂は聞いているぞ、“デス・ロード”。だがこれで2対1だ。勝ち目はないぜ」
「ほう‥‥接近戦の限界は、3対1じゃなかったかな」
 だがそれでもわずかに頭を巡らし、死神の使いは不敵に応える。インフェルナスは神々の大鎌クロゥ・クルーアッハの矛先を変え、「待て、アーク。その男は私の獲物だ」と口調を荒げた。
 一触即発の状況が数瞬続いた後。アークのさらに後ろから、セイフティの外れる音が突如響いた。全員の注意がそちらに向く。4人目の人物は使い込まれた艶消しの大型リボルバーを突きつけ、深い声で言った。
「そう、ダ・スビンダーニャだ」
 2mを超える長身に軍用ジャケット。角刈りの頭に、傭兵特有の鋭い目。狼のもう片方の目には、眼帯が嵌っていた。
「‥‥久しぶりだな。随分と面白いことになってやがるじゃねえか? アークに、あの時の嬢ちゃんまでいるのか‥‥。とんだ同窓会だな」
 窓の外では、ロシアの大森林がただ流れていくだけだった。


Winter Wolf


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# "Dream Semetary"
 ブレイクのSMGが火を吹いた。ブレイクの怒り、ミハイルの怒り、レオニードを父と慕った全ての男たちの怒りが込められ、無数の銃弾となって吐き出される。
 だがイェレミーヤ・ゲールマンの動きは素早かった。穴の開いた灰色のトレンチコートが翻り、一挙に間合いを詰めると斬りかかってくる。フェイントの右、次に左。トンプソンの銃身を盾にしても防ぎきれず、なんとか間合いを立て直す。
 片方の刀を投げ捨てたイェレミーヤはコートの下から拳銃を引き抜いた。ひとつひとつに炎の元力が込められた9mm弾が、フルオートで襲いかかる。ブレイクには炎の矢の軌跡が見えたような気がした。奇妙な感覚だった。フール・フールと名乗った少年が魔笛の音を響かせ、妙な魔法を使ったのだ。虚空に現れた時計の針の幻が左に回り始め、六芒星の形を取った炎が散っていく。鉛に変わった空気の中を緩慢に泳いでいるような、時間が逆に回っていくような妙な感覚。シルヴィオの力の前に氷の柱と化したピエロが、回りで粉々に砕けていく様子がはっきりと見える。
 幾筋もの炎の矢は、ブレイクの前にそそり立った蒼い氷の壁に阻まれた。彼が加勢してくれたのだ。燃え上がった元力弾は、氷の壁を道連れに消えていく。
 腰から拳銃を抜いたブレイクはひたすら撃った。だが父の敵は倒れなかった。閃いた刀が銃弾をことごとく刎ね、燃える銃弾がブレイクの体を貫く。腰に焼けるような痛みを感じ、痩身の賞金稼ぎはのけぞった。右手から銃が離れていく感覚、灰色の地面に倒れていく感覚、シルヴィオの力の余波で霜の降りた地面の冷たい感覚が、やけにゆっくりと体に伝わってくる。
 右手に銃はなかった。左手にひんやりと冷たいものが触れた。弔いの戦いのしるしとして投げつけた十字架が、イェレミーヤの刀で脇に払われた銀の十字のネックレスがそこにあった。
 力を振り絞って起きあがったブレイクは左手を閃かせた。氷の粒と一緒にネックレスが宙に舞った。セメタリーに満ちる陰気な燐光と、地面で燃える炎と、蒼氷の騎士が呼び出した清らかな雪の光と、すべてを照り返して十字架はきらきらと輝いた。
 右手を十字架に向ける。袖の中から現れた最後の9-WHピストル。一発、二発、三発。一発ごとに弾かれ、回転して方向を変えた十字架は神の御許に召されるべき人物の元へと届いた。弾層が空になった時、銀の十字架はイェレミーヤの胸に深々と突き刺さっていた。


Silver Cross


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# In the Interkontinental Train, Destination:Krasyanosk
「アーク‥‥。今さら聞きはしないが、あの時何故」
 アーレイ・ドレスデンの声と共に4人が同時に動いた。至近距離からの射撃を驚異的な速さで避け、アークは振り返るとBOMBを連射した。
「お前の弟はもう死んだ。どうしてだ」
 ソファーに飛びこんで銃弾を避けると、アーレイは更にリボルバーを撃ち込む。割れた窓ガラスが車両じゅうに飛び散った。その向こうでは死と夜の領域に属する二人が刃を交えていた。不利を悟ったアークは車両の隅の闇の中に退いた。
「一度戦いが始まったら、筋を曲げずに立場を貫くものだ。善悪の基準は立場が決める。お前の知っているアークはもういないのさ」
 十年の間に、かつての戦友はその血に流れるアヤカシの力を強めていた。支配の魔力を持つ紅い片目の光を残し、アークは闇の中に霧と消えていった。


Winter Wolf


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# In the Interkontinental Train, Destination:Krasyanosk
「神々の大鎌クロウ・クルーアッハ‥‥ならば、このアズュラーンの威令に相応しかろうな」
 剣に夜の炎を灯し、俺は口髭男に斬り掛かった。だが業火の走る大鎌がそれを遮り、突然の蹴りが俺の体を捕らえた。耐え切れずに後ろの壁に叩き付けられ、体勢が崩れた時。インフェルナスの大鎌が振るわれた。ただ一度、ただ一度の斬撃だけで、車両じゅうの座席が切り裂かれていく。俺の胸でドルイドの護符が光を発し、致命的な一撃を防いでくれた。
 光を操作し、剣の軌跡を霞ませて再び攻勢に転じる。奴が避けたところで床から現れた漆黒の槍がその足元を捕らえた。やはり倒すことはできなかった。
「なるほど‥‥次なる舞台で待っている」
 自分の傷を認めると、インフェルナスは鎌を退き、中空に浮かび上がった。そのまま闇色の波動の中に消えていく。オペラ座から消えた時と同じ手だ。奴はまた、クラスヤノスクでソーファの前に現れるに違いない。


こうさくいん「こっちは大陸鉄道で銃を向け合うのでしゅ〜o(≧▽≦)9゛」
ボス「ベルスタァやFACE/OFFもかくやだな。さてアーレイぽんのかつての戦友、今は防諜局の目指すロシア再建の理想員に共鳴し、その一員となっている“邪眼”使いのアークは《霧散》で退場している。彼のことも解説しておくがよい」
こうさくいん「カブトワリ◎●,アヤカシ,カブト、実は<※獣の一族>なのでしゅ。東欧の魔女の血を引くという設定でその瞳に<※支配>の魔力があるでしゅ。防諜局装備のアバディーンで<■自動反撃>から<※ガンフー>してくるのでしゅよー」
ボス「それを使ってあるスペシャルな技を使ってくるのだがそれはとっておこう。ひとり十年前の時系列を歩んでいた軍人役もついに合流、いよいよだな。
 さて次は同時進行カット、所変わってクーデグラで投げた十字架が決まったブレイクのシーンだ。ああ見えて最後は女のために死んでしまうのか。さらばだブレイクぽん‥‥(嘘泣)」
こうさくいん「だから死なないでしゅよ〜(笑)」


Death & Twin Gem


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# "Dream Semetary"
 胸に十字架を突き立てられたイェレミーヤが倒れていくのも、ブレイクにはやけにゆっくりに見えた。その手から刀が離れ、首元からちぎれた何かが宙空に舞い、きらりと輝く。
 “父”の敵が倒れた時、その向こうにあの不気味な少年がいつの間にか立っていた。フルートの音色は止まっていた。時間の流れが急速に元に戻っていった。その手の小さな拳銃からは硝煙が立ち昇っていた。ブレイクとまったく同時に、背後から彼も撃っていたのだ。
「ほぅらね、僕の言った通りになったよ。彼はこれからの舞台に相応しくなかったんだ」
 古代バビロニアの悪魔はにこにこと笑うと空中に浮かび上がった。
「君たちの絶望はまだ続く。どんな終わり方になるのか楽しみだ。絶望に震える君たちがどんな顔をするのかね」
 フール・フールの姿はそのまま消えていった。同時にピエロの残骸たちが動くのをやめ、セメタリーに満ちていた陰気な燐光が消えていった。

「フフ‥‥もう、月がよく見ェやしねえ‥‥火ィ、くれねえか」
 仰向けに夜空を仰ぐイェレミーヤは息も絶え絶えだった。よろよろと近付いたブレイクは黙って煙草を差し出すと、懐からライターを取り出した。
「‥‥無駄とは思うが聞いておこう。なぜ殺した」
 側に立つミハイルから、大きなBOMBピストルを受け取る。大きく紫煙を吐くと、《リューリク》のボスは賞金稼ぎに答えた。
「邪魔だったんだよ‥‥。権力、金‥‥誰だって欲しいモノだ」
 ブレイクの榛色の瞳に炎が灯った。「権力?金? オレには必要ない。必要なのは、好きな時に好きなことができる自由さ」
 13mm弾を続け様に撃ち込む。イェレミーヤ・ゲールマンの体が何度か震え、動かなくなった。男たちの復讐は果たされた。レオニード・アルサノフの名誉は守られたのだ。

 死体から少し離れた場所に落ちていた光を認め、シルヴィオ・プルデーレは拾い上げた。精緻な彫刻の中に封じ込められた蒼い光。彼の振るう蒼氷の力と同じ光。間違いない。“エリューナの蒼玉”だ。推理通り、この男の手に渡っていたのだ。
「‥‥僕が探しているのは奴じゃない」
 宝玉を外套の下にしまうと、彼は立ち上がった。フレデリカの元へ届けなければならない。そして、彼女を問い正さねばならない。


 ブレイクたちが葬儀場に戻った頃、一通の手紙がブレイク宛てに届いていた。差出人はレオニード・アルサノフその人。消印は十日前。生前のレオニードが残した最後の手紙だ。
 手紙にはセピア色の写真が同封してあった。家族だけの演奏会だ。ヴァイオリンを弾く姉、それに合わせて歌う妹。二人を見守る母親。映っていない父親もきっと、和やかな表情で家族を見守っているのだろう。
 手紙にはレオニードの過去が記されていた。まだ若かった頃の、上流階級の令嬢ヴァイオレットとの叶わぬ恋。ロシア皇家に連なるパヴロヴァ家の彼女と裏世界に生きるマフィオーソでは、身分と世界がが違い過ぎた。だが二人には子供もできた。フレデリカ、ソーファ、二人の姉妹。
 レオニードはほとんど家族の前に姿を現せなかった。父らしいことは何ひとつできなかったと悔やんでいた。それでも彼女たちを遠く空見守り、二人の娘が惨劇を生き延びたことを知った時は喜んだ。
 手紙の最後にはこう記されていた。
『これから、連中と話を付けに行くつもりだ。これが父らしいことを何一つできなかった男の、少しでも罪滅ぼしになれば良いと思っている。‥‥この手紙が届く頃には、俺はこの世にいないかもしれない。そのときは、俺の代わりに娘たちに伝えてほしい。“扉を開く鍵は一番大切な思い出の中にある”のだと。
いつもいつも、厄介ごとを押し付けてしまってすまない』と。
 偉大なる男に秘密があったことに、ブレイクは薄々感づいていた。シルヴィオの話で全てが繋がった。全てはクラスヤノスクに、ロマノフの遺産への鍵の元に集う。
「どうするんだ、“スモーキー”」
 かつてのレオニードの腹心の部下、良き相棒として戦ってくれたミハイル・フラトコフが問い掛ける。
「親父の最後の頼みなら、果たさなきゃな」 ブレイクは短くなった煙草を投げ捨てた。
「親父の子は守らなきゃならん。クラスヤノスクまで飛んでくるよ」
 鳥頭の賞金稼ぎは相棒に向き直ると頭を掻き、それから手を差し出した。
「オー・ヴォワー(さようなら)」
 ミハイルはニッと笑うと、相棒の肩を叩いてその旅立ちを見送った。


Silver Cross


Date# A.D.2072 Prezent Day
Lokation# In the Interkontinental Train, Destination:Krasyanosk
 刺客たちの去った大陸鉄道は静かだった。“デスサイズ”インフェルナスが去ると共に、ソーファに掛けられた呪縛も解けた。列車は大森林を抜け、静かにクラスヤノスクに到着しようとしていた。大立ち回りで掠り傷を負ったアーレイは、十年前に自分が救った少女に包帯を巻いてもらっていた。あの後ロシア正教会で育ちながら、こうして多くの人々の手当てをしてきたのだろうか。
「‥‥なんだか、あの時と逆ですね。こうしてわたしが、アーレイさんの手当てをするなんて」
「ああ。そうだな。ありがとよ」 腕を試しに動かしてから、アーレイは煙草に火をつけた。ミトラスを駆け抜けた時も、ロシアの雪の中をこの少女とさ迷ったあの時も、いつも胸にあった同じ銘柄。
「それに、あんたがこんなにいい女になってたとはな」
 紫煙を大きく吐き出し、見違えるように成長した少女にニッと笑いかける。一瞬、目を丸くしたソーファは明るく笑い返した。
「それを言うなら、疾風の狼の意外な過去もだな」
 窓際でアレックスが言う先で、列車が速度を落とし始めた。今はもうあまり人の住んでいないクラスヤノスクが、エナジー・スクリーンに守られた窓の外の眺めに入ってきた。




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