エレガントN◎VA第12話 百合の咲く場所で -La fleur de lutte- 愛の御旗の元に。(嘘) ヒューヒュー!

〜小粋にエレガントPLAY第12回 百合の咲く場所で〜
-La fleur de lutte-
前編】【後編】


 “クラブ・テネブレ”は地下含め5層に分かれている。1階から3階までが吹き抜け構造の広いダンスクラブ、ゴシックと夜の匂い香る“テネブレ”。
 地下にはアヤカシの一族が巣食っているという“ル・パライス”(宮殿)。そして4階は、完全な防音処理のコンパートメントの中でフィクサーたちが契約を交わす、“グラシエラ”(氷室)となっていた。治安の悪いソドム街の多くの勢力が、ここに拠点を持っている。店内は武装も自由だが、それ故に誰もが武器を抜かない中立地域となっていた。

 アルフレッド・メヒューマンの指示に従い、ベイビィ・トークと橘芙蓉は一足先に到着していた。二人の召使が了承したように頷き、テネブレへの門たるゴシック調の重い大扉を両側へ押し開ける。
 吹き抜け3階分の広さのあるクラブに満ちる夜の大気が、二人を包み込んだ。一陣の煙が吹き上がる先の檻の中で、扇情的なポーズの女が悩ましく踊っている。隅にはカウンターがあり、暗い店内には様々な客がひしめいていた。照明を照り返す鋲とレザーのパンクファッションから、ゴシック調の黒一色の衣装から、人間以外の格好をしたものまでいる。体に響く重低音のリズムと、弦楽器の音色と、女の喘ぎ声のような効果音の混ざった、不思議なBGMが流れていた。
「お楽しみは後で取っておこう」 リヴィオラの瞳でカウンターを見やるベイビィを促し、橘芙蓉は円形の舞台の端にある階段へ向かった。「上へ行けば良いのだったな」
 吹き抜けの2階、3階へ通じる螺旋階段は鋲が剥き出しの鋼鉄で出来ていた。だが――4階へ上がっていくと、足元と手すりが、特殊ガラスでコーディングされた、まるで蒼い氷のようなものに変わっていく。

Holy Cross - Paradis CHÅIN


 上と下へと続く螺旋階段には、それぞれ『天国』『地獄』と但し書きがついていた。なるほど、その通りというわけだ。
「天国と地獄、どちらに行きます?」
 レオノーレが問い掛けてきた。ソドム街の街頭でよりも一層、彼女のような娘は回りから浮いて見える。だがここは中立地帯だ。彼女の連れている口の悪いヴァルキリーが大騒ぎするような事態にはならないだろう。
「ふふ。盾の聖女に相応しい舞台は、天上でしかないんじゃないかな」
「あら。聖人ジョニィもそれは同じでしょう」
 俺たちは上へ向かった。トレイを手にすれ違った女から、ワインの注がれたグラスも頂いていく。


 吸血鬼の格好をしたポーザーの一団と踊り場ですれ違い、橘芙蓉とベイビィは道を譲った。思い思いの格好の胸には、黒と赤で王冠や竜や仮面をあしらった、全員異なる奇妙なシンボルのバッジが光っている。ファッションなのかそれとももしかして本物なのか、尖った犬歯が口から覗いていた。橘芙蓉とベイビィは顔を見合わせた。
「牙でなく、翼ならありますよ」
 二人が階段の下に目を転じた時、盾の聖女がそこにいた。一瞬だけ姿を現した秘幽体が、彼女の周りに白い翼の幻影を羽ばたかせる。テネブレの中のどんな客も、こんな扮装はしていないだろう。
 その後ろから上ってくる黒のストライプのスーツの優男を認め、ベイビィは手を上げた。奇妙な決まり事の中で生きているファミリーの連中と関わった時、天使に護られているというあの男とも会った。
「久し振りだな。今はなんて名乗ってるんだ?」
 ジョナサンが言った時、グラシエラに流れていたBGMが変わった。一族に掛けられた、果てることのない血への渇望の呪いを歌っていた曲が終わり、馴染みの曲が、あの店にいつも流れていた曲が流れ出す。ベイビィはゆっくりと答えた。
「“ベイビィ・トーク”さ」
「ほう。俺と会った時は、“ノック・オン・ヘヴンズ・ドア”だったな」
「もう昔の話さ」
 探偵はマフィオーソと握手をかわし、今まで見た中で3番目の女である連れを紹介する。
「タチバナ‥‥村雨道場のタチバナか。そうだったな。世界の闇で戦ってきた黒の剣鬼に、今は弟子がいるとね」
「私も貴殿の名を聞いた事がある。聖人ジョニィ」
 四人は連れ立ってグラシエラへと向かった。向かう先は立ち並ぶコンパートメントの一室、404号室だ。

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「“ノック・オン・ヘヴンズ・ドア”という訳か」
 豪華な造りの扉の中央で来客を睨む獅子のノッカー。橘芙蓉が来訪を告げ、404号室へと入る。
 この部屋がガーディアン・ギャング“グレゴール”の中枢指令室となっていた。橘芙蓉への依頼人であったアルフレッド・メヒューマンが奥の壁の側に立ち、その横にこの部屋の主が座っていた。陰でよく見えないが――まるで椅子ごと、壁の中に埋めこまれているように見える。
「彼らが例の件の面々です。目的が同じならばいい。マスター、どうしますか?」
 その言葉に応えるように、ファーザーが動いた。完全に自動化された椅子ごと、前に出てくる。その体には何十本ものコードが繋がれていた。背後の壁が明滅し、あたかもひとつの装置の如く活動を始める。そしてその人物の背で――冷たいクロームの光沢を放つ、一対の機械の羽根がゆっくりと広げられていた。
「‥‥“ザフキエル”‥‥?」
 知っていたのか、これも天使の加護なのか、ジョニィが呟く。“グレゴール”のリーダー、座天使ザフキエル。偽なる神によって力を奪われ、失墜したところを人間に救われた堕天使。全身の60%を機械化し、脳をバイオトロン化して永遠の命を得た男。その両翼には、並のメインフレームを凌駕する性能のマシンが収められている。
 瞑想するように微動だにしなかったザフキエルは、椅子の前進が止まってからようやく目を開いた。
『我々の目的はひとつ。この街を人が住める街にすることだ』
「今だって、こうしてたくさんの人が住んでいませんか‥‥?」
 問うレオノーレに、座天使は答える。
『それは見かけだけなのだよ。陰で行われている虐殺、今もこうしてパラディスを震撼させるテロ活動。そしてこの街の様々な組織の上層部に属する者の多くは、闇の血を引いている。主の御許にあるはずのパラディスの永劫の闘争は、まだ終わらないのだ。
 私からも改めて依頼したい。手掛かりは与える。あのテロリストに公正な裁きを与えてやりたいのだ』

「いいとも」 リヴィエラの瞳を閃かせて座天使を眺めていたベイビィが言う。「あんたがただ、プリーズと言ってくれればね」
 控えているアルフレッド・メヒューマンが顔をしかめる。だがザフキエルの答えは冷静だった。
『クラブ・テネブレは神の塔からやってくるデュナミスの軍勢に対する最終防衛線だ。われわれの置かれた状況は、手段を選んでよい場合にない』 彼は続けた。
『プリーズ。プリーズだ。求められるならば何度でも言おう。我らに言葉を惜しむ権利はない故に』

 爆破現場で認められた発光現象は天使の持つ霊的エネルギーが過剰に流出したことによるものだった。通常の物理法則の外にあるこのエネルギーも、発電のような通常のエネルギー変換の原料、魔剣類の精錬に使うことができる。あるいは大規模な流出が起これば、触れた犠牲者を天使や悪魔へと強制的に変身させることもできる。この街の地下には、このエネルギー流出の元となる何かがあるのだ。“デミウルゴス”が創ったものかもしれないと、ザフキエルは謎めいた言葉を残した。
 次の行く先はジオフロント、メガ・プレックスの地下に半球状に広がるエリアだ。暴走したドロイドを狩る“鉄狩人”の集落や反体勢側の組織、裏側の世界が広がっている。
『さらばだ。‥‥頼んだぞ。私は、ここからすべてを見届けよう。この都市の死すべき時はまだ先だ』
 404号室を後にする一行の前で、ザフキエルはまた、明滅する壁の中へと戻っていった。

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 冷たい“グラシエラ”を後にし、一行が再び“テネブレ”の喧騒の中に戻ってきた時。
 規則的なビートの波動が1階を満たしていた。歓声を上げる客たちの中央のステージで、若い女のDJが満ちる音に指令を与えていた。ストリートでよく見かける黒のフリースに短い茶髪。手配中のシフォンだった。
「ちょっと失礼するぜ!」
 階段では間に合わないことを見て取ったベイビィは、素早く身を翻すと飛び降りた。軽い身のこなしで群集の頭の上に着地する。
『何の真似だ、テメェ!』
「悪いね」
 3本の爪で引っかいたようなお揃いのシンボルをつけた、ワーウルフのポーザーの一団が踏み台にされたことに抗議の唸り声を上げる。だが探偵は素早く幾つかの踏み台の上を飛ぶと、ステージの上に辿りついた。
 テネブレに夜の光をもたらす中央のシャンデリアを見て取った橘芙蓉は、無言の気合と共に鎖分銅を投げた。一呼吸後に身を躍らせ、3階分の距離を一挙に詰めると見事な着地を決める。女剣士の背後で解放された鎖が天井から落ちてきた。
「サリー、行くよっ!」
 抜剣し、秘幽体を出現させたレオノーレが最後に身を躍らせた。主と一体化したワルキューレが、ヴァルハラへも飛べる力を持った翼を羽ばたかす。
 クラブ・テネブレの今夜の客の何人かは、純白の翼の聖なる力に恐れおののいたのだろうか? 熱気満ちるクラブの中空に白い羽を舞い散らせながら、盾の聖女はゆっくりと滑空し、一階のステージへと降り立った。


こうさくいん「レオノーレは羽根まで生えるのでしゅか!(☆w☆) (ぽわぽわ〜ん)」
ボス「これはエニグマの<※霊翼>+本人の<■合技>だそうな。説明もつくしなるほどマヤカシは夢が広がるわけだ。レオノーレもそうだし、ベイビィ・トークにマヤカシが入っているのも、マヤカシというスタイルよりはどちらか言えば秘幽体の力がメインとなっているな」
こうさくいん「ああーそうだもう12話なのでしゅねー。レオナF改でもう覚醒後なのでしゅねーヽ(´▽`)ノ」
ボス「な、なんだそれは? Σ( ̄口 ̄;)
 確かに相当品アイテムやどんどん増える追加特技で夢は広がっているな。昔のN◎VAでは難しいことも今は手軽に実現できるようになってきている。ただキャスト間の能力差や個性差を縮める場合もあるから注意した方がよいな。たまに見るからよい夢もあるのだ」
こうさくいん「きっと霊力が高いのでしゅねー。盾の聖女がヒロインの座決定でしゅーo(≧▽≦)9゛」
ボス「くくく。しかし聖女というのは極めてキリスト教的な概念だ。それに連なる騎士道もな。北欧神話にはワルキューレはいても聖女はいないぞよ?(ニヤリング)」
こうさくいん「ギャルゲーコズムだから関係ないのでしゅよー。きっとハイブリッドなのでしゅ〜(笑)」


「早くも邪魔者が来たか」
 リズムに合わせてレコードを回していたシフォンが三人の乱入者たちを振り返った。橘芙蓉が包みを解くと、そこには一振りの刀が主に抜かれる時を待っていた。
「ここでもいいが客を巻き込むよ。どうする? 場所を変えるかい?」
 それは敵にとって圧倒的に有利な状況、敵の手の内で戦うことになる。ベイビィにとっては絶対に選べない選択肢だった。
「生憎とパラディスは不案内でな。たのもう」
 だが橘芙蓉は余裕さえ浮かべ、晴れやかな表情でそう答える。幻術で周りを追い払おうかとしていたベイビィは愕然として、今まで見た中で3番目の女を振り返った。
「(おいおい、マジかよ‥‥)」
 探偵が肩を竦めてテロリストに視線を戻すと、シフォンは腕にはめた時計に目をやり、表情を変えていた。
「悪いね、用事が出来ちまったみたいだ‥‥こいつらの相手でもしてやっておくれよ」
 シフォンが指を鳴らすとシンセサイザーが勝手に鳴った。熱狂的なファンたちがステージの上へと押し寄せてきた。ベイビィはリヴィオラの瞳の力を使おうとしたが、なぜか通用しない。その向こうで、手配中の女テロリストはひょいとステージから飛び降りると、視界から消えてしまった。


「待て。ひとつだけ答えろ」
 鋼鉄製の階段の最後の一段を降り、俺は去っていこうとするシフォンに声を掛けた。茶色の髪を翻して彼女は振り返り、周りの群衆が道を空けた。
「彼は――ビクトルは何故死んだ」
「‥‥私だって知らないわ。これから探しにいく」
 それだけだった。あの女はクラブに満ちる群衆の中に消えた。


「まったく、猫みたいなやつだな」
 ステージ上の大騒ぎからやっと逃げ出して来たベイビィはため息をついた。シフォンの姿はもうどこにもない。
「猫の方がまだ可愛げがあるぞ。ジオフロントに向かうのか?」
 愛用の無銘の刀を包みにしまいながら、橘芙蓉が答える。ベイビィはポケットロンを取り出すと、依頼人の聖人ヨハネスに連絡を取る事にした。

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 リニアトラム――所定のルートに従い、上下の他に左右にも動ける大型エレベーターで地下に向かう。
 地上のパラディスCHÅINからは想像のつかない光景が広がっていた。荒廃した街並みやバラック。暴走するドロイドを狩って生きている鉄狩人の小さな集落。天使と堕天使の戦いで崩壊した、建造途中だった積層構造都市バベルの残骸。遠くの壁面には、twiLiteパラディスの外壁が見える。有名なfairy land.coの協賛で作られたこの遊園地は、空中庭園や水中庭園の並ぶ世界の姉妹園に続き、地中の庭園として造られている。
 ジオフロントに太陽はなかった。制御された巨大な偏光板が、地上から取り入れた光を複雑な道のりで地下にもたらしている。
 一行はリニアトラムを降り、注意深く教えられたエリアに向かった。例の三人組のテロリストとの即座の接触も考えられる。
「我々が受けた依頼はテロリストの排除だ。可能であれば連れ帰れとは言われたが、恐らく戦いになるだろう。抜いた剣は退けぬぞ」
 橘芙蓉の問いに、旧友の消息を探すジョニィは、シフォンという女にだけは聞きたいことがあることを告げる。
「心得た。安心いたせ、私も無闇に剣を振るうほど愚かではない」
 小さく告げ、女剣士は行く手にある集落に目をやる。
「なあジョナサン。あんたの天使は、何て言ってるんだい」
 変わってベイビィが問い掛ける。
「“主よ、あなたの慈しみは天に、真理は大空に満ちている”」
 紅蓮から来た男は小さく引用すると、謎めいた表情を浮かべた。「‥‥だから、地の底までは届かないさ」

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『ですから我々は、今こそ教会の圧政に対抗して立ちあがらねばなりません。今は小さく、名は無くとも、必ずや目的を果たせます。この地下地区の解放を、我々の手で!』
「アリシア様、あれは?!」
 一行が地下世界の町を通りかかった時、そこでは不思議な色の瞳をした若い娘が、人々の前で演説を続けていた。教会と対抗するレジスタンスがいるというのは本当だったらしい。
 だが“先導者”ことアリシア・ベレルテの声は、近付いてくる不気味な振動音に遮られた。聴衆が散りじりに逃げていく中、それは空中から降下してくる。
 パワーアシストアーマーで完全武装した二人の男。アーマーの上の法衣には、十字架とパラディスのカトリック教会の印が堂々とはためいていた。それぞれが一人乗りのカーゴに乗っており、翼もないのに空中に浮かんでいる。個人用戦闘プラットフォームとなっているカーゴの下部には、ガトリングガンが冷たく光っていた。
『不正思想取締に関する特別法第8条3項への抵触だ』 男たちは空中から厳かに告げた。
『我々は、パラディス法王庁警備部攻性警備班であるッ!』
 秘幽体を出現させたレオノーレが銀髪の娘を庇い、橘芙蓉が前に出る。
「ほう‥‥バチカンか何かか?」
 皮肉げに唇を歪めながら、橘芙蓉は剣の鯉口に手を掛けた。
『バチカンは既に既に主と共に氷の中に沈んだ』 男の一人が揺るぎない声で応える。
『今此処にあり、我らが示すものこそ法王陛下の意志であるッ!』
 だが、女剣士の横にひょいと歩み出たベイビィが、二人の方を無造作に指差した。同時に“リヴィオラの瞳”が輝き始め、その力を振るい出す。
「でだ、法王庁のお二人さん」 探偵はにやりと笑った。「あんたらの横に悪魔がいるぜ」
『こ、これは‥‥ッ?! 本部、至急連絡を! こんな素体は初めて‥‥うわぁぁァァッ!』
 双方のカーゴのガトリングガンが同時に火を噴いた。互いを撃ち尽くし、機関部が爆発したカーゴは黒い煙を残してどこかへと墜落していった。


「そう、アリシアというのですか‥‥。あなたと同じ名前の、優しい人を知っています」
 護ってくれたことに礼を言う銀髪の娘に、レオノーレは答えた。
“先導者”アリシア・ベレルテ。虹の虹彩の義眼の持ち主。まだ名もない小さな組織を率いて、地下世界の解放の為に活動しているのだという。言霊に縛られ、利用されるのを防ぐため、組織にはまだ名がつけられていない。
パラディス地下には幾つか、地上世界に力を送り出している水素を用いたエネルギー生成の大規模施設がある。大局的には将来そこを掌握し、地下世界の解放を目指したいという。
 アリシアは気になる事実を教えてくれた。パラディス地下から吸い上げているエネルギーには、普通でない霊的な種類のものもあるという。この街には実在する、天使や悪魔の持つエネルギーと同種のものだ‥‥

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 アリシアの組織に作業用車輌を借り、乗り込んだ一行は秘密の通路を通り、地下世界の最深部まで進んだ。水道と電気の集中システムが低い唸り声を上げる中を、クラブ・テネブレの広間より高い巨大なダクトを進む。
 生身の人間がほとんど立ち入ることのない地域。放電による爆発の余波を被って故障した車を捨て、水蒸気の煙の中を先に進む。
 奇妙な扉があった。頑丈な鋼鉄製だが、そこに赤い文字でDemonic Hazardと落書きがしてある。鉄格子の向こうから何かの匂いがしたような気がした。
 一瞬の気合と共に、橘芙蓉が抜刀した。夢幻一刀流をまとう無銘の刀がただ一閃し、分厚い扉を正確に両断する。堅い床に倒れる轟音が、無人の基幹施設内に響き渡った。
「所詮この世の物質だ」 女剣士は幽かな笑みを浮かべた。「見ろ。当たりだぞ」
 基幹施設の隔壁と隔壁の間に作られた控え室のような部屋だった。床にも壁にも、乾いた血がこびりついている。様々な方法で殺された様々な格好の警備員の死体が、あちこちに積み上げられている。奥には樫の木の扉があり、その上の壁には血文字で逆十字――主を嘲笑するアンチ・キリストの印が書かれている。
 床の血の跡を調べていたベイビィが不意に口を開いた。「あのアリマセアという女だ。なあ聖人ジョニィ――」
「‥‥ああ」 小さく答え、アルカンジェリの加護を受けた男は厳しい顔で奥を見やった。ここはパラディス地下基幹施設の中心、最深部だ。一行の誰もが感じていた。この先に、何かがある。


 暗く、陰鬱な通路だった。左右の壁には四本づつ、合計八本の柱が並んでいた。不気味な緑色の光を帯び、その光は天井に続いている。天井を縦横に走るダクトの中を通り、その光はひとつとなって鉄の大扉の向こうに続いていた。管の中の光は脈打つように明滅を繰り返しながら天井から奥へ続いている。何かの精髄を、この通路の柱から奥へと送り続けているようにも見えた。
 近寄った俺たちは八本の柱が何であるか分かった。緑色の光はそれぞれに埋めこまれた円筒状の培養槽の中から発せられていた。暗緑色の液体が満ちたその中に、たくさんのコードで繋がれたものが収められている。そのものは不規則的に泡を吐いていた。眠っているのか、とにかく生きているのだ。
 水槽の中にいたのは天使と悪魔だった。左の四つが天使、右の四つが悪魔。左にはかつては白かったであろう羽毛、右には蝙蝠の羽と鉤爪。八体が、互いに向きあうような方向で眠っている。
 だが様子がおかしかった。水槽の中のものは人間の外見を多く残している。まるで神の気紛れで、人間の四肢をねじ曲げて無理やり創ってみた出来かけの神の使徒のように見えた。医者が言うなら、変異というやつだろうか。どんなに暗黒街に通じた奴でも、こんな奇妙な光景は見たことがないだろう。
 パラディス各所の爆破事故で起きた発光現象で、人的被害が出たと聞いている。霊的エネルギーに触れた人間には“天使化”や“悪魔化”の現象が起きる場合があるというのだ。まさか、その連中を生きたままここに保存しているのだろうか?
 向きあった天使と悪魔のちょうど真ん中に立つと、何かの見えない力を感じる。互いに相反する存在である天使と悪魔が反発しあっているのかも知れない。何かの精髄を取り出す為にわざわざこんな配置にしたのだとしたら、ずいぶん手が込んでいる。

 左側の三番目の柱まで来た時。俺の足が勝手に止まった。埋め込まれた水槽の中身は一番目と二番目と同じだった。かつて人間であった天使の紛いものが中で泡を吐いていた。
 俺は我知らず柱に近寄った。その男は目隠しをされ、鼓膜を破ったのか両耳を傷付けられている。口には大きな管が咥えさせられ、全身のあちこちにコードが繋げられている。
 俺はもう一歩柱に近づいた。液体の中で揺れる髪と、その青年の左頬の傷が見えた。
 あれから何年も経っていた。俺の記憶の中の彼もおぼろげなものになっていた。それでも分かった。どうしてか直感したのだ。目の前にいるのはビクトル・ビルダットだ。マリアの兄の変わり果てた姿だ。神父を目指していたあのビクトルは死んではいなかった。こうして命だけは保ったまま、自分の精髄を抜き取られているのだ。
「神よ‥‥なんてことだ」
 ファミリーで聖人と慕われている俺でも動揺を隠せなかった。ビクトルの体は時折微かに動いている。事故で行方不明になってからずっと、生きたままここに閉じ込められていたのだ。
『天使の子。この世界はあんたの知ってることばかりじゃない。せめて絶望しないようにしな』
 盾の聖女の連れている分身が、辛辣な口調で後ろから何か言ってくる。だがそれも、俺の耳には半分しか届かなかった。
「――この街は、俺の知っている神が創ったのではないかも知れん‥‥」
 立ち上がった俺は上を見上げた。ビクトルであったものが収められた柱からも、緑色に光る管が天井を通って奥に続いている。まだ奥に何かある。

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 地下世界の更に奥、パラディスCHÅIN基底部。そこにもまた、奇妙なエネルギー反復装置があった。ドームの中央の床に開いた大きな穴の底に、人の3倍はあろうかという、名状しがたい黒い獣が鎖に繋がれている。その体には、黙示録よろしく全ての獣のしるしである666の数字が刻まれていた。一方、正確に反対側の天井に開いた穴の中には、6枚の翼を持つ大天使が鎖で捕らえられていた。まるで黒い獣から一歩でも遠くに離れていようとしているように鎖はぴんと張り、空中で羽ばたいている。既に狂っているのか、人間のことばではない何かの呟きがその口から漏れていた。
 仄かな照明で照らされた暗いドームには先客がいた。喪服の如き黒いドレスの少女に、テネブレで会った時と同じDJの格好のシフォン、そして暗色のボディスーツに身を包んだ女がもう一人。
『ここはいいわ。ここで創られた霊的エネルギーが地上へと送られる場所を突き止めて破壊するの。もう怨念はかなり溜まってる。奈落落ちが起こるまでもうすぐよ』
 堕天使アリマセアの声を、鋭い音を立てて飛来した風魔手裏剣が遮った。ドレスと同じ色の髪が数本ちぎれ、宙に舞う。
『‥‥その前に、邪魔者を片付けた方がいいようね』
 黒衣の少女は振り返ると目を細めた。ついでシフォンがレコードを手に前に進み、三人目のシュマーが続く。コートを着こんだシュマーの背に、突如大きな翼が出現した。白い翼は数度羽ばたき、そして主を護るように、盾のように前に出る。三人のテロリストが歩む先には、長身の女剣士が待っていた。
「ならば試してみたらどうだ、堕天使とやら」
 橘芙蓉が刀の柄に手を掛け、鋭く三人を見返す。アリマセアは、クラブから抜け出たような格好のシフォンに声を掛けた。
『さあシフォン、復讐を果たしなさい。この人間たちも、貴方の大切な彼が死ぬことになった原因かもしれないわよ』


「待て、シフォン」
 ジョナサン・コルシオーネのその静かな声は地下世界においても揺るがず、神の御許により近い堕天使を前にしても臆することがなかった。
「ビクトルは生きていたな。彼をあんな冒涜的な目に遭わせのは君なのか。そうでなければ誰なんだ」
「ビクトル‥‥? 待ってよアリマセア。彼は死んだって言ってたじゃない?!」
 会話を交わすに連れ、シフォンの顔色がみるみるうちに変わる。
「どういうこと? 協力すれば、反魂の法で生き返らせる‥‥それが契約のはずよ?!」
 彼女が取引をした黒衣の少女は笑うと、翼もないのに宙に浮かび上がった。古風なドレスについたフリルの飾りがひらひらと舞った。
『そうよ。あなたは契約の時にこう言った。“ビクトルが生きているなら、私はどうなってもいい”と。
 霊的エネルギーを浴びた貴方の大切な人は、天使化を起こした。だから彼は死んではいなかった。成立しない契約に私は縛られないの。あなたの言霊はあなたを縛り、あなたは私の手の内にある‥‥。
 ま、彼もああしてエネルギーの素になっているわけだから、少しはこの偽神の街の役に立っているんじゃない?』

 アリマセアは、14歳の少女は絶対に浮かべない表情を湛えた。
『‥‥もっとも――その事故は私が起こしたのだけどね』
「酷いわ、騙したというの?! ‥‥これが‥‥堕天使の常套手段‥‥」
 観念したシフォンの顔に、自嘲的な笑みがよぎった。
『その通り。よく分かってるわね。
“堕天使アリマセアの名において契約を遂行する。汝、その言霊の元に我が命に従え”。
‥‥何度使っても、この手は便利なのよね』

 途端にシフォンの声が止んだ。目から光が失せ、もう一度、異国からやってきた侵入者たちの方に向き直る。
 鎖に繋がれた狂える天使が、突然歌い出した。エノクか、それとも神の国の言葉か。人間に理解できないその歌声は聖歌の如く美しく、神の加護を受けたはずの街に響き渡る。その旋律は、堕天使と人間の奇妙な戦場を飾るに相応しかった。そして、地の底に繋がれた獣も、声を合わせて吠え猛る。
 レオノーレの体から、淡い光に覆われた鎧姿の戦乙女サリーが分離し、主の側で長槍を構える。
「言霊使いか」 橘芙蓉は無銘の刀を抜いた。「他人に頼らねばならぬとはその程度のようだな」


ボス「何やら異国から来た旅人たちにとっては訳がわからぬ核心の展開になってきたが探す相手はここにいたな。さて例によってゲストの解説でもしておくのだ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。一番年上のシュマーはカブト,カブト,カゲ。天使の2枚の羽根がシールド相当、かなり堅いでしゅよー。シフォンがカブキ,マネキン,カリスマ。<芸術:スクラッチング>でレコード回してDJしながら攻撃してくるのでしゅ!」
ボス「WoDもびっくりだという舶来ゲームのIN NOMINEぽくなってきたな‥」
こうさくいん「リーダーのアリマセアだけがほんとの堕天使だったでしゅねー。ジツはアヤカシ,カタナ=カタナだったでしゅ。カタナの特技は全てバイオリンからの音波攻撃。すごいでしゅよーミッドバレイでしゅ。キャスト陣にも負けぬハゲシイ妄想でしゅ〜(ブルブルブル)」
ボス「まあほれ、橘芙蓉に加えてエニグマ使いが二人もいるではないか。ひとつひとつの行動はたとえ弱くとも、エニグマンサーは手数が多いのが強みだからな」
こうさくいん「ううージョナサンも何かするのでしゅよ〜(ガクガク)」
ボス「んー、聖人ジョニィは戦わないのだ。(笑) 今回はこっそり<※強奪>をおまけに持っていたりするがな。ほれ、きっと橘芙蓉が二の舞とやらを見せてくれるぞ」
こうさくいん「わーいそうだったでしゅ。作戦はもちろん火で行くでしゅね〜ヽ(´▽`)ノ」

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「俺が豚になれと言えば、あんたは豚になれるんだぜ、堕天使」
 黒衣の探偵の左目が輝き始める。その危険を悟ったのか、アリマセアは視線をそらすと闇に紛れて中空高く舞い上がった。
「シフォン! 君に主の御心に沿う心がまだあるなら、しばらく眠ってくれ」
「いなかったお前に何が分かる!」
 聖人ジョニィの声は力を持ち、契約に縛られたシフォンに届く。だが彼女の持っていたレコードが、クラブ・テネブレで流れていた曲と同じように甲高い音を立てた。力ある言葉が遮られ、逆に殺意の旋律が襲いかかる。ジョナサンの背後に浮かび上がった淡い光が、その曲を止めた。
 強敵と見て取ったシュマーに、橘芙蓉は一呼吸で斬り掛かった。黒のコートにミラーシェード、その長身を覆う純白の羽根。だが、夢幻一刀流のまことの技は、何をもっても受け止めることができない。強化クリスタルの盾も、それより遥かに強固な天使の羽根も、遮ることはできないのだ。
 幻惑的な技に翻弄され、たまらず劣勢に立ったシフォンは上へと逃げた。激しい斬撃で斬られた羽根が舞い、橘芙蓉の一瞬の隙をついて宙に舞い上がる。人間には不可能な動きで回転し、剣士の背後を取った時、そこには羽根の下からいつの間にかレイピアが取り出されていた。並の人間なら知覚できない不意打ちを、レオノーレの元から離れた戦乙女サリーがその槍で防ぐ。振り向きざまに橘芙蓉はさらに一太刀を浴びせ、またも多くの羽根が地下の戦場に飛び散った。

 薄暗い中空に舞い上がったアリマセアは、いつの間にかバイオリンを携えていた。奇妙な曲が響き渡る。場が違えば聖堂に響き渡る少女の独奏会となったであろうその魔曲は、旋律のひとつひとつが見えない刃となって地上を襲った。レオノーレが振るう電脳剣サリーが風となり、ベイビィを襲った刃の束を叩き落す。
「奈落に落ちろ」
 “リヴィオラの瞳”が光った。黒衣の少女を囲む風景が変わり、どんな堕天使も降りたことのない深い深い奈落がぽっかりと口を開ける。
 だが黒い霧となってアリマセアは幻の世界から逃げ失せ、再び姿を現した。独奏会が再開し、見えない刃が降り注ぐ。
 だが危険を感じた彼女は手を止め、魔の力の込められた愛用の楽器を手元へ寄せた。何者かの手がバイオリンを奪おうとしていた。視線を左に転じても誰もいなかった。だが壁には一瞬だけ影が見えた。堕天時に彼女は捨ててしまった、羽根を備えた女性の影――死をも司る大天使の影が。

 騒奏の魔曲が止んだのを見て取った橘芙蓉が前へ出る。一瞬後に再開された交響曲が、一千の短剣となって魔曲の聴衆を襲う。そのスーツが穿たれ、引き裂かれ、主も同じ運命を辿った。
 だがそれは残像だった。散り散りになったのはfairy land.coの新作スーツだけだった。少女の姿をした堕天使が振り返った時、着流し姿の女剣客がそこにいた。ただ一筋の銀光。主の手を離れたバイオリンがゆっくりと弧を描き、冷たい床に落ちていった。
「邪剣・龍尾返し」 黒の死神の弟子は厳かに告げた。「我が剣は時空をも貫くッ!」

Anjel - Paradis CHÅIN


こうさくいん「橘芙蓉‥‥なにものでしゅか?(゚o゚)」
ボス「う、うむ‥‥全員あそこで呆気にとられていたな。(゚o゚) ストイック一筋と見せかけて最後の最後でゴイスーな技を使ってきおったぞ」
こうさくいん「通常攻撃も強かったでしゅよー差分2倍で斬33とか48とかが<※連撃>で踊るのでしゅよー。これが橘芙蓉・二の舞いの力なのでしゅね!(>ω<) (ぽわぽわ〜ん)」
ボス「次元刀相当の受け不可の奥義だからな。『夢幻は無限に通ず、空間をも斬り裂き間合いを消しての苛烈な一刀、これぞ夢幻一刀流の極意なり』だそうな。なんというN◎VA的でゴイスーな理屈だ。菊地ワールド並の屁理屈だぞ」
こうさくいん「デタラメに強いでしゅね! やっぱり華○団員なのでしゅ〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「名字がタチバナだけにぴったりだな‥‥あーいやいやいやいや、という訳で戦闘終了だ。指揮官のアリマセアを倒せば後は終わりだったな。シフォンへはアクト開始時点より《神の御言葉》が飛んでいたと考えるため、戦闘終了時点で発狂ダメージが適用されてしまい、もう救えないのだ」
こうさくいん「テロリストは全員確保でしゅー。でもなんでみんなオンナノコなのでしゅかね?」
ボス「ん、んんー(笑) まあリアリティからは離れるがイロイロ設定があるのだろうし、ほ、ほれ、郷に入りては郷に従えと言うではないか(笑)」


 床に落ちたバイオリンが血に染まった。アリマセアが倒れると同時に、後の二人も動きを止める。シュマーは吐血して突っ伏し、シフォンはその場に倒れる。
「待って! 大丈夫?!」
 慌てて駆け寄ったレオノーレがシフォンを支える。ビクトルの恋人であった娘は涙を流していた。だがその口は何も語らなかった。レオノーレがそっと地面に寝かすと、彼女は胎児のように丸くなり、何か言葉にならない声をもらした。既に精神を破壊されているのだ。レオノーレにはどうにもすることができなかった。
 不審に思った橘芙蓉はシュマーに近寄り、その翼をのけると体を検分した。体温が異常に低い。彼女が数太刀浴びせた傷から、まったく血が出ていなかった。
「反魂の法の類か‥‥?」
 翼を備えた堕天使シュマーは既に死んでいた。アリマセアは契約によって彼の者の死を操り、死体を動かしていたのだ。

「おい、あの女の死体は? ‥‥しまった」
 ベイビィの警告の声で一行は振り返った。橘芙蓉が一刀両断したはずのアリマセアの死体の片方が欠けていた。黒いドレスの少女の形をしていた下半身だけが残り、上半身がいつの間にか消えていた。大きな血溜まりの中の一筋が分かれ、こすったような跡となってどこかへ続いている。
 血の痕を追うとそこにアリマセアだったものがいた。千切れた上半身を手の指の力だけで引き摺り、ドームの中央の穴の中、黒い獣のところへと這い進んでいる。死体となってさえもまだそんな力を残していたのだ。
 無言の気合と共にレオノーレが踊り出た。その背に純白の翼が現れ、大きく羽ばたくと堕天使を追う。
 だが間に合わなかった。少女の無残な死体の姿をした堕天使は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、黒い獣を抱いた。その口から、最後の呪詛の言葉が漏れた。
『呪われよ! 呪われよ! 呪われよ!!!
 死者の祈りは不遜なれども、其の怨はこの血の底に満ち満ちたり。
 偽神の手によるこの都、獣の声にて奈落に誘わん。
 怨差の声は吹き上がる! 死者の祈りは不遜なれども!』


 息絶えた堕天使に抱かれた黒い獣の吠え声に変化が生じた。完璧な唱和が崩れ、その不協和音が天井に繋がれた天使をばらばらに引き裂く。6枚あった翼が、肉片と共に地面に落ちてきた。地下世界に満ちていた瘴気に、何かの変化が生じたような気がした。
 突然、辺りに強い振動が響いた。不吉な音と共に壁にひびが入り、地面が波のように揺れる。天井が落下してきた。地下世界が崩壊を始めていた。いや――その上の地上世界も一緒かもしれない。
「こいつはまずい。逃げるぞッ」 ベイビィが帽子を押さえてあたりを確認する先で、もう岩が落ちてきた。最後に破滅を呼んだアリマセアと黒い獣の姿はもう見えなかった。奇妙な旅の同行者たちは彼に続いた――だが、世界で3番目だと褒めたあの娘がいない。
「おい! 盾の聖女――」
 だがレオノーレはまだドームの中に立っていた。祈るような姿勢で、両手を合わせている。その体が光に包まれているようだった。秘幽体の持つ淡い光とは別種の光だった。
「大切なものを護るのが、カブトの役目よ」
 彼女が振り返ると、頭の上で結んだ長い髪が揺れた。彼女は微笑を浮かべていた。次の瞬間、落ちてきた岩がベイビィの視線を遮った。


 あの通路も崩壊が始まっていた。悪夢のように天井を這っていたダクトからは火花が散り、柱に埋め込まれた装置も崩れ始めている。緑色の液体が水槽から漏れ出していた。中に入っていた天使と悪魔は死体のように動かない。
 ビクトル・ビルダットが眠っている水槽にもひびが入っていた。妙な管に満ちる光も消えていた。
「神よ。‥‥その慈悲があるなら、彼のものの最後の言葉を伝えたまえ」
 ごぼっと音がして、彼の口から泡が立ち昇った。その音は回りの轟音に遮られ、途中で消えた。
 横のあの探偵が無言で急かしていた。ここにこれ以上いては俺たちも危険だった。天国への扉を――あるいは地獄への扉を叩くことになりかねない。俺は拳銃を抜いた。
「‥‥主よ。許したまえ」
 緑色の液体の中に紅いものが満ちた。そこへ崩れてきた天井の欠片で、何もかもが見えなくなった。

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ボス「正体不明の獣は“災厄の獣”と言って、体に記された666の紋章が超業物(スーパーアーティファクト)なんだそうな。ルール上は死亡の状態にある堕天使アリマセアが、最後に発動させた扱いじゃな。効果は神業発動で、《天罰》で天変地異ライクにパラディスCHÅINを全破壊するそうな。立派立派。あっぱれな最期じゃのう(爽)」
こうさくいん「ぜんぜんよくないでしゅよー(笑) でもここでレオノーレの必殺技が発動するのでしゅね! 盾の聖女の祈りは大神オーディーンのもとに届くのでしゅね! 火作戦だからどんどん使って大丈夫でしゅーo(≧へ≦)9゛」
ボス「というわけで《守護神》による打消しなのだ。ちなみに《ファイト!》はジョナサンの《天罰》を増やしてくれたのでEDで使っているぞよ。感心感心ありがたい。さすがヒロインは散る前まで気が利くのう(ニヤリング)」
こうさくいん「ってよく考えたらそれじゃレオノーレが死んじゃうじゃないでしゅかー!(゚o゚) ヒロインが死んじゃダメでしゅよ〜!」
ボス「ギャルゲーだとありえるのではないか?(笑) さてでは大崩壊を免れた後のEDと行こう」

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 パラディスCHÅINを襲った原因不明の地震は突如収まった。都市へのエネルギー供給が一時的に不足し、人的な被害も出たそうだが、影響はそこまでだった。見た目は今まで通りの、日常が戻る。
 ベイビィ・トークは最初に依頼の話をもちかけた男と接触した。依頼元の調べも既についている。この街において教会は大きな力を持ち、教会の正義に基づいて動いている。TOP4の一人、聖人ヨハネスは、微笑みの裏でダーティワークを専門に統括する人物だった。“笑顔の枢機卿”は神の愛を説き、同時に叛乱分子への容赦ない弾圧を行っているのだ。
「この街の外の人間でないといけなかった理由は幾つかあるのですよ。まあ‥‥候補者は何人でも‥‥いますがね」
 ヨハネスの部下は嫌味な笑いを浮かべたが、それでも約束通りのクレッドクリスをベイビィに払った。

 橘芙蓉は当初の依頼人であったアルフレッド・メヒューマンの指定した公園に赴いていた。ガーディアン・ギャング“グレゴール”の手の者は彼一人だった。ザフキエルの姿もない。あの繋がれた男は、機械の翼を持つ座天使は、クラブ・テネブレ最上階のあの部屋の中でしか生き長らえることができないのだろう。
「テロリストは三人ともに死亡か‥‥」
 報酬を確かめる橘芙蓉に、メヒューマンは言う。
「相手はパラディス名物の堕天使とやらだ。下手には確保できなかったからな」
 橘芙蓉はやや皮肉げに言うと、身を翻した。「これで任務完了だ」
 女剣士は公園を去っていった。地面の餌をついばんでいた鳩がその後ろ姿に一声鳴いた。

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 かつて“ベイビィ・トーク”と呼ばれていた男はBARにいた。いつもの席、いつもの銘柄の酒を頼み、探偵は依頼人を待つ。
 足音がした。テーブルの横に立っていたのは見知らぬ女だった。
「名もなき男に何の用だ」
「噂通りね。どうしてなの? 前は名前があったの?」
「‥‥名は昔の眼と共に死んだ」
「そう」 女はテーブルの向かいに腰を下ろすと、煙草に火をつけた。
「あなたに依頼があるの。あ‥‥でもこれじゃ、やりにくいわね。あなたを何て呼んだらいいのか、決めて頂戴」
 その時、店内に音楽が流れ始めた。名もなき男は口を開いた。



 橘芙蓉は災厄の街に戻ってきた。いつもの古巣、いつものストリート。N◎VAの闇はパラディスのそれに劣らず濃く、そこには彼女の刀を振るうべき相手が潜み、彼女の腕を必要とする仕事がある。
 人の目を引くことも気にも掛けず、彼女は着流し姿でストリートを歩いていた。鐘の音に気付き、ふと見ると、そこには教会があった。屋根の上の十字が、夕暮れの光の中で浮かび上がっている。
 トーキョーN◎VAでは真教が優勢だ。キリスト教と同じ十字のしるしを使っているが、この教会はどちらを敬っているのだろうか。災厄後になって生まれたこの若い宗教に、氷を崇めるこの教えに、どれだけの人が集まっているのだろうか。
「宗教など所詮人の創ったものか。使い方次第で善にも悪にもなるというものだ」
 剣と己を信じる彼女が視線を落とすと、腰を下ろした子供が生意気そうな目で芙蓉を見上げていた。何か小銭儲けでもしたのか、手に数えかけのクリスを持っている。
「でも救いが必要な人もいるよ。だからああやって保ってるんじゃないか」
「救いはそう簡単に得られるものではない」 彼女は身を翻した。「それが災厄の街というものだ」
 黒の死神の弟子、魔閃剣の橘芙蓉。夢幻一刀流を操る売り出し中の剣客は、彼女に技を伝えた師匠の待つ村雨道場を目指し、夜近付くストリートを去っていった。



 朝のカフェは何も変わっていなかった。揃いの青と白のパラソルが並び、植木が風にそよいでいる。
 俺はマリアに顛末を話していた。彼女はティーカップを両手で持ったまま、黙って聞いていた。兄の恋人だった女のこと。堕ちたる蛇に力を貸していたこと。だが、ビクトルの消息についてはやはり死亡を確認できたとだけ伝えた。結局は同じことだ。俺の撃った銃で、彼は死んだのだから。
 話を聞き終わると、彼女は静かにティーカップを置いた。その顔はやや俯いていた。
「マリア。君はこれから本当に一人になってしまうが、大丈夫かい」
「‥‥大丈夫。今までだって、やってきたもの」
「そうか」
 ビクトル・ビルダットの妹は気丈のようだ。きっと一人でも生きていけるだろう。少しばかりの手助けがあれば。


 黒スーツの優男がどこからか取り出したのは百合の花束だった。何処でも売っていないような、本物の百合。驚く少女の手にそれを渡すと、コルシオーネ・ファミリーの若頭は立ち上がった。
「マリア。慈愛の天使ガブリエルの携える百合の花は純潔のしるしだ。聖母マリア様と同じ名を持つ君のもとに、祝福がありますように。災いに見舞われることなく、平和に暮らしていけますように」
 本物の力を宿した不思議な白い花の花弁から、淡い香りが立ち昇った。ファミリーから来た男は少女の肩を軽く叩くと、別れを告げた。
「もしかしたらこの街は‥‥我らの主の御許にあるのではないのかもしれない」
 N◎VAのストリートで誰もが知る、その名を示す小さなバッチが彼の胸で光った。
「俺はN◎VAへ帰る。元気でな、マリア」
 苔むしたガーゴイルの見守る街路を、ジョナサン・コルシオーネは去っていった。それを見送る少女の頬を、ただ一粒の涙が濡らしていた。

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 教会はいつにない喧騒に包まれていた。といってもその原因はたった二人。ステンドグラスが光を落とす先で、コルシオーネ・ファミリーの二人の若者がいがみ合っている。
「へへーんだ。だいたいユカ、おめーは真紅の子悪魔とか大層な名前を名乗ってるじゃねーか? 悪魔が教会にいるなんて、ちゃんちゃらおかしーぜ?」
「うるせぇ! 好き勝手抜かすと、ほんとに燃やしてやるぞ!」
「ほーら怒った。礼拝堂が燃やせるもんなら燃やしてみな〜?」
 前触れなく扉が開き、黒スーツの青年が入って来た。サングラスを外すと、ファミリーの若頭はおやおやといった面持ちで二人を眺めた。その姿を認めた途端に、喧騒が止む。
「あ‥‥ジョニィの兄貴‥‥。帰ってきたんだね!」
 笑いながら少年サムの頭を軽く小突くと、ジョナサンはそのまま礼拝堂を進んだ。主の似姿が掲げられた奥の祭壇そばで立ち止まり、胸につけていた十字架を外す。“J”と刻まれた簡素なこの銀の十字架だけが、彼の失われた過去を示す手掛かりだった。
 ジョナサンは跪き、天を見上げた。ステンドグラスから差し込む光が、聖人と呼ばれた男を照らした。色とりどりのガラスの中で翼と光輪を携えた天使たちが舞い、その中の大天使の一人が、微笑を湛えてその子を見下ろしていた。
「天啓と知恵の天使、約束と贖罪の天使、神の御言葉を伝うもの。慈悲深きガブリエル様、その子への加護に感謝します。――罪深き子への救いに」
 口の悪い戦乙女を連れたあの若い娘のことを思い出し、ジョニィは最後に付け加えた。
「そして願わくば――神の創りたもうた世界の外、異教の神の子らにも、恵みのありますように」

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 レオノーレ・アインベルグは目を覚ました。
 奇妙な場所だった。目の届く限りの一面が百合の花で覆われ、爽やかな微風にそよいでいる。自分の鼻先にある百合の香りが鼻腔をくすぐり、彼女は上体を起こした。
 天は明るかったが、自分の知っている地上世界の空ではなかった。目を転じると分心のサリーがいた。花びらの中に宿っている、まるで蛍の光のような不思議な淡い光を、戦乙女は興味深そうに眺めている。主が眠りから覚めたことを知った彼女は光となり、レオノーレの剣の中に戻っていった。
 自分は死んだのだろうか? だが、死後の世界にしては現実感がありすぎる。立ち上がってみても、体の何処にも傷はなかった。あの時天井が落ちてきたはずだが、萌葱色のロングスカートにも埃はついていない。
「‥‥無事に済んだようですね」
 彼女が不思議がっていると、後ろから声がした。銀髪に銀の瞳、教会の長衣をまとった女性がそこに立っていた。その胸の十字架が、レオノーレは生きて現実世界にいることを告げていた。
「ええ。まだ、ヴァルハラに行く訳にはいかないようです」
「残念だけど、ここにはヴァルハラはないわ。終末の後にならないと、主を信じる私達が何処へ行くのかは、分からないの」
 MiLion-Liteパラディスの長、真の人間アダム・カドモンに加護を受けた元修道女、強い聖性と不死性を備えた最果ての君エリクシオンは微笑んだ。まるで微笑むために微笑んでいるような、不思議な微笑だった。
 レオノーレは不意に、友人のフェリシアから聞いた話を思い出した。世界に広がったtwiLiteの5つ目の姉妹園、twiLiteパラディスはジオフロント外周壁に地中庭園として建造され、数々の秘密が隠されていると。
 女性は手に持っていた三本の百合の花をレオノーレに手渡した。花は黒と、白と、薔薇色だった。
「さあ、行きなさい。フェリシアがあちらで待っているわ」
「ええ。行くことにします。それじゃあ‥‥ありがとうございました」
 レオノーレは目を伏せると、百合の花畑を歩き出した。花々の中から漏れる淡い光が、盾の聖女の行く先を照らしていた。

And Here, The kurtain dropped,
in the city of Anjelz ...
-XYZ-

Spesial thanks to:
Psyka
for unfinished Mega-Plex creation.


こうさくいん「よかったでしゅねー信頼度が一番のヒロインは最後の最後で復活なのでしゅ〜o(≧へ≦)9゛」
ボス「な、なんだその値は。Σ( ̄口 ̄;) twiLiteパラディスの主、最果ての君エリクシオンは真マヤカシだ。という訳で《守護神》2回というゴージャスな使い方でレオノーレが復活、これでめでたくエンディングだ」
こうさくいん「ううーでも帝都に帰ってしまうのでしゅねー涙のエンディングでしゅねー(>_<)」
ボス「N◎VAで始まったのだから帰って当たり前ではないか。
 さて今回のシナリオとこの街の設定には裏設定やら何やらがいろいろある。実はパラディスCHÅINにおいて神の塔から力を振るっている神はどうやら偽者らしいのだ。傀儡である法王を操り、例の謎なエネルギー発生装置を使って、手駒である天使を強制的に増やし、発電の補助や魔剣類の精製に使っているそうな。今回の事件の結果で都市へのエネルギー供給が一時的に減少し、また新型の謎な発生装置が今後造られてしまうらしい。
 教会勢力と対抗している堕天使たちは神が偽者であることに既に気付いている。テロリストたちは施設爆破によって霊的エネルギーの地上への移動を阻止していた。こうすると怨念となったエネルギーが地下に累積し、地下世界に溜まっていた負の感情やら何やらと反応し、いつかは奈落落ち(Fallen Down)という現象が起き、都市全体が陥没してしまうそうな。アリマセアは上級の堕天使なので、破壊活動も人間への試練と考えておるそうじゃぞ。あっちにもいろいろ計画やらなんやらがあったらしい」
こうさくいん「そんな細かい設定があるのでしゅかー。(゚o゚) レビュー見てる場合じゃないでしゅねー」
ボス「だが、セッションではそれは完全には伝わらなかった。TRPGのセッションには鉄則がある。プレイヤーはマスターが期待するほど物事を理解してくれないのだ。伝えたいことがあれば十分な表現力をもって、卓の全員で幻想を共有し合えなければならない。これがまた難しいのだがな。これを今後の課題としつつ終わることとしよう。とはいえ設定自体が作成途中なのだから仕方ないとも言えるな。キャスト陣は自分の目的は果たしているしな」
こうさくいん「TORGのサイバー教皇領みたいなテイストもあるのでしゅね? 怖いでしゅよー神様に頼った必殺技もおちおち使えないでしゅーバラディスク・ポルトもだめでしゅー(>_<)」
ボス「それに、運命を変える力をもった強い人間が主人公であるこのゲームにおいて、それより上位の存在と考えられる天使やら神やらをどう扱うかは難しいからな。ただでさえ最近は円卓の騎士の生まれ変わりだの4000年生きた魔剣の主だの妄想がハゲシクなってきているからのう」
こうさくいん「クロイツェルは俺カックE病感染者でしゅね〜(笑) カイルも電波系でしゅ。なんか財団コズムに近いにほひがするリプレイだったでしゅね?」
ボス「(ギク)そ、そんなことはないぞ。(笑) さて今回はシリアスな話になったがパラディスCHÅINは軽い話もできるそうな。今後に期待しつつ終わるとしようか」
こうさくいん「次はリリーちゃんたちがウォーカーで出撃するでしゅね!(>_<) リクエストはBakk Staj BBSでお願いするでしゅよー。マロニエを口ずさみながら御旗のもとに集うでしゅ〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「そ、その話はいい加減やめんかΣ( ̄口 ̄;) だいたい今回のおまけトークはパブリックイメェジを崩すネタが多いぞ。せっかく財団が10万アクセスを越えたというに」
こうさくいん「10万コインだと景品は合体攻撃が買えるでしゅねー。スロットのレート100サクラ台で余裕でしゅ〜(>ω<)」

Anjel - Paradis CHÅIN



前編】【後編】

Imaj Materialz from [An Images for Your Website], [Purple Moon]. Thanks.

---Bar from V:tM---
...... La fleur de lutte ......

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