Gray Blood

〜灰色の血〜
同志いふると遊ぼう【前編】【後編


こうさくいん「続いてまたまたセッションなのでしゅね〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「うむ! 西方より同志いふる殿が来訪していた故がらりと趣を変えてもう1回と相成ったのだ。舞台は西の妖月オーサカM○●N、今日のコズムに香る空気はクトゥルフに魔界都市新宿だぞ。Xノフコズムのにほひが満載だ。ページもこうして黒背景でがらりと違うぞよ」
こうさくいん「マロニエはもう口ずさめないのでしゅね〜(>_<) 今回はみんなヒロイン度が低いでしゅね‥‥」
ボス「今回は和服ヒロインも出てこないしな‥‥しかし他に言うことはないのか。(笑) さて10expの伝説を始めひときわ異彩を放つ異色の面々が勢ぞろいだ」


And so, they appeared on the Staj of Mysterious Moon .....

Handle: 燕 輝月(ヨン・フィウォル)
Style: イヌ◎,カブト,タタラ● Aj: 26 Jender:
 特務警察ブラックハウンドMOONBASEの鑑識課のお姉さん。人手不足のために捜査もこなす。大津波の際には旧MOONBASEに留まり応戦、その時の怪我が元で軽度の遺伝子変異が発生。進行を抑えつつ、自身の体を研究している。韓国人、中性的な容貌の比較的マイペースな女性。
Player: いふる
▼【妖神演舞】の桃花源や当サイトのtwiLiteなど、我々近辺のWeb-NOVA界ではジツは古株のいふるどんが西から来訪でございますよ。ここはガゼン迎撃しましょう。こうさくいんクンの偵察によるとコスチュームに特にこだわりが深いそうです。ついでにメイドが一番だそうです。(なにが?)
 <※究極鑑定>や<※携帯許可>を備えた割とよく見かける調査系警官と見せつつナイトアームで<※自動防御>もしてきます。なんとジネティック・インプラントのEVEと辿狗と蝙蝠が入っています。韓国人というところが激レアでシブいですね。てゆーかニューロエイジに韓国はあるんでしょうか。(笑) つくづくN◎VAの外国は日本人に都合のいい外国ですにゃー。

Handle: “死の手”玖珠葉(クスハ)
Style: カブト◎●,ヒルコ,マヤカシ Aj: 19 Jender:
 フリーのカブトを営む人間とテングのハーフの娘。テング一族に生まれたものの幼い頃にイワサキに売られ、両親も死んでしまったために本人は人間世界にさらわれたと思っている。M○●Nに残された妹の七姫(ナナキ)も姉のことをほとんど覚えていない。激情を内に秘めており、怒ると怖い。N◎VAとM○●Nとを行き来しているが、妹の様子を見にM○●Nに帰ってきていた。
Player: 九龍
▼怖い人オーラを出しているテングのお姉さん登場です。すごいですよなんかM○●Nぽいキャラですよ(笑) <※一心同体><※生存本能>で仲間を護ってきます。エニグマは自らの腕と一体化する鬼の鉤爪(アヤカシ/鬼の一族)。その手でザックリやるポーズはフィアンマ・ウンガもびっくり。(謎) 妹の七姫はどうやら第三回大宇宙OFFの時に出てきたキャストのようです。

Handle: “姿なき”イフリート
Style: カゲ◎●,カタナ,カブトワリ Aj: ?? Jender: ♀?
 中近東諸国は社会現象にまで発展した“イフリート・ショック”に怯えていた。度重なる主要国全ての要人暗殺。関与容疑、5000件強。その姿を見て生き長らえた者はいない。ターバンの陰から覗く長髪、長身の姿という証言を除いては性別、年齢、本名一切不明。それがイフリート。ニューロエイジの伝説だ。
Player: 緋(あか) 【THE AFTER LIFE
▼Webの一部で囁かれている伝説のアサシン、ここに登場です。伝説によると「彼は伝説なので登場しません」と言ってプレイヤーだけが「はわぁ、かっこいい〜」とシビレているとか実は二人いてExp10なのはその為だとかいろいろなことが囁かれています。本当でしょうか?(ブルブルブル)
300Expバージョンだとその強さの秘密は<※影化>状態からの<※空蝉>+<■自動反撃>による2回リアクション攻撃でした。<■二天一流>+<※完全奇襲>で止め、同時に<■陽炎化>で姿を消します。今日はたったの10Expバージョンですがそれでも伝説を作ってきます。PL曰く「一撃でアレックスも倒せますよ」と言ってきます。なんでおいらのキャストを引き合いに出すんだよーん(嘘泣) 西の方までゴアイサツに行ったそうですからねぇ。フォフォフォ、その間に無機化学的秘密報告でゲ同の内部情報をクワッとGetぢゃよ。(とかいって妄想がハゲシイ以外は大して分かっていない)

Handle: マーチン・ダグラス 【Profile
Style: イヌ◎,カブトワリ,フェイト● Aj: 35 Jender:
 SSS刑事部捜査1課、タナカ・シンジ警部の部下の刑事。オーストラリア出身で若い頃私立探偵をしていた。バツイチで別れた妻と息子がおり、穢れた世界の裏側に通じている。
 いつもよれよれのシャツ、勤務態度は不真面目で不平屋、賄賂も当然のようにやり取りする男だが、勘は妙なところで鋭く、銃の腕も実は立つ。息子の養育費を実は毎月払っている。
▼すごいです。当サイトのコンテンツ登場頻度が激レア、一際異彩を放つ一番のマイナーキャラのダグラス刑事登場です。御存知の方はかなりのRI財団マニアですよビシッ! 「PL自らが逝ってヨシ宣言をしている」とかみんなヒドイことを言ってきます。住んでいるのはハリウッドの刑事物映画コズム、デザイナーズエディション版キャンベラAXYZに出てくるオートマグナムもこっそり持っています。
今回は推奨Expが100〜150、彼もTVシリーズ版でなく映画版にする必要があります。許可が出たので1Lvだけ持っている<■禅銃>で一丁の拳銃から2発同時に撃つ演出をすることにしました。

Ruler: X 【天真名井にて・改
▼同志Xです。急な迎撃でRLをすることになりました。例によって‥‥いや、同志いふる殿も来ることだし趣味全開のアクトになりました。和服ヒロインは出てこなかったけどネ!




Gray Blood


 司令室は騒然としていた。点滅する赤い非常灯。鳴り響くサイレン。スクリーンは全て「警告」と「ALERT」で埋め尽くされている。
『出力、78%。試験体は急速に成長を続けています。セントラル・エリア侵蝕まで推定46秒!』
「G型は!?」
『無理です! Gブロック閉鎖完了‥‥いえ、突破されました! 』
『外部電源への切り替え失敗。S型も間に合いません!』
「ダメね」白衣に身を包んだ黒髪の美女はさっと手を振った。
「総員退避。脱出ポッドへ急いで!」
 悲痛な面持ちで状況を報告していたオペレーターたちが、端末を放棄して蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。研究員たちが非常口へさしかかろうとした瞬間、メインスクリーンがもう手の打ちようがないことを告げ、そして砕け散った。

 轟音と共に、汚染地帯に秘密裡に建造されていたBIOS研究所は消滅した。その巨大な煙は空に向かって大きく昇り、不吉な茸の形を取った。
 遠くからそれを眺める死国のミュータントたちにもし十分な知能と知識があったら、災厄前の日本が被った原子爆弾の爆発による、キノコ雲のようだったと評しただろう。

 赤い月と胞子を含んだ風のもと、死国の夜が更けていた。研究所の残骸は早くも様々な微生物に覆われ、新たな地表へと変わろうとしている。かつて研究員であった肉片を、6本脚の肉食獣がガツガツと食っている。
 その中で、死体の一体が起きあがった。爆発の影響で白衣は汚れていたが、四肢も完全、不思議なことにどこも食料にされていない。
 死体の髪は黒く、長かった。司令室で指揮を取っていた女性だ。一度死んだ体はぎこちなく立ち上がり、よろよろとどこかへ進んでいく。歩きながら、死体特有のぎくしゃくした動きが徐々に滑らかになっていく。
 死体の目は虚ろだった。その眼球を、何か灰色のものが走り、そして人体内部へと消えていった。



Gray Blood


 小災厄の被害から立ち直りつつある特務警察ブラックハウンドMOONBASE。鑑識課の女性警官、燕 輝月(ヨン・フィウォル)巡査は、上司の命令で地下のモルグ(死体置き場)への階段を降りていた。
 アジア系の人種特有の肌に黒い瞳、黒のショートヘアの中性的な顔立ち。マイペース、よく言えば冷静沈着な彼女は隊員の中では若い方だが、鑑識官としての経験は豊富だ。
 サイバーサイコや汚染した人間やミュータントまで、M○●Nで見つかる死体は賑やかだ。燕も様々なケースを見てきた。だが、今朝は様子が違った。いつも平静な主任の顔がいつになく青ざめている。
「いいか、これまで3人が見て嘔吐した」 主任は不吉な事実を告げた。
「覚悟して見てくれ。君なら大丈夫だろう」
「買いかぶりすぎですよ‥‥」
 燕鑑識官は心の中で覚悟を決めながら、なんとか苦笑を浮かべる余裕があった。シーツがさっとのけられた。
 そこにあったのは確かに嘔吐して当然の光景だった。死体は大いに欠損していた。体のあちこちが溶け、硫黄のような酷い匂いが辺りに充満した。表面には菌類がびっしりと付着し、新たな苗床で盛んに活動していた。目と鼻と口だった穴からは成分不明の灰色の液体がじくじくと漏れ、煙を上げて顔面を覆っている。腹部にも穴が空き、溶け掛けた内臓がはみ出していた。
 咄嗟に半歩退き、ハンカチを口に当てたが、燕鑑識官は上司の期待を裏切らなかった。二人の前で灰色の液体はなおも溢れ、ゆっくりと皮膚を溶かしている。
「今朝になって持ち込まれた。今まで見た事もない症例だ。仏さんは地下街の浮浪者グループの一人らしいんだがな」
 やはりハンカチで口元を覆ったままの主任が、くぐもった声で説明する。
「死体の分析は別チームが行う。署長の許可済みだ。君が捜査に当たってくれ」
 MOONBASE鑑識課の数年の経験をもってしても遭遇したことのない、未知の事件。ハンカチを当てたままそれでも敬礼すると、燕鑑識官は早朝の地下室を後にした。

Gray Blood


 クスハはテンペランス南東部、祈りの壁で依頼人を待っていた。同じ年頃の人間の娘よりかなり身長は高く、その体躯はややスレンダーながらも筋肉質だ。髪は黒の短髪、M○●Nの厳しい戦いを見てきたその視線は冷たい。小脇にクリスタルシールド、腰に大型のサバイバルナイフを吊るし、ミリタリー系の服装で立つその姿は、界隈のM○●N傭兵部隊の面々のものに似ている。
 故郷に帰り、しばらく留まっていた彼女への仕事の依頼は、スーツケースを持ったある老人の願いを聞くことだった。そして件の老人は現れてすぐに確認できた。年齢は60過ぎ、猫背で背は低い。頭頂部が禿げ上がった髪の毛は周囲で爆発するようにもじゃもじゃと広がり、丸眼鏡の奥の目は異様に鋭い。
「貴方に守って欲しいものはこのケースですじゃ‥‥。わしがもう一度受け取りに来るまで、絶対に守っておいてくだされ。頼みますぞ、クスハさんや」
 漫画だったら狂気の天才科学者でもやっていそうな風貌だった。だがこのM○●Nでは、漫画のような事件もよく起こる。
「おいジイさん、名前は?」
 クスハの問いにも答えず、老人は脚を引きずりながら去っていき、祈りの壁の向こうに消えてしまった。
 スーツケースはかなり大きかった。旅行にも使えそうなぐらいだ。だが外面もあまり見ない金属で覆われ、厳重なロックが施されている。中に収められているものが普通でないことは容易に想像できる。
 クスハが困っていると、突然銃音がした。老人の消えて行った方だ。ほぼ同時の、急発進する車のタイヤ特有の軋れる音。
 カブトという職業柄こういう事態には慣れている。クスハはすぐに走り出した。

 自分の想像した通りの光景が目の前にあった。血を流して倒れている老人、逃げていく黒いリムジンの窓から、乗り出して銃撃した黒服が車の中に戻ろうとしているのが見える。辺りには薬莢が散らばっていた。
「もうここまで来おったか‥‥ケース‥‥奴らには‥‥渡してはならん‥‥ならん‥‥!」
「おい、しっかりしろっ」
 筋骨たくましいクスハの腕の中で、怪老人は息を引き取った。
 テングと人間の血を引くカブトは困り、辺りを見渡した。何も言わずに死んでしまった依頼人に、開けていいのか心配なスーツケース。
 ばらまかれた薬莢が気になり、クスハはふと拾い上げた。ニューロエイジの銃はほとんどがケースレスだが、薬莢式の銃も未だ存在する。
 護身用の拳銃やスタンダードなSMGに見られる9mm弾のものに似ていたが、少し口径が大きく、見慣れないものだった。ポケットに収めると彼女は立ち上がり、とりあえず警察を呼ぶことにした。

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 今まで何度か仕事で来たことはあるが、M○●Nへの亜軌道ジェットの旅はすべからく快適‥‥とは言い難かった。エコノミークラスだからな。何せこっちはしがない刑事、SSSの予算なんてたかが知れてる。やれやれ、たまにはファーストクラスで行きたいねぇ。
 私の名はマーチン・ダグラス。所属はシノハラ・セキュリティ・サービスN◎VA本部、刑事部捜査1課。そう、あのタナカ・シンジ警部補の下で災厄の街を這いずり回ってるのさ。
 警官が正義の味方だなんてのはシネマウェアの中の話さ。ここはニューロエイジ、灰色の世界だ。SSSだって企業警察だ。我々刑事も金のために仕事をする。おおむね金の分の仕事はするがね。
 私も若い頃は調子に乗ってたね。探偵の真似事をして、いい気になってオーストラリアのAXYZからN◎VAに渡って‥‥だが人生ってのは厳しいもんだ。やっぱりフリーより定職についた方が儲かるのさ。
 SSSに入って適当にやってたはいいが、ちょいと家の方をおろそかにしたおかげでワイフに愛想を尽かされちまった。息子も向こうが預かることになっちまったよ。刑事ってのはけっこう大変な職業なんだが‥‥まあ言い訳しても仕方ないな。
 そういうわけで、バツイチの刑事が特命を帯びて今このM○●Nに降り立つって訳だ。こんなのをシネマウェアの主人公にしたらぜんぜん売れさそうだな。あんまり期待しないでおいてくれよ。


 シノハラ・セキュリティ・サービス M○●N支部署長のキース・ハーバーは、白髪の混じった灰色の髪をした白人。その実績から抜擢されたSSS屈指の有能な男だ。出張してきたダグラス刑事と握手を交わすと、彼はブラインドを開き、外を一瞥した。妖月都市オーサカM○●Nの昼の風景が広がっている。新ファーサイドの活気、厳重に護られたニアサイド、ヘルズ・ゲートの向こうのテンペランス。
「なあダグラス君、君はこの街をどう思う? 人も、人ならぬものも棲みつき、猥雑を極めている。企業はしのぎをけずり、黒犬も好きように動いている。‥‥N◎VAではなく、こここそが今や災厄の街なのかもしれん」
「バイニンやら娼婦ならまだしも、胞子やミュータントまで飛び交ってるとなると、ちょいと物騒ですな」
「そうだな。いや、本題に入ろう。死国のBIOS研究所が一夜で壊滅したのは伝えたな。現地で確認は済んだが、二人の人間がまだ行方不明のままなのだ」
 ファイルには二人の人物の顔写真が写っていた。年を取った白衣の老人に、長い黒髪と知的な目をした妙齢の美女。
「なあるほどねぇ。研究所といったら、白衣の美人がいるって相場が決まってますからな」
 軽口を叩くダグラス刑事に、署長は今回の捜査が自分の勘から来る個人的な指示であり、表立って動くのを避けたいM○●N支部要員の代わりであること、経費の他に報酬を用意することを告げる。
「そいつは有難いんですがね、署長」 N◎VAから来た刑事はおどけて肩を竦めた。
「私の勤務評価は御存知でしょう。どうしてまた私が?」
 ハーバー署長は席につくと両手を組んだ。「私も人を見る目はあるつもりだ。探偵の経験のある君の勘に期待したいのだよ」
 署長の目が光った。「それとも――その腰の銃は飾りかね」
「いやいや、こっちは捜査一課だ」 ダグラス刑事の様子は変わらなかった。
「相手してるのはケチなバイニンや意気がったガキどもばかりですよ。そうそう、銃を撃つ機会があるわけでもないですからね」
 署長を前にふざけてはいたが、刑事は任務を拝命すると署長室を出ていった。

Gray Blood


 砂漠の夜は静かだった。ゆっくりとうねり、地平線まで続く砂丘には人工物が一切見当たらない。天上からは月が静かに、無慈悲に、生物にとっては生きるのすら厳しい砂の王国を照らしている。
 目を転じるとそこには切り立った崖。地表には転々と死体が散らばっていた。軍服を来た数十人の兵士たちはその全員が、ただ一刀で絶命している。最後の生き残りである指揮官は一人、震えながら壁に背を押し付け、喉元に円月刀を突きつけられ、“伝説”と対峙していた。
「‥‥ここは嘆きの壁と呼ばれている。嘆きがひとつ、増えちまったな」
 フードの奥から、伝説が声を発した。伝説を目の当たりにした指揮官の首が飛び、鮮血が乾いた地面に飛び散った。
「‥‥あと100kmか」 人影は辺りを一瞥した。
 人相を覆い隠すフードに長髪、体の輪郭を隠す長衣。中東諸国で“イフリート・ショック”と恐れられたその源が、ニューロエイジの伝説の源がそこにいた。姿なきイフリート。暗殺関与容疑5000件超、腕は世界最高レベル、プロフェッショナルの暗殺者。
『流石はMr.イフリートですわ』
「まだ生き残りがいたか」
 軽く振った両手から、十本以上もの大小の刀が落ちて来る。瞬時に振り返りながら、イフリートは内心驚きを感じていた。ニューロエイジの伝説となったこの自分が、まったく気配を感じなかったのだ。
 月を背後に立っていたのは妙齢の女だった。髪は黒の長髪、目にはミラーシェード、スーツを着込んだ体の輪郭はスレンダーで、美人といっておかしくない。そんな女が、伝説のアサシンの背後を取ったのだ。
 イフリートの左手が一閃し、小さなナイフが飛ぶ。その刃は‥‥女の首の側をかすめ‥‥その背後にいた小さな蠍を月の砂漠に縫いつけた。
「一番近い井戸まで10kmはあるぜ」
『依頼があるの、Mr.イフリート。私を‥‥殺してください』
 初めての依頼だった。殺す対象が依頼人なのは。
 イフリートは武装を解き、焚き火の方へ向かうと、腰を降ろした。薬缶を火に掛け、自分の分だけホットミルクを沸かす。女は動かなかった。
「どこから来た」
『‥‥向こうからよ』
「それは天国かい」
『‥‥少し違うわね』
 女は動かず、感情を抑えているようだった。イフリートはカップを置き、立ち上がると夜空を見上げた。
「いい月だ。月齢が満ちるとき‥‥鼓動は高まり‥‥血流が増す。動脈切断が‥‥楽になる時間だ」
 常人の目には捉えられない動き。蜃気楼の如く女の側に突如現れたイフリートは、最小限の動きで女の頚動脈をナイフで切り裂いた。
 乾いた大地に再び真紅の血が染みこんでいく。だが次の瞬間、5000人余りを殺めて来た暗殺者は自分の目を疑った。信じられない再生速度で、女の首の傷が塞がっていくのだ。何かの液体らしきものが再生の寸前、傷口を覆っていくのが見えたような気がした。
『私は‥‥水凪(ミナギ)と申します』
 現れた時と同様、ミラーシェードの女は唐突に消えた。後にはハードコピーの1枚の紙が落ちていた。月光の照らすその紙面には、オーサカM○●Nテンペランスの概略図が記してあった。


こうさくいん「わわわー凄腕の暗殺者登場でしゅよ〜ていうかこの砂漠は一体どこでしゅか〜(゚o゚)」
ボス「ジツはさっぱり分からぬのだ。RLと秘密裏のうちに事前に少しだけ相談してこんな場面からいきなり始まったらしいぞ。さすがスゴイ人は妄想度が違うのう(ニヤニヤ)」
こうさくいん「じ、自作自演みたいでしゅ〜(笑) それに経験点10点て一番弱いじゃないでしゅか〜(笑)」
ボス「くくく。このコンテンツでは財団の巧みな偽装により隠されているがジツはその通りだ。フルスクラッチで<■陽炎化>まで取っているので実際に消えることができるがな。今日の伝説は神業で創るらしいぞよ。ちなみに300Expと10Expバージョンがあるのは、ジツはイフリートは二人いるからだそうな。謎が深いのう」
こうさくいん「んんーよくスタイルを見るととても前向きでしゅねー。即死系神業で倒されたらどうするのでしゅか?( ̄ー ̄)」
ボス「うむ。死体は闇に消え、イフリートの伝説だけが残されるのだ。イフリートは伝説ゆえ不死身だ。ということで別のアクトでは平然と出てくる。と風の噂で聞いたのだが冗談なのか本気なのか分からんのう(ニヤリング)」
こうさくいん「そんなのズルイでしゅよ〜(笑)」

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 祈りの壁での事件の報を受けた燕鑑識官は、第一発見者のクスハと合流した。前に暴動事件が起こった時、このカブトに協力してもらったことがある。事情を聞いた彼女は自分の追う事件との関連に気付き、しばし行動を共にすることにする。
 M○●Nのアンダーグラウンドでも有名な亡霊医師アッシャーの意見でも聞こうかと、地下街へ入った時。彼女たちの実力を知らない一団が声を掛けて来た。
「ヘヘヘェ‥‥ネェちゃん達がこんなとこに来るなんて珍しいナ」
「用事なんかやめてサ‥‥オレたちともっとイイコトしないか?」
 浮浪者同然の暮らしにしてはよい体格、威圧的な鋲付きのレザー。髪の毛は色とりどりに飾り立てた鶏冠のようだったが、その下の頭の中身は詰まっていないのが一目瞭然だ。身の危険を感じた燕鑑識官が左手のガントレットを構え、腰の後ろのバックアップ用小型拳銃に手を伸ばそうとした時。それより早くクスハが動いた。
「‥‥お前等、相手を見てからものを言え」
 娘のものとは思えない怪力に大の男が軽々と吹き飛ばされる。彼女の腕には筋肉が浮き上がり、右手の先には鬼のものの如き禍禍しい爪が出現していた。パンク達はあっさりと降伏した。土下座しながら、自分たちのリーダーのいる方を指差す。

「そいつぁきっと、イチだろうよ」
 体の大部分をサイバーに置換した浮浪者たちのリーダーは、煙草を吹かしながら二人に答えた。
「何日前だったかな、地下街の入口辺りにすげえイイ女がいたのさ。イチは女好きだもんで、早速手を出しちまったのさ」
 鑑識課で3人が吐いた変死体の身元が分かった。そのイチという不運な男は微笑んだ女についていき、いきなり接吻を受けたという。直後、イチは目と鼻と口から奇妙な液体を溢れさせ、苦しみながら逃げ惑っていた。さしものパンクたちも怖くなって逃げ出したと言う。前にも、地下街の奥底から戻ってきた人間が溶けて死んだことがあったそうだ。
 女鑑識官と女ボディガードのコンビは顔を見合わせた。事件はますます不可解になってきた。これは地かに居を構える亡霊医師レドリックや‥‥ゾヲン先生の大宇宙の力を借りるしかないのだろうか?

 パンク達は頭を下げて二人を見送る。その物陰で、煙草をふかしながら話を立ち聞きしている人物がいた。ネクタイを緩めたよれよれのシャツに、銃を隠すジャケットをひっかけた褐色の髪の白人。
「フゥ、M○●Nてのも厄介な街だねぇ‥‥」
 マーチン・ダグラス刑事だった。短くなった煙草を投げ捨て、地下街の外観悪化に協力すると、刑事もその場を後にした。

Gray Blood


 オーサカM○●Nテンペランス。小災厄の時に放棄されたこのエリアはミュータントや胞子との戦いの最前線であり、汚染も治安もおおむね酷い。その中でも旧ブラックハウンド基地は損傷が激しい。かつては牙王に率いられた黒の猟犬たちが戦ったこの基地も、今はもう蟲たちの住処だ。
 音もなく、足音もなく、気配を絶ち、空気すら騒がせずに“伝説”は現れた。あの女がここにいるという目撃情報があったのだ。
「‥‥根が浸蝕している。崩れるかもしれんな」
 顔を隠す厚いフードの奥から、イフリートは声を発した。太い木の根と、様々な植物が基地の外壁をを覆っていた。確かにハウンド基地が本格的に崩壊するのもそう遠くないだろう。
 一回の跳躍でメインゲート前に移動。手に入れたカードをリーダーに通す。

--Axess Denied--

 スクリーンに赤い文字が浮かび上がり、警告音が鳴った。何度試みても同じだった。砂にまみれた鋼鉄のメインゲートは厚く、いかなイフリートといえど剣で斬れるものではない。
「‥‥‥‥!」
 気配を察し、イフリートは振り返った。誰かが近付いてくる。
 ――亡霊は影と共に消える。
 長衣が翻った。次の瞬間、“伝説”の姿が消えた。ゲート前に溜まった砂も崩れず、空気の揺らぎすらも起きなかった。


「あれまぁ、天下の黒犬さんも寂しいもんだ」
 呑気な口調で呟きながら近付いてきたのは、マーチン・ダグラス刑事だった。ハウンド基地を見上げ、胸ポケットからカードを取り出すと、ゲート側のリーダーを通す。

--Axess Denied--

 先客の暗殺者と同じように、招待されざるSSS刑事は断られた。だがマーチンが備え付きのテンキーで思い出したように何かを入力すると、薄汚れたシャッターが鈍い音と共に開いていった。中は真っ暗だ。
「たいていこういうトコの番号は決まってるからな、」 会心の笑みをひととき浮かべ、マーチンは用意した簡易型マスクとマグライトを取り出しながら中へ進んだ。
 再びシャッターが閉まる寸前。見えない影が、暗闇へと走った。

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 クスハにスーツケースを託した老人は、消滅したBIOS研究所のクレムツ・シンイチ博士その人だった。燕鑑識官たちハウンドのデータベースでも行方不明となっていたが、これで死亡が決定したわけだ。残る行方不明者は一人。
 スーツケースは分厚いチタン鋼で造られていた。ほぼ全ての弾丸射出武器と爆発物を防ぎ、モノワイヤのような特殊武器でも撥ね返す。千早やイワサキのような――ごく一部の巨大企業でのみ準備できる代物だ。この中には、それだけ重要なものが収められているということだ。緑林街の一角で一休みした二人は、厄介な物品を前に考え込んだ。用意万全で燕鑑識官が持ってきた鑑識用器具一式でも、開けてみないと大したことは分からない。
「待って。アタシが試してみる」
 テングの集落で婆たちに習った技を思い出し、クスハが精神を集中する。優秀なマヤカシたちは人や物体や想いを繋ぐ糸を辿ることができる。それは同時に、時として辿った先にあるものからの影響を直接被ってしまうことも意味するのだが。
「★@&%♂♯?!」
「だ、大丈夫ですか?!」
 スーツケースの中にある何かの力を受けたクスハは、そのまま目を回して後ろに倒れてしまった。

Gray Blood


 旧ハウンド基地内部はねっとりとした暗闇に覆われていた。かつての特務警察の威光も消え、現在の基地の中に棲んでいるのは、見ないほうがいいような蟲の類だ。
 マーチン刑事の照らすマグライトの明かりが、一条の線となって廊下を照らしていた。打ち捨てられた基地内は雑然としていた。そのままにされた様々な機具や、埃や、胞子や有機物に覆われ、壁の輪郭も変わっている。ところどころに蜘蛛や――あるいはもっと気色悪い生物が巡らした巣が広がっていた。
 マーチンの足元を嫌な感触が襲った。悪態を付くとSSSの刑事は足を上げ、踏みつけたものをライトで照らした。
 ぶよぶよとした芋虫のようなものが潰れかけた体でもがいていた。緑色の体液が床に広がり、蟲は動かなくなった。だがその液体からは煙が立ち昇っている。マーチンの右の靴からも煙が上がっていた。踵の部分が少し溶けていた。
「チッ‥‥まだ大して使ってないのに」
 毒付き、マーチンは先へ進んだ。どこかに端末があるはずだ。
 その横を影が共に歩んでいた。無念無想の状態にある凄腕の暗殺者は自らの存在を完全に消し去ることができる。マーチンも、基地内に巣食う全ての蟲もが彼に気付かず、無意識のうちに避けていた。ああイフリート、伝説であるが故にその姿は語られないのだ。音もなく歩み、軽やかに地を蹴って側転さえ始めても、回りに何の変化も起こらない。

 マシンルームを見つけたマーチンは端末を立ち上げた。基地内部の非常用電源はまだ生きているようだ。スクリーンに久方ぶりに光が灯り、アクセスしてきたBH隊員を出迎える。

TerraWare(R) TerraWare Windows NT (R) Personal Workstation
Verjion 4.95 (Build:2130: Servise Pakk 24)

 十字の指輪を嵌めた黄金の蜘蛛が率いるテラウェア社は、今や世界のデファクト・スタンダードだ。1世代前のOSが起動を始めた。

> -Simple Mode- (No Ikon assist)
> Interface:Keyboard only

TerraWare Windows Network:MOONBASE Group:鑑識課
administrator 権限でアクセスします
  ユーザ名:
  パスワード:

 端末のある机の上をマグライトで照らし、少し考えた後でマーチンが指を走らすと、マシンはアクセス者を隊員と認めてくれた。ヘルプメニューから基地内の地図が立ち上がる。
「パスワードは内線番号の代表か‥‥内部向けだと何処でも同じだな」
 束の間ニヤリとしたSSSの偽者が画面を確かめると、地下のモルグに強調のコメントが付属していた。同じ部屋の隅でポケットロンを取り出すイフリートの姿は、もちろん彼の目には映っていない。


 私が地下への階段を降りようとした時、また足元で嫌な感触がした。
 思わず声を上げちまったね。そりゃ、刑事だって人間だ。怖いものは怖いし、嫌なものは嫌だ。だが慣れや、自分を制御する意志が、人間を少しだけ強くしてくれる。
 マグライトを照らすと、そこにあったのは人間の頭蓋骨だった。芋虫の化物を踏み潰すよりは幾分マシだな。それは変色し、何かに齧られたように、あちこちが欠けている。
 かつては目のあった場所から、何かがぬっと出てきた。そいつはムカデみたいな長い蟲だった。蛇よろしく頭蓋骨の周りに巻き付き、ゆっくりと一周している。
「ヒッ! おおぃおぃおぃおぃ驚かすなよ。‥‥フゥ。しかし入ってきた人間にはすぐに襲いかかってくるのかと思ったが、そうでもないんだな」
 私の声は暗い基地内に響き、そして消えていった。
「ま、どうせ襲うんだったらしがない刑事よりも、若い女の子のヒロインの方がいいだろうしな。なぁお前さん、そうだろう? んん?」
 私が再び頭蓋骨の方に光を当てると、そのムカデもどきの蟲は突然何かに怯えるように、頭の向きを変え、私と反対の方向へ逃げ出した。
 光を避けたわけでもない。私を天敵と認識したわけでもないだろう。蟲の頭で考えられる状況の変化は起こっていないはずだ。
「‥‥誰かいるのかね」
 私は背後をマグライトで照らしてみた。もちろん何もいなかった。


こうさくいん「イフリートはマスクもなんにもしないで大丈夫なのでしゅか? 蟲踏んだりしないのでしゅか?(゚o゚)」
ボス「“伝説”だからな。ここまで妄想がスゴイと手がつけられないのう。(ニヤリング) ちなみにライトを照らしながら歩くマーチン刑事の横を側転しながら進むイフリートの図は考えてみるとかなり愉快だぞ。想像するがいい(酷)」
こうさくいん「(ぽわぽわ〜ん)ぎゃはははでしゅー( ̄ー ̄) モルグでおどかされるまでマーチン刑事はずっと気付かないまま進むのでしゅね?」
ボス「PL同士が分かっているからこそやれる演出の典型だな。最近巷で話題のオフィシャルの高経験点リプレイ『ナイトブレイク』でも同じような場面が多数ある。プレイ環境に左右されてしまうが、こういうのもよいものだ」

Gray Blood


 M○●N地下街の奥には、汚染の影響をまったく受けずに暮らしている変人がいる。
 亡霊医師レドリック・アッシャー。この街の住人にそぐわぬ美貌の持ち主。その天才的なメスさばきはM○●N内外に知れ渡っている。
 クスハと燕鑑識官は診療所に赴いていた。ホムンクルスというのか、人間離れした美貌を持つまったく同じ外見の二人の看護婦が、主人が忙しいことを告げる。二人が案内されたのは診療所の側にある喫茶室だった。
 落ちついた室内にはクラシック――燕鑑識官は『魔笛』だと分かった――が流れ、診察の順番待ちや治療が終わった通院者たちが、思い思いに茶を飲んだり雑誌を読んだりしている。
 意外な展開に二人は顔を見合わせたが、勧められるままに席につくことにした。適当に飲み物を頼み、待つことにする。

「いやー、相席になってしまってすいませんね。M○●Nに来てこんな美味しいパフェが食べられるなんて、幸運だな〜」
 テーブルでぎこちなく待つ二人の向かい側に、一人のクグツが座ってきた。長身痩躯に丸眼鏡、柔らかい物腰の日本人。ジャパニーズ・カンパニーマンは美味しそうに、名物オーサカパフェの抹茶クリームをすくい上げた。よく見ると、他のテーブルにも席は空いている。
「カブトのクスハさんに、そちらがハウンド隊員のヨン・フィウォルさんですね。オーサカパフェは食べないんですか? 美味しいですよ?」
「‥‥アンタ、誰だい」
 ジャスミン茶を飲んでいたクスハが、低い声で問いかける。
「私ですか? えーと私は‥‥そうだ、木村と申します! 実は、あなたがたの命が欲しいんですよ」
 木村はそう言うとアイスクリームに舌鼓を打った。オーサカパフェのファーサイドとニアサイドとテンペランスに見立てた3色アイスは、どれも味が違う。燕鑑識官はびっくりしてテュングレ茶(玉竹茶)のカップを置いた。だが相棒のクスハは、少しも驚かずに男を睨んでいる。
「困ったなぁ。もう少し反応してほしいなぁ。私としては、クスハさんがメインで、そちらのヨンさんはおまけ的な位置付けなんですけどねぇ」
 にこにこしながら木村は忙しくスプーンを往復させた。もうパフェグラスはほとんど空だ。燕鑑識官はもう何も言えず、二人のやり取りを見守った。
 最後に残ったクリームを綺麗に片付け、種なしのさくらんぼを飲み込んだ木村は、ナプキンで口の周りを拭いた。
「M○●Nは本当にいいなぁ。クロームばかりの摩天楼には飽き飽きしてたところなんですよ。ところで――」
 丸眼鏡の奥の瞳が微笑んだ。「――そのスーツケース、渡していただけませんかね?」
「やだね」
 次の瞬間、光が走った。


 クスハの手に現れた禍禍しい鬼の鉤爪が、慇懃無礼な男のいた場所を引き裂いた。並のジネティックインプラントより遥かに大きく、禍禍しいその爪は、テーブルに大きな傷をつけた。
 一瞬前に飛び退いていた木村の背広を、爪は軽く引き裂いたはずだった。だが様子がおかしい。靄に包まれたように、彼の体がぼやけているようなおかしな印象を受ける。
「斬りましたね? 私を斬りましたね?」
 甘党のクグツはにこにこしながら言った。
「私の体は気体なんですよ。だから――斬れないんです」
 何と言う常識外れな相手なのだろうか、この正体不明のカンパニー・マンは。魔界都市オーサカM○●Nには様々な変異者がいるが、このようなことを自分から述べる奴はいるまい。クスハたちの相手は魔人だったのだ。
 木村が右腕を振ると、腕の先が霧のようにぼやけ、空中に溶け込むように消えていく。数瞬、どちらも動かなかった。
 燕鑑識官は空気の異変に気付いた。何かが変だ。何かがクスハを襲おうとしている。新型の“ナイトアーム”ガントレットを嵌めた左腕が咄嗟に動いた。手近のテーブルのテーブルクロスを引っ剥がし、クスハの前方を覆うように投げつける。風が起こり、何かが押し戻された隙にクスハを庇って後退させる。
 木村は感心したようにそれを眺めていた。魔人と燕鑑識官の間にぽとりとおちたテーブルクロスは、しゅうしゅうと煙を上げている。
「困りましたねぇ。二人一緒だと殺しきれませんねぇ。どうしましょうねぇ」
 木村は困ったように頭を抱えていた。やがてぽん、と手を叩くと頭を上げ、身構える二人ににこやかに告げる。
「じゃ、失礼します!」
 登場した時と同じ理不尽な速さで、正体不明のクグツは姿を消した。後には滅茶苦茶になった喫茶室と、割れたカップと皿と、呆気に取られた他の客と、二人が残された。
「アタシを狙ったのが運の尽きだ」
 クスハは誰もいない虚空に向かって呟いた。だが木村を追うまではしなかった。
 燕鑑識官は煙を上げるテーブルクロスの残骸にそっと近付いた。穴が空き、焼け焦げたような跡が残り、一部が溶けている。まるで強酸性の物質が付着したかのようだった。


ボス「菊地テイストでゴイスーな敵が出てきたぞよ。解説でもするのだ」
こうさくいん「スタイルはクグツ,バサラ,カゲ。<※元力:水雲/正>がその力なのでしゅよー。ていうか体が気体なんてそんなのありでしゅか〜(笑)」
ボス「もう言いたい放題だな‥‥まあ魔界都市コズムには非常識な人物しかおらぬゆえよかろう。(笑) この医院の主であるレドリック・アッシャーからしてまずあの<白い医師>の弟子みたいなものだからな! なっはっは!」
こうさくいん「ううークスハたち頑張るでしゅよー。フィアンマ・ウンガからコンプスティオーネにレベルUpするでしゅ〜(>_<)」




 何処とも知れぬ一室。奥に座する偉丈夫の左目には眼帯が嵌っていた。この時代では義眼にすることも容易だが、男は黒く灼いた刀の鍔を眼帯に使っていた。頑健な体格は暗緑色の軍服に包まれ、その胸には菊の徽章が光っている。このニューロエイジの各国の中で唯一まだ実体が掴めず、世界最高の力を持つ、赤道直下のあの国だ。
「副指令。木村が失敗しました。“X作戦”を開始しますか?」
 問いかける部下もまた純血の日本人だ。副指令と呼ばれた眼帯の男は鬣のように後ろに流れる長髪を揺らし、首を振った。
「いや。神威(カムイ)を呼べ」
 敬礼して退出する部下。しばらくして別の男が入ってきた。上から下まで白一色の白衣に、眼鏡の知的な容貌。だがこの神威という男もまた、理不尽な力を持つ魔人なのだ。ああ特殊部隊ヤマタノオロチ、そこは魔人たちの巣窟なのか。

Gray Blood


 黒犬さんの基地でも、陰気な死体置き場は地下にあった。まあそうだよな。癖でなんとなくノックをしてみると、ドアの表面が沈んだ。鉄のドアとは違う少し柔らかいような感触だった。
 思わず手を引っ込めたね。このドアは有機物で出来ていた。ドアそっくりに擬態した何かの生き物だったんだ。フェニックス・ソフトウェアの出してる何かの迷宮探検ゲームにでも出てきそうだな。
 私が思い切り蹴ってみると、ドアの形をした何かはあっけなく開いた。機能まで完全に複写しているようだ。しかしこんなところじゃ、だぁれもドアを開けになんかこないだろうに。やってて虚しくないのかね。
「入りますよ‥‥」
 何となく声を出しながら、私はマグライトでモルグを照らした。中は大きかったが、ここはあまり汚染されていないようだ。ずっと使われていない解剖用の設備やら台やら端末やらが、隅に放置されていた。
「相変わらず陰気だな」 私の声は、暗いモルグに吸い込まれるように消えていった。
「ハウンドの鑑識さんにも、こういう所が好きな物好きがいるんだろうねぇ。まーったく気がしれないぜ」


 遥か地上、レドリック医院で燕鑑識官がくしゃみをしていた頃。マグライトを手に進むマーチンの背後から、突然声がした。
「‥‥久し振りだな」
 SSS刑事の顔色が変わり、額を一筋の脂汗が流れる。
 次の瞬間、彼は左手にライトを持ったまま振り返った。その右手にはいつの間にか小型拳銃が現れている。
「どれほど抜き撃ちが速くても――」 虚空から声がした。
「――見えないものは撃てない」
 仰天してマーチン刑事が見守る前で、右手の先に構えたままの9-WHピストルから、チェンバーがゆっくりと抜かれた。
「最近の警官は――相手も確認せずに撃つようになったのか?」
 宙に止まったチェンバーの中から9mm弾が一発づつ抜かれ、床に落ちていった。その乾いた金属音が、無人の旧ハウンド基地に響き渡った。
 マーチン・ダグラスの神経がようやく平静を取り戻し、声に聞き覚えがあるのを確認する。N◎VAを騒がせた凄腕の暗殺者イフリートによる連続殺人事件――犯人は名を騙った別人でうやむやの内に本物に消されたのだが――の時、捜査が打ち切りになってから接触できた中東の“伝説”。プロの殺し屋だ。
「さあね、M○●Nじゃどうだか知りませんよ。たとえば‥‥相手が世界の伝説レベルの相手じゃね」
 声に落ち着きを取り戻したマーチン刑事の前で、世界の伝説レベルの相手が前触れなく姿を現した。厚いターバンに人相を覆い隠す布。その奥から鋭い瞳だけが覗いている。長衣の下には円月刀からSMGまで、暗殺用のあらゆる武器が隠されている。
「そういう殺し屋に狙われたら逃げる方法はただひとつしかない」
“姿なき”イフリートはマントの下からクレッドクリスを取り出した。「狙われないことだ」


 取引の条件は自分の存在を秘密にすること、例のBIOS研究所の女を洗うことだった。順当な線だ。中東のターバン野郎が投げてよこしたクリスとデータチップを拾うと、私は頷いた。奇妙な共同戦線の成立って訳だ。
 汚いって? おいおい、ニューロエイジを動かしているのは金だ。そんなことは君だって分かってるだろう。SSSは、管轄外の容疑者を追うほどヒマを持て余してる訳じゃあない。
 それに私だって命は惜しいさ。正義の意味を履き違えた警官は早死にするもんだ。考えてもみたまえ、こんな陰気臭いところで死んでどうする? 名誉の殉職なんて葬式ぐらい盛大にやってくれるかも知れんが、本物の死体はここで蟲に食われて骨も残らないなんて、死んでも死にきれんよな。

BIOS特殊研究チームのクレムツ・ケンイチ博士はもう死んだ。残るはそのミナギという美人ひとりだ。あんたに接触してきたとはね‥‥」
 殺すのに失敗した時のナイフについた灰色の液体を分析したところ、ほぼ不老不死の特殊な菌類が検出されたという。
「――ああ。その女は姿を消した。このテンペランスの何処かにいるはずだ」
 イフリートが答えた時。また前触れなく声がした。
『その通り。ここにいますよ』
 心臓が飛び上がりそうだった。世界最高レベルの殺し屋に脅かされたと思ったら、今度は例の女だ。流石のイフリートも気配を感じられなかったことに驚いているようだ。
『早いですね、Mr.イフリート。オードブルの料理人は見つかりましたか』
「‥‥もうすぐだ。必ずお前は殺す」
 ミラーシェードで目の辺りはよく見えなかったが、確かに写真で見た通りの黒髪の美人だ。スーツもよく似合っている。だが妙に引っ掛かるものがあった。勘ってやつだな。あの女の中にいる得体の知れない何かが、あの女を死ねない体にしているんだ。
「あー」 無視されているようなので、私は社章を見せると女に声を掛けた。
「こっちは警察機構だ。電話一本だけで、あんたを街じゅうで指名手配するようにもできるんだぜ」
『M○●Nならできるでしょうね』 女はやんわりと微笑んだ。
『でも‥‥死国では無理ですよ』
「(やっぱりダメか‥‥)」 私が心の中で諦めた時、また女は前触れなく姿を消した。

GB cell Kulture Projekt

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