エレガントN◎VA第13話 ルナティック・オーヴァドライヴ

〜小粋にエレガントPLAY第13回 ルナティック・オーヴァドライヴ〜
-通常版-
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-ルビの入るIE5版-
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こうさくいん「ジツは読者からのお便りがきてるのでしゅよー。次回作のテーマに関する要望なのでしゅ」
ボス「ほうそれは幸先の良い。読んでみよ( ̄ー ̄)」
こうさくいん「“夢と希望と明日と正義を讃える”話が読みたいとのことでしゅ。最後は勝利のポーズ希望だそうでしゅ。某サークルのスゴイ人の後輩の某研究室からのお便りだったでしゅよ。やっぱりマロニエを口ずさむでしゅよ! 4も発売決定、今度は好きな5人を選べるのでしゅよ〜 o(≧へ≦)9゛」
ボス「ま、またその話か Σ( ̄口 ̄;) ええぃいい加減にせい。ネタを引きずりすぎぢゃあ。今回のコズムを支配するのはクロームと軍人と軌道に2.0.2.0.だ。ニューロマンサーとダイ・ハードとバキに監督ジョン・ウーで鳩を飛ばすぞ。さあキャンベラ・シティ・ブルースを口ずさみながらTVの空きチャンネルと同じ色のあの空にランを仕掛けてやるのだ」


And so, they appeared on the Staj of Wheel of Fortune .....

Handle: コード・ブリューナク
Style: カブトワリ◎●,カゼ,ニューロ Aj: 2? Jender:
 運び、暗殺、破壊工作、あらゆるミッションを請負い、独力でランするフリーランスの何でも屋。“ジョイス”に集う凄腕のプロのランナーたちの中でもとりわけ洗練された寡黙さと影を持つ。任務用に多くの特殊装備を揃えており、プロ意識が高く、性格は辛辣。かつてはロシア軍で戦闘機械として育てられた。
 フル・チューンアップされた高速攻撃ヘリ“ティンダロス/ハウンド”、改造された自律型攻性攻撃プログラム“ティンダロス/ワイバーン”、そして驚異的な狙撃性能を見せるカスタム大口径スナイパー・ライフルは千挺にひとつの名銃だ。魔槍ブリューナクの標的に捉えられた時、神々すらも逃れることはできない。
Player: 緋(あか) 【THE AFTER LIFE
▼緋さんです。まあ、今度から先生とお呼びして差し上げなければなりませんわーん(ニヤリング)
 豊富な装備で強化したタイプのキャラクターであるブリューナク、EYEランドでフィーバー!に続いて再登場。Exp242、時代はナイトブレイクでアウトフィットも暴走中。狙撃銃は遂に“ワン・オブ・サウザンド”化、ワイズマン相当の高速ヘリも“ミラージュ・ダンサー”で完全遠隔操作可能。元シャドウランナーです。(ぽわぽわ〜ん)
 その筋に詳しい方はご存知でしょうがブリューナクというのは実はケルト神話の光の神ルーの携える槍の名前ですね。PSOにも出てくるような。ということは、春の女神ブリジットが守護神の琴音くんから見るとジツは家来レベルなのか?(笑)

ブリューナクの魔槍より 何人も逃れることあたわず。

Handle: “日本贔屓の(pro-japonais)”イングリット・美麻(みあさ)
Style: カブキ◎,タタラ,ニューロ● Aj: 27? Jender:
 ヌーヴにあるメガ・プレックス、パラディスCHÅIN東地区トロン街にある有名ショップ“AKIHABARA”の店主。波打つ金髪に長身のフランス美女だが大の日本かぶれであり、着崩した和服を好む。数年前世界を巡った時に学んだのが間違った日本であったがために、あちこち間違っている。
 光輝く虚数の海で自在に操るアイコンも全て間違った日本風だが、ハッキングの腕は一流。輝くストリームのアウトサイドからのアシスト、物事の外側からの冷静な観察を常にその旨としているのは、過去のある経験からだというのだが‥‥?
Player: 最果 【FETHERED IMAGINATION
▼ニューロの彼女に与えられる事前コネ、3年前に失踪したニューロの“カウント”ルーパス・クワインのモデルはあの不朽の名作『ニューロマンサー』のケイス。まあ、まあ、サイバーデッキはカックEくホサカ製ですか? クライマックスはヴィラ・ストレイライトですか?
 蓬莱学園の中村博文画伯作の金髪女性風らしいこのイングリット、ちなみに第12話『百合の咲く場所で』にちょこっと出てきたパラディスCHÅINのゲストです。まぁクロスオーバー。なんとこの『パラディスCHÅIN都市設定資料集』、8/10のコミケ一日目はT-07b「FETHERED IMAGINATION」で無事登場の見込みとのこと。掲載ゲストを創ってるそうです。さあどこまで完成するんでしょう?(ぽわぽわ〜ん)

そは電脳魔術を極めしものなり

Handle: “Rusty Handz”楠原 晶(クスハラ・ショウ)
Style: タタラ◎,カタナ,チャクラ● Aj: 26 Jender:
 ヨコハマLU$Tリトル・カルカッタにあるあの心霊治療院で、“Dr.EVE”の助手としてLU$Tを奔走する青年。医術にも通じている。
 2年前、何時の間にか治療院に姿を現した前の記録は巧妙に隠されている。かつてのその名は“Killing Handz”であり、その腕が錆付く前は幾多の命を奪ってきたともいう。かけがえの無い出会いが彼を、命を救う側に変えさせたというのだが‥‥? だが未だに、彼を戦士として見る者も多い。サイバー不適合症であり、完全ウェット。
Player: 九龍
▼おおっとなつかしの桃花源キャラ復活。東伊吹先生の助手の楠原クンですよ。見てますかナオミもといS・平井さん! 若竹御嬢様に8の旦那も!(笑)
 手刀で空をも切り裂く楠原クンは元々はどうもシャドウランのフィジカル・アデプトぽいイメージのようです。シャドウランナー祭り開催中。アデプトってカックE!(ぽわぽわ〜ん) 富士見のリプレイでも大活躍していましたねー。殺ちゃんLOVE〜(心にもないことを言う俺)

殺戮の手、癒しの手

Handle: “双焔殺手”トニー・ウェイ 【Profile
Style: カリスマ◎,カゲ,カブトワリ● Aj: 34 Jender:
 N◎VA中華街の一角にある料理店兼ホテル《赤鶴飯店》(チョフォファンティエン)のオーナー。近隣の住人に頼られ尊敬される中華街の名士の一人。若い頃ホンコンHEAVENで財をなし、N◎VAに渡ってきた。
 黒スーツにオールバックのオーナーはウェイおじさんと親しまれる穏やかな名士だ。だが‥‥飛び立つ鳩がバレエの開幕を告げ、硝煙の香る舞台でその両手から現れたふたつの銃が踊り出す時――獲物たちは、ホンコンHEAVENの伝説の名を思い出す。
▼いえーい。ウェイ復活。今日はダイハードっぽく撃ちまくる羽目になるらしいです。いやだがウェイおじさんの力で監督はジョン・ウーに変えてやるぅ!
ウェイおじさんをシャドウランナー祭りにいれるには‥‥二挺で撃つのはスマートリンクしてもあのシビアなルールだと厳しいですね。いや、2ndのCompanionを導入してmeritの両手利きを取れば‥‥(ぽわ〜ん)

鳩が飛ぶとき、オペラは始まる‥‥


Ruler: X 【天真名井にて・改
Gray Bloodに続いてまた同志Xノフです。RI財団10万Hit記念を兼ねてスケールが史上最大にゴイスーなシナリオを創ってきてくれました。ヽ(´▽`)ノ
ゴイスーなシナリオはプレイレポートに掛かる労力もゴイスーなのですがまあそれはよしとしましょう。AXYZ星系ともリサーチをした映画版はたまたOVA版の自信作とのこと。クロームと軍人と軌道と2.0.2.0.コズムが‥‥はぁっ、またしても和風がない。どうしたことだ(笑)
 ちなみに8/10 T-07bでは『エルクゥ:ザ・プレデター』というソースブックを出すそうです。なんとWorld of Darknessで『痕』が遊べるとのこと。きずあとってなんですかね。んーボク硬派だから全然わかんなーいなー。(ニヤリング)


Kaution:

 ツクダホビーから出ていた『トーキョーN◎VA』1版はある意味同人誌的な側面があり、背景世界の設定に関しては記述されていない部分が多くありました。N◎VAそのものが箱庭の舞台であり、キャストが冒険するに足る唯一のエキサイティングな場所であり、それ以外の場所は必要なかったのです。
 そして『トーキョーN◎VA The 2nd Edition』が出版され、西の妖月M○●Nと北の魔星ST☆Rが解説されました。が、日本本国やそれ以外の国については相変わらず不明なままです。
 そして今、Revolutionの時代。冒険の舞台は世界に広がりました。が、様々なイマジネーションによる独自の世界を持つ人々の投稿設定を表面だけ繋ぎ合わす如く採用してオフィシャルになった『グランド×クロス』、若干の考証の不足や執筆陣の変遷など様々な理由により、ニューロエイジ世界にはまだまだ、沢山の謎と矛盾、明らかになっていない暗黒の領域があります。
 ベテランの方々なら、そうした触れない方がいい部分は暗黙の了解のうちに避けたり、うやむやのうちにしながら上手に遊んで来たでしょう。当サイトのコンテンツにおいても、都合の悪い部分は巧妙に隠されています。

 前置きが長くなりましたが、そんな“暗黒の領域”のひとつに軌道、宇宙関連の設定があります。『トータル・エクリプス』において軌道関連の勢力が若干描かれ、製作者サイドにも後に繋げる意図がありましたが、その後執筆陣も交代しています。オリジナル版のキャンベラAXYZには軌道エレベータの上に軌道都市ヴァラスキャルヴが存在し、SFと科学考証に基いた設定がありますがオフィシャルのグラペケ版では名前程度しか示されていません。シナリオ集SSSでもジツはSSSが所有している軌道刑務所が記述されたりしていますが、軌道関連は相変わらずいまいちよく分からないままです。
(もっとも、宇宙が舞台になってしまうとサイバーパンクでなくSF-RPGの範疇になってしまうので、詳しく設定されなくてもそれはそれでいいのですが。)
 さて、このコンテンツの中と元となったシナリオの中においては、この文字通りの“暗黒の領域”に幾つかの事実が存在しています。月面には災厄前に造られたある基地が存在し、ヴァラスキャルヴを拠点とする豪州の軌道宇宙軍はかなりの勢力を有していることになっています。このページの中においては、暗い宇宙の一部が太陽の光で照らされていることを了解して先に進んでください。







 統合作戦司令室には静かに張り詰めた雰囲気が満ちていた。静かな月の海に光点がまたたく統合スクリーン。オペレーター達に最新の情報を送り続ける最新鋭の電子機器。軍服に身を包み、固唾を呑んで作戦オペレーションの推移を見守る士官たち。
 どこの軍でも、その光景は似たようなものだ。ここが星々の海に浮かぶ軌道首都ヴァラスキャルヴの中にある、軌道宇宙軍の本部だとしても。
「ここまでは順調だな‥‥ノルンの反応はどうだ」
 凛とした声と共に、美女が一歩前に出た。星空をあしらった徽章の輝く青い軍服に、凛々しく後ろに流れる銀髪。その名はウルリーケ・アルムフェルト・ヴィデ。“輝ける戦乙女”の異名を持つ当年26才の大佐の姿は、まさに光の海を駆け抜ける戦乙女ヴァルキュリアの名に相応しい。
『ウルド、スクルド、ベルダンディともに合議待機モード。異常ありません。情報部より報告。N◎VAイワヤト、ロシア連邦ミールシステム、その他各国、介入の動きなし』
『チーム・エインヘリヤより秘話回線の報告、入電。《ユーミル》の迎撃システムの無力化に成功。内部のテロリストを排除しました。強襲アサルトユニット、侵入作戦フェイズ2を実行します。コード、ブルー・ワン』
 ウルリーケは統合スクリーンに映し出された月面の映像に目をやった。月の女神の肌をそこだけ汚すしみのように、一帯を構造物が覆っている。
 月面基地ユーミル。まだ地球の地軸が傾く前、ある国が秘密裏に建造していた戦略基地。そこから発射可能な旧式の戦略核ミサイルは母星の全ての主要都市を狙うことができ、2基のマスドライバーは――地球がその悠久の歴史の中で何度か被ってきたように――小惑星の衝突による強烈な衝撃を、電磁誘導で超高速の運動エネルギーを与えた月の岩石によってもたらすことができる。
 だが世界が傾いた日、この基地の人間たちも死んだ。ユーミルを造った国も、その仮想敵国も力を失った。世界は変わった。
 だが、完全な自律型防御システムを持つユーミルはずっと生きていた。統制された自動火器と機械化兵団による戦闘能力。そして“ZENON”なるコードネームで呼ばれる世界最高の自己進化型侵入対抗電子プログラムイントルージョン・カウンターメジャー・エレクトロニクスが、理論的には無限インフィニットの高さを持つロジックの壁となり、電脳空間サイバースペースからの侵入を拒んでいた。月は無慈悲な死の世界だ。悪魔の棲むクロームの宮殿を覆う黒いICEは、地上のいかなる炎をもってしても溶かすことができなかった。
「よし。各方面の監視を怠るな。ユーミルの動きはどうだ?」
『無人監視衛星より連絡。反応なし。こちらの侵入を感知していません』
 ウルリーケは頷き、目をスクリーンから転じた。何事にも終わりはある。現在は穏やかに協調路線が生まれようかとしているAXYZの反軌道派勢力“ギャラルホルン”の過激派が、どうにかして“ZENON”を破り、ユーミルを奪った。軌道宇宙軍が動き出したのはそこだ。少数の精鋭部隊による隠密作戦カヴァート・オプが功を奏した。ようやく今、悪魔の宮殿が破られようとしている。
『‥‥こ、これはっ?!』
「どうした!」

:: ALERT :: ALERT :: ALERT ::

 統合スクリーンが真っ赤に染まり、ホログラフが別の物体を映し出した。司令室の照明が切り替わり、不安げなざわめきが空気を満たす。

Warning: EMERJENCY ALERT call
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「第一種緊急警報エマージェンシーコールだと?! 落ちつけ! 各部、報告をっ!」
『監視衛星より報告。基地《ユーミル》のフェイルセイフ機構、作動していますっ! 自律型迎撃システム群、再起動中!』
 オペレータの娘は情報集積型コンソールの中の事実が信じられないかのように、眼鏡を直した。
「‥‥ッ! エインヘリヤ部隊の反応はどうなっている!」
 ウルリーケは愕然としてスクリーンを眺めた。星々の海を渡っていたはずの光点が、何時の間にか消えている。
『第一部隊、反応消失。第二部隊‥‥反応なし。第三部隊‥‥‥‥反応なし。駄目です、チーム・エインヘリヤ、全部隊の反応が消失しました!!』
「くっ‥‥! 敵の迎撃システム群の稼働率は!」
 オペレーターたちの声は悲鳴に近かった。高解像度ハイ・レゾホログラフィに、月の悪魔のシステム概念図が浮かび上がる。正六角形の各頂点から伸びる直線の先にある6つの点。防衛システムは6つあり、それぞれが自律して侵入者を迎撃するのだ。
『ロキ、ガルム、ニーズホッグの3システムが既に100%、完全起動。ヨツムンガルド、フレースヴェルク、フェンリルの3システムが60%‥‥いえ、80%を突破しました! 大佐! このままでは‥‥!!』
『ウルリーケ・アルムフェルト・ヴィデ大佐殿。ノルンシステムより入電です。緊急合議、票決3対0で即決。部隊の撤退を勧告しています。ご決断を!』
 ウルリーケの頭を数瞬、様々なものがよぎった。軍の最高の技術と精鋭部隊をこの作戦に使用している。彼らは使い捨ての道具ではない。
「‥‥やむを得ん。旗艦《スレイプニル》に緊急連絡。全作戦行動を放棄、直ちにヴァラスキャルヴに帰還せよ!」
『りょ、了解しました!』
 白い手袋を嵌めた手を、輝ける戦乙女はコンソールに叩きつけた。銀髪が隠したその顔には、やりきれない表情が浮かんでいる。
 彼女は再び頭を上げ、スクリーンを見上げた。ハイ・レゾ・ホログフィで構成された冷たい月が、そこにまだ浮かんでいた。
「作戦失敗か‥‥。月の悪魔め‥‥ッ!」


――夢を見ていた。
電子的な闇の中を、暗いマトリックスの中を飛ぶ夢。
だがこれが幻影であることは、精度の低いホログラフよりも見破るのが容易い。環赤道リージョンを地球の自転方向に一周する光の奔流ストリームに乗って疾ることも、北米リージョンでセントラルトロンティル・クノーラの裏を掻き、7つの都市管理ウェブにひとつづつ落書きを残して去っていくこともできない。狭く、息苦しく、孤立したマトリックス。無限の虚空が2秒強のタイムラグとなり、この死の世界に自分を縛り付ける。
――いつからこうなったのだろう。
 思い出すことも出来ない。自分が自分でない不思議な感覚。理論的には存在しない緑の格子グリッドが自らと一体になる感覚。それとも、これは悪夢なのだろうか。
――もしも神というものがいるのなら、地には平和を。人には愛を。そして、俺には絶望を。
 狂った悪夢は、忘れられたライブラリのように、所詮は朽ち果てるものなのだから。

エレガントN◎VA第13話 ルナティック・オーヴァードライヴ

〜ルナティック・オーヴァードライヴ〜


 《ヤロール》のマスターの顔は相変わらず不細工な豚のようだった。なお不細工なことにその左腕は、一目で義手と分かる年代物の不細工なサイバーアームをまだ使っている。今時生身と変わらない腕などいくらでも手に入るのにだ。イングリットにブラディ・マリーを出すその腕は、ミトラス戦役直後に大量に放出された、安く質の悪いロシア連邦の軍用ミリタリーパーツを思わせた。
 カウンターの後ろの鏡に、イングリットの姿が映る。サキ・ニチヤの新素材を使った振袖の和服ワフクに、ヴィル・ヌーヴネオ・ヨーロッパのメガプレックス生まれなのが一目で分かる本物の金髪。だがこの珍妙な格好の若い女に、物珍しそうな視線を投げてくる客はいない。レッドエリアには、もっと奇天烈な格好をした人間が幾らでもいる。
 DAKのホロTVには、南米の暴動と中東で爆発したタンカー事故のニュースが流れていた。画面がフリップし、今夜の殺人事件の件数が流れる。アマデウスの顔をしたポーザー・ギャング共の死体が並んでいた。死体クジは予想外の結果になりそうだ。
 N◎VAのストリートは夜の街ナイト・シティ。極彩色のネオンに照らされたクロームの牢獄。上がっていく者よりも、堕ちていく者が似合う街。街はひとつの生き物で、人々はそこへ紛れこんだ食料のひとつだ。そして今夜もまた、街は永遠のパーペチュアルのパーティをヤッてるようなものだった。

「ボンソワー、カウボーイ。顔色が悪いわよ」
 イングリットが手を振ると、シア製の安い煙草の煙の向こうで、ネットランナーはだるそうに返事をしてきた。膚板ダームでトランスした人間特有のとろんとした目。注射式のドラッグなら幾らでも手に入るのに、カウボーイの連中は妙なところにこだわる。
「こっちの方がエッジだろう‥‥。それより、“月の悪魔”ムーンデビルって知ってるかい。チャレンジすることになりそうだよ。うん」
 短い黒髪に病的に青白い肌。細い怒り肩、不精髭の生えた特に印象に残らない顔。凝り性アーティーストのカウボーイ、ルーパス・クワイン。イングリットがパラディスを離れて世界を回った時、トーキョーで出会った腕利きのデッキ・スリンガー。マトリックスを光の速さで駆け巡り、システムの輝く壁を貫いてデータの沃野に窓を穿ち、情報ゴー・トゥーをやり取りする凄腕のカウボーイ。千早チハヤ岩崎イワサキのデータ要塞フォートレスになど少しも動じない本物のネットランナーだ。
 ニューロの世界には幾つもの伝説がある。“月の悪魔”とは、衛星回線に割り込んでも絶対に到達できない月にある何か。月への侵入と月面開発を妨げる、あそこに造られた何かのことだ。
ICE破りブレイク。違う違う‥‥・もっと凄いこと、とってもエッジで、ニューロなことさ」
「で? あたしは何をすればいいんだい」 イングリットはブラディ・マリーを一口飲んだ。
「違う違う。ヤる前に伝えとこうと思ったのさ。オノ=センダイのデヴァイスも揃えた。あとはジャック=インするだけだよ」
「せいぜい、脳波停止フラットラインしないようにね」 イングリットは相棒チューマの細い肩を叩いた。


 イングリット・美麻は同じ席にいた。美麻はミーシャの美麻。この街で名前なんてどうだっていい。あれから6年。ルーパスは帰ってこなかった。月の悪魔に挑んで、そのままフラットラインしたのだろう。エッジの向こう側へはいつも一方通行。あのカウボーイは死への秒読みを“カウント・ゼロ”してしまったのだ。
『聞いているのかい。君のタップでは通信障害は起こらないはずだ』
 はっとしてイングリットはラチェットのホロ画像イメージに目を戻した。パラディス東地区に開いた店をしばらく休んで、ぶらりとやってきたN◎VA。《ヤロール》の、まったく同じ席。頼んだのも同じブラディ・マリー。口をつける暇もなくそこへ飛びこんで来たのが、正体不明の超電子頭脳メタトロンからの依頼だった。

"pro-japonais" Ingret Misia

“月の悪魔”ムーンデビルはデータウォールの中に隠されている。アドレスは、AXYZリージョンの何処かだ。破れるかね』
 リージョン。この妙な天使エンジェルもルーパスと同じだ。カウボーイはいつだって、独特の用語を使いたがる。
「月の悪魔に牙をむくのか。楽しそうだね。ああそうそう、報酬は先払いで少し貰えないかい?」
『いいとも。新型のプログラムも揃える必要があるだろう。それではよい旅を。XYZ
 タップの電源を切ったイングリットは、立ち上がって《ヤロール》の店内を一瞥した。何も変わっていない。あの不細工なマスターの顔すらも6年前と同じようだった。突然の来訪者のお陰で手もつけられなかったブラディ・マリーを見て苦笑いし、
「‥‥次に来る時まで取っておいてくれる?」  マスターにチップを投げ、外に出る。
「空に一番近いネクサスか‥‥」
 レッドエリアで繰り広げられる永遠のパーティも変わっていなかった。ネオンの輝きは幾分増したような気がした。空を見上げると、酸性雨が止んでいた。
 新星都市憂鬱ノヴァ・シティ・ブルース。夜空の色も6年前と同じ――空きチャンネルに合わせたホロTVの色だった。

そは電脳魔術を極めしものなり


 超高層ビル《ビフロスト》の硬化ガラスの向こうには、豪州に名高いミラージュ・コーストの海岸線が眼下を走っていた。視線を戻せば、広いホールの中は社交パーティの真っ最中だ。スーツとドレスに身を包んだ各界の有名人たちが集まり、和やかに談笑している。天然物の豪華なシーフードが並んだテーブルを、給仕の小姐シャオジェ――いや、ウェイトレスの子が準備している。
 当然だが、客はAXYZの主な住人である白人がほとんどだった。俗にオージー美女と言われる女性が多いな。アジアや、私のような中華系の客はほとんど見かけない。中華街から緑卓子アン・タピ・ヴェール筋のご老体が来るとのことだったが、どうやら来ていないようだ。
 私の名はトニー・ウェイ。N◎VA中華街の《赤鶴飯店》チョフォファンテインのオーナーをしている。もっとも店とホテルの方は部下に任せきりのことが多いし、料理はまったくできないがね。立場のせいか、街の住人たちにはよく相談を持ちかけられることが多くなってしまった。ウェイおじさんやウェイ大人とも呼ぶ者もいるが、好きにしてくれたまえ。私の年齢では相応しくないが、今はこんな時代だ。私もそれほど呼び名には拘らない。
 今回の社交パーティの主催者であるヨハン・スナイダーは、私の友人でもある。若くして成功を収めた実業家である彼はかなりの富豪であり、AXYZの文化面に多大な援助を行っている。彼と会ったのは、AXYZ中華街に記念館を作る件でN◎VAに来た時だった。
 ‥‥なに、私のもう一つの名を知っている? ほう‥‥だとすると、君は数年前のホンコンHEAVENをよく知っているか‥‥三合会トライアドの情報通か‥‥黒社会と縁が深かった‥‥ことになるな。
 いずれにせよその話はここではやめよう。私の店の部屋で相談する時だけにしてくれ。私も今は名士と呼ばれるようになってしまった身だ。物騒な話はやめようじゃないか。


「ウェイ様は、射撃がお上手って本当ですか?」
「ははは、まあ射的ぐらいかな」
 南国の太陽と同じ色の髪をした快活なオージー娘と話をしていたウェイは、人の輪から抜け出してきたヨハン・スナイダーが近付いてくるのを認める。二人の男は互いに握手を交わし、肩を叩きあった。
 AXYZの地上世界と宇宙にある軌道首都ヴァラスキャルヴとの間に立ち、関係改善に尽力しているヨハンの話を聞いていた時。突然、大ホールの照明が消えた。
 数秒後に副電源に切り替わり、客たちがざわめき始めた時。今度は大きな爆発音が会場を揺らした。北欧神話に名を取ったビル全体が振動する。
『全員動くなッ! 中央に集まれ! 早く! 妙な気を起こすなよッ!』
 またしても突然、黒いマスクと黒の薄型防弾チョッキに身を包んだ一団が扉を破って乱入してきた。天井を狙ったSMGの掃射にシャンデリアが落ち、女たちの悲鳴が上がる。
『黙れ! 床に伏せろ! 大人しくしていれば危害は加えない!』
 その数は十数人ほどだったが、大扉の向こうにさらに多くのテロリストの姿が見えた。


 幸いなことに――私がいたのはホールの奥のほうだった。テロリストたちは、自分たちに近いところで悲鳴を上げている客たちに気を取られている。
 私は無意識のうちに、スーツの袖の中に仕込まれたものの金属の感触を確かめていた。皮肉なものだ――万が一を考えてAXYZにも銃を持って来たのだが、それが役に立つことになるかもしれない。
 慌てふためくご婦人方の後ろをそっと歩き、彼らの人数を確認する。ヨハン・スナイダーと目が合った。そうだ。まだ早い。


こうさくいん「わわわーいきなり宇宙から始まってるでしゅよー(゚o゚)」
ボス「うむ映画版は始まりからゴイスーだのう。ちなみに豪州軌道宇宙軍統合作戦本部のオペレーターには、読者の為に眼鏡っ娘がいることにしたそうな。眼鏡っ娘萌えというと若干心当たりがあるが、その場にいない人の好みに勝手に合わせるのはどうかと思うがこれはどうなのか」
こうさくいん「なんかテロップはビジュアルノベル風らしいでしゅよー。ウェイおじさんのオープニングのBGMはKan●nらしいでしゅね?」
ボス「んーまったく何のことか分からんのう。( ̄ー ̄) そしてニューロのイングリットだけは世界が違うのだ。ふふふやはりサイバーパンクは良いのう‥‥(ぽわ〜ん)」
こうさくいん「N◎VAで死体クジなんてやってないでしゅよー! 《ヤロール》のマスターの顔なんて決まってないでしゅよーカウボーイにICEってなんでしゅかーΣ( ̄口 ̄;)」
ボス「ええぃ2.0.2.0.をチェックしてニューロマンサーを見てまいれ。先達を知らずしてN◎VAなぞを語るべからずだ」
こうさくいん「ううーあのゴイスーに読みにくいSF小説でしゅかー(>_<)」
ボス「何を言う。古典的名作だぞ。『サイバーパンク2.0.2.0.』世界と『シャドウラン』世界において、世界最高のサイバークリニックのある場所がチバになっているのはすべからくあの作品に払っている敬意ゆえのこと。N◎VAだと日本本国内だから実現できないがナ!」
こうさくいん「ううー2.0.2.0.なんて今時売ってないでしゅよ〜(>_<)」
ボス「そうらしいのう。嘆かわしいことだ。サプリと一式セットで大安売りもしたらしいな。ちなみにひよこ総帥は全部定価で揃えたので悔しいそうな(笑) プレイしなくても見ておくだけで十分参考になるぞ。伝説の『振り向けば死』も2.0.2.0.のリプレイを自作自演気味にN◎VAに直しただけのものだ。あのメルメルも元はアラサカのコーポレートゆえかなり弱いしな。なっはっは!」
こうさくいん「そんなのいつの話でしゅか〜(笑)」

鳩が飛ぶとき、オペラは始まる‥‥


 Killing Handzキリング・ハンズのショウは雨の中に立っていた。濡れるものを蝕む、酸性の雨。ストリートの路上には男たちの死体が転がっていた。顔面を潰され、脳の中身をぶちまけられ、腱を切られ、様々な方法で絶命した男たちの紅い血が酸性雨と混じり合い、地面を染めている。
「いつもそうだ。君たちはつまらぬ勝利をもたらしてくれる」
 世界最凶のテロリストは穏やかに微笑んだ。「まだやるかね」
大小数千のテロに加担した男。N◎VAの河渡連合も秋川会も他の組織も、この信じられないほどの格闘技の達人に強烈な被害を被った。
 ビクター・アンダーウッド。2mを越す人間離れした巨漢、体じゅうに傷跡。頭頂部は禿げ、口髭を蓄えている。欧米人ながら合気道を操り、催眠術や不意をつく凶器攻撃、中国拳法にまで通じているとも言われる。眠そうな半眼のその顔は、悟りの境地に達した穏やかな修行僧のようにも、純粋な殺人者のようにも見えた。極めて不可解で危険な男だった。今もこれだけの人数を、鼻歌でシャンソンを口ずさみながらほとんど一瞬で屠ったのだ。
「舐めるなぁッ! キャオラッッ!」
 ショウは痛みを無視して跳んだ。フェイントを掛け、体重の力を乗せた飛び後ろ回し蹴り。ビクターが回した肘でブロックしたところに、今度は体勢を戻しつつ拳で襲いかかる。
 強い精神の元、長い時間と執念をもって厳しい鍛錬を積んだ人の手足は、鈍器と化し、遂にはカタナ以上の切れ味すら持つ。Killing Handzの手刀は多くの標的を一撃で絶命させてきた。だが、目の中に入った血が視覚認識を一瞬遅らせた。気が付いた時、ビクターは既に横にいた。
 握力×体重×スピードは、即ちその拳の破壊力。技にもならない単純なパンチだったが、その非常識な威力がショウの中に残っていた最後の闘志を奪った。壁に叩き付けられ、路上のダストボックス群の中に落ちる。遠くなっていく視界の中で、怪人が両手を天に掲げ、晴れやかな理解不能の笑みを浮かべているのが見えた。
「ハハハ、よい勝負だったよ、優秀な戦士ウォーリアーよ。だが、今の君ではワタシを倒すことはできない。君がワタシに甘美かつ美しい敗北を与えられるまでに、強くなる時を待つとしよう」
 人間離れした筋肉についた返り血を、酸性雨が洗い流していく。ビクターはゆっくりと身を翻した。
「北米連合の刑務所は非常に“楽しい”場所らしい。ワタシはそこで時間を潰すこととするよ。数年後にまた会うことになる。楽しみにしているよ、ミスター・ショウ」
 去っていく巨漢の口ずさむシャンソンが、ショウの中で遠のいていった。
「雨の朝も‥‥
 嵐の夜も‥‥
 命の限りに‥‥」



 Rusty Handzラスティ・ハンズの楠原ショウは飛び起きた。夢だ。あれから数年、彼も変わった。人を屠るしかできなかった手は人を癒すためのものに変わり、市民IDを取得した今はヨコハマLU$Tの心霊治療院でDr.EVEの弟子として働いている。ビクター・アンダーウッドの夢を見ることなど珍しい。
 突然電話が鳴った。相手はN◎VAのストリートの有名人、弾王。すぐにTVを付けてみろと言う。
 眼鏡を探し、スクリーンを見やる。LIMNET Yokohamaの多チャンネルニュースが、ホロの中に現れた。
『次のニュースです。キャンベラAXYZで相次ぐテロ事件は、未だ止む気配を見せません。ミラージュコーストの超高層ビル《ビフロスト》が巧妙な爆破テロにより、一団によって占拠されました。恐らく反軌道勢力“ギャラルホルン”過激派の犯行との見方が出ています。推定される容疑者は――』
 次々と流れていく顔写真。最後の一人の怪人の顔は見間違えようがなかった。鼻歌混じりに数十人を惨殺していったあの男の顔がそこにあった。
「あいつ‥‥北米の刑務所で死刑になったはずだ。327回死ぬ予定じゃ?」
『行くか? AXYZ行きのチケットならすぐ用意できるぞ』
「‥‥俺はもう戦士じゃないがな」
 楠原ショウはベッドから降りた。上半身裸の背中には、大きな十字型の傷痕がまだ残っている。彼の手が殺戮のためにあった頃から、ずっと背負っているものだ。
 これ以上犠牲者を出すのは癒しの手の持ち手としても許せない。封じた殺戮の手が、いま再び必要になろうとしていた。

殺戮の手、癒しの手


 雨が降っていた。星々に一番近い街を陰鬱に濡らし、別れようとしている二人を冷たく濡らす。軌道エレベータユグドラシルは夜明け前の暗闇に紛れ、鉛色の空と一体となっているかのようだった。航空機の識別のために時折光る安全灯だけが、10本のケーブルの輪郭を示している。
 ロシア対内防諜局の若きエージェント、ナイトハルト。特殊能力を持って試験管から生まれた屈折した戦闘機械ウォーマシン。彼は同じく防諜局で長く工作活動を続けてきた相棒のウルリーケを護衛し、ここまでやってきた。彼女に記憶が戻ったのだ。常に沈着冷静な銀髪のうら若いエージェントの故郷は空の向こうハイランドだった。ウルリーケはこれから、永遠に雨に濡れることのない世界へと昇って行くのだ。
「‥‥着いてしまったな‥‥。長い旅だった」
「任務だからな」
 のちにコード:ブリューナクと呼ばれることになる18歳の若者の姿は、当時からその特徴を多く有している。やや細身の体、流れるままに撫でつけたような黒の長髪、暗く辛辣な光、高精度の光学照準の如き精確な光を湛えた藍色の瞳。
「‥‥夢にも思わなかった。上に行くことになるなんて‥‥」
「‥‥」
 ナイトハルトは何も答えない。
「‥‥‥‥こんな美人が脇にいるのに、何も言わないのか?」
 やり場のない怒りに青い瞳を光らせ、ウルリーケが振り向く。その顔に流れているのは涙なのか雨なのか、ナイトハルトには分からなかった。
「なんだってんだ! もうちょっと喜んでもいいじゃないかっ!」
「‥‥私が喜んでいると思うか? どうせ、地上側との交渉の道具にされるだけだ」
「軌道に行けば、人間らしい暮らしが待ってるんだろう」
 沈黙。陰鬱な雨がロシア軍の軍服に染み込み、二人の心に冷たく忍び寄っていた。
「‥‥ナイトハルト。お前はずっと、そのまま生きていくつもりなのか。いつまでも道具でいるつもりなのか?」
「俺はそれ以外の生き方を知らない。道具になるしかないんだ」
「使い捨てにされる‥‥だけよ」
 ナイトハルトは腰に手をやると、帯びていたサーベルを柄ごと外した。ロシア対内防諜局のしるしでもある、柄に特殊拳銃の仕込まれたクリムゾンブレイド。はっとしたように見守るウルリーケの前で思いきり投げ上げる。連絡通路の端に当たり、下の階層に広がる隔離緑地帯に落ちていくと、サーベルは見えなくなった。
「俺は、軍を辞めるつもりだ。どうせ俺は、何かの道具になるしかないだろう。だがロシア軍以外の何かを、探してみようと思う」
 ウルリーケは相棒の側に詰め寄ると、その顔を睨みつけた。銀髪が張りついたその頬を、一層強くなった雨が叩いた。青い瞳は強く燃え、叩きつける雨に潤んでいた。
「そんなの‥‥ルール違反だっ!」
 振り返って走り出す。彼女は一度も振り向かなかった。その行く手に待つヴァラスキャルヴは、まだ空と同じ暗い色をしていた。

 早朝の店には人がいない。求めた香水をドロイドの店員から受け取ると、ナイトハルトはその銘柄を眺めた。テンプルトンの“スウィート・フェンネル”。ロシアでも売っているブランドだ。
 共に潜入任務をこなしたこともあるせいで、ウルリーケの好みはよく分かっている。だが、もう贈ることはできないだろう。


 コード:ブリューナクはBAR《ジョイス》にいた。あれから8年。ロシアに吹きすさぶ夜の風ナイトハルトはその名を変え、あらゆる標的を射貫く神の魔槍ブリューナクとなっていた。改造チューンドヘリ、攻性オフェンシヴ防壁プログラム、超高性能ワン・オヴ・サウザンド狙撃銃スナイパーライフルを始めとする各種の特殊装備。大都会を疾走するシャドウとなり、貫通及び抽出ペネトレイト&エクストラクションから配達人クーリエ、マトリックスの情報奪取データスチール拠点反撃カウンターアタックから守護天使ガーディアン・エンジェルまで、あらゆる任務ランを請け負うプロフェショナルのランナー。
『あれから8年ぶりになるのだな‥‥。お前の腕は、私が一番良く知っている。だから呼んだのだ』
 銀髪は少し伸び、意志の強そうな顔立ちはより凛々しさを増していた。夜の風の相棒だったヴァルキュリアは本当に美しい女性となっていた。
 前金で2プラチナムの緊急のラン。侵入ペネトレイトの先は豪州ミラージュコーストの高層ビル《ビフロスト》。引き抜きエクストラクションのターゲットはあるエグゼクティヴが所持しているプログラム・チップ。予想される障害は思想系テロリスト数十名。但し火力ファイアパワー練度スキルは1キャット・フード以下。
「ゴミ掃除はしなくていいんだね」
 スーツの内ポケットからあのブランドの香水の瓶をゆっくりと出すと、ブリューナクは机の上に置いた。彼がよく好む暗色のスーツは一見ブランド物に見えるが、その裏には武器類を隠匿できる隠しポケットが幾つもついている。
『ああ。ターゲットが最優先だ。目標となる人物ヨハン・スナイダーに関する基本情報は今送信する。彼は味方だ』
「チップの中を俺が見ていい権利は?」
『基本的にはないはずだ。状況に応じる。電脳からのアドレスは入手済みだ。追跡トレースプログラムをサポートに付ける』
 ダウンロードが終わると通信を切り、ブリューナクは店を出た。そこにはフルチューンの高速攻撃ヘリ《ハウンド》が低音ローターの作動音を静かに響かせ、主の搭乗を待っていた。


こうさくいん「BGMは長瀬テーマソングらしいでしゅね?」
ボス「葉っぱ系ビジュアルノベルの共通キャラだそうな。んーまたしても何のことかさっぱり分からんのう。( ̄ー ̄)」
こうさくいん「それよりなんでしゅかこの過去ブリューナクは〜! 『EYEランドでフィーバー!』に出てくるカレとぜんぜん違うでしゅよー(>_<)」
ボス「うむいろいろあとづけで設定が増えたそうな。ああ、娘も半分しか助けられなかったと子供を無慈悲に撃ち抜くあの冷酷無情なランナーのブリューナクは何処へ行ったのかのう。過去にオンナがいたとは。今回で女性読者のファンが減ること必死だな(ニヤリング)」
こうさくいん「だいたいランナーってなんでしゅかー。今日はN◎VAの日でしゅよ〜(笑)」
ボス「奴はシャドウランナーらしいのだ。無念なるかなFASA撤退。シャドウランもよいゲームであったのう‥‥(ぽわ〜ん)」
こうさくいん「ううーショウもキャオラッとか言ってるでしゅよー。それ負け決定でしゅ〜(笑)」
ボス「オープニングだから負けてよいではないか。ビクター・アンダーウッドのイメージソースは最凶死刑囚ド●アンゆえその向きのバキファンの人々は密かに笑うがよい。まあこのへんはご愛嬌だな。さあ真面目な読者諸兄に泣いて許しを請うぞ。『許して‥‥カトウさん‥‥』」
こうさくいん「『許すかバカッッッ』でしゅ〜o(≧へ≦)9゛」

ブリューナクの魔槍より 何人も逃れることあたわず。


 BAR《オートマータ》は酒を出す店に相応しからぬ雰囲気だった。壁に並んだ小さなアンティーク・ドールたちが、AXYZまでかつての敵を追ってきた青年を見つめ、無言で何か語りかけてくるようだ。
 好きなジントニックを注文すると、楠原ショウは店主のローラ・ジーンと話をしていた。まるで人形ドールたちの最後の一人が抜け出してきたような、物静かな不思議な女性。
「ビクター・アンダーウッドのことは御存知なのですね」
 彼女は言った。
「1つだけお聞きします。過去の因縁が貴方を追いかけてきても、逃げずに立ち向かうおつもりなのですね」
「過去は過去、今は今だ」 ショウはハイネックのシャツの上に掛けた銀のネックレスに、無意識の内に手を当てていた。「一人でもやる」
「そうですか‥‥ではこのタウンの南、ユーリカ・フォートレスに行ってごらんなさい。そこに、貴方の求めるものがあります」
 ショウは我知らず鍛え上げた右手を握り締めた。並ぶ人形たちは何も言わず、立ち上がる戦士を眺めていた。

殺戮の手、癒しの手


 高周波モードにシフト可能な軍用ナイフを口に咥え、ブリューナクは通風孔を這い進んでいた。センサー類に探知されにくい黒一色の潜入スニーク・スーツに、各種装備を収めたポケットの並ぶアタッチメント。
 正面からセキュリティを火力ファイアパワーで圧倒するだけがランの仕掛け方ではない。高層ビル《ビフロスト》への最良の侵入方法は、地下からの単独潜入だった。
 出口の鉄格子を外し、降りる前に光学バイザーで確認する。増幅された赤外線インフラレッドの筋が、室内のあちこちをおざなりに走っていた。
「ザルみたいなもんだな」
 音を発てずに着地、壁に背を当ててタップを起動する。システム内のマシンに無線でアクセスしたタップは、ビル内の3Dの見取り図を呼び出す。並行稼動した追跡トレースプログラムが、エクストラクション目標ターゲットの現在位置を割り出した。143階のイベントホールだ。目標は男性のポケットの中で移動している。テロリストたちもこれを狙っているのだろう。同時に、招待されている客の名簿がスクリーンの中を流れ始めた。

ブリューナクの魔槍より 何人も逃れることあたわず。


"pro-japonais" Ingret Misia

 イングリットの瞼の裏の地に照らされた闇の中を、慣れ親しんだフランス語と、ニューロタングと、日本語だと思っている中国の複雑な文字の羅列が走っていった。催眠映像のように視界を埋め尽くす記号の渦は視覚情報の曼荼羅マンダラ。その中から溢れてくる銀色の光。神経ニューロンに満ちていく独特の浮遊感。次の瞬間、彼女は接入イントロンした。
 ウェブ、ネット、マトリックス、サイバースペース‥‥呼び方は幾つもあるが結果は同じだ。神経電子的に構成されたもうひとつの世界。主観的には無限インフィニットの高さを持つ銀の虚空。縦横に走る緑の格子グリッド。人体の感覚用に再構成されて頬を撫でる風は、光り輝くデータの奔流ストリーム
 環赤道ネクサス集合ベルトを飛び、豪州エリア上空で停止。パース、エスペランス、ウィンダム、アデレード‥‥聖地ウルルにもネクサスが出来ていた。擬似的な宇宙と光点で繋がれたAXYZを選択し、ダイブ。

 ゲートキーパーをやり過ごし、グリッドの光点に擬似的に着地した花魁姿のアイコンは、四方に手を振った。桜の小枝は探索サーチルーチンとなって、目的の要塞を探し始める。点と直線のワイアスケルトン、ストリングとループが電脳世界の基本要素だ。接入者の設定とマシンの演算回路のパワーが、グリッドの色を変え、テクスチャを張り、より複雑極まりない世界を創り出す。
 視覚的に再構成されたAXYZリージョンは、彼女には目新しいものだった。軌道エレベータ周辺のネクサスは現実世界と同じように整備され、データ浮遊物やボギーひとつ見当たらない。10本からなる優美な曲線が擬似的な天の一点を目指して集約し、巡回パトロールプログラムが上下に移動している。
 軌道宇宙軍とCOTのデータを護るのは黒一色の無機質な、危険な軍用ICEC.F.C.のライブラリは現実と同じ清潔な白メイン。チハヤやルテチアの要塞フォートレスは、世界のウェブ上に存在する支社と同じような外観だった。
 旅行者の集まる東地区イーストブランチ現実世界リアルスペースと同じように賑わっていた。南国を思わす椰子の木が構成された下で、オルクスの今年の制服のメイド服Verを着た接客バディが、のろまなタートルデッキを使う観光客を招いている。
 響く聖歌ゴスペルを白色の波動と音符の視覚情報に変え、マトリックスを照らしているのはキャンベラ大聖堂カテドラル。その側のネクサスに浮かぶ世界樹の宮殿パレスは、twiLiteキャンベラのものだろう。
 彼女の故郷のパラディスのネットマップでは、いささか雰囲気が違う。データ要塞フォートレスはゴシック調の建物をしていることが多く、監視ウォッチャープログラムはガーゴイルの姿を取って、屋根から侵入者を見張っている。識別IDの招待状なしで夜会に突入すると――たいてい絵画の品評会をしている吸血鬼ヴァンパイアたちが襲ってくることが多い。
 アンチ=トレース擬似素子の輝く尾を引いて、青い流線型の構造体コンストラクトが虚空を横切っていった。あの見慣れない形はリムネットAXYZのデータ運搬型クーリエバディだろう。独自形式で暗号化エンコードされた膨大な量の機密データを、北米ネクサスのLIMNETグループ本社に届けるのだろうか。迂闊に正面から手を出せば、自在に展開する4層に渡る迷走防壁が侵入者を待ち構えている。

Found Target: YURIKA FORTRESS
Grid coodinates: 185.143.137.058
Probability: 97.6%
Classifikation: Level 3 Data Fortress
Obstruktion: Rank 5 Data Wall, Guardian Program
Unknown Virus: Not detekted


 グリッドのX地点からX地点まで移動。電脳空間上の視覚アイコンは物理法則に拘束されない。日本の花魁の姿をした彼女は、身投げでもしたかのようにきりもみ状に飛び、無重力下でしか不可能な宙返りをしてつま先の足袋から見事に着地した。
ネットマップでは“YURIKA”のロゴのついた王冠のインディケーターが回っているエリアの南西部。目の前には直線の連続からなる多角形の集合体が、クロームの輝きに覆われたデータ要塞フォートレスを構成していた。
 グリッドに接触した途端に連鎖型警報アラーム。極めて自然的な黒い体毛に覆われた地獄の番犬ヘルハウンドが3匹実体化した。獰猛な牙の奥から吐き出されるオレンジの炎は、指向性データコード消滅型ウィルスを元に構成された攻撃オフェンスプログラム。
 だがほとんどのニューロと同じく、イングリットは凍りつくようなスーパーチルド最新プログラムを揃えていた。ついと振られた振袖の袂から現れたのは、高解像度3D画像ハイ・レゾ・ホログラフ並の龍のアイコンの姿をした攻撃ソフト。日本古来の龍神リュウジンと彼女が信じて疑わぬその姿は、チャイナタウンの祭りの夜に爆竹の中で踊っていたチャイニーズ・ドラゴンだ。
 人間がまばたきする間にプログラム内部のステートメントの槍は何千回も攻めぎあう。龍に噛み砕かれ、ヘルハウンドはその迎撃機能を停止した。その外観構成は概算3,870万のポリゴンの破片となって放射線状に四方に散っていった。
 データ防壁ウォールの3層に渡る防壁が力を失った。イングリットはコアに向かって前進した。
 ヘルハウンドだった破片が散開を止め、空間に静止していた。
 一歩。擬似的な地面を走っている緑のグリッドの幅が狭まった。
 次の一歩。グリッド間の距離は前の1/2だった。
 さらに一歩。更に1/2。データウォール外壁とコアとの間の主観的視覚距離が一向に縮まらない。

* A L E R T *
>System Messaj (simple mode)
  LOGIK TRAP aktivated
  Ranj: All inner grid of destinated Data Fortress
  Strength: Level 7, estimating . . . . .
  Type of Trap: searching . . . . . the [ "Zenon's Paradox" ]
  Solution: processing . . . . #overloaded#
>System Status Report
  Process Krystal resource iz katastrophically short (8.4503%)
>System Help
  You have better to *Outoron Now* (strongly rekommend)

 ダイブに使っているタップの制御システムからの警報が、中空に開いたウィンドウの中に現れた。システムに過負荷オーヴァロードが掛かっている。処理クリスタルのリソースがあまりに不足している為、メッセージはGUIにも、彼女の好むフランス語にも変換さえされなかった。
 “ゼノンのパラドックス”。論理ロジックトラップがまだ仕掛けられていたのだ。マトリックスからの即時離脱アウトロンを推奨する警告メッセージが、彼女の周りを回った。

そは電脳魔術を極めしものなり

-通常版-
】【】【
-IE5版-
【1】【】【

---Bar from V:tM---
...... Lunatik Overdrive ......

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