星の救世主
星の救世主
〜玉子皇太子殿下と遊ぼう〜

【前編】【後編


こうさくいん「今回は特別ゲストを招いて臨時アクトなのでしゅ〜(≧▽≦)ノ」
ボス「うむ。マヒロお兄タマは西はAXYZ星系で行われた“にしマロ”でも軍人役として主役を張っているぞ。近々ダーククイーン陛下のサイトで公開予定のセッションレポートは某筋の協力によりFLASHムービーつきになる予定だ(ニヤリング) 加えて舞台を活かし、エコロジカルなことにアイヌっ娘も出てくるぞ」
こうさくいん「お兄タマ以外はALL萌え萌えでしゅね〜o(≧へ≦)9゛」
ボス「な、何を言う Σ( ̄口 ̄;) ええぃ一緒にするな。財団は萌えキャラなんぞ作らん!(どしんと机を叩く) どこぞでヒロイン道の極意でも聞いておるがよい」
こうさくいん「ホワホワーンとしながら始まりでしゅよ〜(>ω<)」


And so, they appeared on the Staj of Wheel of Fortune .....

Handle: 酒見 真宙(さかみ・まひろ)
Style: カブト◎,カゲ,カタナ● Aj: 28 Jender:
 10年前にロシア連邦にあった傭兵部隊“シルバーファング”最後の生き残り。耐閃光機能つきの黒の丸眼鏡、ウォーカー用レーザーナイフを人間用にあしらえた巨大な蒼い太刀を携え、戦場を、世界をさ迷ってきた。
 硬質で端正な容貌を持つ青年だがぶっきらぼうであり、部隊壊滅の原因となった敵の戦友を探している。
 ヨコハマLU$Tコロッセオで知り合った関係で、ロシアへの旅の途中、笠置技工研の笠置綾乃副社長に請われてカムイST☆Rに降り立った。そう、この物語こそ、歌劇『真冬の夜を越えるとき』への前奏曲なのだ‥‥
Player: 堀野
▼西はAXYZ星系より玉子殿下のおでましです。ということでガゼン迎撃なのでしゅ。
そう、西方で行われ、レポートコンテンツ公開間近のAXYZ星系版マローズ、略して“にしマロ”に軍人役として颯爽と登場のあのマヒロです。本日はレッガーをカゲに変えて相変わらず前のめり系。黒の剣相当の太刀で単身ウォーカーに挑みます。るろ剣の雪代縁系なのも健在ですわ!(ぽわぽわ〜ん)

Handle: カナリア
Style: ニューロ=ニューロ◎,ハイランダー● Aj: 14 Jender:
 電脳の世界を自在に飛び回る青い羽の小鳥。その知識はWebで見たものに限られているものの、世界の様々なものをその電子の瞳で見てきた。
 その凄腕カウガールの正体は、軌道のさるコロニーの一室のベッドに独り横たわる14歳の少女である。全身を包帯で巻き、体と直結したライフサポートシステムなくしては一時も生きていけず、一歩も歩くことができない彼女の唯一の外界との接点が、その青く自由なアイコンなのだ‥‥
Player: 緋 【THE AFTERLIFE
▼情熱の緋さんです。スゴーイヽ(´▽`)ノ
元はあるシナリオ用のゲスト案だったという彼女、210exp、タップはMatrix、<※イノセント><※隠れバディ>に<※01フィーリング><※SPAM>、通常シーンは<※ビジョナリー>登場を狙うタイプのニューロです。夢は自分の目で世界を見ることと飛行機に乗ること。まぁ、なんて可憐なんでしょう。情熱のプレイを見せてくれるに違いありませんわ!(ホワーン)

Handle: “凍牙(ルプシ シキテ)”リュート=レヌシ
Style: マヤカシ◎,カタナ,ミストレス● Aj: 18 Jender:
 カムイST☆R、歌の民の自然を愛する少女。男勝りでカムイリィセという民の踊りを得意とする。よくなついた鷹の名はレラキリエ(風視、バサラのエニグマ)、バディに精霊の宿ったドロイド狼の名はカムイシキテ(神牙)。ST☆Rで最もテクノロジーに理解を示す歌の民のひとりとして、精霊に祝福された大地を守っている。
Player: はた×弐
▼こちらもなんか特別ゲストっぽく(笑)はたクンです。どうしてメーティス女史はチャイナ着てくれなかったんでしょうねえ。‥‥あーいや、氷の精霊の宿った刃はルプシムツベ、タイタンブーツ相当の靴はケラエムシ。実際のアイヌ語ではにはリートと小さいムをいれてリュートと発音するそうです。懐かしの某サ●スピの某姉妹を連想した人、最初から確信犯です。ここはおとなしくアンヌムツベで一本取られましょう。狼のカムイシキテの正体はカバーリングもする高機能ドロイドのシルバーファング相当。きっとラストはクリノス形態に変身しますわ!(しません)

Handle: “銀の百合の”リリー・クローデット 【Profile
Style: アヤカシ◎●,アラシ=アラシ Aj: 16? Jender:
 コロッセオで銀灰色の騎士ジークフリートを駆る少女。紫水晶の瞳に透き通るような銀の髪の美しい娘で、およそウォーカー乗りには見えない。ヴィル・ヌーヴ、ネオフランス行政圏のドロイド制作のホープ、クローデット工房(chekk the Luna+shinE)の創設者の孫娘と戸籍上はなっているが、実は愛情を持って接せられたドロイドに心が宿った人形の一族である。
 同じくウォーカー乗りとして縁の深いよき好敵手にしてよき友(?)、笠置綾乃に請われてST☆Rに行くことに。北の星の都に今、一輪の気高き銀の百合が花開くのだ。
▼いえーい。リリーちゃん復活。年の近いリュートに加えて年の離れたマヒロお兄様とも知り合いになってしまいました。最近遅れ馳せながら新作ゲームを読んでいるのですが、ジーク&リリーあたりはこう、『ドラゴンアームズ』の世界にも何の抵抗もなくいそうですな。(笑)


Ruler: 九龍
▼最近はポチになったりヒロイン道を語るのに忙しいようです。(謎) シナリオに四苦八苦していましたがちゃんと間に合いました。エラーイヽ(´▽`)ノ 舞台はカムイST☆R、ウォーカーネタに加えて歌の民のリュートも『もののけ姫』っぽく動けます。ちゃんと少女が出てくるのも見逃せませんわ!(笑)

「リリーちゃんのチャイナ服なのでしゅ〜」「げははは〜」




 カムイST☆Rを取り巻く森は奥深く、そこには災厄の街には失われた自然と大地の力が満ちている。
 静寂を破って一心に逃げて行くのは、全長3mはあろうという大きな山猫だった。その髭は銀色の光沢に満ちており、ニューロエイジ世界に存在する普通種と幾分異なる。
 力強く大地を揺るがす鋼鉄の脚で茂みを踏み潰しながらそれを追うのは、15mほどのウォーカーだった。鎧をまとった地龍のような変わった外観。鱗にも見える蒼い装甲が、森の中では極めて異質に映る。機動戦車の中ではいくぶん小さ目だったが、それは一匹の動物の前ではあまりに大きく、圧倒的に見えた。
 逃げきれないのを悟った山猫は振り返り、全身の毛を逆立てて吠えた。可視化したプラズマが光の帯となり、コックピットを直撃する。  だがそれにも怯まず、ウォーカーはマニピュレーターを捕獲対象に向けた。鉤爪の生えた左腕に二門装着されているマシンキャノンから大型麻酔弾が続け様に発射された。
 しばらくして騒ぎは収まり、カムイの森は元の静けさを取り戻した。規則的に響く軌道戦車の脚の作動音が、徐々に遠ざかっていった。

星の救世主
〜星の救世主〜


 トーキョーN◎VAホワイトエリアにある笠置技術工学研究所。イワサキ重工系列のこの技工研は父親が代表取締役に収まり、娘の笠置綾乃は実質的に開発部長レベルの権限を与えられている。
 北米のシドニー工科大大学院を飛び級で卒業、趣味のひとつとしてカスタム八脚型機“ストームレディ”を駆る弱冠24歳の青嵐の女卿。釣り上がり気味の目と微笑みを湛える口元は確かな自信を秘め、オーダーメイドの高級スーツに、カールした髪型は今日も外側にはねている。そんな御嬢様が重役椅子に堂々と収まっている様子は、多少場にそぐわぬようにも見える。
 だが――綾乃が自室に招いている客はさらに企業世界にそぐわぬ相手だった。水晶から織り上げた銀糸の如き長い髪、宝玉のように輝く紫の瞳。ほっそりした娘は着ている服も腰に下げた細剣も、整ったその容貌も、まるで人形の世界から抜け出して来たかのようだった。


 アヤノがスクリーンに示したのは、2機の機体だった。片方は青く、その工夫された装甲は騎士のような格好に見える。大槍まで携えていた。きっとジークとなら、よい相手か友達になれるだろう。
 もう1機の機体は黒く、ずんぐりした格好だった。あれはよく見るレイヴンの改良型なのだろう。あまり、優美な機体とは言えないな。

リリー・クローデット、星の都へ

 わたしの名はリリー。銀の百合のリリー・クローデット。ヨハン御祖父様のクローデット工房が創った世界に一騎のジークと一緒に、ヨコハマLU$Tの闘技場でパイロットをしたり、いろんなことをしてるんだ。
 アヤノと知り合ったのも闘技場でだった。一緒にAXYZまで行ったこともあったな。世間ではああいう人のことをお嬢様と言うらしいけど、どうなのだろう。アヤノは時々変なことをするけど、あれがお嬢様らしいこと、なのかな?


「こちらの龍騎士――ドラゴンスレイヤーは武装を始め、耐アストラル装備を完全に備えておりますの。こちらのレイヴンMk3にもコーディングはされていますが、全体的な対応は遥かに負けていますわ」
「へぇ、確かに本物を見てみたいな」
「そういう訳で、リリーさん」 綾乃は微笑みながら、高級な天然木製の机の上で高そうなペンを弄んだ。
「これと試しに戦ってくれるテストパイロットを探して、あなたを呼んだのですわ。本来でしたらこの私が直々にテスト機を操って戦って差し上げるところですけど、あいにくプレゼンの司会をしなければなりませんの。よろしくて?」
 少女は紫水晶の瞳をきらきらと輝かせた。「わたしのジークと戦うのか?」
「そしたらジークが壊れてしまうでしょうっ!」
 机上に落ちたペンを拾おうともせず、笠置技工研の才嬢は気を落ちつかせようと努力した。
「こちらのレイヴンでやってもらいますのことよっ!」
「そうなのか。あまり、美しくない機体だな」
 眉をひそめる銀の百合のリリー。だが綾乃はうっとりとした目で画面を見つめると少女の意見に反論した。
「そうかしら? この鋭角的なフォルムと、実用本位の機能美から来る調和のとれた均整。メインエンジンの排気口周りの整理されたシルエット。このMk3からは、エンジェルランチャーが実に滑らかに本体に格納されて‥‥」
 ひとしきり解説が終わった後で、二人はテストパイロットの件の了承を確認した。綾乃は午後のお茶の時間にしようかとしたが、リリーは辞退し、支社長室を後にする。
「そうそう」 少女は大きな木製のドアの所で振り返った。それ自体が不滅の輝きを宿した純銀の髪がふわりと揺れた。
「アヤノはいつも、ウォーカーの上で妙なポーズを取っているのかと思ったけど、ふだんは、ちゃんとそういう仕事もしているのだな」
 E&B産の葉を使った芳しい茶に口をつけようとしていた笠置技工研の才女は、盛大にカップの音を響かせた。
「当たり前でしょう! もう書類が溜まって溜まってかないませんわ」

ジーク、百合の王国の騎士


 緑のグリッドとデータの海からなるもうひとつの世界。コロニーの一室に閉じ込められた少女の想いを乗せた一羽の青い小鳥は、電脳世界の隅々を飛び回ってきた。
 カナリアの構造体がその虚像の瞳で見てきたものは、世界の全てだ。サイバースペースに収められた膨大な世界の情報はその一側面でしかないが、そのストリームの全てが小鳥の小さな瞳を通し、その主の元へと届けられてきた。機械なくしては生きていけず、窓の外に広がる冷たい宇宙を見るしかできない寝たきりの少女に、世界を教えてきた。
 構造体、防壁、データストア、データ残留物の切れ端に至るまで、カナリアは電脳世界のあらゆる個体の感情を理解できる。電子の小鳥には様々な友達がいた。色とりどりのユーザーアイコンで現れる友達の正体は凄腕のネット・カウボーイであり‥‥広大な企業ネクサスの中で忘れられたAIであり‥‥現実世界では彼女と同じような境遇にある不幸な人物であり‥‥カナリアが思いもよらないような正体を隠した接入者だろう。
 そんな友人の一人、猫のキリとカナリアは話していた。現実世界でなら餌にされそうな話だが、お互いに高度な演算処理によって構築された虚像同士ではそれも起こらない。

「僕はもう、ここにはこれないんだ」
 大きな木のアイコンが目印のサイバースペースの一角で、猫のホログラフはうなだれた。
「どうして?」
 木の梢に止まったカナリアは首を傾げる。
「訳はいえない。でも、もうお別れなんだ。だから――これ、君にあげるよ」
 猫が首を掻くと、その首に嵌っていた透明なネックレスが外れ、宙に浮いた。ネックレスは主観的な直径を瞬時に縮めると、カナリアの細い足にちょうどいい大きさになった。
 友人の様子が気になったが、カナリアは嘴でそれを咥えると、足に嵌めた。
「なんだかボク、恥ずかしいや」
 北米ネクサスの深部と同じ青い色をした羽が赤く染まった。照れ隠しに小鳥は飛び立つと、一声鳴いてキリの周りを円を描いて飛んだ。その向こうには、論理的には無限の高さを持つ銀の虚空が広がっていた。


こうさくいん「こっちは電脳世界から始まるでしゅね〜」
ボス「カナリアは【キャンベラAXYZ】のプレイレポート2ndStaj『天より他に知るものもなく』にも出てくるぞ。絵師殿の強い思い入れにより萌えイラストまであるぞよ(ニヤリング) 大都市以外の舞台で<※ビジョナリー>登場を絵的にどう説明つけるかは微妙なのだが、この物語ではポケットロンその他にいつも現れていることにしておるのだ」
こうさくいん「リリーちゃんのオープニングはアヤノ御嬢様登場でしゅよー。Dancin' under sky of AXYZ以来でしゅねー」
ボス「確信犯的にオカシイゲストに確信犯的にALLダメキャストの話だったな。おっと、もちろん全員ではないぞよ」
こうさくいん「ひひひ〜」

幸せの運び手 カナリア


 カムイST☆R最北部、歌の民の領域の近くに広がる森。リュート=レヌシは狼のカムイシキテの銀の毛を撫でながら、木々に宿る精霊の声に耳を傾けていた。黒い瞳、腰までかかる長く艶やかな髪もこちらの民族特有のものだ。髪飾りにした赤い布で房にした髪を巻き、頭の後ろでふたつにまとめているのが人目を引く。白が基調に鮮やかな赤の刺繍の入った民族衣装も歌の民の独特のものだが、この星の都ではさほど違和感がない。
 五大民族の中には大地の民のようにあらゆるテクノロジーを拒絶する部族もいたが、歌の民は族長ウェインカラクルがそうであるように、進んで機械を受け入れている。退魔の技もこなすリュートは、反射神経増強やIANUSも入れていた。
 風の動きを嗅いだ鷹のレラキリエが一声鳴き、主に注意を促した。リュートが視線を向けると、青い布を帽子のように頭に巻いた少女が、木の枝を編んだ篭を手に、森の中を歩いて行くところだった。

「カヤ? また森の奥に採集に行くの? 私の断りなく行っては駄目」
 背が頭ひとつ分低い、知り合いの少女にリュートは声を掛けた。
「独りでも大丈夫よ。それにリュート、エルツァを覚えてる? もう、ずっと見かけていないの」
 少女は行方不明になった大きな山猫の話をした。銀の髭をしたエルツァはよい友達だったが、最近ずっと誰も見ていないのだという。
「山猫には山猫の世界の都合があるのかもしれない。人と獣は、相容れないものなのよ」
「また、インフォST☆Rの映画で見たような台詞を‥‥」 少女は口を尖らすと年上の同族を見上げた。
「とにかく、私も探してみる。独りでは遠くまで行かないように」
 リュートはつと考えこんだ。カムイST☆Rの森は世界の多くの大地から失われた大自然の力を多く宿しているが、多くの危険をもまた潜ませている。何かあったのだろうか?
 主の肩に止まった鷹のレラキリエが、不吉な予感を嗅ぎ分けたように小さく鳴いた。


こうさくいん「わわーなんかホワーンとエコロジカルなオープニングでしゅよー」
ボス「うむ。初めて見るような気がするぞ。(笑) カムイST☆ARならではだな。ニューロエイジ世界の大自然は現実世界と同じように存在していいのかかなり謎なのだが、まぁこの物語ではこうなっている。ちなみにレラキリエはルール上はエニグマだ。背景で飛んでいるたびにバックファイアなどという無粋なことは考えないように(笑) ルール先行演出後付けなんぞくそくらえだからな(ニヤリング)」
こうさくいん「RLの強い推奨もあってアイヌっ娘登場でしゅよー。モデルはナコ●ルなのでしゅね〜アイヌ語事典も調べたそうでしゅよ〜(≧▽≦)ノ」
ボス「片方が黒の剣相当になっている小刀の二刀流であるのと髪型その他が少し違うがな。ちなみにリュートの服装は白に赤なので修羅相当と考えよ(笑) 懐かしいのう。昔はゴホゴホと燕返しの練習をしたものだ‥‥(ぽわぽわ〜ん)」

大地の歌を護るために


 カムイST☆Rの気温は赤道直下のメガプレックス群よりはやや低い。だが、孤高の戦士が前奏曲を経ていずれ向かうであろう歌劇の舞台――凍れるロシア連邦の寒さよりは遥かにましだろう。
 道すがらこの星の都に寄っていた酒見真宙は、あるビルで依頼相手の元を訪れていた。民を震撼させた神災もその後は落ち着き、ST☆R中央区には他の都市と同じように建物が並んでいる。
 黒のシャツにいつもと同じ灰色の軍用ジャケット、逆立ち気味の髪に黒の丸眼鏡。剣撃のみで多くのウォーカーを葬り去ってきた大型のレーザーナイフは、入口で預けてある。

酒見真宙 -残光ナイフの使い手


 話を持ってきた笠置綾乃の側に立っているのは、ロシア軍の技術者、イゴール・キロスニフだ。髭面の男が差し出した写真には、14歳ぐらいの金髪の少女が写っていた。白い肌はロシアの人間特有のものだ。生意気そうな顔が、仏頂面のマヒロを見返している。
「知っての通り、ロシアとクリルタイ合同での軍のプレゼンテーションは明日に迫っている」 イゴールは言った。
「このソニアは、明日演習予定の“ドラゴン・スレイヤー”機のメインパイロットなのだ」
「それは大事な役目だな」
 マヒロは他の写真にも目を通した。彼が今まで撃破してきたどんなウォーカーとも違う、蒼い龍騎士がそこに写っていた。依頼の詳細を見ると、ソニアには精神的ストレスを与えないことと但し書きまでしてある。
「彼女はカムイST☆Rを見るなり‥‥その、『観光地みたい』とさえ言ってきたのだ」 イゴール氏は言い難そうに言った。
「あの年齢では精神的にも未成熟なのだ。どうかしばらく面倒を見てやって欲しい」
「要は子守りということか」 放浪の戦士はぶっきらぼうに言った。
「まあいい。実戦から離れると、勘が鈍るしな」

青の輝きは未だその刃にあり


 翌日。カムイST☆Rのコロッセオ・ヘキサに設置された特設プレゼンテーション会場は、ちょっとしたお祭りの様相を呈していた。ロシア軍、笠置技工研の展示する最新の兵器群。各社が展示するブースに特設テント、屋台まで出ている。
 ロープで立ち入りが制限された向こうを、新型の溜弾砲を掲げた兵士や新原理の大型レーザーランチャーを備えたジープがゆっくりと行進している。その後ろから、蒼い塗装もまぶしい鋼鉄の龍騎士が姿を現した。右肩に装備された大型レールガンはまるで、龍騎士が天に掲げた槍のようだ。後には、レイヴンの改良型と見える黒い機体が控えている。
「ねぇマヒロ、あれがあたしの機体だよ!」
 マヒロのジャケットの裾を掴むと、金髪の少女――ソニアは子供のようにはしゃいでいた。もう片方の手にはアイスクリームを持ったままだ。
 護衛相手の予想通りの反応に内心肩を竦めながらも、酒見真宙はギャラリーエリアの一角で機体を見上げていた。彼女が遠隔操縦をするという訳でもなく、今日は自動操縦プログラムで動いているようだ。
 マヒロとソニア、軍関係者や観光客が見守る前で、蒼の龍騎士は停止した。青のジャケットとタイトスカートに身を包んで正装した笠置綾乃が前に出てくると、マイクを手に解説を始める。

『ご来場の紳士淑女の皆様、本日はようこそいらっしゃいました。
こちらに御覧いただいているこの機体こそ、対アストラル戦装備機“ドラゴンスレイヤー”です。 スケルトンとなる基本フレームに関しては当笠置技術工学研究所が開発、対アストラル戦装備に関してはロシア軍が行いました。このたび、この先行量産機1機の後に続き、ロシア軍国境警備隊に計30機が配備される予定になっておりますの』

 彼女が優雅に手を振ると、会場から拍手と感嘆の声が上がった。
『接近戦闘用には刀身に銀を使用したこの帯陽電子剣。耐熱・耐電熱装甲も聖別済み、リアクティブアーマーも装備しています。
 左腕に装着された50mmマシンキャノン2門には専用の聖水銀の炸薬弾を使用。右肩に装備した大型レールガンの専用砲弾も銀の合金です。頭部集合センサーにはキルリアンセンサーも初期装備、WINDSにはパイロットを助ける特殊ナビゲーション・システムを搭載。
 クリルタイの国境付近では様々な怪異現象が報告され、アストラル・ハザードは深刻化の一途を辿っておりますが、本機はそうした特殊状況下における運用を前提に設計、これだけのスペックを実現させております。必ずや‥‥』

おまけのウルフちん

 聴衆は黙って説明を聞いている。その時、ドラゴンスレイヤーの後方で動かずにいたレイヴンMk3が軽く身じろぎした。作動音が静まり返った会場に響き渡り、聴衆の一部が驚きの声を上げる。
 素早く異変に気づいたマヒロはソニアを背後に庇い、黒の機体を認めた。鋭角的な装甲の一部が滑らかにスライドし、6連装のエンジェルランチャーが一部その姿を覗かせているではないか。
「なんだ?! 予定にないぞ?」
 レーザーナイフに手を触れ、身構えるマヒロ。だがミサイルランチャーは滑らかに機体に再び格納されると、レイヴンは姿勢を戻した。
『‥‥従いまして、仮に搭乗者がアストラルに詳しくないマンデインだとしても、このWINDS特殊ナビゲーションによるパイロットへの情報伝達の総量は実に‥‥‥‥☆#%?! ちょ、ちょっと! リリーさん! 勝手に動かしちゃダメでしょっ!』
『ああ、すまない。試しに展開してみたんだ』
 スピーカーで増幅された綾乃のうろたえた声が響くと、それに少女らしき落ち着いた声が応えた。
 閃光防御機能つきの眼鏡を直し、ソニアから手を放すと、マヒロは記憶を辿った。今の声は、何処かで聞いたことがなかっただろうか‥‥?

酒見真宙 -残光ナイフの使い手


 改めて説明が終わり、“ドラゴンスレイヤー”の性能デモンストレーションの段になった。観衆から拍手が上がる。
 ソニアと共に見守るマヒロのポケットロンに、設定していない電子音が響いた。開くと小型スクリーンに映っているのはどの知り合いの顔でもなく、電子の光に包まれた青い小鳥だった。
『マヒロ、マヒロ。楽しいことやってるって本当?』
「ああ。これから、もっと楽しくなるところだよ」
 通信の相手はカナリアだった。ふとしたきっかけで出会い、マヒロを慕っている小鳥のアイコン。たびたびマヒロに、様々な情報を運んできてくれた。
『すごいな。ボク、ウォーカーのファンなんだ。飛行機の次に乗りたい乗り物だよ!』


こうさくいん「やっと本命馬のマヒロお兄タマ登場でしゅね〜」
ボス「なにやら一人だけ血圧が低いような気もするのう。(笑) まあそこはほれ、ペネル様と住んでいる世界が近いということにしようではないか(ニヤリング)」
こうさくいん「ドラゴンスレイヤーは本物の龍みたいな形なのでしゅか?」
ボス「うむ。RL氏によるとジツはFF3に出てくる龍騎士のような機体なのだそうな。といってもそんな昔のゲームはもう忘れたぞ(笑) まだ覚えている読者諸兄だけそう思われるがよい」
こうさくいん「FFXもサクッと終わらせるのでしゅよ〜。そしたら来年は巴里の5人で決まりでしゅ〜o(≧へ≦)9゛」
ボス「か、勝手に予定を立てるなΣ( ̄口 ̄;) ええいそのネタはやめい。メタルギアも出るではないか」

幸せの運び手 カナリア


 一方ロープの先の展示エリアでは、試験戦闘が始まろうとしていた。
『おほん。それではこれから皆様にこのドラゴンスレイヤーの性能を実際に見ていただくために、模擬戦闘を始めようと思います。相手には新型のレイヴンMk3を用意しました。あー、レイヴン、よろしいですか?』
『ああ。いつでもよいぞ』
 まるでどこかの国の勇ましき姫君かと思わせる凛とした声が、黒いレイヴンから響く。マヒロはようやく思い出した。ヨコハマLU$Tの闘技場に赴いた時、出会ったリリー・クローデットという銀髪の少女こそ、あの声の主ではないか。確か笠置綾乃の知り合いだったはずだ。
『それでは皆様、これより模擬戦闘を開始いたします。双方とも使用する武装については‥‥&@▼?!』
 重厚な造りの蒼の龍騎士が突然動き出した。大きな作動音とバーニアの音に、司会の笠置綾乃の声がかき消される。
 観客たちから悲鳴とも驚きともつかぬどよめきが上がった。ドラゴンスレイヤーはエネルギーチャージ用の鞘から、四指クロー状の右手でポジトロンブレードを抜き放った。火花を散らす抜き身の刃を手に、あっという間に対戦相手のレイヴンに肉薄する。
『ずるいぞ。フライングだっ!』
 パイロットの声も虚しく、ポジトロンブレードは改良型レイヴンの装甲を深々と斬り裂いた。地響きを立てて、哀れな機体は地に沈む。
 すれ違い様に斬り伏せたそのままの姿勢で、新型機ドラゴンスレイヤーはバーニアを吹かして突進した。その複合装甲は鱗状になっており、怒り狂った地龍が卑小な人間目掛けて突進しているようだ。
 進行方向にいた人間たちが悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように左右に逃げていく。両脚部とバックパックのバーニアを全開にすると、盛大な砂埃を巻き上げて龍騎士は空中に浮かび上がった。大騒ぎになった地上を後に、ドラゴンスレイヤーは全速力で逃げ出し、やがて空の向こうに見えなくなった。



リリー・クローデット、星の都へ

 わたしはしばらく、気を失っていたらしい。気が付いた時、目の前には慌てたアヤノの顔があった。
「警察の方はどこですのっ! ‥‥ちょっとリリーさん! 大丈夫ですの?!」
「う、うん‥‥」
 わたしは手を引かれて、コクピットから出た。レイヴンは装甲を切り裂かれ、エンジンから動力液が漏れている。可哀想だった。せっかくわたしと一緒に、みんなの前で華々しい戦いに挑むはずだったのに‥‥。
「ドラゴンスレイヤーが逃げてしまいましたのよ! まったくこの大事な時に‥‥」
「龍殺しの名を持つというのに、なんて汚い戦い方だ!」

 わたしは新型機の消えていった空を見上げた。飛行機雲が残っているだけだった。人間が操縦していたようには見えなかったけど、どうやって動いていたのだろう?
 回りではたくさんの人たちが四方八方に走っては、互いにぶつかっている。もうドラゴンスレイヤーはいなくなったのに、どうしてこんなに慌てているんだろう。アヤノがそばにあった拡声器を取ると、大きな声を張り上げていた。
『ちょっと皆さん! 落ちついてくださいまし! 走らないで!』

おまけのウルフちん


 取り乱した笠置技工研の才女が必死に声を張り上げる中で、特設会場の混乱は続いていた。マヒロは護衛相手のソニアと共に、一部始終をギャラリーエリアから眺めていた。自分の搭乗機の圧倒的な性能に歓声を上げていたソニアも、龍騎士が消えてしまった今となってはさすがに声を失っている。
「まったくソニア、喜んでいる場合じゃないぞ」
  マヒロは壊れたレイヴンから銀髪の少女が出てくるのを認めた。白いパイロットスーツはどこも汚れていない。無事のようだ。
「幸い相手も、怪我はなかったみたいだけどな」
 そのポケットロンがまたしても軽やかな電子音を響かせ、小鳥がその中に現れる。
『マヒロ、マヒロ。ウェブから調べてきたんだ。あの機体、中の改造されたWINDSが勝手に動いたみたいだよ』
 カナリアはホログラフの瞳をくるくると動かしながら、友達に見つけたばかりの秘密を教えた。
『それにあの機体、なんだかバイオトロンが入ってたみたいだよ』
「バイオトロンだと‥‥?」
 マヒロは考えこんだ。オーサカMOONを賑わせた生体コンピュータの技術はバイオ倫理法で禁止され、今はどこの国も行っていないはずだ。対アストラル装備がなされたというあの龍騎士には、何か秘せられた思惑が隠されているのだろうか?

 マヒロとスクリーンの中のカナリアは、混乱の続く特設会場を見渡した。真ん中では拡声器を手に、笠置綾乃が頑張っている。
『誰か、早くカーゴを持ってきて! 医療キットは‥‥いやそれよりS4はまだ到着しておりませんの!』
 青のスーツですっくと立つ青嵐の女卿が号令を下すたび、その外側にカールした見事な髪が揺れている。優雅な御披露目を予想していた司会者側にとっては、たいへんな一日になるだろう。
『ねえマヒロ、あの髪型、毎朝大変なんだろうねー』
「‥‥そういう問題じゃないだろ」
 カナリアの言葉に、マヒロは真顔で答えた。

酒見真宙 -残光ナイフの使い手

ジーク、百合の王国の騎士


 先行していたカムイシキテが立ち止まり、警戒するように喉を震わせた。深い森を進んでいたリュートも立ち止まり、帯の後ろに差した精霊の宿る小刀に手を掛けた。空気が震えている。
 と、轟音を上げ、空を何か蒼く大きいものが横切っていった。木々が震え、葉が舞った後で、そのものは国境の方向へ消えていった。
 騒ぎが収まり、森が静かになった後。大きな山猫が茂みから姿を現した。宝石のような緑色の瞳が、人間の侵入者を物珍しそうに眺めている。
『誰にゃー』
「私はリュート。歌の民のリュート=レヌシだ。怪しい者ではない。歌の民の凍牙が、おまえたちの仲間、エルツァを探しに来た」
 大自然と結びつきの深いリュートは動物たちの言葉を解し、話すことができる。彼女が事情を話すと、山猫は茂みから前に出てくた。ずいぶん大きい。
『我輩たち猫は個人主義だから、ぷいっといなくなることも、そりゃあるにゃー』
 山猫は後ろ脚で首を掻くと、身を翻した。
『確かにしばらく前に騒ぎがあったにゃ。ついてくるにゃ』
 そのまま、獣道を走ってゆく。
「カムイ、レラ、行くよ」
 リュートは小さく口笛を吹いた。上空を旋回していた鷹のレラキリエが応えるように一声鳴き、方向を変える。狼のカムイシキテは主と一緒に、深い森の中を走り出した。


 山猫が待っていたのは森の中の広場だった。中央には伝説の世界樹もかくやの大木が堂々とそびえている。あの木に宿る精霊はきっと、世界が傾くずっと昔からこの森を眺めてきたのだろう。
 山猫が合図すると、大木の枝の陰や、絡みついた壊れた電子機器の間から仲間たちが次々と姿を現した。よく見ると全員の髭が銀色を帯びている。
『ここは我輩たちの交流の場なのにゃ。我輩たちは機械が怖くないのにゃ。お前たちと同じにゃ』
 リュートはよくよく目を凝らした。強い霊力を感じる大木には――どっしりした根やたくさんある枝のあちこちに、ケーブルや壊れかけのディスプレイ、トロンの部品や様々なガラクタがくっついている。狼のカムイもこれには面食らったように、黙って大木を見上げていた。
「‥‥あなたたち、もしかしてK-TAIも持ってるのか?」
 リュートは山猫に問い掛けた。
『ものによるにゃ』
 山猫は得意そうに言うと、歯を見せて笑った。

大地の歌を護るために


 青いカナリアは電脳の空を飛んでいた。カムイST☆Rネクサスの情報密集度はそれほどでもなく、サイバースペースを飛び交う光点の数はそう多くない。ロシア連邦のネクサスは整備が足りず、地上を走るグリッドさえも途切れている箇所があった。Webと接続されていない地域が、暗い空隙となって擬似的な地表に残っている。
「やあ、カナリア。どこから調べようか。ロシアがAIを造ってるって噂だが、その辺りをもう少し探ってくれないか」
 虚空に開いたウィンドウに、黒眼鏡のマヒロの姿が現れる。
『マヒロ、マヒロ。わかったよ。でもその前に、このネックレスを調べなきゃ』
 虚像の梢に止まったカナリアは脚を一振りした。データ集合体からできた透明なネックレスが中空に浮かび、ゆっくりと回転を始める。
「それは‥‥?」
『キリっていう大事な友達がお別れの時にくれたんだ。とりあえず、こっちから解析するよ』
「鳥だけにとりあえずか‥‥」
 ロシア連邦の寒さもかくやの台詞を前に、カナリアは虚像の嘴でネックレスをつつき始めた。嘴の先が高度に暗号化された鍵に触れ、集合体は定められていたルーチン通りに自己分解を始める。高度なポリゴンで構成された宝石の破片へ、粉末へ、1文字1文字のデータへ。その全てが互いに結びつき、元の形を取り戻してゆく。再構成されたそれはひとつのプログラムとなって、くるくると動くカナリアの瞳の前でユーザー用情報を流し始めた。
 攻撃プログラム。対象はAIのみに絞った特化型。自律思考部分に侵入、中枢を消去、AIそのものの速やかな破壊を可能にするものだった。
 猫の姿をしたキリはどうして最後にこんなものを渡したのだろうか。リアルスペースのキリに、何かが起こったのだろうか?

幸せの運び手 カナリア


 プレゼン会場の大騒動もどうにか収まった翌日。護衛のマヒロを伴ったソニアはカムイST☆Rの観光と洒落こみ、かつての札幌繁華街の雰囲気を残しているというススキノを回っていた。
 ST☆Rでしか取れない水晶を使った首飾り。五大民族がそれぞれの趣向を凝らした民芸品。サキ・ニチヤの今年の流行の服に、意外な所で安売りしていた北米C'zブランドのアクセサリー。
 14歳のエースパイロットのショッピングは何処までも続く。そしてその買い物袋は全て、不幸な護衛へと回されるのだった。

「‥‥いい加減にしないと、いざという時に守れないぞ」
 レーザーナイフを背に回し、両手に袋を持ったマヒロは仏頂面で少女を見下ろす。
「だったら、お前はクビだっ」 金色の髪を翻し、ソニアは振り返った。
「すぐにマヒロの代わりを見つけてもらうもん。簡単だよ」
「もう少し、軍人らしくしたらどうだ? 君はあの機体に完全な適性をもった、数少ない優秀なパイロットなんだろ」
「あたしは、そうやって軍人に見られるのが嫌なんだ」
 少女は口を尖らせた。
「別にあたしがすごく優秀って訳じゃない。アストラルに適性のある特殊な属性のパイロットだからとか、そんな理由で選ばれたんだよ」

酒見真宙 -残光ナイフの使い手

「‥‥そうなのか?」
「そうだよ」 ソニアは手をかざした。「ほら、ロゼ!」
 少女の手首に、突如として薄青い蔦が現れた。互いに絡まりあいながら蔦は伸び、掌の上で交わると、その上の宙に青い薔薇の花が咲く。
 燐光を放つ不思議な薔薇の周りには靄が渦巻き始めた。明らかに周りの大気より温度が低い。マヒロの方にひんやりした風が漂ってくる。
「(秘幽体使いだったのか)」 マヒロは内心驚いた。
「(‥‥ロシア軍は隠し芸大会でもしてるのか?)」

おまけのウルフちん

 わたしは狸小路商店街というところを回っていた。数字の1番から始まるこの商店街は、数字が大きくなるほど、変わったものが置いてあるという。色々なものが売っていて、楽しいところだな。
 2番街の大通りの両側は、ずっとショーウィンドウが並んでいた。綺麗なドレスに、月の民の不思議な衣装。クローデット工房の店はなかったけど、人形の店はあった。ウィンドウの中で遊んでいる機械仕掛けの小さな小人たちが、いっせいにわたしに手を振ってくる。
 通りを見たら、一人だけ背の高い男の人がいた。尖ったような髪の毛に黒い眼鏡、たくさん買い物袋を抱えているのに、あんまり嬉しくなさそうな顔をしている。あれは、LU$Tのコロッセオで初めて会ったマヒロだ。
「マヒロじゃないか!」 わたしは手を振った。

リリー・クローデット、星の都へ

酒見真宙 -残光ナイフの使い手

 透き通るような銀髪にゆったりした薄桃色のブラウス、スカートに柔らかいブーツで軽やかに少女が登場すると、まるで世界の輝きがそこだけ増したかのようだった。
「マヒロは意外と、買い物好きなのだな?」
 銀の百合のリリーは真顔でマヒロを見上げていた。
「‥‥見れば分かるだろ」
 苦笑したマヒロはファンシーな買い物袋のひとつを示した。鮮やかな赤色の袋に北米のC'zブランドの洒落たロゴが印刷してある。ウィンドウショッピングに興じていたソニアも、彼の横からひょいと姿を現した。


 途端に両名の顔が険しくなった。マヒロは一歩後ずさった。世界の戦場を駆け巡ってきた戦士の勘が、直接の交戦はないにせよ、両陣営から飛び交うであろう激しい砲火の火線を予測する。
「‥‥そなたがあの龍騎士のパイロットだな。昨日は勝手に動いていたと分かっているから良いけど、もしそなたが操縦していたとしたら、わたしも怒るぞ」
「ふーんだ。あたしだってあんな量産機を相手に、あんな戦い方はしないよ」
「わたしも、いつもの機体だったらあのような負け方はしないぞ!」

 両陣営があわや近接戦闘に移るかとシルバーファングの最後の生き残りが危惧しかけたとき、思わぬ援軍が現れた。
 援軍は白い風の姿をしていた。午後のショッピングに興じていたマダムたちがまぁと道を空ける中を、ずいぶん大きな犬――いや、狼が走ってくる。
 マヒロには知る由もないことだが、そのロボット狼は同族の匂いを嗅ぎ付け、リリー・クローデットの所に真っ先に駆け寄ってきた。尻尾を振り、耳を垂れると、自分たちと同じ歯車の王国に属する銀髪の少女に身を寄せる。
「カムイ――カムイシキテじゃないか」
 リリーは屈むと、その頭を優しく撫でた。
「じゃあ、リュートも来ているのか?」
 マヒロがかつて属していた傭兵部隊の紋章にも相応しいかと思われる堂々とした銀の狼は、主の方を振り返って一声鳴いた。
 そこに歌の民の娘が立っていた。白が基調のゆったりした民族衣装、袖口を被う際立つ赤の複雑な刺繍。頭の両脇にちょこんと乗った髪飾りも鮮やかな赤だ。同じ色の腰帯の後ろには木の鞘に収められた小刀を差し、下はゆったりと動きやすい袖の広いズボンになっている。激情を内に秘めたような、意志の強そうなきりりとした顔立ちが行き交う買い物客たちの中で際立っていた。
 いずこかのメガ・プレックスであればずいぶん人目を引く格好だが、ここカムイST☆Rでは不思議と違和感がない。ソニアに引きずられてマヒロが回ったショッピングモールでも、確かに似たような服は売っている。

 リリー・クローデットと、彼女より少し年上に見えるその娘とは知り合い同士らしく、二人で話している。歌の民の娘の方が背がいくぶん高い。
「‥‥だから、わたしたちはその卑怯なウォーカーの行方を探しているんだ」
「龍殺し、か。その機体は私たち歌の民の森の上を通り過ぎていった。国境の方へ消えていったよ」
 どうやら全てがひとつに収束するようだ。全員の視線が一人所在なげにしているソニアの元に集まる。ドラゴンスレイヤー機のテストパイロットはぷいと目をそらすと、口を尖らせた。
「あたし、よく知らなーい。あたしは操縦するだけだし、WINDSの調整なんてみんなエンジニアがやるもん」
 しばらくして、マヒロが抱えていた買い物袋のひとつから、ST☆R特産の薬草を使った石鹸の箱が落ちそうになった。微妙なバランスを取って落下を寸前で食い止める。
「とにかく、あのイゴールという男には何かありそうだ」
 マヒロは姿勢を戻し、三人の少女の顔を見渡しながら言った。
「一度、彼のところへ行ってみよう」
 食べ物が落ちてくるのかと期待していた銀の狼が、残念そうに鼻を鳴らした。

「リリーちゃんのチャイナ服なのでしゅ〜」「げははは〜」


 一行と別れたリュートは、カムイシキテとレラキリエを伴い、再び森の奥を探していた。
 ややあって、人間の数百万倍の嗅覚を持つカムイシキテが鋼と獣の臭いを嗅ぎつける。銀の狼が先導していく先には、木々が激しく荒らされた一帯があった。
 茂みは踏み潰され、木々には流れ弾が撃ちこまれ、精霊たちが痛みの声を上げていた。あちこちの幹や地面に残る直線的な跡は素人でも分かる――明らかに機動戦車のものだ。
 ずいぶんと時間が経っていたが、もうひとつの何かが激しく暴れた跡がある。リュートは屈み、二の腕まで覆う布製の手甲を巻いた手で地面をなぞった。自然に親しむ歌の民である彼女には分かった――山猫の足跡だ。深さも大きい。この足跡の主はあの大木で見かけた、大きな山猫たちと同じ位の大きさはあるだろう。
「カムイ。レラ。あの大木の所にもう一度行くよ」
 リュートは獣たちに目配せした。一人の少女と二体の獣は、再び森の中を進んでいった。

『ニンゲンがまた来たのにゃ』
 リュートが件の大木の広場まで行くと、またあちこちから山猫たちが現れた。前に来た時に案内してくれた猫とおぼしき大きな一匹が、のそのそと木の根元から歩んでくる。
 樹上の彼の仲間たちは、大木のあちこちのうろに長い銀色の髭を入れる。途端に古ぼけたディスプレイや、ケーブル類や、トロンの部品や、大木に巻きついた様々なものに光が灯った。
「もしかして‥‥イントロンしているの?」
 リュートは黒い瞳を丸くした。大木のあちこちが、ST☆R中央区での年末の飾りつけのように輝いている。木全体から感じた強い霊力の正体はこれだったのだ。
『そうだにゃ』 山猫は得意そうに笑った。
『我輩たちは時代に適応した新しい猫なのにゃ。みんなアイコンはリュンクスにしてるのにゃ』

 リュートの服の複雑な刺繍の織り込まれた袖を、狼のカムイシキテが引いていた。彼が鼻先で示す先の草むらに、ひどく旧式の液晶スクリーンが転がっていた。そのテラウェア製のスクリーンの中を流れる灰色の嵐の中に、何か青いものが姿を現す。だがスクリーンはバチッと火花を上げると、煙を上げて壊れてしまった。
 今度はその近くにあったやはり古臭いLIMNET製の旧式ホロ投影装置に光が灯る。リュートが布を取り出して表面を拭くと、ようやく宙に浮かんだ画像が安定した。
『はらほれひろはれ〜。ロシアのネクサス、壊れすぎだよ』
 青い小鳥がへばっている。歌の民には本職のニューロが少ないため、時々情報探しを頼んでいるカナリアだ。小鳥の瞳は漫画のように、本当にクルクルと回っていた。リュートの肩に止まった鷹のレラキリエが、電子の海の向こうに住んでいる同族に不思議そうに首を傾げる。
『リュート、リュート。ここ、リュンクスの森だよね。ネットマップにも、そう書いてあるよ』
「ちゃんとネクサスになっているのか‥‥。これは驚いた」
 歌の民の娘は、大地にしっかりと根ざした大木の太い根の先を眺めた。その先の地面のあちこちに、ケーブルが埋められた跡がある。
『この森はちゃんとしたWeb回線を引こうとして、途中で工事が止まったままになってたんだ。サイバースペース側だとグリッドが途中で切れてるもん。トロンじゃない、分類不明の構造体がネクサス管理バディになってたよ。きっとあのおっきな木の根っこの先が、ケーブルと繋がってるんだ。あの木がイントロン・アダプターの代わりになってるんだよ』
 小鳥は歌うようにさえずった。
「そんなこともありえるの‥‥?」
 リュートと一緒にカムイシキテも、不思議そうにホロヴィジョンを眺める。
『リュート、リュート。ボクはトロンやネクサスにも命があると思っているんだ。電脳世界にはいろんな不思議なことが起こるし、ボクはこの目でいくつも見てきたよ。きっとそうだよ』
『そうなのにゃ。我輩たちはいつもここからイントロンするのにゃ』
 幻像の中にリュンクスの姿が現れた。精一杯羽ばたきながら力説していたカナリアが、画面の隅に狭そうに追いやられる。
『このリュンクスのアイコンを使って、別の名前を使って、我輩たちは電脳世界を旅しているのにゃ。あっちじゃみんな別人‥‥別猫なのにゃ』
 現実世界ではむっくりした山猫たちの姿に比べると、幾分漫画じみたリュンクスのアイコンはずいぶんスマートだった。カナリアたちの世界の言葉を借りれば遥かに“Kool”だ。
 その時、リュートとカナリアは同時に同じことに思い当たった。強い意志を宿した黒い瞳と、せわしなく動く虚像の瞳を互いに見合わせる。
「‥‥なあ、山猫どの。そのいなくなったエルツァは、ウェブではなんと名乗っていた?」
『キリだにゃ』リュンクスは頷くと悲しそうな顔をした。
『エルツァはずいぶん前から見ないけど、キリはつい昨日までウェブにいたにゃ。でも今日は誰も見ていないのにゃ。おかしいのにゃ』
『リュート、リュート。やっぱりキリに何かあったんだ。ST☆Rのネットマップはだいたい分かってる。ボクが探してくるよ!』
 カナリアは飛びあがると翼をたたみ、水面に飛び込むようにホロヴィジョンの下に消えた。

幸せの運び手 カナリア



【前編】【後編

---Bar from V:tM---
...... Play wiz Prince Egg ......

レポートのページへ戻る

dice-jp.com > Iwasi Studio > Report > Messiah of the STAR 1
Back to RI-Foundation TOP > NOVA