星の救世主
星の救世主
〜玉子皇太子殿下と遊ぼう〜

前編】【後編】


 電脳空間の擬似的な地表に降り立ったカナリアは、呼び出した助っ人たちを見回した。インフォST☆Rのアニメから飛び出してきたような8匹のハムスターたちは彼女の周りに全方位陣形を敷き、めいめいが勝手にぴょんぴょん飛び跳ねながら勢いをつけている。
 小鳥の号令一下、ハムスターたちはカナリアを中心に、正確な八方向に向かって全速力で走り出した。グリッド位置制御プログラムが認識できないほどのスピードで、残像だけを残して擬似的な地平の彼方へ消えていく。その後に高度の粒子拡散シミュレーションで作り出された砂埃が舞い上がった。
 ハムスターたちの正体はカナリアが造った検索プログラムだ。市販されているウェブ・シークの実に数万倍の速度で、独自の自律型アルゴリズムに従ってST☆Rウェブの電子の大地の全土をくまなく探していく。アルファベット1文字分のデータ残留物さえも、ハムスターたちは見逃さない。
 走り出した時と同様に、唐突に助っ人たちは帰ってきた。理論上は無限の距離にある地平の彼方から、砂埃を上げて走ってくる。めいめいが頭の上にどんぐりを抱えたハムスターたちは、カナリアの手前でいっせいにブレーキを掛けた。アニメのように盛大な砂埃を上げながら、左足を前で踏ん張って滑りながら停止する。
 8匹はいっせいに頭の上のどんぐりを中心に投げた。虚空で融合しあい、それは大きなひとつのどんぐりへと形を変える。ハムスターたちは戦利品に喜んでぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
 カナリアは羽ばたき、その魔法のくちばしでデータ構造体をノックする。どんぐりだったそれはひとつきで拡散する正確な立方体の集合体へと変化し、中のデータを表示し始めた。
 ST☆Rの某所にある貸しラボラトリーの記録。森で見つけた山猫の生体脳を抽出し、バイオトロンの本体部原料として使用。機能付加と性能チューニングの後、バイオトロンは対アストラル戦闘用の戦術決定AIに。WINDS用のインターフェースを微調整の後に接合し、完全なウォーカー搭載用AIが完成した。搭載された機体は試験機ドラゴンスレイヤー。
 捕獲した山猫の画像データ、生体脳抽出後の廃棄物の画像データ、タイムスタンプ、ラボラトリーの使用者詳細、全てが一致した。哀れな山猫エルツァの脳は、龍騎士の制御システムの一部として使われていたのだ。

 リュートは布製の手甲に覆われた拳をぎゅっと握り締めた。彼女の周りに常人には知覚できな霊気の炎が立ち昇り、髪を房にまとめた赤い布をはためかせた。
「‥‥人間でもしていいことと悪いことがある」
 喉の奥で危険な唸り声を上げ始めたカムイシキテをなだめ、歌の民の少女はホログラフの中の小鳥に言った。
「カナリア、その研究所を使った人たちのことを教えてちょうだい」

大地の歌を護るために


 忙しいカナリアは続いてマヒロのポケットロンの中に現れた。ショッピングモールの一角のゲームセンターでスクリーンを眺める青年に、ハムスターたちが探してきた秘密を伝える。
『マヒロ、マヒロ。でも中を覗いてくるので精一杯だったんだ。セキュリティがすっごく硬くて、もう1回ハムスターに頼むのは無理だよ』
 さえずりながら続ける。
『たとえキリがどんな姿になっていたとしたって、生きていることにはそれ自体に価値があるよ。なんとか助けてあげられないかな』
「ああ、分かった‥‥。とにかくこの時点で、既に法的には明らかに非合法だ」
 マヒロは横に置いた買い物袋の山に目をやりつつ、顎に手を当てて考えた。
「まずはだな‥‥いや、やはり正面から行こう。あのイゴール・キロスニフという男を一度問い正してみる」
 鮮やかな電子音のファンファーレが鳴り、マヒロは後ろを振り返った。無駄な戦闘を好まぬ彼の提案により両陣営の直接交戦は避けられ、二人の少女は体感型ゲームで一勝負という、極めて平和裏な解決方法を取ることになったのだ。

リリー・クローデット、星の都へ

 ジークのような素晴らしい機体はなかったけど、ゲームの中の機体たちもどれもなかなか面白いものだった。現実世界と同じように、わたしの操縦と思念に応えて素早く動き、架空の戦場を駆け巡ってくれる。
 面倒なヘルプテキストや残弾数やレーダーの全体俯瞰図も表示されていたけど、わたしにはほとんど必要なかった。彼らの心に触れて、その気持ちに応えれば、自然とうまくいく。
 ほとんど意識しないで遊んでいたうちに、試合は終わっていた。よく分からないけど、わたしの勝ちらしい。なんだか、あっけなかったな。


 完全密閉の操縦席型筐体に乗り込み、二人で対戦するウォーカー戦闘ゲーム。ウォーカー操縦に天賦の才能を持つソニアも健闘し、一般的に見ればかなりの高得点を上げた。だがその上を行く対戦相手には敵わない。初めての体験であったにも関わらず、結果はリリーの勝利だった。無事、両陣営の和解が成立する。
 二人の少女は筐体からぴょんと飛び降りた。流石のソニアも素直に負けを認め、神妙にしている。
「よい勝負だったぞ」 肩に掛かる髪をはねあげ、リリー・クローデットは晴れやかに微笑んだ。
「なかなか面白いゲームだな。でも、もっと優美な機体はないのか?」

『リリー、リリー。マヒロの友達のリリーだね? その腕だよ!』
 興奮したように青い羽をばたつかせるカナリアがデモ用スクリーンの中に突如現れ、少女の紫の瞳を困惑させる。
 電脳世界に存在する全ての構成要素の感情を理解できるカナリアには、ゲームの一部始終を見ていて分かったのだ。リリーの操る機体は一発も無駄なミサイルを撃っていなかった。一度もフィールドの障害物に衝突していなかった。目まぐるしい動きを観客たちに見せながらも、ゲーム内世界の物理法則に逆らって機体に負荷の掛かる操縦を一度もしていなかった。カナリアと同じように、データで構成されたキャラクターの気持ちを完全に理解して動かしていたのだ。
 くるくると瞳を動かし、あの蒼い龍騎士にバイオトロンが搭載されていたことを説明する。天真爛漫に見える少女も、流石に整った眉をひそめて考え込んだ。
「そうだったのか‥‥。わたしも、名誉のない戦いはしたくない。できれば、そこだけ無事に済ませたいものだな」

ジーク、百合の王国の騎士

 といってもわたしのジークフリートは、ヨコハマLU$Tに置いて来たままだ。クローデット工房のスタッフに頼んで届けてもらうことはできるけど、飛行機の便もあるし、そんなにすぐにはST☆Rまで運ぶことはできない。
 アヤノだったら何か手があるかもしれない。そう思ったわたしは、彼女に相談してみることにした。

リリー・クローデット、星の都へ

 新月寒という場所、真教の大きなモスクの近くにある喫茶店の中にアヤノはいた。上品な煉瓦造りの店の中には静かに音楽が流れていて、お客さんはあまりいない。青いスーツを着たアヤノは一番奥の席で、一人でお茶を飲んでいた。店員の人も心得た様子で、少し離れたところに控えている。
 わたしにはよく分からないけど、ああいうのをお金持ちのお嬢様風と言うのだろうか。あれでときどき変なことをしなかったら、アヤノもきっと、お金持ちのお嬢様風のままでいられるのにな。


「なるほど、龍殺し同士の戦いという訳ですか‥‥。わたくしも、少し見てみたいですわね」
 笠置綾乃は湯気の立つティーカップを静かにソーサーの上に戻した。
「ああ。わたしも不名誉な戦いを強いられたんだ。なんとかならないかな?」
 銀髪の少女は机の向こうで拳を握り、立ったまま力説する。
 綾乃は頷くと、脇のブランド物のバッグの中からクレッドクリスを一枚取り出した。机の上に置くと、二本の指ですっと優雅に滑らせる。
「分かりましたわ。わたくしとしてもプレゼン会場の件を放っておく訳にはいきませんの。ここで改めて依頼することにいたします」
「ええっ、いらないよ!」 だが、銀の百合のリリーは目を丸くしてカードを断るのだった。「わたしは、お金のために戦うんじゃないんだ」
「あら、雪辱戦というわけですの‥‥」
 調子を崩された綾乃はテーブルの上に突っ伏す前に体勢を立て直し、クリスをバッグの中に戻した。
「(では、キルステン老にでも後でこっそりと渡しておきましょうかしらね)」
 続いてポケットロンをコール。笠置技術工学研究所の全所有機の現在位置を弾き出し、シミュレーションを行わせる。
「丁度よいですわ。ヨコハマLU$Tのラボに輸送機が一機おりますの。今すぐ積み込みを始めてもらって‥‥そうね、概算3時間もあれば大丈夫でしょう。
 そうだわ。あなた別の便で飛んで空中で移乗しなさい。それが一番速いですわ」
「へぇ、そんなこともできるのか?」 リリー・クローデットは宝玉の瞳に興味の色を湛えた。
「もちろんですのことよっ」
 いつの間にか笠置綾乃は立ち上がり、自信たっぷりに小型スクリーンの中の演算結果を少女に見せた。
「この輸送機なら後部に降下用ドックがありますの。あなたのジークフリートでしたら滞空も可能な設計のはず。バックパックを装備して空中から降下なさい。派手な降下作戦になりますわよ!」
「そうか。さすがだな、アヤノ!」
 おだてているのか素直に誉めているのか、銀の百合のリリーは目を輝かせて頷いた。
 笠置綾乃は毎朝丁寧にカールさせている髪をさらりと払い、手を腰に当てた。オーダーメイドのジャケットとタイトスカートですらりと決めた服装で、もう片方の手を口元に当てるとポーズを決める。
 片や青き嵐の如き激しさを備える才嬢、片やただ一輪咲く高貴な百合の如く輝く少女が揃い、店内に花の巴里もかくやの華やかな空気が満ちる。勇ましいクラシック音楽が流れる中で、青嵐の女卿は高らかに勝利を宣言した。
「ホホホホ。この笠置技工研の力、とくと御覧になるがよろしいですわっ!」
 少し離れたところでは、紅茶のお代わりを淹れに来たウェイトレスが、近付くべきか困って立ち往生していた。

おまけのウルフちん


 イゴール・キロスニフは住居に使っている洋館にいた。少女たちを連れて現れたマヒロのまとっている剣呑な雰囲気に気付くと、ロシアから来た男は広間の向こうで立ち止まる。

酒見真宙 -残光ナイフの使い手

「‥‥あのウォーカーに搭載されていた違法のバイオトロン、あんたの仕業だったんだな」
「‥‥そこまで知られたか。これも、我が祖国の為だ‥‥」
 マヒロの脳裏を、この十年間の戦いの記憶がかすめていった。吹雪の中で滅んだ傭兵部隊。世界を転々としながら戦い続けてきた、ロシア対内防諜局のあの女。
「あんたたちのやっていることは‥‥この十年、何一つ変わっちゃいないんだな‥‥」
 対閃光防御機能を備えたサングラスに、危険な光が走った。

「事と次第によっては、五大氏族を敵に回すことになる」
 リュートは長衣を翻し、腰の後ろの短刀に手を掛けた。今にも飛びかかろうとしているカムイシキテをもう片方の手で押さえる。銀の狼はただならぬ雰囲気を察したのか、低く唸り声を上げていた。
「だからどうしたというのだ」 イゴールはまだ威厳を失わずにいた。
「君たちは国境の現状を知っているのかね? 我がロシア軍がどれほどの困難な状況下にあるのか知っているのかね?」
「‥‥そうしたのは自分たちだろう」
 静かに答えるマヒロの眼鏡が髭面の依頼人を映し出した時、青年の肩の中空にカナリアのホログラフが現れた。
『そうだよう。なんでこんなことしたんだよう! それじゃあ、みんなが幸せになれないじゃないか!』
 虚像の瞳を潤ませ、羽をばたつかせながら、幸せを運ぶ青い小鳥は悲痛にさえずる。だが、ロシアの技術者はそれを一喝した。
「ラボに違法アクセスしてきたのはお前だな? 記録が残っていたぞ。おおかた本体は軌道辺りだろう。空でぬくぬくと暮らしている鳥めが! 所詮、お前がウェブで見ているものは世界の真実の一面でしかないのだ。世間を知らず、何の不自由もない暖かなコロニーで暮らし、のうのうと星を見上げているお前に何が分かるというのだ!」
 ショックを受けたカナリアはさえずるのを止めた。小鳥の体は強風に吹き飛ばされたかのようにくるくると舞い、何万もの青い光点となってグリッドの彼方に四散していく。
 光点が霧となり、消えた後にホログラフの中に現れたのは宇宙の映像だった。死の世界に冷たく輝く星々。白く無機質なコロニー。分厚い強化ガラスで外界と遮断された一室が大写しになり‥‥その中の白いベッドの上から見つめているのは‥‥

 マヒロが初めて目にする人物だった。そこにいたのはせわしなくさえずる陽気な青い小鳥ではなかった。生命維持装置から伸びる何本もの管を埋め込まれ、体じゅうに包帯を巻いた、痛々しい少女の姿だった。
 包帯の間から灰色の髪がこぼれ、その下で緋い瞳だけが悲痛の色を湛え、電脳の海の向こうに広がる永遠に手の届かない実世界を見つめていた。
『‥‥ボクは軌道にいるけど、こんな体じゃ何もできない。おじさんの方がうらやましいよ』

幸せを探すもの カナリア


「私たち歌の民はカムイST☆Rを切り開いてきた。たとえあなたにも自分の国の大地を思う心があったとしても、こんなのは間違っている」
 リュートが小刀に手を掛けたまま、一歩前に出る。
「たとえロシアの大地が深い雪に覆われていたとしても、でも人の心までは覆われていないはずっ」
 怒りで増幅された見えない霊気が娘の回りに集まり、髪をまとめた赤い布をはためかせた。
「この国は瀬戸際に立っているのさ。俺たちの選択で、未来が変わっていく」
 マヒロはレーザーナイフを抜いた。柄だけを人間の両手用に変えたいびつな両手剣のごとき刃が、ロシアの冬を照らすことになる青年の手で鈍く光った。
「‥‥だが俺も、こんなやり方には納得がいかない」

青の輝きは未だその刃にあり


「ちょっと皆さん。どうしたのですの?!」
 マヒロたち一行とイゴール・キロスニフは同時に声の主を振り返った。遅れてやってきた笠置綾乃が戸口のところで、広間の中のただならぬ様子に驚いている。
「あの女を始末すれば、あの機体に使われている技術は我がロシアが独占できる。3年だ‥‥私は3年待ったのだからな!」
 イゴールは柱の影にあった何かのスイッチを押した。低く唸るような音が響き、広間全体が揺れると不可思議な光に包まれた。
「な‥‥なんだ?」
 眼鏡が光量を調節して使用者への被害を食い止めた後で、マヒロはあたりを見回した。何も変わっていない洋館の広間。だが、テラスの向こうに広がる外の風景は、原色の絵の具を溶かしたような混沌とした渦模様となっている。
 気がつくとイゴールの姿がなかった。マヒロのすぐそばにいたはずのソニアの姿も消えている。
「幽屋だ! あの男は何かの手を使って、星幽界への一時的な門を開いて逃げたんだ」
 リュートは身軽な動作でひらりと銀の狼の背にまたがった。白い長衣と髪に巻いた赤い布が翻るのをやめた時、カムイシキテはいつでも跳躍できる姿勢で構えていた。
「まだ遠くへは行っていないはず。ついてきて。行くよ、カムイ!」
 号令一下、大地に祝福された少女を乗せた狼は力強く跳んだ。ひと飛びでテラスを乗り越え、銀色のつむじ風となって疾走していく。万色の渦が風の前に道を譲り、その向こうに隠された緑の風景があらわになった。

大地の歌を護るために


 ポケットロンの画面の中に落ち着いたカナリアを従え、マヒロは足を踏み出した。気がつくと深い森が四方に広がっていた。振り返ってもあの洋館も、不可思議な空の色もどこにも見当たらない。
 狼の吠え声が聞こえた。ロシアの凍土の夜に聞こえるものによく似たその声の方へ急ぐと、不意に密集した木々が途絶え、その先であるじの少女を守るように立ちはだかった銀色の狼が敵を睨んでいる。
 イゴール・キロスニフはそこに立っていた。髭面の技術者は両手を空に掲げると、広場に差し込む陽光を見上げている。
「ここは暖かい‥‥。ロシアの大地の全てがかくの如く照らされるまで、私はいかなる汚名も甘んじて受けよう。いかなる犠牲を払いもしよう。攻撃に移れ、ドラゴンスレイヤー!」
 地震のように大地が震え、大木が揺れると、バーニアの轟音と共に鋼鉄の龍騎士が飛び出してきた。粉塵を上げて草の上に着地すると、殲滅対象の方に向き直る。地を淡く照らす太陽に槍の如く向けられた大型リニアレールガン。鉤爪の如き四指型マニピュレーターが左腰の鞘に伸び、左腕に装着された二門のマシンキャノンがきらりと光る。
『了解‥‥。殲滅作戦を実行する』
 蒼い機体の中からスピーカーで増幅されて響く声は、護衛の青年に荷物持ちを押し付ける我儘一杯の少女のものではなかった。作戦を予定通りに実行する、感情のない兵士の声でしかなかった。
「‥‥俺はお前のやり方が気に入らない」
 マヒロは大型レーザーナイフを構えた。レーザー発振のスイッチを滑らせ、いびつな片手半剣の如き刃に青白い炎がほとばしるに任せる。かつてある試作型ウォーカーから奪ったこの巨大な剣は、孤高の戦士と常に共にあり、多くの機動戦車を剣撃だけで葬ってきた。黒眼鏡が冷たい炎を映し、マヒロは恐れることなく前へと出た。
「ロシアを救いたいあなたの気持ちは分かる‥‥でも、許せない」
 リュートは羽織っていた白い外套をはね上げた。その服と同じ、鮮やかな赤の刺繍の織り込まれた純白の布が広がり、歌の民の娘の後ろに落ちた時、その手には逆手で刃が抜かれていた。小刀ルプシムツベと対になるさらに小さな小柄、精霊に守護された刃は夜明けの光に照らされる氷の粒のようにきらりと輝いた。
「大地と、歌と、精霊の御名において、成敗します!」
「他にいかなる方法があろうとも、ロシアの復興が早まるわけではないわっ」
 イゴール・キロスニフは懐から笛を取り出すと大空に向かって大きく吹いた。人間には聴こえないその音色は、殺戮の時を待っていた巨大な伝説上の獣に時が来たことを伝えた。歌の民の少女につき従う狼と鷹だけがそれに気付き、警告の声を上げる。
 ドラゴンスレイヤーに劣らぬ轟音と共に現れたのは一匹の飛竜だった。蝙蝠めいた翼に後脚だけ、その牙だらけの口は獲物に向かって大きく開かれている。ロシアやクリルタイで近年目撃されているワイバーンだ。
「ちょっとどういうことですの! 本物の竜までいるじゃありませんのことよ!」
 決戦の場に遅れて現れた笠置綾乃は目の前の光景に頭を抱えた。今朝も丁寧に整えた髪を乱しながら、無線で連絡を取る。
「リリーさん! ここの座標は172.28-006.21ですわよ! 早くいらして!」

リリー・クローデット、星の都へ

『座標は全て諒解した。これより降下作戦に移る。行くぞ、ジーク!』
 コンソールに入力する必要はなかった。そんなことをしなくたって、ジークはいつもわたしの望むとおりに動いてくれる。
 輸送機の後部ハッチが開いた。眼下に広がるST☆Rの森の風景が飛び込んできた。ジークの装甲に吹き付ける冷たい外気が、わたしにも伝わってくる。
 ジークの肩を押さえていたアームが解放された。そのまま宙に飛び出し、背中の飛行パックの噴射で姿勢を正す。
 雲が白い靄になってわたしたちを通り過ぎていった。緑の森がどんどん近付いてくる。
 闘技場では味わえない体験だった。わたしとジークは空を飛んでいるんだ。


ジーク、百合の王国の騎士


ボス「さてそんなこんなで、あれはPLの台詞だと主張しているお兄タマの寒いギャグが飛んだり<※人形の一族>で体感ゲームに圧勝したりワイアヘア相当のヒゲを持ったニューロ◎の山猫の群れに出会ったり色々とメルヒェーンな宮崎ワァルド展開の後に怒りゲージMAXになってクライマックスなのだ。一応敵の解説でもしておけ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。山猫のエルツァ≒Web上のキリはバサラ,ニューロ,カゼ。オープニングで神業を使った後に捕まってバイオトロンの材料にされてるのでしゅー。“ドラゴンスレイヤー”本体はアラシ,ヒルコ,カタナ。ロシアから来たパイロットの少女ソニアはアラシ,マヤカシ=マヤカシでしゅね〜」
ボス「ソニアのエニグマ、ロゼは<※元力:火炎/負>の力を持つバサラのエニグマ。<■合技>でウォーカー火器に重ねて攻撃してくるのであったな。すごいぞ。龍騎士は都合キャスト3人分の力が濃縮されているではないか。北米の機密技術デヴィア・インプラントもびっくりだ(笑)」
こうさくいん「ST☆R名物のワイバーンはアヤカシ,カタナ,カゲ。霧散で逃げようとするところに超必殺技が入るのでしゅ〜(>ω<) 戦闘には参加しないと宣言のあったイゴールおじさんはきっと真タタラでしゅね」
ボス「タイムリーを幽屋相当の使用で森の中への脱出、ソニアの洗脳、笛でのワイバーン召喚に使っているからな」
こうさくいん「真冬の夜の前奏曲の戦いの始まりなのでしゅよ〜(≧▽≦)ノ」


『あのおじさんのやったことをばらしてやるよ。あのススキノの店のスクリーンで流してやるんだ!』
 マヒロのジャケットの中のポケットロンが、賑やかな小鳥の声で喋っていた。マヒロが振り返ると、少女の操る銀灰色の騎士が大地に舞い降りるところだった。
 曲面で構成されたジークフリートのフォルムに技工研の真っ黒なジェットパックは少し似合わなかったが、あの飛行ユニットが上空からの降下を可能にしたのだ。パラシュートを開いて減速するユニットを途中で切り離し、地面に降り立とうとしている。
「リリー・クローデット。武運を祈るぞ!」
 マヒロはいつも身に付けているお守りを手に取ると、空高く投げ上げた。陽光に煌くその金属片は、あの凍れる大地で戦った時の認識票。今は亡き仲間たちの想いを、今も孤独な戦士が受け継いでいることのあかし。
『なんのまじないか分からないけど、感謝する!』
 可憐な少女の腕と同じ繊細な動きで、鋼鉄の騎士の腕が動いた。空中で認識票をしっかりと受け止め、そのまま地表に着陸する。
 LU$Tの闘技場で見た通りだった。ホバー推進で限定的な飛行機能を備えているジークフリートは滑らかな動きで大地に降り立ち、姿勢を崩さずにそのまま移動に移った。“ノートゥング”と名付けられた電子ブレードを抜き放ち、噴射と共に一気に距離を詰める。その背面マント部がはためくサーコートのように広がった。
 ドラゴンスレイヤーは左腕に装着されたハンドキャノンを殲滅対象に向けていた。その二門の砲身には青い蔦が絡みつき、不思議な光を放っている。ソニアが前に見せてくれた蔦薔薇と同じだ。コクピットで意志を失い、龍騎士を操縦している彼女は、秘幽体の力をウォーカー操縦中にも使えるのだろうか?
 聖別された特製の炸薬弾が発射された。マヒロはかつてナイトシェードというウォーカーの持ち物だった大型レーザーナイフを振るった。人外の技が二筋の青白い雷光となって疾った。弾頭があえなく空中で爆発し、龍騎士が二度目の射撃に移る前に、銀灰色の騎士が近接距離まで肉薄していた。

青の輝きは未だその刃にあり


「成敗‥‥いたします!」
 地面に不吉な影を落として襲い掛かってくる巨大なワイバーンに、見えない怒りの霊気を纏ったリュートは斬り掛かった。氷の精霊の加護を受けたルプシムツベの刃が閃き、厚い鱗に覆われた獣の体に食い込む。飛龍は怒りの咆哮を上げると、娘の体を半分に食い千切ろうと大きな顎を噛み合わせる。だが、大地の祝福を受けた歌の民の娘を守る霊気がその切っ先をそらし、牙は空しく宙を噛むだけだった。
 飛龍は皮膜に覆われた翼を大きく羽ばたかせた。突風が巻き起こり、リュートもカムイシキテも一瞬顔を覆う。歌の民の戦士が相手の姿を求めた時、そこに巨大な獣はいなかった。
「リュート、後ろだッ!」
 出力を最大にしたマヒロのレーザーナイフが強く輝き、青い満月の如く辺りを照らす。リュートは背後から伸びる巨大な影に気付いた。振り向きざまに両手の刃を交差させるように閃かせる。
 鼻先をざっくりと切られたワイバーンは痛みの咆哮を上げた。首をのけぞらし、頭を左右に振ると、空中へ逃げようと弱々しく羽ばたき出す。
「冥界へも、何処へも逃げては駄目」
 少女と狼と鷹、三者に宿る白い霊気が輝きを増した。
「地に還りなさい‥‥エレンムツベ!」
 白い風となったカムイシキテの神の牙が竜の腹へと踊りかかり、白い流星となったレラキリエの鉤爪が竜の両目を狙い、白い閃光となったリュートの双刃が歌の民の踊りの如く縦横に舞った。まったく同時の三方向からの攻撃に飛竜は敗れ、強靭な生命力を持つワイバーンの巨体はどうと倒れた。敵の死を確認したカムイシキテが、力強く吠えて聖なる戦いの終わりを告げた。

大地の歌を護るために


 突進しながら電子ブレードを抜き放ったジークフリートは、勢いに乗せてそのまま斬り掛かった。ドラゴンスレイヤーは鉤爪のごとき四指クロー型の手でエネルギーチャージ用の鞘に手を掛けるが、帯陽電子剣を抜き終わるまで間に合わない。
 だが、サーコートをはためかせた百合の紋章の騎士の突撃はそこで遮られた。ハンドキャノンに絡んでいた青い蔦が生き物のように浮かび上がり、中空で光の壁を作り出したのだ。
 冬の魔術に守られた蒼の龍騎士は反撃に転じた。龍鱗を象ったような鎧が動き、勢いを乗せた左手の拳がまともに銀灰色の騎士を捕える。
 強い衝撃にジークフリートは吹っ飛んだ。体勢を崩し、あわや転倒するところを突如吹いた後ろからの追い風が支える。対峙する二機の機動戦車の間を、白く光る鷹が一声鳴いて飛び去っていった。
 追い風に支えられ、ジークフリートは再び斬りかかった。“ノートゥング”の重い斬撃を、今度は青い蔦薔薇の絡みついた帯陽電子剣が火花を散らして受け止める。再び左の格闘用クローで反撃。ジークフリートの曲面装甲の一部が弾け飛ぶ。
 だがその時、銀灰色の機体から勇ましい少女の声が響いた。
『これで2回だ。太刀筋は読めたぞ!』
 凛々しい王女の声に励まされ、百合の王国の騎士は剣を掲げた。剣匠の舞いもかくやの剣撃が閃き、蒼き龍騎士を大地に打ち倒す。冬の帝国の悲願を掛けた龍騎士は火花を散らし、無念の呪詛の声のようにエンジン音を最後に震わすと、動かなくなった。
『エーテル電池、フルドライヴ!』
 その声は暗示に掛けられたパイロットの少女が発したのか、猫の脳を使った戦術決定バイオトロンAIが発したのか、それとも対星幽処理を施した新型機自体の声だったのか。
 いかなるウォーカーでも機能停止するところを、ドラゴンスレイヤーは最後にふたたび動いたのだ。キルリアンセンサーの搭載された爬虫類の如き頭部に一瞬だけ光が宿り、搭載ハンドキャノンも壊れた左腕が最後の最後で動いた。
 ジークフリートの頭部を捕え、四つの格闘用クローが深々と、集合センサーと――コックピットに食い込んだ。

ジーク、百合の王国の騎士


 瞬間、マヒロのレーザーナイフにも勝る純銀の光が銀灰色の機体から飛び散った。相討ちの姿勢で、ジークフリートも停止する。
「くっ‥‥人殺しがしたいんじゃないって言ってんだろッッ!」
 再びレーザーの出力を最大に。雄叫びを上げながらマヒロは走った。憤りの心を蒼白い光に変え、戦士の勇気を機動戦車に挑む力に変え、常人には持つこともできぬ巨大な剣を手に大きく跳躍する。
 それは、十年前の吹雪の夜の戦いと同じだった。ロシア空軍の可変ウォーカー、ナイトシェードとのあまりに絶望的な戦い。自分を庇うために身を挺して少女が飛び出した時に、見た輝きと得た力。
 ドラゴンスレイヤー機の脚部を蹴ってさらに飛び、全体重を乗せて龍鱗の如き複合装甲の隙間に刃を叩き込む。青白い刀身は狙いたがわず動力中枢を正確に貫通し、火花が散った。
 執念で動いた北の帝国の龍騎士は最後に震え、そして今度こそ完全に機能を停止した。動力部分が爆発を起こして煙を吐き始めた。


こうさくいん「マヒロお兄タマカックEでしゅよ〜(>ω<) 主人公でしゅ〜(笑)」
ボス「極寒のギャグはさておき唯一マトモな大人だからのう(ニヤリング) さて分かると思うがウォーカー2機はブレイクスルー撃ち合いで双方故障して相討ちになっている。しかしウォーカー同士の戦いはいつもこうじゃのう。人間同士の戦いに比べてなんと効率が悪いことか‥‥(笑)」
こうさくいん「パイロットもバイオトロンも無事だったからいいのでしゅよ〜」
ボス「さてそのバイオトロンだが、ごたごたの末に、リュートに猫の失踪の件を話した少女カヤがマネキン◎だったことになり、そこからの神業のピンポンで山猫のキリはエンディングで復活したことになっている。このコンテンツではそういう冗長なところは省いているがな」

青の輝きは未だその刃にあり


 龍の角のようなアンテナを備えた頭部へと駆け上がり、マヒロはコックピットのハッチを開いた。
 ジークフリートの最後の攻撃は確かに見事だった。コックピットには何の損傷も与えておらず、バイオトロンの収められた頭脳部分も無傷だ。ソニアは衝撃で頭を打ったらしく、座席の上で気を失っているだけだった。
 あれほど生意気だった少女も、ぐったりと目を閉じている今の様子は痛々しい。マヒロは彼女を肩に抱えると外に出た。
「その子の手当ては私がする」
 小袋から小瓶を出しながら、リュートが心配そうに青年を見上げた。「それより、リリーが‥‥」
「あ、ああ」
 マヒロは機能停止したジークフリートを見上げた。不吉な予感がした。ドラゴンスレイヤーの左腕の格闘用クローが、銀灰色の騎士の曲面装甲に深々と突き刺さっている。
 機体によじ登り、歪んだハッチの隙間に軍用ナイフを差し込みながら、マヒロは自分の予想が外れていることを祈った。
 苛烈な交戦のあった戦場に残っているウォーカーの残骸というものは、いつも酷いものだ。中の部品が飛び散り、原型を留めないほどまでに変形していることも多い。そして、そんな時、かつてパイロットだったものもまた――原型を留めていないことも多い。もしも、あの少女が、油臭い機動戦車も過酷な戦場も少しも似合わないあのどこまでも純粋な少女が‥‥
 だが、力任せにハッチをこじ開けた時、中はもぬけの空だった。無骨な軍用ウォーカーとは幾分異なる操縦席。破損はしていたが肉片どころか血の一滴さえ、座席にはハーネスが残っているだけでパイロットの姿はどこにもない。
 マヒロは眉をひそめ、ハッチから顔を出して辺りを見回した。この機体にコックピットが複座式という話は聞いたことがないし、どこにも変わった様子はない。

大地の歌を護るために


「あ〜〜っ! こんなに派手に壊してしまいましたのね!」
 そこに笠置綾乃が近寄ってきた。恐らく、今朝も丁寧に梳かしてきたのであろう髪をかきむしり、目の前の惨状に愕然としている。
 マヒロはジークフリートの腰部分から飛び降りると、彼女に詰め寄った。
「ドラゴンスレイヤーに乗せられていたソニアは無事だ。意識を取り戻せば暗示も解けているだろう。それより、リリー・クローデットは? 何処にも見当たらないぞ?」
「ああ、あの子はいつもああなのですのよ」 笠置綾乃は疲れたように言った。
「それより酒見さん。あのドラゴンスレイヤー、今回のデモンストレーションのために我が笠置技工研がどれだけ調整を重ねてきたことか‥‥あーもう、機動部分が完全にオシャカですわっ!」
 頭を抱える技工研の才嬢、困惑するウォーカー狩りの青年の二人を背景に、突然茂みががさがさと動いた。狼のカムイシキテが尻尾を振る先で、ジークフリートに乗っていたはずの少女が頭を押さえながら平然と姿を現した。
「うーん、あいたたた‥‥あっ、ジーク‥‥エムブレムまでこんなに汚れてしまって‥‥」
 白いパイロットスーツの少女はどこにも怪我はなかった。銀糸を織り上げたような美しい髪もどこも汚れておらず、血の一滴もついていない。げっそりしている笠置綾乃と呆気に取られるマヒロをよそに、傷ついた愛機の方へ駆け寄っていく。

酒見真宙 -残光ナイフの使い手


「エネルギーチャージャーはなんとか無事、マシンキャノンは給弾部分が完全に破損、それから‥‥動力中枢が酷いですわね。なんですのこの大穴は! それに森林保護区でこんな大騒ぎをしでかしたら、後々問題が山ほど‥‥」
「リリー・クローデット。その‥‥大丈夫‥‥なのか?」
 声を掛けようとしたマヒロは口ごもり、その声は呟きとなって漏れるだけだった。
「(‥‥脱出‥‥装置‥‥??)」
 だが、カプセルや座席ごとの射出ならともかく、生身のパイロットだけをあんな遠くまで投げ飛ばす脱出装置など――世界中の戦場でマヒロが葬ってきたどんな種類のウォーカーにも、思い当たる節がなかった。

おまけのウルフちん


 万策尽きたイゴール・キロスニフは草の上で膝をつき、うなだれて裁きの時を待っていた。抜き身の刃を手にしたリュートが近付いてきても、抵抗のそぶりがない。
「恵まれた大地に住む人間には永遠に分からないことだ‥‥好きにしろ」
 歌の民の娘はその凍牙を背徳の技術者に向けた。娘を包む霊気は白く輝き、氷の精霊の加護を受けた刃は静かに光った。
 一閃。だがルプシムツベは歌の民の舞いの如く少女の手の中で踊り、赤い帯の後ろの鞘の中に小気味よい音を発てて収まった。
「私はこれ以上貴方を裁きはしない。だから、これ以上は警察に任せます」
 娘の体から立ち昇っていた怒りの霊気は止んだ。小さな氷の欠片なり、雪国の寒い朝を彩る宝玉の粒のように、大気の中できらきらと輝きながら消えていく。その様はロシアから来た技術者に、厳しくも美しい祖国の朝を思い起こさせた。
『待ってよ、おじさん! キリの体はどこなの? 元通りにはできないの?』
 リュートの小袋のポケットロンの中に飛んできたカナリアが、賑やかにさえずる。
「本体はもうロシアに移送した」 罪を認めた技術者は、地面を見つめたまま小鳥に答えた。
「だが‥‥手を尽くせばなんとかなるかもしれん。意識体なら、肉体となる容れ物を用意すればいいからな」

大地の歌を護るために


 電脳世界の全ての構成要素には命がある。攻勢防壁とICEブレイカーの激しいせめぎ合いから零れ落ちたデータ片は、いつしか別の構造体へ。激しいデータストリームの真下に広がる無限の迷宮を彷徨う巡回プログラムは、いつしか自我を備えたAIへ。
 手を尽くした甲斐あって、かつてキリという名のペルソナを纏っていた意識体は再びその姿をサイバースペースに現すことができた。かつてエルツァという名だった肉体はもうなく、山猫のアイコンも前とは微妙に違っている。記憶データの復旧も不完全で、キリだった頃の記憶にはノイズが混じっていた。

『キリ? どうしてその名を? ‥‥ごめん、よく思い出せない』
 虚像で構成された山猫は、青い小鳥の問いに首を振った。
『いいんだよ。いいんだよ。でも、よかったらまた、ボクと友達になってくれないかな』
 電子の梢に乗ったカナリアが問うと、山猫は頷いた。
 幸せを運ぶ青い小鳥は梢を飛び立った。猫の周りを円を描くように飛ぶと、喜びの歌を歌いだす。二匹の上方には、理論的には無限の高さを持つ銀の虚空が、どこまでも広がっていた。

幸せの運び手 カナリア


 イゴール・キロスニフはS4に逮捕され、法の裁きを受けた。鋼鉄の侵入者に木々の精霊たちが痛みの声をあげることも、新時代の山猫たちが友人を失うことも、もうないだろう。
 リュート=レヌシは丘の上に立ち、広がるクリルタイの森を眺めていた。長い黒髪を揺らす風はもう涼しく、肌寒ささえ感じる。
「ねえ、カムイシキテ」
歌の民の娘はそばに控える銀狼に語り掛けた。
「幸せは、不幸無しでは手に入らないものなのかな。未来は、犠牲無しでは乗り越えられないのかな‥‥」
 狼は答える代わりに、クーンと鳴くと主を見上げた。
 リュートは白い外套を広げた。鮮やかな赤の刺繍で縁取られた布を翻し、体に纏う。緑の丘の中で彼女だけが、純白の雪の精の如く映えた。
 空には鷹のレラキリエが飛んでいた。今日も森は平穏であることを告げて空を舞っている。一人の娘と一匹の狼は空を見上げ、しばし丘の上に佇んでいた。

大地の歌を護るために


 アヤノの技工研が大きな輸送機で引き上げる時に、わたしのジークも一緒に運んでいってもらうことになった。今は大きなアームに支えられて、積み込みの時を待っている。まだ、あちこち傷が残っているのが可哀想だけど、LU$Tに帰って直してあげれば、きっと元気になるだろう。
 わたしは貨物用出入り口の側のロビーで、マヒロとそれを眺めていた。マヒロはこのあと、ロシアまで行くらしい。ST☆Rで最後の買い物はあんまりしていなかったようだけど、いいのかな。
 修理している時に見つけた、ジークの左手が握っていたものをわたしは思い出した。数字の刻まれたプレートの首飾りだ。そうだ。マヒロが投げてくれたこのお守りがあったから、ジークは戦うことができたんだ。

ジーク、百合の王国の騎士


 イゴール・キロスニフは逮捕の後に更迭され、ソニアは大量の買い物と共にロシアに帰った。あの歳ではきっとまだ懲りないだろうが、今回の事件はよい薬になっただろう。自分の行く先も偶然同じロシアだが、もう会うこともあるまい。シルバーファングの最後の生き残りを待っているのは厳しい戦いなのだから。
 輸送機がハッチを開き、スタッフが忙しそうに動いている。その前では拡声器を口に当てた笠置綾乃が頑張っていた。そこから視線を移し、マヒロは横の少女に目をやった。あの戦闘での不思議な出来事は分からずじまいだったが、どこにも怪我はないようだ。白いパイロットスーツからブラウスにスカートの普通の格好に着替えているが、まだ細剣を腰に吊っている。
銀髪の少女を包む不思議な輝きのような雰囲気は、少しも変わっていなかった。マヒロとは何か、違う世界の住人の持つ輝きのようだった。
「‥‥しかし無事でよかったな。部品は取り換えが利いても、命は取り換えが利かない」
「うん。そうだ、マヒロ。これを返すよ」
 リリー・クローデットは白い手を開いた。マヒロがいつも身に付けている認識票がそこにあった。
「ありがとう。武運を祈ってくれて」
 銀の百合の少女は神妙な顔で礼を述べた。
「こいつは、北の大地に眠る連中の魂の欠片なんだ。だから‥‥君を護ってくれると思った」
 マヒロは寂しそうに笑うと認識票を首に掛け、灰色の軍用ジャケットのボタンを留めた。

「俺はロシアに発つ。じゃあな、リリー・クローデット」
 酒見真宙、青白き大剣の使い手、銀の牙の傭兵の最後の生き残りは身を翻した。星の都にて前奏曲は終わり、遥かなる雪の都にて歌劇の本編が幕を明けようとしている。その輝きにてロシアの真冬の夜を照らす旅、吹雪の夜の戦いに決着をつける旅、オペラ座に待つ歌姫の少女との約束を果たす旅が、孤高の戦士を待っている。
 閃光防御機能付きの黒眼鏡の中に表情を隠し、マヒロは去っていた。ここから先は、独りの旅だ。

酒見真宙 -残光ナイフの使い手
リリー・クローデット、星の都へ

「そうだ。ねえ、マヒロ!」
 だが、少女の軽やかな足音が背後に近付き、マヒロは怪訝な顔をして振り返った。
「なんだ?」
「おかしなことを、聞いていいかな」
「??」
「マヒロもアヤノの知り合いで、ウォーカーに乗ったりするのだったな」
 稀少な紫水晶の如き瞳を閃かせ、銀髪の少女は真顔で問うた。
「じゃあマヒロも、ウォーカーの上で妙なポーズを取ったりするのか?」

 ロシアに春も来たるやの長い時間が過ぎたように思えた後で、マヒロは自分の黒眼鏡がずり落ちていたのに気付いた。そろそろと直し、質問に答える。
「いや‥‥俺はしないよ‥‥‥‥」
 ロビーの外から聞き慣れた声が響き、青年と少女は視線を向けた。
『さあ、本体を移送しますわよ。そこ離れて! アームはOK? 次はわたくしのストームレディを積み込みますからね!』
 そこでは、つい先ほどまでは地面の上に立っていたはずの笠置綾乃が何時の間にか、八脚型都市制圧用の愛機“ストームレディ”の上にすっくと立ち、少し妙なポーズで元気に号令を下していた。

 
 
 
And Here, The curtain dropped,
in the city of earth and STAR ....

-XYZ-


こうさくいん「というわけで、マジボケに時間も止まりつつ終わりでしゅ〜(≧▽≦)ノ」
ボス「さて、かくして前奏曲は終わった。青き刃を携えた孤独な戦士が向かうは北のロシア、歌劇本編AXYZ星系版『マローズを越えるとき』はダーククイーン陛下のサイトに近々レポートが掲載予定だ。かなりゴイスーなので楽しまれるがよかろう」
こうさくいん「親父フェイトのIXIにカブト役はメーティスぽんが大立ち回りでしゅねー。レッガー役は三合会で美形で吸血鬼の三本立てで言うことナシのルイぽんでしゅ。自分のことカイン人とか呼ぶでしゅよ。あの妄想はどうなのでしゅか〜(笑)」
ボス「回を重ねているだけあってヒロイン陣との絡みフォローも大きいからな。どこぞのレポートの4人とは大違いだな(ニヤリング)」
こうさくいん「そうでしゅよー。マヒロお兄タマは最後はソーファとチュッチュでしゅからね〜(>ω<)」
ボス「な、なんだその言い回しはΣ( ̄口 ̄;) ええいさてそういうことで特別アクトは終わりだ。舞台にあわせて調整して面子も揃い、なかなか独特の雰囲気を出すことができたな。こんなカンジでドラゴンアームズも一度やりたいのう」
こうさくいん「ALL萌えキャストだとやっぱりホワーンと華やかでしゅね〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「ええいやめいΣ( ̄口 ̄;) リリー嬢まで一緒にするな。媚びたキャラなぞ嫌いじゃあ(どしんと机を叩く)」
こうさくいん「ひひひのひ〜(>ω<)」

青の輝きは未だその刃にあり

Image of Canary is from [具と素材のこーぼー]. Thanks.

Image of real Canary is from 2nd Staj Play Report
"Nobody knows except the Heaven",[Canberra AXYZ]. Thanks.

前編】【後編】

---Bar from V:tM---
...... Play wiz Prince Egg ......

レポートのページへ戻る

dice-jp.com > Iwasi Studio > Report > Messiah of the STAR 2
Back to RI-Foundation TOP > NOVA