Dawn of Siberian Xpress -アルプスに見えるけど背景はウラルでしゅ(笑)
〜シベリア鉄道の夜明け〜
いふる漢爵&四季先生と遊ぼう!

不可触編】【前編】【中編】【後編
n a v i g a t o r

(ルビを使用しているため、IE5.0以上での補完がお勧めです)



Chapter 04: From Moscow to the World
- モスクワより世界へ


「どうぞ、皆さん。お茶が入りました」
 列車が動き出し、流れてゆく景色に一行が目を奪われていた頃。メイドの職務を忠実にこなすブランゲーネが絶妙のタイミングでお茶を出し、VIP車両に集った奇妙な面々は一息つくことになった。カメラとレコーダーと取材機器をここぞとばかりに用意した静元女史が、襟元を正し口髭を撫でつけて準備を整えたチャービル・イワノフ国視正に、公式記者会見以前の個人インタビューを開始する。国視正の護衛官の二人は、相変わらず黙ったままだ。
「えーとでは、シベリア鉄道は全体の構想の段階から、統一されたイメージなどもあると思いますし、今回の開通に際して世界に伝えたいメッセージなどはどうでしょうか?」
「私はこの事業に命を掛けている。まぁどうせこの年だし、一緒に果てても構わんよ」
  ロシア政府の高官は笑った。
「我がロシアは氷の中に包まれ、いまだ貧困の中にあえぐ諸都市も多い。このシベリア鉄道はそれを解決するものです。旅客と同時に貨物の運送をも兼ねており、緊急に物資の援助のある地域にとっては希望の印でもある。氷の牢獄を打ち破り、我らの母なる大地を煙をあげて走るこの列車が、我々の再生の証しであることを全世界に知ってほしい」
「まず注目されるのは蒸気機関を採用したことでしょうけど、こちらの方はどうでしょう?」
「悪名高いグレムリン・エフェクトには散々悩まされてきたが、近年でもどのレベルの機器が影響を受けやすいのかは調査が進んでいる。この鉄道に採用されている蒸気機関は影響の考えられる複雑な電子的機構を巧妙に避け、高い信頼性の元での稼動を実現したのだ。
 もちろん、古き良き蒸気機関車といっても数世紀前のものとは違う。外見は古風だが、内部には様々な改良が施されている。設計したのが、このディル・グランツ女史だ」
 チャービル国視正は脇に座っているディル・グランツを示した。その背後に立っている護衛の御門忠明が写真の範囲から退き、インタビュアーは二人が手を握った写真を収めた。公式会見前の世界初のインタビューは順調に進んでいた。

何か御用はありませんか?


 従者の常として隅に控えていたブランゲーネは、主人であるディル・グランツの表情があまりすぐれないに気付いた。
グランツ家に派遣されてきた時から、この女主人は従者たちとかわす言葉も少なめだった。まだ若いのに何か思いつめたようなところがあり、せっかくの優しい顔が老けて見える。今も何か、自分の為したこと、浴びる賞賛を、あまり嬉しそうにも思っていないようだった。
 非公式インタビューは無事に終わり、N◎VAからやってきた女性記者は今度は様々なものがコードで繋がったタップと、忙しそうに格闘し始めた。
「おい、あの姉さんに教えなくていいのか?」
 興味もなさそうにインタビューを眺めていたユカもディル・グランツの表情に差した陰りに気付いていた。横のクロノスに小声で問い掛ける。だがクロノスは一心不乱に作業を続ける静元女史を見やり、今はやめようと首を振るのだった。

 トータルマルティメディアを掲げ、北米LIMNETグループの突出点としてヨコハマLU$Tに進出を続けるLIMNET Yokohama社。同社がWebでの情報配信サービス事業の展開の際に募った提携先に、いち早く名乗りをあげた企業のひとつがNCBグループの子会社であるプラグドNC・ドットコム社だ。Web上に本社を置き、時間と距離に左右されない最新の情報を発信し続けてきた同社のウェブサイトのニュースヘッドラインは、いつも世界中の出来事の断片で賑わい、ニューロを始めイントロン者を惹きつけている。
 北の彼方、モスクワから出発するシベリア鉄道。モスクワで行われるはずの公式会見を出し抜き、大陸をモスクワに向かってひた走る車内から圧縮され、コード化され、電波に乗って送信されてきた個人インタビューのデータは、世界で初めてそのサイトで公開された。その後モスクワで行われた公式会見も内容がほぼ同じだったこともあり、いち早くその内容を伝えた報道は世界から注目を浴びることとなった。

独立した女性 -Musik by Destiny's Child


 ここはモスクワ。雪の中の都。世界が傾く前の前世紀、ロシアがその門を開くまで世界に秘されていた“中央”。西側のメディアや機関と密かに戦ってきたクレムリンの宮殿、中東のような不思議な曲線美を描く建物や独特の教会‥‥
 というわけで、私は本式のシベリア鉄道の記者会見の場に来ています。ここで話された内容はほとんど私の取材と同じ。ま、私の取材はあまり独創的なインタビューではなかったけれど、即時性から言っても十分に役目を果たしたでしょう。
 会場は人が多くて、人込みの中をもみ合っているうちに誰かに突き飛ばされてしまったの。こういう時に女って損よねー。
 倒れてしまいそうになった所を手を掴んで助けてくれたのは大きな男の手。その先にあるのは、レザーのロングコートに身を包んだ長身の男の人。長い黒髪を垂らした帽子の下の美しい顔が、穏やかに微笑んでいた。

Independent Woman -Ms.Shizumoto

「あ、ありがとうございます‥‥」
 でもその人は何も答えず、手を振って人込みの中に消えてしまったの。取り巻きなのか、すぐに回りから人が集まってくる。
 ちょっと待って。よく考えたらあの顔はクラシックのニュースか何かで見たような。有名なバイオリン奏者のオレガノ・クロードじゃなかったかしら。どこかの大きな楽団に迎えられるところを断って、ソロで流しのバイオリン弾きを続けているとかなんとか。あの人もシベリア鉄道に乗ることになっているの‥‥??



Chapter 05: Corner of the Earth
- 大地の曲がり角


 モスクワの駅で巨大な蒸気機関車が出発の時を待つシベリア鉄道に乗り換え、汽笛を鳴らしていよいよ出発する。
 シベリア鉄道も4本のレールを使い、その客用列車も大陸鉄道に負けず劣らずの大きさを備えている。1等車から3等車まで、走る列車の中で行われるパーティ会場専用車両、中央にある電子制御専用車、全9両のシベリア鉄道は賑やかな限りだ。
実際にはウラル海峡近くのミッドガルドで10両目が連結され、鉄道は終着駅まで白い大地を疾走する。10両目は名目上は燃料積載専用車両ということになっているが、実際には線路の周囲を制圧する45mm機銃、都市の攻略戦にも使えそうな巨大な105mm滑空砲までも有している。クリルタイを通る軌道戦車を荒らす山賊ホワイト・アンツ、山々に潜むドラゴンその他の超常の脅威への対抗を考えているのだ。

 一面の銀世界から忍び寄る冷気を厚いガラスで完全に遮断し、VIP車両の快適な旅は続いていた。
「身の詰まったピロシキにポータブル発熱台つきのボルシチ、おせんべいにキャラメルはいかがですかー。ミッドガルド名物、石炭まんじゅうもありますよー」
 世界中から来る乗客を考えて、売り物にはロシアらしからぬ饅頭も入っているのだろうか。背の高い椅子の間からふたつのポニーテールが揺れ、ワゴンを押す可愛いウェイトレス姿の娘が現れた。クロノスが席から立つと、ロンドンで会ったサフランがそこにいた。
「前も会ったね」
「ええ、私がチーフウェイトレスなんです。おひとつ、どうですか?」
 一見ごくふつうの売り子だが、ロシアの雪原で戦ってきたクロノスの目には、その身振りに何かが写っていた。しばらく考えた後で特に断る理由も見当たらず、噂の饅頭を買ってみる。サフランは丁寧に礼を言うとワゴンを押し、車両から去っていった。
 クロノスが席の方に戻ろうとすると御門忠明がそれを素早く留め、観察する。おかしな点がないことを確認してから、饅頭は護衛相手のディル・グランツの前に差し出された。しかし、武器にでも使えそうな硬さだ。土産話の足しにはなっても腹の足しにはなりそうにない。
「ま、石炭は爆発させられないもんなー」
 背中合わせの向かいの席でのんびりしていたユカが、面々の頭上から身を乗り出すとにやにや笑いながらそれを見ていた。
 その時食堂車に通じる自動扉が開き、サフランのウェイトレス服とも甲乙つけ難い格調高いメイド服に身を包んだブランゲーネが現れた。一行の様子に少しだけ驚いた様子を見せると、今度こそ腹の足しになる自慢の料理が準備できたことを告げる。
「ご主人様も、皆々様も、お食事にいたしましょう」
 微笑んで案内しながら、思い出したように付け加える。
「そうそう、次のミッドガルドでまる1日停車するそうですけど、どうなさいますか? 私は、料理の材料を少し補給しないと‥‥」
「そうだな。外出の際は数人で固まって。十分に注意するほかあるまい」
 立ち上がった御門が答える。見晴らしのよい平原を高速で走っている大陸鉄道を襲うには、コストとリスクが掛かりすぎる。“雪の使者”の襲撃があるとするなら、それは列車が停止している間の可能性が高かった。

八坂神伝流小太刀二刀術 -いざ!



Chapter 06: Sekret Game
- シークレット・ゲーム


 シベリア鉄道はウラル共和国、ミッドガルドに停車した。軍需産業で栄えたこの町は民間への払い下げや密売も含め様々なマーケットが並び、鉄道線路が通るようになった今、さらに人が集まるようになっている。
 ブリテンの出発地や赤道直下のメガ・プレックスのリニアとは大きくかけ離れ、駅は簡素なものだった。コンクリートで固めただけのホームはほとんど地面と同じ高さにあり、列車側に備え付けの階段から降りなければならない。石炭と水の補給の為にまる一日停車し、その間乗客は町へ出るなりホテルに泊まるなりの自由があった。

「おや、君かね」
 ホテルのラウンジで新聞を読んでいたチャービル・イワノフは、向かい側に座った赤い髪の娘を認めた。
 ユカ・プルデーレは珍しく神妙に言った。「こっちも仕事でね。テロリスト狩りをするんだよ。んで、スポンサーに聞いておきたいの」
 子悪魔の視線を隠すサングラスに、口髭を蓄えたチャービルの顔の表情の変化が映る。その顔は長年の夢の実現を喜ぶ好々爺のものから、世界の裏側を見てきたロシア政府役員の厳しい表情に変わっていった。
「‥‥紅蓮の関係者なのだな。正直、君らの“家族”とやらには悪いことをしたと思っている。3人も死ぬとは思わなかったよ」
 声を潜め、チャービルは紅蓮から送りこまれた最凶ヒットマンが怪しんでいることを語り始めた。
 巨大な積載量を誇るシベリア鉄道は旅客の他に貨物輸送も同時に行うが、その中にはここミッドガルドで積み込まれる密輸武器が大量に含まれている。ウラル共和国政府は黙認していた。この国の大地にはまだ莫大な量の石炭が眠っており、主要な輸出品となっている。ロシアは厳しい国の財政を潤してくれる大きな買い手なのだ。
 密輸武器の供給先は終点のホロシリだった。既にクリルタイ領内にあり、政治的には微妙な場所である。もし継続的な密輸が行われれば、ホロシリは要塞化し、ロシア軍のシベリア侵攻計画の前線基地となることも可能だ。
「アタシはただ、叩きのしてやるだけだよ。心配すんなって」
 ユカは笑った。実は、出発時に没収されたライフルはロシアを抜けてから貨物車両の中から見付け、取り戻してある。
「協力はしよう。だが、知り過ぎるのなら消すことになるぞ」
 口髭を撫でながら、老人は言った。
「おいおい。あんたが思ってるほど、アタシはうかつじゃないよ」
 “ただの紅蓮の子娘”は意外な言葉にサングラスを外すと、国視正の顔を覗きこんだ。
「だいたい、あんたが協力なんてたやすく言っていいのかい?」

コルシオーネの小さな悪魔


 クロノスが食事の後でくつろいでいると、厨房室から静元女史が出てきた。ブランゲーネと料理でもしていたのか、上着を脱いでまくっていた袖を戻している。
「そういえばクロノスくん。あのチャービルさんの部下の二人、やっぱり軍の人なの?」
「ああ‥‥そうだよ」 クロノスはどこまでも無愛想な護衛の男女を思い出した。
「私の撮った特別製の写真で分かったわ。あの特務大佐、フル・サイボーグなんでしょう?」
 向かい側に座った日系人のトーキーは紫色の瞳を光らせて続けた。
「私も少しかじったことがあるわよ。要人警護のシークレット・サーヴィスとか、警察機構所属の対テロ部隊じゃなくて、軍属の本物の特殊部隊が出てくる時は、作戦の種類も装備も違うって‥‥そんなに大変なことになりそうなの?」
「ああ。後はあのオレガノ・クロードという男が怪しい。どうも、ただのバイオリン弾きじゃなさそうだ」
 二人が考え込んでいると、突然後ろの方で大きな音がした。びっくりした静元涼子が席から首を出して見やると、車両の隅に並べてあったカートの中に誰かがひっくり返っている。
「あたたたた‥‥」
「あなた、だいじょぶ?」
 町から戻ってきたユカ・プルデーレが転移の力に失敗したのだった。ロングスカートの腰を押さるえと、紅蓮のヒットマンは二人のところによろよろと歩いてきた。
「それよりさー、クロノス」 なんとか体裁を取り繕うと、ユカは言った。
「今がチャンスだろ。連中が来るとしたら今だ」
「ああ。分かってる」 クロノスは美人売り子のサフランを思い出した。彼女も怪しい。経歴を洗うと、どうも軍需企業と繋がりがあるようなのだ。

常駐戦術プログラム、索敵攻撃から殲滅戦仕様に書き換え


 一方VIP用の個室でも、ディル・グランツがその忠実な従者にシベリア鉄道の隠された貨物のことをぽつぽつと話していた。
「そう。この列車に武器が載せられているのは本当なのよ。戦争の火種になることも分かってる。でも、ホロシリの町への救援物資も載っているの。今の季節、これでどれだけの命が救えることか‥‥」
「ご主人様、あまり思い詰めないでください。少しゆっくりなさった方がよいですよ。お食事もお召しにならないそうですけど、さ、これだけでも。熱いお茶も入れましょう」
 ブランゲーネが差し出した盆の中には、ブリテンの名家にとっては珍しい米から作った団子が載せられていた。
「これは?」
 銀縁の眼鏡の奥の灰色の瞳が控えめに微笑んだ。「これ、静元様が教えてくれたんです」
 背後に控える御門忠明は、お握りを不思議そうに食べる護衛相手とそのメイドをやや意外そうに見下ろした。


 他の面々も部屋に入ってくる。
「救いの女神様が現れたようですね」
 グランツ家の忠実な従者は主の元から離れると、災厄の街からやってきた闊達な女性記者の前に立ち、深々と頭を下げた。結い上げずに残している銀の雪と同じ色の前髪が垂れ、頭の上のカチューシャが合わせて揺れた。静元涼子は訳がわからずに困惑の表情を浮かべた。
「静元様。あなたのお仕事は存じています。この事件を世の中に伝えるのを、ホロシリで物資の補給が終わった後にしていただけないでしょうか。ご主人様のたっての願いなのです」
「え、ええ。それはもちろんいいですけれど‥‥そんなに、かしこまらなくても、よろしいですのよ」
 突然頭を下げられて驚いた女史がそれをなだめ、ブランゲーネは主を振り返ると微笑んだ。
 黙って見守っていた御門忠明はクロノスと視線を交わし、頷き合った。あとはテロ組織だ。

何か御用はありませんか?


ボス「さて情緒ある大陸旅行とはいえ、シナリオらしく裏に何やらあるらしいのがだんだん分かってきたところだな。テロの襲撃はそろそろかのう」
こうさくいん「でもブラーネ様が食事やお茶をいつも用意してくれていい旅でしゅね?」
ボス「くくく。油断してはならんぞ。相手はメイド派遣企業から送り込まれてきた本職だ。実はミッドガルドの買い物でもしっかり武器まで品定めしていたぞ(ニヤリング)」
こうさくいん「な、なんでしゅと〜Σ( ̄口 ̄;)」
ボス「しかもついでに電話を掛けていたN◎VAのコネの相手はあのハンニャだ。『バァイ』とずいぶん親しげに別れていたのう( ̄ー ̄) 」
こうさくいん「レ、レイルーにもメイドは送り込まれているのでしゅか!? 特殊渉外課は和風コズム100%じゃないのでしか‥‥(゚o゚)」
ボス「あれで洋風好きだったら笑えるのう。さていよいよ話も後半だ。一行を待つのは平和な終着駅かそれともスノウ・クラッシュか。ピザでも頼んで進まれるがよい」



Chapter 07: zero hour
- ゼロ・アワー


 理想的な狙撃地点は常に標的より高度を取ることだ。停止中のシベリア鉄道を見下ろす所定の位置で姿勢につき、時間を確認する。開始時間だった。リアサイトの中の拡大された映像を覗き込み、トリガーに指を掛ける。
「悪く思うな。こうしなければ、もっと多くの人間が死ぬ」
 駅の燃料タンクに一発。同時に、寒冷地仕様の戦闘服に身を包んだ襲撃部隊が作戦を開始した。


 耳をつんざく爆発音は突然だった。列車の後方、燃料補給設備から聞こえてくる。
 車両から出た一行を待っていたのは隻眼の大男に率いられた襲撃部隊だった。雪の大地に溶け込む白い戦闘服にSMGを構え、統制された動きで列車に迫ってくる。
「チャービルと“ヘンリー”以外は構うな! 目標を探せッ!」
 黒い防寒コートの大男は右手に大きな剣、左手には無骨な大型戦闘拳銃を手に叫ぶ。
「おらぁ! どっけぇッ!」
 タラップを飛び降りたユカ・プルデーレが負けないぐらいの大声を上げる。その途端、雪原の上に幾つもの火柱が立った。火炎の元力使いとしてのユカの力はマスター級に達している。水蒸気の煙を上げて爆発した火柱に何人もの兵士が巻き込まれ、吹き飛ばされていった。
「お前にチャービルを倒させるわけにはいかない‥‥」
 指揮官の大男を目標と定め、クロノスは右手で腰の後ろの高周波振動ナイフを引き抜くと、手首に左手を添えて構えた。
「プログラム・アレス、インストール」
 自分では原理も知らぬナノマシンが、ロシア軍で極秘に開発され埋め込まれた特殊形態バイオトロンがクロノスの血の中で活動し始めた。その手の甲に、人間のDNA構造を元にした微細で何重もの幾何学模様が現れ、その上に剣を象った不可思議な紋章が浮かび上がる。
 K-ブレインという名の特殊IANUSと戦神のプログラムとがモードを変え、全身の血潮を巡り始めた。銀髪の若者は一陣の閃光となり、大男が撃ってくる13mm弾の軌跡を全て避けると近接戦闘距離まで一気に迫る。
 一閃、二閃、さらに一撃。戦闘モードをシフトしたクロノスの反応速度は、ほぼ全ての非常動型神経加速サイバーウェアに勝る。剣もて立つ戦神の手と化した右手が半ば自動的に唸り、厚い装甲をも貫くEDGEナイフが大男の体を貫いた。
作 戦 終 了(ミッション・コンプリート)損害評価報告(ダメージレポート)‥‥なし。戦域確保(クリア)
 呟き、まだ活動している目標がないことを確認する。と、その時、コンテナの陰で騒ぎから逃れていた味方がちょこんと頭を出した。静元女史は小型カメラを右手に、左手でクロノスの背後を指差していた。
「ちょっとクロノスくん。あそこの塔のあたりじゃないの?!」
「上か‥‥?」
 クロノスは目標の潜伏地点を認め、走った。駅にそなえつけの気象観測用か何かの塔だ。鉄道全てを射界内に収め、なおかつ拳銃の類いから完全に射程外にある‥‥

常駐戦術プログラム、索敵攻撃から殲滅戦仕様に書き換え


 ゆっくりと右手でボルトハンドルを引く。シリンダーから旧式の薬莢が吐き出され、次なる死の弾丸が装填された。
「気付いたか。遅い」
 熱源探知式と光学式の複合型スコープを列車内に向ける。車内の人間が赤い塊となって照星の中に定まった。あの大きさは狙撃目標の女だ。
 トリガーを引き、静かに一発を放つ。


 組み合わされた二振りの刃は、秘伝を受け継ぐ職人の手で鍛えられた日本刀の冷たい鋼は、果たして狙撃スコープに映っただろうか。飛び出した御門忠明の八坂神伝流が閃き、ディル・グランツを狙った必殺の銃弾は弾かれた。天井に当たった銃弾がさらに跳ね、ディルの肩の後ろを掠る。
「ご主人様!」
 駆け寄るブランゲーネとその主を伏せさせ、御門忠明は外に目をやった。後は外の面子が片をつけてくれるだろう。
「見つけたぁッ!」
 その通りだった。長物のサンダーボルトライフルを持ち上げたユカが斜め上方に狙いをつけ、一発撃ち込む。
 窓から見上げる御門忠明に、その結果ははっきりと視認できた。塔の上で帽子がひらりと舞い、ひとりの男が地上へと落ちていった。見たことのない男だ。列車の乗客ではない。
「ご主人様は大丈夫です」
 御門忠明が振り返ると、そこに眼鏡を外したブランゲーネがいた。なんという早業だろうか、ディル・グランツには既に止血が施され、上着を脱がせて背に包帯が巻いてある。サイバー化した戦士同士の戦いにも負けないその早業に、黒衣の剣士は内心舌を巻いた。

八坂神伝流小太刀二刀術 -いざ!


「本当に助かったよ‥‥君らがいれば安心だな」
 脂汗をぬぐいつつ、恐る恐るチャービル・イワノフ国視正も車外へ出てくる。駅の設備はまだくすぶっており、線路の縦横に走る雪原の上にテロリストの死体が幾つも転がっていた。
「ここにいては襲撃の危険がある。すぐに鉄道は発車させよう」
 その様子は安堵のため息をつく老人のもので、どこにも演技の様子はなかった。
「まだ油断はできないぞ」
 戦神の力とモードを血の中にふたたび眠らせ、クロノスは振動剣を鞘に戻すと周囲を見渡した。その手の甲から不可思議な剣の紋章は消えている。
「ああ」 御門忠明は身を翻した。黒衣の下に、鞘の中に収まった小太刀はどこへとなく消えた。
「“雪の使者”にしては稚拙すぎる‥‥」


ボス「さてやってきたぞテロリストの襲撃。実はここで現れたスナイパーはユカが探し求めている“イーグル・アイ”ではなかったのだ。説明して補完せよ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。このスナイパーはカブトワリ,クグツ,カゲ。超遠距離から<※距離外射撃>で一方的な狙撃を浴びせてきたのでしゅー。襲撃舞台はカゲトループでリーダーの男もカゲ◎だったけど1カットでやられちゃったでしゅねー」
ボス「まだ戦神の右手しか起動していないとはいえクロノスぽんのナノマシンが遂に出たな! 戦域確保後に<※盾の乙女>の増加分でさらに距離を縮めようとするも、止めを刺したのはユカプーの距離に関係ないクーデグラであった。敵の狙撃は御門忠明ぽんの八坂神伝流が止めているぞ」
こうさくいん「<※完全防護>つきの<※鉄壁><※八重垣>でなんと16点防御でしゅね! 小太刀それぞれが真・降魔刀相当なのでしゅよ!」
ボス「実にゴージャスな経験点の使い方だのう(笑) 漢らしくXノフコズム健在だ(ごーりごーり) さてブラーネ様は相変わらず<※超スピード作業>を重ねて主人の傷を治しておるぞよ」
こうさくいん「ううー神業やコンボ使用時はブラーネ様は眼鏡を外すことになっているらしいのでしゅ。(>ω<) 芸が細かいでしゅよーさすが漢爵閣下でしゅ〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「ええい何が眼鏡+メイドのハイブリッドじゃ。眼鏡なぞどうでもよいわぁ。西に行ってしまった御仁にでも捧げておれぃ!」
こうさくいん「メイドだけでお腹いっぱいでしゅか〜(笑)」



Chapter 08: Stop Don't Panik
- ストップ・ドント・パニック


 シベリア鉄道は10両目の燃料車両を急いで繋げると、予定を早めて夜になる前に緊急発進。はー、本格的に大変なことになってきたわねー。頼りになる人たちが一緒に乗ってるから、安心といえば安心だけど‥‥
 私が席に戻ろうとしていると、食堂車でばったりあの人に出くわしたの。背の高い体を黒のレザーのロングコートに包み、さらさらの黒のロングヘアー。少し化粧しているようにも見える、切れ長の目。さきの襲撃事件で倒されたスナイパーは、この美形の流しのバイオリン弾きではなかった。

Independent Woman -Ms.Shizumoto

「オレガノさん‥‥?」
 あの人は帽子を取ると、静かに告げた。
「‥‥この列車は滅びへ向かって進んでいる。この先に待つものは死だけだ。だが、助かる方法がまだある」
「そんな‥‥」
「最後尾の列車を切り離して逃げなさい。あとは自動ブレーキが掛かって自然に止まるはずだ」
「待って。でもなぜ‥‥??」
 流しのバイオリン弾きは、寂しげに笑うと言いました。
「あなたは一般人だ。巻き込みたくない」と。


「オレガノさん。‥‥あなたのことは、決して忘れません」
 運命の導きによって大陸鉄道に偶然乗り合わせたか弱い女性記者は、胸の前で両手を組むと、潤んだ瞳で死地へ赴こうとしている男を見つめた。
「‥‥と、言いたいところですけどっ」
 NCB広報部のキャリアウーマンは一歩前に出ると、左手を腰にあて、右手で凄腕スナイパーをびしりとばかりに指差した。
「あなた、バイオリン弾きの他にもうひとつ裏の顔があるんですって?!」
 反対側の出入り口からブランゲーネも出てくる。ただならぬ気配を察し、彼女もフリルのついたスカートの下に隠された武器を抜く準備を整えた。
「‥‥私の妹がチャービル・イワノフを殺し、私はディル・グランツを殺ろう。それで終わりだ。この列車を、ホロシリにつかせるわけにはいかん」
 オレガノ・クロードは二人を交互に見やり、脇に下げていたバイオリンケースを、体の前に移動させた。
「貴方たちはどうするというのですか?」
 ブランゲーネが眼鏡の奥の灰色の目を細め、鋭く問い掛ける。
「我々は死ぬだろう。それでいい。我々は大志の為の崇高な犠牲となるのだ」
「ちょっと、オレガノさん」 黙って聞いていた静元涼子は眉をひそめると、小柄な体で力強く声を張り上げた。
「プロフェッショナルのセンチメンタリズムは結構ですけど、それで一体どれだけの人が死ぬと思っているの?!」
 窓の外では白の大地が行き過ぎ、刻一刻と終着駅が近付いていた。


「さっきから黙って聞いていれば何を甘っちょろいことを。やっぱ1発じゃ死なないね」
 ドアを乱暴に蹴り開け、長物のサンダーボルトライフルを肩に担いだ赤い髪の娘がブランゲーネの横から現れた。
「‥‥話はだいたい聞かせてもらった」
 軍用ジャケットを来た銀髪の若者も、女性記者を庇うように現れる。
「ロシア軍や政府の酷さは貴様たちも知っているだろう。邪魔をしないでくれ。もっと多くの人が死ぬ事になる」
 オレガノが冷静に告げるその時、突然の轟音が面々を包んだ。闇に紛れて雪上車両で接近してきた“雪の使者”の再度の襲撃が始まったのだ。白い戦闘服の襲撃隊に力づくで列車に乗り移るパワーアシストアーマー隊、銃声と爆発音と怒号と悲鳴で列車じゅうが大混乱に陥る。
 クロノスはおろおろしている静元女史を掴み、列車後方に走った。テロリストたちの第一目標であるチャービルがまず危ない。ブランゲーネも狙われているはずの主人の方へ向かう。

何か御用はありませんか?

 残った二人の間に銃弾が走り、ユカ・プルデーレは半ば倒れるようにそばのテーブルの陰へ飛び込んだ。そこからオレガノの姿を探す。
 美形のバイオリン弾きの技は驚嘆に値するものだった。遮蔽を背にしながら、空中でバイオリンケースを解放。中に入っていた部品を見る間に組み立てる。誰もいないだだっ広い食堂車の隅に陣取ったユカ・プルデーレの方を振り返った時には、その手にはブルパップ式のライフルが構えられていた。
 そのまま一発。倒れている椅子の陰に飛びこんだユカは、それが自分を狙ったものでないことに気がついた。銃口は車両連結口の方を向いている。紅蓮の最凶ヒットマンは驚愕すべき事実に思い当たった。
「‥‥この距離から狙ったっていうのか?」

コルシオーネの小さな悪魔

 カーブの多い丘陵地帯を抜け、シベリア鉄道は既に平原を抜ける直線の領域に入っていた。4本レールの上を疾走する全車両がほぼ一列に並んでいる。
 あらゆる装甲を貫通する特別製の徹甲炸裂弾は連結口を貫き、次の車両をまっすぐに突き進んだ。次の出入り口を抜け、主の元へ急ぐブランゲーネの頭上を超え、また次の車両へ。VIP車両で襲撃に怯えるディル・グランツの眉間を貫く、神の領域に達した狙撃。
 だがその弾丸が脳漿の雨を絨毯の上に降らそうとしたその時、黒い影が踊り出た。片手は順手、片手は逆手、白き十字架の如く組み合わされた二刀の小太刀が煌き、いにしえの東方の技が魔弾を跳ね飛ばした。
「‥‥どこまでやってもテロはテロに変わらぬ」
 御門忠明は呟き、近付いてくる襲撃者に刃を向けた。

八坂神伝流小太刀二刀術 -いざ!



Chapter 09: Crisis Four
- クライシス・フォア


 静元女史を半ば抱えるように走っていたクロノスは、最後尾の燃料補給車両までもう一両というところまで来ていた。
 目の前に二人の男女が倒れていた。チャービル国視正の護衛官、マグワート特務大佐とマレイン大尉だ。血を流し、気を失っているのか既に事切れているのか分からない。
「あ、あの人たちは‥‥?」
 静元涼子が息を呑む。彼女の見立て通り、特務大佐の体は完全義体であり、その時点で戦闘能力は常人を遥かに上回る。その二人の護衛官が、反撃も空しく床に倒れていたのだ。
 その先には、大人二人にこれだけの打撃を与えられるはずのない人物が立っていた。可愛らしいピンクのウェイトレス服にエプロンスカート、胸に光る大陸鉄道乗車員証。金髪を頭の上で二つのポニーテールに束ねた美人の売り子娘がそこに立っていた。
「‥‥また一人、増えたわね」
 サフラン・アルフィーネは低く呟いた。
「あんなでっかいワゴンごと乗り込むところから、おかしいと思っていたよ」
 クロノスは息を呑む連れの女性を左手で制し、下がるように無言で伝えた。
「今頃、お兄ちゃんがうまくやってるはずよ」
「目的のためには、手段は選ばないというわけか」
「そうね、私のしている事が決して正しいことだとは思わない」
 サフランの瞳に冷たい光が満ちた。
「だけど、目の前で家族や恋人が殺されれば貴方だって考え方は変わるわ。‥‥私は、もう変われないから」
「何か、言い残すことはないか」
 クロノスは腰の後ろの高速振動剣に手を掛けた。静かな怒りが全身の血潮を巡り始め、神の力を呼び覚ますナノマシンが活動を始めた。
「そうね」 ウェイトレスの娘は笑った。「あなたじゃ、役不足だったってことだわ」
 クロノスより遥かに小さく、遥かに非力に見える娘は前に出た。その二の腕の服が破れ、内蔵型サイバー・ウェポンの研ぎ澄まされた刃が弾き出された。同時にスカートにスリットが入り、形のよい脚からガイストの刃が左右同時に飛び出した。
 オレガノ・クロードの異母妹、“雪の使者”のテロリストは床を蹴った。極めて大きな脅威となる4本の刃が、完璧なコンビネーションを描いてロシアの元強化兵士(チューンド)に同時に襲い掛かった。

常駐戦術プログラム、索敵攻撃から殲滅戦仕様に書き換え



Chapter 10: H E A T
- ヒート


 ディル・グランツを狙った超人的な射撃は護衛に防がれた。オレガノ・クロードはライフルの銃身を食堂車の向こう側にいる赤い髪の娘に向けた。ユカは手近のテーブルをさらに蹴飛ばし、倒すと遮蔽に取る。銀の食器ががらがらと崩れ、床で騒々しい音を立てた。
「女子供を手に掛けるのは最後にしたい‥‥。サフラン、お兄ちゃんももうすぐ行くぞ」
 ほぼ連続して聞こえる銃声。銃弾は一発、だが壁と天井で跳弾しながら、遮蔽の影にいるユカを執拗に狙う。
「なんだってっ?!」
 ユカは慌ててテーブルの陰から這い出した。胸に掛けたロザリオが輝き、敬虔とはいえない子悪魔の命を救ってくれた。このスナイパーの前では遮蔽も効かないのだ。
 走りながら力を解放する。食堂車を炎の嵐が走り、その長い黒髪に火がついたオレガノはたじろいだ。帽子を押さえて後退し、地獄の炎を振り払う。そこで目標を認め、モードを変えるとさらに斉射。
「チッ‥‥仕留め損なったかッ!」
 だが、高性能のIANUSに助けられたユカの方が早かった。弾丸が放たれるよりも早く動き、給仕用ワゴンの陰に飛び込みながら得物を用意。本来なら狙撃専門にしか使われない長物のスナイパーライフルを若さと勢いに任せてなんとか構え直し、長身の美形スナイパーに向ける。スコープの中に目標が現れた瞬間、銃口が火を吹いた。
「1発じゃ足りないんだったなッ!」
 ほぼまったく同時に2発、まったく同じ場所を狙った奇跡の射撃。元より火炎の加護を強く受けているユカの真紅の魔弾がこの奇跡を見せた時、その破壊力は機動戦車にすら通用するまでに達する。
 2発の大口径ライフル弾は夜に輝く炎の残像を引いたまま、オレガノ・クロードの胸を貫いた。胸を打ち抜かれ、ホロシリで生まれた流しのバイオリン弾きはゆっくりと仰向けに倒れていった。女のような長い黒髪が広がり、その上に遅れて帽子が落ちてくる。
「‥‥サフラン‥‥」
 それきり男は事切れた。
 ユカ・プルデーレは大きく息を吐きながら、相手が本当に死んだのを確かめた。
「こいつで、3発撃ち込んでやったよ」
 コルシオーネ・ファミリーの不良少女は頭を撃ち抜かれて死んでいる3人の遠い“家族”の写真を思い出した。ビズは終わった。紅蓮の復讐は果たされたのだ。

コルシオーネの小さな悪魔


こうさくいん「くうー直線コースに差し掛かったシベリア鉄道。走る列車の中での決闘!燃えるでしゅね!o(≧へ≦)9゛」
ボス「四季センセーによると『パタリロ』のバンコラン風らしいオレガノはいきなりクーデグラ、御門忠明ぽんがインヴァルで止めてからユカvs美形スナイパーの戦闘開始だ。室内で狙撃銃で撃ち合うのはちとアレだがまあシベリア鉄道は車内も広いらしいしな(笑)」
こうさくいん「オレガノ・クロードはカゲ◎,クグツ,カブトワリ●。<※跳弾><※背面撃ち>で攻めて来るもユカプーの<※元力:火炎/負>+<※ピンホールショット>が炸裂したのでしゅー。(≧▽≦)ノ で、でも殴51点はやばいでしゅよー人外の領域に踏みこんでいるでしゅよーΣ( ̄口 ̄;)」
ボス「背が高くなっても悪魔は悪魔だのう(笑) さて次はクロノスぽんたちだ。諸君、天国の様なN◎VAを望むか? よろしい、ならば一心不乱のはたコズムを!!(きらーん)」



Chapter 11: R.A.S. (Rage against the Snow)
- レイジ・アゲインスト・ザ・スノウ


 ウェイトレスの体から解放された4つのサイバー・ブレードは宙で広がり、美しい軌跡を描きながら完璧に同時に迫ってきた。脅威を探す手間は要らない。極めて危険度の高い相手が既に目の前にいる。
「常駐戦術プログラムを書き換え(リライト)‥‥索 敵 攻 撃(サーチ&デストロイ) 仕様(モード)から殲 滅 戦(ジェノサイド) 仕様(モード)へ」
 クロノスは呟き、高速振動剣を抜いた右手と左手を交差させた。その両の手の甲に、幾重にも重なる不思議な模様と剣と弓の紋章が浮かび上がる。
「プログラム・アレス、プログラム・アルテミス、インストール!」
 戦神の力、月の女神の力が両腕に流れ込み、活性化したナノマシンが全身の血管を駆け巡る。神の力を呼び覚ました北の大地の強化兵士は、娘の姿をしたサイバネティック戦士に立ち向かった。
「静かなる‥‥死を」
 だがガイストの刃が振動剣を見事に受け止め、体術と完璧に調和した刃の舞いが続け様に襲い掛かる。サフランのふたつのポニーテールが舞い、破れたエプロンスカートがはためいた。反射神経を強化しているクロノスでさえ反応しきれない動き。ジャケットが切り裂かれ、血が噴き出す。
「くそっ‥‥リストーラー!」
 目にすら見えない大きさの微細機器の働きが致死傷よりも早いことを祈り、隙を探す。血中のナノマシンが宿主の生命に関わる危機的状況を感知し、緊急対応を始めた。破壊された組織を再生し、傷口を塞ぎ、肉体への悪影響を食い止め始める。
 サフランの右腕の刃が唸りをあげた。クロノスを心臓ごと壁に縫いつけるはずだったその刃は残像だけを貫き、壁へ突き刺さる。転がるように飛び退ったクロノスはもうひとつの神の力を呼び覚ました。
「プログラム・クロノス、インストール。反応速度を20倍に設定!」
 微細機器の中に分割されて眠っていたプログラムが互いを呼び合い、融合し、時の神の力を取り戻す。その力が全身の神経を巡り始めた時、クロノスの周りの世界が不意に緩慢なものに変わった。獲物を求めてさ迷うサフランの視線の動きも、床を蹴って後方に飛び退る自分の軍用ブーツも、全てがひどくゆっくりとしたものに変わる。
 左の太腿に仕込まれていたマーフィーズ・ホルスターが独りでに解放され、中の空洞に保管されていた高出力のレーザー・ピストルが飛び出す。チハヤ・アームズがその技術を結集して造ったこのLP9は、まだ世界のごく一部でしか使われていない。
 筋力と反応速度を高めたクロノスの体は後方に高く跳び、宙に浮かんでいるようだった。アルテミスの力に操られた弓の紋章の光る左手がLP9を引き抜き、自律射撃を開始する。小型バッテリーの数分の一の電力を消費する発振光が月の女神の祝福の如く輝き、矢となって宙を走った。サフランの左眼を貫通し、残像を残して消える。
「ああっ!」
 その悲鳴すらも、クロノスにはゆっくりと聞こえた。左手にレーザー・ピストル、右手に逆手に構えた振動剣を構え、距離を取って着地する。カタナと戦う時は距離を保つことだ。刃の届く距離はほぼ一定であり、そこから逃れれば‥‥
「しまった?!」
 クロノスは自分とサフランの間で壁際に張り付いている小柄な女性を認めた。ナノマシンが拡張した五感に気を取られすぎたあまりに置いてきてしまった。通常の速度で流れる世界に取り残されている彼女には、目の前で起こっていることも半分しか知覚できていないのだろう。
 再び床を蹴り、四本の刃が静元涼子を切り刻もうとする前に攻撃に移る。ガイストの蹴りを避け、不完全な視覚で対応が遅れたサフランの懐に飛び込み、高周波ナイフの刃をピンクのウェイトレス服の中の強化された体に埋め込む。
「お兄ちゃん‥‥ごめん」 娘の口から血の泡が漏れ、あまりにゆっくりと宙に散った。
「でも、全てを果たすまで‥‥」
 サフラン・アルフィーネの体が再び動き出した。埋め込まれたサイバーウェアに操られるように四肢が動き、4本の刃が再び銀髪の若者を執拗に狙う。反応速度を増幅したクロノスでも防ぎきれないほどだった。刃渡りの短いEDGEナイフが圧倒的に不利だ。
「クロノスくん、しっかり!」
 緩慢な世界の中で、なぜかその力強い声は通常の速度でクロノスの聴覚に届いた。その声がクロノスに力を与えた。
「くっ‥‥限定解除。クロノスをフル・インストール。20倍から50倍に設定っ!」
 時の神の力を復活せしめるナノマシンがさらに活動を始めた。途端にクロノスの周りの世界から色彩が消えた。肉体に過度の負荷を掛けるこのナノマシンの副作用で、クロノスの体の中の歳月は19の時から凍りついたのだ。全てが停止していると思えるほどの凍りついた世界の中で、自分の命を狙うガイストの刃だけが動いていた。
 全ての攻撃を振動剣で受け流し、止まった時の中を敵の懐へ、切っ先をサフランの首筋へ。だが刃が埋めこまれる前に暗殺者の命の灯火は消え、力を失った体は地面に崩れ落ちた。ポニーテールに結んだふたつの髪の房がゆっくりとその後に続いた。“鷹の目”の名を持つ凄腕スナイパーと組んで活動していた“雪の使者”の暗殺者は、本当に死んだのだ。
 役目を終えた血中のナノマシンが不活性状態に戻り、神の名を持つプログラムが自動的に消 去(デリート)されていく。クロノスの周りで凍り付いていた時がふたたび動き出し、灰色の世界が色に染まっていった。世界が元の速度で回り出した。
「大丈夫‥‥?」
 色彩を取り戻したクロノスの目が見たのは、心配そうに彼を見上げる、年上の女性の紫の瞳だった。

常駐戦術プログラム、索敵攻撃から殲滅戦仕様に書き換え


ボス「さあ来たぞ来たぞ。このレポートには財団側はじめ様々な方々の様々な妄想もとい加速したイマジネーションによる設定なりルール的な技なりもろもろが表現されてきたのだが。はたマロでも獅子奮迅の大暴れをしているエニグマ相当のナノマシンがッ! 遂にフルインストールだぁッッッ!」
こうさくいん「くぅーサフランはチャクラ,カタナ,カゲで<■二天一流>4Lvだったのでしゅ。この3枚スタイルでこの強さは苦戦して当たり前でしゅよー。ていうかダブルポニテのウェイトレスの子が敵なのはダメでしゅよ〜(T▽T)」
ボス「ニューロエイジは外面で安心してはいけない世界だのう。さてクロノスぽん本人はカゲ◎●,カブト、そしてなんちゃってマヤカシだ。隠密8LvにSPOONコート有利、そこに<■合技>からメレーやFアームを組み合わせるのが基本だな」
こうさくいん「あんまりそう見えないけどカブトなんでしゅねー。回避有利から<※一心同体>でクライアントを護るのでしゅ。涼子御姉様を抱き抱えて走ってるでしゅよ。コネも2Lvだしちょびっと疑惑でしゅ〜(笑)」
ボス「んー、誰かに後ろから撃たれそうだな。いやそれはともかく。そして右手のプログラム・アレスがカタナマヤカシ、左手のプログラム・アルテミスがカブトワリマヤカシなのだ。発動するとそれぞれ手の甲に紋章が浮かび上がるというこのビジュアル演出! 週刊ジャ○プあたりでも現役で戦えそうだぞ!(笑)」
こうさくいん「格ゲーやアニメでも主役を張れるでしゅね!(>ω<) エニグマからはダメージ差分値系技能や必要に応じて<※斬裁剣>、<※霊翼>で戦闘移動などを“借りてくる”というこのプログラム感覚! 本人が<※完全奇襲>すればドリィ夢の差分2倍も可能でしゅ! さらに《守護神》レベルになると謎のプログラム・クロノスもインストールなのでしゅ! ダブルインストールもフルインストールもありでしゅよ〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「2回インストールすると上書きインストールではなく効果が2倍になるところが全国のニューロ諸君&リアルスペースの技術者の皆様もびっくりどっきりなカンジだな。しかもナノマシンではメモリも拡張できないのか常駐は不可。戦闘が終わると自動的に消滅してしまうので戦闘毎に叫んでインストールし直さねばならぬのだ。まさに、ロシアの科学力は世界一ィィィッッッ!」
こうさくいん「強化倍数も5倍20倍50倍! エニグマのドリィ夢が結集しているでしゅね〜ヽ(´▽`)ノ」
ボス「本人のカゲ、カブトにカタナ&カブトワリと一人でほとんど戦闘系が揃っているからのう。ほとんどマローダー状態ではないか(笑) これで1カット目からのアクションランク増加が可能、相手によっては1カット目で一本取れるわけだ。
 さて昔からN◎VAシステムには枠の抜け道を考えずに書いてあったりあえて枠を外してあったりするところが多々あるわけだが。夢が広がったエニグマ関連もその典型だ。遊んでいる環境によっては強すぎると感じたらエニグマは1人1体に制限したりするのもありかもしれん。1体いるだけでもキャラクターの個性化はかなり実現できるからな」
こうさくいん「んんーでもクロノスぽんは別に迷惑じゃないし愉快でしゅよね?」
ボス「んんーまあ結局はそういう話になるのだがな(笑) ちなみにリストーラーは実は身代わり符相当で身隠し符相当の死角歩行能力とか愉快なことを言っておるぞよ?」
こうさくいん「んんーんんー密かにデータを偵察すると服の下の防具は女性用のジャンヌらしいでしゅよ? ああ見えて倒錯でしゅか? 勝負下着でしゅか?(ニヤソ)」
ボス「男性用ジャンヌと主張しているがいったいどんな形状なのか分からんのう(ニヤソ) さてもナノマシン以外にもツッコミ所満載で楽しい御仁じゃ。なはははは!」
こうさくいん「同時攻撃の嵐には盾の乙女のコンビネーションでなんとか対抗。最後の相討ちマカブルはファイト→ガーディアンで防いでなんとか勝利。スノウ・クラッシュ阻止までもう少しでしゅ〜(≧▽≦)ノ」


不可触編】【前編】【中編】【後編
n a v i g a t o r

---Bar from V:tM---

...... Dawn of Siberian Railroad ......

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