雪色花の歌 - ダス・シュネーブルーメンリート
〜シュネーブルーメの歌〜

雪色花の歌】【前編】【中編】【後編
-花の道案内-
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第三章 闇の吐息


 ブランシルトの村は川のほとりに広がる農園からなり、川の中州の島めいた盛り上がりには、百年はこの村を見つづけているであろう大きな古木が眼下の異常な光景を見下ろしている。
 狩り入れ時でもないのに、村人たちが総出で畑へ出ると、手に手に鍬を持って地面を必死に掘り返しているのだ。その様は平和な村の収穫時でも、春の種蒔き時でも決してないものだった。
 ヴィンセントは気取られないようにそっと近付いた。力のある男の他に女子供までもが駆り出され、畑も道も構わずあらゆる地面から、地中の何かを掘り出そうとやっきになっている。
 見ればあちこちの地面から、黒い蔦のような奇妙な植物が生えているではないか。村人たちは地中を縦横に走るその巨大な根を掘り返し、集めて焼き払っているのだ。地上に頭を出した蔦からは、あちこちの膨らみから黒い煙のようなものが吐き出されている。
「許してくだせえ。村じゅうから最後の一本までこの蔦を抜けって御領主から命令が出てるんでさあ。もう何日もこうやって‥‥人死にも出とりますが‥‥手を休めとるとお咎めを受けるんです。その場で手打ちに‥‥だから話は御堪忍を」
 声を掛けた村人は憔悴しきった様子で作業に戻って行った。村に満ちる霧のせいで頭上の空もどんよりと曇り、視界が悪い。

アコット、クレアータの娘

 やがて、遅れてやってきたロボとアコットも到着し、村のただならぬ様子にヴィンセントの元に近付いてきた。狼同様に利くウルフェンの鼻に障るところでもあるのか、ロボはしきりに空気の臭いを嗅ぐと鼻をひくつかせている。
「話に聞いていたのと少し違うようだね」
 ヴィンセントは巡礼服姿の薄青い髪の娘に問いかける。
「ええ。私が出てきた頃は、こんなことは‥‥」
 無論、アコットが老魔術師の墓を去り遺言状を携えてブランシルトを出た頃は、静かな冬の村が広がっているだけであった。


BLADEofARCANA - 立て、使徒クレアータの娘よ


「オルウェン様、これは‥‥」
「ああ。何かあるな」
 都育ちの十代の娘と脆弱な魔術師の脚では、旅の速度もいささか変わる。半日ほど遅れて到着したオルウェンとレベッカもまた、ブランシルトの異様な光景を前にしばし呆然としていた。
「あれまあ、ヨアヒム様の娘御さんかね! こりゃあ悪い時に帰ってこなされた‥‥」
「へい、旅のお方、この蔦のことは私たちも何がなんだかさっぱりなんですだあ‥‥」
 見れば働きづめで倒れたか領主の怒りに触れたのか、農夫の死体も幾つか畑に転がっている。それらは何年も経ったかのようにからからに干からび、例の気味悪い植物はそれを苗代にさらに芽吹き、根を広げているのだ。見るからに忌まわしい光景であった。

「案ずるな。私は魔術師(マーギア)だ」
 集まってきた農民たちに平然と答え、銀縁眼鏡の青年は革の外套をはだけて下の長衣を露にした。白に映える金糸の刺繍は悪しき魔法よりの護りの印、音に聞こえし天の塔トゥリス・カエルムの法衣と同じもの。添えられた短剣は知と真理の守護者のあかし。
「こ、これはありがてぇ、アクシスのお方ですか‥‥」
 どよめきと共に自然と人垣が分かれ、半エルフの魔術師はその中を悠然と進んだ。一際太い蔦の元で膝を折ると、手布を口に当て、黒い蔦を子細に観察する。

オルウェン、星の理を知る魔術師


 私が今までどのような書物の中でも見たことのない植物だった。蔦の中ほどの花とも虫を食らう口ともつかぬ膨らみから吐き出される瘴気が、例の 黒い霧 (シュヴァルツェア・ネーベル)の原因となっている。これだけ村全体で蔓延っているのだ、その根本を断つしかあるまい。
 待っているレベッカの他に近付いてくるもうひとつの影を感じ、私は振り返った。都の料理屋(レストラーン)でよく見かけたあの男がいた。

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士

「あの時の色男か」
「目つきの悪い魔術師だね」
 柔らかに笑いながら近付いてくる色男の緑色(グリューン)の瞳はどこか輝いていた。迫る危険を楽しむような、いや、来たるべき戦いを興奮しながら待ち構えるような、それとも 闇の鎖 (ケッテ・アウス・フィンスターニス)の発見に静かな喜びを感じているような――私には、よく判らなかった。
「‥‥どうやらこの村には、闇の力が働いているようだ」
「ああ。私もこのような蔦は見たことがない」

 最小限の食事と休息を除いて、昼夜問わずこの蔦を掘り起こせと理不尽な命を下したこの地の領主(フュルスト)は、名をヨーゼフと言う。これといって良い評判も悪い評判も聞かぬ名だ。事実、村人の話でもそれまではとりたてておかしな所はなかったと言う。会って確かめた方がよかろう。
「来るか、色男」
 私は眼鏡を直し、流れの剣士に問い掛けた。
「ああ。錯乱した領主かもしれない」 彼は手袋をした左手で腰の長剣に軽く触れて答えた。
「こちらのレベッカ嬢を、突然手打ちにしないとも限らないしね」
 突然に微笑みを投げられ、彼女はどうしていいか困ったように目を伏せていた。

KLINGEvonARKANA - 困難を克服し星々へ



第四章 冬物語


 しかし、領主ヨーゼフは北の 薬草園 (アールツナイクラウターガルテン)に見回りに出掛けており、日暮れまでは帰らないとのことであった。城館に行く前にまずは永眠した父を弔おうと、レベッカは父の(グラーブ)へと向かう。親切な村人たちが整えてくれたのか、墓の回りには簡単な植木の囲いがなされ、墓標も立てられている。
「レベッカ様、父君のお墓はまだ無事でしたよ」
「よかった‥‥」
 待っていたアコットが声を掛け、父の為し得なかった悲願を果たそうと奮闘する娘は墓標に駆け寄った。アーのお慈悲か、墓までは例の黒い蔦もまだ伸びていない。先達の眠る墓を認めると、ついてきた半エルフの魔術師も黙って頭を垂れた。
「アコットさん。あなたが父の最後を看取って、墓を造ってくれたのですね」

アコット、クレアータの娘

 「ええ‥‥わたしがこの村の近くで倒れた時、父君はほんとうに優しく手当てをしてくださいました。いろいろなことを教えてくださったのです。その後、具合が悪くなられてからは‥‥その、まるで私に命を与えた分を引き換えにしたようでした」
「いいの。きっと、父さんも満足してアーの御許に召されたことでしょう」
 涙を滲ませながらも、レベッカは答えた。父が生前に為せなかった道は、娘の未来が継ぐのだ。

「‥‥あの子、ダレだ?」
 薄青の髪の使者と話している魔術師の長衣を着た娘を眺めながら、ふとロボが横のヴィンセントに聞く。実は、故ヨアヒムのもうひとつの遺言状の相手のことはよく知らないままにここまで来てしまっている。

白きハルツェンヴォルフ、LOBO

 アコットは改めて故ヨアヒム・ゲルハルトの娘レベッカを紹介した。蒼氷色の瞳に満ちていた涙を拭くと、アコットより少し背の高い黒髪の娘は儀正しく挨拶した。だが、遺産後継人となったウルフェンの若者をどこか憮然とした表情で一瞥すると、後はアコットとしか話そうとしないではないか。
オルウェン、星の理を知る魔術師

「はっきり言おうか」
 やりとりを眺めていた半エルフの魔術師が冷然とした視線をロボに向けた。
「この娘はヨアヒム殿の娘御であり、遺産を継ぐ正当な資格がある。そなたが後継者に選ばれたことが納得できんのだ」
 銀の眼鏡の奥から冷やかに睨みつける群青色の瞳に、遠慮のない物言い。魔法の類いをよく解さぬロボから見れば、まるで悪の妖術師に見えなくもない。

「オウ。そんなこたぁこっちも分かってるぜ」
 魔術師の遺産を継ぐ羽目になったウルフェンは親指を立てた。
「継ぐかどうかはオレが決める。なにせ選択権はオレにあるんだからなっ!」

BLADEofARCANA - 狼の兄弟


 そして村の外れにあるヨアヒムの城館(シュロス)。懐かしい父の住処、そして命の恩人の家にレベッカとアコットが急ごうとした時。思わぬ障害が一行を待ち構えていた。領主に派遣されたとおぼしき衛兵(ヴァッヘ)たちが、大槍(シュペーア)の音も高らかに行く手を遮ったのだ。
「止まれッ! この館には領主様のご命令により何人も通すことまかりならぬ。立ち去れいッ」
 兵士たちの語気は荒く、アコット達は息を飲んだ。だがその後ろからひょいと出てきたロボが、普段と変わらぬ様子で歩いていく。
「よォ、ご苦労さん」
 ウルフェンの若者の口調は肉を奢ってやった友人に対するようなものだった。
「ここは、オレの家になる予定だ。家のあるじが自分の家に入るんだから、問題ないよナ」
「な、な、なんだと‥‥!?」
 忠誠心篤い衛兵たちもこれには鼻白み、呆気に取られる。呆気に取られていたのはもう一人いた。
「なんというぶしつけな奴だ‥‥」
 天慧院の名を出すまでもなしと後ろに控えていたオルウェンである。誰とはなしに呟きながら眼鏡を直すその横で、レベッカも表情を険しくしていた。
「まあまあ。事情を知らない貴殿らには無理もないだろう」
 進み出たヴィンセントがその場を取り成した。
「こちらのお嬢さんはこの城館の主、ヨアヒム殿の正当な後継ぎなんだよ。これから遺産分配の手続きをするところだ。気になるなら領主殿に報告するといい。なんなら証拠の遺言状も見せようか」
「う‥‥うむ‥‥ヨーゼフ様には我々から報告しておくッ!」
 しばし悩んだ末に、衛兵達は槍を下ろした。大手を振って歩いていく気さくな若者に瀟洒な物腰の旅の剣士、若い娘が二人に冷然とした目つきの半エルフの青年という、珍妙な取り合わせの一行はいよいよ城館の扉を開くのだった。

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに



第五章 狼王ロボと秘密の部屋


 故ヨアヒム・ゲルハルトの城館(シュロス)は、アコットが館を後にした時と少しも変わらず、中も整頓されていた。アコットが世話になった頃にきちんと整理をしていたのと、館の主が元来綺麗好きな性格だったためであろう。
 留守の間に少しばかり積もった埃を払おうとアコットが掃除を始め、残りの面々は書 庫(ビブリオテーク)へと向かった。
 書庫に蓄えられた文献と研究資料は圧巻だった。錬金術(アルヒミー)魔術(マギー)歴史学(ゲシヒテ)、様々な本や巻物、触媒(カタリザーター)とおぼしき小物や地図が天井まで並んでいる。

 魔術師オルウェンとその見習いレベッカの二人組が立ち止まってただ感心している間にひょいと脇を通り抜け、ロボは奥へ進んでいた。ウルフェンの鼻にひっかかる匂いを嗅ぎつけたのだ。匂いのままに奥へ奥へと進み、本の山をくぐり、迷路のような棚の間を進むと、広い書庫の中にまるで秘密の部屋のように隠されていた書斎が突如として姿を現す。

白きハルツェンヴォルフ、LOBO

 書斎の中も整理され、黒檀(エーベンホルツ)の机の上には故人の持ち物が幾つか置いてある。ロボの手は自然とその中の一通の手紙に伸びた。何故だか、その手紙が求めるものであることが分かった。その手紙はまるで、秘密の部屋の中でロボに読まれるのを待っていたかのようだった。同じ筆跡、同じ紋の押された蝋の印。宛名にも流れるような書体でLOBOと記してあった。遺言状には三通目があったのだ。
 賞金稼ぎや傭兵稼業を続けるロボには馴染の薄い丁寧な文章だった。気付いたヴィンセントも後から書斎に入ってくる。ウルフェンの若者はひと呼吸すると、おおきな声で手紙の内容をゆっくりと読み上げていった。


 ‥‥この手紙を読まれている頃、あなたはおそらく私の城館で書庫の本に囲まれていることだろう。私の遺産を見ていただくことになった理由を、今語ろう。
 あの伝承の元になった、邪悪な植物がはびこり、人の暮らすことが出来なかった土地‥‥というのは、二百年前のこのブランシルトのことなのだ。伝説にある剣士と森人族の娘は実在し、本当にこの土地から、闇の眷属であった邪悪な植物を一掃するために、魔法と炎を用いて戦った。
 彼と彼女が分かれることになった理由も、伝説が語るまま‥‥森人族の娘が、人間の寿命に限りあることを知らず、封印の魔法を使ってしまったからだ。
 私は、天慧院への道を退いた後に半生を賭して、この郷土の伝説を研究した。その理由は単純なものだ。この屋敷と土地を残してくれた私の先祖は、シュネ―ブルーメの歌に出てくる剣士の従者であった。彼がこの地を去るとき、この地の守護を任された者だったからだ‥‥
 


「ここまでの資料を蓄えられたとは‥‥さすがだ」
 私は書庫に蓄えられた書物を見分していた。アクシスの呪文公式の考察、秘儀魔法と思われる儀式の資料の断片、そして系統だててまとめられたこの地方の伝説の集大成。中には闇の眷属と思わしきものもある。この雪色花の伝説に登場する闇の木々もどうやらそのようだ。
 さすがに整理する暇がなかったのか、本の中にはあるべき場所に置かれていないものもあった。私は机の上に特に重要な本を並べていった。すぐにでも役に立つ本もある。棚のひとつに錬金術の触媒と一緒に置かれていた古ぼけた木の枝が注意を引いた。これだけは、何の為にここに置かれているのかまったく分からない。
 その時、広い書庫のどこからか突然声が聞こえてきた。あの粗野なウルフェンの声だ。何かを読み上げているようにも聞こえる。いや、あれはヨアヒム殿の文章ではないか。一体何処から聞こえてくるのだ??

KLINGEvonARKANA - 困難を克服し星々へ


 そして、このような手紙を書いて、あなたにここまで来て頂いた理由も単純なものだ。私の先祖が仕えた剣士と言うのは、LOBO殿、あなたの遠い先祖でもあるからだ。
 研究の結果、明らかになったことがふたつある。これをあなたに伝えて、後事を託したいと思う。
 ひとつは、このブランシルトに未だ、エルフの娘アラベラが眠っていることだ。はっきりと確かめるすべはないが、この村が開墾された当初からあった古木‥‥村の中央、川の中州にある柏に似た木が、彼女の眠る場所ではないか、と私は思う。あれは常に、秘儀魔法のものと見られる微かな魔力を帯びているのだ。
 それから、もうひとつは‥‥アラベラとあなたの祖先である剣士が封じた、邪悪な植物のことだ。
 わたしはそれについても研究した。どうやらそれは、今でも闇の鎖によって汚染された場所――たとえば北荻の地のような――に見られる、『不眠(ねむらず)の種子』という名の闇の眷属ではないか、と考える。種子と言っても、それは汚染された闇の力そのものであって、本当の植物などではない。
 気になるのは、それ‥‥不眠の種子が、今でもブランシルトの地下に根深く息衝いている可能性があることなのだ。どうやら、エルフの娘アラベラが用いた封印の秘儀魔法は、対象の浄化に長い時間が掛かるものだったようだ。だから二百年の時が流れたいまでも、闇の眷属の残滓が、このブランシルトの地下に埋もれていることは、十分に有り得る‥‥
 


 魔術師ヨアヒム・ゲルハルトが天に召される前に遺した遺産の秘密が、遂に明かされた。縁もゆかりもないと思われるウルフェン族の若者がなぜ北方の地に呼ばれたのかが明かされた。ロボは手紙を読み上げ終えると、しみじみと丁寧に記された遺言状(テスタメント)をしばし眺めた。

 と、そこへ盛大な音と共に息せき切って駆け込んで来る者がいる。オルウェンである。痩身の半エルフの青年の目はロボの手にある遺言状に釘付けであった。やや遅れてレベッカもついてくる。
「そなた‥‥どうしてこの書斎にその手紙があると分かったのだ??」
 ずっと本の仕分けをしていた魔術師はまじまじと遺言状を見つめた。

オルウェン、星の理を知る魔術師

 ロボは歯を見せるとニヤリとした。「運命の導きってヤツさ」
「おいおい、野生の勘じゃないのかい?」
 笑いながらヴィンセントが、運命(ファトゥーム)の匂いを鼻で嗅ぎ分けたウルフェンを小突く。
「まったく。つくづく似合わん言葉だな」
 魔術師は眼鏡を中指で直すと顔にかかる髪を払い、長衣の裾を引いて体裁を繕った。
「そういうことだったのか‥‥」
「ああ。俺の知っている 雪色花の歌 (シュネーブルーメンリート)だと、話の最後に続きがある」
 ヴィンセントが続ける。
「伝承では剣士が旅に出たところで終わるが、実はそれは闇の眷属との戦いに身を投じたのだとも言われているんだ」

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに

アコット、クレアータの娘

「皆様、お茶が入りましたよ」
 しばし一息いれようかと一行は城館の居間に集まり、暖炉に火を入れお湯を沸かしていたアコットが、五人分の碗を載せた盆を手にやってくる。
 ロボはふと、目つきの悪い魔術師が手に持っている小さな杖のような木の棒に気がついた。走って書斎の中に駆け込んできた時からずっと持っている。意外と慌て者なのだろうか。


「おい、こりゃナンだい」
「ああ、これか」 オルウェンは枝を見せた。
「本の仕分けをしていて見つけたものだ。この枝だけは、何に使うのか私にも見当がつかぬのだ」
「フーん」
 アコットがお茶を卓に置き、ロボが何気なくその木の切れ端に触った時だった。
 さらさらと木の葉が触れ合うような柔らかな音が響き、物憂げな弦の音が城館を包んだ。ロボはその枝がかつては竪琴だったことを悟った。竪琴だけが覚えている二百年前の情景が、旋律の向こうから色彩を帯び始めた。

BLADEofARCANA - 立て、使徒クレアータの娘よ


ボス「さていよいよ冒険も佳境だな。ちなみにここでロボぽんが3通目の遺言状を見つけているのは、フルキフェルの特技《嗅覚》を持っていたからなのだ (´ー`)」
こうさくいん「さすが妄想天眼鏡よりも強いのでしゅね〜(笑)」
ボス「一般技能に組み合わせて使う、各アルカナに揃っている特技のことも触れておかねばならぬな。解説するのだ」
こうさくいん「らじゃーでしゅー。BoAの特技はN◎VAと違って習得数の制限がない代りに、たくさん特技を組み合わせるとペナルティで成功確率が下がって代償も大きくなるという仕組みなのでしゅ。組み合わせる技能や使うタイミングはきっちり明記されているから、N◎VAよりもずいぶん分かりやすいのでしゅよー!」
ボス「TNRRで少し改善されるらしいがな。(ニヤリング) ただBoAは組み合わせ個数に上限がないのでキャラクターに経験点を注ぎこんで能力値が20を越えたドリィ夢の領域に突入し、そんな英雄が何人も乱舞する状態になると、ペナルティーが怖くなくなってイロイロとまずくなるぞ(笑) 夢はほどほどにするのがいいかもしれん。N◎VAでExp200台や300台で発生するユメの領域は、BoAでは100以上くらいで発生する。適当な戦闘能力のある通常使えるキャラクターには、ジツはExpは数十点もあれば十分なのだ」
こうさくいん「N◎VAで見たような名前の特技も沢山あるけど‥‥ファンタジーな名前の特技もあるでしゅね?」
ボス「うむ。フルキフェルの猫人カヴィーナスの《王妃の外套》やコロナの《外套と短剣》などはなかなか面白い名前だな。ちなみに鬼人オウガになると《夜叉》や《羅刹》があって西洋から離れるぞ(笑)」
こうさくいん「でも‥‥添えられてる英語の特技名は時々ナニでアレでしゅね?(>_<)」
ボス「い、言うな。Σ( ̄口 ̄;) い、いつものことだ。い、いやいやいや、あれはBoA世界でワイト人が使っている、英語がモデルのノッティング語かもしれんのだ。(笑) それに探すと中々面白いぞ。不死者フィニスの特技《世界の目》が Eye of The World だったり《闇の闘氣》が Dark Sword になっているお遊びはファンタジーファンなら分かる方もいるだろう(ニヤリング)」



第六章 白き狼の宿命


 頭上には変わらず闇夜の空、そこに光る星の数は今よりもなお少なく。湿原に満ちるは赤い炎、けれども闇の木々はまだ燃え尽きてはおらぬ。
『やっぱり駄目だ、森人の姫さまよ。ありゃあ、闇そのものなんだ。火をつけたぐらいじゃ焼き払えない』
『なあ、やっぱりあの剣士様を呼び戻そうや』
 村人たちは手に鍬を、松明を手に寄り合っていた。闇夜の暗さに重なるように、闇色の蔦がうねり、波打ちながら村に近付いてくる。
 民たちの間から現れたのは、小さな竪琴を抱えた一人の娘。少女のようにも女のようにも見える不思議な娘。銀の滝の如く滑らかに流れ落ちる髪はそれ自体が光を帯び、闇夜の中で彼女だけが輝いているかの如く。その顔は妖精のような儚げな美しさを帯び、忍び寄る闇の力を決然と睨みつける。
『いえ、あの人は村の南側を護っているわ。ここは私が』
『ア、アラベラ様、いったい何をなさるおつもりで??』
『村で一番大きなあの木の力を借りる。長く生きた木は、長い眠りを知るものだから』
 エルフの姫は頭を巡らし、丘の上に立つ古木を見上げた。その背にあるのは、水晶の如く透き通った羽。
『私が行うのは部族に伝わる儀式。時の夜の偉大なる者の力を借りる秘密の儀式。あなたたちは誰も、あの木に近付いては駄目。夜が明けて闇が去った時、あの蔦が消えていたら、闇の鎖は打ち払われたと知りなさい。‥‥少し、時間が掛かるかもしれないけれど』
『は、はい‥‥』
『それから、あの人に伝えてくれないか』
 時を超えたそのはしばみ色の瞳に、束の間憂いがよぎった。
『あなたと再び笑いあえる日を、心待ちにしていると』
 微笑むと、姫は大木の方へ歩き出す。
『姫さま、ご無事で‥‥』
 一陣の風が姫の背を押し、その髪を靡かせる。その表情を隠すように銀色の髪が広がり、その光が‥‥


 それは白昼夢であり、ブランシルトの大地が記憶していた物語であり、雪色花の歌の秘密を求む者たちに託された願いであった。
 全員が同じ幻影を見、そして聖痕者たちの身に刻まれた三つのしるしが一斉に共振を始める。聖痕は互いに引かれ合い、それを持つ者の宿命は時と空間を超えて繋がるのだ。
 アコットは目の前の幻影に強い圧迫感を感じて息を飲み、ロボは首筋のしるしの辺りがちくちくし、鍛えた筋肉がうずき震えるのを感じた。刻まれし者の使命である闇の鎖との戦いが近いのだ。自らの祖先である去っていった剣士が自分に重なり、ウルフェンの若者ははらはらと涙を流しながら目の前の物語を見守った。
 一方ヴィンセントの手袋に隠された左の掌に刻まれた永生者フィニスのしるしからは血が流れ、隠された剣十字(グラディウス・クルクス)の印を形作る。贖罪の騎士は過去の借りに複雑な想いを抱き、拳を握った。かつてもこの闇の種子の姿をとった 闇の鎖 (カテーナ・テネブラーリウス)を追ったことがあり、一足違いで己の剣が間に合わなかったことがあったのだ。
 そして使徒オービスの星座図の如き聖痕の幻を 影絵 (シャッテンビルト)のように背後に纏い、魔術師オルウェンは悟った。エルフの姫君が入った千年の眠りが、今の世からは失われて久しい儀式(リートゥス)を用いた古代の秘儀魔法であろうことを。

BLADEofARCANA - 狼の兄弟


  幻影 (ヴィジオーン)は時の向こうに消え、城館には元の静寂が戻った。心を打たれてしばし立ち尽くしていたレベッカが、ぽつりと呟いた。
「‥‥そう。あの話、父さんから聞いたことがありました」
 学芸院の長衣を着た少女は青い目に驚きの色を浮かべた。
「どうして、どうして今まで忘れていたんだろう」
 まだ幼い頃、父ヨアヒムはよくこのシュネーブルーメ伝説(レゲンデ)の異説を語ってくれたという。悲しみのあまり去って行った剣士はこの地を捨てたわけではなかった。悲しみを抱きながらも、ハイデルランド各地に散らばる闇の眷属との戦いに身を捧げ、闇の秘密とその封印のために眠りについたアラベラ姫を解き放つ方法を探して。お話の最後はどうなるの、闇の怪物を退治できたのとレベッカが聞くと、父は決まって最後までは分からないんだと笑っていたという。
「俺も異説の方の歌を知っている。伝説に出てくる二人はそれぞれの方法で、闇と戦っていたんだよ」
 ヴィンセントが答える。
「ええ。子供のとき‥‥とてもそのお話が好きだったのに‥‥ずっと、忘れていました。不思議ですね‥‥。ロボさんがここに来て、私がそれを思い出すなんて」

白きハルツェンヴォルフ、LOBO

 その胸にわだかまっていた複雑な思いが消え、老魔術師の娘はややあどけなさの残る顔に決意の色を浮かべて進み出た。アコットたちが見守る中で彼女は進み、その前には意外そうな顔のウルフェンの若者がいる。
「ロボさん。あなたを疎んでしまって、申し訳ありませんでした。父の遺産をどうするか、全て、ロボさんの判断に委ねることにもう異存はありません」
「オ、おお」
 突然に頭を下げられ、闇と戦った剣士の遠い子孫はうんうんと頷く。

 続いてレベッカは、黙って見守っていた銀縁眼鏡の青年を振り返った。
「オルウェン様。すみません‥‥」
「いや」 魔術師は静かに頷いた。「疑って当然のことだ」

オルウェン、星の理を知る魔術師
KLINGEvonARKANA - 困難を克服し星々へ


ボス「竪琴の伝える二百年前の幻影、運命に導かれる旅人たち‥‥こ、これでこそファンタジーだな!(´∀`;)」
こうさくいん「くぅ〜やったのでしゅよ〜o(≧▽≦)9゛」
ボス「予想される通りエルフの姫アラベラは自身のアルカナにオービスが入っており、《古代儀式》の特技で現存しない封印の呪文の類を用いたようだ。オトメにしか使えない儀式だったらしく本人も背中に羽根がついているぞよぞよ。さてハイデルランド地方で見ることのあるエルフ(森人)というとたいていヒューリン族なのだが解説せよ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。そのほとんどは銀色の髪に灰色の瞳に木の葉型の耳、すべての口を聞く種族の中でもっとも美しく高貴な種族。優雅で睡眠の必要がなく、不死の寿命を持つもののヒューリンは種族としては滅びに向かっているのでしゅ〜(ぽわ〜ん)
ボス「ちなみにサプリメント『ランド・オブ・ギルティ』で紹介されている星の朋アステエルが上位エルフに当たるぞ。こちらはフルキフェルでなく不死者フィニスのアルカナと特別の因果律“星の朋”を持つことで表現できる。地上の定命の人の子には達することのできない霧の森の奥深く、貴妃レコルデオンの治める星の王国ラウセドオルや銀砂洞レシエンに住んでいるのだ。この辺りのイメージはそのまま指輪物語だな。(ぽわぽわぽわ〜ん)」
こうさくいん「くぅーエルフの代表的な例というとやはりロードスの(ばきゅ〜ん)」
ボス「ええぃ皆まで言うな。ガラドリエル様やアルウェン姫やローラナ姫の名は出てこんのかぁ。BoAのエルフの耳はイラストだとあまり大きくないぞ。しかしイラストによって差があるので何とも言えんがな!(笑)」
こうさくいん「んーじゃあ最近の流行りでイリーナたんの仲間のマウナた(ばきゅ〜ん)」
ボス「ええぃさて銃で思い出したが本作でのオルウェンぽんのように、複数種族の血の混じったキャラクターも存在するのだ。解説せよ」
こうさくいん「(ふっかちゅ) 人間のキャラクターで一般特技の《森の人》を取るか、アルカナにフルキフェルを入れてフルキフェル特技の《人間の血》を取るかでしゅねー。《白鳥人》や《河の人》など他もあるので、やオウガやオークやヴァルフェーたんやザルムの血を引いたPCもいるのでしゅ〜」
ボス「血の混じったキャラクターも割といるようだな。それに英雄が実は〜の血を引いているというのは、伝説ではよくある話だ。ちなみにエルフと人間の間の子は運命によってどちらかに分かたれるので、ルール上はハーフエルフは存在しない。だがしかしキャラクターを立てる要素にもなるので、本作では半エルフという描写が入っているぞよ。あくまで設定上の話だがオルウェンぽんは母方の血が濃いようだ」
こうさくいん「くぅーハーフエルフの例というと。ロードスでスパークとくっつきそうでくっつかないリーフたんや。ナイトブレイカーズのイーシャたんやサティアお母様とかとかでしゅね〜〜o(≧へ≦)9゛」
ボス「Σ( ̄口 ̄;) ええぃなんでまた例が軟弱なのじゃあ。裂け谷(リーヴェンデル)のエルロンド王陛下や《槍の英雄》のタニスを上げんかぁぁ」


 魔術師の遺産相続には決着がつき、石窓の外では太陽も沈みきろうとしていた。星がなく月も欠けているハイデルランドの夜は暗く、日が暮れるのも早い。
「ところで前にも言ったが、俺は運命を繋ぐ因縁ではなく、賞金首を追ってここに来たんだ」
 流した褐色の髪を振り、ヴィンセントは一行を振り返った。
「聞いたことがあるかもしれないね。クラウン金貨五十枚が掛かった“斑の凶手”という腕の立つ奴だ。奴の気配が近い。この村の近くにいるはずだ」

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士

 その時、城館の正面の方から馬のいななく声が聞こえてきた。衛兵たちが帰って来たのだ。しかも足音が多くなっている。
 洒落者の流れの剣士を気取っていた青年の(グリーン)の目に、束の間鋭い光が走った。
「お先に失礼するよ」
 ヴィンセントは身を翻し、裏口の方へ一足早く消えた。

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに


 ロボたち一行はゆっくりと外に出た。幾つもの松明が闇の中に光り、衛兵たちが城館を取り囲んでいる。辺りはすっかり暗くなっており、闇の中に消えたヴィンセントの姿はどこにもなかった。
「そなたたちは何者ぞ!」
 兵の先頭で馬の上から呼ばわった者は、口髭を蓄えた身なりのよい男であった。誰あろう、領主(フュルスト)ヨーゼフである。部下の松明に照らされたその顔はやつれ果て、老いた顔にいっそうの影を落としている。
「オレはロボ、この家はオレの家になる予定だったが、本当にオレの家になった。もう何の問題もないゼ」
 ロボが得意げに胸を張り、不敵に笑う。僧帽(カプーツェ)を取って額の聖痕を露にしたアコットは気丈にも前へ一歩歩み、レベッカを背後に庇ったオルウェンは正しき叡智(ウエルス・サピエンティア)のしるしである真理の守護者の短剣(ドルヒ)を示す。
 衛兵たちの間からどよめきが起こり、松明を持った列がゆらいだ。領主ヨーゼフも途端に態度を変え、逆に誰何されると肩を落とす。
「わ、私とて好きでやっているわけではないわ! 領民を苦しめて喜ぶ領主がどこにおろうか」
 目をそらす領主の瞳は怯え、異様な光を帯びていた。
「じゃがここには、私の部下以外に満足な兵もおらぬ。あの者には逆らえぬのだ‥‥三週間ほど前のことだ。あの者が風のように現れたのだ‥‥」
 二剣を携え、黒と白の髪という異様な風体のその者は自らをラスモーニルと名乗り、奇妙な命をくだした。地下に埋もれる暗黒の蔦をひとつ残らず掘り出し、闇の種子を探す間は、生かしておいてやると。しかも不思議な力を使い、領主と数十人の兵士たちを脅し、直ちに従わせたというのだ。
 圧倒的な恐怖の力によるものか、それともこのラスモーニルという輩も地上に落ちた使徒の欠片をその身に宿しているのか。第四の使徒、暁の子コロナの王冠(クローネ)の聖痕の力を用いればそれも可能だ。そして、聖痕者の定めを知るものならば、そのような悪しき目的には決して用いたりせぬ。

「領主様。だからといって、村の方たちにあのような理不尽な命令を下してよいことにはなりません。疲れ果てて死んでしまう人までいるではありませんか!」
 アコットが悲痛に訴える。
「領主どの」 半エルフの魔術師が冷やかに続けた。
「しかもあの闇の蔦は、死んだ村人を苗代に更に育っているようではありませぬか。それではいずれ、村全体が飲み込まれてしまう」

アコット、クレアータの娘

「あ、あの者には逆らえんのだっ!」 領主の声は震えていた。
「あの者は奇妙な二本の 長 剣 (ラング・シュヴェーアト)を携えていた。私の手練れの衛兵隊が十数人で取り囲んだ時‥‥あの者は子供の戯れのように全員をあしらいおった。そ、その上、ほんの数瞬で全員を切り刻み‥‥あ、あのような剣の使い手は見た事もない」
「オレの知り合いが一足先にもう行ったゼ」
 ロボは言った。「ホントウにそんなに強いのか、確かめてやるよ」
「ふん。ブルーメの伝承の再来を気取るか? 流れの剣士風情にあの者を倒せるはずもない」
 領主は手綱を引き、馬の頭を巡らせた。「あの恐ろしい二刀で一撃だ。お前たちもどうせやられてしまうだろう。‥‥ひ、引き上げるぞ!」
 松明の列が馬に続き、領主一行は去っていった。

白きハルツェンヴォルフ、LOBO

 最後にちらりと振り返る領主ヨーゼフに、ロボはニッと笑い掛けた。
「オレを、二刀で倒せる奴なんてイナイぜ」
 勇猛果敢なウルフェン族の戦士は敵を恐れたりしない。人間にしては長い犬歯が覗き、ロボは不敵な面持ちで拳を握り締めた。その服の下の筋肉が震えていた。戦いのときは近いのだ。

BLADEofARCANA - 狼の兄弟



第七章 闇に歌えば


 ヴィンセント・シアーズは闇の中を進んでいた。村の家の明かりは遠くに退き、古木にほど近い一帯は暗黒に包まれていた。
 星の出ないハイデルランドの夜は深く、暗闇は闇の眷属たちの領域だ。彼らは闇の中で密やかに力を蓄え、そして昼の領域を少しずつ侵しながら、その手を伸ばし続けている。
 だが、闇の中に潜み続けてきたのは騎士団も同じだ。あれからほぼ五百年もの歳月が流れた。バルヴィエステ王国の名門貴族の庶子に生まれ、家を出て修道院(アバーティア)へ、わずか十八で栄えある 聖救世騎士団 (サンクトゥス・グレガレス)へ。その穢れなき信仰と正義を認められ、真教聖地の闇の深奥に秘せられた 聖なる剣の騎士団 (エクイトゥス・グラディウシア・サンクトゥス)へ。秘密の典礼を経て入団し授けられた位は九位(ノーヌス)、裏切りのアルゲンティアと同じ数。そしてまもなく‥‥あの異端審問。内部へと向けられた浄化の炎。
 それから二百年後に騎士団は灰の中からひそやかに蘇り、矛先を変えて再生した。だがその間もずっと彼は秘密の約定を守り続けてきた。殉教者の素顔を仮面(ラールア)の奥に隠し、闇に紛れて闇と戦い続けてきたのだ。

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士

 左の掌の永生者フィニスの聖痕がうずいていた。闇の気配が近い。
 頭上の古木の上で、動くものがあった。その者が発する抑え切れない殺気が、木の下までも漂ってきた。
「クククッ、遅かったではないか、刻まれし者(エングレイヴド)
「そちこそ聖職者や巡察騎士を次々と殺害し、民を恐怖に陥れている“斑の凶手”に相違ないか」
 騎士は静かに呼ばわった。その声はもはや、女給に甘やかな声を掛ける旅の 剣士 (グラディアートル)のものではありえぬ。

「いかにも」
 賞金首はひらりと身を躍らせ、古木のそばに降り立った。その頭巾からはふた房の髪がはらりともれ、白と黒の斑に染め上げた異様な色が露になった。
「私の名はラスモーニル。‥‥よき殺戮の宴を楽しめそうだ」
 聖痕を帯びし者同士が相対し、そのしるしが共振を始める。手袋を外した騎士の左掌の聖痕から不死の体を流れる悔恨の血が溢れ出し、中空へと飛び散った。血が虚空に印をなし、力の剣の使徒アルドールのしるしを形作る。
「我が名は聖グラディウシア騎士団第九位の騎士、ヴィンケンティウス」
 騎士は初めて名乗った。
「真なる神の名によって汝を成敗する」
 沈黙の騎士(エクエス・シレンティウム)は自らの身分を明かしたりはせぬ。明かす例外はただひとつ、アーの御名において必ずや滅ぼす相手に対してのみ。

 その腰から長剣が鞘走り、騎士は血塗れの左手を開いた。聖痕に重なりそこに浮かび上がるのは、血で染まった(エスパーダ)の十字。
 対する賞金首は神速の早さで二振りの長剣を抜き放ち、凄絶な笑みを浮かべた。
「それとも、刻まれし者ども(・・)と言うべきかな」

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに

 果たして、剣の騎士の後方より咆哮と共に駆けてきた人影がいる。走りながらその人影は姿を変えていった。上半身の服が破れ、筋肉が盛りあがり、両の手には鋭い鉤爪を。鬣の如き白い髪は白い体毛へ。悪徳の匂いを撒き散らす殺戮者の元に迫る白い風は、古の魔狼の血を濃く受け継ぐ一体の巨大な 人 狼 (ヴェーアヴォルフ)であった。
 「その無礼な口を黙らせてやるゼ」 ロボは吠えた。
「ヴィンセント、そのマローダーに聖痕を盗らせたりするなよ!」

白きハルツェンヴォルフ、LOBO


「ひとつだけ聞こう。なぜ眠らずの種子を狙う」
 賞金首は間合いを計ってゆっくりと動き、二人もそれに続いた。その 長 剣 (グラディウス・ロングス)をひたと向け、剣十字の騎士が問い掛ける。
「‥‥何故だと? メオティアの森を焼き払い、力なくば信頼や同盟など何の価値もなしと、われら森人に知らしめたのはお前たち人間だぞ!」
 顔を隠していた頭巾がはらりと落ち、賞金首の素顔が明らかになった。伝説的な殺人剣を操る痩身に二刀流の剣士、と禿鷲の巣で手配された男の髪は腰まで伸びていた。編んだ髪に斑の模様、その中から突き出た両の耳は木の葉型。殺戮への渇望に燃える細い瞳は木の実のよう。
森人(エルフ)であったのか‥‥?!」
 ヴィンケンティウスは目を見張った。魂の底まで闇に侵されたエルフの顔は、美しき森の妖精ではなく悪鬼そのものであった。
「確かに、ブルーダーシャフトでもこの闇の中でも同じだった」
 メオティアの森が焼け落ちた日に生を受け、一族を呪いながら闇に堕ちたエルフは笑った。
「この地に眠る我らが先祖は、そんな人間の男などに惑わされてわざわざ闇の眷属を浄化しようとしている。この不眠の種子があれば、人間たちのすべての国を瘴気の沼に変えてくれよう。ハイデルランドの全てが、一面の闇と霧、暗黒の蔦に覆われる! なんとも心踊る光景ではないか!」
 高らかに哄笑し、暗殺剣の使い手はマントを翻した。
「さて今宵の宴は、刻まれざる者から始末しようか」
 次の瞬間、エルフの姿は突如として消えた。

BLADEofARCANA - 狼の兄弟

 それは第十九の使徒、秘密と夜の守護者ルナの聖痕より盗んだ力だった。闇夜に紛れたラスモーニルは煙のように姿を消し、再び現れる。哄笑しながら長剣の片方をかざし、貫かんとする先にあるのは――学芸院の長衣を着た魔術師の少女。
 だが大音響と共に夜気が震え、呪われた長剣の片割れは防がれた。刃が粉々に砕け散り、もはや根元だけになっている。
 使いものにならなくなった剣を見下ろし、ラスモーニルは振り向いた。

オルウェン、星の理を知る魔術師

「同族を撃つことになるとはな‥‥」
 老人の如き灰の髪を長く伸ばした痩身の魔術師であった。射手(シュッツェ)の右手の先にはまだ煙を上げている小さな杖、 “蒼然の鷹” (デュンクラーファルケ)なる謎めいた名を持つ黒ずんだ 雷の杖 (ブリッツェシュトック)が。矢よりも速く鉛の小玉を撃ち出す、錬金術の魔法の筒だ。

 破壊の右手を持つ炎の支配者たる使徒デクストラが加護を与え、魔術師の同じ右の腕に刻まれた聖痕に力を与えたのだ。
「やはり、今宵の宴は刻まれしものから始末するべきか」
 相手が森人の血を引いているのを見てとると、ラスモーニルは燃える瞳を向けた。レベッカは走って逃れると、彼女を庇って立つ半エルフの青年の背後に隠れる。
「貴様はなんだ。森人でありながら人間に与するのか? あの愚かな姫のように人間ごときに義理立てするか? 森人のくせに人間の格好をし、人間の魔術を学び、人間の魔術師どもの手下に成り果てたかッ?」
「いや」 銀縁眼鏡の奥で群青色の瞳が光った。「私はどちらにも属さぬ」

KLINGEvonARKANA - 困難を克服し星々へ


「ええい、魔法をよこせ、不眠の種子よ! アラベラの浄化の眠りなど、打ち破ってみせよ!」
 ラスモーニルが呼ばわると、地面に亀裂が走り、ざわめく暗黒の蔦が現れた。地上の蔦とより集まり、瘴気が濃くなったように黒ずんだそれは、後方から刻まれし者たちを狙う。辺りを見回したロボたちは悟った。蔦が去ってあらわになった茂みの中の人型の塊は――みな領主の手練の部下達の干からびた死体であった。
「ちょうどよい。これはメオティアの逆よ。お前たちはよい余興、炎の中に焼かれていった愚か者たちの役」
 ひとつが刃を失った二振りの長剣を掲げ、斑の凶手は天を仰ぐ。その背後の虚空に異形の幻が現れた。黒い蔦を自身に絡ませ、虚空に吠える忌まわしき骸骨の図。
 星なき夜空に剣を向け、この世の全ての闇に向け、殺戮者(マローダー)は声高らかに呼ばわった。
「捧げよ、聖痕。今宵は、殺戮の宴なり!!」


ボス「さて光あれば常に闇があり、世界の希望の灯火として戦う英雄がいれば、光差さぬ闇夜の象徴として佇む殺戮者がいる。ヘルマンII世の愚断によって滅ぼされたメオティアの森が焼け落ち、エルフたちが散り散りになったその日に運命的な生を受けたこのマローダーの名を語るのだ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。“斑の凶手”ラスモーニルぽんのアルカナはエルス=フルキフェル=グラディウス。闇の種子を使い魔として操るエルフであり、伝説の域まで達した殺人剣の二刀流を操るのでしゅよー。狩り取った聖痕はアダマス、フィニス、アクア、レクス、アングルス、デクストラ、コロナ、ルナ。当たり前とはいえいっぱい持ってるでしゅ〜(ブルブルブル) 自滅的な戦いと殺戮の中にしか喜びを見出せない闇に染まったエルフの剣士なのでしゅ!」
ボス「多くのTRPGセッションではなんだかんだ言って最後は戦闘をするものだし、またGMサイドの演算速度の限界から出せる敵の数には限界があった。BoAではシステム的にもこの解決策を内包したのだ。尊厳値が負の値まで下がったり、何等かの理由で心が闇に囚われた者は殺戮者となり、聖痕者の聖痕を狩り集め、自らの為に蓄えるようになるのだ。ちなみに地方によっては略して麿や麻呂と呼ぶらしいぞ(ニヤリング)」
こうさくいん「くぅ〜英雄たちがそれに立ち向かうのでしゅね〜燃えるクライマックスなのでしゅよ〜o(≧▽≦)9゛」
ボス「それはそれでおおいに結構なのだがこれはこれで時々問題があるのだな。相手が人の限界を超えた敵であり協力せねば倒せぬのは分かっていても、4〜5人でひとりの敵をタコ殴りにするのは我慢できないキャラクターもいよう。それにひとりの敵に5人一斉に名乗りをあげるのは(÷E)時が時々あるぞ(笑)
 また最後の盛り上がりが戦闘で約束されているということは、戦闘以外の要素の登場はアクトでは約束されていない時もあることだ。実際BoAの特技は戦闘用のものばかりだし、成長させる時もふつう戦闘能力を高めるだろう。戦闘ばかりでは飽きるのも早いかもしれん。
 それに例えばSSSシリーズで周知プレイでもする時‥‥途中たいして判定をすることもなく話が勝手に進み、最後に戦闘するだけでやることと言ったらテキトーに煮えた台詞を言うだけ言っとくだけ、というのではうわべだけの(E)が横行するアクトになるぞ。それでは必ずしも英雄の伝説には相応しくないやもしれぬ」
こうさくいん「でもこの物語だと‥‥そんなことないでしゅね?」
ボス「うむ。そこが実に素晴らしいのだ! 登場人物がみなそれぞれ果たすべき役割をわきまえている。ファンタジーの良さは機微なところに宿るものだな(ぽわぽわ〜ん)
 まあこの辺は永遠の問題かもしれんな。そういえば有名NPCの中にも刻まれし者や麿と疑わしき者が何人かいるのう(ニヤリング)」
こうさくいん「ううーガイリングII世やフェリックス・クリューガーは麿でしゅね〜アンセル王子もいつか闇に誘惑されそうでコワイでしゅ〜。アルダたんも麿らしいでしゅよそんなことないでしゅ〜(ブルブルブル)」
ボス「とりわけ危険なのはクリューガー公だな。殺戮者となった時点で一般的には人間の理性は失われ、互いに協力しあったり軍を率いたりと深い考えに基いた闇の力の効率的な利用はできなくなるらしい。しかしクリューガー公率いる 宵闇の騎士 (エクイトゥス・ウェスペール)即ち十三鬼衆は、そのうちの何人かが麿だとも言われているのだ。宵闇に控える騎士が四位、女エルフでありながら公に仕える氷帝パランティアの名は明かされたが、まだ闇の中に潜んでいる者も多く、様々な噂が囁かれているぞ」
こうさくいん「しかも! 噂の一説によると! 12人全員が妹でフェリックスお兄ちゃまの呼び方が違うらしいでしゅよ!(>ω<)」
ボス「ええぃそんな馬鹿な話があってたまるかぁぁΣ( ̄口 ̄;) だいたい騎士が六位、死神の矢のカールが男なのが最近明らかになったぞ。真面目な本文に早く戻るのだぁぁ」


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