雪色花の歌 - ダス・シュネーブルーメンリート
〜シュネーブルーメの歌〜

雪色花の歌】【前編】【中編】【後編】
-花の道案内-
(ルビ式記述により、IE5.0以上を用いた閲覧を推奨するものなり。)



第八章 焔の中の二剣士


 ヴィンケンティウスが動いた。普段より軽快な動きは更に速く、下段に下げられていた長剣は神速をもって斬撃に移る。
 だがラスモーニルも暗殺剣を極めた剣士、両の剣でその刃を受け止め、あるいは軽やかにかわし、ことごとく避けていくではないか。逆に人間の世界で磨いた殺人の技が剣の騎士を襲い、血をほとばしらせた。互いの剣がまた幾筋も交錯する。
「素晴らしい手練だ。嬉しいぞ!」
「それはこちらの台詞だ」
 斑の髪を振り乱し、凄惨に笑うエルフの悪鬼にグラディウシアの騎士(エクエス)は静かに答えた。互いの剣が離れ、再び間を取る。そこへ、一匹の人狼が白い暴風となって突っ込んできた。
「オレの爪を食らえッ!」
 魔狼の血を顕現させたウルフェンの爪は、もはや剣と同等以上の威力を持つ。ロボの咆哮が闇夜を貫き、新たな戦いが始まった。

BLADEofARCANA - 狼の兄弟


 より集まった蔦は膨れ上がり、蠢きながらひとつの生き物のように迫ってくる。さならが獣使いたちの操る使い魔(ファミリア)の如きだった。アコットは巡礼服の下からアーリークロスを取り出し、呼吸を合わせて投げ付ける。月の使徒ルナの加護を受けた盗賊たちがよく使う投擲用の星型の刃である。刃は回転しながら数本の蔦を断ち切っていったが、まだその動きは止まらぬ。
 オルウェンは鉛を撃ち出す薬の量に限りのある 雷の杖 (ブリッツェンシュトック)を降ろし、アクシスの魔術とオービスの秘儀魔法を組み合わせた複雑な呪文の詠唱に入っていた。そこへ、いかなる力なのか蔦の奥底から魔法の矢が撃ち込まれる。
 長衣を飾る精緻な金糸の刺繍の中に埋め込まれた防護の呪文が力を発し、その勢いを削いだ。辛うじて踏み留まった脆弱な魔術師は膝をついて呪文を失念し、驚いたように不眠の種子の蔦を見据えた。後ろで縛った長い髪が揺れる。名付けの道化師、使徒ファンタスマの加護を受けた幻術師の用いる魔法の技を、この殺戮者ラスモーニルの使い魔とおぼしき闇の蔦は使ってくるのだ。

BLADEofARCANA - 立て、使徒クレアータの娘よ


 一撃必殺のウルフェンの爪を、森人の殺戮者は辛うじて避けた。周りの蔦を始めとする全ての植物が彼の味方をしているかのように、ロボの足を阻み、蔦に掴まり宙返りして飛びすさるラスモーニルを助けるのだ。
 殺戮者は攻勢に転じ、ブルーダーシャフトで極めた暗殺剣が閃いた。その剣はあまりに疾く、光すら出さずにロボを執拗に狙う。人間よりも遥かに優れたウルフェンの感覚をも騙す斬撃。
 だが、力を込めたロボの筋肉が鎧となり、咄嗟に取った構えが刃をそらす助けとなり、致命的な剣を弾いた。闇雲に神に頼るだけが真教の教えではない。真教修練派では内なる精神と肉体の鍛錬こそが魂の浄化につながると教え、かつて竜を倒したと言われる長老ワルターの元で多くの弟子たちが修行に励んでいる。生まれた部族を出たロボはこの道場で、ウルフェンの剛力に調和と統一をもたらす格闘術を学んでいるのだ。
 そこへヴィンケンティウスが斬り込んできた。幾筋もの傷から流れる(サングイウス)を怒りに変え、笑みさえ浮かびながら肉薄する。防御をまるで考えぬ捨て身の攻撃の連続に、殺戮者は聖痕の力を借りた。その斑の髪の右の房の中に光が生じ、現れた強い輝きが剣の騎士(エクエス・グラディウス)の斬撃を弾く。輝きは砕けた(スクトゥム)の形、第七の使徒、不破の盾のアダマスのしもべから盗んだ聖痕の力。何処かの高潔な騎士より奪ったしるしであろうか。

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに


 アコットは徐々に近付いて来る蔦の塊に向かって一歩踏み出し、いつも持ち歩いている杖をゆっくりと構えた。聖地巡礼者が長旅に携える杖にも見えなくないが、鞘の如く抜き放たれたその中に光るのは仕込まれた細い刃。夜を司るルナの加護を受けた盗賊(ロイバー)たちが好む変種の武器だ。扱いに慣れた者が操れば、仕込み杖も剣並みの力を発揮する。
 杖を手に間合いを窺った時、その背後での詠唱が止んだ。たびたび遮られていた魔術師オルウェンの呪文がようやく完成したのだ。
 その時、星のない夜の戦いであった辺り一体が不思議な光に満ちた。アコットは息を飲んで立ち止まり、蔦の塊も異変に気付いたかのようにざわめくのを止めている。

アコット、クレアータの娘

 アコット自身の体が光っていた。杖を構える手の甲が。秘密と夜の守護者ルナの聖痕がはっきりと形を取っている。そして目許に感じる光は‥‥ずっと変わった痣だと思っていた額の未完の使徒クレアータのしるしなのだろう。そして恐らくは、薄青の髪の中に宿る風の伝令ウェントスの聖痕も同じく。
「こ、これは‥‥?!」

 振り返った時、半エルフの青年の体もまた光を発していた。(ファルケ)の紋様の刻まれた奇妙な筒を持つ破壊の右手が光り、そしてその創造の左手もまた。
 複雑な魔法を紡ぎ出す繊細な指先が、知の守護者アクシスの光がその爪に宿り、秘密の門の保持者オービスの光がその掌で対になっている。その後ろで少女レベッカも不思議な光景に呆然としていた。

オルウェン、星の理を知る魔術師

 アコットはそれがオルウェンの用いた不思議な魔法の力であることを悟った。魔術師が唱えたのは世界でも操り手の少ない秘儀魔法、旅芸人たちが使う占い札の節制の札で象徴される呪文だった。
 目を転ずれば死闘を続ける戦士たちも同じ。人狼と化して咆哮を上げるロボからも三つの光が組となり、長剣を構え直すヴィンセントも同様に輝きに包まれているではないか。

「オルウェン様、これは、もしや‥‥?」
「アコット。よく見ておけ」 魔術師(マーギア)は厳かに言った。
「聖痕者の体に刻まれたしるしの数は三。数秘学における完成を表す三、そして過去、現在、未来を表す三だ。魂の器の限界を越え、さらに星の欠片を身に纏う時、人は闇に捕らわれ、殺戮者と呼ばれるのだ」
 そして見よ、二者が立ち向かう先で殺戮の喜びに身を震わす悪鬼の姿を。腰まで伸びた斑の髪の両の房の内が光に満ちている。三はおろか、十にもならんとする光がそこにあり、交じり合って強い輝きを放っているではないか。
 不思議な光景であった。上古の昔に夜空に満ちていたという星座(ステルンビルト)が地にひととき蘇り、闇を放逐したかのようだった。
「味な真似をするじゃないか。お前たちの聖痕も狩ってやる。お前たちは狩られに来たのだからな!」
 特徴的な形を持つ十数個ものしるしが重なり合い、聖痕の盗人の頭上に幻を創り出していた。
「いや」 ヴィンセントが長剣を向け、静かに遮った。「我々は闇の鎖を狩りに来たのだ」

KLINGEvonARKANA - 困難を克服し星々へ


 気合も新たに人狼の戦士と剣十字の騎士は難敵に挑みかかった。蔦を利用してひらりひらりと身軽にかわし、着実に二人の体の傷を増やしてゆくラスモーニルの体を、遂にロボの鉤爪が捕らえる。
「こいつ、脆イぞ!」
 エルフの殺戮者は痛みの声をあげてのけぞった。確かな手応えを感じてロボは吠えた。所詮森人は脆弱な種族、頑丈さにかけてはウルフェンには敵わぬ。
 好機と見たヴィンケンティウスが攻勢に転じた。変幻自在のラスモーニルの両手の剣を払い、一瞬の間を突いて切っ先を前へ。騎士(エクエス)(ウィルデ)の瞳は永生者の瞳、五百年もの間多くの戦いを見てきた瞳。惑わしの技はそうは効かぬ。
 力強い斬撃が悪鬼の首を断ち切った。怒りのこもった一撃は勢い余り、ラスモーニルの首を後方へと跳ね飛ばす。斑の髪が尾を引くように頭を追った。

 だが――おお神よ、伸びた蔦がその首を空中で受け止め、悪鬼の生首は騎士に向かって高らかに笑い掛けたではないか。首を失った悪鬼の体が倒れるより早く蔦がそれを支え、首を元にあった場所に戻す。首を断ち切った傷はすばやく消えた。その斑の髪から洩れた光は、何処の賢者からか奪った永久の観察者フィニスの聖痕の力であったか。
「大した腕だな、私の首を落とすとは!」
「凄まじい生命力だ‥‥」
 剣の騎士は垂れてきた血をぬぐい、強大な闇の力を纏ったエルフの悪鬼を厳しい顔で見やった。

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに


 幻の矢がアコットを狙い、伸びてきた蔦が小柄な体を狙う。仕込み杖で受けきれずに傷を負った彼女は刃を向け、天に願った。もしこの額のしるしが痣ではなく、使徒の恩寵を示すものならば、今こそその加護を与えてくださいと。

アコット、クレアータの娘

 果たして、聖痕の秘密を知ったばかりの少女の願いは果たされた。未完の使徒クレアータのしるしが輝き出し、錬金術(アルヒミー)で生を受けた娘に力を与える。巡礼風のマントを払い、アコットは疾った。全ての口を聞く種族を大地に繋ぎ止める大鎖から解き放たれ、蔦よりも速く、枝を離れた枯葉が地に舞い落ちるよりも速く、何よりも速く。

 止まった時の中を疾り、仕込み杖の刃が縦横に舞った。ひどくゆっくりと動く蔦を刹那のうちに寸断し、黒ずんだ茂みの核を神速の速さで両断する。限界を超えた動きに自らの体が発する痛みに気付き、膝を折ったアコットの回りで時がふたたび動き出した時、回りにはばらばらに千切れた蔦が散らばっていた。もう何も動いていない。
 と、いかなる力か聖痕によるものか、芯とおぼしき黒い塊が再び動き出そうとしていた。身構える彼女の頭上を火矢のごとき炎の塊が飛び、闇の蔦に火をつける。途端に青白い焔が燃え上がった。すぐに火は燃え広がり、蔦の残骸もすべてが火の中に包まれた。
 振り返ったアコットはオルウェンと目が合い、理解した。魔術師の右の手にあった 雷の杖 (ブリッツェシュトック)が不思議な青白い 魔 焔 (マーギッシェフラメ)に包まれ、その左の手の爪の先でも残り炎がちろちろと燃えている。物品に魔法の力を与えるアクシスの術を使い、その炎の残りを直接撃ち出したのだ。
 クレアータの娘と半エルフの魔術師は頷き合い、闇の蔦の主の方を見やった。闇との戦いはまだ続いていた。

BLADEofARCANA - 立て、使徒クレアータの娘よ

 青白い魔焔を火種とした炎はやがて普通の赤い色となって燃え広がり、闇の蔦を巻き込んでいった。
「予言ドオリだ!」
 夢の中の光景に似た有様にロボは吠え、裁きの使徒レクスに加護を請い、この地で眠っているのであろうエルフの姫アラベラの助けを願った。

白きハルツェンヴォルフ、LOBO


 白き人狼の願いは聞き届けられた。剛毛に覆われたその手の甲の天秤の如き聖痕が輝き、異変が生じる。それまでラスモーニルを助けていた不眠の種子の蔦の動きが止まった。そして、足元の草が伸び出し、殺戮者の両の脚に絡みつくではないか。
「森が私を邪魔するか?」
「腹がガラ空きだゼ!」
 ロボが飛び掛かり、鉤爪と長剣が幾筋か舞い、幾つかの聖痕が光り輝いた。血を流したロボが飛び退り、戒めから逃れたエルフの殺戮者も退いた。草から逃れるのに用いたのは、何処かの穢れなき娘から奪い去った希望の御子アングルスの聖痕の力であろうか。
 だがなおも飛び掛かろうとする人狼の戦士を押しとどめ、剣の騎士が前に出た。軽い革の(アルマ)しか着ていないヴィンケンティウスの体は傷付き、どくどくと血が流れている。だが流れる血がどれほど自らの力を奪おうと、どれほど体が痛もうと、騎士ヴィンケンティウスは気にも止めていなかった。むしろその傷が彼に力を与えていた。溢れる怒りが力となり、流れた悔恨の血が暗い闘氣となり、剣士の仮面を被った殉教者の体を、その長剣を覆っていた。

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士

 第九位の騎士(エクエス・ノーヌス)ヴィンケンティウスは本来死すべきであったのだ。五百年前のあの夜、唯一神の御名を称えながら同志たちが灰と化していったあの夜に。生きながら焼かれていった彼らの無念を晴らすには、ただ闇と戦い続けるしかなかった。
 刃の欠けた二振りの長剣が踊り、古めかしい騎士の剣がその中に打ち込まれる。不死者の目で軌跡を読み、ヴィンケンティウスは刃の中に身を投じた。受け切れない刃が自らを深く傷付けるのも厭わず、殺戮者の体を狙う。

「なんだと?」
「闇の鎖を打ち砕くならば、我が命、何度捧げても惜しくはないッ」
 燃え上がる剣の娘アルドール、死の仮面グラディウス、ふたつの聖痕が共に力を与えた。闇の闘氣を纏った 長 剣 (グラディウス・ロングス)は殺戮者ラスモーニルの胸を深々と貫き、背中まで刺し通した。エルフの悪鬼はゆっくりと倒れてゆき、それに重なるように殉教者ヴィンケンティウスも倒れていった。

GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに


こうさくいん「終わったでしゅね‥‥(゚o゚)」
ボス「うむ。実プレイでは5ラウンドに渡る闇との戦いであった。それぞれの基本的な戦い方は定まっていたゆえ解説せよ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。ロボぽんは人狼形態に変身した後《獣爪》の鉤爪でSダメージ、《魔狼》でクリティカル値を上げてアクアの特技も入れて格闘攻撃。2ndアクションでももう一回攻撃可能でしゅー。
 ヴィンケンティウス様は《風乗り》で行動順のAPを上げ、《変移抜刀》《修羅》で神速の剣で攻撃しつつフィニスの《弱点看破》でクリティカル値とダメージを補強。《暴走》で2ndアクションも可能、最後の方は《闇の闘氣》を纏ってアーマー無視、アルドールの《憤怒》も入れて受けた傷の分を全部ダメージに乗せて返すという捨て身の攻撃でしゅ〜(ガクガク)」
ボス「《憤怒》はアルドールな麿がよく使ってくる技だな。アコット殿はルナの特技を重ねて射撃の後は仕込み杖を抜いてエンゲージ、クレアータの∵奇跡∵を使って連続攻撃で使い魔の闇の種子を撃退。オルウェンぽんは魔術の《魔法付与》と《火炎》を組み合わせたり直接攻撃や秘儀魔法の《節制》、魔術の《高速詠唱》で2ndアクションも可能というカンジだったな。
 BoAはダイスゲームゆえ予想外のことも起こるし必要な戦闘ラウンドも増える。だいたい2カット目で互いに本気を出して終わるN◎VAに慣れた方には新鮮であろう。この物語ではラスモーニルぽんの運の良さが際立っていたぞ。対して不運なオルウェンぽんは魔法の詠唱に失敗しまくっていたな。なっはっはっは!」
こうさくいん「ううーそしてラスモーニルぽんはロングソードで《二刀流》《修羅》《無明剣》《コンビネーション》。リアクションは《裏切りの代価》《木霊》で周りの蔦が助けてくれるしクリティカル回避が多かったのでしゅ。(ブルブル) 《盟友》で強くなった闇の種子は蔦なのにファンタスマで《幻撃》や《幻像》を使ってくるのでしゅ〜」
ボス「PCの経験点が全員作りたて〜数十点だった今回の物語では仕方のないことだな。敵味方双方がクリティカルを連発して戦闘が膠着するというのは、高経験点アクトではよく見られる現象だ。その為、2ndからはリアクションのクリティカル値にペナルティーを与える特技が増えているのだ。さて後は飛び交っている奇跡もあったな」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。レベッカたんを狙った∵不可知∵からの攻撃はオルウェンぽんの∵爆破∵が阻止。ラスモーニルぽんは猛攻をアダマスの∵絶対防御∵やフィニスの∵不死∵で食い止め。アコットたんが∵戦鬼∵で仕留めたファミリアはエルスの∵心友∵で復活するも火炎で燃えて終わり。ラスぽんの∵因果応報∵はロボぽんの∵因果応報∵で4倍返しになって終わり、ロボぽんがレクスの∵呪縛∵で敵の回避を封じたのがアングルスの∵天真∵で脱出され、最後はヴィンケンティウス様が《憤怒》《闇の闘氣》《弱点看破》《変位抜刀》《修羅》に∵絶対攻撃∵と∵死神の手∵を重ねたのでしゅ。ダメージ+10d10したらアーマー無視のRダメージで79点行ったでしゅ。煮えすぎのイキモノでしゅよ〜(ガクガクガク)」
ボス「作りたてで平均的なPCのHPが20点前後だからな。この辺の大味というかなんというかを奇跡でなんとかしろというのはN◎VAと同じだ。神業が1対1の対応で打ち消し合って終わるのに対し、奇跡は連鎖するのがややこしいな。時にはスムーズなアクト進行の阻害になることもあろう。奇跡の解釈その他の論争は財団の求むる所ではないのでどこか遠い所でやるがよいぞよぞよ(笑)」
こうさくいん「ラスモーニルぽんの最後の奇跡は実は∵爆破∵。ロボぽんの∵模造∵が∵天真∵をコピーして打ち消し。ロボぽんのドリー夢ではアラベラ姫と祖先の愛の絆が奇跡を呼んだことになっているのでしゅ。ドリーマーオオカミでしゅよ〜o(≧▽≦)9゛」
ボス「そして聖痕の解放が起こる。地に堕ちた星が天に帰る時、奇跡の宝珠は一際強く光り輝くのだ」



第九章 受け継ぎしもの


「ゲハァッ! ‥‥の、呪われろ! 身勝手な人間どもォッ!!」
 刃が背中を抜け、地面に縫いつけられた殺戮者はまだしばし動いていた。血の染みが池のように広がり、口からも血の塊を吐き、のたうちながら、震える手で村の方向を指し示す。赤く染め上げられた斑の髪の中で光ったのは、何処かの聖痕者からか奪った最後の聖痕。
 地面を突き破り、不眠の種子の黒い蔦が一斉に飛び出した。土を飛び散らせ、かつてない勢いで伸び上がると鎌首をもたげた蛇のように村の方角を向く。
「させルカっ!」
 ロボは吠え、飛び掛かった。人狼特有の剛力で蔦を切り裂き、ばらばらに食い千切る。
 そしてロボの長い舌に刻まれた生命の始祖、全ての口を聞く種族を守る使徒フルキフェルの聖痕が力を発した。どこか苦悶の声を発していただけに見えた古木が、突如燃え上がったのだ。炎は全ての闇の蔦を巻き込み、一層高く燃え上がる。闇の眷属は灰と化していった。

白きハルツェンヴォルフ、LOBO

 ブランシルトを救った英雄の遠い子孫は思った。長い眠りについたままのアラベラ姫と自分の祖先との絆が、奇跡を起こしたのだと。
 ロボは目を凝らした。炎に包まれていく大木の梢に人影が見えた。
 銀の滝の如く滑らかに流れる髪、少女のようにも女のようにも見える、不思議な儚げな美しさを持った娘。
 梢に寄り添い、その娘はじっと自分が愛した男の遠い子孫を見つめていた。その榛色の瞳には涙が流れていた。その唇が動いた。

「輪廻の輪の果てに、また、再び‥‥」

 ロボは笑った。こうして子孫の自分がこの地を再び訪れることができた。自分を守ってきてくれた祖先の魂はここで、彼女と眠ることができるのだ。だから自分は、自らの現在と未来の為に進んでゆくのだ。

BLADEofARCANA - 狼の兄弟


 鷹の紋様の刻まれた黒い筒に左の手を当て、魔術の言葉を呟く。筒を覆っていた青白い 魔 焔 (マーギッシェフラメ)は消え、後には空の城伯領で造られたともいう古ぼけた 雷の杖 (ブリッツェシュトック)が残った。
「オルウェン様、早く」 仰天の光景の連続に目を奪われていたレベッカが袖を引き、先を促す。
「ああ。ゆくぞ、アコット」
 仕込み杖を支えにクレアータの娘が無事に立ち上がったのを見て取ると、魔術師は長衣を翻した。闇の蔦は浄化の炎の中で全てが燃え尽き、そして古木を始めとした木々も火に包まれている。人家がなかったのが救いか。
 三人がようやく火の輪から逃げ出し、丘を降りて振り返った時。炎の中でひときわ強い光が発せられた。

「アコット、見よ」 魔術師の銀縁の 眼 鏡 (アウゲングラース)に、光の中から昇ってゆくものが映った。
「地に堕ちた星が天に帰ってゆく」
 オルウェンは眼鏡を直して夜空を見上げ、横のレベッカは不可思議な光景に息を飲み、アコットは紫の瞳に初めて映る聖痕の解放を魅入られたように見つめた。

オルウェン、星の理を知る魔術師

 闇に囚われたエルフの殺戮者のものであろう。光の中から生まれた星の数は十とひとつ。悪鬼ラスモーニルがかつてはその身に宿していた星、そして誰よりか奪い、蓄えたものを加えた十一の聖痕だった。そのひとつひとつは宝石(エーデルシュタイン)のように輝き、聖痕独特の紋様を幻影(ヴィジオーン)のように纏い、戯れるように互いの周りを舞い、ふわりと広がりながら闇の夜空へ散ってゆく。
 聖痕者の命の灯火が消えた時、その聖痕は天へ還る。魔術師オルウェンは理解していた。天に昇っていった聖痕はヴィンセント・シアーズのものではなかった。あの狂的な戦い振りを見せた剣士は死んではおらぬ。どこかで生き延びているのだ。

アコット、クレアータの娘

 誘いに応えるように、アコットの青く美しい髪が輝き出した。伝令者の使徒、風のさまよい人ウェントスの聖痕がひとりでに離れ、昇ってゆく星々の仲間となった。それと入れ替わるように、星のひとつが仲間たちの元を離れ、地に戻ってくる。星は強い光となってアコットの白い肌を照らし、彼女を包み、その身にふたたびしるしとして宿った。

 裏切りに遭い、ただ風のように逃げ回っているだけだったクレアータの娘はもういない。聖痕の秘密とその使命を知ったアコットは、これから自らの意志で進んでゆくのだ。

BLADEofARCANA - 立て、使徒クレアータの娘よ


 全てが炎に包まれていた。不眠の種子は既に灰と化し、乾燥した木々がぱちぱちと音を立てて爆ぜている。
 ヴィンケンティウスは立ち上がった。使徒フィニスの恩寵により刀傷は傷口を閉じ、血がこびりついているだけだった。剣士を包む炎も、その体を傷付けることはない。
 永生者は死なない。年を取ることもなく病に伏せることもなく、長い人生の末に神に召されることもない。毒の類いも効かず、剣や矢の突然の暴力によってしか命を損なわれることはない。そして時の車輪から切り離された彼らは転生することがなく、ただ世の移ろいを見つめてゆくことしかできないのだ。

 殺戮者の体も炎に包まれ、灰と化そうとしていた。五百年前のあの火刑台の夜と同じ、燃え盛る(フラマ)
「また、憎しみから人を斬ったな‥‥」
 死体から自分の長剣を引き抜くと、贖罪の騎士は身を翻し、炎の中を去っていった。

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士
GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに



終章一 狼の帰郷


 古木のあった丘は焼け落ちてしまったものの、村人を苦しめていた闇の蔦は翌朝には忽然と姿を消していた。瘴気も晴れ、穏やかな冬晴れの空が広がっている。村人たちは互いに喜び合い、旅人たちに礼を言うと、もうすぐやってくる(フリューリング)を待った。
 そして、故ヨアヒムの城館。伝説が正しいことを証明した老魔術師の遺産が譲り渡されそうとしている。魔術師見習いの少女は、狼の一族の戦士に書庫の目録を差し出した。
「ではロボさん、この家はもうあなたのものです。どうぞ御自由に‥‥」
「いや。オレは家はイラないよ」
 頭をかきながらロボはぶっきらぼうに答えた。
「ええ? し、しかし、アラベラ姫はきっと、剣士の子孫であるロボさんにそばにいてくれた方が‥‥」
「あれは、もう昔の人だ。縛らレルな」
 ウルフェンの若者は意外そうな顔で自分を見ている面々の顔を見渡した。はっと自分を見つめ返しているアコット、その横で蒼い目を丸くしているレベッカ。オルウェンはさほど驚いた様子もなく成り行きを見守っている。
 ふと一行に二百年前の幻影を見せた竪琴の欠片を思い出し、ロボは手に取ってみた。枝は黒ずみ、もう炭のようになっている。
「そうだ。この木だけは、もらっていくゾ」
 ロボは目つきの悪い魔術師の方を見た。オルウェンが頷く。この魔術師が仕分けした本をしばらく借りる約束をどうやって取り付けようかと考えあぐねていたことはロボは知らないし、オルウェンもそんなことはおくびにも出さない。
 ロボはひょいと枝を放り上げてからもう一度掴むと、元より少ない荷物をまとめ始めた。
「‥‥オルウェン様、いいんでしょうか‥‥?」
 荷造りを眺めながら、そっと寄って来たレベッカが小さな声でささやく。
「ああ。あの古木に現れたいにしえのエルフの姫は、確かにロボに頷いていた」
 粗野なウルフェンに頼みごとをする必要がなくなった天慧院の魔術師は、そんなことは少しも表に出さずに答えた。
「だから、彼の意のままにさせるのがよかろう」
「そ、そうですか‥‥。そうですね、姫の願い通りにするのが、いいですよね」

白きハルツェンヴォルフ、LOBO

 やがて、荷物を肩に引っ掛けたロボは竪琴の枝を掴むと戸口に向かった。あの戦いで変身した時に破れてしまったため、服も継ぎはぎだらけのままだ。
「だいタイ、こんな田舎に家なんかいらねえ」
 たてがみのような白い髪を持つウルフェンの若者は扉のところで振り返り、長い犬歯を見せてニッと笑った。
「じゃあな。またどっかで会オウぜ」


 かくてウルフェン族の聖痕者ロボはふたたび旅に出た。元よりウルフェンは流浪の種族、ひとところに留まり屋敷に落ちつくなど似合わぬ。
 真教の聖書の原典となった天宮語の『真書』(ゲネトリオス)祭儀記の記述では全ての浄化が成され、全ての使徒が天に帰る来たるべき祝福された神の王国に、ウルフェンの席はないとも言われている。
だが救いはあるかもしれないのだ、ロボのような星々の欠片を宿した獣人の戦士たちが、この世の光の為に戦い続けているのだから。
 春を待つブランシルトの村を離れ、ロボは気ままな旅に出た。その行く手にあるものは、いずれ天が示してくれることだろう。

BLADEofARCANA - 狼の兄弟



終章二 明かされた謎の印形


 遺産相続は済み、クレアータの娘に託された老師の願いは果たされた。そしてそれは、薄青の髪の彩る額に一際目立つしるしを持つ彼女自身を知る旅でもあった。
「私に刻まれた聖痕(スティグマ)には、意味があるのでしょうか」
 様々な本や触媒の類いの並ぶ書庫で、アコットは問い掛ける。
「ちょうどよい」 痩身の魔術師は机の上に並べられた本の一冊を取り上げ、頁をめくると娘に示した。未だ研究途上の段階にある、聖痕に込められた力自体を操る秘儀魔法の書だ。特徴的な二十二の聖痕の紋様が描かれ、それらが地上を闇から守り砕け散った二十二の使徒の力の象徴であり、それぞれに意味と大きな力が込められていることを、アコットは知った。
「使徒クレアータとは、いかなる方なのですか?」
「ほう。第三の使徒、未完のクレアータの話を望むか」
 魔術師(マーギア)は微笑み、中指で眼鏡を直す。灰色(グラウ)の髪の陰でその銀の縁がきらりと光った。「少し、長くなるぞ」
 アコットは薄紫(ヴィオレット)の瞳に期待の色を込めて続きを待ち、その横のレベッカは蒼氷色(アイスブラウ)の瞳にもうひとつ何かを訴えながらオルウェンを見上げていた。
 心配そうな視線にはっと気付いた魔術師は付け加えた。
「‥‥いや、これから旅立つ者に長い立ち話をするべきでもないな」
 旅に出るアコットが持ち歩けそうな小さな本を見つけてくると、オルウェンは中を示しながら簡単に説明した。クレアータは未完ゆえに生者にはない力を持った使徒であったこと。アコットが発揮した時が止まるほどの疾い動きも、聖痕の力によるものであること。抜けるような(ヴァイス)の肌と薄青(ヘレスブラウ)の髪を持つ彼女は、自分は歯車で動く自動人形(マリオネッテ)やホムンクルスを創るのと同じ、錬金術(アルヒミー)の秘術によって生み出されたことをようやく知った。そしてその中でも極めて優秀な、人間と寸分違わぬほどの完璧な個体であることを。
「アコットさん。父はきっと、娘が欲しかったのかもしれません」
 レベッカがそっと言った。
「私は父が道を諦めて村に帰ってしまったことが悔しくて、ずっと、父が故郷で何をやっているのか目もくれずにいました。今、後悔していますけど。そんな中でアコットさんに会った父は、そんな私には託せない願いを、アコットさんに託したんだと思います。だから、主の御許できっと満足しているはずです。ずっと――ここにいても良いんですよ? 都の私の家だって」

「お言葉はありがたいのですけれど‥‥」
 アコットは答えた。
「わたしは旅に出ます。エリックを探しに」
 エステルランドの夜の世界を統べる盗賊結社ブルーダーシャフトは彼女を駒に使い、そして捨てた。自らを知った今、彼女はそれを確かめねばならない。そして失われた記憶の向こうに隠された、自らの出自を確かめねばならない。

アコット、クレアータの娘

 青い髪のクレアータは瞳に憂いの色を滲ませて呟いた。
「‥‥わたしが“刻まれた者(エングレイヴド)”だから、人間ではないから、あの人はわたしを見捨てたのでしょうか‥‥?」
 魔術師の師弟はきっとそうではないこと、それは自分で探すべきであることを諭すのであった。


 やがて、アコットは別れを告げて旅に出た。抜けるような白い肌に額の聖痕、薄青い髪という目立ちすぎる外見を巡礼者(ヴァルハーラ)風の外套の中に隠し、仕込み杖を手に、聖地を巡る娘のような出で立ちで村を後にする。川辺には早咲きの雪色花(シュネーブルーメ)が幾つかつぼみを開いていた。
 その髪に宿っていたさまよい人の聖痕はもはやなく、彼女が帯びるのは別の星の力だ。とらえどころなく逃げてゆく風ではなく、自らの脚で運命に向かい歩んでゆく力を。彼女がいかなるさだめにあるのかは、いつかまた天が示してくれることだろう。
 

BLADEofARCANA - 立て、使徒クレアータの娘よ



終章三 魔道士の務め


 遺産相続者も立会人も去り、ヨアヒムの城館には半エルフの魔術師と魔術師見習いの少女だけが残った。様々な知識を蓄えた本の並ぶ書庫は静かに、二人に秘密が明かされるのを待っている。
「さて、これからどうするつもりだ?」 オルウェンが尋ねる。「この屋敷を継ぐのか、それともひとまず王都に戻るのか」
「もちろん戻ります!」 レベッカは強い決意を込めて答えた。
「今の勉強を続けたいし、いつか天慧院に入れた時に、父の墓に報告したいのです」
「そうだな。君には学ぶべきことも多かろう」

オルウェン、星の理を知る魔術師

 中指で眼鏡を直した魔術師(マーギア)は微笑み、手をさっと振った。
 「丁度よい。こんなこともあるかと、父上殿の蔵書からめぼしいものを仕分けしておいた」
 繊細な指先が示すのは、机の上に整然と並べられた本の山である。ウルフェンの若者が相続を辞退したことはさておき、特に魔術に重要な本がそこに並んでいた。

「は、はい‥‥」 レベッカは蒼氷の瞳をぱちくりした。「で、でも‥‥こんなに沢山ですか?」
「ああ、安心いたせ。ここからはこちらは私の分だ」
 オルウェンは古代の秘儀魔法の資料を積み上げた一角を示した。そこで思い出したように、急いで付け加える。「しばらく借り受けたいのだが、よいかな」
「え、ええ、もちろん、よろしいですけど‥‥」 レベッカは再び目をぱちくりした。
「それからこちらは、天慧院へ運ぶ分」
 銀縁眼鏡の青年は、続いて別の一角を示した。故ヨアヒムが丁寧に背表紙を付けた本が積みあがっている。
「中には妖魔の危険な召喚術の写本の類いも混じっている。安全のためにも、王都の支部で保管してもらったほうがよかろう」
「はい、お願いします」 少女は顔をほころばせた。
「父は結局天慧院にも入れませんでしたが、自分が集めた書物が天慧院に蔵書として収められるなら‥‥きっと、アーの御許で喜んでいるでしょう」
「そうだな」 老人のような灰色の髪をした青年は頷いた。
「父上殿が集められたこの地方の物語集には、魔神とおぼしき闇の眷属や様々な怪物、妖魔の類いの情報が多数含まれているようなのだ。解析すれば大いに役に立つことだろう」
 老師の願いは形を変えて果たされた。二人の魔術師は互いに微笑みあい、そしてどうやって本の山を王都フェルゲンまで運んでいったものかと思案を始めるのであった。

KLINGEvonARKANA - 困難を克服し星々へ



終章四 春に歌えば


 ブランシルトの村から冬が去っていった。川辺には雪色花の凛とした純白の花が開き出し、春が近いことを告げる。もっと山に近い川上では、残り雪の中からつつましくも力強くその顔を覗かせるのだろう。
 村の中にも花は咲き乱れ、その中を子供たちが遊んでいた。暖かくなった大地の上を男の子たちが駆け回り、娘たちが花輪を造っている。
「森人なんてみんな悪者だーい」
「ずるいぞ、お前が今度は悪者の番だ!」
「あ、にいちゃんだ!」
 そこへやってきたのは剣を佩いた青年である。涼やかな瞳は(グリーン)、流した褐色(フルウス)の長髪はマテラ人の血によるもの。
「にいちゃんが、あの悪い森の妖精を倒してくれたんだね?」
「もう一人で行っても平気なんだ!」
「ハハ、違うよ」 ヴィンセント・シアーズは屈み、駆けて来た子供を大きく抱き上げた。
皆が集まってきたところで、旅の楽士は雪色花の歌を歌った。そして最後に付け加える。旅立っていった剣士の子孫は狼の友達であったこと、彼らの頑張りで闇は放逐されたことを。
 子供たちは半分しか意味も分からなかったが、神妙に聞いていた。

「お兄ちゃん、この花、もう枯れちゃったの」
 教会ごっこをしていたのか、半分まで花輪を作っていた少女が悲しそうな顔でやってくる。その小さな手の上にはしおれた花が載っていた。
「大丈夫だよ。花は枯れても、また必ずよみがえる」
 旅の剣士ヴィンセントは微笑んだ。
「この花も、来年また咲くとよいな」

ヴィンセント、剣の騎士にして仮面の剣士
GLADIUS ARCANA - 主は汝とともに



雪色花の歌


 結局村から馬車を借り受けられることになり、私とレベッカは痛まないように仕舞った本の上に毛布を掛けて荷造りした。村人たちに別れを告げてブランシルトを後にする。
 ご丁寧なことに、領主ヨーゼフ殿まで見送りに来ていた。あの日の夕とは打って変わって丁寧な口調で、静養にはぜひ当地をなどと調子のよいことを言ってくる。荷が多いのを探られても癪なので私は適当に答え、その場を辞した。塔の中にこもって際限のない議論を繰り返している御老体たちには、こういう場所でのんびりするのも悪くはないかもしれぬ。
 春が来たため、街道筋の旅は楽だった。川辺には雪色花がつつましくも咲き乱れ、伝説が今も続くことを示していた。


 あれから私は王都フェルゲンに戻り、今まで通りの暮らしを続けている。父上殿の集めた書物は立派なものだ。もうしばらく借りたままにさせてもらおう。
 レベッカはいつの日か 天の塔 (テュリス・カエルム)の門をくぐらんと勉学に励んでいる。立派なことだ。あれで将来、運が良ければいつかは、私のように境界線ぎりぎりの点を取ることもなく 天慧院 (ウェルス・サピエンティア)の試験に合格できるやもしれない。それに別にあの門をくぐらずともよいのだ。魔術を操り、真理と叡智を求む者の力は肩書きで決まるものではない。彼女が目的に向かって歩んでいることに価値があるのだ。
 アコットにも、あの粗野なウルフェンにも、あれから会っていない。それぞれの由あって、旅を続けているのであろう。
 料理屋を通ることはあるのだが‥‥あれから、あの色男の姿も消えていた。無事なのは分かっている。ロボと組んで何処かのいくさで剣を振るっているのかもしれぬし、何処かの街でぶらりとしているのやもしれぬ。

 大聖堂(ドーム)の鐘の音が鳴り響くたび、私は時折思い立つ。神の家を訪れ、巡回司祭や聖騎士、修道戦士の類いの記録か何かの中に、あのヴィンセントの名があるのか尋ねてみようかと。
 だが、今もって果たせずにいる。なぜだかあの色男の名は――何処にも記されていないような気がしてならぬのだ。

オルウェン、星の理を知る魔術師


 かくて四者四様に道は分かたれ、雪色花の物語はここに終わる。
 されども全ての聖痕は天より来たりし星の欠片にて、時来たらば互いに引き合うこともあろう。星の光は天の光、星の導きは天命の導き。地上の星を帯びし子を、果たされざる宿命へと導くのだから。
 アーよ、全ての聖痕者の旅路に光あらんことを。

 
 
 
Und, Erzählung von Schneeblumenlied enden,
auf die Erde in Hiderland ...


こうさくいん「というわけで、財団レポ初のボアはおわりでしゅ〜o(≧▽≦)9゛」
ボス「うむ。やはりファンタジーは良いな!(´ー`) (ぽわぽわ〜ん) 本作中では説明しきれなかったこともあるが、そのあたりは大元のBoAの方を参照されよ。既にかなり遊ばれていて説明など不要の方も読者諸兄には多かろう」
こうさくいん「感想は BBS Nexus. > ようこそBBS へガゼンお願いなのでしゅよ〜。TNRRも出るけどジツは次回のレポもBoAなのでしゅ。今度はボクっ娘のフィンたんやローリエたんが出てくるのでしゅよ〜また転生してるでしゅね〜(>ω<)」
ボス「もっとましな予告をせんかぁぁぁ。Σ( ̄口 ̄;) 本文の雰囲気を壊しまくっているではないか。さて世の中には好奇心から注意深くリンクを辿ったりディレクトリを上に辿ったりする御仁もおろう。カーネイジの亡霊に遭遇した者は素直に懺悔するがよいぞ。なっはっはっは!(謎)」

Dankesbezeigung auf :
AXYZ Sonnensystem
Illustration:
Dunkle Konigin Toll Shinohara & Kronprinz Horino


 というわけでボアアクトは終了。そのあとはAXYZ星系の一部でひそやかに構想が練られてすでに形になりつつある壮大なザルムキャンペーン三部作(一部嘘)の話があったりなかったり。
 皆がファンタジーの心を分かっていたこと、PCがそれぞれの役柄をわきまえて互いに尊重しあっていたことなどなどなどから、記憶に残るものになりました。高いダメージやら奇怪なコンボやらはっちゃけたりなんだりするだけがブレカナではなく、ましてやファンタジーではありませんからね。
 ブレイド・オブ・アルカナ 2nd Editionが発売されてからあちこちでプレイしてきましたが、今回のアクトがその中でベストです。ワーイヽ(´▽`)ノ

 世界中で評価の高い『ロード・オブ・ザ・リング』(なんでリングスじゃないんだヨ!) もいよいよ日本で公開、本屋に行くとよくハリポタや指輪に便乗して関連作品のフェアをやっていますね。やはり2002年はファンタジー復権かな?


〜おまけの各章タイトル引用元集〜
錬金術師のおい 『魔術師のおい』といえばナルニア国物語の6作目タイトル。
剣の騎士 早川文庫から出ている『紅衣の公子コルム』1巻タイトル。ヴァドハー族最後の生き残り、リンの眼とクウィルの手を与えられ数奇な運命のもとに戦う公子コルム殿下もまたエターナル・チャンピオンである!
狼王ロボ みんな小さい頃に読んだかもしれない『シートン動物記』より。
魔術師の遺産 電撃文庫から昔翻訳が出ていたD&Dのミスタラ世界背景の小説タイトル。時代は変わって今はもう3eです。
姫君アラベラの呼び声 ハヤカワ文庫FTの名作、パトリシア・A・マキリップ『妖女サイベルの呼び声』。
冬物語 ハヤカワ文庫FT、ファンタジーの女王タニス・リーの昔の作品。
狼王ロボと秘密の部屋 やはり流行りモノも入れて『ハリー・ポッターと秘密の部屋』じゃあ。(つか苦しいよソレ!) ハーたんが‥‥いや、スリザリン寮に入ってスネイプ先生に闇のアァトを学びたいでしゅ。(ぽわぽわ〜ん)
白き狼の宿命 白き狼といえば。脆弱な体を薬物で長らえ、魂を吸う魔剣を手に戦うメルニボネ最後の魔道皇帝エルリック陛下にほかならぬ!ヽ(´▽`)ノ 『エルリック・サーガ』3巻のタイトル。
闇に歌えば 集英社スーパーファンタジー文庫から出ている妖怪物らしいのですが。どこか他でも見たような気がするんですがどこでしょう。
焔の中の二剣士 『魔の都の二剣士』『死神と〜』『霧の中の〜』は創元文庫の古典“ファファード&グレイ・マウザー”シリーズでーす。
受け継ぎしもの 富士見ドラゴンブック『ドラゴンランス英雄伝』4巻タイトル。日本で入手可能なTRPG小説はほとんど全部読んできましたが、ベストというと今でもランスが挙がります(涙) 復刊されないかなあ。
狼の帰郷 90年代の名作と言われるロバート・ジョーダン作のベストセラー・ファンタジー《時の車輪》シリーズの第四部『竜魔大戦』の5巻のタイトル。長すぎて挫折しまちた(死)
明かされた謎の印形 富士見の“探索の魔石(カース・オブ・アジュア・ボンド)”シリーズ2巻目のタイトル。全6巻ですが途中で翻訳中止になってしまいました。AD&Dシリーズは良かったんですがこの後国産ライトノベルが全盛になってしまいましたねー。
魔道士の務め 現在続々刊行中のテリー・グッドカインド著のベストセラー・ファンタジー《真実の剣》シリーズ一部『魔道士の掟』に続く第二部『魔石の伝説』5巻のタイトル。これも長すぎてぽっくんまだ1冊目だヨ!

 ちなみに本作中で魔術師オルウェンぽんが自分の姓に謂れがあるらしいなどと言ってますが、エルフ語でケレブラントは“銀の水路”の意。ロスロリアンを通る河の名前でジツは中つ国にあります。(トールキン大先生ゆるちて・笑)
 なお彼のイラストの眼鏡はどう見ても縁がありませんが、きっと沢山持っている妄想天眼鏡の中のひとつでしょう(笑)
ロボぽんの区切り画像:背景の狼の印はV:tM、サバトのギャンレルー・アンチトリビューのマーク。(マニアック過ぎて分かんないヨ!) Brotherhood of the Wolf は映画『ジェヴォーダンの獣』サイトの壁紙に添えてあった言葉。
アコットたん:背景の花輪は最近凝っているDingbatフォント(文字に絵が割り当てられたフォント)から。
オルウェンぽん:背景のシンボルは錬金術でEssenceを表す記号。Per aspera ad astra はラテン語の成句「困難を克服して栄光を獲得する」。
ヴィンセント様:Dominus tecum (est)もラテン語「主は汝と共に(まします)」。

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