
小粋にエレガントボア
〜月と太陽のさだめ〜
【開幕】【前編】【中編】【後編】
-太陽の道案内-
(王女殿下のお達しによりIE5以上で見られたし。)
さてN◎VA Revisedの間違い探しのような変更点探しも収まったある日にゲーム。某聖地に行く途中でもうRRをモリモリやってるのかと思ったらそうではなかった雅寿丸の姐御と遭遇。
「今日はレボリバですか?」「今日はエレガントの日なんですよ(きら〜ん)」と、ナゾな会話をしつつ某聖地でアクトは始まるのでちた。
Und, Sie in Bühne des Schicksals kommen ...
Name: クロイツェル・ヘルラント
Arkana: コロナ=デクストラ=オービス
Rassen: 人間(ワイト人) Alter: 28 Geschlecht: ♂
読書女王パトリシア二I世治めるブリスランド王国の貴族の出。錬金術師の家系だった家を出奔する際に自動人形を一体だけ持ち出しており、マントの下に折り畳んで隠している。
有事の際に動き出す人形は薄物を纏った少女の姿をしており、主の代わりに果敢に戦う。彼女こそヘルラント家に代々伝わる、使い手の業により強さを増すという究極の戦闘人形なのだ。そして彼自身の指に輝く孔雀石の光こそ鳳の指輪。まことの王を選ぶ選帝公の指輪は巡り巡って今はこの人物の指にあるのだ。
Player: 最果 【FI-5】
▼西から帰ってきてふっかちゅしたPsykaぽんです。今回は萌えキャラならぬ燃えキャラです。途中で変更したものの、最初はスタローン系の熱いオトコで不精髭とか言ってました。何かあったのでしょうか。ここにいるのは偽者でしょうか?(酷)
はっ、やはり本物は西の小太刀右京宅でアブダクションされて(ガクガクガク)

Name: “断罪の糸”ヘルガ・ホルハイム
Arkana: ディアボルス=グラディウス=フィニス
Rassen: 人間(ヴァルター/ワイト人) Alter: 26 Geschlecht: ♂
長身に
Player: X
▼久々に同志Xノフもふっかちゅです。ハイデルランドはどこまでも洋風ですがやはりXノフコズムはここにも健在、なんのそので剣士系です。魔糸デュンケルハイトはマーダーチェイン相当の糸でちょっと秋せつら系。LoGの因果律『ハイデルランドの監視者』を持っています。背は村雨ですが中身の基本ボディはシベリア鉄道の夜明けに出てきた御門忠明らしいですぞ!

Name: オルゲル・オルガルド
Arkana: アルドール=クレアータ=フルキフェル
Rassen: オウガ Alter: 24 Geschlecht: ♂
額に角を持つオウガの若者。かつて力の試し、心の試しの試練をくぐり抜け、部族最高の戦士として
だがまことの騎士の旅はその途上で終わった。人間の王国エステルランドの王妃の手勢に敗れたオルゲルは致命傷を負い、王妃マルガレーテの命で錬金術のからくり仕掛けを体に埋め込まれて命を取り止めたのだ。過去の記憶を失ったオウガのまことの騎士は王妃に忠実に仕える人形として、黙々とその暗殺指令を実行し続けてきた。その体の聖痕は地に落ちた星の欠片の同胞を見るたびに、きしんだ泣き声を上げて主の不運を嘆き続ける。
Player: しろみけ 【無機化学的心理研究室】
▼と思ったらPL不在で僕っ娘のフィンたん登場ならず。このままではアクト開催自体が危うし!(゚o゚) という危機を直前に救ってくれたのはゲ同勢のみけ殿でした。
レボリバでは遂にパーソナリティからポニテが全滅して嘆いているみけ氏、今までに目撃したキャラクターだと全方位萌えなトーキーの来恵須たんや巫女の殺たんやその間でひっそりと煙草を吹かしている希少種の紅蓮のガルバーニが思い浮かびますが。本日に因果律『鏡の中の人形』に合致するPCとして持ってきたのはなんと意外にもオウガ。「これはマニアックにオウガのダブルポニテの美少女なのか?」(酷) とGMと一緒に勝手に予想していたら違いました。ガルバーニ並に希少種の男でしかも(E)のです。ミケズムは萌えだけではなかったのだぁ!(酷)
とかやってたらぎゃ〜、この日の日記になんか書いてある〜(゚o゚)

Name: “鏡の盾の”ローリエ・リルケ 【Profil】
Arkana: クレアータ=アダマス=マーテル
Rassen: クレアータ Alter: 外見25 Geschlecht: ♀
蒸気の息を吐くからくり仕掛けの白馬に跨り、磨かれた無紋の盾を携えて旅を続ける銀の髪の女騎士。アイスル司教領で老錬金術師に最後の作品として生み出されたが仕えるべき主君を失い、アーの導きの元に旅を続けている。かつてエステルランド王国第一王子アンセル・フォーゲルバイデに救われたことがあり、その王子の願いに答えるため、今また王宮を訪れることに。
▼シナリオ用にLoGの因果律『竹馬の友』が指定されていましたがそこを少し変え、アンセル王子と知り合いということになりました。まさか王子殿下があんな頼みをしてくるとわ(ガクガクガク)

Der Spielmeister: (はた)×弐
▼元は「哀しみの双月」という名だったシナリオを持ってきてくれました。一心不乱のはたコズムが健在!(笑)
さて各プレイヤーキャラクターを結ぶ因縁という値ですが、魔糸使いヘルガ→クロイツェル:世直しの旅の同志、秘儀術師クロイツェル→ローリエ:過去に貸しがある、銀の騎士ローリエ→オルゲル:かつてオウガの騎士と共に闇と戦った、オウガの密偵オルゲル→ヘルガ:記憶が消えたが、過去に冒険を共にした、となりました。
なお、この物語にはBoAオフィシャル設定の中のいわゆる有名NPCというのが何人か登場し、あちこちにっていうか沢山ツッコミ所があります。「ボクのノエルたんはこんなんじゃないやい」とかそういうのはまあ、正しい姿を夢想するなりしてください。(笑)
なおサプリメント『ランド・オブ・ギルティ』をよーく見ると、エステルランド王国のアンセル・フォーゲルバイデ王子が住んでいるクローエマルク離宮は王都ではなくアイスル司教領にあるという記述があります。また王族の中で唯一外見記述もなくほとんどダメキャラ決定の第二王子カールもザイオン伯の称号を持っており、領地を与えられて離れて暮らしていることも十分に考えられます。とすると、ヘルマン国王とマルガレーテ王妃と一緒に住んでいるのはヒルダ王女だけ‥‥?という推測も成り立つのですが、この物語では皆一緒に暮らしていることになっています。(2ndのパーソナリティーズの説明だと一見一緒に住んでいるようにも見えますね。)

〜月と太陽のさだめ〜
| 序章一 舞踏開幕 |
エステルランド王国首都フェルゲンにある
そんな
「励めよ。さすれば恩賞は‥‥思うがまま‥‥ぞ‥‥グ、ゴフッゴフッ」
「ヘルマン陛下?」
「陛下っ!?」
押さえた口元からは濁った血が溢れ、王の衣装を汚す。居並ぶ家来たちが一斉に駆け寄った。
エステルランド王国

自前の荷馬車に揺られ、そんな王都フェルゲンにやってきた奇妙な二人の旅人がいる。一人は目深に頭巾を被り、その顔の造作を隠した十代の娘。もう一人はいかにも長旅の果てといった風情の黒い外套の男だった。
ヴァルター人とも西方のワイト人ともとれる金髪に蒼い目、だがくせの強いぼさぼさの髪と手入れのされていない不精髭は、単に旅の途中という以上に貴族らしき本人の気品を損なうものだった。年の頃は二十代後半、痩せぎす、胸を患っているようで時折咳きこんでいる。どことなく尖った雰囲気は悪人のように見えなくもない。
その名はクロイツェル・ヘルラント。ヴァルター人の偽名を名乗った、西のブリスランド王国は
連れの娘は名をミリシアといい、諸国を旅の途中のクロイツェルと出会い、道中の道連れとなったのであった。
「この世界は間違ってるわ。だから、私はそれを変えなければならないの」
ミリシアはさしてすることもない道中、何度となく繰り返した言葉を発した。
「なぁ。その台詞はもう少し小声でやらないか」
クロイツェルは掌に聖痕を宿した左手で不精髭を掻きながらあたりを見渡した。活気あるフェルゲンの街が荷馬車の前に広がっている。もう少し進めば、こうした危険な言動に反応する輩も出てくるだろう。
「‥‥あなたにも、世界を変える資格があるのよ」
「資格があるのは、許可にはならんさ」
「大丈夫?」 クロイツェルが大事ないことを示すと、ミリシアは馬車から降りた。「ここで別れましょう。私はこの街でやることがあるの」
クロイツェルは娘を見送り、ややあって馬の向きを変えた。天慧院長老会座長にしてフェルゲン学芸院名誉院長、昔の恩人でもある老賢者サルモン・フィーストはこの街に住んでおり、彼からの手紙がクロイツェルの元にある。
「やれやれ、先が見えてる人は違うねぇ」
クロイツェルは呟くと、一風変わった旅人たちに注意を惹かれている通行人を尻目に馬を進めた。

| 序章二 暗殺者オルゲル |
その部屋の中は闇夜の如く暗く、この地方では珍しい金属製の
「鏡よ鏡、真にこのエステルランドを統べる器を持つ者は誰か? 答えよ」
未だ三十代初め、一国の主をも魅了して止まない美貌は衰えることを知らず、細くすぼまれた青褐色の瞳の奥には幾重もの策謀の炎を。誰あろう、
王妃殿下の圧力で黙殺されてはきたものの、マルガレーテが元は旅の歌姫の賤しい身分であったというのはあちこちで囁かれる噂であった。ヘルマンに見初められて側室として迎え入れられ、正妃マティルデが死去した後はこれ幸いとその後釜に。三十歳程も年の違う夫の行く末など彼女の目にはなく、あるのは国王崩御の後にどう権力を広げ、この国を我が物にしていくかという込み入った策謀だ。既に王妃の手の者は動いており、策謀の糸があちこちに張り巡らされている。
『王妃殿下。それは‥‥
鏡の一枚、正面の
「なるほどな。じゃが、重病のアンセルでは未来もなかろうて。ならば今一度答えよ。アンセルを除いたらどうじゃ?」
『王妃殿下。それは‥‥
別の一枚、今度は
「やはりか、やはりそうか‥‥あの小娘さえいなければ‥‥」
ヒルデガルド・フォーゲルバイデ王女、愛称ヒルダ。今はなき正妃マティルデの忘れ形見。齢十四になる愛くるしい王女殿下はヘルマン一世の寵愛も深く、将来を期待する声も高い。国王はゆくゆくは彼女を妃にする者に国を託すつもりだとも噂されていた。そしてマルガレーテ王妃にとってはさらに腹立たしいことに、お転婆で天真爛漫なヒルダ王女は本人自身も心優しく、人の上に立つに相応しい人徳を備えており、天上の太陽もかくやに王宮をその笑顔で暖かく照らしているのだ。
王妃からすれば血の繋がりはないが、相手は娘。ハイデルランド諸国と同じく、これがこの国の王家の影の姿だった。
「‥‥オルゲル、そこにおるか」
「ここにおります」
ドワーフのフレーグ氏族がその技術の粋を凝らして作った鏡の影から、ひとりの
厳しい試練をくぐり抜けたオウガ族のまことの騎士、オルゲル・オルガルト。だが旅の途上で彼は体の一部を失い、命の灯火を失いかけ、そしてその使命も思い出も、多くの
「そなたに使命を与える」
魔が刺したのか、それとも策謀の末なのか、王妃は密偵に背を向けたまま目を細め、この世のどんな母親も口にしないであろう命を下した。
「あの娘を殺してまいれ。ヒルダは
「そ、それは‥‥いや、御意」
頭を下げ、暗闇の中に去ろうとしたオウガの密偵は、ふと頭を上げた。
「娘なのではありませんか」
「何を言うておる」
「‥‥分かった」
オウガの若者の茶色の瞳に、束の間光は浮かんだか。

オルゲルはじっと狩りの時を待っていた。無意識に左手が力帯に触れ、ぐっと握り締めて瞬間を待つ。
「許せ」
馬がいななく中、悲鳴を上げる
暗い室内ではエステルランドの輝く
「すまん、お前を殺さねばならぬ」
長い
物音に気付き、オルゲルはさっと退いた。血で汚れた得物を持ったまま、近くの茂みへ。
近付いてきたのは灰色の長衣でその姿を隠した小柄な人影だった。ずいぶんと背が低く、人間の子供のようにも見える。長衣は引き千切られた戸から馬車の中に入ると、数瞬の後にまた出てくる。長衣の影で
「(敵方の間者か‥‥?)」
隣国ブレダとエステルランドは緊張状態にあり、間者や密偵、内通者の類いも少なくない。一刀の元にその者も屠ろうと飛び出し掛けたオウガの戦士は、今度こそ響いてきた盛大な物音に踏み止まった。
「こ、これは‥‥?!」
「まさか、王女殿下? いや、馬鹿な‥‥」
「隊長。す、すぐ王宮に知らせないと!」
「待て。知らせはしばし待て。騒ぐな」
武装した数人の
「(すまない)」
国の未来を左右する要人を殺めたオウガの密偵は心の中で王女に今一度謝り、頭を下げると、その場から立ち去った。

|
こうさくいん「いえーでしゅ〜エレガントボアなのでしゅよ〜(≧▽≦)ノ」 |
| 序章三 妖瞳のヘルガ |
親族殺害を平気で目論む王族がいる一方で、この国には影ながらよりよき未来を求めて他を助ける人々もいる。
フライブルク宮中伯レオポルドもその一人だった。白髪も濃くなった初老の身にして未だ独身、名将と謳われながらもさきの戦では自ら栄達の道を棒に振って内なる信念を尊んだ勇断の持ち主。ヒルダ王女と同じ露草の瞳を持つ宮中伯は王女の亡き母マティルデの実兄であり、宮内では権力から遠ざかりながらも静かに人望を集めていた。
「よく来てくださった、ヘルガ卿。卿が近くにいてくださって幸いでした。凶事の中の幸いと言うべきか‥‥」
「いかがなさいました」
レオポルド伯が出迎えたのはどこか奇妙な雰囲気を漂わす長身の青年だった。屈強な体を包む長衣、白過ぎる
レオポルド伯は知っていた。ヘルガの
伝説の建国王アイルハルトの家来たちによる冬の魔神アグクラス討伐の物語は子供たちでも知っているが、その裏の事実を知る者は少ない。無欲で潔い王兄であった
レオポルド伯はその黒騎士の代行者に、まだ宮廷内には明かされていない大事件を語った。お忍びで外出していたヒルデガルド王女を狙った大胆な襲撃である。王女は無事だったとも言われているがそれすらも分からない。そして刺客は今もって捕まっておらず、大柄な戦士だとも長衣で顔を隠した
「ヘルガ伯。ヒルダの外出計画を知っていた者は王宮でもごく少数に限られるはずです。分かりますな」
「ヘルマン一世を除けば‥‥さらに絞られますな」
ヘルガは鷹揚に頷いた。エステルランド
「よもや疑いたくはないのですが‥‥。王城に紛れ込んで真偽を確かめてきて欲しいのです。私の遠縁の者として紹介しましょう。そう――ヘルガ・フライブルクとでも名乗られるがよい」
「心得ました」

| 序章四 銀の髪のローリエ |
城から飛び出した早馬が王都を駆けていったのは、その日の早朝のことであった。大通りを抜け、鶏たちを蹴散らし、比較的路銀に余裕のある旅人たちがよく使う宿の前で土埃を上げながらようやく止まる。
「ローリエ殿! ローリエ・リルケ殿はこちらにおいでか?」
ややあって、白塗りの二階の壁の窓が開き、手櫛を手に持ったまま外を見下ろした者がいる。寝惚けていた様子は少しもなかったが、
「いかにも、私ならここにいるが‥‥どうしたのだ?」
流した透き通るような髪は
伝令の次なる台詞は
「アンセル・フォーゲルバイデ王子殿下よりの使いで参った。今すぐに王宮に来られたし!」
|
わたしの名はローリエ・リルケ。鏡の盾のローリエと呼ぶ者もいる。 |
![]() |
わたしが仕えるはずだったヴィンケルリート伯ヨハン殿の御令嬢リーリエ殿は、まだ若いというのにアーの御許に召されてしまった。我が父上アンセルムもまた、わたしを送り出した後に帰らぬ人となってしまった。ゆえに我が盾には刻む紋がなく、わたしには主君がない。
だがわたしとブリーゼは今も旅を続けている。救世母マーテル様は人ならぬわたしの祈りも天に届くことを教えてくださった。だから、わたしたちの行く手を導いてくれるかもしれないのだ。
最初にこの都を訪れた時より、
物珍しそうに多くの目が追う中で、二騎は王宮に向かって大通りを引き返していった。一騎は伝令の早馬、もう一騎は騎士の馬。あるじが

アンセル・フォーゲルバイデ王子が十数年前から療養生活を続けているクローエマルク
「やあ、ローリエ。ありがとう本当に。よく、来てくれた」
ゆったりとした絹の服に身を包み、第一王子が姿を現した。長身、細身、後ろで結った薄い金髪に、温和な光を湛えた、どこか物憂げな
「殿下‥‥またお会いできて、光栄です」
「こちらに来てくれないか。詳しい話はそこで‥‥」
深々と頭を下げる銀の髪の女騎士を招き、王子は
ローリエ・リルケが案内されたのは離宮に秘された
薄暗い部屋の中でも、その顔は見間違えようがなかった。エステルランド王国の太陽、ヒルデガルド王女その人である。
王子が
「王女殿下、ご無礼をお許しください」
ローリエは小声で詫び、その布をそっと退けた。傷は酷く、騎士であるローリエですらも息を飲むものだった。大きな剣の類いで一撃、さらに痛ましいことに、小さな
「医者と、蘇生術に通じた司祭を探しているところだ。このことを知っているのはぼくと君、医者、発見した兵士、本当に数名だけだ」
王子は瞳を伏せ、声を絞り出すように続けた。
「もしこのことが外に知れたなら‥‥このエステルランドはカール王子の、いや‥‥マルガレーテ王妃のものになってしまうだろう」
マルガレーテは子宝に恵まれず、アンセル自身も第二王子カールも妾の子、そしてヒルダだけが既に世を去った正妃マティルダの子である。正妃マティルダの忘れ形見として、ヘルマン王の寵愛も非常に篤かったヒルダの命が失われたのならば、後継者にはカール王子が選ばれるのが必然である。
だが――やんごとなき御身分の王妃殿下の圧力で誰も声を大にしては言わないものの、カールが重度の知恵遅れだというのはもっぱらの噂であった。外見は二十を超えたいい年の若者だが、その中身は子供に等しいというのである。
アンセル王子は
「頼みがある」
「殿下」 銀の髪の
「殿下にはかつて、名誉を救われました。その御恩に報いるためなら、なんでもいたしましょう」
![]() |
アンセル王子は紫のびろうどの布に包まれた、鎖のついた |
王子の考えた一計とは、王家の宝物庫にあったこの
果たして真の王女はアーの御許に召されてしまうのか、それとも祈り叶って一命を取り止めるのか。いずれにせよしばらくの間、王妃の勢力を食い止め混乱を避けるために、
高潔な騎士の心を持ち合わせた銀の髪のローリエは、思わぬ頼みに困惑を隠せなかった。
「し、しかし‥‥もっと適役はおられないのですか? 例えば、その、名高き
「騎士団では駄目なんだ」 アンセル王子は答えた。
「ノエル・フランシス・エルマーは清廉潔白だが、極めて公平な人物だ。きっと、この事件を公にしてしまうよ」
「そう‥‥ですね」 ローリエはエステルランドの聖盾の護りとも謳われる、うら若き
「団長閣下であれば、そうなさるかもしれません‥‥」
|
こうさくいん「幻影のペンダントはコロナ=ディアボルス=クレアータ。《伝家の宝刀》に《主我》持ちの魔器なのでしゅ。隠密+《変身》+《魔技》もどき+《鋭き刃》もどきで所有者は変装が可能。さすがアンセル王子様はいろいろ用意しているのでしゅ〜o(≧へ≦)9゛」 |

| 第一章 仮面戯曲 |
一線を引退した偉大な
そして、今まさにその屋敷を訪れようとしているクロイツェル・ヘルラントもまた、老師に少しばかりの恩を負う一人であった。
「おう、上がらせてもらうぜぇ」
扉が開いていたことをいいことに、クロイツェルはずかずかと屋敷の中に踏みこんだ。使用人たちが目を丸くしている前で客間の暖炉に湯が掛けてあるのを見て取ると、即座に飛びつく。
「道がいがらっぽくて、喉が乾いてしょうがねえや」
勝手に
「胸の患いの方は大丈夫のようじゃな。そなた、王都に来てから、おかしな噂を聞かぬか?」
咳も収まって秘儀術師が落ちついている頃、簾をくぐって別室から屋敷のあるじが姿を現した。真っ白な白髪頭に帽子、丸い眼鏡の奥で皺に隠れた智恵を湛えた目、噂通りの好々爺の老魔術師そのものといった姿。無礼な客人にも平然としている。
クロイツェルはほうぼうで密やかに囁かれている噂を話した。老王ヘルマン一世がまたもや病に倒れ、今度ばかりは長くないという噂。そしてヒルデガルド姫が何者かに襲われ、重傷を負っているという。サルモン・フィーストの頼みは、その真偽を確かめてこいというものであった。
「どういう調べ方をすりゃいいかによるなぁ」
カップを置き、喘息持ちのブリスランド貴族は伸び放題の不精髭をさすった。その右手の甲と左の掌には、知るものが見れば分かるしるしが刻まれている。
「そなたの持つ義務の本来の仕事じゃよ」 サルモン老の眼鏡が光った。
「この国を誰が継ぐに相応しいか、見定めよ」
「なぁるほど、指輪どおりの仕事って訳か」
クロツェルは寝癖のような硬い髪の広がる頭をぼりぼりと掻き、そしてふとその指に嵌っている大きな
嵌めたまま拳を振るえば喧嘩にも使えそうな、大ぶりな指輪。精緻な彫刻に嵌められた
そう、鳳の指輪であった。かつてフェルゲンラントはプファルツ方伯ギュスターヴ一世がドワーフの一族に願い、フレーグ氏族イェロヴェリル三世がハイデルランドのまことの王を選ぶ権利を持つ七人の
「まぁ、この指輪を見せる時は、実力行使の時になるがな」
嫌な笑い方をすると、クロイツェルは手をひらひらと振った。
「うむ。儂の紹介で何か身分を用意させよう。学芸院の研究員か何かで‥‥」
「あーぁ、変装なら大丈夫だ」
クロイツェルは長旅を共にしてきた荷物袋を開くと、目的のものを探して中を引っ掻き回し始めた。やがて一番底から無理やり引っ張り出されてきたのは、名高き
「うわ、虫食ってやがる! あちゃー、これじゃまずいな‥‥」
ぶつぶつ言いながら埃を払い始めた青年に、老魔術師は少しも動じずに軽く眉を上げただけだった。
「それでは、しっかりな」
「ああ。これくらいで傾くなら、この国もおしまいだよ」
虫食いの穴に指を通しながら、不精髭の出奔貴族は答えた。

中庭を飛び回る小鳥が朝を告げるエステルランド
優雅に銀のナイフで肉を切り取るマルガレーテ王妃、今朝は調子が良いらしく果物に口をつけているアンセル第一王子。その向かいではカール第二王子がいくさのように盛大な音をたてながら何事か喚いており、その横ではこれまた育ち盛りのヒルデガルド王女が食事を続けている。その向かいのヘルマン王の席は空だった。謁見の間で倒れてから病状は回復したものの国王の具合はあまりよくなく、未だ寝込んだままの状態が続いている。
そしてもうひとり、王宮に賓客として招かれている青年が、開いた銀の右目だけで和やかな家族
「さて‥‥この場には、王家に似つかわしくない者がいるようですね」
つとナイフを置き、口をぬぐったマルガレーテ王妃が、青褐色の瞳を突如として光らせた。何故だかヒルダ王女がびくりと反応し、フォークを口に入れたまま一瞬硬直する。
「‥‥カール! どうしてもう少し静かに食べられないのですか! エステルランドの王族たるに相応しい作法を守りなさい」
王妃殿下の静かな怒りの矛先が向けられたのは、その横、食卓の上でまだ肉の兵団と
「だ、だって! あいつ、俺の大嫌いなトマトを料理の中に混ぜやがったんだ!」
勇ましいカール王子はナイフの剣を振り回すと、控えている料理長を差した。王家に忠実な料理長はただ恐縮するばかりだった。
やんごとなき御身分のマルガレーテ王妃は深い溜め息をつくと、視線を変えた。
「ところで、ヒルダ」 途端に優しい表情を浮かべると、その横の王女に声を掛ける。「体のほうは、もう大丈夫なのかえ?」
「は、はい、だいじょうぶですっ」
エステルランドの太陽は慌てたように応え、何かを探すように左右を見渡した。まだいくさの終わらない兄王子に声を掛ける。
「兄上。野菜も食べないと、ダメですよ。こんなに美味しいのに」
「うるさい! 今日は肉とチーズだけでいいんだい。だったらヒルダ、お前が食べろよ!」
勇ましいカール王子は妹に向かってわめき散らし、お口に召さない北荻の群れを押しやった。
「え、いいの? じゃあ」 |
![]() |
やがて食事も終わり、召使たちが食器を片付けて行く。
「フライブルク伯殿、見苦しい所をお見せしてしまいましたな」
「いえいえ」 王妃殿下に会釈すると、フライブルク伯ヘルガは皮肉を慇懃の中に隠して言った。
「皆様の仲睦まじい様子が見れて光栄です」
病弱なアンセル王子も今朝は調子がよいらしく、元気そうに歩いて行く。ヒルダ姫がその腕を取ると庭園に先導していき、楽しそうに何か話し込んでいた。
「(‥‥おかしい。重傷だったはず‥‥)」

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