Klagelied ist Flutgleich - 挽歌は奔流の如く
〜さらば、麗しき波濤よ 第一部 挽歌は奔流の如く〜
ダーククイーン陛下&フクムラお兄タマと遊ぼう!

第一部 挽歌は奔流の如く 伝説】【前編】【後編
第二部 さらば、麗しき波濤よ 幕間】【前編】【後編

-大河の水先案内-
(河霧彦陛下のお達しによりIE5以上で見られたし。)


 さて黄金週間の祭りを控えたある日。遠方から客も来るのでメインの前にもゲームをしようということになりました。
ダーククイーン陛下が西から携えてきたのは前に製作し別メンバーでも遊んだことのある、全二部からなるブレイド・オブ・アルカナのシナリオ。プレプレアクトも十分、迎撃体制はバッチリだぜザルム!


Und, Sie in Bühne des Schicksals kommen ...
かくて、運命の舞台に彼らが来たる。

Name: “星降るうた”クレリア
Arkana: ファンタスマ=ウェントス=ファンタスマ
Rassen: 人間(マテラ人) Alter: 26 Geschlecht:
 黒髪の女性吟遊詩人。まったくの盲目であるが健常者よりも感覚も感性も鋭く、感じたことものを多くの歌に残している。神代の昔より伝わる二十二のアルカナにまつわる歌を歌うことができ、その時アルカナの力は二十二の光の使徒そのものの幻の姿をとって現れると言われている。
 彼女の知るアルカイの歌の数は現在八つ。歴史の中で地に埋もれた残りの失われた歌を探し、様々な伝承を歌として後世に残すために旅を続けている。
 かつてヤーデシュタットの教会を維持する女司祭ドロテアに助けられたことがあり、命の借りを返すために詩人はいまふたたびキルヘン河のほとりへ向かうことに。
Player: (はた)×弐
▼事前に与えられたシナリオ用因縁等を見ても微妙におねえさま属性の登場人物の多いこの物語。一人また増えて‥‥と見せかけて一心不乱のはたコズムが健在の詩人クレリアです。(ゲフンゲフン) 特技は少なめですが召喚する魔獣がかなり一心不乱。モデルは額に飾りをつけたロー○スのアノ人だとかなんとか。
 なおシナリオ細部が変わっていますが、周知プレイということで脇を支える役(話を進めるとも言う)になっています。

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア

Name:夜の踊り子(ナハト・テンツェリン)”マリア 【Profil
Arkana: コロナ=ステラ=アングルス
Rassen: 人間(ヴァルター/オクタール) Alter: 26 Geschlecht:
 金髪に紺碧の眼、美しい肢体を扇情的な服に隠した踊り子。夜の踊り手の別名をとり、娼婦の技にも長ける。実は妾腹で生まれたさる公国の貴族の出であり、尊い身分である。
 船の上で非業の死を遂げた貿易商ニコラウスの妻、旧友でもある町の細工師マグダレーナを訪ねてヤーデシュタットへ赴くことに。
Player: 蝠邑カズヒロ 【KAZZ TECH
▼きました、ゲームと美女をこよなく愛する関西系イタリア人(笑)蝠邑のアニキの登場ですヨ! 周知プレイの利を活かして(違)今回趣を変えて登場するのは蓮っ葉なオトナの女性でしかも娼婦。今までのエレガントN◎VAその他のゲームにはついぞ見かけなかったオトナが見られる!(ゲフンゲフン)

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア

Name: “震天鎚”ハーランド
Arkana: アルドール=ディアボルス=レクス
Rassen: 魔器(オクタール) Alter: 20代前半 Geschlecht:
 あえなく戦で果てたオクタール人の傭兵の最後の願いは天に聞き入れられた。彼の魂は愛用の戦槌に受け継がれ、知性と自我を持った魔器として奇妙な生を生きることになったのだ。歳月の後に人間の姿も取れるようになり、人の姿のまま槌を手に戦うこともできる。軽めだった人間の頃の性格は何も変わっていない。
 傭兵の頃かつてキルヘンの急流に転落し、“早瀬姫”シオナと名乗った美しい女性に助けられたことがあり、暗い洞窟の中で甘い数日を過ごした。形を変えて生き延びた今、震天鎚はふたたびあの河に向かう。
Player: 九龍
▼かつての女を探して物語に加わるPC5導入は成年男性という限定のついたアダルトな役回り。というわけで普段は萌えキャラばかりの‥‥あ、いや、とにかく、今回はしっとりとオトナの男性キャラなのでしゅ。(ゲフンゲフン)

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ

Name:鉄(くろがね)の右将(アイゼンリヒテ)”オスヴァルト・シュイヴァン 【Profil
Arkana: ウェントス=アダマス=マーテル
Rassen: 人間(ヴァルター人) Alter: 21 Geschlecht:
 エステルランド王国に名高き神聖騎士団副長にして、王室親衛騎士隊の一騎。かつては放浪者であり右手を失い、瀕死のところをノエル・フランシス・エルマー団長に拾われた。その後義手に変えたその右腕と盾もて、団と団長を害するすべての刃を受け止めると名高い。その体を流れる熱い血潮には救世母マーテルが流したと言う聖血(ハイリゲス・ブルート)が混じっており、美しい外見をした気さくな青年。密かにノエル団長に特別な想いを抱いている。
 キルヘン河河口で甘い歌声で人を惑わす妖艶な魔女ブルティーゲヴェーレに友を殺され、義侠心から王都フェルゲンをただ一騎で離れるのだった。
Player: なま
▼迎撃戦力が足りないためにヨコハマ方面から援軍を頼みました。作り立て〜Exp50までのPC陣の中で唯一200点以上が注ぎ込まれているオズ、サークルらいとぽいんたぁを初めとするそちらのハイデルランド世界ではかの神聖騎士団副長としてどこまでも団長一筋に‥‥い、いや、数々の冒険をこなしてエステルランドを護っているそうです。(ゲフンゲフン)

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団

Name: “碧瑠璃の公子”アリアン 【Profil
Arkana: ディアボルス=エフェクトス=フルキフェル
Rassen: ザルム Alter: 外見17 Geschlecht:
 瑠璃色の背鰭をもった若いザルム。河の王国の偉大なる王ヴォーゲンの王弟の子であり、王子たちと同様に育てられた。母なる河の力を操る技にひときわ長け、また“星の青玉(シュテルンザフィーア)”と名付けられた魔法の槍の所有者である。伝説の騎士ローツェが残した水の武具と人間に姿を変えることのできる魔石スマラクトを授けられ、王命によって地上世界へ行くことに。
 人間の姿は常に濡れた不思議な黝い髪をした、美しい若者である。
▼さて川の乙女ローレライを初めとしたイメージソースがあり、しっとりと海と川の香り漂うこの物語、このゲームに登場する異種族のひとつザルムのPCが必須です。前回は水をファミリアにしたどこかの王とかいう真っ緋なザルムがいたりしたそうですが。今回もなんとかせねばなりませぬ。
 しかし、何処を探しても鮭の人は見当たりません。かつてはアイルハルト王のハイデルランド統一を助け、設定もジツは燃えなザルムはPLレベルではことあるごとに鮭と笑われて終わってしまいがちな哀しい一族。ていうかフルキフェルの中でレア度一番を争ってるに違いないのだザルム!ヽ(`Д´)ノ
 とゆわけで不肖当方が担当することになりまちた。暗黒女王陛下の趣向を汲みとっておまけに《神の恩恵》持ちがもう一人(ゲフンゲフン)

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

Der Spielmeister: 篠原 透 【NEUROGUE
▼シノハラ暗黒女王陛下です。情熱的な女性の登場したりするちょっぴりメロドラマ指向、しっとりとオトナの雰囲気あるアクトを楽しむことができました。ヽ(´ー`)ノ なにやらシナリオの細部を書き直したら17,000字を越えるイキオイになったそうです。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
 ちなみにこのシナリオにはイメージソングがあり、第一部『挽歌は奔流の如く』は鬼束ちひろの『Cage』(in アルバム『インソムニア』)、第二部『さらば、麗しき波濤よ』が『茨の海』(in アルバム『This Armor』)になってます。
 いつかどこかでこのシナリオをやることになるかもしれない方は、その時は早瀬姫の記憶を忘れてしまうなりなんなりするようにしましょう。ホラ、夜の酒場で出会った美女と甘いひとときを過ごせば途端に‥‥アレ?(笑)


 さてPCを繋ぐ因縁というやつですが
夜の踊り子マリア→吟遊詩人クレリア:酒場で歌と踊りのコンビを披露した【同志】
吟遊詩人クレリア→傭兵ハーランド:かつてアルカナの秘密とその使命を語った【秘密】
傭兵ハーランド→騎士オズ:オズ少年に昔冒険談を語ってやったことがある【幼子】
騎士オズ→公子アリアン:河の護り手の遺言で、ザルムに宝石を返すよう頼まれた【遺言】
公子アリアン→夜の踊り子マリア:陸で行き倒れになったところを助けられ、ついでに(以下略)の【借り】
となりました。
 さていよいよ波濤の物語の始まりです‥‥




Klagelied ist Flutgleich - 挽歌は奔流の如く
〜挽歌は奔流の如く〜



序章一 夜の踊り子


 ヤーデシュタットは大河(シュトローム)キルヘンが海と繋がる西の果てよりもやや東に位置した町である。ケルファーレン公国(ヘルツォークトゥーム)の直轄領に当たるこの地は、すぐ側に河のある地の利を活かした交易と、古来より産出される翡翠(ヤーデ)によって栄えていた。
 そんな町の職人通りの一角に、細工師(シュミーデン)マグダレーナ・オイゲンとその夫である貿易商ニコラウスの家がある。だがニコラウスは妻の造った見事な翡翠細工(ヤーデベルク)と多くの交易品を積んだ船で出航したまま、河中にひそむブルティーゲヴェーレなる悪しき魔女(ヘクセ)の手に掛かって帰らぬ人となってしまっていた。

 そんな未亡人マグダレーナの家の戸を叩く者がいる。背の高い女であった。長い金髪に紺碧色の(ナハト)の瞳は典型的なヴァルター人のものだが、きめ細やかなその肌はオクタールの血も混じるものと思わせる。ドレスが映えそうなとても美しい女だったが、尊い身分の()令嬢達が集まる淑やかな舞踏会(タンツァーベント)よりも、盛り上がった夜の酒場(ナハト・シェンケ)が似合いそうである。

マリア、夜の踊り子、暁の子の鎖

そしてその美しさは顔だけではなく見事な肢体に――とりわけ男たちの目をひきつけてやまないであろう豊かな胸に集中していた。
 その名はマリア。仇名は“夜の踊り子(ナハト・テンツェリン)”。さる公国の領主(フュルスト)と妾のオクタール人の旅芸人(アーティスティン)の間に生まれ、故郷を後にした後は母譲りの踊りで酒場を賑わし、同時に男たちの夜の相手をしながらほうぼうの町を巡ってきた身である。
 天がその星の力を与えたのは何も、位高き騎士(リッター)や稀代の英雄(ヘルト)たちだけではない。暁の子コロナ、星の導き手ステラ、そして希望の御子アングルスのしるしを備えたマリアもまた聖痕者であり、世を何等かの形で導く定めにあった。
 その翡翠(ヤーデ)の腕飾りをはめた白い手が扉を叩くが、中からは何の気配もない。と、マリアは返事もまたずに扉を開けて中に入った。マグダレーナは手を拭きながら奥から出てこようとしているところであった。
「やっ。元気にしてた?」
「マリアじゃない!」 未亡人(ヴィトヴェ)は旧友の突然の来訪に驚いた。「久し振りね‥‥無理はしてない?」
「大丈夫よ。アタシは頑丈なのが取り柄だから」
 ひとしきり互いの健康や最近の町の様子や声を掛けてきた馬鹿な男の話など、他愛もないことを語り合う。マグダレーナはいつものように、快活な様子を見せていた。
 だが、マリアが控えめに帰らぬ人となった夫の話を出すと、気丈に振る舞っていた彼女は机の上に突っ伏して泣き出した。
「そうよ、ニコラウスが‥‥私は、私は、何もできなかったの‥‥」
 旧友(アルター・フロイント)を慰め、ひとしきり話し相手になったマリアは泊まりの申し出を宿があるからと丁重に断り、さてどうやって友の敵をとってやろうかと考え始めるのであった。

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア



序章二 瑠璃の公子


 ハイデルランドの陸には人間が住んでいるが、それ以外の種族もまた各地に点在している。すなわち焼き払われたメオティアの森には森人(エルフ)が、北の鉱山の中には岩人(ドワーフ)が、傭兵団の戦士達に混じる狼人(ウルフェン)が。
 町の広場で旅芸人に混じり喝采を浴びるのは猫人(カヴィーナス)、木々の中で思索に耽るのは樹人(エント)、尖った者を狩りに旅立つ英雄は鬼人(オウガ)。北の荒地で侵攻を企てる北荻は豚人(オーク)、北の高地と大空を舞う翼人(オオカミワシ)、何処の地にか在るヴェルンフラムの城には白鳥人(ヴァルフェー)の娘たち。
 そして人間の王国を四つの流れで分かつ大河(シュトローム)には、河人(ザルム)と呼ばれる河の民が住んでいるのであった。かつて金色外套王と友誼の契りを交わして幾代、北荻(ほくてき)の敵を自認するザルム族は勇猛果敢で誇り高く、陸の友人との約束も違えぬ。河の支配者である彼らに敬意を表し、人間の漁師(フィッシャー)たちはその網に巨大な鮭の姿をしたこの一族がたとえ捕われたとしても、優しく河にふたたび返すのが古来よりの慣わしとなっているのであった。

 全ての河をザルムは自らの王国(ケーニヒライヒ)とし、各地の大河の宮殿を築き上げている。全ての河の生き物が使役されて造り上げた河の宮殿(パラスト)のひとつ、キルヘン河の強き流れの中に秘せられた大きな宮殿の中で、一匹の若いザルムが偉大なるヴォーゲン王に謁見しようとしていた。
 だが、河の王国は人の目には触れることのない秘密の王国、ゆえにこの物語には、謁見の場がいかなる模様であったのかは、詳しく記されていないのである。
『よく来た、我が弟の子アリアンよ。今日はそなたに願いがあって呼んだのだ』
 伝説の金色外套王アイルハルトと盟約を結んだクラール王から数えて四代目、現在のザルム王の名はヴォーゲン。アイルハルト王が友誼のしるしに贈った魔法の王冠(クローネ)は今もその頭上に輝いている。“河霧彦”の名で知られる王は河の力を自在に操り、強き牙と美しき鱗、勇猛な上に思慮深さも兼ね備えた偉大な賢王であった。陸の世界にも親しい友人が何人かいるという。
『ヴォーゲン王よ、何なりとお申し付けを』
 王に拝謁しているのはまだ若いザルムであった。青い大河の中でもその体は碧瑠璃色(アツーアブラウ)の光を帯び、銀の星のような刃を持つ奇妙な(シュピーア)が、まるで生き物のようにその脇に控えている。
 その名はアリアン、碧瑠璃の公子(クローネプリンツ・デア・アツーアブラウ)とも呼ばれる王弟の子。偉大なヴォーゲン王によって王の息子たちと分け隔てなく育てられた若者である。
 王は語った。キルヘン河を西へ、大きな海へと通ずる河口へ。陸の人間たちがヤーデシュタットと呼ぶ町がある河口近くに、人が住まず魚も近付かぬ暗礁がある。そこに座した悪しき魔女(ヘクセ)ブルティーゲヴェーレが、一帯を通る船を惑わし、男たちを死に誘っているというのだ。
 既に死した船乗りの男たちの数は数え切れぬほど、陸の友人たちの悲しみは深い。さらに悪いことに付近一帯は犠牲者の血で染まり、魔女の持つ悪しき気で汚れ、キルヘンの大河に住む河魚たちも難儀しているのだ。
血に汚れた流れ(ブルティーゲ・ヴェレ)、と‥‥』 公子アリアンは問うた。
『しかし王よ、その赤き魔女は一体どのような魔力をもって、人を惑わすのですか?』
『かの魔女は壊れた竪琴(ライアー)を携えておる。その音色と妖艶な美貌をもって船乗りを惑わし、死に追いやっているのだ。かつて我が妃の一人だった姫もこのキルヘンの波間に眠っている。その安眠を妨げる者は許せぬ』
 賢王ヴォーゲンは普段と変わらぬ毅然とした態度。だが、死んだという妾妃のことを語る時、王にも迷いが生じた。しかしながら、大いなる王命を前に打ち震えている年若いアリアン公子は、そんなことには少しも気付かなかったのである。
 召使いの小魚が苔石の盆の上に宝玉(エーデルシュタイン)を載せ、恭しく公子の元へと運んでくる。かつて金色外套王との盟約の折、常に王のそばに控えていた美しき白鳥人(ヴァルフェー)の乙女がザルムに贈った魔法の宝のひとつ、輝ける緑柱石(スマラクト)であった。七つあったスマラクトも歳月の中で失われ、いま宮殿にあるのは四つ。長子ならば次代の王、次子以降ならばザルム族を護る高貴な戦士と宿命づけられた王の子たちに授けられるこの緑の魔石は、河の民に陸の上の空気を吸わせ、人の姿を自在に取らせるという魔法の力を持つ。王の子ではないアリアンにこの宝石が下賜されるのも、使命の重大さを物語るものであった。
『そなたは魔法の槍の主と認められ、その技も十分と聞く』
 続いて王はまたもや召使いに合図した。
『だが、さらなる力が必要になる時もあろう。これも持ってゆくとよい』
 続いて現れたのは、よく間抜けな陸の民が河の中に落としていくような革の水袋である。宮殿に満ちる清い流れの中でひときわ蒼い水の塊が独りでにその中へと入り、中身の詰まった水袋は膨れ上がった。その古めかしい水袋も、いざ陸へゆかんとするアリアンの元へと運ばれてくる。
『こ、これは‥‥あの伝説のローツェ卿が使っていたという‥‥』
 公子アリアンは心底驚き、王は静かに頷いた。然り、ハイデルランド統一の大義を果たした陸のアイルハルト王に仕えた七人の(ゆごて)の騎士団の一人は、誇り高き河の民なのだ。”しぶき彦”ローツェ卿が用いたという水の武具は、その姿を水の剣に鞭、槍に甲冑と自在に変じ、主を助ける魔法の武具である。
 だがアリアンが思い出したのは、知恵の深い曾祖母から聞いた昔話であった。水の武具を用いた者は、死ぬほどの猛烈な渇きに襲われる。水の武具を用いて戦い、ザルムの歴史に名を残す英雄たち(ヘルデン)は、みな死している。水の武具を用いると、波間の向こうに死した英雄たちの姿が現れ、おいでおいでと手招きをする‥‥
 王の御前ながら、どうかこれを使う機会が来ませんようにと心の中で救世母に願うと、碧瑠璃の公子アリアンは一礼した。
『王よ、我が身に余る大命ですが、謹んで拝命いたします』
 緊張したザルムの面持ちがいかなるものであるのかは、陸に住む人間には分からぬことであるため、この物語には記されていない。だがとにかく、そんな表情を浮かべながら年若い公子は王命により、いざ地上の世界へと旅立つことになったのである。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

こうさくいん「いえーでしゅ〜今度は遥か西のキルヘンの大河からブレカナなのでしゅよ〜(≧▽≦)ノ」
ボス「というわけで遠方からゲストを招いて二部構成のミニ・キャンペーンシナリオとなったぞよぞよ。しっとりした話にふだんとは一味違ったキャラクターが揃ってなかなか独特のものとなることができたな(´ー`)」
こうさくいん「ああーマリアお姉様がオトナでしゅよ〜ていうか娼婦じゃないでしゅか〜(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
ボス「Σ( ̄口 ̄;) ええいそれくらいで震えるなぁ。今回はアダルトにいくのじゃぁ。そしてアリアンぽんのザルム一族は河の乙女に姿を変じて人間と恋をしたり、かつてはローツェ卿のように陸の人間を助けたりとファンタジーの香りある種族なのだが、いかんせんナゾも多い。ゆえにわざと書いていないところもあるぞよ」
こうさくいん「んんー河の宮殿はどうなっているんのでしゅかねー。ていうかザルムは何を食べて生きてるんでしゅかねー」
ボス「う、うむ。(笑) 作業用の手足を持たない知的生命体は果たして10進法を考えつくのだろうかとかナゾはあるがそこはまあ、ファンタジーなのでいいのじゃよ!(笑) アーの御心は偉大なのだ。それではどんどんいくぞ」



序章三 星を帯びし者


 ヤーデシュタットの町にも唯一神アーと救世母マーテルを称える教会(エックレーシア)があり、箒を持った侍祭の娘たちが神の家を掃除している。と、その前に、一人の旅人が姿を現した。
 旅人は女性であった。肌の色は薄いが恐らくマテラ人、二十代半ばか、旅芸人とも巡礼とも見えるような旅装、長い黒髪を左右で分け、水晶(クリスタルルム)の額飾りが光っている。光のない両目は常に閉じられ、見る者にこの人物が盲目であることを悟らせる。
だがその確かな足取りには少しも迷いがなく、動作は常人と何ら変わらぬ程であった。
 詩人(ポエトリア)芸人(アルティフェクス)にしては楽器を持っていないと訝った侍祭たちは、その女性が口を開いた途端に、(カントゥス)だけで銀貨を稼げるほどの吟遊詩人であることを悟った。静謐でどこか可憐な不思議な雰囲気を漂わす彼女の声はとても美しかったのだ。

 吟遊詩人の名はクレリア、星降る(うた)のクレリアという。砕け散って地に落ちた使徒ファンタスマの力はその美しい歌声の中、ウェントスの放浪のさだめは光のない瞳の中に。
すでに聖痕の秘密とその使命を知るクレリアはそれをまだ知らぬ聖痕者たちの導き手であり、同時に神話の時代より伝わる二十二の失われたアルカナの歌(カントゥス・アルカーナー)を探して旅を続ける探求者であった。

クレリア、星降る詩、失われた歌の探し手

「姿が見えませんが、ドロテア様は?」
「は、はい、礼拝堂にいらっしゃいます!」
 目が見えないにも関わらず、探し人がいないことを察すると吟遊詩人は美しい声を発した。侍祭の娘たちはこの教会に逗留している女司祭(サセルダ)のいる場所を慌てて指差し、クレリアは微笑むのだった。

 常人とほぼ変わらぬ感覚を備えているとはいえ、クレリアにも予期できぬことはある。前にこの町を訪れた折、暴れ馬が引き回す馬車に轢かれて怪我をした彼女はこの教会に担ぎ込まれ、司祭(サセルダ)ドロテアに世話になったことがあった。
 何やらどんよりと濁った雰囲気を感じながら、クレリアが礼拝堂(カペルラ)に入る。何の祈りを捧げていたのか、十字架(クルクス)の前で手を合わせていた司祭がゆっくりと振り向いた。
 深い緑色の瞳、濃い金色の髪をきつく結い上げ、簡素な礼服を着込んだ司祭ドロテアは地味ながら清楚で品のある雰囲気を漂わせている。どこか年齢を感じさせない所があったが、クレリアよりも恐らくは何歳か年上。だが神に身も心も捧げているために結婚もしていない様子だった。
「邪魔をしてしまいましたか?」
 クレリアが柔らかく聞くと、司祭は答えた。
「いえ、そのようなことはありません。救世母に助けを願っておりました」
「私には力になれないかもしれないけれど、悩みを聞くことはできます」
 クレリアが近付くと、司祭ドロテアは言葉少なげに話し始めた。河口の洞窟に棲みついた悪しき魔女(マガ)ブルティーゲヴェーレ。すでにこの教会(エックレーシア)で上げた葬式(フューヌス)も、犠牲者の家族たちを慰めたことも両手の数では数え切れなくなっている。
「私にはあの魔女の力がとてつもなく恐ろしい‥‥。この余りに無力な身には大きすぎる試練でございます、神よ」
 再び十字を切ると、司祭は目を落とした。
「司祭様。ならば、神の救いの手が近いうちに差し伸べられることでしょう」
 司祭の手を取り、光のない瞳で見つめるとクレリアは言った。
「私には視えます。この地に、アルカナの力を纏う者たちが集まりつつあるのです」
 勇気付けるための根拠のない希望とも思える言葉。だがそれも、言霊(ことだま)の力を知る星の詩人(ポエトリア・ステルラ)クレリアの口から語られると、不思議な真実味を帯びているのだった。

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア



序章四 再会のしるし

 船乗りたちが沈み、司祭が嘆くそんなヤーデシュタットの町へ、ぶらりとやってきた青年がいる。身の丈はそこらの男よりも高く、髪は銀だが銅褐色の濃い肌はオクタールのもの。筋骨逞しく、あちこちに傷痕(スカー)の残るその体を見れば、戦やら護衛やらを続けて来た旅の傭兵の類いであろうと容易に想像がつく。板金の鎧(プレートメイル)に手には手甲(ガントレット)、背中の荷と一緒に盾と兜も吊っていた。

ハーランド、震天槌の使い手、早瀬の姫を探す者

そして一際目立つのは、大きな両手用の戦槌(ウォーハンマー)である。鉄色の瞳は町の様子にもさして興味はないように町の風景の中をさ迷い、脚はぶらぶらと歩いていた。
 軽口の多いオクタール人の傭兵、ハーランド。剣の娘アルドール、門の支配者ディアボルス、法の狩人レクス、三つの使徒のしるしはその長い影、大きな槌、鏡に映るその姿の中に。大きな戦槌を軽々と片手で操り、“震天槌(ヘヴン・シェイカー)”のハーランドとも言われた槌使いである。だが一度、彼は戦の中で命を落としていた。死体の並ぶ荒野の戦場で愛用の魔法の槌と共に死んでいたのだ。
 現在の彼は、魂を相棒の槌に宿し、使徒ディアボルスのしるしを刻んで生き延びた存在である。人間だった頃と姿形はほとんど同じだが、荷を背負い長靴を履いてこの町にやってきたその姿は偽者、携えている槌こそが本体なのだ。魔器(ディアボルス)、と呼ばれる強力な武具の中で、自らの意志と知性を持った年経た強力なものと似たような存在である。
 そんなハーランドの頭をよぎるのは、数年前にこの町近くを訪れた折の忘れ難き思い出であった。


 当時はまだ人であったハーランドは険しい渓流で足を滑らせ、キルヘンの大河に落ちたことがあった。溺れ死んで当然の事故であったが、気がつくとほんのりと湿った洞窟の中で目を覚まし、ひとりの美しい乙女によって命を救われていたのだった。
 シオナと名乗ったその黝い髪の乙女はとても美しかった。人外の何かの精が人の姿を取ったのかと思うほど美しく、だがそんなことは気にならぬ程、彼は心を奪われ、静かな洞窟の中で甘い数日を過ごしたのだった。
『でも、私はあなたが思うような‥‥そんな美しい身ではないの。どうか私の前から去って』
「シオナ‥‥」
『私は罪人よ。その罰のために誰かに触れることを禁じられている。禁を犯すたびに激しい痛みに襲われるよう、王によって呪いを掛けられているの。だから、あなたといるのが辛い』
『いいえ。あなたに触れるのは構わない。どんなにこの身が痛んでも良いと、あなたへと動くこの心を、止められそうにないの‥‥』
 名残惜しげに人間の世界へと帰ろうとするハーランドを、彼女は潤んだ寂しそうな瞳で見積めていた。
『でも、もし‥‥もし、もう一度あなたが私に会いたいと思ってこの地へ来てくれたなら‥‥。キルヘンの流れをすくい上げて、口付けして流してちょうだい。私はあなたに会いに行くわ。必ず‥‥』


 気がつくと、ハーランドは何時の間にか町はずれのキルヘンの岸にきていた。河原に差し出た木の橋の向こうで、大河が懐かしい音を発てながら流れている。
「もうずいぶん昔の話だ、」
 だがハーランドの脚は何時の間にか河岸に向かっていた。
「決して、未練があるわけじゃないんだがなー」
 傷痕の残る戦士の顔が、乱れた水面に映る。ハーランドは屈み、手甲を取るとひんやりと冷たい流れの中に手をやった。すくい上げた水を口の中に含むと、魔器(ディアボルス)と変じてからもはっきり覚えている、あの洞窟と同じ香りがした。
 キルヘン河に何の変化があるわけでもなかった。せせらぎの音は変わらず、ただ奔流が流れて行く。
「オレって馬鹿だよなー‥‥」
 その様を、ハーランドはじっと眺めていた。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ



序章五 右将、西へ


 ヤーデシュタットの大通りを奥に行ったところにある墓地(フリートホーフ)では、今日も葬儀(トラウアーファイア)が行われていた。埋葬されるのは今日も男、棺の中は空。河の洞窟に棲む魔物(ゲシュペンスト)の害は一年の昔から続いている。
「ニコラウスはのう、立派な船乗りじゃったよ」 仲間らしい老人が呟く。
「かみさんの造った翡翠の細工と異国の品やら何やら沢山載せて、勇気を出して出航したんじゃ。それがこのざまじゃ。船もあんなに滅茶苦茶になりおって‥‥せめて、亡骸だけでも帰ってくれればのう」
 将来は有望な交易商人になるだろうと言われていたニコラウス・オイゲンの死を哀しむ者は、ヤーデシュタットの住人たちの他にもう一人――遥かエステルランド王国(ケーニヒライヒ)は王都フェルゲンからやってきた若き騎士(リッター)がいた。

オスヴァルト・シュイヴァン、鉄の右将、聖盾の乙女に仕えし騎士

 長身、光の加減により銀色にも見える薄墨色(グラウ)の髪、瑠璃(ラピスブラウ)の瞳。精悍な顔立ちは整っているがそう目立つわけでもなく、だが葬儀に集まった群衆の中で不思議な存在感を持っていた。その甲冑(パンツァー)白銀(ヴァイセジルバァ)、儀礼用の純白(ヴァイス)のマントこそないものの、その胸の紋章は見る人が見れば見間違えようがない。

エステルランドに名高き神聖騎士団(ハイリゲヴァイセリッター)が一騎、王国の太陽たちを守護する二十二名の王室親衛騎士隊(ケーニヒシュッツェンリッター)のひとり、若くして副団長を務めるオスヴァルト・シュイヴァン卿である。王家一族と団長に迫る全ての刃をその盾もて受け止めると名高い鉄の右将(アイゼンリヒテ)は、かつて縁あって知り合いだった旧友ニコラウスの死を聞き、団に断るとただ一騎王国を離れてきたのだった。
 オスヴァルトが旧友(アルター・フロイント)の死をかみしめていると、清楚な雰囲気を漂わす司祭(プリースター)が進み出て、葬送の儀式を執り行い始めた。そばに控えていた黒髪の吟遊詩人(ゼンゲリン)が静かに、歌を歌い出す。詩人はずっと目を閉じていた。
『魂よ安らかなれ。天に帰ってアルカナの力になるように‥‥』
 その歌声はそれ自体に力があり、オスヴァルトはアルカナの力を感じた。十代の頃にある少女を護る為に失った右腕の代わりにつけた鉄のからくりの腕、そこに宿った不破の盾アダマスのしるしがうずく。健脚に刻まれた伝令ウェントス、救世母の聖血一滴が混じったその血も然り。
 聖痕は互いに引かれ合い、刻まれし者(グラヴィエールト)はいずれ邂逅する定めにある。人を災いに導く魔女(ヘクセ)を倒す為に、聖痕者が我知らず集ったとしてもおかしくない。
 少女から成長し、今も常にオスヴァルトの前にいる盾の乙女(シルト・メートヒェン)から授かった十字架(マーテル・クロイツ)を左の手で握り、卿はそっと呟いた。
「民人を守らずして誰が騎士か。帰りは遅くなります‥‥」

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団


ボス「さて残りの面子も揃って聖痕者全員が登場したな。ちなみになんと今回は偶然が重なって一部スゴイことになったぞ。一般技能の《神の恩恵》持ちが3人もいるのだ」
こうさくいん「主にムネに集中しているマリアお姉様と! 神聖騎士団副団長に相応しく立ち振る舞いの中にあるオズぽんと! 水もしたたる美少年のアリアンぽんに! クレリアたんは違うけど一心不乱のはたコズムだからナニでソレでしゅ!ヽ(´▽`)ノ」
ボス「美形がイッパイで暗黒女王陛下もことのほか御満足だな!(´∀`;)‥‥い、いやいやいやそうではなく、NPCもおねえさま属性が多いしなかなかオトナなカンジではないか(ごーりごーり)」
こうさくいん「有名NPCでもマルガレーテ王妃にアンセル王子にヒルダたんやノエルたんや推定オーレリアママぐらいしか持ってないでしゅからね〜ヽ(´ー`)ノ」
ボス「いやいやいやブレダ王国を舐めてはいかん。1stをよく見れば予言者エロイーズ様も持っているのだ。(笑)
 さて一人異色を放っているハーランドはアルドールがメインのBoAでは割と多い戦士系のキャラクターだ。相手にペナルティを与える技の多いレクスも有効に活用できよう。彼の場合はディアボルスの《主我》持ちで自分自身が実は魔器というのがポイントだな」
こうさくいん「そしてクレリアたんはウェントスの入った吟遊詩人、メインはファンタスマで《魔獣召喚》相当の歌が幅広いのでしゅね〜」
ボス「そしてオスヴァルト卿はあのノエル・フランシス・エルマー団長率いる神聖騎士団の副団長。おそらく全国のBoAファンの皆様の分身の中には他に何人か副団長がいそうな気がするがこの話ではまあそういうことなのだ。(笑) 騎士のアダマスにマーテルを重ねた聖騎士系のキャラクターも割と定番だが、オズの場合は放浪者だった過去を踏まえてウェントスが入っているのが特徴だな。ある少女を庇って失ったために右手は一般技能の《義肢》、LoGの因果律で救世母マーテルの聖血もその身に宿しているぞ」
こうさくいん「そして! オズぽんは。密かにノエルたん萌え一筋なのでしゅね!(☆w☆)」
ボス「Σ( ̄口 ̄;) マジメな本文では敢えて書いていないのになぜそういうことをばらすのじゃぁ。今日はしっとりとオトナにいくのじゃぁぁぁ」



第一章 翡翠の盾


 ヤーデシュタットには割合と坂が多く、平らな中心部には建物が密集している。そんな目抜き通りにある有名な酒場が《伯爵亭》である。かつての伯爵邸を改造して店にしたとかで、中もかなり広い。
 夕方早く、まだ客足も少ない頃。酒場の扉が開くと、何やら明らかに場にそぐわぬ雰囲気を纏った一人の若者が現れた。
 まだ二十にもなっていないであろう若者はさほど背も高くなく、逞しくはあるが線も少し細い。肌の色が濃く、着ている服は薄い。色とりどりの小石をつけた首飾りに右の腕にも腕輪を嵌めていた。

 目は深い碧瑠璃(アツーアブラウ)の色、青みを帯びた髪は高価な油でもつけているようにしっとりと濡れ、顔立ちも美しい。どこか瀟洒な気品を帯びたいずこかの異国の身分ある少年かとも見えるが、緊張したようにあたりをきょろきょろと見回すその様子はどうにも何か違うようにも見える。

アリアン、碧瑠璃の公子、青玉の槍の使い手

 大命を帯びていざ地上世界にやってきた公子(クローネプリンツ)アリアンの目にまず入ったのは、店の壁に堂々と飾ってある見事な(シルト)だった。
「ははーん、お客さん、初めてだね」 店の奥から主人が声を掛ける。
「その翡翠の紋章は、ラインフェルデン伯爵の家系に伝わるものなんだよ。この店は邸宅を造り直して出来てるのさ」
 感心したように聞く美しい若者に向かって、主人は店の名の由来を語った。


 五十年前に断絶するまでこの地を治めていたラインフェルデン(グラーフ)はケルファーレン公国(ヘルツォークトゥーム)の貴族であり、栄えてゆく交易を後押ししたり、厳しい年には税を低くしたりと民にも称えられる領主だった。だが男子に恵まれず、子は令嬢アウグスタひとりきりであった。
 そんな伯爵領にある日、物静かな放浪の騎士がやってきた。その騎士ディートリヒはかつての伝説の王に連なるホルハイムの血を引いていると言われていた。伯爵は彼を迎え、騎士はこの地に留まることとなった。
 騎士ディートリヒが令嬢(フロイライン)アウグスタを愛したのかは語られていないが、後に婚約が結ばれ、伯爵領には跡取りができたのである。
 だが、ディートリヒには令嬢よりも深く愛する女ができてしまった。それはそれは美しい河の乙女(フルス・メートヒェン)だったという。嘆き、だが真摯な謝罪に心打たれたラインヘルデン伯爵は愛娘とディートリヒとの婚約の破棄に応じた。しかし、愛する男を奪われた令嬢アウグスタは怒りに我を忘れ、二人が密会を重ねている洞窟へ向かった‥‥


「だが、令嬢アウグスタは誤ってディートリヒを殺してしまい、呪いの言葉を吐きながら自らも崖から身を投げた。伯爵は嘆いて病に伏し、そして、跡取りの消えた伯爵領は断絶した‥‥そう、伝えられているはずです」
 昔話の後を継いだのは一番近い席に座っている薄墨色(グラウ)の髪の若い騎士(リッター)だった。河の世界からやってきた公子にも勝るとも劣らぬほど顔立ちも整っている。オスヴァルト卿は神聖騎士団に入る前の少年の頃は世を放浪しており、団員となってからも各地を巡っているため、種々の伝説(レゲンデ)の類いにも詳しかったのである。
「よく、ご存知ですね」
 人に姿を変えられる自分の義姉たちも、よもや陸の世界にこんな悪さを働いてはいないかと不安になっていたアリアンは、物知りの騎士に声を掛けた。
「いえ、大した事ではありませんよ」
 オスヴァルトは包みの中から強い光を発する小さな緑柱石(スマラクト)を取り出した。
「それに、失礼ですが貴方もまた伝説の中の民なのではないですか? 河の‥‥皇子よ」
 さる人物の遺言で預かったこの宝石はザルム族が近付くと光を帯び、そのお陰で彼はこの《伯爵亭》の中でただ一人、アリアンが店に入ってきた時からその正体を知っていたのである。
「そ、それは‥‥河の護り手のしるしですか?!」
 心底驚いた公子アリアンは店じゅうに聞こえるような声で答え、客たちは身分あるようにも見える若者の様子に不思議がった。
 オスヴァルト卿は語った。ある支流の河を護る任を帯びていた人物が死ぬ時、この宝石(エーデルシュタイン)を託されたと。汝はいつか河人と出会う定めにあり、その時にこの宝石を返してほしいと頼まれたと。そして自分の名を名乗る。アリアンは輝いている小粒の宝石を受け取り、そして緊張しながら自分も名乗った。
「“鉄の右将(アイゼンリヒテ)”だって? オスヴァルト卿がこの町に来ているのか?」
 騎士の名を聞いて驚いたのは店の主人だった。栄えあるかな、エステルランド神聖騎士団の名声はここまで聞こえていたのである。
「こいつはありがたい。だとしたら、この町を見捨てないで欲しいもんだ‥‥」
「騎士は国を護るものと言いますが、国の礎は民ありてこそ。困っている人々を見捨て、何の為の騎士と言えましょうか。私にできる限りの事はいずれやらせていただきます。――では、また」
 しばらく遺言相手の公子とことばを交わしたあとに会釈し、騎士は店を出て行ってしまった。


(マイスター)、今の方は確かに?」
 初めて入った店で早くも正体を看破されてしまった公子アリアンは主人に尋ねた。主人はうんうんと頷く。
「ぼくも聞いたことがあります。陸の友人の国、エステルランドという国に、ハイリゲヴァイセリッターという名高き騎士団があると」
「ああ、その通りだとも」 主人(ヴィルト)は力強く頷き、そこで、皿を拭く手を止めた。「‥‥陸の友人だって?」
 慌ててアリアンは誤魔化し、そして主人は遠くを見るように言った。
「遠くの王都にいるオレの知り合いが前に言っていたよ。“騎士という者が何たるか知りたければ、シュイヴァン卿を見ろ”とかな。もっとも、その知り合いはもういないんだがね。ハハッ、あれはいつの話だったろう‥‥」

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主


 余談にしては長い昔話が始まり、それを聞く黝い髪の美しい若者の姿を、店の二階から見下ろす人物がいた。酔った男たちに一際輝いて見えそうな、何やら扇情的な服とそこから伸びる長い脚。紺碧(ラピスブラウ)の夜の瞳は階下の様子を認めると悪戯っぽく輝いている。
 ひと仕事を終えたマリアである。個室で男を悦ばせ、腕を組んで出てきた彼女は、初めてこの店にやってきた客に必ず主人が一席設ける翡翠の盾(ヤーデ・シルト)の話を聞きつけ、階下を眺めていたのだった。
 まだ続く主人の長い長い昔話をいたって真面目に聞いている若者にマリアは見覚えがあるどころか、その正体も知っていた。あのしっとりとした髪に隠れた首筋には、使徒(アポステル)フルキフェルのしるしが隠されているのだ。というのも、前に地上で行き倒れになっていたアリアンを見つけたマリアは、介抱して助けてやったことがあるのである。
 みずみずしい少年の姿は、その時とさして変わっていなかった。
「(‥‥あの時の坊やじゃないかい‥‥)」

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア



第二章 鎮魂の花


 夕闇迫るヤーデシュタットの港には、哀れ魔女(ヘクセ)の犠牲となった船の残骸が幾つか繋がれていた。大河(シュトローム)をさ迷っていた無人の船は後で見つかり、港に引かれて来たのである。嵐にでも遭ったようにマストは折れ、帆は破れ、甲板の上も荒れている。乗組員は死体も見つからぬままだった。
 船を探していたオスヴァルトは、遂にニコラウスの乗っていた商船を発見した。描かれていた商会の紋章に見覚えがあったのである。妻が丹精込めて作った翡翠細工(ヤーデヴェルク)と交易品を載せたまま船は主を失い、ぼろぼろになってこの町に戻ってきたのだ。旧友の形見の品もないその最期に、(くろがね)の騎士は静かに涙した。

「やれやれ、船ってのは脚が落ちつかないもんだな」
 と、不安げに歩きながら船の甲板に昇って来た者がいる。傷痕がその戦歴を語る傭兵姿の銀髪の大男だった。槌にその魂を移してからハーランドは船と縁がなく、偽の体の脚をそろそろと踏み出しながら歩いて来た。それもそのはず、重い戦槌の魔器は水に落ちたら溺れるどころか沈むしかない。

ハーランド、震天槌の使い手、早瀬の姫を探す者

「よう、にーちゃん。知り合いか?」
 ハーランドは膝をついてうつむいている若い騎士に声を掛けた。
「この船の持ち主が死んじまったってトコかい。確かに酷い有様だな」
 布で顔を拭き、騎士は立ち上がった。両者共に大柄なハーランドとオスヴァルトは頭の位置も同じぐらいであり、ハーランドの方が若干高い。

 整った容姿をもつ若き神聖騎士団(ハイリゲヴァイセリッター)副団長は、傭兵(ゾールドナー)の顔をまじまじと見つめた。
「‥‥‥‥? まさか‥‥ハーランドさん?」
「?? 誰だっけ?」
 人の姿をとった魔器ハーランドは眉をひそめた。彼から見れば人間だった頃の記憶にも、人間でなくなってからの記憶にもない顔であった。

オスヴァルト・シュイヴァン、鉄の右将、聖盾の乙女に仕えし騎士

「いえ、もう十‥‥数えると十一年ほど前ですか? しかし、あなたは変わっていませんね」
「‥‥あぁ、オズか、あん時の美少年か! でっかくなったな‥‥」
 それは少年だったオスヴァルトが、後に一生そばにいることを誓うことになる、ある少女と邂逅を果たす前のことである。道端でなんともやる気のなさそうに座っていた旅の傭兵を見つけたオズ少年が恐る恐る話し掛けてみると、意外にも善い人で数々の冒険談を語ってくれたのである。数日後に何処へともなく傭兵は消えてしまったが、オズ少年の胸に冒険への強烈な憧れは残ったのだった。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ


 そして実際に騎士(リッター)になり数々の冒険を体験することになったオスヴァルト卿が、無骨な外見も一見やる気のなさそうな態度も十年の昔からさして変わらぬ傭兵(ゾールドナー)ハーランドの不変ぶりに首を傾げていると、司祭(プリースター)の一団がやってきた。二人も船から降り、町の人々と一緒にその弔いを眺めた。
「天にまします我らが母よ、救世母マーテル様、非業の最後を遂げた彼らの魂の安らかならんことを。暗い水に呑まれた彼らの魂が天に昇り、そしてまたこの地に還らんことを。この花もて彼らの魂を護り給え」
 清楚な雰囲気を漂わす女性司祭(プリーステリン)が祈り、併せて侍祭たちが(ブルーメ)をまいた。暗い水面をゆっくりと漂っていった花はやがて、流れと共に岸を離れていった。
 金髪を結い上げた品のある司祭だった。そばにいた町の住人が二人に、この地に逗留中の司祭ドロテア様だと教えてくれた。
「慈悲深きマーテル様はこれ以上の死をお望みになりません。‥‥これよりこの河を下るのは、おやめになった方がよろしいでしょう。未だ、光は見えていないのですから」
 ドロテア司祭が語り、町の人々の間から沈痛な溜め息が漏れる。
 だがそこへ、共にやってきた司祭一行の中から黒髪の女性が進み出ると、美しい声でそれを遮った。

クレリア、星降る詩、失われた歌の探し手

「司祭様、今こそ光はあります。この町にアルカナの力が集まりつつあります。偶然という運命に集いし力が、河の魔女を打ち払うことでしょう」
 星の詩人クレリアであった。光のない瞳で面々を見渡すと、不思議な声で勇気付けられた人々の間からどよめきが漏れた。

「集まった力はひとつになりましょう。この方たちもそのひとつ」
 見えない目でオスヴァルトとハーランドの方を向いて微笑むと、二人を指差す。途端に周りの人々の注目が二人の戦士に集まった。
「なるほど、さきの詩人殿。光がないからこそ見えるものもあるか‥‥」
 エステルランド神聖騎士団員オスヴァルト・シュイヴァンは胸の十字架(クロイツ)に左の手で触れると呟いた。
「魔女を誅せんと集い、志を同じくする者に会うのもまた、アーの導きといえましょう」
 一方のハーランドは無用な注目を浴びて鼻白んでいた。かつてクレリアと会い、聖痕(スティグマ)の秘密を知った彼は聖痕者(エングレイヴド)の使命を知ってはいるが、この町にやってきたおおもとの理由はと言えば、忘れ難きあの女に逢うためである。
「その使徒ディアボロスの力、頼りにしています。貴方の姿をこの目で見ることはできないけれど、その“力”を感じることはできますから」
 吟遊詩人に言われ、周りの人々に手まで合わせられ、オクタール人の戦士は観念した。内なる不安を抑え、適当に答える振りをする。
「‥‥仕方ねぇな。ま、オズがどんだけ頼りになるかにも興味あるしな?」
 吟遊詩人クレリアは企みのそぶりなど何も見せず、ただにっこりと笑い返すだけだった。
「これが恵みだというのなら、救世母様の御慈悲に感謝せねばなりません。この町を憐れみ、力を貸してくれるのなら、この町と私への大きな恵みです」
 司祭ドロテアが十字を切って感謝を示し、侍祭たちもそれに習った。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団



第三章 不実の愛


 夜深まる頃。マリアは手土産を携え、孤独な夜を過ごしているマグダレーナの家を訪れていた。
 男が相手の商売をしていると、何もしなくても物が増えてくる。夜の踊り子(ナハト・テンツェリン)の見事な踊り(タンツェ)に惚れた男や忘れ難い晩を過ごした男たちは、やれ異国の宝石だの細工物だの珍しい酒だのと様々なものを、マリアの笑顔をお代に置いていくのだった。
 忘れ物を取ってくると家の奥にマグダレーナが消え、今晩はどの酒の封を切ろうかとマリアが思案していた時。彼女はふと床の上に折り畳まれた紙を見つけた。彼女が落とした書きかけの手紙のようだ。羊皮紙は民の間ではまだそれほどは普及していないが、特別な時には手紙にも使う。
 隣人の覗き見を主に詫びるほどマリアは信心深くもなく、そのまま紙を開く。それは男に宛てた手紙(ブリーフ)だった。

「親愛なるミハイル

 申し訳ありませんが、私はもう貴方とはお会いしません。
貴方との間の情熱は真実でしたが、本当に大事な人を失って、私は自分が愚かな行為をしていたと気付きました。
貴方を傷つけてしまうことに心より謝罪します。
でも、もう私には、夫をこれ以上裏切り続けることは出来ないの‥‥

 


 他人であれば中身を理解するのにもう少し掛かっただろうが、男と女の間のよしなしごとに通じたマリアにはすぐにぴんと来た。
「(‥‥浮気? 別に悪かないけど、そんなことできない(ひと)だったのに‥‥??)」
 マリアが考え込んでいると、マグダレーナが奥から帰ってくる。
「ごめん、やっぱり切らしてて‥‥。マリア。その手紙‥‥」
 旧友の来訪に明るい表情とふだんの快活さを取り戻していた若き未亡人(ヴィトヴェ)は声を失い、しばし立ち尽くした。

「‥‥そう。私はニコラウスをずっと裏切っていたの‥‥」
 声を落とし、マグダレーナは語った。
 彼女が作る美しい翡翠細工(ヤーデヴェルク)を満載し、ニコラウスはいつも船の上にいた。これほどの細工物にこの珍品なら、向こうのあの町でも売れるだろう、海を下ったあの町にも届けよう、と、どんどんと遠くへと出航していった。家は空けたまま、仲のよい夫婦と近隣には評判でも、マグダレーナは独り夫の帰りを待つ寂しさに耐えられなかったのだという。
「彼が知ったら、なんて言うでしょうね。私はそう、罪深い不貞の妻だったのだから‥‥」
 耐え切れずに未亡人はさめざめと泣き出した。マリアは黙って椅子を立った。マグダレーナがふと目を上げると、豊かな金の髪をした世にも美しい踊り子(テンツェリン)がすぐ前に立っていた。(ナハト)のように深い紺碧の瞳が燃えていた。その白い手首がひるがえり、翡翠細工(ヤーデヴェルク)の腕輪が蝋燭(ケルツェ)の明かりにきらりと輝いた。
 大きな音が響き、マグダレーナは泣くのも忘れて叩かれた頬に手をやった。
「しっかりなさい」 マリアは言った。「アンタがやることはひとつでしょ」
 はっとしたようにマグダレーナは旧友の顔を見つめた。それから我に返り、手紙の最後に署名を入れるといそいそと畳み出す。
「そう‥‥そうよね。あの人が、空から見ているかもしれないしね」
 席を立ち、色つき蝋燭の蝋を垂らすと上から印を押して封をする。

マリア、夜の踊り子、暁の子の鎖

「まったく、久し振りに来たんだから、アンタの泣いた顔はもう見たくないわよ」
 マリアは手土産の袋の中を探し、中で一番上等の貴腐ワイン(ヴァイン)の大瓶を取り出した。どしんと机の上に置くと涙を拭く彼女に微笑む。
「いいこと、マグダレーナ。今晩は付き合いなさい」


Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア


ボス「独り夫を待つ身はあまりに寂しく、愛は全てに打ち勝つという訳ではないということか‥‥人生の機微だな。そしてマリアお姉様がオトナだぞ!(´ー`) さて解説をするのだ」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。詩人や踊り子はウェントスが多いけどマリアお姉様はあえて外してコロナ=ステラ=アングルスでしゅ。特技はみんな支援系、希望が18もあるのがスゴイでしゅよ〜(笑)」
ボス「うむ。一般技能の《芸術:舞踏》でも表現できるからな。プレプレアクトで送付されたデータにはなかったが、きっと《芸術:娼妓》も隠されているに違いない(ニヤリング)」
こうさくいん「なんか聖痕位置が下腹部で共振が出血とか書いてあるでしゅよ〜どうするんでしゅか〜〜(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
ボス「Σ( ̄口 ̄;) ええぃそれくらいで震えるなぁ。面子が変われば雰囲気も変わって当然じゃぁ。今日はしっとりとオトナなカンジでゆくのだぞ。だいたいエレガントN◎VA関連には萌えキャラは多くてもオトナがあまりいないからのう(ニヤリング)」



第一部 挽歌は奔流の如く 伝説】【前編】【後編
第二部 さらば、麗しき波濤よ 幕間】【前編】【後編

-大河の水先案内-
Sword from BoA Sword from BoA
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