Klagelied ist Flutgleich - 挽歌は奔流の如く
〜さらば、麗しき波濤よ 第一部 挽歌は奔流の如く〜
ダーククイーン陛下&フクムラお兄タマと遊ぼう!

第一部 挽歌は奔流の如く 伝説】【前編】【後編】
第二部 さらば、麗しき波濤よ 幕間】【前編】【後編

-大河の水先案内-
(河霧彦陛下のお達しによりIE5以上で見られたし。)



第四章 夜の片隅で


 ヤーデシュタットの大通りは夜になると各所に明かりが灯るが、それでも昼間とはだいぶ様相が異なる。金を持った男たちは酒場へ繰り出し、夜の女たちは今宵の客を物色し始め、善良な領民たちは家へ帰る。
 そんな盛り場を、気にした様子もなくぶらぶらと歩いていく大柄なオクタール人の男がいた。勝手にぶつかってくる酔っ払い達も、男の体の盛り上がった筋肉と走る傷痕に気付くと何事か呟いて去ってゆく。
 ハーランドである。あいにく持ち合わせが少なかった彼はどこで金を使えるわけでもなく、結局宿に帰ろうとするところだった。
「そこの御仁、この婆が占ってしんぜよう」
 暗い道の脇から声がした。ハーランドが振り向くと、長衣で顔まで隠した何やらいかにも怪しげな風貌の老婆が佇んでいた。客引きや危うげな物売りではなく、腕輪やら指輪やらの発てる音を聞くと占い師(フォーチュンテラー)の類いのようである。
 ハーランドは腰の袋の中をまさぐった。増えてくれるわけでもなく、中にはフローリン銀貨がただ一枚あるだけだった。寂しい限りである。
「なぁ婆さん。後払いでもいいかい」
「――そなた、誰か人探しでこの町に来たようじゃな」
 ハーランドの返事を無視して老婆は言った。鎧をつけないまま胸を刺されたような衝撃を感じ、銀髪の傭兵(マーセナリー)は動きを止めた。
「‥‥そなたの探し人はもう死んどりますぞ。再び逢おうなどと思うても無駄。いつまでもこの地にいると、悔やむことに‥‥」
 ハーランドは占いの類いを人間だった頃も戦槌に魂を移した後もあまり信じていなかったが、この老婆はその胸の内を正確に言い当てたのである。
「‥‥フン。話し半分に聞いとくぜ」
 動揺を隠し、ハーランドは銀貨を袋の中に戻した。
「お代は次に会う時でいいよな」
 老婆の前にこれ以上いるのが嫌になり、ハーランドは踵を返すとさっさと歩き出した。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ

 と、街角の角灯の下で彼を待っていた者がいる。物静かで清楚な雰囲気が、夜の町とひどく場違いに見えた。額の水晶(クリスタル)の飾りが灯りに輝いている。半ば無理やりハーランドに協力を焚きつけた盲目の女詩人(バード)であった。
「探しましたわ、ハーランド」
「クレリアか‥‥オレは宿にいるっていったろ」
 常に目を閉じた詩人は小首を傾げ、ハーランドの後ろに見えない視線をやった。
「あの占い師と、話をしたのですか?」
「いんや。勝手に占ってもらっただけだよ」
 気だるげに答え、頭をかく。だがクレリアの光のない瞳が、忘れ難い思い出の女を探してやってきた男の顔をしっかりと見据えた。
「でも、貴方からも、水の匂いがします‥‥」
 はっとしたハーランドは動きを止めた。その場で振り返るが、老婆の姿は影も形もなかった。何者だったのだろうか。占いの内容に気を取られ、老婆の外見や匂いなど何も覚えていなかった。
 しばし呆然として無人の暗い路地を眺めていると、クレリアが軽く手に触れ、帰りを促した。ハーランドはちらりと暗闇を振り返りながら、彼女に続くのだった。

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア



第五章 公子の災難


 ところ変わり日も変わり、まだ太陽も中天に高い《伯爵亭》。この時分から酒を飲んでいる者はたいてい飲んだくれや酒で忘れたいことがあると相場が決まっている。何やら独り言を呟きつつしんみりと杯を傾けている老人もその一人だった。
「‥‥ったく、初めての船出がこんなことになるたぁな‥‥。神さんがいるなら、なんて酷い仕打ちをしたもんだ‥‥」
「ご老人。話を聞かせてくれませんか」
 河の魔女(ヘクセ)の話と知って、その向かいの椅子に腰掛けてきた人物がいる。濡れたような黝い髪をした美しい若者だった。船乗り(マトローゼ)の老人は突然の同席に面食らい、そして目を細めると相手を見つめた。
「ほう‥‥。おまえさん、この町の人じゃないね」
「わ、分かりますか?」
 公子アリアンは目を丸くして心から驚いた。とはいえ気品ある貴族の子弟のようにも異国の朴訥な王子のようにも見える雰囲気をどこか漂わす彼は、誰がどう見ても場違いであり、老人にもっと酒が回っていてもやはり同じことを言っただろう。
「ふふん。老いたとはいえワシの目は鈍っちゃおらんよ。綺麗な顔だが、おまえさんの目は真摯な情熱に溢れとるな。ワシが初めて船に乗った時も、おまえさんぐらいの年じゃった‥‥」
 老人は語り出した。そして船乗りとして波乱の人生を歩んだ老人には息子がいた。皆にその死を惜しまれたニコラウスと同じぐらいの息子だった。そして、その初めての航海で、魔女ブルティーゲヴェーレの魔力に囚われた息子は還らぬ人となってしまったのだという。
「ワシが船を作ってやったんじゃが‥‥無駄になってしまったな‥‥」
「そうですか‥‥」
 しんみりとした雰囲気の中、アリアンは老人の話を真面目に聞いていた。その手がふと、右手にはまった腕輪に触れた。その中に光る珍重な青玉(ザフィーア)の中に隠された力こそ、天の星の力がザルム族の元にあることの証し、公子の持つ魔女(ヘクセ)を討ち果たすべき刃なのである。

 その時、アリアンに後ろから不意打ちを仕掛けてきた人物がいる。水中においては比類なき強さを誇るザルム一族も陸においては弱いのか、あるいは鈍感なだけなのか、とにかく不意打ちは完璧に決まった。刺客は老人の目をも醒ます程の美しい女、そしてその武器は豊満な胸であった。
「あら、アリアンちゃんじゃない!」

「これも、あの魔女の所業‥‥ど、どわぁあぁぁぁぁぁ」
 いきなり後ろから抱きつかれ、河の王国の公子(クローネプリンツ)は情けない声を上げると盛大に椅子を蹴飛ばすとひっくり返りそうになった。老人が口をあんぐり開けている前でなんとか体勢を立て直し、体を撫でてくる白い手から逃れる。
「あなたは‥‥マ、マリアさん??」

アリアン、碧瑠璃の公子、青玉の槍の使い手
マリア、夜の踊り子、暁の子の鎖

「アンタも変わってないわねぇ。ちゃんと食べてるの?」
 両腕を腰にやり、床から自分を見上げる美しい若者の姿を頭の上から爪先の先まで眺め、マリアは言った。確かに少年は逞しくはあるものの相変わらず線が少し細く、マリアが相手をしてきた男たちに比べると胸板も薄い。

 と、一部始終を見守っていた老人もぽんと手を叩くと女を見上げた。
「おお、あんときの踊り子じゃねいかい! ワシももう十年若けりゃ、おまえさんみたいなイイ女は放ってはおかないんじゃがのう‥‥」
 老人は前にマリアがこの町に来た時に相手をした客だったのである。彼女は恥らうような笑みを浮かべると、老人の膝に手を置いた。
「やだ、今でも全然イケてるわよ」
“いい男としか寝ない”とはマリアがいつもうそぶいている台詞だが、その基準は商売仲間やらから見てもまるででたらめだともっぱらの噂だった。とはいえ、一生懸命に何かに打ち込んでいたり危うい境界線上を走っている男は、マリアから見ていい男の基準に入るのである。
「‥‥マリアさんがここにいるということは、あの魔女のことで?」
 アリアンが声を小さくして問う。
「そんなトコね。どうせアンタが地上にまた来たのも、そのせいでしょ」
 マリアが答える。前に地上世界にやってきた折、早くも行き倒れとなってしまったアリアンを救ったのはこの美女なのである。口移しで水を与えたマリアは、ついでに若者の唇も御馳走様になっていったのだが、気を失っていた碧瑠璃の公子はそんなことは何も覚えていない。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主


 と、騒ぎを見て話を聞きつけていたのか、さらに卓に現れた人物がいた。
「ご老人。話を聞くと船乗りのようだが、船を貸してくれないか」
 甲冑は着ていないが衣装は騎士(リッター)、河の世界からやってきた公子(クローネプリンツ)にも美しい夜の踊り子(ナハト・テンツェリン)にも劣らない整った容貌をした、薄墨色(グラウ)の髪の長身の若者だった。
 オズワルド卿である。会釈されてアリアンが頷き、騎士様の姿を見た途端にマリアがしどけなく組んでいた脚を揃え、胸元を直して居住まいを正した。
「おお、あの魔女を退治してくださるのかい!?」
「民草を守れない騎士など、何の価値もありません。なれば私の為すべきことはこれ以上の犠牲が出る前に、魔女を討ち取ること」
 老人は顔を輝かすと話に聞き入っている。
「‥‥ねぇ坊や、あの騎士サン、知り合い? アタシにも紹介しなさいよ」
「そ、そんなに強くつつかなくてもいいじゃないですか」
 マリアとアリアンがじゃれあっている横で、話は何時の間にか進んでいた。
「こいつはありがてぇ。早速準備に取りかからなきゃな‥‥」
「約束しましょう。この、十字架に誓って」
 深い思い入れのある胸の十字架(マーテル・クロイツ)に触れ、エステルランド神聖騎士団副団長オスヴァルト・シュイヴァンは老人に約束した。
「そうと決まりゃあ話は早い。早速船を見てくるわ。‥‥ワシも、自分の手で戦うことができたらな‥‥」
 束の間、歳を悔やむ老人の肩をぽんと叩くと、マリアは付け加えた。
「手を出せないのは恥じゃないのよ」
 アリアンも微笑んで頷き、二人は船の準備のために出てゆく老人を見送るのだった。

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア


ボス「ジツはここでマリアお姉様はコロナの特技《縁故》を使っているのだ。王の末裔や貴族が使うさまが思い浮かぶが、夜の盛り場でこそ輝く美女が使ってもおかしくなかろう(笑)」
こうさくいん「マリアお姉様がアリアンぽんをフォローして。クレリアたんが一行をまとめて。ついに話は佳境でしゅね!(≧▽≦)ノ」
ボス「うむ流石は一部周知‥‥いやそうではなく、かくて星の欠片は互いに惹かれ合い、その身に光を宿した者たちは集う定めにあるものなのだ。うむ、なんと見事なステラっ面」
こうさくいん「でも‥‥クレリアたんはステラ入ってないでしゅね‥‥(>_<)」
ボス「(ギク)いやいやそこはほれ、言霊の秘密を知る詩人の美しき歌声が一行を導くのじゃよ(ごーりごーり) ステラの聖痕はマリアお姉様が持っているのだったな」
こうさくいん「でも‥‥マリアお姉様はあんまりステラっ面で導いてないでしゅよ‥‥(>ω<)」
ボス「(ギク)いやいやいやそこはほれ、きっと肌を重ねたオトコたちを導いておるのじゃよ(ごーりごーり) 無垢の翼アングルスも未来に入っているのだな」
こうさくいん「アングルスっ面はむしろ‥‥激しくボケているアリアンぽんとか‥‥(>ω<)」
ボス「(ギク)いやいやいやいや、さてさていよいよ話も佳境なのだ。(ごーりごーり) 霧煙る大河より響く乙女の哀しい調べに耳を傾けようではないか」



第六章 天の使いは来たり


 ヤーデシュタットの教会(エックレーシア)にて。礼拝堂(カペルラ)で二人の女性が話し合っていた。清楚な雰囲気を漂わす地味な礼服の司祭(サセルダ)はドロテア、光のない瞳で彼女を見つめているのは吟遊詩人(ポエトリア)クレリアである。
「逗留の期限が参ったのです。この一件の行く末を見届けることができぬまま、この地を去ることになるかもしれません」
 司祭ドロテアの(ウィリデ)の瞳には涙が宿っていた。
「わたくしもかつてはこの町の出でした‥‥。魔女の災いを残したまま、この地を見捨てるようで無念です」
「泣かないで。そんな、心配しないでください」
 目が見えないにも関わらず、その様子を察したクレリアは言った。
「彼らの力ならば、きっと魔女を打ち倒すことができます。わたしもそれを助けましょう」
「神はなんと頼もしい助けをもたらしてくれたのでしょう‥‥救世母様の加護のありますように」
 司祭ドロテアは魔女(マガ)が潜むと言われている岩礁一帯の場所を語った。町のそばにある大河(フルーメン)キルヘンが一望できる崖の上からも、見える場所なのだという。
 司祭に別れを告げ、クレリアは教会(エックレーシア)を出た。と、入口で侍祭の娘が来客と話をしている。教会の門を叩いた者は、茶色の髪を三つ編みにした、町の若い女だった。
「司祭様はおられるでしょうか。神の裁きを‥‥受けなければなりません」
「あ、はい、ドロテア様は礼拝堂に。告解室も空いております」
 そんなやりとりを聞いていたクレリアは呟き、教会を出ていった。
「神は裁くものではなく、救うもの。とはいえ、告白が必要になるときもあるでしょう」
 告解(コンフェッシオ)のために門を叩いた女は夜の踊り子(サルタートニクス・ノクス)マリアの旧友であったことを、クレリアはまだ知らなかった。

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア



第七章 星の集う時


 ヤーデシュタットの港。老人が貸してくれた船の準備が整い、いよいよ出発の時が近付いた。桟橋には町の人々が集まり、聖痕者(グラヴィエールト)たちの船出を見守っている。ドロテア司祭と教会の面々、息子を失った老人や夫を失ったマグダレーナ、《伯爵亭》の主人まで来ていた。

「最大限の努力はします。願わくばアーの加護を」
 オスヴァルト・シュイヴァンは神聖騎士団(ハイリゲヴァイセリッター)の紋章もまぶしい白銀の重甲冑(パンツァー)に剣と盾を携え、完全武装だ。胸に下げた十字架(クロイツ)に触れ、人々に応える。

オスヴァルト・シュイヴァン、鉄の右将、聖盾の乙女に仕えし騎士

 吟遊詩人(ポエトリア)クレリアもふだんと変わらぬ様子で人々に応えている。そして、傭兵(マーセナリー)ハーランドは半ばやる気のなさそうな態度を見せながらも、出航の準備をしていた。またしてもクレリアに焚き付けられたのである。
「未練があるわけじゃ、ないんだがな‥‥」
綱を解いて準備を終え、ふと水面に手を入れると、手ですくって口付けする。誰にも見られていないつもりだったが、見るとクレリアに見られていた。いや、盲目の吟遊詩人(バード)は目は見えぬはずだが、彼女の光のない閉じられた瞳には彼が見えているようだった。
「貴方は、河の香りを漂わせていますね」
「なんだよ」
「まるで、伝説のザルムのよう‥‥」
「知るか!」
 ハーランドはそっぽを向くともやい綱を解いた。剛力にものを言わせて重い綱を一気に陸に投げ上げ、棹で桟橋を押す。
 船はいよいよ港を離れ、大河(シュトローム)キルヘンへと乗り出した。岸では町の人々の見送りの声がいつまでも響いていた。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ


 岸を離れて間もなく、三人は船中央部の下の方から物音を聞きつけた。狭い船倉があるところである。
「ほら少年! 狭いんだから早く出なさいよ」
「あ、は、はい」
「もう、そんなにアタシに抱きつきたいの?」
 扉が開き、何やら口論しているようにもじゃれあっているようにも見える二人組が出てきた。背の高めな麗しい美女が一人と、それより少し背の低い美しい若者だった。町の人々の人目につくのを避けたのか他の理由か、船倉にいたのはマリアとアリアンであった。
「マリア、来てくれると思っていました」
 光のない瞳を向け、星の詩人(ポエトリア・ステルラ)クレリアは訳知り顔で頷いた。かつて二人は酒場でぴったりと息の合った歌と踊りを披露し、意気投合した仲なのである。
「ま、ツレの夫が沈められたとあっちゃ、アタシも黙っちゃいられないからね」
 マリアは行く手の川下に目を凝らした。
「そちらは‥‥」 クレリアは美女の連れに見えない瞳を向け、またしても訳知り顔で微笑んだ。
「もう一人、河の香りを漂わせる者が来たようですね」
 大命を帯びて地上にやって来た公子(クローネプリンツ)アリアンは、またしても正体を看破されていることにぎくりとするのであった。
「‥‥リア。マリアッ!」
 と、岸を走りながら、船に手を振って叫んでいる女がいる。その様子に気付くとマリアが舷側にとりつき、手を振った。マグダレーナであった。
「死んじゃだめよっ! あなたは必ず帰ってきて‥‥幸せになってね!」
 内なる感情をほとばしらせたその声には悲痛な響きさえ混じっており、まるでこれがマリアとの今生の別れであるかのようだった。だが悲しいかな、船と岸の間は距離が離れており、若き未亡人(ヴィトヴェ)のただならぬ様子は船の上の面々には察することができなかったのである。
「スープあっためといてね!」
 マリアは精一杯の声で応え、船はいよいよ大河キルヘンの流れに乗っていくのだった。

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア



第八章 早瀬の姫よ何処


 遠き山々と白竜の棲むトリエル湖を源とし、枝分かれしたり交わったりしながら西の大海に流れ込む大河(シュトローム)キルヘンは、河とはいえ広く流れも力強い。
 不気味な(ネーベル)が夜でもないのにあたりを薄暗くし、視界を狭めた。心なしか河の流れも速くなっている。
 魔女(ヘクセ)が惑わしの歌を歌うという岩礁の上には何もいなかった。だがどこからか、物哀しい歌声が響いてきた。
 銀髪に水滴をまとわりつかせながら、帆先で行く手に厳しい目をやっていたハーランドははっとした。その声は、忘れようとしても忘れられない、あの女の声によく似ていたのだ。

若き日の旋律は 既に止んでしまった
命の春はいつのまにか 去ってしまった
罪深きこの身など 今さら惜しむまい
生き長らえたとて 愛しき声は二度と聞けぬ‥‥


 人間のノッティング語に似たその言葉は、河の民(ザルム)の使う言葉であった。
「シオナ‥‥生きていたのか‥‥‥‥」
 ほっとしたようなさらに不安になったような、複雑な想いを抱きながらハーランドは呟いた。

 複雑な気分になっていた者はもう一人いた。
「ヴォーゲン王、ぼくはどうすればいいのでしょうか‥‥?」
 舷側でだらりと落とした手を水の中にやり、暗い水面に目をやっていたアリアンである。河の生き物全てを統べるザルム一族の一員として、与えられた王命は魔女(ヘクセ)の討伐。だが、よもや相手が自分と同族かもしれぬとあれば、その(シュピーア)の穂先が鈍ってもおかしくない。
 母なる大河キルヘンは常に河の王者の一族を守護し、時として幻視によって民を導く。波間に目をやった悩める公子は、その中に(ビジオーン)を見た。


 ほの暗い洞窟の中、規則的に音を発てる波打ち際に死体が流れついた。人間の女の死体であった。
 そこへ近付いてきた者がいる。深い水底のような青の混じる黒い髪を長く伸ばした、それはそれは美しい河の乙女であった。
 流れついたのが死体が女であることを認め、乙女は悲しそうに首を振るとその長い髪に触れた。亡骸を奥へと引き摺っていく。そして、何処からか人間のもう一体の亡骸を持ってくる。少し大きなそれは、男の亡骸‥‥

 アリアンが我に帰ると、船は岩礁のそばの洞窟近くに上陸するところであった。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主


 一行はハーランドを先頭に、洞窟に入った。湿った洞窟には遠くからせせらぎの音が聞こえ、どこから入ってくるのかキルヘン河の水が足元を流れていく。その水は汚されておらず塩気もなく、河の王国の民には河の力の助けを約束するものだった。
 しばらく進むと天井が高くなり、大きな広間に出る。一面に並べられていたのは二人で組に並べられた亡骸だった。老いも若きも、船乗りも商人も、遺体は様々であったが、おかしなことに男女で一組に並べられている。そして遺体は互いの髪の毛で結ばれてひとつになっている。
 おぞましくも闇の力を匂わせる光景であった。一行の体に刻まれた使徒のしるしが嘆きの声を上げる。
 そしてよく見てみれば、女の亡骸の方がいたみが激しい。男の遺体は水の世界に沈んだ全ての亡骸を集めているように見えるのに――女の方は子供や老人の小さな遺体が見当たらなかった。
 ずっと奥の方には水面への出口が見えている。そこから吹いてくる風に潮の香りが混じっていることを考えると、繋がった先はキルヘン河ではなくどうやら河口の先の(ゼー)に近いようだった。
 亡骸の間を回ったオスヴァルトたちは変わり果てたニコラウスを見つけた。結婚指輪と身につけていた品から分かったのだ。

 ゆらり。一行の背後で空気が動いた。
『私の領土に迷い込むなんて‥‥なんて愚かな方たち』
 その声は美しく、言霊の力を操るクレリアの歌声にも劣らぬものだった。
『ちょうど、まだ男の亡骸が足りなかったのよ』
 腰まで長く伸びた髪は水底の深い(ブラウ)の混じる黒、公子アリアンと同じ色。薄物を纏った肌は蒼ざめて白く、哀しげな目は早冬の薄氷の色。
 だがその姿は、傭兵ハーランドの記憶の中にある早瀬の姫シオナと幾分異なっていた。髪が乱れ、返り血に濡れたように、ところどころが真紅に汚れている。そして、濁った色の水の塊のようなものが、赤き魔女(ローテ・ヘクセ)の体を球の形に取り囲み護っていた。
 即座にオスヴァルトが左手で剣を抜き、戦槌(ウォーハンマー)を手にハーランドが前へ踏み出す。アリアンも動き、三人の男の背後にマリアとクレリアが護られる形となった。
『この、腐れた水がある限り、誰も私に触れることすら出来ないの』
 互いの体に宿る聖痕が共振を始めた。今や自分自身となった力ある戦槌を構え、ハーランドがその元へ詰め寄る。
 闇の鎖に捕われた殺戮者特有の異形の幻影(ビジオーン)が彼女の背後に現れた。それは、腐れた身で竪琴(ライアー)を弾く貴婦人(エーデルフラウ)と、それに拍手を送る死人(トーテ)たちの奇妙な幻影だった。
「シオナ。シオナなのか?!」
『彼女はもう死んだわ』
 赤き魔女(ローテ・ヘクセ)ブルティーゲヴェーレは、姿を変えていないかつての恋人に寂しげに微笑んだ。
『ずっと昔に私が殺したの』
 その手にあった壊れた竪琴が鳴り、古きザルムの歌を奏でた。濁った水の流れが濁流となり、一行に襲い掛かった。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ


ボス「かくて洞窟の中で竪琴を奏でるのは、姫を殺したと告げる赤き魔女であったのだ‥‥。さて、魔女ブルティーゲヴェレのことを少し述べておくのだ」
こうさくいん「らじゃーでしゅー。アルカナはフルキフェル=ファンタスマ=アクシス。双蛇の杖相当の壊れた竪琴を携えた言霊使いにして魔術使い。本人は弱めだけど《魔獣召喚7Lv》+《幻影強化》で呼び出す魔獣が強いのでしゅ。《高速詠唱》の2ndアクションは《幻撃》+《魔球》+《井戸掘り》でさらに水の柱で攻撃。防御は《瞬間召喚》で《裏切りの代価》もいれて補強でしゅ!」
ボス「うむ。ファンタスマがメインだと魔獣の使い手となるのが基本だからな。魔獣扱いの腐れた波濤はよどんだ水そのもの。アルカナはアクアで《閃脚》《鉄拳》《徹し》に、クリーチャー特徴で《複数攻撃》《物理無効化》などなど様々に強化してあったのだ。範囲攻撃や転倒があったので少々てこずったな。なんでも前の版よりもデータ強化をアウトソーシングしたそうでデータが少し緋くなっていたぞ(ニヤリング)」
こうさくいん「をを? やっぱり本人のアルカナのフルキフェルはザルムなのでしゅね?」
ボス「星を帯びし者たちもみな怪しみつつも武器を取っていたのだが、それはいずれ分かるのだ」



第九章 血の如く赤く


 濁流が(シュピーア)となり、さらに水に覆われた地面から水柱が吹き上がる幻影が荒れ狂い、一行を襲う。オスヴァルトの右の腕の騎士盾(リッターシルト)が掲げられ、その幾つかを遮った。そして詩人クレリアの口から失われたアルカナの歌(カントゥス・アルカーナー)が漏れ、言霊が実体となって現れる。使徒アルドールの力は燃え盛る焔の剣(グラディウス・フラマ)の形となって現れ、濁流を止めた。
「ツレの仇だ、ここで取らせてもらうよ!」
 後ろから声が飛ぶ。それは汚れなき姫の清らかな声援ではなく、夜の酒場の美しい踊り子(テンツェリン)の声であったが、戦士たちに活力を与えていた。星の欠片がもたらす聖痕者の力は、剣や槍を操ることだけではないのである。
「殺したって、どういうことだッ!」
 足元の水を長靴で撥ね上げ、ハーランドが突進した。常人なら両手が必要な強く重い魔法の戦槌(ウォーハンマー)を片手だけで操り、力任せに魔女(ウィッチ)を囲む水の壁に叩きつける。かつて河の民の王に掛けられた呪いである腐れた海水はそれ自体が水であり、武器の類をなかなか寄せ付けない。だが魔法の震天槌はそれを打ち破った。
 魔女がいにしえの言葉を呟き、淀んだ水が盾の形を取ってそれを防いだ。見守るマリアの足首のしるし、彼女が尊い身分の出であることを示す暁の子コロナの聖痕が輝き、それを遮ろうとした。魔女の血に塗れた黝い髪に隠された希望の御子アングルスの聖痕が力を発し、さらに妨げる。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ

 一時とはいえ愛した男を前に迷いが生じたのか、それを振り切るように赤き魔女(ローテ・ヘクセ)竪琴(ライアー)に手を這わせた。腐った潮が槍となり、二人の戦士(ケンプファー)を襲う。敬愛する聖盾の護りならぬ夜の踊り子の声援が後ろから飛び、オスヴァルト卿は一瞬だけ早く動くことができた。左手の(シュヴェーアト)と義手の右手の騎士盾(リッターシルト)が同時に動き、ハーランドをも狙った槍を防ぐ。神聖騎士団員の武具と白銀の甲冑(パンツァー)は厚く、オスヴァルトは姿勢を崩して片膝をついただけで持ちこたえた。
「答えろって言ってるだろッ!」
 再び剛力にものを言わせ、なんとか水壁の魔獣を撃ち破ろうとハーランドが震天の槌で攻勢に転ずる。オスヴァルトは唯一神アーへの祈りの言葉を唱え始めた。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団

 一方、濁流の衝撃で転倒していたアリアンは頭を振って発ちあがると河の力を願い始めた。主の呼びかけに答え、右手首の腕輪の中から一瞬で槍が飛び出す。珍重な青玉(ザフィーア)の中に光る星型の輝きのように、六つに伸びた銀の穂先。そのうちのひとつには水の如く軽く透き通った柄が伸び、主に握られるのを待っている。
 ザルム族に伝わる魔法の槍、その名は星の青玉(シュテルンザフィーア)であった。足元を流れるキルヘンの水を纏ってさらに光を帯びた槍を握り、戦列へと走る。クレリアが救世母マーテルを称えるアルカナの歌(カントゥス・アルカーナー)を歌い、十字(クルクス)の形で顕現した使徒マーテルの力が戦士たちに力を与える。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

 ブルティーゲヴェーレの竪琴(ライアー)が鳴り、またもひとすじの不協和音が哀しみを混じらせたザルムの歌を奏でた。またも水の魔獣が潮となって鎌首をもたげ、戦士たちを狙った。
 だが足元の水面にしか映らぬハーランドの真理の支配者の娘レクスの聖痕(スティグマ)が力を発し、その動きをしばし止める。強力な水壁の防御をかいくぐった傭兵の強力な戦槌は、震天の威力をもって血に汚れた魔女の体を確かに捕らえた。
「シオナに会わせろッ!」
 汚れてはいても早瀬の姫と同じ美しい髪がはらりと舞い、魔女(ウィッチ)の体は宙を舞うと薄水の満ちる洞窟にどうと倒れた。だが、何処かの賢者から盗み蓄えていたのか、永遠の神々の博士フィニスのしるしが力を発し、殺戮者の生命を取り戻す。ゆっくりと立ち上がった魔女は薄氷色の瞳でハーランドを見つめた。その赤く汚れた髪に蓄えられた水の精霊アクアのしるしが力を発し、同時に力を取り戻した爛れた水の壁が、濁った水の槍と化した水の魔獣が襲い掛かる。
『‥‥かの騎士に使徒オービスの加護をお与えください』
 それより一瞬早く、吟遊詩人(ポエトリア)クレリアの歌が効果を発した。時の夜の偉大なる者オービスは秘密の門(ポルタ・アルカーヌム)の姿となって顕現し、開かれた門から力が振り注いだ。戦車(クアドリーガ)の占い札に象徴される秘儀魔法と同じ力であった。甲冑と盾、剣に力を与えられ、オスヴァルト卿が動いた。“鉄の右将(アイゼンリヒテ)”の名は伊達ではない。エステルランド神聖騎士団と尊きその団長をあらゆる刃から護ってきた剣と盾が組み合わされ、迫ってくる槍を弾く。
 戦列に加わり、水の魔獣と戦っていたアリアンは握っていた槍を放し、命を下した。
星の青玉(シュテルンザフィーア)よ。お前の力を示せ!」
 水中においては河の民ザルムは比類なき強さを誇り、乾いた地上においても母なる河の流れのある限りはその強さを発する。まだ歳若い公子も、公子に付き従う魔法の(シュピーア)もそれは同じだった。重さなどないように独りでに浮かび上がった槍はまとった水滴を飛び散らせながら飛び、水壁をかいくぐると魔女を狙う。
 水の満ちた足元から自在に吹き上がる水柱の幻影を、オスヴァルトの左の健脚に宿る風の伝令(ボーティン)ウェントスのしるしが避けさせた。押し寄せてきた腐った水の槍の穂先をハーランドが狙い、重い戦槌の一撃が石を割るように粉々に打ち砕く。かつて河の民の王によって与えられた呪い、早瀬の姫を醜く変じさせながらも護る淀んだ海水が、ようやくその命を失った。
 魔女(ヘクセ)が何処かの導き手から奪った大空の娘ステラのしるしが再び魔獣に命を与えようとするも、同じしるしの力がそれを遮った。その存在だけで一行を助けていたマリアの身に宿る同じしるしが力を与え‥‥彼女が坊やと呼ぶ河の民の公子の使徒フルキフェルの聖痕により、吹き上がったキルヘンの流れが爛れた水を洗い流したのである。
 魔女を取り囲んでいた汚れた水の壁はいっせいに地に落ちた。洞窟の石の上を薄く流れるキルヘンの澄んだ水の中に混じり、淀んだ海水はどこかへ消えていってしまった。
『王命を担った者がふたたび呪いを解くなんて、相応しいことかもしれないわね‥‥』
 (ブルート)の如く赤く染まった河の民の(プリンツェッシン)は、自らをかつて愛した王の命によって来たのであろう、歳若い同族に哀しそうに目をやった。

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア

「本当にお前が殺したんだなッッ!」
 水の魔獣を失った魔女の元に、ハーランドが雄叫びと共に詰め寄る。洞窟に薄く満ちた水を長靴が蹴り、水面に映り乱れるだけだったハーランドの影が光った。影の中にのみ存在する彼の焔の剣の娘アルドールのしるしが力を発したのだ。唸る震天槌(ヘヴン・シェイカー)が赤い魔女を捕らえ、その体を吹き飛ばす。
 その乱れた髪に隠された破壊の右手デクストラの聖痕が輝き、魔器の槌を持つハーランドの偽りの体がひととき霞んだ。だがそれもすぐに消え、大柄な銀髪の傭兵の姿がもとに戻る。
 愛した女と同じ顔の魔女(ウィッチ)には迷いが生じたのか、魔女の体を護る数々の魔法がまだ保っていたのか、魔法の戦槌の直撃を浴びてもブルティーゲヴェーレはまだしばし死んでいなかった。薄物を纏った体で清い流れの上に倒れ伏し、よろよろと動きながら自分を打ち倒した槌使いを見やる。
「ならば赤き魔女よ。王命によって滅びよ!」
 アリアンが腕輪を嵌めた右手を振り、魔女を指差すと河の力を解放する。地面を流れるキルヘンの流れが魔女を取り囲む正円に浮かび上がり、六本の水の槍が周囲から飛び出し、同時に魔女を貫いた。
 その甘い歌声で数多くの船乗りを惑わし、多くの船を沈めてきた赤き魔女(ローテ・ヘクセ)ブルティーゲヴェーレはようやく討ち取られた。魔女の長い髪がはらりと舞い、その姿は倒れ――だがその髪から漏れ出たのは、殺戮者と堕ちてより魔女が盗み蓄えた聖痕の最後の一個、何処かの賢き魔術師(マーギア)から奪った真理の探し手アクシスのしるしだったのである。
 キルヘンの清い流れより生まれたもう六本の槍が公子アリアンの体を貫いた。そして水の満ちた洞窟じゅうの地面から、次々と槍が突き出した。
「河の力をそんなことに使っちゃ‥‥駄目だ‥‥」
 倒れながら、アリアンは手を伸ばした。濡れた髪の下の首筋に隠された彼の正体を示すしるしが最後の力を発し、数十の槍は途中で飛沫へと砕け、飛び散っていった。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主


 飛び散った飛沫のそれぞれが波紋を広げながら水面に落ちると、辺りは静かになった。ちろちろという音が遠くから聞こえ、ほの暗い洞窟に清涼な空気が流れていく。
 キルヘンの流れが、倒れた魔女の体を清めるように撫でていった。
 と、その様子に変化が生じた。ところどころが血にまみれ、真紅に濡れていたその乱れた髪が洗われていったのである。清い流れの中に広がり、元の輝きを取り戻したその髪は黝い黒。殺戮者ではなく、それはそれは美しい早瀬姫のものであった。

ハーランド、震天槌の使い手、早瀬の姫を探す者

「シオナ‥‥まさか、お前なのか?!」
 兜を投げ捨て、ハーランドは命を失ってゆくその姿に駆け寄った。それは忘れもしない数年の昔、静かな洞窟の中で数日の間深く愛した女の姿だった。
『お願いよハーランド‥‥この汚れた手を握っていて欲しいの。そうすれば、貴方との想い出を抱いて死ねる‥‥。そうすればきっと、あの恐ろしい魔神の贄にならずに済むわ‥‥』

「オレは傭兵だ。お前に触れられるほど綺麗な手じゃないぜ」
 ハーランドは、先程まで魔女に全力で戦槌を振るっていたその手から手甲(ガントレット)を外した。
『わたしは王の怒りに触れ、この岩礁で河の乙女に身を転じてから、闇に捕われてしまった‥‥。貴方の姿は、変わっていないのね』
「オレは人間じゃなくなっちまったよ。こんなウソつきは嫌いだろ」
 ハーランドはその手をしっかりと握った。ひんやりとした白い乙女の手はあの時と同じだった。
『嘘なんて、ついてないわ‥‥。もう一度会えて‥‥本当に、嬉しかった‥‥』
「‥‥済まなかった」
 水底の美しい(ブラウ)を宿した黒い髪が広がり、宿していた全ての聖痕が浮かび上がった。
 頭を垂れるハーランド、胸の十字架(クロイツ)に触れてアーの慈悲に感謝するオスヴァルト、その腕の中で息を吹き返そうとするアリアン、魔女の最期を見届けるクレリアとマリアの前で、十と三つに及ぶ使徒(アポステル)のしるしは宙に浮かび、強く輝いた。洞窟の天井へと消えていった聖痕は大河キルヘン河口の岩礁一帯を強く照らしながら天に昇り、航海の安全と河の生き物たちの安泰を知らせながら、星々の世界へと還っていったのである。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ


こうさくいん「薄々みんな感づいていたとはいえ‥‥魔女の正体はシオナ姫だったのでしゅね‥‥(>_<)」
ボス「うむ。一族の地を追われ、秘せられた目的のために岩礁で孤独に歌っていた早瀬姫は、いつしか闇に捕われてしまったのだ。
 さて小説風のプレイレポートで4ラウンドに渡る戦いを全て書いても意味がないのでハイライトシーンだけ描写しているが、ではこの面々の基本的な戦い方だけ説明してみよう」
こうさくいん「ラジャーでしゅー。オズぽんは攻撃力はないけどExp200台だけあって他は充実。《聖光》+《薬草知識》からの回復に《幻惑》やら《挑発》での攻撃目標固定やら。敵の攻撃は《義肢》の右手の盾が《防護》+《鉄壁》+《八重垣》ほか沢山の特技でバッチリ受け止めるのでしゅ!」
ボス「うむ流石に“鉄の右将”の名は伊達ではないな(´ー`)」
こうさくいん「これで! ノエルたんをいつも護っているのでしゅね!o(≧へ≦)9゛」
ボス「Σ( ̄口 ̄;) そこで団長の名を出すなぁ。シオナ姫に失礼ではないかぁぁ。
 さてザルムの公子アリアンぽんはキルヘンの流れが既に満ちている地の利を活かし、腕輪から槍へと自在に変ずるケルバースピア相当の魔法の槍“星の青玉”に《元力:波》相当の河の力を与えて攻撃。最良のコンディションではクリティカル値6で攻撃できるように創ってあるため、ほとんどクリティカルだったな」
こうさくいん「そして。シオナたんの姿を求めて雄叫びと共に戦う肝心のハーランドぽんは。アルドールの《剛力》で片手で持った震天の槌で。魔器の特技に《破斬剣》や《足絡み》《護り崩し》もいれてガツンといくのでしゅよ!o(≧▽≦)9゛ ハーぽんのクリティカル攻撃が魔獣の水を倒し、∴絶対攻撃∴がぎりぎりで倒せなかったところにアリアンぽんの∴大破壊∴でようやく赤き魔女はその呪いから解き放たれるのでしゅ〜」
ボス「という流れだったのだが、さてこのゲームは支援系がジツはとても強く、本作の後の二人も例外ではないのだ」
こうさくいん「クレリアたんの《魔獣召喚》で顕現する使徒アルカナの影は。使徒アルドールの影は攻撃を防ぎ使徒マーテルの影の歌が《聖撃》《聖戦》で支え使徒オービスの影の《戦車》《隠者》に《死神》が一心不乱にグルグルなのでしゅよ〜〜(@_@)」
ボス「本人だけでなく魔獣のほうも一心不乱であったか‥‥(ニヤリング) 汎用性があるのが強みだな」
こうさくいん「そしてマリアお姉様は。他PCの危機は《盾の乙女》で救うし戦闘開始時の《喜びの歌》がジツは強いのでしゅよー。オトメでないのはこの際気にしないのでしゅね!(>ω<)」
ボス「ええぃ些細なことではないか(ごーりごーり) アングルスの《喜びの歌》は代償がないのが不思議な強さだからな‥‥(笑) お陰でアリアンぽんのクリティカル率は80%を越えるしオズぽんはダイスを8つぐらいゴロゴロ振っていたぞ。やはり美人のおねえさんに期待されるとヲトコはやる気が出るのだのう(ニヤソ)」
こうさくいん「というわけでー。いよいよ終局フェイズでしゅ〜」
ボス「うむ。美しき早瀬の姫の悲しき過去が明かされ、想い出の女を探す男の旅は終わる。エンディングは急転直下で進み、物語は次回へ続く。
 次なる舞台は公都カルデンブルク。伝令使の携えた手紙の中身は? 姫の言い残した秘せられた魔神の名には何が? すべては第二部『さらば、麗しき波濤よ』で明かされるであろう。ここまでお読みいただいたことに感謝しつつ、ゆるりと次を待たれるがよい」
こうさくいん「感想はBBS Nexus > ようこそBBSまでカモソカモソなのでしゅよー。またなのでしゅ〜(≧▽≦)ノ」



終章一 挽歌は奔流の如く


 それは今より五十年の昔まで遡ることだった。
 まだ歳若かった河の民の王“河霧彦”ヴォーゲンの妾妃であった早瀬の姫(プリンツェッシン・シュトロームシュネレ)シオナは、誇り高きザルム族であるうえに熱い情熱を持った恋多き姫だった。
 盗賊征伐の折りだったという、崖から落ちた人の騎士(リッター)を救った彼女は、相手がゆくゆくはラインヘルデン伯領(グラーフシャフト)を継ぐであろうホルハイム王朝の子孫ディートリヒ、伯の令嬢アウグスタとの婚約も噂されていた身分ある騎士であるにも関わらず、深い恋に落ちる。
 だがその相愛はヴォーケン王の知るところとなり、不貞の身を恥じよと王は怒りと共に呪いを掛けた。シオナ姫は腐れた水の呪いによって美しい虹色(レーゲンボーデン)の鱗を汚され、河の民を追放されたのである。
 そして、真実を知った令嬢アウグスタは怒りに我を忘れて二人が共に過ごす洞窟を探し、復讐のために毒を撒く。だがシオナ姫は死なず、死体となって水に浮かび上がったのはディートリヒのみであった。絶望したアウグスタは崖から身を投げて果てた。

 ラインフェルデン伯爵家が断絶し、呪われたシオナが孤独に歳月を過ごし、呪いもやや弱まった折りに助けた人間の男に数日の愛を感じつつも別れた頃。
 彼女はキルヘンの流れに時折混じるさまざまな陸の世界のものに、人間の女の亡骸が妙に多いことに気がついた。魚の姿に変じて後を追えば、何らかの大いなる力により亡骸が辿りつくのはすべて、海底深くに忘れ去られたいにしえの魔神(デーモン)ウェルテクスの神殿(テンペル)であった。
 河の王者ザルムは深い河底に隠された多くの秘密、青い海の底に隠されたさらなる秘密に通じている。王家一族の出であるシオナ姫は古来の伝承を調べ直し、陸に住む何者かがウェルテクスを眠らす封印(ズィーゲル)を解かんとしていることを知った。それに必要なものはある数の罪深き女の生贄と魂、男が触れては効果がないという。
 一族を追放された身では頼る相手もなく、既に罪で汚れた身である彼女は妖艶な河の乙女(フルス・メートヒェン)へとその身を変じ、キルヘンの岩礁で竪琴を弾き、哀しい歌を歌った。船乗りたちが魅せられ、多くの船が沈んでいった。
 死んだ人間の男たちは集め、上流から漂ってくるたびに洞窟に留めておいた女の亡骸と共に。互いを結び合わせて海へ放し、贄の神聖さを汚して魔神(デーモン)神殿(テンペル)へと流れつかないように。その禁じられた門を開くことがないように。彼女は幾度となくそれを続けてきた。
 いつしか、キルヘン河口に棲む魔物(ゲシュペンスト)血に汚れた波(ブルティーゲ・ヴェレ)赤き魔女(ローテ・ヘクセ)と地上世界で怖れられるようになり、彼女の魂もまた、闇に捕われた殺戮者と等しく蝕まれていったのである。

ハーランド、震天槌の使い手、早瀬の姫を探す者

『お願いよ、ハーランド。あの魔神が蘇ったら‥‥』
 手を握るハーランドの前で、キルヘンの流れがシオナの体を覆っていった。
『止めて‥‥』
 その言葉を最期に、早瀬の姫の体は流れの中に埋もれた。一陣の泡が立ち昇り、その後に亡骸は何も残っていなかった。


Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ



終章二 予期せぬ別れ


 形見の品をそれぞれ持ち返り、一行は岩礁の洞窟を後にするとヤーデシュタットの町へ戻った。魔女(ヘクセ)の悪しき気が晴れたのか、靄も晴れて青空が浮かび、キルヘンの流れも心なしか一層澄んでいるように見える。
 町の人々に歓声と共に迎えられていると、間を割って駆けつけて来た人がいる。
「大変よ、マグダレーナが!」 職人通りの近所の人だった。
「船が出ている間に‥‥崖から身を投げたの‥‥」

マリア、夜の踊り子、暁の子の鎖

 マリアは我が耳を疑った。
「そんなはずないじゃない‥‥」
 彼女宛てに残されていたという手紙と、包みを手渡される。包みの中にはマリアに似合うものを選んでくれたのか、精緻な彫刻の光る見事な翡翠細工(ヤーデヴェルク)の髪飾りが入っていた。


親愛なるマリア

貴方に励まされたように、ミハイルには別れの手紙を出しました。
でも、司祭ドロテア様に相談した所、やり残したことがあると強く奨められました。
不貞の罪を、神は決してお許しにならないというのです。
私も考えましたが、ニコラウスに心から謝るには、天にいる彼の元にゆくことしか、彼と共にあることしかないことが分かりました。
私の細工物の中で、一番あなたに似合うものを残しておきます。
マリア、あなたは幸せになって。

マグダレーナ


 羊皮紙の手紙の上に、大粒の涙が何粒も落ちた。

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア



終章三 探求者の誓い


 ヤーデシュタットの町は歓喜に包まれ、クレリアはその中を旧派真教教会(シニストラリック・エックレーシア)へ向かった。もう度重なる船乗りたちの葬式(フューヌス)を執り行うこともない。教会は今まで通り、人々の罪を許し、明日へと歩むための道標(ハーゲーテール)となることができるだろう。
「あ、クレリア様! ご無事だったのですね‥‥」
 門をくぐると侍祭の娘たちが駆け寄ってくる。アルカナの歌(カントゥス・アルカーナー)を知る吟遊詩人(ポエトリア)は後ろでまとめた黒い髪を振り、そちらへ見えない瞳をやると微笑んだ。
「はい。アルカナの力はこの地に集い、彼らの力が見事魔女を滅ぼしてくれましたから」
「ドロテア様も、せめて今の町の様子を見てから出立なさればよかったのに‥‥」
 訝るクレリアは訳を尋ねた。
「そうです。クレリア様、聞いてください。ドロテア様が、急に姿を消されてしまったのです」
 逗留期間が切れたと言い残し、ほとんど別れも告げずに司祭(サセルダ)ドロテアが西のカルデンブルクの方へ旅立ってしまったのだという。ついこの間まで未亡人(ヴィドゥア)告解(コンフェッシオ)を聞いていたのに、あまりに急な出来事だった。教会に勤める面々も困っているという。この町には司祭が必要なのだ。
「そうですね‥‥。魔女の恐怖にさらされたこの町を、一番憂いていたのは彼女ですものね。分かりました。私がドロテア司祭に会い、どうか戻ってきてくれるように伝えましょう」

 侍祭の娘たちは頭を下げ、クレリアは微笑むと温かく教会を照らす陽光を見上げた。教会の塔の先には質素ながらも十字架(クルクス)が輝いている。
 探索の旅が断罪の旅になることは、まだ唯一神アーのみぞ知ることであった。

クレリア、星降る詩、失われた歌の探し手
Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア



終章四 火急の知らせ


 オスヴァルト・シュイヴァンはヤーデシュタットの墓地(フリートホーフ)を訪れていた。
 亡骸も埋められていないニコラウス・オイゲンの(グラーブ)で、魂が安らかに眠ることを祈るためである。
 あの洞窟のいたんだ亡骸を持ち帰ることはできなかったが、河の王国の皇子が操る河の力により洞窟には水が溢れ、全てが清められて死体は河底へと沈んだ。これで犠牲者たちも浮かばれるだろう。
 洞窟から持ち返って来たニコラウスの髪の一房を十字架(クロイツ)の元に置く。既に結婚指輪が供えられていた。こちらはあの奔放な美女が、残された妻に渡す形見にと持ち帰ってきたものだ。
「騎士様も無事に帰ってきてよかったのう‥‥息子も、ニコラウスも、みんな天で喜んでおるじゃろう」
 犠牲者たちに改めて祈りを捧げに来た者は多かった。船を用意してくれた老人が墓に手を合わせる。
「そうだと、よいのですが」
「これで少しは親父らしいことができたわい‥‥有り難いことだ」

「(‥‥目の前に見えているものが真実とは‥‥正義とは、限らないか)」
 邪悪を討ち果たし神聖騎士団員に恥じぬ行いを為したオスヴァルト卿の心になおも釈然としないものが残っているのは、あの戦いでハーランドと赤き魔女(ローテ・ヘクセ)の間に交わされた言葉や諸々のためであった。

オスヴァルト・シュイヴァン、鉄の右将、聖盾の乙女に仕えし騎士

 人々を苦しめていた魔女(ヘクセ)は倒れ、(ベーゼ)は滅ぼされた。だがあの河の民の(プリンツェッシン)が悪だったのだろうか。誓いの剣の届かぬ先で、騎士の瞳の届かぬ先で、見えざる何かが動いているのではないだろうか?
 若き副団長が考え込んでいると、盛大な音を響かせて一頭の馬がやってきた。馬上の伝令使(ボーテ)が声を張り上げる。
「どぅ、どう! オスヴァルト卿(ヘル・オスヴァルト)! オスヴァルト・シュイヴァン卿はこちらにおいでか?」
 そのただならぬ様子にオスヴァルトが進み出ると、伝令使(ボーテ)は紺の紐で結ばれた巻物をさっと取り出した。
「カルデンブルク大聖堂(ドーム)よりの手紙です。司教(ビッショフ)マテウス・レピドゥス様が至急来られたしとのことですッ」
 司教マテウス。神学と、そして彼が生涯を掛けて研究している魔神(デーモン)に関しての貴重な知識を若いオスヴァルトに分けてくれた人物。現在はカルデンブルクの聖堂に滞在するも、かつてはバルビエステ教皇特使、かの枢機卿(カーディナール)マレーネ・ジーベルの懐刀とも呼ばれた人物であった。
 その司教がいかなる火急の用件で鉄の右将(アイゼンリヒテ)を呼んだのかは、次なる物語にて明かされよう。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団



終章五 河魚たちの安泰


 時刻は少し戻る。早瀬の姫(プリンツェッシン・シュトロームシュネレ)の消えた洞窟が河の力によって清められ、人々の亡骸が河底をその永眠の場所とした後。面々はそれぞれの思いを胸に、ゆっくりとヤーデシュタットに戻る船で帰途についていた。
 その中で一人、公子アリアンは舷側に腰掛けると、いかなる方法にてか河の生き物たちを呼んだ。河の王者ザルム一族の公子の呼びかけに、しばらくすると大きいものも小さいものも、様々な魚たちが水面に集まってくる。魚たちは水の上に小さな顔を出し、何事かと王弟の子のことばを待った。

アリアン、碧瑠璃の公子、青玉の槍の使い手

『今日は群れに帰り、皆にこう伝えるがよい。魔女は滅ぼされ、もう河は安泰だと』
 魚たちは一斉に口をぱくぱくさせて喜び、公子(クローネプリンツ)の偉業を称えて平和を祝った。
『それからもうひとつ、頼みがあるのだ』
 濡れた髪をした美しい若者の姿をした公子は尋ねた。
『お前たちの中で、一番泳ぎが得意なのは誰だ?』

 ふたたび魚たちは一斉に騒ぎ出すと議論を始めた。ややあって群れがふたつに分かれると、その間から一匹が、王の一族の願いに応える光栄に緊張しながらも船のそばに姿を現す。
『では河の宮殿まで赴き、伝言を頼む。“王命は果たされました”と』
『心得ました!』
 恭順の礼をとると、魚はいざ大命を果たさんとくるりと身を翻した。キルヘンの流れの中を力強く進んでいく。散った群れの中の何匹かが、励ますように一緒に泳いでいった。

 そして、ほどなくしてザルム一族に仕える大任は果たされることとなった。聖痕者たちが町に帰還し、人々が歓喜に沸いている頃。アリアンが川岸で待っていると、伝令(ボーテ)はもう帰って来たのである。
『行く途中で、王の使いと鉢合わせたのです』
 水面に顔を出した魚は興奮したように言った。
『賢き王は既に気配を察し、魔女が滅んだことをご存知でした。非常にお喜びだということです』
『そうか。ありがとう』
 アリアンはねぎらいの言葉をかけた。群れの仲間たちが水面に現れ、公子に応える大任が果たされたことを喜び、河の安泰を改めて祝った。通りかかったヤーデシュタットの住人がもしも見たならば、魚たちの気が狂って溺れているのかそれとも突然地上に並々ならぬ興味を持ったのか、奇妙な光景に見えたかもしれないが、彼らにとってはしごく重要な記念すべき集まりだったのである。

 ふと潮風を感じ、アリアンは河口を見やった。キルヘンの大河は海に通じているが、ここは真水の領域だ。強靭なザルム族は塩水の中を泳ぐこともできるが、ふだんは海に出ることはない。
 碧瑠璃の公子はなぜか胸騒ぎを感じ、広がっているであろう彼方の大海原に目を凝らすのであった。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

 
 
Fortsetzung folgt.
そして、物語はなおも続く。



波の幻視はFlash Player 6を指し示すものなり。
備えよ。


第一部 挽歌は奔流の如く 伝説】【前編】【後編】
第二部 さらば、麗しき波濤よ 幕間】【前編】【後編

-大河の水先案内-
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