Lebewohl, Schoene Welle - さらば、麗しき波濤よ
〜さらば、麗しき波濤よ 第二部 さらば、麗しき波濤よ〜
ダーククイーン陛下&フクムラお兄タマと遊ぼう!

第一部 挽歌は奔流の如く 伝説】【前編】【後編
第二部 さらば、麗しき波濤よ 幕間】【前編】【後編

-大河の水先案内-
(河霧彦陛下のお達しによりIE5以上で見られたし。)

 ブレイド・オブ・アルカナ2nd Editionのアクトの模様を収めたこの物語は、第一部『挽歌は奔流の如く』の続編となっています。まだの方は第一部からどうぞ御覧ください。


Und, Sie in Bühne des Schicksals kommen ...
かくて、運命の舞台に彼らが来たる。

Name: “星降るうた”クレリア
Arkana: ファンタスマ=ウェントス=ファンタスマ
Rassen: 人間(マテラ人) Alter: 26 Geschlecht:
 黒髪の女性吟遊詩人。まったくの盲目であるが健常者よりも感覚も感性も鋭く、感じたことものを多くの歌に残している。神代の昔より伝わる二十二のアルカナにまつわる歌を歌うことができ、その時アルカナの力は二十二の光の使徒そのものの幻の姿をとって現れると言われている。
 彼女の知るアルカイの歌の数は現在八つ。歴史の中で地に埋もれた残りの失われた歌を探し、様々な伝承を歌として後世に残すために旅を続けている。
 ヤーデシュタットの教会から突如消えた徳も高き女司祭ドロテアを探し、星の詩人はいざ公都に赴くことに。
Player: (はた)×弐
▼一心不乱ぶりも変わらぬクレリア、後編では都に赴きます。光なき瞳は未来を見通すことができるのか?

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア

Name:夜の踊り子(ナハト・テンツェリン)”マリア 【Profil
Arkana: コロナ=ステラ=アングルス
Rassen: 人間(ヴァルター/オクタール) Alter: 26 Geschlecht:
 金髪に紺碧の眼、美しい肢体を扇情的な服に隠した踊り子。夜の踊り手の別名をとり、娼婦の技にも長ける。実は妾腹で生まれたさる公国の貴族の出であり、尊い身分である。
 救いを与えられずに突然自ら命を絶った旧友マグダレーナに衝撃を受け、怒りも新たに背徳の司祭を探し求める。
Player: 蝠邑カズヒロ 【KAZZ TECH
▼オトナの美女全開で男どもを翻弄‥‥い、いや導くマリアお姉様、果たして仇を取ることはできるのか?

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア

Name: “震天鎚”ハーランド
Arkana: アルドール=ディアボルス=レクス
Rassen: 魔器(オクタール) Alter: 20代前半 Geschlecht:
 あえなく戦で果てたオクタール人の傭兵の最後の願いは天に聞き入れられた。彼の魂は愛用の戦槌に受け継がれ、知性と自我を持った魔器として奇妙な生を生きることになったのだ。歳月の後に人間の姿も取れるようになり、人の姿のまま槌を手に戦うこともできる。軽めだった人間の頃の性格は何も変わっていない。
 かつて愛した早瀬姫が最後に言い残した、いにしえの魔神ウェルテクスを追い、震天の槌は五十年前の秘密の門を撃ち砕く。
Player: 九龍
▼美形がいっぱいでお腹もいっぱい(笑)な中、一人方向の違う傭兵ハーランド。愛した女を自ら殺め、第二部ではどこに‥‥?

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ

Name:鉄(くろがね)の右将(アイゼンリヒテ)”オスヴァルト・シュイヴァン 【Profil
Arkana: ウェントス=アダマス=マーテル
Rassen: 人間(ヴァルター人) Alter: 21 Geschlecht:
 エステルランド王国に名高き神聖騎士団副長にして、王室親衛騎士隊の一騎。かつては放浪者で右手を失い瀕死のところをノエル・フランシス・エルマー団長に拾われた。その後義手に変えたその右腕と盾もて、団と団長を害するすべての刃を受け止めると名高い。その体を流れる熱い血潮には救世母マーテルが流したと言う聖血(ハイリゲス・ブルート)が混じっており、美しい外見をした気さくな青年。密かにノエル団長に特別な想いを抱いている。
 司教マテウス・レピドゥスからの手紙は魔神復活の予兆であった。白き騎士は一騎、公都カルデンブルクへ向かうが‥‥
Player: なま
▼オズぽんです。騎士の誓いは果たされるのか。そして、胸の十字架にはいかなる秘密が‥‥?(一応ゆってみる)

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団

Name: “碧瑠璃の公子”アリアン 【Profil
Arkana: ディアボルス=エフェクトス=フルキフェル
Rassen: ザルム Alter: 外見17 Geschlecht:
 瑠璃色の背鰭をもった若いザルム。河の王国の偉大なる王ヴォーゲンの王弟の子であり、王子たちと同様に育てられた。母なる河の力を操る技にひときわ長け、また“星の青玉(シュテルンザフィーア)”と名付けられた魔法の槍の所有者である。伝説の騎士ローツェが残した水の武具と人間に姿を変えることのできる魔石スマラクトを授けられ、王命によって地上世界へ行くことに。
 人間の姿は常に濡れた不思議な黝い髪をした、美しい若者である。
▼一部アングルス並にボケが激しいアリアンぽん、果たして王命は果たされたのでしょうか。そして初代王の幻の正体は如何に‥‥?(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

Der Spielmeister: 篠原 透 【NEUROGUE
▼ダーククイーン陛下です。休憩を挟んでいよいよシナリオも後半戦へ‥‥






 まるで嵐のように海は荒れていた。黒い波がうねり、力強く崖に波がぶつかっていく。天の空は鉛色、今にも雨が降り出しそうな様相を呈し、潮風も激しく吹き荒れている。
 そんな崖の縁に一人立っているのは女だった。風にはためく衣装は地味ながら品があり、精緻な刺繍で編み込まれた翡翠(ヤーデ)はまごうことなきラインフェルデン家のもの。結い上げた金の髪を容赦なく風が叩き、ほつれた髪が顔を叩いている。怒りと悲しみのために、報われぬ愛、奪われた愛のためにその顔は歪み、浮かんだ涙も風が奪っていった。
「あの女の一族に‥‥ザルム一族に、呪いあれッ!」
 天上の神の慈悲など少しも感じられない鉛色の空に向かい、女は呪いのことばを吐いた。そのまま何の迷いもなく、ひらりと身を躍らせる。数瞬の間衣装が風にはためき、そして彼女の体は黒い海に飲み込まれた。
 暗い海はその願いを受け入れたかのように、そのうねりを増した。やがて雨が降り出した。


Lebewohl, Schoene Welle - さらば、麗しき波濤よ
〜さらば、麗しき波濤よ〜



序章一 公都へ


 ヤーデシュタットよりもさらに河口、大河が海へと広がる玄関口に位置するカルデンブルクはケルファーレン公国(ヘルツォークトゥーム)の公都であり、規模もさらに大きい。海へと乗り出す船の帰る場所として、様々な旅の中継地点として、都は賑わっていた。
 そんな公都の中心部、旅人たちが集まる店の中でもひときわ大きなものがここ《汽笛亭》である。夜が更ければ酒場に変わるものの普段は食堂(レストラーン)を兼ねており、昼間に集まる客は飲んだくれ達ではなく温かい食事を求める旅人や都の住人たちであった。
 そんな《汽笛亭》に現れた二人の旅人がいる。ひとりはこんな昼間ではなく、夜に盛り上がっている所に颯爽と現れ、酒が入った男たちの目を奪っていってしかるべき美女だった。均整の取れた美しい四肢に波打つ金髪、白い腕には翡翠(ヤーデ)の腕輪が光っている。
 その連れも女だったが、相棒の美女にはまったく不釣合いに見えた。旅芸人にも巡礼にも見える白い旅装、分けた黒髪を後ろで纏め、額には水晶(クリスタルルム)の飾りが光っている。どこか清楚で可憐な雰囲気を漂わせ、その瞳は常に閉じられていた。
 マリアとクレリアである。友人に虚言を吹き込みを不必要な死に追いやった女司祭(プリーステリン)を、まだ町に必要とされている優秀な女司祭(サセルダ)を追い、二人はこの公都で再び出会ったのである。
「そういうことだから、アタシも手伝うよ。もっとも、見つけたらタダじゃおかないけど」
「ええ‥‥この店でも、誰かが会ったかもしれません」
 二人がまだがらんとしている店の中を眺めていると、近くの子だろうか、数人の子供たちが集まって何やら騒いでいた。どこの町でも見かける光景である。が、よく見れば、輪の真ん中には一人の少女が座り込んでおり、取り囲む面々は盛んに罵声を浴びせてつつきあっているのであった。

「やーいやーい、はじしらずのおやの子〜!」
「おらのとっつぁん(ファーター)が言ってたぜ。シセイジって言うんだってさ」
「クララはシセイジだ!」
「や〜い、来るなシセイジ〜!」
 意味もよく分からずに新しい言葉をさっそく使っていた子供たちは、自分たちを覆う影に気付いて上を見上げた。

「やめなさい」
 それほど大きくもなく怖くもなく、むしろ優しそうに見える、目を閉じた女の人。だがその閉じられた目の奥に、子供たちは光を見た。その声は静かで教会の聖歌(キルヒェンリート)のように美しかったが、子供たちは叔母にどやしつけられたのよりも強い衝撃を受けて黙り込んだ。
 そして、目を転ずれば、目を閉じた不思議な女の人の後ろにもう一人。自分たちの母親よりも何倍もきれいな女の人が、今にも尻をはたくかもっともっと恐ろしい罰を与えてきそうな勢いで面々を睨みつけていた。

クレリア、星降る詩、失われた歌の探し手

「へーんだ。クララなんて、もうしらない!」
 悪童たちは一斉に逃げ出した。盗賊(ロィバー)も顔負けの速さである。
 後にはクララと呼ばれた少女が残った。そばかすのある顔に残っていた涙の跡を拭くと、埃を払って立ち上がる。頭の上で馬の尻尾(プフェーアデシュヴァンツ)のように纏めた、色の薄い明るい金色(ゴルデン)の髪が揺れた。
「‥‥ありがとう」 少女は二人の女を見上げた。「おねえちゃんたちは、たびの人ですか?」
「ええ、そうね‥‥。家は近くなの? 大丈夫?」
 盲目のクレリアが手を伸ばし、彼女の体に触れると、クララは頷いた。
「うん。クララのお母さん(ムッター)は、ふつうのお母さん(ムッター)とちょっとだけちがうの。もうだいじょうぶ。おうちは、ちょっと遠いけど」
 少女は紺色(デュンケルブラウ)の瞳をきらめかせ、付け加えた。「あたし、町にはくわしいけど、あんないしてあげようか?」
「そうね‥‥」 しばらく考えてからクレリアは言った。
「大聖堂‥‥いえ、おおきなおおきな教会がこの町にあるはずだけど、わかる?」

マリア、夜の踊り子、暁の子の鎖

 クララは顔を輝かせ、クレリアの手を取ると先を促した。盲目の吟遊詩人(ポエトリア)は相棒の美女に頷くと、少女の後に続いた。

「ふふ。アタシも、あんな時があったわね」
 さる公国の貴族の(めかけ)の子として生まれ、幸せとはいえない少女時代を送ったマリアはふと笑みを漏らすと、その後に続くのだった。

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア



序章二 制覇せよ、光輝の海を


 深い深い海の底に広がる神殿は碧い水の中でかがやきを帯び、そのあるじの大いなる力を表していた。地上のどの河にも満ちていない塩味を帯びた濃く冷たい水が渦巻く中で、神殿の中だけは完全な平穏が満ちていた。
 輝ける玉座の前に平伏するのは、小魚たちに鰯の群れから鯨の長老、女王の前でもふわふわと動かずにはいられないくらげ、沈黙を守る貝、今はもう見ることのできない古代の生き物まで、あらゆる海の生き物たちである。
 できたばかりの自らの河の王国を離れ、家臣を伴いはるばる神殿までやってきたアリアンもまた、ザルム族の代表として玉座の前で女王と対面していた。
 アリアンが? 否、そのような名ではない。その名はフルス、“清水彦”フルス、誇り高き河の一族の歴史が語られるとき、そのはじまりにて敬意と共に語り部の口に上る名、初代の王とも伝えられる名である。
『天上神の名において生を受けしより間もないそなたの一族、河の王者となる定めを果たすには、いま少しの強さが必要なのは至極当然。
 よろしい、我が海を、我が領土をそなた一族の恵みの場、そして修練の場とするがよい。潮に満ちた我が領土の中で雄雄しく鍛えられ、そなたの子らは必ずや王者に恥じぬ一族となろう。
 だがわらわの名を軽んずべからず。年月の中で我が名を忘れぬことのないよう、年に一度は巡礼のためにこの神殿へ参るがよい』
 玉座に座するは大いなる海の女王、潮水の女王。ウェルテクスとも呼ばれる美貌のアルカイ。唯一神アーに仕え、ある者はアルカナとして大地の為に貴い犠牲となったのがアルカエウス、アルカエウスに仕えた自由者こそが力あるアルカイである。
 やや考えたのち、アリアンは、いやフルス王は答えた。
『麗しき女王よ、その寛大な心に感謝する。以後我が一族は女王を敬い、年が変わる時、長い長い河を下り、この宮殿に参ることを約束しよう――』
 宮殿に拝謁する全ての生き物がどよめき、約定が結ばれたことを祝った。たくさんの泡が神殿から昇り、碧い海の中を昇り‥‥

――そして、アルカイの名は忘れ去られた。

 泡は昇り、温かい日光の差し込む水面へとさしかかり‥‥
「‥‥?!」
 アリアンは水面へと勢いよく浮き上がった。頭を振って水滴を飛ばし、大きく息をつくと空気を吸い込む。口に含んだ緑の魔石(スマラクト)のお陰で自在に呼吸できる陸の世界の空気が流れ込んできた。

 息が整ったところでそのまま手を広げ、頭上から色黒の体を照らす太陽(ゾネ)を見上げる。公子アリアンが人間の若者の姿にも馴染んできた頃。乾きこそないものの(シュトローム)が懐かしくなり、彼は人間の姿のまま服を脱ぐとしばし水浴びをして泳いでいたのである。
 またしても見たのは同じ(ビジオーン)だった。初代の王とも言われるザルムの王と、自分が一体になる幻‥‥

アリアン、碧瑠璃の公子、青玉の槍の使い手
Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主



序章三 早馬


 ヤーデシュタットの墓地(フリートホーフ)に駆け付けてきた伝令使(ボーテ)は去り、オスヴァルト・シュイヴァン卿は司教マテウス・レピドゥスより送られてきた巻物に目を通していた。
 かつては枢機卿(カーディナール)マレーネ・ジーベルにも仕えた司教(ビッショフ)マテウスは、伝え聞くところによれば内部でも旧派真教(シニストラリック)きっての優秀な人物と誉れも高い。多くの偉大な魔術師(マーギア)が集う天慧院(ウェルス・サピエンティア)の特級位卒業試験を主席で突破しており、多くの神学者(テオローゲ)と同様に生粋のマテラ人であった。
 ボリバトゥスなる名を持つ魔神(デーモン)の胎動を監視する為に公都カルデンブルクに遣わされている彼がよこした手紙には、ウェルテクスという忘れられた魔神の名が記されていた。海にその影の落とす気配が満ち、ぜひとも協力してほしいとのことである。
 王室などに務める達筆な書記(シュリフトフューラー)はどんなに急いでも流麗な字を書くものだが、マテウス司教の字は相変わらず汚かった。丸眼鏡を掛けた小柄な司教(ビッショフ)の姿を思い出し、オスヴァルトは今頃どうしているだろうと思い浮かべた。
「‥‥魔神がからんでいるとあれば、無視できますまい」
 人々を誘惑する闇の鎖の眷属の中でもとびぬけて強力な魔神は、実に様々な能力を持つ。聖痕と同等の力を持つ魔印(デーモンズィーゲル)とよばれる闇のしるしを操る魔神たちは、たびたび人間世界を密かに侵食しようとしていた。聖痕者(グラヴィーエールト)としても、神聖騎士団員(ハイリゲヴァイセリッター)としても、放ってはおけぬ相手である。

 オスヴァルトは急いで宿に戻り、準備を整えると軍馬に跨った。いざ早駆けでヤーデシュタットを離れようかとした時、卿は町中で大柄な戦士(ケンプファー)を見つけた。傭兵ハーランドである。聞けば彼も同じ理由で、公都カルデンブルクを目指そうとしていた。
「急ぎましょう、ハーランドさん。馬は?」

オスヴァルト・シュイヴァン、鉄の右将、聖盾の乙女に仕えし騎士
ハーランド、震天槌の使い手、早瀬の姫を探す者

 馬上でオスヴァルトが問い、徒歩のハーランドが答える。
「分かってるだろ、オズ。傭兵は馬に乗らんよ」
 ハーランドの鉄色の目が左右に動き、辺りの人目を確認した。オスヴァルトも同じことをし、ややって二人は頷く。オズは馬を人のいない路地裏の方へ向けた。

 ややあって、エステルランド神聖騎士団員オスヴァルト・シュイヴァンは単騎ヤーデシュタットの町を離れた。軍馬を駆り、公都へと急ぐ。体を包むのは白銀の甲冑(パンツァー)、くくりつけた(シュヴェーアト)騎士盾(リッターシルト)。馬が跳ねるたびにその胸で揺れるのは、深い思い入れある十字(クロイツ)の護り。
 そしてその荷にはもうひとつ、若き“鉄の右将(アイゼンリヒテ)”が操るにはいささか似合わない――重厚な戦槌(クリークハマー)がくくりつけられていたのである。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団

こうさくいん「というわけで後半戦なのでしゅよ〜o(≧へ≦)9゛」
ボス「うむ。舞台はより河下の公都カルデンブルクに移り、第一部よりやや短めに一直線に突き進む第二部『さらば、麗しき波濤よ』が始まるというわけだ。さて間が空いているので第一部の解説をするのだ」
こうさくいん「らじゃーでしゅー。かつて愛した早瀬姫シオナを探してやってきた傭兵ハーランド。船乗りたちを惑わす河の魔女の犠牲になった旧友ニコラウスの弔いに遥かエステルランドからやってきた神聖騎士団員オズ。その妻マグダレーナを慰めにやってきた踊り子マリア。かつて世話になったドロテア司祭に会いに来た星の詩人クレリア。そして河霧彦ヴォーケン王の王命により魔女討伐に地上世界に来たザルム族の若者アリアン。5人はヤーデシュタットの町で出会い、キルヘン河の岩礁に棲む赤き魔女にして殺戮者、ブルティーゲヴェーレを倒しに向かうのでしゅー」
ボス「だがハーランドの腕の中で泡と消えながら、魔女は自らがシオナ姫であることを語る。かつて身分違いの愛ゆえに愛する人を失い、ザルム族を追放された彼女は、河に身を投げた不貞の女の死体がみな大海へと流れ、海底に封ぜられたいにしえの魔神ウェルテクスの復活の鍵と使われていることを知った。男の死体を用い、彼女はより大きな邪悪を防ぎながら孤独に時を過ごしていたのだ」
こうさくいん「そしてハーランドぽんはシオナたんの最期を看取り、魔神復活を防ぐことを決意。ドロテア司祭様が突然町を離れたことを知ったクレリアたんは行方を探すことに。そしてその司祭にちょびっと不倫していたことをなじられ、身を投げて死んだマグダレーナのことを知ったマリアおねえさまは打倒ドロテア一直線。一方王命を果たせたアリアンぽんは魚といっしょにお祝いパーティ。そしてオズぽんの元には公都に住む司教マテウスから急ぎの手紙が。愛しのノエルたんとの再会をお預けにしてカルデンブルクへ急ぐのでしゅ!(>ω<)」
ボス「Σ( ̄口 ̄;) お預けは余計じゃあ。さて主にシナリオに関わるモチベーションの為だが、後編では因縁が書き換わるようになっている。傭兵ハーランドへは【仇敵】魔神ウェルテクス、吟遊詩人クレリアは【探求】司祭ドロテア、夜の踊り子マリアは【断罪】司祭ドロテア、騎士オスヴァルトには過去の【保護者】で司教マテウス・レピドゥス。ついでにザルム族のアリアンには未来の【自身】“清水彦”フルスがついてしまい、なにゆえか古代の王の幻視をたびたび見てしまうようになるのだ」
こうさくいん「んんーますます電波を受信しているでしゅね〜( ̄ー ̄)」
ボス「(ギク)ええぃ夢や幻や運命に導かれるのはファンタジーではよくあることではないかぁ。懐かしの『深淵』だってそうだぞ。それでは本編の開始なのだ」



第一章 われは思いを巡らさん


 道案内をしてくれた少女クララと別れ、クレリアとマリアの二人はカルデンブルクの大聖堂(アエデース・カテドラーリス)へと足を踏み入れた。
 公都だけあって大聖堂の威容はヤーデシュタットの教会(エックレーシア)とは比べものにならなかった。広い礼拝堂(カペルラ)、重厚な教会建築に都じゅうに鳴り響く(カンパーナ)、どこからか聞こえてくる清らかな聖歌(ハイムヌス)。何やら忙しいのか、司祭(サセルダ)たちが控えめにだが急いで行き交っている。儀式に必要な真実の書ゲネトリオスや燭台や聖遺物やらの類を抱え、小走りに駆けてゆく侍者(ミニストラント)の子もいた。
 刺繍の入った揃いの制服に僧帽、大きな十字(クルクス)の飾りを首から下げた若い女の助祭(カペルラーヌス)たちが、受付で二人の旅人に応える。だが、助祭たちは首を横に振るのだった。
「申し訳ありませんが、旧派真教教会にその名の司祭はおりません‥‥」
「バカなこと言わないでよ」 マリアはつい声を大きくした。「ちゃんと調べて!」
 汚れなき教会ではなく夜の盛り場でこそ輝く美女の声は静かな神の家に思わぬほど大きく響き、助祭(ディアコーン)の娘たちが首をすくめる。声を聞きつけた老女の司祭(プリーステリン)が遠くからマリアの目立つ姿を認めると、小さく十字を切って天に許しを願った。
「ええと、いることは、いるのですが‥‥」
 娘の一人が慌てて大きな本の頁をめくる。
「聖ヨハンナ長老会議にいらっしゃいます九十五才のドロテア補佐司教様、それから司教領にて聖女認定の儀を受けることになっている十二才の信徒ドロテア、これだけしか記録されていないのです。この公都には、主に仕えるドロテアという名の方は、ひとりも」
「ったく、偉い司祭サンたちも適当にやってるんじゃないの?」
 神をも怖れぬマリアは腕を組み、ため息を漏らした。その中でも聖堂(ドーム)の空気は何やらせわしなく、奥の方で人が行き交っている。と、荷物を抱えた侍者(メスディーナ)の少年が、後ろから助祭の袖を引いた。娘のひとりが振り返ると、声を小さくする。
「ああ、ありがとう。その聖油はこれから海を静める儀式を執り行う司教様のところへ。そちらの護符と許可証はさっきの巡回司祭の方によ。二階へ上がっていったわ。えーとえーと、それからそれから‥‥」
 最近特に海の荒れが激しいことは、都の住人が口々に唱えていた。その対応で教会が忙しいのも当然である。それにしてもおかしな話であった。たとえ一時の逗留でヤーデシュタットにいたとはいえ、旧派真教教会で正式な司祭(プリーステリン)の位を授かっているならば、ドロテアの名はしかるべきところに記されているはずである。
 主を称える場にまったくもって似合わない美女マリアは連れの方を振り返り、肩を竦めた。彼女よりは教会が似合っているクレリアも無言で首を傾げ、今後の方策に悩むのであった。

Nacht Taenzerin - 夜の踊り子、マリア



第二章 死と不毛の冷たき顎


 軍馬を飛ばし、大きな戦槌(クリークハマー)を携えた若い騎士(リッター)が一騎、公都カルデンブルクへと辿りついた。ふたたび人目につかないところで、戦槌を元に戻す。エステルランド神聖騎士団副長の名高き“鉄の右将(アイゼンリヒテ)”、“震天槌”と名付けられた魔法の戦槌を携えた無骨な傭兵(ゾールドナー)ハーランドの二人組は、いざカルデンブルク大聖堂(ドーム)へと向かった。
 問い合わせるとすぐに分かった。司教(ビッショフ)マテウスは滞在している家も近く、最近はずっと聖堂内の研究室に篭りきりだと言う。
 精悍でありながら優美さを備えた神聖騎士(ハイリゲリッター)が来たというだけで教会の対応は格別だった。助祭(ディアコーン)の娘に案内され、マテウス・レピドゥスが闇の秘密とこの世の真理を探求し続けている部屋に向かう。
「おお、オスヴァルトか。連れも一緒だな。入ってくれたまえー!」
 扉を叩くと、中から明るい、やや早口の声が響いてきた。中に入ると、本棚、机の上、物置、至る所に書物が積み上げられている。と、本の山の中から僧衣を来た手が上がると二人を手招きした。
「‥‥まるでもぐらみたいだな、」 ハーランドが率直な感想を漏らし、難儀しながら司教(ビショップ)の元へと近付いた。
「呼んだのはほかでもない。この荒れた海は魔神復活の予兆だ。魔神ウェルテクス、かつては潮水の女神であった太古の女神がよみがえろうとしているのだよ」
 司教マテウス・レピドゥスは年は三十過ぎだが、童顔のせいで若く見えた。マテラ人特有の色の濃い肌、漆黒の髪に瞳は明るい緑色(グリューン)、ちょこんと掛けた丸い眼鏡が童顔の印象を強めている。黒っぽいゆったりした僧衣に身を包み、ちょこちょこと本や巻き物やらを探し回っている。席を立つと、両者とも長身のオスヴァルトとハーランドよりもだいぶ背が低いのが見て取れた。
「大海嘯のさまを記した絵巻物はどこだったかな。あったあった。これを見たまえ!」
 早口な司教は一見軽薄に見えるが、多くの知恵を教わったオスヴァルトはその英知(ヴァイスハイト)が深いのを知っている。よくよく見れば机の上には小さく真理の探求者の証しである短剣(ドルヒ)の飾り物が置いてある。相手は天慧院(ウェルス・サピエンティア)を出た俊英でもあるのだ。
 それはキルヘンとフィーデルのふたつの大河を襲った、何百年も昔の大災害のことであった。かつては潮水の女神と崇められ、海を治めていたウェルテクスはいつしか恐るべき魔神(デーモン)となり、その怒りによって海が逆巻き大波となって陸を襲った。大波(ヴォーゲ)は港町を飲み込み、河を遡りさえしたというのだ。この時災いを治めるためにこの地を訪れたのが聖女レオナという聖人(ハィリゲ)であり、そのさまはレオナ伝という書物にも記されている。
「ところできみたち、潮が河を遡るとどうなるか知っておるかねー?」
 小柄な司教は眼鏡を直すと二人に問うた。
「潮がどうかしたか?」
 ハーランドがぶっきらぼうに答え、オスヴァルトが後を継ぐ。「‥‥河の生き物が滅んでしまいますね」
「その通り!」 司教は物知りの若い騎士(リッター)に満足そうに頷いた。
「書物によれば、この塩害はその後百年も続いたというのだ。不毛の地となった沿岸を悲しんだ聖レオナがこの地に参り、恐るべき魔神と戦ったという」
 “死と不毛の冷たき(あぎと)“の名を持つウェルテクスの力は凄まじく、戦いは激しいものだった。キルヘンのほとりに住む生き物の四分の一が死に絶え、自らの王国を侵された河の民ザルムは四分の三が命を落としたという。当時の(ケーニヒ)も倒れ、後を継いだ息子は以後海に出ることを固く一族に戒めることになった。
 そして聖レオナの祈りにより、ウェルテクスは深い海の底に封ぜられた。年月が流れ、真教の書物では異教の神ではなく魔神(デーモン)と分類された女王(ケーニギン)の名は忘れられ、その名を知る者は司教(ビッショフ)マテウスのような特に詳しい学者、あるいは闇の鎖へと身を捧げた者たちだけとなったのである。

 各種の封印(ズィーゲル)を解く為にはそれぞれ独特の方法が用意されていることが常であった。ウェルテクスの封印はとりわけ変わっており、不貞を働いた女百人を身投げさせ、潮水の女神への生贄(オプファー)とすることが必要だという。そして、現在のカルデンブルクで騒ぎの元となっている海の荒れは、司教の調査によれば間違いなく魔神復活の前兆であった。
「わたしは御覧の通り司教の身、何かを為すには顔を知られすぎてしまった。無用な注目を浴びることも多い。そこできみたちに頼みたいのだよ」
 絵巻物シュリフトローレをしまい、司教(ビッショフ)は熱弁を終えて一息ついた。僧衣の中から布を出すと額に浮いた汗をぬぐう。本の山の中で居眠りでもしてぶつけたのか、柔らかな髪に隠れた額には稲妻型の傷跡があった。
 二人は頷き、さらにいくつか尋ねた。質問が終わり、司教は器用に本の山の間をすり抜けて窓の方に近付いた。耳を澄ませて(カンパーナ)がまだ鳴っていないことを確かめる。

ハーランド、震天槌の使い手、早瀬の姫を探す者

「ふむ。講義が始まるまでもう少しあるな‥‥」
 マテウス・レピドゥス司教の眼鏡が光る。
「そちらの傭兵殿は、何か他の魔神のことで聞きたいことはあるかねー? よい機会だ、なんならわたしが教授してしんぜよう」
「‥‥ほんとにせっかちだな」
 ハーランドは苦笑いを漏らした。
「いんや、オレが聞きたいことはぜんぶ済んじまったよ」

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ



第三章 汽笛亭の名物


 公都中心部、目抜き通りでも一際大きな《汽笛亭》は昼を過ぎても遅い昼食をとる旅人や都民たちで賑わっていた。そんな中、考え込みながら現れたのは背の高い二人組、(ジルバァ)にも見える薄墨色(グラゥ)の髪をした整った容姿のまだ若い騎士(リッター)、もう一人は対照的に傷痕の走る屈強な体をした少し年上の傭兵(ゾールドナー)。魔神のことを考えながら、まずは腹ごしらえでもとやってきたオスヴァルトとハーランドである。
 二人が適当に席につき、今後のことを考えていると、店の前の大通りに車輪の音と馬車の屋根先に下がるさまざまなものの雑多な音を響かせながら、馬車の一隊が止まった。旅商人か何かの一行のようだ。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団

 荷物の上からぴょんと若者が飛び降りると、御者台に座るあるじのところへ歩いていく。若者は腰の袋から硬貨(ミュンツェ)を出すと見せた。
「ありがとう。お代はこれでいいかな?」
「あぃ、気ぃつけてな‥‥っとおいおい、これじゃ釣りが出ないよ!」
 危うく財布に入れようとした主人は慌てて、濡れたような黒い髪をした美しい若者を呼び止めた。フローリン銀貨数十枚分の価値のある、地方で流通している代替金貨だったのである。
「ああ、すまない。これなら‥‥いいかな?」
「おお、こりゃ珍しい‥‥。掘り出し物だねこりゃあ‥‥」
 小川(バッハ)の色をそのまま封じたが如き小さな宝石(エーデルシュタイン)だった。気のよい主人は満足して若者を送り出すと馬を進ませた。


 席でオスヴァルトが考えこみ、ハーランドが両腕で首を支えて伸びをしていると、《汽笛亭》の扉が開いて客が入ってきた。身分ある瀟洒な若者にも、人間世界に紛れ込んだ何か異質なもののようにも見える、何か違う雰囲気を漂わせた美しい若者である。
「おや、アリアンさん。ここで会うとは」
「これは、オスヴァルト卿」
「あ、いや、」 鉄の右将(アイゼンリヒテ)は周りを見てから言った。「その呼び方はやめてくれませんか」
「そうですか‥‥では、オスヴァルトさん」
 碧瑠璃色(アツーアブラウ)の澄んだ瞳がきょろきょろと左右に動き、公子アリアンは《汽笛亭》の感想を漏らした。
「‥‥この店には、盾がないんですね」
 店の奥では変わらず、主人が珍しいブリスランド産の杯や白い皿を拭いていた。

「どうしてここへ?」
「海が騒いでいる。ぼくの心が、感じるんです」
 オスヴァルトが問うと、アリアンは長い睫毛を伏せて真顔で答え、胸に手を当てた。店の主人が卓に来ていなかったのは幸いだったことだろう。
「でだ、オレたちはその海に封印されてる魔神ってヤツの話を聞いてきたワケだ」
 ハーランドがやや声を落とし、軽薄そうな司教(ビショップ)から聞いた話を伝える。魔神(デーモン)ウェルテクス、潮水の女神。その復活の為には不貞を働いた女の生贄(サクリファイス)が百人、百人の女に身投げさせることが必要だと言う。だがよく調べて見ればこの十年、頻発とは言わないまでも時折、キルヘンの流れに身を任せて果てる女性はいた。少し上流にあるヤーデシュタット、果てはさらに上流のケルバーでも見られるという。速さそのものは緩慢だが、徐々に生贄の数は増えていたのである。
「そんなことが‥‥」 真面目に聞いていたアリアンはふと顔を上げた。
「その、身投げというのは、河に泳ぎに飛び込むのではなく、死ぬために飛び込むことですよね」
 河の王国の公子(クローネプリンツ)は真顔で問いを発し、ハーランドとオスヴァルトも一瞬の間を置いて真顔で頷き返した。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

「まあお客さんたち。難しい話は後にして、ゆっくり食事でもどうだね。どこから来なさったんだい」
 手が空いているのか、店の主人が相談を続ける三人の聖痕者たちに声を掛けてくる。
「どこからって、そりゃ、門からだぜ?」
 大きな体を椅子に伸ばしたまま、ハーランドが面倒そうに答える。オスヴァルト卿に目で合図され、震天槌(ヘヴン・シェイカー)の使い手はあまりに愛想のない答えを改めた。
「アァ‥‥ヤーデシュタットからだよ。それがよォ、野郎二人で一つのテントのつまんねえ旅だったのさ。揺れるし、夜は夜で夜空が天井になるし、これがまた散々で‥‥」
 ちょうど良い大きさの戦槌であることをいいことに、野営の際はテントの支柱に使われたりついでに薪を割るのに使われたりと、神聖騎士(ハイリゲリッター)オスヴァルト卿の荷物のひとつとしての旅は実はなかなかに大変だったのである。
「そう、ついこの間まではヤーデシュタットという所にいたのですが。私の場合は、フェルゲンからと言うべきなのですがね」
「ほう、騎士様はそんな遠くから。そちらさんはどうだい」
 主人は続いて、明らかに都の住人ではないとわかる黒髪の若者を眺めた。
「ぼくは、河の‥‥」 またしてもオスヴァルト卿に手を触れられて合図され、公子アリアンは口をつぐんだ。王都フェルゲンからやってきた人当たりの良い騎士が後を継ぐ。
「‥‥か、彼は、離れ小島にある国からやってきたのです」
「なぁるほどね。まあ御覧の通り最近は海が荒れ気味だが、食事は新鮮なのが揃ってますよ。内陸の方じゃ、こんなの滅多に食べられないでしょう」
 主人はにこやかに去ってゆき、女給が三人の前に皿を並べた。
 公都自慢の海鮮料理だった。長旅で空腹だったオスヴァルト卿は海の都の珍味にあずかり、偽りの体でも食欲の消えていないハーランドも旺盛な食欲を見せた。そして公子アリアンはただ一人、皿の上に並ぶ海の友人たちの姿に顔をひきつらせるのだった。

Cognosce te ipsum. - 汝自らを知れ、天を震わすもの、アルカナの槌よ



第四章 希望の御子の歌


 なんの収穫もなかったカルデンブルク大聖堂(アエデース・カテドラーリス)を離れ、マリアとクレリアは夕暮れの都を歩いていた。この公都にいるはずのドロテアの行方は依然として掴めていない。
 当てもなく二人がぶらりと歩いていると、少し裏の通りで見知った顔を見つけた。馬の尻尾のようにまとめた明るい金色(アウルム)の髪を揺らした、そばかすだらけの少女だった。二人を案内してくれたクララである。だが少女は元気がないように、細い肩を落として歩いていた。声を掛けると寄ってくる。
「こんばんわ、クララ」 相手が誰かを悟ったクレリアは屈むと、少女の頭を優しく撫でた。
「どうかしたの?」
「‥‥クララね、お母さん(ムッター)とけんかしたの」
 二人が話を聞くと、少女は語り出した。
「クララのお母さん(ムッター)はね、さる身分のとうとい方の“おてつき”なんだって。クララはそのとうとい方の子供だって。だから、お父さん(ファーター)お母さん(ムッター)のこともクララのことも嫌いなの。クララはお父さん(ファーター)の子じゃないって言うの」
「そうだったの‥‥」
「でもね、お母さん(ムッター)はね、ほんとはクララのこともお父さん(ファーター)のことも大好きなんだよ。今日はけんかしたけど、クララはそう思ってるんだ」
 二人が同意して励ますと、少女は微笑みを見せた。だが、紺色の瞳を落とすと、クララは付け加えた。
「‥‥でも、さいきん、クララとあまりお話してくれないの。あんまり笑ってくれないの。お母さん(ムッター)は、たびの司祭さまのはなしばかり聞いてるんだ」
 はっとしたクレリアは、光のない瞳でマリアの方を振り返った。マリアも頷き、少女のそばに屈む。
「ちょっとお嬢ちゃん。イヤな話だろうけど、アタシたちに詳しく聞かせてちょうだい」
 まだ“おてつき”の意味も完全には分かっていない十歳のクララのたどたどしい説明ではあったが、大筋は分かった。クララの母親は都の仕立て屋だという。おおかたどこぞの貴族に目をつけられ、強引な契りの後にクララが生まれ、相手の身分が身分であるだけにその後も逆らえずにいるという辺りだろうか。
 司祭(サセルダ)によく会うようになってから、クララの母親はいつも物思いに耽りながら(マレ)を眺めているという。クララは旅の司祭のことをよくは知らなかったが、話を総合すると、どうやらドロテア司祭の風体と一致するのだ。
「クララ、今日は大丈夫? ちゃんと帰れる?」
 クレリアが尋ねると、少女はうなずき、頭の上の髪が揺れた。
「うん。きょうは、おばあちゃんのいえに行くことになってるんだ」

「そう‥‥そうね、では、勇気の出るおまじないを教えてあげましょう」
 不思議そうな顔をする少女の前で、クレリアは司祭(アポステル)使徒アングルスを称える歌を歌った。希望の御子の歌、常に光と共にある無垢なる天の使いの歌、マテラ語の不思議な歌詞ながらも元気が出てくる(カントゥス)を。

クレリア、星降る詩、失われた歌の探し手

 笑顔を取り戻した少女クララは二人に手を振ると、道を駆けていった。走って行く馬の尻尾のようにその髪が跳ねていた。
 場所は分からないが、司祭ドロテアはこの(ウルブス)にいるのだ。そして不貞の女を見つけ、また恐ろしいことをその耳に囁いているのだ。

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア



第五章 この世の彼方の海


 美しきキルヘンの大河は濃い塩に濁り、流れの中で戯れていた河の生き物たちの死体が浮かんでいた。これでは全ての民が死に絶え、王国が滅ぶまでそうは掛かるまい。
 目を転ずれば迫る大波、その波の上には怒れる海の女王。かつてアリアンら河の一族を庇護し、巡礼に来るザルムにかがやける海の神殿のあるじとして麗しい微笑を向けていたアルカイの女王が、今は怒りの刃を向けていた。
 アリアンが? ふたたび否、そのような名ではない。その名はフルス、“清水彦”フルス、誇り高き河の民の一族の歴史が語られるとき、大きな戦の中で民の為に命を落とした王として語り部の口に上る名、初代の王とも伝えられる名である。
『愚かな者よ、この私を軽んじた罪は重い。そなたは約定を破り、海へと背を向けた!』
 フルス王は忙しかったのだ。天上の神より造られたザルム一族を河の王者に真に相応しき種族とする使命は尊く、責任も重い。海の激しき流れに鍛えられ、ザルムの鰭は強くなったが、未だ使命は終わっておらぬ。世界の四つの大河を巡り、民を治め、河に捧げられた巫女との間に次なる王に相応しい子をなし、いつしかフルス王は海の神殿を訪れることがなくなっていた。
『麗しき女王よ、なぜそこまでお怒りになる!』
『そなたらの一族は我が領土を泳ぎ、強くなった。なのに我が海への感謝を忘れるとは、これを非礼と言わずなんと言おう。私は‥‥ずっとそなたを待っておったのに』
 女王の怒りは凄まじく、纏う大波は音を発てて渦巻いている。フルス王は覚悟を決めた。ザルム一族の未来はこの一戦にあり。だが、王の背後には子らがいた。末の子はまだ稚魚、小さな鰭を動かしながら、大きな王の影に隠れている。
『父上、戦いましょう。我らザルム族の誇りにかけて』
 長子が言った。姿形だけは父と同じ、一人前のザルムとなりつつある子、兄弟の中でも最も勇敢な子。だが、一族の血を絶やすわけにはゆかぬ。
『‥‥ならぬ。そなたは生きよ。そなたたちがいなければ、誰が河の王国を治めるのだ』
 名残惜しそうに子らは退き、父王の元から去っていった。フルス王は単身、怒れる女王と相対した。
『残念だ、女王よ――』

「うーん、うーん‥‥」
「ちょっとアンタ。大丈夫??」
 ここは公都カルデンブルクの端、河口から海に流れ込む水を引き入れた運河(カナール)のほとり。運河の流れはキルヘンと変わらず、川のほとりには河原が広がり、上にはブリュッケが掛かっている。
 たまたま橋を通りかかったマリアは、河原で倒れている見知った顔を見つけたのだった。濡れた黒髪をした薄着の美少年である。少年を助ける美女(シェーネ)の姿はまことに絵になるが、相手の正体を知っているだけにマリアは一概には喜べない。前に助けた時は乾きに苦しんでいたようだが、今度はどうも違う。
「しっかりしなさいよ。どうしたっていうの??」
 体をゆすり、水を与え、頬を叩く。

 しばし経って、アリアンは彼女のたおやかな腕の中で目を覚ました。長い睫毛の下の瑠璃色(アツーアブラウ)の瞳が開き、マリアの姿を認め、そして突然、がばりと起き上がるとマリアの両肩を掴む。
「‥‥?」
『我が子よ、そなたは生きよ!』
 数瞬の間美女が呆けていると、河の王国の公子(クローネプリンツ)はようやく正気に返って仰天した。
「あ、そ、マ、マリア‥‥さん!?」

アリアン、碧瑠璃の公子、青玉の槍の使い手
マリア、夜の踊り子、暁の子の鎖

「な、何言ってんのよ!!」
 マリアは身を退き、アリアンは尻餅をついて飛び退いた。
「だいたい子供がどうとかって‥‥恥ずかしいじゃない」
 男と女のよしなしごとにかけては百戦錬磨のはずの踊り子(テンツェリン)マリアも、この時ばかりは顔を赤らめる。

 水を与えられ、ようやく落ちついたアリアンは状況を理解した。問われ、自分の見た鮮明な(トラゥム)のことを話し出す。
「その、とても不思議な夢を見たんです――」
 川岸に立つと、公子は運河の流れの中に石を投げ入れた。いかなる技を使ったのか、やがて水面に魚たちが集まり出す。マリアに話す話は人間の使うノッティング語だったが、魚たちは始まる公子の物語に耳を傾けていた。

Kroneprinz der Azurblau - 碧瑠璃の公子、星の青玉の主

 魔神(デーモン)の手がかりをどうやって探したものかと考えあぐねていたハーランドとオズワルドは、いつしかブリュッケを歩いていた。下を流れるのはキルヘンから分かれた運河(カナール)の川だ。
 と、ふと川岸に目をやればなんとも奇妙な光景が広がっていた。河原に立っている黒髪の若者はアリアンだ。彼が水面に向かって何か喋っている。水面には何か白っぽいものが集まっており、よく見ればそれは魚の群れだった。そして彼の後ろで、スカートの裾を上げてしどけない格好で河原にしゃがんだ金髪の美女(シェーネ)が、一緒に話を聞いている。
 女性が足を見せることを不謹慎とする地方もあったが、マリアは足首が見えていることを少しも気に留めていないようだった。もう少し近付けば、足首に刻まれた暁の子コロナの聖痕がはっきりと見えそうだ。
 そして、二人の男が視線を美女の脚からやや上にずらすと、そこには、多くの男たちを惹きつけてやまない、神がひときわ恩寵を与えたが如き豊かな胸があった。相手がしゃがんでいるだけに、橋の上から眺めるとまさに絶景である。
 傭兵(マーセナリー)ハーランドはただにしては儲けものの眺めをへー、とばかりしばし楽しみ、いっぽう王室親衛騎士(ケーニヒシュッツェンリッター)オスヴァルト・シュイヴァンは一目見ただけで目を背けた。エステルランドの若き鉄の右将は胸の十字架(マーテル・クロイツ)に、慌てて何事か詫びの言葉を呟くのだった。


「‥‥あれが本当に古代のザルム王なのか分からない。でも、前にもあの幻を見たんです」
 水面には小魚が集まり、川べりを歩く蟹や小さな河の生き物たちまでもが話に聞き入っていた。彼らはみな真剣に河の王国(ケーニヒライヒ)の公子の話を聞いていたのだが、残念なことに人間の世界に属する残りの三人の聞き手には、その真面目な表情までは分からなかったのである。
 四人は互いの話を語り合った。魔神(デーモン)ウェルテクス、ザルム族の多くが倒れた古代の戦い、聖人(ハイリゲ)による封印(ズィーゲル)、そしてそれを解く為に必要な百人の生贄(オプファー)
「なぁるほど、不貞の女かい‥‥。アタシも、知り合いの女が身を投げたのさ」
 マリアは吐き捨てるように言うと、その美しい顔を束の間歪めて河口の方を見やった。
「その司祭とやらがこの都にいるなら、オレの震天槌は黙っちゃいねェぜ」
 ハーランドが低く呟き、アリアンは考え込んでいる。
「騎士サマはどう? 一緒に来てくれるかい?」
 マリアが言うと、オスヴァルト卿は静かに頷いた。
「古の魔神を見逃すわけにもいきますまい」 胸の十字架(クロイツ)に触れ、エステルランドの若き騎士は静かに言った。
「私にできる限りの事はしましょう。この十字架に誓って」
「さっすが騎士サマだね。頼りにしてるよ!」
 マリアは満面の笑みを浮かべて、にこにこしながら長身の若者に抱きついた。不意打ちを掛けられた河の公子ほどではないにせよ、美女(シェーネ)に抱きしめられた若い騎士の反応は似たようなものだった。
「と、ところで、あの、その、離れては、いただけませんか‥‥。その‥‥女性にこのような事をされるのは‥‥慣れていないもので‥‥」
 あら残念、とマリアが手を放すと、石のように身を固くしていた精悍な騎士はようやく動き出した。またしても、胸の十字架になにやら詫びを呟いている。

オスヴァルト・シュイヴァン、鉄の右将、聖盾の乙女に仕えし騎士

 栄えあるかな、オスヴァルト・シュイヴァンは名高き神聖騎士団(ハイリゲヴァイセリッター)の副長にして賢き王子とナイチンゲールの姫たちを護る王室親衛騎士隊(ケーニヒシュッツェンリッター)が一騎。とはいえ素顔のオズは弱冠二十一歳の若者であり、奔放な女性にはまるで耐性がなく、鉄の右将の胸の内にあるのは常にただ一人の乙女(メートヒェン)なのであった。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団

ボス「さすが、マリアおねえたまはオトコ共を手玉にとって翻弄‥‥い、いや導いているのう。ステラっぽいことをしてるではないか(´ー`)」
こうさくいん「しかし! オズぽんぽんには心に決めた人がいるのでしゅね!o(≧へ≦)9゛」
ボス「卿を付けると大人っぽく見えるが実際にはかなり若いからな。ちなみにそれを横目にサカナと話しているアリアンぽんはフルキフェル共通特技の《動物との会話》を持っていたのだ。まあたぶんサカナも動物に入ってくれるだろう(笑)」
こうさくいん「ザルム特技《河の瞳》もあるからますます一心不乱に電波受信中でしゅね〜(>ω<)」
ボス「総帥が海のサカナだけにサカナ関係は得意か‥‥(笑) い、いやデムパとか言うなぁぁ。さて第二部は割と短めで一直線に進むのだが、ここから先は特に急転直下に事件が起きてどんどん進むぞ」
こうさくいん「れっつらごーなのでしゅ〜」



第六章 茨の海


 カルデンブルクが(ゼー)へと繋がる場所には(ハーフェン)が広がっており、毎日多くの船が出入りしている。行く先は海に囲まれたブリスランド王国、南の沿岸を下ればアイセル司教領に遥かなバルビエステ王国、海の果てと様々だ。
「がんばってね、お父ちゃん!」
「ああ。母さんの言うことをちゃんと聞くんだぞ」
 出航間際の帆船が並ぶ港では普段どおりの活気溢れる光景が繰り広げられていた。航海に出る水夫(ゼーマン)とそれを見送る家族、樽を積み込む荷物運び、水上の旅に出る客たち、忙しく歩き回る人々。
 と、そこへ平和な光景の砕ける前兆のように、城塞(ブルク)の上から早鐘の音が鳴り響いた。短い間隔で打ち鳴らされるそれは海賊(ゼーロイバァ)の襲撃など非常用にしか使わぬものであり、人々の心を言い知れぬ不安で満たした。
『逃げろ! 津波だ。大波がくるぞぉっ!』

 それは水平線の彼方より迫りくる大きな(ヴォーゲ)であった。その色はどんな海の色よりも(くら)く、何の前兆も見せずに姿を現した。遥かな海の底に眠るいにしえの魔神(デーモン)の力が漏れ出したのか、その自然界の力はあまりに強大であり、破滅を予告しながらゆっくりとうねり、進んできた。
 大混乱に陥り、人々が逃げ惑う中で大波(ヴォーゲ)は港を直撃した。大いなる力は何の区別もしなかった。ある者は助かり、ある者は波に呑み込まれ、そして繋がれたままの船はその多くが木の葉のように弄ばれ、ばらばらに砕かれた。


 クレリアは海賊避けの城砦の上で(カンパーナ)を聞きつけ、為すすべもなく眼下の光景を見守っていた。いや、光を失った彼女の眼は見ることはできなかったが、津波(ウンダ)の発てる轟音、呑み込まれていく人々の悲鳴、逃げ惑う人々の声、そしておおいなる(テネブラエ)の力がもたらす無慈悲な破滅の匂いは、確かに感じることができたのである。
「これが‥‥伝説と同じ大海嘯?」
 手すりを握り締めていると、騒ぎを聞きつけて面々が駆け付けて来た。思わず港へ向かおうとするクレリアの腕を、傷だらけの傭兵(コンドゥクティ)の手が掴んだ。首を振るハーランドに止められ、盲目の詩人(ポエトリア・カエカティオー)は見えない目だけを港にやった。港近くの店は全滅し、水は陸上を逆流していた。港から逃げる人々で一杯の中を逆方向へ進むことは、誰にもできなかっただろう。
 悲鳴を聞きつけた者はもう一人いた。
「魚たちが泣いてる。助けなきゃ!」
「やめなさいよ坊や。いくらアンタが泳ぎが得意でも、あの波の色を見なさい!」
 今にも飛び出そうとしていたアリアンは、マリアに押さえつけられた。だが、かくいうマリアの美しい横顔も、歯軋りせんばかりの今は歪んでいる。
「これがウェルテクスの力だっていうのかい‥‥早くドロテアを探さなきゃ」


 津波の話が伝わり、公都の無事な部分も騒然となってきた頃。行き交う馬車や人の中を掻き分け、教会に属することを示す布をつけた一頭の馬が五人の元へやってきた。乗っていたのは侍者(メスディーナ)の少年だった。
「どぅ、どぅ、大聖堂のものです! オスヴァルト卿は? それから連れの方はこちらに?」
 そのただならぬ様子に進み出たオスヴァルトの前で、使いは慌てたように続けた。
「た、大変です。司教マテウス様が襲われ、重い傷を負われたのです!」
「マテウス様が? 何者にだ?!」
「賊は教会の人間に化けており、気付いた時には逃げられてしまいました。毒を使われて‥‥でっ、ですが司教様はまだ気を確かにもっておられます。司祭の手のものに違いないと‥‥そう申されておりました!」

Vere ac libere loquere. - 正しく自由に歌え、アルカナの歌、星の詩人クレリア


 一行はカルデンブルク大聖堂(ドーム)に急いだ。騒然とした中を抜け、息を飲んでいる助祭(ディアコーン)たちの輪の中、研究室の前で倒れている司教(ビッショフ)マテウス・レピドゥスの元へ駆け寄る。
「すまんね‥‥。大事なことが分かったから、きみたちに伝えようと思ったんだが‥‥このざまだよ」
「しっかりしてください、マテウス司教」
 割れた丸眼鏡がそばに落ちており、司教の僧服には血の染みが広がっていた。オスヴァルトは急いで血を止め、神に祈ろうとしたが、慌てたためかどうにもうまくいかない。聖堂(ドーム)に勤める司祭(プリーステリン)の一人が進み出てしゃがむと、彼に代わった。
「ぼくもきみたちも、ちょっと知りすぎたようだ。だが後悔などしないよ。闇の鎖を打ち砕く為に‥‥この命はあるのだから」
 天上の主の力を借り、聖なる言葉(ハイリゲス・ヴォルト)を唱えた司祭が一行に小声で告げた。毒は薬で消せたので、一命は取り止めたそうである。
「いいかい。カルデンブルクの郊外、港を見下ろす高台に‥‥古い教会がある。そこにいる妖しげな司祭‥‥旧派真教教会に認定されてないはずだ‥‥が、心弱き人を惑わし、生贄にしようとしているらしい」
 司教は若く見える顔を苦痛に歪め、苦しげに息を吐いた。
「港のことは聞いたよ。もう猶予はない‥‥魔神復活に必要な生贄はもうあと一人や二人のはずだ。頼んだ‥‥よ」
 返す言葉もなく、神妙に話を聞いていたオスヴァルトは司教の手を取った。気を失ってしまったマテウス司教は目を閉じた。

そのマントは白、その甲冑は白銀。エステルランド神聖騎士団


第一部 挽歌は奔流の如く 伝説】【前編】【後編
第二部 さらば、麗しき波濤よ 幕間】【前編】【後編

-大河の水先案内-
Sword from BoA Sword from BoA
...... [2] Lebewohl, Schöne Welle / Seite 1 ......
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