
〜 悪魔来たりて笛を吹く 〜
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-ミシェル学園案内図-
| +第8章+ BALANCE OF POWER |
滅多に部外者の入らない聖ミシェル学園の背の高い門の脇に、二人の客が訪れていた。黒が基調の神父服に青と白を配した、どこからどう見ても温和な神父に見える20代半ばの男性。その横に控えている、爽やかな白系統のジャケットを着たすらりとした若い娘‥‥といっても、学園の女生徒たちから見れば年上の女性。二人の姿を目撃した生徒から既に噂が伝わり始めていた。
偽造IDの身元を書き換えて門をくぐった虎布世良神父とミア・ウェイである。二人は相談の末、転任してきた神学の先生とその助手という触れ込みで聖ミシェル学園に潜入することにしたのだ。
二人の前では眼鏡を掛けた老シスターが、分厚い書類の他にも丁寧に口頭で注意事項を伝えていた。
「よろしいですか、聖ミシェル学園は厳しい規律を守ってきた伝統ある学園です。当校の生徒とくれぐれも何かの間違いなどあってはなりません。万が一、万が一ですが、生徒に手を出すなどもってのほかです。そのような罰当たりには聖ミシェル様から必ずや‥‥」
影武者の本性が持つ擬似人格の仮面でどこからどう見ても温和な神父の雰囲気をまとっていた世良神父は、やんわりと遮った。 |
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「ええ‥‥では行きましょうか、ウェイ君」 |
シスターに学園内を案内された二人は、理事長室で書類を書いていたロカトール理事長のところへも通された。
黒髪に空色の瞳をした30代の女性、救世母のような慈愛と包容力を湛えた穏やかなロカトール・エーレンフィスト司教。机の脇には彼女が愛用しているフルートが立て掛けられていた。
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました」
温和な神父の仮面の下で眼鏡が光り、世良神父の眼力が司教の正体を看破する。極めて強い結びつきを持った部下の誰か、あるいは何かがそばにいること。司教自身も電脳関係の製作技術に強いこと。ミア・ウェイもただ黙り、恩師の仇の姿を見つめる。
だが仮面の下の真意は向こうも同じだった。二人が敵意があってこの学園に来たことをすでに見破っているかのように、ことさらに丁寧に話しかける。 |
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こうさくいん「遂に!オトナ二人組も聖ミシェル学園に潜入でしゅね!(☆w☆)」 |
| +第9章+ FLASH POINT |
どこの世界でも女の噂話は一番早く伝わるものであり、聖ミシェル学園の乙女たちの間でも同じだった。神学にも詳しい博識の神父は眼鏡を掛けた温和そうな若い殿方で、若い中国系の助手は拳法も嗜んでいるすらりとした凛々しい女性だという話は学校中に広まっていた。
世良神父とミアが銀杏並木の中を歩いていると、生徒たちがやってきた。ワンレングスの長い黒髪を髪留めで止めた、いかにもお嬢様然とした生徒は高等部一年の河村円華だ。つい最近転校してきた青い髪の少女、佐村リュネもいる。
「ごきげんよう、先生がた」
円華が一礼すると、温和そうな殿方の神父は笑顔を浮かべ、よどみなく答えた。
「ここは大変よい学校ですね。生徒の質も非常に高い」
「そうですわね、世良神父」 生徒会の一員である円華は優雅に答えた。
「厳しい規律の中で立派な人間を育てるのが、この学園の目的ですから」
辺りに人影がないことを確認してから、神学の先生の助手は円華に近づいた。
「まどか‥‥河村円華くんだね」
「よくわたくしの名をご存知ですわね」
背の高い黒髪の女性の姿に一瞬
「ここに来る前に、調べておいたんだ。相手にする生徒のことをね」
銀杏の葉が舞っていた。肩に掛かった黒髪を払いながら、ミアは続けた。
「ところで、昔は? ミシェル学園に入る前は何をしていたんだい?」
河村円華は突然の頭痛に襲われた。たびたび起こる現象だった。試しに読んだものの本によると、こうした突発的な頭痛や吐き気は、洗脳を受けた人間に現れる症状だと書いてあった。
「5歳の時から、修道院にいました。父も母も死んでしまったので‥‥」
広場でパンくずをついばんでいる鳩の群れが円華の目に入った。鳩の群れと、鳩の好きな白コートのおねえさんの記憶として覚えている何かが、円華の頭の中を走って消えた。
「じゃあ、寂しいことも多かったんだろうね」
「いえ、私には、いつも
ミア・ウェイは少女の目を見ながら言った。
「お父さんやお母さんのことは覚えてないのかい?」
「ええ。覚えていません‥‥」
またも円華は頭痛に襲われた。何かとても大切な情景が、頭の中を駆け巡って消えた。
「ウェイ先生は、ご両親はおいでなんですか?」
話題を変えた円華に、ミアは意外そうな顔をすると答えた。
「あたしかい? あたしも、父親を早く亡くしたからね。大昔の中国では
「二人‥‥?」
「一人はあたしの叔父さんで、銃‥‥いや、いろいろなことを教えてくれた」
中華街の名士の姪っ娘は慌てて言い直した。「もう一人は探偵の先生だ。築島晃一郎という名だ」
円華の反応を見つつ、ミア・ウェイはさらに歩み寄った。
「築島晃一郎という名に覚えはないかい、まどかくん。君は本当に河村円華なのかい。築島まどかという名に聞き覚えは?」
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女探偵は女物のトレンチコートの内からポケットロンを取り出すと、聖書の中に隠されていた父の肉声を再生させた。 |
「まどかくん。君は覚えていなくても、このミア・ウェイの |
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腕を組み、反り気味のポーズで肩だけを桜の木に寄りかからせた世良神父は、黙って見守っていた。その眼鏡だけが光る中で、21羽の鳩が広場から飛び立っていった。

| +第10章+ DEAD ZONE |
砕けたステンドグラスはひとつになり、築島まどかの記憶は辻褄の合う連続したものになっていた。ずっと教会の施設で育ち、浄化派の聖なる戦士として聖ミシェル学園に入学した人生の中で、抜け落ちた部分が全て元通りに塞がった。
記憶の中で、河村円華はロカトール・エーレンフィスト司教の前に控えていた。礼服姿の司教は手にフルートを携え、救世母のような微笑みを湛え、新たなる戦士を祝福していた。
「よくぞ試練に耐えました、河村円華」
「はい‥‥これも聖母さまのお導きです」
「力を伸ばし、年を経ればいずれは貴方も
「もちろんです、“空色の笛”さま」
河村円華は司教に導かれるままに、最後の儀式の地へと赴いた。
そこは木更津湖のほとりだった。ロカトール司教の手下の手で準備は整えられていた。一本のロープで縛られ、空中から逆さに吊られた男性が湖面の上で揺れていた。アルコールと薬物を注射され、生贄は既に意識が混濁した状態となっていた。生贄の名は築島晃一郎。河村円華が選ばれし神の戦士となるため、消去しなければならない穢れた記憶だった。
「まどか‥‥まどかなのか?」
朦朧とした中はゆっくり近づいてくる娘の姿を認めた父は、必死に声を上げた。
「さあ、ロープをお切りなさい、河村円華。わたくしたちは病んだ世界を浄化するため、氷の意志に選ばれた神の戦士。過去の呪縛を断ち切ったその時こそ、貴方は生まれ変わり、わたくしたちの同胞となるのです」
司教の静かな声が背後から響く。河村円華は訓練された暗殺者の本性を露にすると、桟橋の上で銀の短剣を抜いた。
「――残念ですが、私はあなたの知っているまどかではありません」
一動作でロープを切り裂く。生贄は水しぶきを上げて湖の中へと落ちていった。
肉体の自由を奪われ、さらにアルコールを体内に帯びた人間が冷たい水の中で生存できる時間は短い。だが父は精一杯運命に抵抗し、必死に水中から頭を出すと川岸に向かって呼びかけた。
「お前はまどか‥‥築島まどかだっ!」
しばらく水面がざわめいた後、築島晃一郎の姿はごぼごぼという音と共に水中に沈んでいった。しばらくは水面に上がってきた泡が、やがて途絶える。
真教浄化派能天使、“空色の笛”ことロカトール司教は恍惚に似た表情を浮かべ、無表情に水面を見つめる新たなる神の戦士に祝福の言葉を与えた。 |
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愛娘のまどかが失踪してから長く勤めたブラックハウンドを辞職し、敏腕探偵として腕を振るっていた築島晃一郎の人生は幕を閉じた。司教の手配で酔っ払って湖に飛び込んだとの証言が浮浪者から出され、表の世界では溺死と記録された。
処刑の記憶は砕かれたステンドグラスのように粉々にされ、河村円華の記憶の中では決して思い返されることのない闇に葬られていたのだった。
| +第11章+ いとしき歳月 |
同級生だという佐村リュネが介抱し、気を失った築島まどかはベンチに寝かされていた。 |
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築島まどかは自分の両手を見つめ、言葉を失った。
「きみは大事な忘れ物をしていたんだ。ずっと昔から‥‥。もう何年も、何年も探したよ」
築島晃一朗の遺志を継いだ女探偵は、哀しげに首を振った。
泣き出すまどかの前に世良神父はひざまずくと、胸から下げた十字架に触れた。
「忘れた方がいい過去もある。だが、思い出したからこそ価値を持つ過去もある」 神父は厳かに言った。
「悔い改めなさい。さすれば救われる」
「神父さま‥‥」
まどかはその手を取った。聖母殿からやってきた黒衣の神父は温和な笑みを浮かべると、十字架をその手に握らせた。

だがそこで異変が起こった。校庭のベンチにいる彼らの周りで突如、全ての音が消失したのだ。あらゆる音から断絶され、自らの心拍や義体の作動音だけが世界の音となって数瞬。
どこからか笛の音が響いてきた。美しいような哀しいような、魂の奥底に影響する不思議な音色。一堂は意識を失ってしまった。
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気がついた世良神父とミア・ウェイが辺りを見渡し、ベンチにいた佐村リュネが同級生の姿を探した時。築島まどかの姿だけが忽然と消えていた。彼女だけが消えてしまっていたのだ。 |
「羊かどうかは分からないけど、それには賛成だ。あたしも行くよ」 |
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「えと、クラスメートですけど‥‥」
少女は佐村リュネと名乗った。聞けば世良神父と何やら顔見知りのようだが、二人ともあまり話そうとしない。
それもそのはず、リュネが神父と出会ったのは正体不明のロッカーガールとしてデビューする以前であった。稀少なアンブロシア器官と同じく人にとって非常な美味であった自分の血を売り、ストリートでなんとか生計を立てていたリュネは神父に施しを与えられたのだった。災厄の街でヒルコである正体を隠し、過酷な生を生きていた辛い過去の記憶は、思い出したいものではない。
「わたしに分かるのは、この学園の歌は泣いているということです」
リュネは近くのDAK端末に行くと、どこに小型トロンを携えていたのか端子を繋いでキーを叩くとイントロンした。見る間に聖ミシェル学園の見取り図が立体映像として現れ、まどかのいる場所が光点で示される。教会の礼拝堂だった。そして彼女のほかにも3つの光点が光っていた。
頷きあった虎伏世良神父とミア・ウェイは行く手を礼拝堂に定めた。神敵の討伐、師父の仇に、今度こそ決着がつく。
と、足を速めようとした二人の横に突如立体映像のイメージが現れた。現れたのはデフォルメされた黒い竜のアイコン、首には鉄の首輪がついている。
『では君たちと一緒に行かせてもらおう』
二人がもっと音楽に詳しくロックが好きであれば、それが“DragonVoice”の1stアルバム『S◎UL EATER』のジャケットに登場するドラゴンだと分かっただろう。
「きみ‥‥さっきの‥‥あの子? ずいぶん印象違うね‥‥」
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目を丸くしたミアがホログラフを指差して問いかけると、少女とドラゴンの両方が頷いた。印象が違うと言われて怯みながら、少女が控えめに口を開く。 |

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ボス「さあいよいよ急転直下のクライマックス間近だ。ようやく河村円華とコンタクトできたミアの《真実》が炸裂、彼女はついに築島まどかとしての記憶を取り戻す。ちなみに世良神父は、その間ずっと桜の木に寄りかかってJoJo立ちして待っていたぞ(笑)」 |
| +第12章+ CALL TO POWER |
ロカトール司教の笛の魔力で礼拝堂に引き寄せられていたまどかは、司教と対峙していた。脇には制服姿の |
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司教が手を振ると、聖歌隊の少女たちが縛られた女性を連れてきた。猿ぐつわを噛まされ、恐れおののきながら礼拝堂に連れてこられたのは故築島晃一郎の妻、築島みどりだった。記憶の戻ったまどかにとっては他人ではなく母だった。
「さあ。銀の短剣でおやりなさい。あの時と同じように」
浄化派能天使“空色の笛”は“ブラッドベリー”を促した。だが築島まどかは動かなかった。しばらく押し黙っていた彼女は、口を開いた。
「世界を氷の中に浄化する‥‥それがこの世界に与えられるべき幸せだと教わりました。でも、僕は思い出してしまったっ! それよりも大事な過去を!」
中等部の制服を着た赤い髪の妹が、心配そうに姉の袖を引く。
「ねえお姉さまー。やってしまいましょうよー。そうしたらまた、幸せになれるんですよ? お姉さまと一緒に毎日学校に通って、みんなで楽しく暮らせるんですよ?」
姉を見上げる妹に、築島まどかは俯いたまま尋ねた。
「ねえフランシス、もしもロカトールさまがいなくなってしまったら、あなたは悲しい?」
唐突な問いに、
「うん。とても悲しいです」
「それと同じことがこれから起こる。だから、僕はここにいるわけにはいきません」
元
もはや彼女が“カレイドスコープ”の一員でないことを確信したロカトール司教が声に一層の冷たさを込め、残った二人の天使たちに命じる。
「二人とも、おやりなさい。その子はもはや“ブラッドベリー”ではない。我らの敵よ」
「ええっ? “空色の笛”さま、どうして? お姉さまを撃つなんて、あたしにはできないよ?!」
楊・フランシスは戸惑い、大好きな姉とロカトール司教を交互に見やった。その横ではセシル・ルクレールが静かに、十字の形をした剣を構えようとしている。
「その子はもやは異教徒ですわ。浄化なさい。氷の意志に従って」
ロカトール司教が冷然と告げると、だが大きなリボンをつけた少女の神の戦士は掌を返したようにこくりと頷いた。
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「はい! また、楽しめそうですね。お姉さまの血の色って、一体どんな色なんだろう‥‥?」 |
「ではその花、散らしてみようかっ」 |
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天使たちの対峙の続く礼拝堂に、大扉の開く音が響いた。既に日の暮れていた外の夜の光が礼拝堂に差し込み、戸口に立つ二人の来客の姿を映し出す。
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黒い服の男と白い服の女だった。神父服を喪服の如く黒く染め、闇の中に沈んだ虎伏世良の姿の中で、ただ眼鏡だけが光を帯びている。その後ろから入ってきたミア・ウェイの両手には拳銃が握られていた。 |
その後ろで油断なく室内の全員に狙いをつけていたミアは無事なまどかの姿を認めると、束の間問う。 |
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「ならいいんだ」
異能力の発揮時に金龍の色を帯びる瞳が危険な輝きを宿し、ミアは銃を再び礼拝堂の奥に向けた。照星が向くその先にあるのは、恩師を殺めた笛持つ司教の姿だった。
突然、礼拝堂の中に備えてあったスピーカーが独りでに鳴り出した。清らかな聖歌とパイプオルガンの響きが似合う礼拝堂に響き始めたのは強烈なロックだった。世良神父とミアが一瞬身構えるが、あのおとなしそうな少女の操る黒竜の仕業とすぐに分かった。
色鮮やかなステンドグラスの表面に張られた薄型の電気式スクリーンの上に、羽ばたく黒い竜の姿が現れる。
『祈りの時間は終わり、竜の咆哮はすべてを否定する。否定してはいけないモノを否定した貴様らのすべてをな』
ロカトール司教が怯まずに合図すると、参拝席から一斉に立ち上がる者たちがいる。三人のカレイドスコープと一人の能天使の他には無人と思われていた礼拝堂に隠れていたのは、揃いの礼服に身を包んだ聖歌隊の少女たちだった。

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こうさくいん「どどんと! クライマックスにごきげんようでしゅ! ヽ(´▽`)ノ」 |
| +第13章+ CROSS FIRE |
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ロカトール司教が愛用の笛に唇をつけると、魔の音色が礼拝堂に響き渡った。加護を受けた |
まどかは深層意識下に用意されていた奥の手を解放すると、大口径弾の射撃を避けた。サイコアプリケーションを併用し、人の心の奥に作用するその声の力を浴びせる。だが滅びの声は遮られた。両側の参拝席の聖歌隊の歌声が、“ブラッドベリー”の声の魔力を弱めたのだ。
制服のまま近づいてくる二人の“カレイドスコープ”か、奥に控えるロカトール司教か、目標を考えていたミア・ウェイは大きく意表をつく行動に出た。参拝席を踏み台にすると大きく飛び上がり、呪いの歌を歌い続ける聖歌隊の頭上へと浮かんだのである。
元より身も軽く念動力を操るミアの体は、
「行くよっ!」
至近距離から二挺拳銃の片割れが火を噴いた。必中と確信できるまでの確かな射撃。能天使が携えていた護符が砕け散り、致命的な弾丸を弾き飛ばす。
世良神父は戦いの最中にも十字を切り、あえて神に祈った。
「主よ。人を殺める私をお赦しください‥‥」
その右腕から血がほとばしり、聖母殿にも認定された奇跡の力が発動した。一体神父服のどこに隠されていたのか、無骨な大型サブマシンガンが神敵に向けられた。
「これぞ、主が私にくださった断罪の弓!」
かつてミアと共闘の一夜を過ごした時と同じ技だった。続けざまに強力な弾丸が制服姿に十字剣を構えたセシル・ルクレールに襲い掛かる。
だがまたしても聖歌隊の歌う呪いの歌が弾丸の勢いを削いだ。世良神父とさして背も変わらない金髪の美丈夫は、剣を手に即座に距離を詰めた。 |
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ボス「さてイベントで神業を使っているとはいえ、今回は敵が少々強めになっていた。しかもキャスト陣はジツは防御系神業をあまり考えずにこのチームを組んでいたのでその警戒もあり、戦闘は1カットで勝負がつくことになったのだ」 |

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ステンドグラスの中に現れていた黒いドラゴンが動いた。霊的な防御力を高める珍しいプログラムを起動させると、青い髪の内気な少女が決して口にしないような言葉で吼える。 |
異変を感じたセシル・ルクレールが剣を退き、左手で天を指す。かつて世良神父を救世教会と共に沈めた技がまたしても発動した。無数の十字架が天から降ってきたのだ。そのまま天窓のガラスを破り、その轟音で演奏を途切れさせようとする。
だがDragonVoiceのヒット曲はクライマックスへ向けさらに音量を増し、ガラスの音に少しもかき消されなかった。たとえ相手が
「‥‥‥‥!!」
声にならない悲鳴を上げ、司教服姿の能天使はゆっくりと仰向けに倒れていった。黒髪がはらりと広がり、その手からフルートが離れていく。だが空色のフルートは床に転がらず、空中に浮かんだままだった。その名を“ハーメルンの笛”という年経た強力な魔器であった機械仕掛けのフルートは、神秘の力で竜の技を防ぐと、吹き手もいないのに独りでに曲を奏で始めた。こちらもその曲の中に破滅の旋律を混ぜた同様の力である。
『人ならざるモノの業か。だが忘れたか、竜も悪魔も人じゃない。反逆者に神の言葉が届くものかよ!』
再び黒い竜は吼え猛り、笛の魔力を打ち破った。
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ボス「意識体の竜アイコンはアストラルウォールを展開してキャスト陣の精神防壁を張ると<※熱狂>4Lvの精神戦攻撃でハッスルしたのだ。最新のエラッタだと<※乾坤一擲>+<※咆哮>はカード1枚消費でよいことを知ってガクガクした方もおられよう。リュネは<※咆哮>だけだがここでダメージ24点が見事出たのだ」 |
辛くも斬撃を防がれたセシル・ルクレールは振り返り、後方で倒れたロカトール司教の近くに軽やかに着地した女を新たな敵と定めた。“琥珀の刃”は身を翻すと十字剣を構え、
だが全ての仙人の守護者である西王母の秘薬を飲んでいた女探偵はそれを防いだ。念動力で自らの体を浮かし、空を蹴って背の高い高校生の暗殺者に迫ると予想外の方向から再び銃が火を噴く。
「あたしたちの民は、師父の仇は必ず取る!」
だがミアも予想していなかった事態が起こった。素早く十字剣を退いたセシル・ルクレールは辛くも鮮やかに、弾丸を見事に跳ね返したのだ。
「なにっ?!」
弾はミア自らの脚に当たり、バランスを崩した彼女は地に落下するとそのまま倒れた。
コンバットマキシマムの乱射を避けていた築島まどかは、再びその声の力を用いた。数刻前まで妹だった
「あれ、なんでだろ? お姉さまが二人に見える‥‥」
だが混濁した意識の中でも、楊・フランシスは巨大な銃を向けた。二人に見えたお姉さまの両方に銃を向ける。対妖物銃から強力な弾丸が発射された。
「聖母さま‥‥っ!」
束の間、まどかは十字架のブローチに手をやると呟いた。それを見た世良神父が彼女の体を抱え、火線から素早く逃れる。射撃を外したことも理解しないまま、楊・フランシスはそこで倒れてしまった。
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こうさくいん「守護星剣を操る生徒会長のセシルさまは今度は<※元力:器物>にさらに“霊斬符”も使って全力で斬ってくるでしゅよー。さすが令さま相当だけあって剣道の試合でも優勝できる腕なのでしゅ!(☆w☆)」 |

楊・フランシスまでもが倒れたのを見て取ると、セシル・ルクレールは特待生の制服の懐から妙なものを取り出した。先端に刃のついた十字架ではなく、何かを溶かして鋳造して作ったかに見える曰くありげな鉄釘。聖母殿の一部で、危険な妖物退治に使われている“焚書経典”と呼ばれる呪いの品と同じもの。 |
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まどかが動いた。人の心に作用する“ブラッドベリー”の声の魔力が、かつての姉の心を捕らえようとする。 |
短く刈った金髪を揺らし、いつまでも一緒にいるはずだった妹の姿を睨むと、自律攻撃機能を備えた電脳仕掛けの守護星剣を構え直して神速の速さで斬り掛かる。
だが、見事な一撃は聖母殿からの刺客によって防がれた。喪服の如く染まった神父服を靡かせた世良神父が、これまたどこから現れたのか盾をもって十字剣を防いだのだ。
「これぞ主が私に下さった祝福の盾!」
不敵な笑みを浮かべて神敵に吼えると、世良神父は再び大型のサブマシンガンを邪教徒に向けようとした。断罪の弓を認めたセシルがはっとして距離を取り、左手に集められた釘の束を投じようとした時、その背後でよろよろと立ち上がろうとする人影があった。
「このミア・ウェイの弾丸からは、誰も逃れられないよ」
その叔父と同じ言葉、同じ口径の銃。痛む脚を堪えてミアは必死に銃を向けた。セシル・ルクレールは機敏に振り返り、守護星剣で銃弾を弾き飛ばさんと構えに入った。
だが自在に速度と軌道を変える弾丸には間に合わなかった。十字剣の先端が砕け、その破片が自らの体に刺さり、ミシェル学園の生徒会長にして琥珀の刃を振るう浄化派の暗殺者は倒れていった。
近づいてくる外敵を認め、床に転がったままの空色のフルートがまたしても独りでに鳴り出した。聞くものの心の奥を貫き、死へと追いやる滅びの旋律。まだ残っていた聖歌隊の面々も合唱の声を合わせ、黒いドラゴンが奏でるロックのメロディを完全に打ち消す。
旋律が大きくなり、礼拝堂中に響きださんとした。危機を見て取ったミアは精神を集中し、その力を解放した。
「四海竜王様、私に力をお与えください」
その目が
血を流す脚を引きずり、ミアは物言わぬフルートによろよろと近づいていった。古き女侠の物語から名を頂いた二挺の銃から空のマガジンが吐き出され、ミアは替えのマガジンをセットした。叔父の店から拝借してきた徹甲弾、ただ一文字の漢字が刻まれた弾丸がチャンバーに装填される。
「‥‥これで終わりだよ、築島さん」 |
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ボス「そろそろ神業たいむが近づいてきたな。セシルが取り出す“焚書経典”はR時代から存在する『月姫』時空から来たアイテムとして使っている退魔師の方々もいるだろう」 |

礼拝堂は静まり返っていた。呪縛の解けた聖歌隊の少女たちは気絶し、ロカトール司教は祭壇脇で絶命し、縛られた築嶋みどりもあまりの騒ぎに失神していた。特待生の制服を着た楊・フランシスとセシル・ルクレールも倒れている。壁のステンドグラスは粉々に砕け、天窓も全てが砕け、参拝席にも穴が空き、神の家は惨憺たる有様になっていた。黒いドラゴンの姿も何処かに消え、青い髪のリュネが恐る恐る中を覗き込んでいる。
「見よ。聖母の加護を見るがいい」
世良神父は両手を広げ、天窓から見える天に向かって祈った。
またしても奇跡が起こった。天窓から青白い月光が差し込む中、砕け散った硝子の破片の全てが独りでに浮かび上がったのである。それらはゆっくりとあるべき場所へと向かい、世を襲った大災厄と聖人たちの数々の奇跡を再現した絵を元通りに再現してゆく。奇跡が終わった時には天窓もステンドグラスも全てが元通りとなり、神の家への来客がある前までの静謐な礼拝堂の姿がそこにあった。
築島まどかは倒れているセシル・ルクレールの手から、十字剣を取った。偽りの記憶の中、浄化派の使命として恐ろしい罪に手を染めた仲ではあったが、薄い金髪をしたヌーヴ系の美丈夫は自分の大切な
「‥‥神父さん。その奇跡を、もう一度見せてください」
顔を伏せたまま、まどかはろくに狙わずに剣を投げた。邪教徒の得物の守護星剣は聖母殿からの刺客を貫くでもなく、その頭の脇の壁に突き刺さっただけだった。
「何のつもりかね」
頬から一筋の血を流しながら、神父は眼鏡を直した。薄く月光の差し込む室内でもその神父服は影に溶け込み、鏡のような瞳を隠す眼鏡だけがただ光っていた。

セシル・ルクレールはまだかすかに息があった。金髪の美丈夫の傍らにしゃがむと、まどかは自分の
「円華‥‥自分自身を見つけたのなら、私の分まで生きるんだ‥‥」
そう呟くと、氷の意志の代行者だった
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こうさくいん「ううー特に気絶ダメージと宣言してないのでセシル生徒会長は神の御許に召されてしまうのでしゅね‥‥(。´Д⊂)」 |

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