B.T.L.  - Better Than Life
〜 B.T.L. 〜


 さて『らららOFF』の翌日。今回は人数を絞って少数精鋭で集まっていた我々は、かねてより悪童師匠迎撃作戦を実行する手はずになっているのでした。  

Scenario: 『そぼ降る雨の下に』
Ruler: 闇司さん
Player: chihayaさん、ジニアさん、からいさん、悪童同盟さん

Scenario: 『B.T.L.』
Ruler: NATさん
Player: 転々さん、tatuyaさん、(はた)×弐さん、ぼく

And so, they appeared on the story of B.T.L. .....

Handle: “カラミティ”メイチェル・ヒューイット [Profile]
"Calamity" Machel Hewitt

Style: トーキー◎, カゲ, フェイト● Age: 20 Gender:
Style Branch: トーキー:シューター
 思い入れのある古いカメラを肩に掛け、世界を巡っているうら若き女性ジャーナリスト。人の視線を“視る”特殊能力を持っており、視聴者の視線のみならずスナイパーや刺客の目線まで感じてしまい、さまざまな厄介ごとに関わってしまうことから“カラミティ”とも呼ばれている。
 ヌーヴ系の白人で金髪に青い瞳、長身の女性。かつては“ダブルノッカー”のコードネームを持ち、稲垣機関やMIDと繋がりのある少女の暗殺者であったが、その暗い過去から解き放たれた。
 トーキョーN◎VAレッドエリアで人の心を蝕む強力な電脳ドラッグ『B.T.L.』。取材に乗り出したメイチェルは家族の絆を失った少年を取材する。神崎兵梧という少年との出会いこそが、物語の始まりだった‥‥

Player: 転々(てんてん) [グループみぞれ]
▼元ヨコハマのさーくる『EDGE』『らいとぽんたぁ』近辺にはてんつくてんてん、ティンティン、てそてそ、様々な名を持つ人物が一人いる。財団の偵察で記録されているのはひよこ様がみてる【カブトSSSで修行する計画】に出てくるブルース・ウィリス似の無頼探偵ヌルなどエレガント〜な紳士の転々サンですが、エレガントの皮をかぶった高次段階レンズメァンその他諸々のヌルヌルでてそてそな噂の方が多いので安心できません。
 というわけで、久々に転々さんと遊ぶことができました。実はメイチェル姉さんは、上記サイトで公開されているN◎VA-RRシナリオ『ダブルノック』(PL向け/RL向け)にゲストとして登場します。その頃は学生のヒロイン役の少女でしたがオトナの女性に成長したようです。僕も遊んだことがあったような気がしますが、懐かしいですね。ちなみに当時、タイトルロゴを財団から寄贈しています。 ( ´ー`)
 その昔の当時、N◎VAラーにけっこう人気があった深夜アニメに『NOIR』とゆー作品があったのですが。(主題歌がALI PROJECTだったと後になって知りました。) メイチェルお姉さんは外見がミレイユで中身が霧香みたいなんだそーです。財団レポにもなっているR時代のシナリオ『ホーリィ†グレイル』経験者だそうですが、それってゲストの子とモデルのキャラ被りが‥‥(ゲフゲフ)
 それはともかく、いやー、転々萌えが詰まっているなぁ〜 (´▽`)y-~~~


Handle: “ChillingEffect”イヴ・ローテイシア [Profile]
"ChillingEffect"Eve Lotaisia

Style: エグゼク◎●, イヌ, ニューロ Age: 29 Gender:
Style Branch: エグゼク:ジェネラル
 ケルビム教官、キャリア組の冷徹な女性警視。強化アーマーとウォーカーで重武装した屈強な直属の部下“バットカンパニー”(ニューロトループ)を引き連れ、拠点オフィスとした豪華なグローリアスから颯爽と現れる。ハンドルは法律用語で法の厳格適用による萎縮効果を意味し、敵対者には恐怖を与える冷徹なキャリアウーマン。ウェブでは論理迷宮の使い手でもある。
 細身の体は188cmの長身、漆黒の肌に腰まである紫の長髪、サイバーで能力を高めた目を隠すバイザーという特異な外見を持つ。北アフリカ出身でオーストラリア難民として苦労してスラムからのし上がってきた。
 天才ドラッグデザイナーとして幾つもの街を滅ぼし、第一級国際指名手配されていた“夢の贈り手”イーディス・オルグレン。遂に確保され、容疑者はイヴと共に広い北米を走る大陸鉄道の上にいた。そして、停車した次の街で‥‥

Player: tatuya [Presented by tatuya]/[tatuyaのあれこれ]
▼さァ、勇名と悪名が轟いているあのタトゥーヤ☆先生の新キャストです。ツタヤ☆世界は目を覆うような人物も多いのですが、加賀魅士郎や剣崎御筆などごくたまにカッコいい人物がいるので侮れません。
 イヴ警視はカッコいい方の新キャストで、重武装の屈強なニューロを部下を連れた指揮官を作ろうというコンセプトで作られました。[ぷれたつ]で度々取り上げられてきた中の人の法律談義がハンドルに取り入れられています。不幸な境遇で育ったので過去を語って勝ちロールをするのでせう。
 しかし‥‥気付いてしまいました。真ん中で分けた紫の長髪に眼帯という時点で怪しかったのですが、イラストがあまりにそのまんまです。さァ、全国の『Fate/stay night』『Fate/hollow atraxia』ファンの皆さん、声を揃えて‥‥

外 見 が ま ん ま ラ イ ダ ー さ ん

 フェイトフェイト騒いでる人が回りに多いので、最近ぽっくんも本だけ読んで設定を把握していたのです。イリヤんのしおりが付いてきたでよ。

 かようなエグゼク風ライダーさんのイヴ警視ですが。GF誌10th vol.3のN◎VA記事『Neuro Beat!!』に出てくる“イーヴル・アイ”科野顕穂のイラストもエグゼク風ライダーさんですね。どうしてこうゲーマーというのはみんな同じことを考えるんですかね。はっはっは。
 TRPG論考系のblogを見ているとFEARゲー論争関係の話題の中で、ライトノベルやエロゲーやらの安易なパクリが多いのが嫌という意見をよく見かけますね。


Handle: イオス・ファリエーリ [Profile]
Eos Falieri

Style: レッガー, カタナ, カブトワリ◎● Age: 28 Gender:
Style Branch: ??
 元紅蓮、現マーダー・インクに属するヒットマンならぬヒットウーマン。以前はショバ代取立てなど小ずるい任に携わっていたが、力のみを重視するマーダー・インクが幅を利かすようになってからは大いに躍進。元から少ない頭の中身がさらに半減、凶悪度を増して大暴れしている。組織に興味はなくクーゲルにボスの器を見て従っている。
 元はスペイン系移民で174cmの長身、金髪に赤い目をした危険なビッチ。戦いとなればR27リボルバーとS8イーグルの二挺拳銃を撃ちまくる。  他の犯罪結社との緩衝地帯で勢力を増してきた“満足を知らぬもの”ベヘモット。電脳ドラッグを武器にシンジケートを脅かす新興勢力に、イオスは部下のアルバロを探りに行かせるのだが‥‥?

Player: (はた)×弐 [Sword Dancer]
▼ネットに復活、晴れてようやく就職も決まったはたたんです。めでたい!ヽ(´▽`)ノ
 さて一部の知り合いには非常に懐かしいイオス、僕もRR時代後期に何回か相手にRLした覚えがあります。スタイルは変わらず、<※貫きの矢><※ガンフー><■自動反撃>で撃ちまくり、接近戦のスタイルではないですが<※旋風撃><■突き返し>でさらに暴れまわるタイプです。
 分析ではあの頃のイオスには“はたコズム”が含まれていましたが、時の流れは残酷です。(うそ) カブトワリスキーには人気の漫画『BLACK LAGOON』に出てくるレベッカのような人物だと後で聞いて「(アクト中の印象と照らして)イオスってあんな風だったっけ?」と思ったのですが。
 常識が爆破されたDetonation版ではさらにレベッカ分が増え、さらに頭が悪くなってさらにガテン系のさらに殺ってこい取ってこい姉ちゃんに変貌しています。13歳の少年には荷が重いコネ相手です。さようなら昔のイオスたん! (;´Д`)ノ


Handle: “スカイ・シーカーズ”マクシミリアン・ダグラス [Profile]
"Sky Seekers" Maximilian Douglas

Style: ニューロ=ニューロ◎●, ハイランダー Age: 13 Gender:
Style Branch: ニューロ:ウィザード
 愛称マックス。新帝大付属中学校に通う2年生、緑の瞳に癖っ毛の紅茶色の髪をバンダナで縛った白人の少年。キャンベラAXYZ生まれで、母エイミーと離婚した父はSSS刑事部のマーチン・ダグラス刑事。
 カスタムのサイバーデッキを操って電脳空間の軌道リージョンにダイブしていたある時、機能を停止した軌道衛星を制御する竜の女神ティアマトーと出会い、衛星機能を修復。お礼に遣わされた自律型AIの青竜スカイアと共に、電子の空の向こうを探して旅を続けている。学校ではおとなしめだが、ウェブのことになると大胆になる純粋な少年。
 電脳世界の伝説の一人、挑んだすべてのニューロがフラットラインした究極の攻性防壁使い“Blakk I.C.”(ブラックアイス)。マックスのストリートの友人、“アイスウォーカー”が氷に挑むことを告げた。そして、バディは二度と帰ってくることはなかった‥‥

Max, The Sky Seekers

▼この日の集まりではニューロ候補が何人もいたそうですが、卓分けの結果ニューロキッズ(?)代表のマックスぽんの出番となりました。

 ちなみにこの日。僕が朝起きたらあまりに絶不調。アクトに迷惑が掛かるのでなっとろんどのに謝って辞退して帰ろうかとまで思っていたのですが、ベトナムのフォーを食べてグレープジュースを飲んで午後になって心身が動き出してアクトが始まったらなんとか回復しました。やれやれやれ、危なかった。 (´w`;)
 普段の疲労とらららOFFでのRLの疲れが出たのでしょうか。僕は酒に弱い方ではないので、今振り返ると二次会のあの食事がやっぱりまずかったかなぁと思い出すところであります。むむむのむ。 

 さてそれはさておき、登場人物を俯瞰すると周りがみんなお姉さん(一部むしろお母さん?)です。設定を調べるとメイチェルが身長180cm、イヴ警視が188cm、イオスが174cmとしかもみんな長身です。伸び悩んでいる中学生はどうすればいいのでしょうか。くそ!余裕!(ノ∀`)


Ruler: NAT(NATRON) [マイナス魔王の日記] 『B.T.L.』プレアクトテキスト
▼ルールブックでなく『グランドX』を教科書と崇めるマイナス教の教祖(うそ)、不定形サークル一心不乱のマイナス魔王のなっとろんさんです。下水王の中の人としても知られています。
 よく会う割に同卓が意外に少ない人というのはけっこういるのですが、なっとろんどのもその一人。本日はマイナス風味溢れるシナリオ‥‥ではなく、電脳麻薬を題材にしたストリート風味の溢れるシナリオとなりました。
 ちなみに各キャストのキーカードはタロットから抜き出してPLの手元に置き、PLの判断で好きなシーンで出して使えるというマイナスなハウスルールを使っています。
 かくして、どう転んでもただでは済みそうにないメンバァの元でアクト開始となりました。
 

For D-generation: What is B.T.L. ..."Better-Than-Life"?

 ブロッコリー社がやっているアニキャラ系コンサート(Broccoli The Live)や音楽でのステレオのアンプの接続方法(Bridged Transless)や会社の名前、洋楽の曲の名前など、BTLには様々な意味がありますが。
 本シナリオに登場するキーワード『B.T.L.』のイメージソースは、N◎VAの兄貴分に当たるサイバーパンクRPGの名作『シャドウラン』に出てくる電脳麻薬の名(中毒性と危険性の高い、あまりに高レベルでリアルな擬似感覚(シムセンス))です。富士見書房から出版された日本語版ルールブックでは見当たりませんでしたが、どこかにフレーバー的に名前が出てくるかもしれません。アメリカでFanProから再販された SHADOWRUN 4th Edition は舞台が2070年になりましたが、BTLはマトリックスの俗語として健在です。
 ちなみに本シナリオでのB.T.L.は「“命”より大切なもの」という意味でキーワードに使われていますが、『シャドウラン』でのBTLは“命”ではなく「現実世界の“人生”や“生活”よりも素晴らしいモノ≒電脳麻薬のもたらす仮想現実の快楽」というニュアンスになっています。



注:このシナリオをこれから遊ぶ可能性のある方は見た後で「ライダー! ライダー!」と
頭の中で5回繰り返してから適当に忘れてください。
あっと間違えた。唱えるのは「マイナス! マイナス!」です。
ちなみにお酒を飲んだりオトナなシーンがありますが、重力井戸の底のマンデインでは
飲酒は二十歳になってからです。ドラッグは何歳になってもダメだぜバディ!



B.T.L. - Better Than Life

〜 B.T.L. 〜


痛みを打ち消す細やかな麻酔
悲しみを得ない唯一の楽園

そんなものだけを、貴方は求めるの?
街角に隠された小さな宝石は、貴方に向かって輝きを投げているのに。

それを誇りだと彼は言った
「何も無い人生なら、せめて価値あるものを作りたい。
絶対に溶けない氷のような」

それを欲だと男はいった
「欲しいものは無限にある。だからどこまでも求め続ける。
飽く事を知らない悪魔のように」

それを夢だと彼女は言った
「この地を見下ろす高みに上り詰めたい。
失ったすべての時を取り戻すように。」

それを愛だとあの子はいった
「一人では耐えられない痛みも。分かち合えば安らぐ。
安っぽいドラマのように」

こんな悲しいストリートでさえも、何かを手に入れて生きていける世界で
貴方にとって人生より大切なものはありますか?

トーキョーN◎VA the Detonation
『B.T.L.』

What is "better than life" for you?
 

Opening Phase

 無限に広がる銀の虚空、縦横に走る緑の格子とめくるめく光の奔流。さまざまなネクサスと構造物が立ち並ぶ電脳空間。理論上のアドレスを常に変え、光の空を悠々と飛ぶ浮島があった。
 ウェブコンプレックス“スカイアの空の宮殿”はファンタジーものの仮想現実ゲームのような背景情報をもっていたが、今日の来客は一風変わっていた。洞窟で昼寝をしていた青銀の竜スカイアも首を傾げると、南極からの来客を見つめる。来客は直立した体、飛べない小さな羽根、くちばし‥‥黒いペンギンのアヴァターで現れたのである。

 友人の来訪に、マクシミリアン・ダグラスも現実と同様の姿のアヴァターで現れた。茶色の巻き毛に明るい緑の瞳、遅生まれの13歳の中学生の少年の姿である。
 “アイスウォーカー”はマックスのストリートの友人だった。その“氷を歩むもの”が、何やら震えながら仲間に話すことがあるらしい。

マックス「ねえアイスウォーカー、このウェブコンプレックスの温度設定は調整してるけど、そんなに暑いかな?」
アイスウォーカー「おぉいマックス、これが武者震いに見えないのかよ!」

 “アイスウォーカー”は語った。ニューロ達の間には様々な伝説がある。伝説級のカウボーイの“十二聖人”、電子生命AIに関する様々伝説、広大な電脳空間のあちこちにまつわる伝説‥‥
 “Blakk I.C.”もその伝説のひとつだった。挑んだニューロの全員を完全に“フラットライン”させてきた、真にウィザード級の攻性防壁使い。防壁の視覚イメージは決して砕けぬ漆黒の。古典的なアヴァターを取ったこの(アイス)に多くのニューロが挑み、そして敵わずに取りこまれ、重力井戸の現実世界では脳を焼き切られてフラッシュアウトしていた。
 その“Blakk I.C.”に、遂にアイスウォーカーが挑戦するのだという。
 話を聞いたマックスは、ペンギンの友人に微笑んだ。

マックス「そうか。君は“アイスウォーカー”だから、黒い氷(ブラックICE)の上も歩けるのかな。成功を祈ってるよ」

 マインデインではあまり会うことはなかったが、“アイスウォーカー”とマックスの実像はあまり年も違わない少年だった。二人は再会を約束した。

アイスウォーカー「いいか、約束だ、一週間後だぞ! オレが帰って来たら、大人の飲み物で乾杯だ! (*^ー゚)b 」
マックス「ええっ、お酒飲むの? ぼくは‥‥ミルクセーキでいいよ‥‥」

 マックス少年はウェブ世界の友人の女の子に背が伸びると教わった飲み物の方を希望した。思春期の伸び悩む少年にとっては、背伸びして大人になるより、肝心の背が伸びるほうが先だったのだ。
 それはさておき、ペンギンのアヴァターは史上空前のネットランを前に興奮しながら、空の宮殿を後にした。


 そして、1週間後。そしてその後も。“アイスウォーカー”は帰ってくることなく、ウェブのどこでも姿を現すこともなかったのだ‥‥

 ちなみに後の調査で分かったのだが、シナリオゲスト役のこのペンギンの少年はマイナス魔王の自分のキャストなのである。

B.T.L.

 災厄の街で着実に勢力を増し続けるカーライル・シンジケート。その中で最も危険な集団である殺人企業マーダー・インクが根城にしている店のひとつ。
 椅子のひとつではスペイン系の女がいらいらと相手を待っていた。女にしては長身、短めの金髪に凶暴さを漂わす赤い瞳。まっとうな世界の住人ではないと一目で分かるくだけた服装の上に防弾アーマージャケットをラフに羽織り、拳銃を吊っているであろうホルスターの線が見える。妙齢の女ではあったが危険さは滲み出ていても、女性のしとやかさは微塵もない。
 古き良き紅蓮からマーダー・インクに鞍替えした危険なヒットマンならぬヒットウーマン、イオス・ファリエーリだった。

 彼女がしびれを切らしているとドアがばたんと開き、派手めの上着を着た男が慌てて入ってきた。着崩したスーツに帽子の伊達男は、イオスの部下のアルバロ・バキーニである。

アルバロ「すまねえ! メシ食ってて遅れた! ・゚・(ノД`)・゚ ・。」
イオス「あんだってぇ〜? アンタ、メシに1時間も遅れるのかァ〜?」
アルバロ「Σ(゚д゚;) ヒィィィ」

 軽い雰囲気の中に鋭い眼光のアルバロも、今にも銃をぶっ放しそうな女ボスの前では震え上がるばかりだった。アルバロはカーライルのシマの現状を話した。最近、彼らの管轄内で見知らぬドラッグが流行りだしているという。その名は『B.T.L.』。シンジケートの息の掛かったドラッグ技術者や秘密工場では、誰も知らない名である。

イオス「ここはアタシらが仕切ってるのに、ふてぇヤツだ。キースも一週間後に集金に来る。それまでに片付けちまいたいね」
アルバロ「なぁボス。俺が詳しく調べてきやす。それで、調査費用がほしいんですが‥‥」

 その言葉を聞くと、イオスはいつも振るっているアンバランスな二挺拳銃の片方を抜き、意地悪い凶暴な笑みを浮かべて突きつけた。

イオス「あァ〜ん? レッガーの仕事に調査費用がいるってのかぁ? アタシが得意なのはシルバー、ゴールドの類じゃない。鉛弾が得意でねェ‥‥」
アルバロ「Σ(゚д゚;) ヒィィィ」

 だが結局、潜入して詳しい調査をしてくるという部下に、イオスは金を放った。

アルバロ「ありがてえ! 実はちょいと野暮用にカネがいりようで‥‥。
へへ、ボス、実は俺、女ができたんです。プロポーズが近いんで‥‥ b( ゜ー^)」


一同の中の人「どうしてみんな死にフラグを立てるんだ! ・゚・(ノД`)・゚ ・。」


 そして、やはり一週間後。シンジケートの取り仕切るストリートに謎のドラッグ“B.T.L.”はますます蔓延し、アルバロ・バキーニからは連絡が途絶えたままだったのである‥‥

B.T.L.

 ストリートの場末にあるバー。酒はみな安物の合成酒だったが、辛うじて店内はバーの雰囲気を保ち、男と女が語り合うにはまずまずの場となっていた。

 確実に未成年の少年の横に座っていたのはうら若き女性だった。バーに似合う服に、横のバッグの中には愛用のカメラ。ウェーブの掛かった肩までの長い金髪に青い瞳、漂わしている雰囲気は同じ白人でも北米人ではなく欧州系のものだ。危険なドラッグ『B.T.L.』を調査しにきた女性レポーター、“カラミティ”ことメイチェル・ヒューイットである。
 家族をドラッグで失い、メイチェルのインタビューに応じることになった神崎兵梧は年上の女性の前で、いいムードとは裏腹にずいぶんなペースでグラスを空け続けていた。

メイチェル「あんまり急ぐと体に悪いわよ。特に、ベースの違うお酒はね。――マスター、わたしも同じものを」

 だが、出されたのは安い合成酒からなるカクテルだった。

神崎兵梧「オレはもう一人前だっ! これぐらい何ともない」
メイチェル「そんなに慌てると、男前が台無しよ」
神崎兵梧「う、うるせえ」

 メイチェルが微笑むと、少年は怒っているのか照れているのかそっぽを向いた。

メイチェル「そろそろ話したら?」
神崎兵梧「‥‥‥‥」

 そして、一時間後。安いアルコールがかなり回った少年は打って変わって饒舌になると、すっかりメイチェルに絡んでいた。

神崎兵梧「――親父はドラッグ中毒になっちまったんだ。母さんは親父が原因で死んだ。
親父に償わせるったって、今はどっかの病院で‥‥(ーー;)」
メイチェル「家族思いなのね」
神崎兵梧「オレは‥‥親父を探して殴ってやりたいくらいなんだっ!」

 少年とまだ二十歳の女の会話はいつしか、“大切なもの”の話に流れていた。

神崎兵梧「オレが命より大切なのは――家族とか、そういう繋がりだ。あんたにはあるのか?」
メイチェル「そうね。わたしは――」

 メイチェル・ヒューイットが答えようとした時。兵梧少年はもうカウンターに突っ伏し、盛大に寝息を立てながら眠っていた。

 メイチェルは苦笑すると名刺入れを取り出し、仕事でいつも使っている名刺を一枚出した。少年の前の空のグラスの下のコースターにそっと挟むと、静かに席を立つ。
 バッグを取り、髪を後ろに流したメイチェル・ヒューイットはそっとバーを後にした。去り際に振り返り、少女の頃の暗い運命を乗り越えた女は呟いた。

メイチェル「あるわよ。――家族を思い出せることは大事よ」

B.T.L.

 北米連合は災厄後にその位置を大きく変えたが、広い大陸のあちこちにメガプレックスが点在し、都市間の移動に時間が掛かるのは合衆国と同じだ。
 広大な大地を次なる町へ向けて疾走する鉄道。列車の一室では、二人の女が対峙していた。片やケルビム教官の女性警視、片や厳重に拘束された犯罪者である。
 犯罪者たちに“ChillingEffect”の悪名を怖れられるイヴ・ローテイシア警視の風貌は印象的なものだった。年齢は30前後、アフリカ系の黒い肌。もしも日系人ならば男でもかなりの長身の部類に入る身をスーツに包んでいる。
 最も印象に残るのはその顔だった。腰まで届く流れるような髪は紫色、そして、額で真ん中から分けた下の目は‥‥まるで凶眼か何かを隠すように、眼帯めいたバイザーで完全に覆い隠されている。
 精神を落ち着かせる“クラリック”の成分を含んだキャンディを舐めながら護送中の犯罪者を冷ややかに見下ろすイヴ警視の前には、厳重に拘束されたドラッグデザイナーがいた。
 “夢の贈り手”ことイーディス・オルグレン。年齢はイヴ警視と同年代、微妙な違和感から分かる整形された金髪碧眼の美人。幾つもの街を破滅させた天才級ドラッグデザイナーは次に電脳ドラッグに手を出し、第一級危険人物として各種警察機構に国際指名手配されていた。

イーディス「‥‥いい気なものね」
イヴ「何がご不満かしら、イーディス・オルグレン?」

 イヴはことさらに嫌味を込めて相手をフルネームで呼ぶと、バイザーで隠された目で犯罪者を見つめた。

イヴ「これから行く東海岸は弁護士も沢山いるわ。――金があればね」

 二人の女はしばし言葉を交わし、そしてイーディスは、自らの不幸な境遇を語った。

イーディス「イヌはいい気なものね‥‥。
このドラッグを私はベター・ザン・ライフと呼んでいる。やつらには命よりこのチップの方が大切なのさ。
 私は元は資産家の子女だった。破産してストリートに流れ着いて、あっという間に自分のすべてを失ったわ。親が強盗に殺され、自分も犯され、ストリートの泥の中を這いずり回った時に分かったの。元の暮らしが欲しいなら、人を踏みつけて上に登りつめなければならいことに。
 金持ちに拾われて、ペットとして生きて‥‥。そこで自分のドラッグデザインの才能に気付いたわ。薬学を学んで、自分の生きる場所を確保して、主人を薬漬けにしてやった。町ひとつを麻薬で沈めて、莫大な利益を上げたわ。私は、人にを見せているのよ」
イヴ「ずいぶん饒舌ね。三文小説じゃないのよ」

 相手の言葉を冷酷に遮り、“ChillingEffect”は腕を組んだ。

イヴ「ここで何を言っても、裁判には有利にも不利にもならないわ。弁護士次第ね」
イーディス「――私は夢を捨てないわ。こんな場所はもう嫌。元いた場所に、いやもっと良い場所に登ってみせる」

 東海岸へ向けて列車はひた走り、やがて次の街に着くと停車した。
 客用車両から地面へ降りるタラップの先には、弁護士が待っていた。ここでゲストのイーディス・オルグレンの《買収》。差し出された書類にはイーディスの解放の命令が確かに書かれていた。
 イヴ・ローテイシアは内心驚愕し、書類をひったくるように受け取ると素早く目を通した。最後に確かに記されたケルビム上層部の人物の署名。命令は即時の解放だった。

イヴ「分かったわ。この場において拘束を解きます。あなたはケルビムを訴える権利があり、またその際の弁護士との契約については‥‥」

 内心の怒りを込めて書類をびりっとふたつに破ると、イヴ警視は正式な法律用語を並べて正式な解放を告げた。
 犯罪を犯したのは同姓同名の別人、誤認逮捕だったことになった天才ドラッグデザイナーは、イヴの言葉を途中で遮ると、嬉しそうに告げた。

イーディス「せっかくの自由だわ。私にはがある。それを叶えるために、自由を楽しませてもらうわ。
 命よりも大切なもの(ベター・ザン・ライフ)は夢よ。私はこの『B.T.L.』を対価に命を買って、それで軌道に登ってみせる」

B.T.L.

 イオス・ファリエーリはストリートの緩衝地帯にいた。カーライル・シンジケートの息も掛からず、三合会や日系ヤクザたちもまだ手を出していない空白地帯。逆に言えば、それだけ何が起こってもおかしくない地帯だ。
 そこで最近、勢力を増している一団がいた。“満足を知らぬもの”、“ベヘモット”。野心と貪欲さを備えたこの男に率いられたファミリーは、日増しに勢力を増していたのだ。
 その“ベヘモット”が今イオスの目の前にいた。それどころか、大勢の部下がイオスを取り囲んでいる。  黒い髪のベヘモットは年は30代半ばだろうか。細身の体を包むスーツは上品な仕立てだったが、飢えた肉食獣のようなギラギラした目と威圧的な雰囲気がそれを台無しにしていた。

ベヘモット「シンジケートの拳銃屋‥‥イオスとかいったな。なあ、ウチに来ないか? クソ爺どもに使われるよりは、高い金を払ってやるぞ。お前の力は正直――“欲しい” (`ー´)」
イオス「へぇ、アンタはアタシに何をくれるんだい? アタシは、組織の歯車じゃないんだ」

 早くも赤い瞳に危険な色を浮かべながら、カーライルのヒットウーマンは動じることなく答えた。

ベヘモット「俺は手に持っているものだけでは満足できない。それは当たり前のものだからだ。
 奪い、かすめ、手に入れて稼いだものだけがオレを満ちたりさせる。もっと金を、もっと美しい女を、もっと地位を、もっと――。
 欲望は果てしない。止まる時は死ぬときだ。だから食える限り食らってやる。大切なモノ‥‥俺にとって命より大切なモノ(ベター・ザン・ライフ)は、この果てしない欲望を埋めることさッ ヽ(`ー´)ノ」
イオス「大した大食漢だね。悪ィけど、アタシが下につくって決めたのは一人だけさッ。
ファック(ピー)! (ピーー)! (ピーー)!」

 “えれがんと”ならぬ“えれがつと”なプレイレポートでないと文字にできなさそうな罵詈雑言を並べ立てると、イオスは危険な笑みを満面に浮かべて二挺拳銃を引き抜いた。R27リボルバーと大口径のS8イーグル、アンバランスで不釣合いなこの二挺は、イオスの行くところにいつも災いを撒き散らしてきたのだ。
 ベヘモットの部下たちも一斉に銃を抜き、場面は硝煙の香りと飛び交う鉛弾で埋め尽くされる‥‥

B.T.L.

 その寂れたバーには看板がなかった。レッドエリアには落ちぶれたバーは多かったが、この店は格別だった。落ちた看板の上に、『犬とニューロお断り』という但し書きが、寂しく書いてある。
 入ってきた客はパーカーのフードを目深に被り、人相を隠していた。
だが顔は誤魔化せても、背の低さは誤魔化せない。竜のドロイドを懐に隠してやってきたマックス少年である。
 マックスの横では、1人のブラックスーツの男が酒ではなくソフトドリンクを静かに飲んでいた。机には "Pride is better than life."の文句が彫られ、男はどこにも微塵に隙を見せていない。サングラスの奥の表情はまったく動かず、その声も感情のない平坦なものだった。
 この男こそが、電脳空間(サイバースペース)で無敵を誇るあの“Blakk I.C.”の重力井戸(グラヴィティ・ウェル)の底での実像だという噂が立っていたのだ。

男「‥‥私には過分な人々がいた。家族、恋人。対人恐怖症で能力も人より劣っていた私は、劣等感の塊だった。
 彼らにとって恥ずかしくない誇りある人間になりたい。そう考え、私は唯一の特技であった電脳防御の技を必死で磨いた。きっかけはそんなものだ。
 だが、プライドへの執着は何よりも大きくなった。どうしてもスペックが必要なランを仕掛ける時は親を売り渡して最高のタップを手に入れた。多大な時間の掛かる電脳ダイブの技を磨いた時は、最愛のはずだった恋人とも別れた。
 そして最後は感情を殺す手術も受けた。防壁使いに必要なのは(アイス)のような冷静さだからだ。
 ――そして、私は最高のニューロになった。生きる目的も感情もないが、最後の衝動が私を動かしている。私は最高の防壁使いだ。私が命よりも大切なもの(ベター・ザン・ライフ)、それは誇りだ。Pride is better than life.

マックス「“アイスウォーカー”を倒したのはあなたなのですか」
男「‥‥そのような名もあった。I.C.。全てを阻み、全てを飲み込む黒い氷
攻性防壁使いにとって、最高の称号だよ」

 答えられない少年に代わり、その懐から顔を出した玩具の竜のドロイドが言葉を発する。

竜のスカイア「では、そのプライドからなる防壁が破られないことを祈りましょう」

 そして、一滴のアルコールも口にしないまま、男は席を立ち、重い重力に縛られた現実(マンデイン)の中を去っていった。

B.T.L.

Research Phase

 危険なレッドエリアのストリート。1人の若い女が長い金髪の風体を目立たないように隠し、馴染みの情報屋の元を訪れていた。メイチェルである。

情報屋「よう、姉貴」
メイチェル「噂の『B.T.L.』、手元にあったらひとつ頂戴」
情報屋「あいよー。ブツはチップ入りだ。デコードはできないぜ (´ー`)y-~~~」
メイチェル「買った人は、その後どうなったの」
情報屋「いろいろだな。野たれ死にした奴もいるし、病院に担ぎ込まれた奴もいる。こいつはハンパじゃなくかなりヤバイぜ」
メイチェル「変ね。ただのダウナー系じゃないの?」

 包みに入ったチップを受け取り、メイチェル・ヒューイットは不審な顔をした。“B.T.L.に手を出した人間は1ヶ月ほどで消えてしまう”――そんな噂も、ストリートでは流れている。神崎兵梧少年の父も、隣のビルでバイニンからこのドラッグを買ったらしい‥‥。


 “夢の贈り手”ことイーディス・オルグレンはドラッグデザインで大儲けしていたが、危ない橋を渡った仕事で破産して金を失い、そこをイヴ警視に発見されて拘束されていた。北米から遠く離れたトーキョーN◎VAのストリートでも、イーディス作のブランドに似たドラッグが流行っている。だが災厄の街で流行っている方には、『B.T.L.』と電子刻印がなされていた。
 そして、前科に塗れたイーディスの経歴は全て公式には誤りだった。罪を犯したのは全て、公式には同姓同名の別人だった‥‥
 『B.T.L.』はレッドエリアとイエローエリアで主に流通している。イオス・ファリエーリも部下を探す傍らブツを手に入れた。
 そして、“Blakk I.C.”が伝説級ウィザードだというのは本当だった。プロファイルには一度の失敗も記されていない。どんなに腕利き(ホットドガー)のネットランナーも、その黒い氷の前に敗れている。
 マンデインでの“Blakk I.C.”は月に一度、重力井戸の底に捨てた恋人のバーに通っていた。そして最近、ストリートで勢力を増しているレッガー、“ベヘモット”とその一味に雇われているという‥‥

B.T.L.

 シンジケートの構成員の溜まり場になっているバー。まだ昼間から、大した仕事もしていない男たちと1人のが、強い酒をあおってどんちゃん騒ぎを繰り広げていた。店内は空の酒瓶とこぼれた酒、空いたグラスに倒れた椅子と倒れた男たちで一杯だった。

イオス「いえーい、今度はショットガン対決だ〜! ヽ(@▽@)ノ」

 強いテキーラが回って既に相当酔っているイオス・ファリエーリは、酩酊した人間が手を触れては極めて危険なショットガンを振り回してご機嫌だった。だが、彼女が対決しようとした相手はもう酒量に耐え切れず、床と口付けして気を失っていた。

イオス「おおィお前、まだ10杯じゃないか〜 ヽ(@ー@)ノ」

 マーダー・インクの面々がご機嫌なパーティを繰り広げていると、店の前に磨き上げられた高級なリムジンが止まった。指揮官向けに高度な改造を施されたグローリアスである。
 ドアが開くと紫色の髪を靡かせ、黒い肌の女エグゼクが現れたが、パーティ中の面々は銃を向けることも、女の顔に口笛を吹くこともできないぐらいに泥酔していた。

 イヴ・ローテイシアは腰まである長髪を流し、酒場に一歩踏み込むと惨状を冷たく見回した。
側の机に乗っていたテキーラの瓶を取ると、そのまま一口呷る。

イオス「いよう、ゴキゲンだな、イヴぅ〜 ヽ(@▽@)ノ」

 犯罪結社内の情報提供の見返りに手を出さないことにしているシンジケートの女は、今日はイヴの役に立ちそうにはなかった。

イオス「おかしいな、お前の姿が揺れてるぞ。まるで、船の上みたいだぁ〜 ヽ(@◇@)ノ」
イヴ「‥‥‥‥マスター、彼女にグレープジュースを」

 呆れたようにため息をつき、イヴ警視はカウンターの向こうに言うと、バイザーに隠された目でイオス・ファリエーリを見た。

イオス「何の用だい。今は、虫の居所が悪いんだ〜 ヽ(`▽´)ノ」
イヴ「――『B.T.L.』」

 一言告げ、そしてしばらく考えていた“ChillingEffect”は、懐から1プラチナム分のクレッドクリスを出した。

シンジケートの面々「ウホッ! (;゚∀゚)=3」
シンジケートの面々「イイ女! (;゚∀゚)=3」

 酔っていたマーダー・がつも大金を前に覚醒する。イヴ警視はイーディス・オルグレンの名を出し、情報提供を呼びかけた。
 組織の相互協定があり、犯罪結社には非干渉地域がある。“ベヘモット”はそこで活動しており、昼から酒を飲んでいるシンジケートを尻目に最近勢力をどんどん増しているのだ。それ以上の調査はゲスト側からの《不可触》で隠されてしまった。
 イヴ・ローテイシアは紫の長髪を翻し、宴会の続く店を後にしていった‥‥


 一方、マックスが連れている物知り竜のスカイアは何でも分かる<※隠れバディ>で<社会:シンジケート>を代用した。
 “満足を知らぬもの”ベヘモットは血筋や強力なバックがあるわけではなく、自分の力ずくでのし上がってきたレッガーだった。自分の力だけでここまで登りつめ、非干渉地域で好き勝手に暴れているらしい。雇ったニューロは“Blakk I.C.”、そして天才ドラッグデザイナーのイーディス・オルグレンという女も雇っている‥‥

B.T.L.

 イエローエリア、誰でも使える公共のトロン端末が用意されたネット喫茶。
 ガラス窓の先に通りがよく見える席に座った少年は、備え付けのタップではなく自分でカスタム化した愛用のサイバーデッキを開いて操作を続けていた。自分の尻尾を咥えたの絵がプリントされたデッキの名は“ウロボロスMDS”、少年はマックスである。机の横には、青銀のAI竜スカイアもちょこんと座っていた。

マックス「あ、メイチェルさん! ヾ(´▽`)」

 通りを歩いていた金髪のお姉さんの姿を認め、マックスは手を振った。待ち合わせ相手に気付いたメイチェル・ヒューイットも、店の中に入ってくる。

 マックスの隣の席に座ってバッグを置き、注文を終えたメイチェルは早速問題の電脳ドラッグの話を始めた。

メイチェル「それで、このチップ、『B.T.L.』‥‥Better Than Life というのよ」
マックス「へえ、Better-Than-Life ですか。仮想現実(ヴァーチャル・リアリティ)が実験されてた昔の電脳空間で、初期型の擬似感覚(シムセンス)でも、そういう電脳麻薬があったって聞きました。同じ名前なんですね」
メイチェル「あら、よく知ってるのね ( ´ー`)」
マックス「ええ、歴史も勉強してますから! (´▽`*)」

 単純なマックス少年は年上の綺麗なお姉さんに誉められて嬉しくなり、笑顔を見せた。

メイチェル「それで、現物があるのだけど。これ、調べてくれないかしら」
マックス「ええ。インターフェースが違うけど、ぼくのデッキなら大丈夫です」

 少年ニューロはデッキのウロボロスの脇を開くと、内蔵のコネクタにコードや端子を繋いで何やらいじり始めた。『B.T.L.』のチップを繋げると、解析を始める。携帯型デッキの上に現れたホログラフィ・スクリーンに、高レベル解像度の電脳ドラッグの構造が浮かび、情報が流れていく。

 光の奔流の世界にフリップ。『B.T.L.』は使用者のIANUSを通して神経、脳内に直接作用し、電脳世界の夢の空間に使用者を誘うドラッグだった。現実とまったく同じレベルの世界を0と1の世界に再構築し、使用者はあまりに魅力的な夢の世界の中に取り込まれてしまう。依存性と中毒性も高い。使用者の体はストレスのない世界で緊張を和らげるが、やがてマンデインでのコミュニケーション能力を失い、精神に異常をきたしてしまう。
 ホログラフィの中を羽ばたく青銀の竜のアヴァターがB.T.L.の制御部分のコアに近付こうとした時。漆黒の氷が、デコードを完全に阻んでいた。
 黒い氷(ブラック・アイス)。伝説を知るすべてのニューロにとって、特別な意味を持つ(ICE)である。

 重力の底の世界にフロップ。手術を施された網膜に投射される電子情報とマンデインの情報を同時に視ていた少年に、メイチェルは首をかしげて尋ねてきた。

メイチェル「ねえマックス、何かあったらわたしを守れる?」
マックス「もちろんです! ぼくにできることがあったら、何でも――えっ?」

 メイチェル・ヒューイットはその答えを聞くと、首の後ろの長い髪をはね上げた。そのまま、自分のIANUSの端子に、『B.T.L.』のチップをいきなり叩き込む。
 緑色の瞳を丸くしてびっくりするマックスの前で、メイチェルは気を失い、机に突っ伏した。

B.T.L.

 薄汚いストリートの路地裏。壁からむき出しになった何かの配線はもう錆付き、下の汚い水溜りに水滴をぽたぽたと落としている。
 そんなごみ溜めのような場所で、派手めのスーツを着たシンジケートの男が倒れていた。そばでは帽子が泥水に汚れている。しゃきっとしていればファミリーの男として風格もあっただろうが、脳を強力な電脳麻薬に犯された今では見る影もない。
 意識が朦朧としている男の前に近付いてきたのは、罪深い男を救ってくれる優しい天使‥‥ではなく、凶暴危険な女ボスだった。

アルバロ「ああ‥‥誰かと思ったらボスか‥‥調査、終わりましたよ‥‥ (*´Д`)」
イオス「だったらアタシにさっさと報告しろ! ヽ(`ー´)ノ」
アルバロ「‥‥ああ‥‥あそこのあんたはもっと優しかった‥‥ (*´▽`).。oO」

 B.T.L.中毒に犯されたアルバロ・バキーニの頭の中では、何やら妄想が繰り広げられていたようである。

イオス「あぁん、何を夢みてんだ。おい、しっかりしろっ!」

 イオスが抜いた拳銃をアルバロの口に突っ込むまでもなかった。脳内爆弾相当のアウトフィッツが爆発し、アルバロは夢うつつのまま事切れてしまった。

イオス「こんなことなら、手加減の仕方を覚えておけばよかったな‥‥」

 背後の壁からは、ぽたぽたと水が滴るばかりだった。

B.T.L.

 そこへ、自分のキーカードのエグゼクを出してシーンプレイヤーとなりつつ登場してきたのは、紫色の長髪を靡かせた長身の女エグゼク‥‥イヴ・ローテイシア警視である。
 グローリアスを降りてかつかつと歩いてきた警視はイオスに構わず、死んだ男を検分した。

イヴ「確かに、脳がやられているな」
イオス「なんなんだよ、おい! ヽ(`Д´)ノ」
イヴ「イオスか‥‥あなたの恋人なの?」
イオス「はん! 誰が! 使えない部下のひとりさ ヽ(`ー´)ノ」
イヴ「ドラッグとは違う‥‥むしろドミネートに近いな」

 イヴ・ローテイシア警視はバイザーに隠された目で、死んだ男の首筋の後ろを調べた。IANUSが焼き切れている。

イヴ「なるほど、ではこの男はを捨てて、を買ったわけだ」

 マーダー・インクのヒットウーマンは赤い瞳に危険な色を滲ませ、お高く止まったケルビム教官を見返した。

イオス「ハッ、そんなクズなんて。だけどアタシたちは、あんたみたいなおグリーンの連中とは違うね。
 クズにはクズのやり方があるのさ。余計な手出しは無用だ、アタシたちのやり方でやらせてもらうよ」


 一方、メイチェルはそんなイヴ警視に連絡を取った。国際指名手配中のあるテロリストを追跡中、メイチェルは情報を提供したことがあったのである‥‥

B.T.L.

 全ての重力と物理法則から解放され、0と1から再構成された電子世界。使用者の心の深奥にある望みを汲み取り、完全に再現した夢の世界。その中で、メイチェル・ヒューイットは高校の屋上から美しい景色を眺めていた。
 メイチェルの姿は、今や世界を巡る身となった20歳のうら若き女性レポーターではなかった。清楚なセーラー服に身を包んだ女子高校生の姿。“ダブルノッカー”の名を持った洗脳された女子高校生がその暗い過去の中で、こうありたいと願っていた姿だった。
 屋上から見渡す先には平和な風景が広がっていた。眼下の芝生で戯れている同級生たち、カメラで風景を写している人。日差しはどこまでも暖かく、ブロンドの髪をそよがす風はどこまでも気持ちいい。まるで‥‥重力井戸の底のくだらないマンデインから完全に解き放たれたように。

 このシーンはキャストの願望の中の世界と言うことで、負魔王様のお達しがありPLがキャストの願望を考えたシーンセッティングになったのである。さて、現実世界の読者の皆々様(特にさーくる一心不乱系の方々)には付け加えておかねばなるまい。

てんてん萌えでは『屋上はとても大事!』
セーラー服も制服も『どちらも好き!』
シナリオ『ダブルノック』内で少女の頃のメイチェルが主人公と
交わす約束は、『KanonのうぐぅがやるLastRegret』と同じ系。
これもメイチェル萌え&てんてん萌え!

夢メイチェル「きれいね‥‥。
ここに来ると‥‥色々な音が聞こえるの。人の声。街のざわめき」

 メイチェルが平和な光景を眺めていると、後ろから息せき切って後輩の高校1年生の男の子がやってきた。
ヌーヴ系のメイチェルは日系人の同級生たちより若干背が高かったが、成長期の男子の伸びはもっと高い。年下の後輩だが、すでに背は彼の方がかった。明るい緑色の瞳、癖っ毛の紅茶色の髪をバンダナで縛った少年はより逞しさを増していた。

マックス「先輩、メイチェル先輩! 探しましたよ、もう‥‥。どうしたんですか、呼び出して」

 そう‥‥メイチェルの願望の中の世界ということで、マックスぽんも高校生になってが伸びてしまったのである! (ノ∀`)
 ここで何者かが《神の御言葉》。望みどおりの世界に囚われたメイチェルは、道を見失ってしまう‥‥


夢マックス「メイチェル先輩、世界にはいいものも、悪いものもあるはずです。だいたい、先輩にはぼくがそんな風に見えてるんですか? おかしいじゃないですか、こんな急に背が‥‥」
夢メイチェル「そう? わたしは思ってるのよ。このままでいいかも、って (*^ー^)」

 金色の髪を押さえながら、メイチェルは風景を見渡した。町のざわめき、笑い声。眼下の学校にはトイレはなく、枯れた木も一本もない。善いものしか存在しない、いびつな世界だった。



 さて、この夢の迷宮から脱出するには神業しかない。マックス少年の《電脳神》か、あるいはメイチェルの《真実》か。PLレベルでの相談の結果、ここでは自分にトゥルースを撃つのがかっこいいだろうということになった。

夢メイチェル「そうね、わたしもいつか、あの人みたいに‥‥え、カメラ?」

 メイチェルは眼下の芝生で、年代物のカメラを持った人物に気付いた。顔の見えない人物が持ったカメラ。20歳の女性ジャーナリストに成長したメイチェルがいつも持ち歩いている古いカメラと同じカメラ。それは、メイチェルにとって特別な思い入れのあるカメラだった。

夢メイチェル「そうよね。見たものは、残さなきゃ‥‥」

 視界の隅で世界が崩れ、途切れていった。世界の構成要素が奔流(ストリーム)となって散っていき、緑の格子が現れる。メイチェルの側で後輩のマックスも完全に動きを止め、何もかもが動かなくなった。
 同時に、このハイパーリアルなバーチャル・リアリティの仕掛け人でもある“Blakk I.C.”が《完全偽装》で身元を隠す。


 現実世界では、電脳麻薬のドリー夢世界に旅立ってしまったメイチェルを呼び戻そうと大変だった。

本物マックス「メイチェルさん! しっかりしてくださいよ! (-∧-;)」
本物メイチェル「う、うーん‥‥ (ーー;)」

 必死に揺り動かしたら自分にしなだれかかってきてドッキリしたり、IANUSの端子をデッキに繋いで高難度の深層意識へのジャック=インを試みたり、大変だったのである。
 だが、メイチェルの中の人は『5 You're the NPC now』のアクセス・カードをマイナスの王より賜っていた。目を開いたメイチェルは、バッグの中からMP12オートピストルを抜くと、いきなり少年に向ける。

メイチェル「B.T.L.の秘密を知った者は‥‥生きて帰すわけにはいかないわ」
マックス「 Σ(゚△゚;) 」

 NPC化していると思って中の人はやり放題である。そして、同じくマックスに麻薬チップの調査依頼をしたイオスも、同じネット喫茶へ向かっていた‥‥

B.T.L.

 そして、イヴ・ローテイシア警視のシーン。中の人のツタヤ☆先生はずっと何やら考えあぐねていたが、突然ひらめいた。

イヴ警視の中の人「(くわっ!) やっとやりたいシーンの案が浮かんだ!」

 ‥‥グローリアスの中に完備された移動オフィスを離れ、ケルビムのオフィス。『B.T.L.』中毒者の尋問に当たることにしたイヴ警視は簡素な机と椅子しかない取調室で、次々と様々な人間に相対していた。

中毒者「オレの妹がさ‥‥ (*´▽`).。oO」
中毒者「オレの親戚がさ‥‥ (*´▽`).。oO」
中毒者「俺のダチがさ‥‥ (*´▽`).。oO」
中毒者「俺のオンナがさ‥‥ (*´▽`).。oO」

 強力な電脳麻薬のもたらす夢の世界に溺れた中毒者たちは、さして手がかりになるような情報を出すこともない。

イヴ「どいつもこいつも、夢ばっかり見てるわ。
1枚目の夢は5ドルで買えるけど、その後は堕ちていくだけね」

 そんな自作自演シーンがしばらく延々と続いてだれてきた後。彼女の元に、情報提供と引き換えに手を出さないことにしている犯罪結社の女が現れた。スペイン系の風貌、赤い瞳に隠された凶暴な光、ジャケットの下の二挺拳銃。イオス・ファリエーリである。

イオス「いよう、イヴ〜。また、酒でも飲むか? (=▽=)ノ」

 “ChillingEffect”から5ドルの夢の話を聞いたイオスは、ふと尋ねた。

イオス「イヴ、あんたの大事なものはなんなんだい。命より大事なもの(ベター・ザン・ライフ)ってヤツがあるとしたら」
イヴ「――よ」

 表情をバイザーの奥に隠した冷徹な女警視は、意外な答えを返した。
アフリカ連邦の難民として生まれたイヴは苦労して市民登録を乗り越え、必死に勉強して奨学金を受け取り、キャリア試験をパスして現在の地位まで這い上がってきた過去があるのだ。
 マーダー・インクのヒットウーマンはその答えを聞くと、肩をすくめてせせら笑った。

イオス「へぇ、面白いことを言うね。アンタ、アタシと変わんないじゃないか ( ̄ー ̄)」


 一方、メイチェルは抜群の記憶力と目線に気付く能力を生かし、<※カメラ記憶>+<※スタイル感知>。電脳麻薬『B.T.L.』のデザイナーのスタイルはタタラ, ミストレス, エグゼクと判明した。即ち、イーディス・オルグレンのことである‥‥

B.T.L.

 一方、メイチェルとマックスのシーン。『B.T.L.』に操られたメイチェルが夢の世界から帰還するも、NPC化していきなり連れに銃を向けたネット喫茶店内。
 びっくりしたマックスは視界内のトロンを探した。電脳制御のメイドのドロイドの電脳防御が緩いのに目をつけると、乗っ取って<※ポルターガイスト>。
 容赦なく発射されたオートピストルの弾丸は、割り込んできたメイドロボットの掃除のほうきに遮られる。

本物メイチェル「‥‥あれ‥‥わたしは‥‥?? (@@;;」
本物マックス「メイチェルさん、しっかりしてくださいっ!」

 やがてメイチェル・ヒューイットは茫然自失状態から回復し、意識を取り戻した。金髪の頭を押さえて首を振り、現実世界(マンデイン)の本物の状況を理解する。
 彼女の前にいたのは、夢の世界で高校生だったメイチェルの背を追い越した、高校1年の後輩ではなかった。身長152cmの中学2年の少年だった。彼女はきょとんとしてその姿を見下ろすと呟いた。

メイチェル「――小さい‥‥」
マックス「‥‥第一声が、それですか‥‥」

 いきなりの発言に思春期の少年がずーんと落ち込んでいると、ややあって喫茶店に来客があった。
 人のフラグ立てもとい賑やかしに現れたのは、マーダーインクの女がつである。その後ろにグローリアスが止まると、紫の長髪の女エグゼクも現れた。かくして、運命の舞台に集いし4人はようやく出会ったのである。


イオス「(ニヤニヤしながら) おっとっとっと、これはお取り込み中だったかなぁ〜〜?」
イヴ「もっとも、青少年保護条例はこの街にはないわ」

 メイチェル・ヒューイットは『B.T.L.』チップで体験した不思議な夢の世界の話を語った。ケルビムはじめ各種法執行機関で国際指名手配されている“夢の贈り手”イーディス・オルグレンのデザインによる、高度な電脳麻薬として間違いないだろう。

メイチェル「マックス、ログは取ってあるわね?」
マックス「はい、あります。あとで追体験でもきますよ (*^▽゚)」

 その後、メイチェルはイヴ・ローテイシア警視と語った。どうやら二人は損得の絡んだ微妙な関係であり、友人というわけでもないようだ。
 だんだん会話が険悪になった後、ヨーロッパ系の美人のお姉さんは冷たい声で連れに言った。

メイチェル「マックス。――そのログ、絶対に見せないでね」
マックス「は、はいっ (((Д;;)))」


 イーディスが雇われているのは非干渉地帯で日増しに勢力を強めるレッガー、“満足を知らぬもの”ベヘモット。すべてがそこに繋がる。そしてベヘモットに雇われているのはもう一人、伝説級のICE使い、“Blakk I.C.”であった‥‥

メイチェル「あなたに、立ち向かえるの?」
マックス「やれます。電脳空間で戦えるなら、ぼくとスカイアだって簡単には負けたりしませんよ!」
イオス「そうだそうだ〜。イイとこ見せてやんなよっ〜! ヽ(@▽@)ノ」
マックス「(はっ!) ‥‥イオスさん、適当なこと言って焚き付けないでくださいよ。いつもそうじゃないですか」

 無責任にはやし立てるイオスに気付くと、少年は口を尖らせた。そもそも二人の出会いは、酔っ払ったイオスがバーの裏でチンピラをのしているところを偶然マックスに見られてしまったという、あまり格好よくないものだったのである。
 そして、そんな様子を見ていたイヴ・ローテイシアが年長者的ロールプレイをしてきそうな感じになったのだが‥‥ここらへんがイマイチうまく流れなかった。

マックスの中の人「分かったよ。“ChillingEffect”効果で勝ちロールがしたいんだろっ! щ(゜д゜щ)カモンカモソ」

 新造キャストが自らの不幸な生い立ちを語って年下のキャストを見下す台詞を言うのが完全に予想できるだけに、中の人たちもやや投げやり気味にChillingEffectハッシャ覚悟完了だったのが‥‥結局ハッシャされる訳でもなく、ここらへんはいまいち掛け合いがうまくいかなかった。
 紫の長髪に表情をバイザーで隠した女エグゼクは、結局席を立つとその場を後にした。

イヴ「敵討ちとか、命を掛けるとか、大概にすることね」


スカイア「しかしあのイヴ殿の格好、どこかで見たような姿ですな」

 何でも知っている(うそ)青いAI竜のスカイアは<※隠れバディ>で<社会:災厄前のゲーム>を代用。負魔王様が了承したので、紫の長髪に眼帯という特徴的な外見が、どこかのゲームで見たようなサムシングであることが判明するっ‥‥!

マックスの中の人「ライダー ヽ(´ー`)ノ」
イオスの中の人「ライダー ヽ(´ー`)ノ」
メイチェルの中の人「ライダー ヽ(´ー`)ノ」
イヴ警視の中の人「そんな設定拾わんでいい! ヽ(`Д´)ノ」

B.T.L.

 ストリートの危険な非干渉地帯。イオス・ファリエーリが歩いていると、またしても危険な男たちが現れた。

がつ「へっへっへ〜、見つけたぜ〜 (゜∀。)」
ベヘモット「昔、俺も何も持っていない時代があった。何もかも奪われて自棄になっていた時代が。
 その頃の俺は今の俺を羨望の眼差しで見るだろう。だが――今の俺はなんとも思わん。健康な人間が自分の健康を意識しないように。金持ちたちが貧乏人を理解できないように。俺は自分が持っているものに満足できないからだ」
イオス「アンタたち、まだ懲りないみたいだねっ!」
ベヘモット「お前ら! あんまり壁にを開けるんじゃないぞ」

 またしても抜かれるR27リボルバーとS8イーグルの二挺拳銃(トゥーハンド)。鉛弾が飛び交い、場面は大騒ぎになる‥‥

B.T.L.

 一方、別の静かな場所では、二人の女が会っていた。片や10代の頃の暗い運命を乗り越え、二十歳の乙女にして世界を巡るレポーターとなった欧州系の白い肌の女。片や難民として生まれた苦難の幼少時代を乗り越え、今の地位まで這い上がってきたアフリカ系の黒い肌の女。

イヴ「あなたがこんな事件に居合わせるなんて、奇妙なこともあるものね」
メイチェル「何、北米が懐かしくなってね」
イヴ「珍しい。彼氏でもできたの?」
メイチェル「違うわよ。その前に見えちゃうもの。 ――純粋な子の方が、見ていて面白いわ ( ´ー`)」

 人の視線と、心の向く先を“視て”しまう能力を持ったメイチェルは相手の軽口を否定すると、微笑をもらした。しばし行動を共にしている少年のことでも思い出しているのだろうか。

イヴ「何をしようと勝手だけど、法律問題を起こさないでね。この前も、アイドルの飲酒喫煙で裁判沙汰の騒ぎがあったけど‥‥」

 しばらく法律の話題をひとしきり話した後、イヴ・ローテイシア警視は国際指名手配犯、イーディス・オルグレンの名を出した。彼女の別名(ハンドル)は“夢の贈り手”である。

メイチェル「――夢を押し付ける人は嫌いなの。自分で見ないと、意味がないから」

 しばらく会話を交わした後、二人は席を立つと別れた。

イヴ「送るわ」
メイチェル「気を遣わなくていいわ。メディア関係者が警察と親しくしてるのを見られるのは、いろいろとまずいものね」

 去っていくメイチェル・ヒューイットの背中に、アフリカ系の女警視は呼びかけた。

イヴ「あなたも考えなさい‥‥命より大切なもの(ベター・ザン・ライフ)を」
メイチェル「分かってるわ‥‥」

B.T.L.

 そして、マックスは探索に必要な判定で21を出し、行方知れずの“アイスウォーカー”の現実世界での居場所(アドレス)を突き止める。それは、イエローエリアにある、トロン端末を備えた店のフォートレスつきの個室からだった。
 母と離婚した父のマーチンが買ってくれた通学用のマウンテンバイクで、その場所へ急ぐ。二階の個室への道を遮られると運良く<交渉>で高い札を出し、0と1の世界から永遠に帰ってこない友人の元へ走った。
 ニューロがよく好む防護された部屋の中で、“アイスウォーカー”は完全に生を止めていた。安物の“ANI-O”義体を使ったペンギンの姿をした完全義体とタップがワイヤードされ、(ICE)に取り込まれたペンギンは動かなくなっていた。
脳波計は完全にフラットライン。動物型ボディの中の脳はもう機能を停止していた。

マックス「‥‥ニューロにはニューロのやり方がある。仇は討つよ、アイスウォーカー」

 詳しくは聞かなかったが、ストリートの電脳犯罪者として渡り歩くアイスウォーカーは少年の身で何か大きな破滅を味わい、安い動物型の義体に身をやつしているのだった。
 タップのメールソフトから未送信のメッセージが発見された。シナリオ上の想定に従い《電脳神》を使用。“Blakk I.C.”と“ベヘモット”の居場所(アドレス)が割れ、いよいよクライマックスフェイズへの扉が開かれる‥‥

B.T.L.

Climax Phase

 非干渉地帯、“ベヘモット”のアジトに一番に現れたのはイオス・ファリエーリだった。
たっぷりの鉛弾が詰まったガンベルトを両肩に回し、背中には無骨なパンツァーグレネード。そして頭には陽気なテンガロン・ハット。これから楽しく戦争をやりにいく真性のトリガーハッピーでもなければ、なかなかこんな格好は思いつかない。
 凶暴な女殺し屋の登場としばらくの銃撃戦の末に、レッガーたちは震え上がった。

部下たち「Σ(゚д゚;) ヒィィィ」
イオス「ベヘモットはどこだ。早く言えっ!」
部下たち「な、中にいる! ヽ(`ー´)ノ」
イオス「ありがとよっ!」

 相手を蹴っ飛ばすと、イオスは目に危険な光を浮かべてずんずん進んだ。

イオス「食い甲斐のあるヤツだぜっ!」

 一方、指揮用車両としてさまざまな改造が施された高級なグローリアスが、しばらく遅れてアジトの前に止まる。イヴ・ローテイシアの精鋭の部下たちである“バットカンパニー”が、車の周りに展開した。
 全員が強化アーマーギアに身を包み、“タランチュラ”ウォーカーに搭乗した機動兵あり、先陣の兵たちは強力な対物ライフル“アルティメットブレイク”を一斉に構える。そう、彼らはとても屈強なニューロトループなのだ。

イヴ「フリーズ! 損害が出るわ。非殺傷兵器へ切り替えなさい」

 グローリアスの中に優雅に座るイヴ警視は戦略を切り替え、素早く指示を出した。屈強な狙撃兵たちは一斉にマガジンを交換し、特殊弾を装填し直した‥‥ように見えた。
 しかしアウトフィッツとして何か別に持っている訳ではないので、言ってるだけなのだ。いやー、バットカンパニーは違うなぁ〜 (´ー`)y-~~~


 そしてメイチェル・ヒューイットとマクシミリアン・ダグラスも同じグローリアスに乗せてもらっていた。アジトの前に停車したあと、少年はドアロックを外すと出て行こうとする。

メイチェルとイヴ「あなた、あの騒ぎの中に飛び込むつもり?」
マックス「違いますよ。イオスさんが突っ込んじゃったから、騒ぎはぜんぶイオスさんの周りです。ぼくはその後をついてくだけですよ」

 既に始まっている窓の外の大騒ぎを横目で見ながら、マックスは珍しく辛辣に言った。防弾のドアを開けながら、豪華な室内を改めて見回す。

マックス「でもこの車、すごい設備ですね」
スカイア「なるほど、さすがライダーだけあって、よい乗り物に乗っておられるようだ (=▽=)」

 青銀のAI竜はなことを言い、一人と一匹は車の外に飛び出した。

 一方、既に騒ぎの渦中にいるイオスはパンツァーグレネードを肩の上で担ぎ直すと、危険な笑みを浮かべていた。

イオス「さあ、始めようか!」

B.T.L.

 かくして戦闘開始! 敵は“満足を知らぬもの”ベヘモットがレッガー, チャクラ, カブトワリ、連れている“夢の贈り手”イーディス・オルグレンがタタラ, ミストレス, エグゼク。電脳意識体で登場しているのが“Blakk I.C.”でクグツニューロカリスマ。
 さらに勢力を強めるベヘモットの部下たちは、カゲトループ、カブトワリトループ、レッガートループの3段という強力な構えである。

 アクションランク3。イヴ・ローテイシア警視は中の人がキーカードを出してキー効果宣言。屈強なニューロトループがイーディスを撃つ‥‥と見せかけて行動変更がゴニョゴニョしてベヘモットに向かい<※フリーズ>。しかし、“満足を知らぬもの”はなんと<※周天功>で回復する。
 数の多いカゲトループが2アクション使って<※完全奇襲>、今度は論理迷宮使いのイヴ自身が<※ポルターガイスト>する。
 さらにカブトワリトループがバットカンパニーに向けて全力射撃、19。屈強だが制御値の低い部下には当たってしまい、このままでは全滅してしまう。
 ダメージ適用の前にイヴ・ローテイシアは自分の《電脳神》で敵トループを排除した。わらわらと進むアーマーギアの重武装の屈強な部下たちが、戦場を制圧する。そう、バットカンパニーは屈強なニューロトループなのだ!


 残ったレッガートループは、一人で乗り込んできた女に向けて迫った。

部下ズ「やっちまえ! 相手はたった一人だ! ( ´∀`)σ)Д`)」
イオス「そのセリフ、死亡フラグなんだよっ!」

 どっかーん! ラケッテン・パンツァーグレネードで《死の舞踏》、対戦車用の危険な砲弾が炸裂し、アジトは滅茶苦茶になる!


 そしてアクションランク2。イヴ・ローテイシア警視は目を隠すバイザーを外した。
そこにあるのは読書好きな眼鏡のお姉さんの顔‥‥ではなくて、、“オービット・レイ”の瞳で素<交渉>。だが一撃で沈む可能性のあるこのアクションはベヘモットのリアクションで防御される。
 しかし‥‥そこでアジトに乗り込んできたメイチェルの古びたカメラが光った。<※シャッターチャンス>で達成値が-4、アクションが成立する!  精神ダメージ18点、7点減少させて危険な11点、ベヘモットは<周天功※>を試みるも判定失敗、やむなく《黄泉還り》で抑える。

イオス「おらおらどうしたベヘモット、この(ピー)! ヽ(▼ー▼)ノ」



 そして一方、彼方の電脳空間、全ての光の生まれ故郷では。
 電子情報で構成された一匹の竜のアヴァターの前に、巨大なネクサスが形を変えながら聳えていた。全ての挑戦者に不変の滅びを与えてきた漆黒の氷(Blakk I.C.)である。

マックス「‥‥ぼくとスカイアは空を求めるもの(スカイ・シーカーズ)だ。黒いICEが絶対に破れないなら、その上を、空から越えてやる!」
スカイア「御意に!」

 スカイアは急激に方向転換すると、仮想的な上方向に向かって羽ばたいた。背後から黒い触手が絡みつくのを振り払い、理論上は無限の高さを持つ再構成された銀の世界を、どこまでも上へ、どこまでも遠く。
 ブランチ<ニューロ:ウィザード>でスートを変え、<※フリップ・フロップ>から<※01フィーリング><※クラッシュ>で27が出る!

Blakk I.C.「油断する瞬間が命取りだ――」

 究極の防壁使いは急激なI/Oの隙間に攻撃を滑り込ませた。《電脳神》でイントロン者のIANUSを破壊、焼き殺す。やむなくマックスも《電脳神》で打ち消し、首筋のジャック端子のデバイスがバチッと音を立てて焼け焦げた匂いとともに外れる。

マックス「タタラ街で、予備を買っといてよかった‥‥」

 マンデインではイオスが撃ちまくる後方にいた少年は息を吐いた。かくして奥の手の<※クラッシュ>成立、最高級の防壁ハンドラー用タップを壊され、Blakk I.C.は電脳空間でのその能力を失う!


 そして、鉛弾が飛び交う重力井戸の底。ベヘモットが拳銃を抜き撃つと<※イカサマ><※貫きの矢>で24、だがイオスは<■自動反撃>の奥の手から撃ち返す。

イオス「アタシの右のほうに撃ち込んでも、神様が守ってくれるのさ!」

 だが、“満足を知らぬもの”は<※呼吸>からのコンボでさらに撃ってきた。

イオス「なにー! アタシの神様が! ヽ(@▽@)ノ」

 その名を恐れられる殺人企業のヒットウーマンでも、これは避けられなかった。やむなくマックスがリアクションで止める構えに入る。

マックス「くっ、電脳介入が間に合わない‥‥お願いだ、ティアマトー、力を貸して!」

 少年は頭上を仰いだ。赤道軌道上のスカイアの故郷、あらゆるレーダーから隠された見えない軌道衛星が電子介入を起こし、スプートニク相当品が+4して<※ポルターガイスト>の達成値が到達。ベヘモットの手元の拳銃に火花が走り、電脳部分が異常を起こして射線がずれる。
 イオスは吼えると、自分の二挺拳銃を男に向けた。

イオス「ハッ! アタシにはもう一人神様がいたんだねっ! (´∀`)b」
マックス「うわ、イオスさん! それ絶対お断りだよ! ・゚・(ノД`)・゚ ・。」

 どうやら優しい竜の女神の加護条件には、ビッチなお姉さんは範囲外のようである。



イヴ「論理迷宮に落ちなさい!」

 リムジンの中の警視は指示を出し、<※フリーズ>攻撃。さらに屈強なニューロトループのバットカンパニーが、敵に精神ダメージ15点を与える。

イオス「よーし、そんじゃ正々堂々と行くか! ('∀`)b」

 心清きイオスはまっとうなことを言うと、足元の砂を蹴り上げて一緒に鉛弾を撃ちこんだ。<※イカサマ>から<※貫きの矢><※ガンフー>、自分の力だけでのし上がってきた新参者のレッガーを撃ち抜く。
 だが<■合気>反撃とイーディスの《ファイト!》からの《黄泉還り》があり、ベヘモットはなかなか倒れない。

イオス「チッ! 意外とやるねッ!」


 そして、メイチェルが動いた。“カラミティ”の名を持つ女性レポーターになる前、暗い運命に囚われていた“ダブルノッカー”だった頃のメイチェルは少女の年齢ながら高い能力をもつ暗殺者だったのだ。
 サポートの構えに入るイーディス・オルグレンの背後にすばやく回りこみ、取り出した『B.T.L.』チップを整形美人の首筋に叩き込まんとする。<交渉><芸術>+サイバーウェアで高めた精神戦、“夢の贈り手”はやむなく《タイムリー》防御を余儀なくされる!

メイチェル「――本物の夢を見せられないんじゃ、三流よ」


 一方、なかなかしぶといベヘモットと対峙が続くイオスはS8イーグルをしまうと、R27リボルバーのシリンダーを外した。

イオス「お前は、クーゲルの次ぐらいに強いな」

 薬莢を全部捨てると、輪胴をしばし回転させてから実弾を3発だけ入れる。死ぬ確率1/2の、高確率のロシアンルーレットである。

イオス「やってみるか? ('∀`)b」

 リボルバーを放ると、ベヘモットはイオスに負けないぐらいの凶暴な笑みを浮かべ、ゆっくりと銃を拾った。だが自分のこめかみには当てず、そのままイオスに照星を合わせて続けざまに引き金を引いた。

イオス「お前はそうすると思ったよッ!」

 だが、以上の演出で《とどめの一撃》。ジツは1発しか込めていなかった傷物の不良弾丸がいきなり暴発する。RLサイドの意図汲み取りもあり、手元でいきなり爆発を食らった男は重傷を負って気絶する!



イーディス「‥‥命よりも大切なもの(ベター・ザン・ライフ)よ。あんな汚いストリートで、ろくでもない連中に削られる命なら、無いほうがまし! 私はこのチップで命を買って、それで軌道に登るのよ!」
メイチェル「――そんなのが夢なら、もう一度最初から這い上がってくることね」

 《不可知》からの<※死点撃ち>できっかり10点ダメージ。幾つもの町を滅ぼしてきた天才ドラッグデザイナーは、無手からの鋭い一撃を浴びるとその場に倒れた‥‥。

B.T.L.

Ending Phase

 看板もなく、『犬とニューロお断り』という但し書きだけがわびしく掛かる寂れたバー。
 入ってきた客はもうフードで人相を隠していなかった。竜のドロイドを連れたマックス少年である。
 “Blakk I.C.”は同じ席で、同じ飲み物を飲んでいた。抑制を欠いた平坦な声も、感情の窺えないサングラスも同じだった。

マックス「これからもあんなことを、人殺しを続けるつもりですか」
Blakk I.C.「私は負けたが、やり直す。たとえ10年、20年かかっても。再び名を高めるためだ」
マックス「ニューロは人殺しなんかじゃない。本物のカウボーイ魔法使い(ウィザード)で、そして新しき夢想家(ニュー・ロマンサー)なんだ!
 これからも続けるなら、考えがありますよ」

 そして、少年の網膜に投影されたもうひとつの世界、全てのAIとイーター・プログラムの光の故郷。竜のスカイアは最後の《天罰》の力で虚空に吼えた。

スカイア「いでよ、火竜の子らよ!」

 飛んできたイーターたちの外装(アヴァター)は、小さなサラマンダーの子供たちだった。面白い遊び道具を見つけると、取り付いて小さな炎を次々に吐く。電脳世界に伝説を残した究極の黒い氷(ブラックICE)は徐々に溶かされ、その構造体の外観を少しずつ崩されていった。

スカイア「これなる子らは匂いを完全に覚えました。この先、広い電脳世界のどこででも、この黒い氷を展開したが最後、必ず匂いを嗅ぎつけ、現れるでしょう‥‥」


 第二の故郷で真に伝説級と恐れられた攻性防壁使いは自らの最高の技を生きながら封じられ、重力井戸の底の現実世界で、ただじっとその苦しみに耐えていた。

Blakk I.C.「理想が高いな、少年よ。だがその理想を、いつまで保てるかだ」

 少年は何も答えられなかった。決して砕けぬ氷とその伝説を溶かされた男は、ただ、場末のバーを去っていった。

B.T.L.

 非緩衝地帯の新興勢力は消えた。ボスを失ったレッガーたちは散り散りになり、シンジケートの貴重な収入源を脅かすものは消えた。
 そして、そのボスは‥‥便所で溺れていた。

 硫酸を混ぜた洋式便器の汚い水の中にベヘモットの頭を突っ込み、イオス・ファリエーリはその死に方を選ばせようとしていた。片方の手には拳銃、片方の手は手袋をはめて男の黒い髪をがっちりと掴み、頭を便器の底に押さえつける。

イオス「さァて、お前の命より大事なもの(ベター・ザン・ライフ)ってなんだったかなァ〜? ( ̄ー ̄)」

 ベヘモットは手足をばたばたさせ、ブクブクと泡を吐くばかりだった。少しばかり手を緩めると、マーダー・インクのヒットウーマンは言った。

イオス「さあ言えよ、“命を助けてくれ”って!」
ベヘモット「ブハッ! ‥‥‥‥助けろよ、クソったれ」

 男の命乞いを聞くと、イオスは悪魔よりも残酷に笑った。

イオス「最後の最後に自分のスタイルを曲げたな。助けるつもりなんてさらさらなかったさ!」

 ベヘモットが言葉を発せたのはそれが最後だった。一層強い力で便器の中に押し付けられ、男が酷い苦しみの果てに遂に絶命するまでには、それから幾らかの時間が掛かった。


 そして仕事が済んだ後。超新星の街の全てを敵に回し、の後には夜しか来ないことを選んだ殺人企業筆頭の前。イオスは邪魔者が消えたことを報告した。

イオス「それから、あいつのために弔ってくれないかい」

 ドン・クーゲルは意外な申し出に、頷いて指示を出すのだった。

B.T.L.

 国際指名手配犯イーディス・オルグレンが完全に拘束され、今度こそ容疑の何もかもが本人による犯行であることが立証された後。イヴ警視の《制裁》を受け、イーディスに対する裁判は長く続いた。
 裁判が一区切りつき、囚人服の容疑者が監視の下で控え室に入ってきたとき。
 部屋には先客がいた。アフリカ系の漆黒の肌をスーツに包んだ長身の女エグゼク。腰まである長いの髪と、表情を隠す眼帯めいたバイザー。

イヴ「後半は一ヵ月後だ」

 告げ、国際警察ケルビム教官の女警視はしばらく容疑者と言葉を交わした。

イヴ「改めて経歴を眺めたわ。生まれもスラム‥‥のしあがりたいとか、人の夢を叶えたいとか、思ったわけね」
イーディス「何不自由ない暮らしのイヌには、想像もつかないでしょうね」
イヴ「言い忘れたけど、私もスラム出身なのよ」
イーディス「‥‥冗談?」
イヴ「まさか。オーストラリア在住のアフリカ人がどんな暮らしか、知ってるでしょう」

 自分の追跡者の意外な過去にイーディス・オルグレンは驚いたのと、中の人同士の意思の疎通がうまくいかず、実アクトでは会話がかなりもにょもにょしたのだが‥‥イヴ警視は自分の境遇うんぬんをひとしきり語った。

イヴ「豪州にいるのはアフリカ難民が中心よ。ま、いろいろあったわ。
私は運がよかった――あとは日々の行いよ」

 イヴ警視は《買収》を使った。しばらく迷った後‥‥効果は自分のバカンスを買うことになった。

イヴ「運というのは人に助けられることよ。あなたは自らそれを捨てたわ」

 真ん中で分けた紫の長髪、表情を隠す眼帯めいたバイザーの女エグゼクは身を翻すと、罪人の前を後にした。

B.T.L.

 総合病院の一棟、電脳が原因で脳に異常をきたした患者が集められている一室。
 神崎兵梧少年は、ベッドの前でじっと座っていた。寝ているのは自分の父。だが電脳麻薬に完全に侵された父の意識は、外界の刺激を受けていない。誰の声も届いていない。医学的に生きてはいるが、死んでいるのと同じだ。
 少年が黙っていると、見舞い客が現れた。肩に掛かる長い金髪に碧眼、すらりとした長身の若い女。ヨーロッパ系の女レポーターは、バーで一緒に飲んだ相手だった。

メイチェル「君は、お父さんに伝えたいことがあったんでしょう。
言いなさいよ――このくそ親父って」

 神崎兵梧はしばらく我慢していたが、やがて立ち上がると、生ける屍と化した父に向かって罵声を浴びせた。返事はなかった。
 古ぼけたカメラを取り出したメイチェルは、それを一枚の写真に収めた。《暴露》すれば、ドラッグの悲惨さに気付いた世界は、少しでも善い方向に進むだろう。

 涙をぬぐった息子に、メイチェルはそっと言った。

メイチェル「家族を、大事な人を大切にしなさい。は、現実と違うのよ」
神崎兵梧「‥‥‥‥ありがとう。オレなんかのために」

 メイチェルは首を横に振ると、寂しそうに微笑んだ。

メイチェル「ううん。本当は、わたしのため。
ある人に命を救われたけど、わたしはその人の記憶を台無しにしたの。だから、償いをしてるのよ」

 そして、女性レポーターは病院を後にした。


 災厄の街を騒がせた電脳麻薬事件が去り、メイチェルの仕事が落ち着いたある日。
 彼女が街を歩いていると、後ろから少年の声が掛かった。

マックス「あ、メイチェルさん! ヾ(´▽`)」

 メイチェルがあら、と振り向くと、紅茶色の癖っ毛をバンダナで縛った少年が手を振っていた。学校から帰るところなのか鞄を背負い、通学用らしきマウンテンバイクに乗っている。その頭上には、時々謎なことを言う竜のドロイドが悠々と飛んでいた。
 マックスはMTBをゆっくり漕ぐと、二人はしばらく共に歩いた。

マックス「その、いろいろありがとうございました」
メイチェル「いいのよ。わたしだって助けてもらったし」

 しばらく他愛ない話をした後で、少年は真面目な顔で言った。

マックス「Better Than Life... 命より大切なものって、結局、なんなんですかね」
メイチェル「マックスは、どう思うの?」
マックス「ぼくも考えてみたんです。Blakk I.C.は“誇り”って言ってたし、最後には“理想”だって言った。
その後‥‥ぼくは“希望”かもしれないって思ったんです。
――でも、やっぱり、ぼくには分からないです」
メイチェル「そうね、いつか分かる時が来るかもしれないわ」

 メイチェルが首を傾げて答えると、少年は顔を上げた。

マックス「メイチェルさんの命より大切なものって、なんなんですか?」
メイチェル「わたしの大切なもの?」

 “ダブルノッカー”、偽りの記憶を植えられ洗脳された少女の暗殺者だった暗いさだめを乗り越え、“カラミティ”と名乗るようになった女性レポーターは、金髪を揺らして振り返ると微笑んだ。


メイチェル「――それは秘密よ」
 :

And so, the curtain dropped,
conceiling something valuable more than life .....

-XYZ-



そしてアクト後‥‥

イオスと中の人「あ〜、アンタッチャブルを忘れたー ヽ(@▽@)ノ
3発とも殺しに使いたかったなー」

一同「やっぱりイオスだ! (ノ∀`)」


 かくして命より大切なものを探すストリート風味のアクトは終了。劇中ゲストから問いかけられ、キャストを通して返答をしないと「良いロールプレイをした」にチェックがつかない決まりであることが、プレアクトテキストにも書いてあります。
 当然この面子なら各自で考えていたせいもありますが、キャスト全員がそれぞれに相応しい形でシーン中に返答を表現することができました。
 ぽっくんは「マックスぽんは結局分からないまま終わらしてるから、チェックつかないなぁ〜 (´ー`)y-~~~ プハー」と余裕をぶっかます予定だったのですが、負魔王様によると『返答内容は問わず返答することに意味がある』との仰せなので、チェックがついてしまいました。おおー。 (*゚▽゚)
 他、いつもの濃い面子が集まったこともありますが、登場人物の個性も十分だったと思います。

 さて、オンラインアクトのリプレイでないオフラインのアクトの当サイトのプレイレポートは、僕のアクト中の観察と記憶、メモ、キャストの情報の調査、可能ならシナリオの調査、ありえる場合は他の参加者やRLサイドへのヒアリングなどを総合し、アクトを再構築する形で執筆しています。メモしきれなくて省く部分もありますし、冗長と判断して故意に省く所もあります。
 録音から起こすリプレイやオフィシャル出版物のリプレイでも使われる方法ですが、セッションの全てではなく盛り上がりどころを繋いでいく訳です。
 従って、お読みになった読者の皆さんがもしも仮に「おお!」と思われたとしても、再構成したプレイレポートに上手くまとめているからそう見えるのであって、実際のアクトとは差異がある場合も、ありえます。

 今回の『B.T.L.』にもそれはあって、一番差異があるのはイヴ・ローテイシア警視のシーンです。実際のシーンはもっともっと長く、会話がうまく噛み合わなかったり演出に時間だけ冗長に掛かったりしています。
TRPG系日記やblogで見られる表現、いわゆる『ぐだぐだ』『もにょる』というやつですね。ツタヤ☆先生の自身の日記でも書いてありますが、新規キャストでいまいち安定感を欠いていたようです。
 他は‥‥中の人が一ヶ月ぶりのプレイということでイオスはいつものはたコズムよりバカっぽかったような気もしなくはないですが(ゲフンゲフン)まあ全員で笑いを共有しているし、いつものはたコズム想定範囲内か。(意味不明)
 僕は自分に都合よくならないよう、アクトを客観視するようアクト中も執筆中もかなり腐心してますが、メイチェルお姉さんとマックスぽんのコンビは時間の占有も少ないし、まずまずだったと思います。午後に体調が復活してほんとよかった‥‥ (´w`;)

B.T.L.

 さてそんなところで。
情報によると、メイチェルのエンディング、神崎兵梧少年が死んでいた場合は《暴露》がFate風味になってしまうところだったとか。ツタヤ☆先生は凛が好き! などのサムシングもあるのですが。イロイロとアレなのでこのへんにしておきます。

 2006年3月現在ではGF誌の『Neuro Beat!!』で軍事関係と電脳関係のフレーバーがニューロエイジ世界に補完されましたね。このページでも用語をこっそり合わせています。次の別冊ではN◎VA-Dのリプレイが掲載されるそうですから、その頃に何か動きがあるでしょうか。
 それではよい冒険を! ヾ(´ー`)ノ
 

〜BTLなリンク集〜




〜おまけ〜
次回予告


トーキョーN◎VAに新規開園した遊園地『マラトロウ』。
時計塔を中心に広がる古き良きヨーロッパのアトラクションの数々。
だが、開園当日に、なんと爆弾テロの予告が送られてきた。

災厄を詰め込んだパンドラの箱が今開かれる。
平和な遊園地に隠された秘密とは?

“Dream World”の名を持つマジシャンあがりの女探偵。
特殊部隊“白龍天輪”のサイボーグ戦士、“Coda”。
そして、水晶の歌い手の携える占い札が、一同の冒険の旅を導く‥‥
 


Shard of Dreams - Pandra Box

TNDオンラインリプレイ『ユメノカケラ -Pandra Box-』


RLは御存知、みこなぎの人。
特別ゲストとして那岐が登場するかもしれないゾ!
トゥアハ・デ・ダナーンの占い札によれば、
PC2がヒロイン、PC3が真のPC1として覚醒するらしい!
現在進行中のオンラインアクトが
本格リプレイコンテンツとして登場予定!

 
 


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