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 チェーンロックをぶっち切り、あいた隙間に片足を突っ込んだ。ロックを開けた間抜け野郎が、叫びながら中から手を伸ばしてくる。福建なまりの広東語。ロックカッターのぶ厚いハサミをつかもうとした。俺は後ろに引きかけたカッターの刃を、思い切りしめてやった。間抜け野郎の指がバラバラと落ちる。チェーンよりもあっけなく切れた。そいつはまた、なまった広東語で叫んだ。今度は俺にも理解できた。罵りの言葉。すぐあとに激痛が襲ってくる。やつはその場に崩れ落ちた。同時に俺の横にいた黄がドアを引き開けた。
 中に踏み込むと、長い廊下の向こうに人影がいくつか見えた。リビングにつめている連中が出てきた。俺は片手のロックカッターを前に向かって投げた。ひとりの腹に突き刺さった。そいつは尻餅をついて廊下に転がり、後ろの連中が前に進もうとする障害になった。マンションの一室、長いが狭い廊下だ。大の男がふたり並んで歩くのが精一杯だった。俺はやつらがモタついてる間に、懐から「俺自身」を引き抜いた。
 廊下の照明が「俺自身」を照らす。
 鈍く光る黒い金属。そこには黒い星の刻印がある。トカレフTT33型のチャイナコピー、「黒星」。そいつが「俺自身」だ。
 撃った。銃声が同時にふたつ重なった。あとから入ってきた黄が、玄関で倒れたままの間抜けを仕留めた音だ。俺の弾は、ロックカッターを腹に刺して倒れている死体を、またごうとしたやつに飛んだ。そいつは腹をはじけさせて尻から倒れた。

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