ヨコハマ中華街&新山手

[ Chinatown BBS Log / No.8〜No.45 ]



“運命の輪は廻り続ける”

Handle : 運命の輪   Date : 99/04/30(Fri) 03:18


空気を染め上げる紅い血飛沫。
沸き上がる阿鼻叫喚の叫び声、断末魔の悲鳴、すすり泣く泣声。

一人の男が息絶え、そして一人の男がこの世に再び生を受ける。
いや、元々彼の存在自体はこの世界に無かったかもしれない。
だが今となってはそれも過去に流されてしまった事実の一つのようだった。

“ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラはヨコハマの大地に降り立った。
この舞台を狂気に埋め尽くすのが使命。

恐怖か、それとも歓びかに震える無機質な黒のアタッシュケースにカーマインはゆっくりと右手を伸ばそうとしていた。

自らの半身を取り戻すべく………

 [ No.45 ]


窓の向こう

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/04/29(Thu) 00:04
Style : エグゼク◎、クロマク、ミストレス●   Aj/Jender : 26/♀
Post : 千早重工渉外部


クグツを血祭りにあげる“The Snake”。窓越しに、ルージュはそれを見、顔をしかめた。
「……遺族への支払いが馬鹿にならないわねェ」
こんな事態に命を張ってもらうのが彼らの仕事だが、だからといって無限定に使い捨てては費用対効果が高くつく。
ルージュは鞄からポケットロンを取り出し、手早くボタンを押した。
相手が応える間もなく、口を開く。
「馮です。そちらの手駒、全滅しちゃったみたいですわね。あの男、あのままでよろしいのかしら?」
ちら、と窓の外に目をやる。
カーマインに対峙する人影を見出し、ルージュは肩をすくめた。
「早くなさらないと、面倒なことになりますわよ」

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.44 ]


the Way to

Handle : ブライト=バートン   Date : 99/04/28(Wed) 23:56
Style : カブトワリ◎●カゼ、ニューロ  Aj/Jender : 26yrs/male
Post : Fureelanz


「俺は幸運なのか不幸なのかね……」と言いながら苦笑する。
目の前で行われた惨劇――エールで行われたテロに参加していた”ザ・スネーク”による一方的な殺戮――という事実はN◎VAで囁かれていた噂を肯定するモノで、バートンはそれを調べるためにヨコハマの方に来ていたからだ。

「……?」首を傾げる。符号が合わない。

……何故だ?

そう自問自答しながら、様子を見る。

「Paradise.さあ、狩りのはじまり、この街はオレの楽園だァ。」

そうヤツが声を出す。近くには中華系の格好をした女性とカメラを構えようとする女性――おそらく”彼”とは無関係だと思われる。二人の女性が――いる。
……さてどうする。助けるか? 考えながら状況を見始めた……。

 [ No.43 ]


陽が翳る時

Handle : "Load of Minster" ユージーン   Date : 99/04/28(Wed) 04:42
Style : カリスマ◎ クロマク=クロマク●   Aj/Jender : 27/M
Post : フリーランス/元ブリテン国教会司祭


「・・・いい加減、その仏頂面はやめたらどうだ?」
あからさまにーわざとー不機嫌そうな顔をして辺りを伺っている執事兼ボディガードに声を掛ける。
「・・・そうですね。こんな風に外を睨めつけていたら、ユージーン様の好みの女性が逃げていってしまうかも知れない」
「なに、私は繊細な女性ばかりが好みなわけではないよ。むしろ強気の女性の方が好きだね」
両手を、組んだ脚の上で絡めたり解いたりを繰り返しながら平然と答える。半ば諦めた顔をしたアルバートを、彼の主人が昔聖職者だったことを知る者が見たならば皮肉混じりに「殉教者」と表したに違いない。尤も、そこに悲壮感は微塵もないのだが。
ふ、とアルバートとは全く違う意味で外を見ていたユージーンの上に、シェードで出来た薄暗がりとは全く別の、なにものかによって太陽が遮られた時に出来る濃い影が落ちてきた。視線をあげるとそこには鈍い光沢を放つ黒のレザージャケット。そして午後の陽を鋭く反射する、”黄金の猟犬”のバッチ。なにか遠くのものでも見るようにユージーンは目を細めた。
こんな時に、こんなところに鼻がきく猟犬の登場か。・・・「こんな時」だから、なのであろうか。
ハウンドの男がこちらを向いた。目があう。まだ若い、日系の青年だ。真っ直ぐに前を見据えることが出来そうな強い意志とプライドのある人物だ、とユージーンは思った。硬玉のように冷えた瞳にほんの少し、だが見逃すことが出来ないような鋭い光が走った。・・・どこかで見たことがあるか?
特有の機械音をたてて、ウィンドウが下がった。アルバートがぎょっとして振り返るが、心配するな、というように軽く手をあげる。
「・・・Hellow,Can I Help you?」
穏やかな笑みを浮かべて目の前の青年に話しかけた。まさか突然話しかけられる(しかもヌーヴの言葉で)とは思っていなかったのだろう、真面目そうな顔が驚きと困惑を示した。そんな青年の顔をユージーンの脳は記憶と合致する人間の検索すべくフルスピードで回転していた。
「駐車違反でしたか?」
冗談めかしてハウンドの青年に尋ねる。それと同時に検索結果が出た。白い閃光を放つ銃を使うハウンド隊員。つい最近、何気なく見たデータベースに彼の顔があったはずだ。
”光の弾丸”・・・だったか。
「BrilliantBullet・・・いや、"FlashBullet"か」
にこやかに微笑んだその時。
嬌声が響いた。女性のように苦笑してすませられるようなものではない、聞く者を不快にさせずにはいられない、まるで金属のこすれるような叫びだった。続く断末魔の悲鳴。効果音めいてすら聞こえる人体が引き裂かれる音、吹きあがってぬめるように輝く赤い液体、そしてばらばらに散っていく鮮紅色を晒した肉の断片。濃密な匂いを放つ、先刻まで生命を象徴していたはずの血液が、今は氏の代名詞のように辺りを支配している。静かに広がる湖水をたたえた瞳はその中心に立つ男を見つめた。
遅かった・・・のか?いや、まだわからない。
「ウィルフレット・・・さん」
アルバートが見知らぬ他人が同席したとき使うように言ってある偽名でユージーンを呼ぶ。かすかに警戒の色を含ませて。ユージーンがちら、とそちらに視線を送る。それで充分だった。
「静元星也さん、だったかな。今は非番なのかな」
目の前の惨状を敢えて無視して、ユージーンは訪ねた。
刹那、まるでその言葉が合図だったかのようにカーマインが跳ねた。そして彼に対峙するようにオメガREDを起動させる紺色の服を着た女性の姿が見えた。

http://www.teleway.ne.jp/~most [ No.42 ]


“逆走”

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/04/28(Wed) 03:54
Style : カブキ◎、カタナ=カタナ●   Aj/Jender : 27/女
Post : Criminal


・・・ずだんっ!
大きな足音を立てて立ち止まる。
血の匂い・・・濃厚な。
(匂ウ・・・血ダ・・・)
振り向いて、駆け出す。
駆け戻っていく。
BLAKK=IANUSが臨界機動(オーヴァドライヴ)を伝えるが気にしないで駆けていく。
彼女にとって大切なのは・・・血。
他人の血に手を染めることが彼女の至福。その感情に彼女は説明を付けることが出来なかった。
ただ獣のように、血を求めているのだ。
ただ獣のように、本能が吠え猛っているのだ。
彼女は走り、戻っていく。
獣の素早さで。

 [ No.41 ]


“Alea jasta ist”

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/04/28(Wed) 02:27
Style : カタナ◎・レッガー●・カリスマ  Aj/Jender : 23/female
Post : N◎VA三合会


血の匂いが一段と濃くなった。
周囲は阿鼻叫喚の地獄と化し、人々が逃げ惑う。 その中心にいるのは、先ほどまで倒れていたはずの男─
アンソニー・ブラスコ。
確か、そういう名だったはず。
目立たぬように死角に身を隠し、女は、死んだ男の名を思いだした。

女は、“大口の”取引のためにLU$Tに出向いていた。
関東軍の進駐により、“秩序”を得たN◎VA。 輝く超新星の影に紛れ、未だ、“混沌”としたLU$T。
N◎VAに不足する“物資”のうち、LU$Tで調達可能なものを手配し、N◎VAへと送る。
その仕事のために、かなり前からN◎VAとLU$Tを行き来する生活を続けていた。

いつからだろう?
女の耳に、一つの“情報”が、入ってきていたのは……。
──アンソニー・ブラスコという研究員が、『千早』に追われている。
──“ザ・スネーク”カーマイン・ガーべラが復活。
そして──
なじみの情報屋が女のもとに、一枚のデータチップを持ってきさえしなければ、他の雑多な情報とともに記憶の中に埋もれていたはずだ。
その辣腕の情報屋は、どこからか入手したのかは知らないが、アンソニー・ブラスコという研究員と“ザ・スネーク”カーマイン・ガーべラをつなぐ鍵の一つだといっていた。
「あんたなら買ってくれるだろう」
そういって、女にそこそこの値段で交渉を持ち掛けたのだ。
なじみの情報屋だということもあり、女はそれを買い取った。
情報の信憑性を疑いながらも。

「まさか?まだ起動していないはずだ・・・」
「BINGO!おまえの考えは正しいィ。」
「Go to Hell.さあ、お前も地獄の門の前で順番待ちをしてこいィ。ダイジョーブ。じきにたくさんのクソ野郎どもが後を追ってくるから寂しくは、ないィ。」
死角に潜み、男達のやり取りを“イヤー・オブ・ザ・ドラゴン”を起動させ、聞いていた女の耳にばしゃあ、という不吉な音が飛び込んでくる。
またひとり黒服の男が何かに切り裂かれて、倒れた。

辣腕の情報屋とは、あれ以来連絡が取れない。

情報屋から、データチップを手にいれた直後。
N◎VA三合会から女のもとに連絡があった。
ジミー揚からだった。
どこまで、情報を知っているのか、どこまで情報を足で稼いだのか。
聞かれたままに、答える。
「出来るだけ手をだすな、事を穏便にすませたい」
話を聞いた、揚は女をそういって制した。
「…ええ、もちろん研究員を追って千早が動くでしょうし、私が得た感触ではイワサキやほかの組織、そして、フリーランスも…私が派手に動かない方が得策でしょうね……」
奇麗な長髪をかきあげながら、女はそういって微笑んだ。
フィールドワークを好む、女を知ってか知らずか、揚はこう付け加える。
「…あまり、王に心配をかけるなよ」
自分の養父たる大班の名前を出されては、いかな女とて自重せざるをえない。
「わかりました、もし、見かけたとしても見張るだけにしておきます」

偶然とは、恐ろしいものだ。
西江樓で昼食を摂ろうとして、中華街を歩いていた女はたまたま、ブラスコの姿を見かけ、こうして身を潜めながら、見張っている。
わずかに装飾を施した、紺色の人民服と白手袋といういでたちは、中華街で食事を取るのには少々地味だったが、こういう事態になっては好都合というものだ。長い髪も帽子の中に隠している。
ハウンドのデータベースからカーマインに関す情報が盗まれたと聞き、まさかとは思っていたが…。
「このままでは、あの殺人が大暴れして穏便どころじゃなくなるわね…何か手を打たなくては……」
女はそうつぶやいて鼻にかけた丸眼鏡を直し、息を凝らしながら、周囲を伺う。
よくみていると自分と同じように、赤い血染めのコートを見ているものが何人かいた。
その中に無謀にもカメラを構えようとしている女性がいるのを見つけると、女は眉をひそめる。
「…報道されては、たまらないわね……」
死角づたいになんとかいけることを確認すると女は、その女性のもとに動こうと視線を動かす。
その時だった。

「Paradise.さあ、狩りのはじまり、この街はオレの楽園だァ。」

動こうとした女の姿を見つけたらしい血染めのコート─カーマインが女に気がついたらしく、その視線
が、女の視線とあったのは。
むせ返るような血臭。強い殺人の快楽に魅せられた狂気の瞳。
ぞくり、と全身が総毛だった。
だが、同時に久しく忘れていた“興奮”が女の全身を包む。
この男は、私を楽しませてくれるだろうか?
興奮している全身に呼応するように、左の紅の義眼のあたりの刀傷が、うっすらと、浮かび上がる。
一撃でしとめきれるか?そうでなくては自分とカーマインの間には、技量の差がある。
(逃げろ!逃げなければ殺される!)
残った理性が、女─秦 真理(シン・チャンレイ)に逃げる事を進める。
だがどうやって逃げるというのだろう?
爬虫類めいた笑みをうかべて、カーマインがこちらを見ている。
楽しもうぜ!といわれた気がして、真理は、 IANUS
UにオメガR・E・Dの起動を命令していた……。

“Alea jasta ist” 犀は投げられた──

 [ No.40 ]


ト−キーは見た(笑)

Handle : 久高 風海香   Date : 99/04/27(Tue) 18:45
Style : トーキー◎=マネキン●=カリスマ  Aj/Jender : 20/female
Post : フリーランスのトーキー


人の叫びが聞こえた時慌てて店から出てくると、
血のように赤いコートをまとった男が黒服の男と向かい? っていた。
赤いコートをまとった男の傍らにはできたてと思われる黒服の男(多分相手の仲間とも思われる)が転がっていた。
無意識にIANUSのレコーダーと職業柄いつも持ち歩いているカメラを動かす。
そしてポケットロンにダイアルを書けしながら二人から見えないように隠れる。

数回のコールの後、一人の男が出た。
『もしもし、何の用だ?』
「風海香です。
今ヨコハマLU$Tにいるんですけど、ちょっとこれ見て下さい。」
と言ってちょっと前の映像を見せる。
『ん??』
「赤いコートの人どこかで見たことがないですか?」
とそこまで言った瞬間、
「バシャア」と水のような音が聞こえ話を中断する。
そこには赤いコートの男の足元に黒服の男が何かに切り刻まれ倒れていた。

赤いコートの男はぞっとするような笑みを浮かべている・・・

「三田さん、アイツの素性を調べて下さい。
私はヤツの後をつけます。」
「お、おい、風海香?
奴は・・」
三田の返事も聞かずにポケットロンを切る。
彼女は無謀な事に彼の様子をカメラに収めようとしてもっと
近くの建物の影に隠れた。

http://www.trpg.net/user/kazemorito/index.html [ No.39 ]


悪寒

Handle : 十六夜冬也   Date : 99/04/27(Tue) 11:40
Style : フェイト◎、マヤカシ=マヤカシ●   Aj/Jender : 16/male
Post : 星涼学園高等部探偵部員


「へえ、この街、中々面白い匂いがするなあ」
少年はそんなことを呟きながら雑踏の中を歩んで
いた。彼の名は十六夜冬也。腰まで伸ばした銀髪、神秘的な容貌、かなりの美少年だ。その眼は面白そうに周囲を観察している。
学校の単位は大方とってしまったし、最近は探偵部の方にもろくな事件がない。暇を持て余してぶらついているうちに、LU$Tまで来てしまったという寸法だ。
「食事でもするかな・・・おや?」
何か妙な気配を感じ立ち止まる。常人ならば気にも
止めないほどの微少な違和感。だが、異能の力を持つ
十六夜にとってはそれで十分だった。
「姿なきモノ達よ、我にその真の姿を見せよ・・・」
口の中で静かに呟く。それと共に金銀妖眼が光ったのは気のせいだろうか。その眼はアストラルの世界をさまよい始める。次の瞬間・・・
「・・・っツ!?」
十六夜は息を呑んだ。
真紅の血、漆黒の瘴気、それらのイメージがおそろしいほどに鮮明に浮かび上がる。そして何より・・・ぬめった爬虫類の様な不気味なイメージ。その姿はぼやけ、明確に認識することは出来ない。だが、その恐ろしさははっきりと、余りにもはっきりと解る。
「一体、何が始まるんだ・・・」
そう呟く十六夜。彼がそのイメージを見たときと、千早のエージェントらが惨殺されたのはほぼ同時刻だった・・・

 [ No.38 ]


The Snake

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/04/27(Tue) 02:01
Style : カゲ●◎・カタナ・ニューロ  Aj/Jender : 28歳
Post : ?


「ゴトッ」
アタッシュケースが一瞬身震いするように動いた。
手をのばしていた千早エージェントの動きが一瞬止まる。
「まさか?まだ起動していないはずだ・・・」
自分に言い聞かせるように、かすれた声が黒服の口から漏れた。
まるで、それがあらゆる災厄から自分を守ってくれる呪文でもあるかのように、何かにすがるような声音だった。
しかし・・・・
「BINGO!おまえの考えは正しいィ。」
彼の懸念を肯定する無慈悲な声が、突然そう告げた。
その声は彼の背後、男の死体を調べていた相棒の方から聞こえてきた。
それはつまり、彼の死を意味する。
凍えるような死の予感と頭の中で激しく打ち鳴らされる警鐘とにさらされながらも、男のプロフェッショナルな部分は、冷静に状況を把握しようと努めていた。
「大丈夫だ、この辺りにはオレ達の他にも数十名の実働部隊が配置されているはずだ。そう・・罠にはまったのは、ヤツの方なのだ。」
しかし、そんな彼の最後の望みさえ一瞬で絶たれた。
「SORRY.この辺にいるお前のお仲間達は、すでに・・・いや、たった今死んだァ。」
声はまるで何でもないことを告げるような軽い調子でそう言った。
そして、急激に濃度を増した血の匂いがその言葉を肯定していた。
「オ゛オ゛オ゛オ゛」
刹那、機械のように冷静だったエージェントの中で何かがはじけた。
獣のような雄叫びをあげると、一挙動で振り返り銃を抜いた。
そして、彼は見た。
むせ返るような血臭の中、無数の肉塊と化した相棒の傍らに立つ、男の姿を。
血染めのコートを着、先ほどまでアンソニー・ブラスコと呼ばれていた男を。
“ザ・スネーク”
その執念深さと残酷な殺しの手口から彼はそう呼ばれ、恐れられていた。
今や、その容貌は爬虫類を連想させる面長な顔立ちへ、頭髪は逆立った短い赤髪へと変化をとげていた。
「Go to Hell.さあ、お前も地獄の門の前で順番待ちをしてこいィ。ダイジョーブ。じきにたくさんのクソ野郎どもが後を追ってくるから寂しくは、ないィ。」
カーマインはそのハンドルに相応しいゾッとするような、笑みを浮かべそういった。
それが、千早エージェントの見た最後の光景であり、最後に聞いた言葉だった。
「バシャア。」
数百本におよぶ超極細ワイヤーカッターにより切り刻まれた黒服の体から、まるで土砂降りの雨のように 大量の血液が辺りに飛び散った。
「Paradise.さあ、狩りのはじまり、この街はオレの楽園だァ。」
悪夢はまだ、始まったばかりだった。

 [ No.37 ]


Stray hound koming out

Handle : “光の弾丸”静元星也   Date : 99/04/27(Tue) 00:22
Style : イヌ◎,マヤカシ,カブトワリ●   Aj/Jender : 22/Male
Post : ハウンドN◎VA本部生活安全課


「銃声?」
 静元星也は振り返った。それとも爆竹の音だろうか。N◎VAの中華街で、よく間違えたように。だが今のは、対サイコ部隊に所属していた頃によく聞いた音だった。飽きるほどに。
 勤務時間外でのヨコハマLU$Tは初めてだった。ハウンドのヨコハマ支部の用事は終わったし、東教官にも挨拶できた。命の恩人であるEVE先生の夫は、聞いた通りの穏やかな人物だった。
 N◎VAに劣らぬ犯罪多発地域であるヨコハマLU$Tにはまだ関東軍は駐留していない。バウンティハンター制度もあり、ハウンド支部は最終抑止力として精鋭を揃えている。他人の庭で下手に走るのはまずいだろう。
 だが――星也は何か引き寄せられるものを感じていた。一見、N◎VAのものと変わらぬように見える中華街。だが、LU$Tの街は何かが違った。輝く超新星の影に紛れた街。多くの欲望が渦巻く街。
 好奇心旺盛な自分の姉ならこんな時、喜んで駆け出してゆくのだろうか。
 星也は歩みを速めた。エビチリの広告がはためく店を抜け、車道の方へ。人だかりができているようだ。服の下のハウンドのバッヂを取り出せば人も散るだろうかと一瞬思ったが、それはやめた。
 星也にとってのこの黄金の猟犬のしるしは、人を従わせる便利な道具ではなかった。言うなればそれは――自分の誇りのひとつだった。
「もしもし財団本部、これより帰還‥‥きゃっ!」
「あっと失礼!」
 前を見ずに歩いてきた黒服の若い娘と衝突しそうになり、彼女の持っていたタップが宙を舞う。もう少しでそばの高級セダンのガラスにぶつかるところだった。
「はい、大丈夫ですか?」
 娘は礼を言うと、同じような格好をしたクグツの男2人と共に雑踏の中に消えていった。
あのサングラスはない方が可愛いのに、と星也は一瞬他愛も無いことを考えた。
 高級セダンの運転手が渋い顔をしてこちらを見ている。日本人ではない。この車はヌーヴかブリテンの人間のもののようだ。
 星也の目が後部座席に移った時、この車の主が視界に入った。薄いシェード越しに、冷たい翡翠の瞳が若い巡査を――迷える猟犬を見つめていた。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/nova.htm [ No.36 ]


“片腕”

Handle : “狂える車輪” アジーム   Date : 99/04/26(Mon) 21:00
Style : カゼ◎● レッガー=レッガー  Aj/Jender : 48/♂
Post : イエローキャブカンパニー"Go to Heaven(GtH)"


「騒がしいな。ま、ヨコハマらしいといえばそれまでだが」

昼飯にエビチリを平らげたあと、食後の茶を飲みながらアジームはそうこぼした。
テーブルの向かい側にはこの西江樓主人、揚が座っている。
かつてはN◎VA三合会において辣腕を奮ったこの男も、今はこの中華料理店の主におさまったかのように思える。しかし齢 80を数えるこの主人の瞳からは、今も現役さながらの気を感じるのは気のせいだろうか?

「それで、俺に頼みたいというのはなんだい? いまさら引退したアンタから何か頼むようなことがあるのかい?」
「まあそう言うな。わしとてもう面倒事に捲き込まれるのは勘弁したいのだがな、N◎VAとヨコハマのお偉方から頼まれたら嫌とも言えまい。……中華最高陰陽議会も絡んどるし、噂ではヴィルヌーブも動き出したそうだ。なるべくなら穏便に、三合会は直接関与しない形で事を進めたいそうだ」
「穏便に、ねぇ……」

茶化したアジームのセリフに、揚は真面目に応えた。この男に会うのはこれが初めてだが、アジームの仕事ぶりについてはN◎VA三合会のジミー揚から聞いているようだった。
少し間をもったあと、揚は切り出した。

「あるものを奪取して欲しい。黒のアタッシュケースに入った、ある男の片腕だ」

http://www.dice-jp.com/ys-8bit/ [ No.35 ]


“照準”

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/04/26(Mon) 02:00


見えた。
前を走る車・・・
向かう方向は・・・新山手。
この方向に血の匂いは・・・ある。
(追ウ・・・)
さらに駆ける。駆ける。駆ける。
風のように駆ける。駆ける。駆ける。
時速・40km。改造された四肢がきしみ、さらに加速。
タクシーに追いつかんばかりの早さで、煉は駆ける・・・
一路、新山手へ・・・

 [ No.34 ]


“彷徨”

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/04/24(Sat) 14:00


血の匂いを追って駆ける。駆ける。駆ける。
大地を踏みしめ、疾風のように駆ける。駆ける。駆ける。
道端の死体まであと50m。駆ける。駆ける。駆ける。
(死体・視認。血臭・確認)
IANUSが告げる。
ミラーシェイドの男たちの脇を駆け抜ける。やつらは気にしない。血の匂いがしない。
男の死体を確認。死因は腹の銃創。
それを見つめて・・・
急に立ち上がり周囲を見回す。
何かを嗅ぐ。嗅ぎ付ける。
(ムコウダ・・・)
なにかが教えてくる。
なにかに従う。目覚めてから、この聞こえてくる声に従って間違えたことはない。
(血ガ・・・欲シイ・・・)
吠えて・・・走り去った。一陣の風のように。

 [ No.33 ]


パペット

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/04/24(Sat) 13:10


「ニィハオ(お元気かしら?)」
そう言いながら、黒髪の美女が“西江樓”に入ってくる。
ウェイターの一人が、それを見て声をあげた。
「いらっしゃいませ!」
駆け寄ってくるウェイターに、女は微笑んだ。
「ひさしぶりね、周文。ヨコハマはどう?」
「いい街ですよ。新しくて、活気があって、賑やかです……ところで、こちらにはお仕事で?」
「ええ、まあ、ね……なにかオススメはあるかしら」
「小包籠はどうです?」
「じゃあ、それにするわ」
小走りに厨房へ戻るウェイターを見送ってから、ルージュは窓の向こうの街路に目をやった。
道ばたに倒れている死体。そして、立ち去ろうとするミラーシェイドの男たち。
(……あれか)
黒い瞳が、パペットたちを映し出す。
人が三人集まれば、派閥ができる。
自分は千早の人間、彼らも千早の人間。だからといって、単純に仲良くできるわけではない。
(さて、何をたくらんでおいでかしら……?)

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.32 ]


Man hunt

Handle : 黎文景   Date : 99/04/23(Fri) 03:50


「華僑系のツテをたどったんか……」
 赤と黄色の色彩が目立つ街角で、黎文景(レ・ヴァン・カイン)は周囲を見渡した。
 細身の長身、浅黒い精悍な顔立ち。ダークグレイのスーツに身を包んだ姿はビジネスマンにしか見えない。
 しかし、口元から洩れる独り言は、M○●Nのニューロタングだった。
「ちょこまかと逃げ回りよって、今に見てけつかれクソガキめ」
 カインの仕事は、M○●Nの債権代理執行人。借金の取立屋だ。どこまでも追跡して金を集める。

http://www.teleway.ne.jp/~ikotom/ [ No.31 ]


嫌いじゃない

Handle : ”神速”六部 奈子   Date : 99/04/22(Thu) 20:59


 ヨコハマ中華街の雑踏。様々な人が行き交う中、長い黒髪を持つ和風の美女が男と共に歩いていた。肩下まである黒髪と少々きつめの目。凛とした雰囲気を漂わせている。
 隣の男が北欧系で、少々疲れ切った印象を与えてるのとは好対照だ。
 彼女の名は、六部 奈子。喫茶店で意気投合した男と共にヨコハマまで足を伸ばしたのだが・・・
 ふと隣の男に目をやる。
「…ねむぃ…ひもじぃ…」
 男があげた情けない声。
(少し無茶をさせたかな?)
 心の中で苦笑する。
 N◎VAからLU$Tまでノンストップの強行軍。隣の男には堪えたらしい(笑)

「せめて『ひもじい』ぐらいは解消するか? ここの辺りの店はどこもいけそうだぞ。」
 笑いながら、そう言おうとした。

 が、言えなかった。
 銃声、悲鳴、そして・・・・血の臭い。
 「女」であった奈子を一瞬「カタナ」に引き戻すには十分すぎる「モノ」
 それが、奈子の言葉を押しとどめた。

 だが、顔色ひとつ変えずに隣の男を見る。

 一瞬だけ『狼』を見た。

 さも「そんなモノには興味はない」という顔を作る男−ウェズリィ−に、奈子は言った。

「気になっていないか?
 追ってみるか?・・・・そう言うデートも、嫌いじゃない。」

http://www.trpg.net/user/reakweb/ [ No.30 ]


欠片

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/04/22(Thu) 15:37


「…ねむぃ…ひもじぃ…」
 一体何が不満なのだというのだろう、この若者は。茶色の髪、白い肌、蒼い瞳のいかにも北米系の顔立ちをしているこの男、隣に美女を連れて歩いている。しかし、妙に疲れ切った貌。無理もない。喫茶店で意気投合した美女とどういう訳かデートということに相成ったが、彼はここ二日まるで寝ていない。安い報酬で引き受けた、不倫を疑われている男を尾行するという仕事で。仕事が選べるほど貧乏探偵は楽じゃないのだ。
 しかし、この奇妙な光景を彼を知る者が見たら驚くだろう。
『好みじゃねぇんだ、ヨコハマはよ』
 そううそぶき、彼は普段はヨコハマには滅多に足を踏み入れない。
 しかし、今、白昼の中華街に彼はいた。そこで飛び込んできたモノ…。
 聞き慣れた銃声(ウタ)、ざわめく群衆、走り去る車。いつもの硝煙(カオリ)。
 彼の疲れ切った貌が一瞬のうちに変わった。そう…獲物を狩る『狼』の表情。しかし彼の表情はすぐ元のだらけた物に戻った。今日はデート、今日は休暇。疲れることはしたくない。したくない…はずなのだが…。
『なにやってんだ?こいつら』
 先ほど一瞬だけ目に留めたタクシーの女。そして死体をまさぐるミラーシェイドの男達。普通の者であるなら忘れてしまう些細な出来事。だが彼の頭脳にはその光景が鮮明に残っていた。全ての『真実』は当事者が気づかずに落として行く細かな欠片の組み合わせ。彼はその事を頭で巡らせていた。

 [ No.29 ]


exist in shadow

Handle : "Load of Minster" ユージーン   Date : 99/04/22(Thu) 04:40


「困ったな」
薄いシェードのかかった窓から車外を眺めていた人物は、視線を手元に戻しあまり困ってもいない様子で呟いた。20代後半ぐらいだろうか、濃い金茶色の頭髪にブリテンの湖水地方にある湖のような翠の瞳が、貴族然とした彼の雰囲気と見事に調和していた。手の中にある合成紙の活字を追う翡翠の瞳には、そこから読みとれる事実に特別な感慨を覚えているような光は皆無であった。今日のTV欄を見て、目を引くものが何もない、といったような様子に見える。
白昼の中華街、当然のように路肩に寄せられたセダンの中でほんの少し前、彼は一発の銃声と走り去る車のエンジン音、そして複数の人間が駆けてくる音を聞いた。そして眺めていた。それに重なる寸劇を。
「どうなさいますか、ユージーン様」
運転席に座った男が後部座席で新聞を読んでいる青年に声をかけた。穏やかそうな風体で、顔立ちもそれに相応しいものだが、今その薄い青の目は油断なく辺りを観察している。出来れば早くこの場を去りたかった。主人をこんな装甲の薄い車にいつまでも乗せていたくはない。
「・・・お前は早く帰りたさそうだな、アル」
「ええ、一刻も早く」
ユージーンは活字を追うのをやめ、思わず苦笑した。執事として、ボディガードとしてアルバートは実に有能だが、有能すぎて時々扱いにくい。
「暫くはここであのミラーシェイドの二人組を観察だ。このまま連中がまんまと中華街を出ていけるか、それとも」
すい、とユージーンが骨ばった長い人差し指をこめかみに当てた。手は、拳銃の形。まるでデスサイズではなく、ガンをもってやってきた死神のように。
「土に帰り、審判の時を待つ眠り人となるか。ああ、でもこんな時代じゃ土に帰ることは難しいか」
「死んでしまうのはた易いです。軽いトリガーが引かれてしまえばあっと言う間ですから」
言外に早くここから出発したいという意志表示を交えてアルバートがとんとんとハンドルを叩く。
「仕方ないだろう、今回の依頼は大恩あるヨーク大司教からなんだから」
「・・・大司教の名前を出しても、免罪符にはなりませんが」
シェード越しからでも、外は白々しいほどの天気で先の出来事とは全く無縁なように辺りを明るく照らしているのがわかる。
世はすべてこともなし、といったのは誰だったか。狭い車内で窮屈そうに脚を組み替えながらユージーンは醒めた思考で考えた。
「そう急くな。動くのが奴等・・・一つの企業だけならいい。他の組織や個人が動くかも知れない。そういう連中が今を逃すとは考えにくい。あそこの二人組の親玉と、大金はたいた話し合いをする気がある私たちのような連中以外は、な」
寸劇が戯曲となるかオペラとなるか、全てはこれからだ。
「それにしても、先ほどの女性、可哀想に」
「ブラスコーに接続したかたですか?」
「美人だったな」
「・・・・・」
主人のいつもの軽口に、執事は軽く溜息をついた。
「必要となれば、人材は幾らでも確保するさ」
溜息の理由を取り違えたユージーンが新聞を畳みながら見当違いな言葉をかける。ぽん、と新聞を横に放り投げ、彼がいつも座るシートに比べて格段に座り心地のよろしくないシートに身を預けた。
今、ユージーンの耳に届いているのは、耳障りなノイズを交えたラジオから流れるニュース。伝えている内容はエールで起きたテロ事件についての続報だった。
『・・・目撃された”スネーク”カーマイン・ガーベラの関与を当局は全面否定しており・・・』
「そろそろ企業警察でもくる頃か・・・」
一人ごちて、訳もなく空を見上げた。光に溢れているはずの空は、社内にいるユージーンにとって透明な暗さを持って広がっている。
冷たく乾いた笑みを浮かべるミラーシェードによく似合う風景だ、と思った。
冷たく乾いた、満足げ笑みを浮かべていた二人はそこで徐々に広がる赤い流れを気にも留めず、靴底を鳴らし踵を返した。

 [ No.28 ]


Moriturus te saluto. (死へ向かう者からあなたへ)

Handle : アンソニー・ブラスコの遺言   Date : 99/04/17(Sat) 10:15


メレディーが観たモノ。
いや、観るだろうモノ。
彼女のメモリーに刹那刻まれた男の記憶。
それは犯罪者の心理に深く入りこみすぎたがために、その狂気の顎に捕らわれてしまった男の記憶だった。
男は強く願った。
彼に、いや、彼らに会いたいと。
会って、自分が今感じているものが彼らの中に存在しているという確信がほしかった。

男の前には無数の微細な命があった。
男はそこに黒い雫を落とす。
それはみる間に浸透して行き、やがて人の形を形成しはじめた。
そして、現れたモノは彼に手をのばした。
まるで赤ん坊が母親にするように。
しかし、ソレの愛情は通常のものとは違っていた、すなわち狂気。
のばされた手は想像を絶する力で男の左腕を根本から引きちぎったのだ。
男・・アンソニーの絶叫がこだまし、ノイズとなってメレディーの全身をかけ巡った。
しかし、彼女を震撼させたものは恐怖ではなく、死の間際にあってさえ、アンソニーが感じていたおぞましい恍惚感だったのだ。

 [ No.27 ]


新たな生け贄

Handle : 千早エージェント(トループ)   Date : 99/04/17(Sat) 03:14


LIMNETのエージェントが立ち去ったすぐ後。
アンソニーの死体の側にはダークグレーのスーツを着た男が2人立っていた。
2人は顔の大部分を大きめのミラーシェイドで覆っていたが、血なまぐさい任務を専門に行う者達がもつ、一種のオーラのようなものが彼らの素性を明らかにしていた。
彼らはつい先ほど女エージェントがいだいたウェットな感情とはまるで無縁な、機械的な動作でてきぱきと男の死体を調べていた。
「アンソニー・ブラスコを発見しました。・・・いえ、すでに死亡しています。何者かに射殺されたようです。」
もう一人がアタッシュケースを見つけ合図を送った。
「例のモノは無事のようです。・・・はい、ただちに本社の方に持ち帰ります。」
二人は顔をみあわせ、頷くと酷薄そうな笑みを浮かべた。

 [ No.26 ]


逃走

Handle : メレディー   Date : 99/04/16(Fri) 12:10


乾いた破裂音がメレディーの呪縛を打ち破る。

弾かれたように彼女はタクシーに近づき回り込んで先程まで男が立っていた場所を覗き込んだ。
黒く砕けたアスファルトの破片が散らばる側道に、泉の様に湧きあがり広がる赤黒い海の中で男がくず折れている。
更に近寄り覗き込むと、彼女を先ほど射付けていたその双眸は閉じ、絶望ではなく、安堵の様な安らぎに満たされていた。
「・・・ね、ねぇ。一体全体何なの?」
ゆっくりと人が死に向かう、何をも拒絶する尊厳の様な目に見えない壁が立ちはだかる。戸惑いながらそのそばにゆっくりとメレディーも屈み込んだ。

人通りがそれなりにあるにも関わらず誰も振り向かないのは良くある都市の情景だった。素性も知らぬ人の死になど立ち止まる事は出来ない時間がここには流れているのだろう。そうメレディーは静かに感じながら、奥歯をかみ締め、震える左手で男を揺さぶる。
しかし男の反応は期待していたようなものは無く、真っ赤で細かな泡を吹くようにもごもごと口を微かに動かすだけだった。
手首を取るが脈は途切れ途切れのリズムで返ってメレディーの焦燥感と不安を煽る。

ふとメレディーは、複数の足音が向かいの路地からこちらへと近づいてくる大きな音に我を思い出した。警戒とは無縁の、追う者達だけが立てる特有の足音だった。その音は嫌がおうでも耳に、体に感じる脅威だった。
メレディーは恐怖で膝を震わせながら、思い切ってこと切れようとしている男の口元に耳を寄せた
「何? 何が言いたいの!」
男の口元からは泡があふれ、その光も失われようとしている。
「・・ア・・・」
呟きと言うよりも単なる音にしかならない声の為、地面に耳を近づけるメレディーに嫌なほど近寄る足音が耳についた。
メレディーは耐え兼ねたように顔をあげ、ドアを開き乗車をうながすタクシーの運転手に向かって声を張り上げた。
「ちょっと! 中央区! わかる?」運転手は振り返りもせず、メレディーに応える。「・・・あぁ、知ってる」面倒な事は勘弁してくれと言わんばかりの口調で運転手がメレディーに言葉を返す。乗車拒否をしないと言う規則だけで開けた扉を閉めていないだけだった。
メレディーは執拗に食い下がった。
「中央区よ! Route5経由で行けばすぐじゃない! 出せる?」
メレディーは素早くWire&Wireを引き出し、LIMNETで開発中の身代わりのインターフェイスをかませた。更にシールドケーブルをインターフェイスから急いで引き出す。
インターフェイスのシグナルランプが明滅し、彼女に立ち上げ完了を告げる。
顔を運転手に向けたまま馴れた手つきで男の首元を探り、コネクト。こんな乱暴な接続には運と神技が必要だとメレディーは一人心の中で愚痴った。
[[ 何が・・・何が言いたいの? ]]
インターフェイスを通してフィルタリングされた彼女の声は男に届いているはずだった。
メレディーはインターフェイスが拾えないほど低くなる男の波長を敢えて自分では拾わず、インターフェイスに拾わせ、記録させるに任せた。

「乗るのかい、乗らねぇのかい?」
タクシーの中から声がかかると同時にインターフェイスを切り、メレディーは震えて言う事のきかない体を投げ出すように後部座席に身を突っ込む。迫る足音に彼女が耐えるにはもう限界だった。喘ぐようにメレディーは体を起こし運転手に叫ぶ。
「出して!」
厄介事から逃れたい運転手の姿を写し取るかのように、唸りを上げるシートにメレディーは強く押し付けられる。
運転手は一度も減速することなく中華街を出ようとしているようだった。
メレディーはゆっくりと後ろを振り返った。
先程の男の周りに幾人かの人だかりが出来ているのだけは、疾走する車が通りの角を曲がるまでの間、見つめる事は出来た。彼女は姿勢を直し息をつく。
ぎりぎりまで男に繋がれていたインターフェイスがフラットラインを告げる音をWireを通してメレディーを責め立てる。
メレディーは窓の外に風の様に流れて行く町並みをぼんやりと見つめながら、シートにそのまま身を預けた。
一体なんだったのだろう。
急き立てる危機感と恐怖がいつもの自分からは想像も出来ないような行動を彼女に強いていた。
未だ震えの止まらない膝を両手で押さえながらメレディーは誰彼ともなく呟く。
「ごめんなさい・・・私、何も出来なかった」
恐怖を感じるよりも彼女の中の底にある、不安を感じる軟らかな場所がささやかに彼女に罪悪感を告げる。
メレディーは血にまみれた左手を握り締めた。
[[ ごめんなさい ]]
切断する直前の自分の声が彼に届いたのかどうかメレディーは思い悩み始めた。
素性も知らぬ見ただけの相手の存在になぜこんなに感情が揺れるのだろう。思ったよりも自分が目の前の人の死に馴れてはいないのだと言う事を暫く忘れていたのだと自らに答えを返す。だが、それは偽りの答えで、本当は永遠に答えの見つからない迷路に自分がいるのだと言う事は感じていた。
「で、中央区の社の前で良いのかい?」
運転手の掛ける声で思索を止め、メレディーはゆっくりと深呼吸をし、あふれる涙をカットする。
リムネット・ヨコハマに足を運んだのはいつ以来だったろう。いつだったかの中央区のリレーシステム構築で応援に足を運んだきりだったはずだ。今思い出せば、ダレカンの大きな声も思い出にあって遠い。こんな時に・・・誰も居ないなんて・・・。
それにホンコンルーの「門 -ゲート-」を通して桃花源に送るはずだったデータディスクの受け渡しも遅れてしまっている。きっと、NOVAで待っているクーリエが痺れを切らすに違いないと、メレディーは溜め息を吐いた。
全てが後手に回ってしまっていた。
メレディーは顔を顰める。
答えをいくつも選べるほど彼女にはもう既にカードが残されてはいなかった。
「いいえ、中央区に行く前にROUTE5経由で・・・・新山手と言う所に行ってちょうだい」
両手で頬の涙を拭う。やるべき事、やってはいけない事。幾らでも彼女にはあった。
それに合わせ、身を急くような恐怖感がどんどん自分を隅に押しやり始められているのを痛いほど感じる。
「新山手よ・・・」

長い、長い、メレディーの一日が始まる。
それは、他の場所で多くの人々が既に始められていた最初よりも、幾らも遅れてのスタートだった。

 [ No.25 ]


退場。そして・・・・

Handle : アンソニー・ブラスコ   Date : 99/04/15(Thu) 01:30


タクシーがドアを開き乗車をうながす。
しかし、その扉が男を迎え入れることはついになかった。
突如鳴り響いた一発の銃声が男の時間を止めたのだ。
永遠に・・・
ゆっくりと崩れ落ちた男の周囲に、大量の血液が血だまりを形作っていく。
急速にそして確実に弱まっていく命の炎。
しかし男の顔に浮かんだのは、絶望ではなく安堵だった。
何者かから解き放たれた安らかな表情がそこにはあった。
支えを失ったアタッシュケースが甲高い金属音を路上に響かせる。
そして・・・・
それが合図であったかのように複数の足音が近づいて来た。

 [ No.24 ]


静止

Handle : 傍観者   Date : 99/04/14(Wed) 19:56


 風に舞った紙切れが突然空中で静止した、……ように見えた。
遅れて乾いた甲高い音が辺りに響く。そして道行く人々の時も
静止した。

 奇妙な静けさの中で男はゆっくりと崩折れた。

 路面に血だまりが広まる。それを合図に時は再び動き始めた……。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~soncho/ [ No.23 ]


“欠片”

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/04/14(Wed) 03:32


これはなんだ?
私の心に呼びかける、この衝動は。
心臓がどくどくと脈打っている。
この鼓動の早さは・・・ナニヲ・・・意味する?
血が沸騰スルようナ感覚に襲わレル。
なんの匂いダ?
血。血の匂イ。
血だ! 血が足リナイ! 血ダ!
不明者はあぎとを大きくひらいて息を付くと雑踏をかき分けて走り出した。
飢えた狼のように・・・。

http://village.infoweb.ne.jp/~fwkv3378/index.html [ No.22 ]


3 Shadowz notised, 4 Staj waz begin ...

Handle : ぼ〜いず(&が〜る) in Blakk   Date : 99/04/13(Tue) 23:47


 黒服の男女が覗き込んでいるのは、雑踏の一角に備え付けられたDAK端末だった。
「あっ、ホットスポットガイドがUpdateされてますよ!」
 はしゃぐ子供のようにコンソールを指差す女は三人の中で一番若い。踊るようにキーボードの上に伸ばされた繊細な指先は、明らかにこうした動作に慣れている事を示している――服の下に忍ばせた小型の銃を扱うことよりも。
「さすがはLimnet Yokohama‥‥速いな」
 横で呟く男の声は低かった。鋭い視線は、タップよりも、忍ばせた武器の類を扱う方が得意な種類の人間のそれだ。
「なになに、ベイブリッジは4月1週に照明装置の点検あり‥‥あらー、機会を逃しましたね」
「ああ。紛れて侵入するにはいい機会だったな」
「ライトアップされるんですね? さぞかし綺麗な夜景だろうにな‥‥」
「‥‥‥‥」
 一瞬の沈黙の後。一人悠然と構えていた年かさの男がようやく口を開くと、賑わう雑踏の方へ振り返った。
「さて、諸君‥‥どうやら舞台の幕が上がったようだよ」
 点々と続く赤い染み。淀んだ風に舞うニュースのハードコピー。その先で、1台のタクシーが赤黒い血の主を迎え入れようとしていた。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/nova.htm [ No.21 ]


いくつかのピース

Handle : NOVAスポより   Date : 99/04/13(Tue) 22:25


ルストを風が吹き抜けた。
アンモニアと硝煙とその他様々なモノを吹くんだイヤな匂いのする風だった。
風が一枚の紙きれを巻き上げた。
“NOVAスポ”
大きく印字された合成紙には、こう書かれていた。

現代に蘇ったフランケンシュタインか?
2年前に死亡したはずの殺人鬼、“ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ謎の復活。

 [ No.20 ]


雑踏の中で

Handle : メレディー   Date : 99/04/13(Tue) 12:50



ゆっくり通りへと繋がる路地を探し、あたりを見回す。

身体を急き立てるかの様な焦燥感に彼女はいらいらしていた。
守るべき時は自分で守るものだと渡されたP4が、彼女のコートのポケットの中で弄ばれる。
その黒鉄の冷たさは痛いほどにいらいらと弄ぶ数本の指を通して彼女を執拗に責め立てていた。

嫌な冷たさだった。
タップで両の腕を躍らせるあの軽快なリズムと感触は言うなればごく当たり前の日の光を浴びるかの様に、彼女にとっては本当にごく当たり前の事だった。
一体全体どうしてこの自らの手にタップではなく、黒鉄を触れさせなければならないのか。
こんな冷たさと触れ合いながら過ごせる程馴れたくも無いと彼女は一人愚痴る。
とにかく、早く見慣れた場所で身体を落ち着かせたかった。
身体に纏わり付く、昨日からの正体の分からない視線にはもういい加減嫌気が差し、それに急き立てられている自分を静めたかった。
LIMNETの広報処理課の人間には何も言葉をかけられなかったし、最近はどちらかと言うとおとなしい活動が続いていたはずで、ましてや自分が監視の対象になるような事は彼女には身に覚えも無かった。
運悪く、普段から気を許す他の同僚は殆どが北米へと発っており、会社にたまたま顔を見せていた逆瀬川に昨日からの不安を言葉にしてみてもいつもの凍った様な笑みが返ってくるだけだった。
「・・・不安か?」
「硝煙のにおいに無縁な女もいるのよ・・・・忘れた?」
肩をすくめるメレディーを見つめながら、逆瀬川は自嘲的な笑みで表情を崩してかえした。その笑みは男の習慣とも取れる癖だった。
手を挙げて終わらせ、社屋の出口へと足を進める。
逆瀬川はすれ違いざま、メレディーのポケットに素早く何かを放り、囁いた後足早に部屋を出て行く。メレディーはポケットに滑り込まれた重みと耳元で囁かれた短い言葉に驚いて振り返った。が、もう既に当の本人の後ろ姿が雑踏へと消えて行く所だった。
慌てて思い出したかのようにポケットの重みを探る。
その探る手に伝わるのは何度確かめてみても嫌な冷たさを放ちつづける無責任な鉄の感触だった。

焦燥感につられて幾度も思い出す帰り際の出来事を頭から振り払いながらメレディーは桃花源へと通じる香港路 -ホンコンルー- へと出ると額の汗を拭きながら半ば呆れながら雑踏を見回した。
このまばらなようで不意に混雑した雑踏へと変貌する人の流れは、一体どこから来るのか? それは彼女の尽きぬ疑問の一つだった。
ヴィークルの往来を避けながら通りを歩いて横断する。
が、通りの中ほどの分離帯で思わず立ち止まった。
「ガリッ、ガリッ」という耳ざわりな音があたりに響き、その音を引きずるかの様に、大きな金属製のアタッシュケースを持った男が自分と相対する方向へ・・こちらと向き合う様に通りを進んで来ているからだった。
男は道路の際まで来ると、苦しそうにあたりを見回していた。
やがてその視線は分離帯で立ち止まるメレディーに止まった。
男の目は半ば虚ろに中をさまよっていたが、その視線はまるで刃物で切り付けるかの様にメレディーの足元から頭の先まで巡った後、視線を合わせて見ているものを確かめるかの様に目を細めた。
そのおとこの風貌はごく変わりない、コートに包まれていたが、コートから漏れ出す雰囲気の様なものが自然と周りの人を遠ざけているかの様に彼女には見えていた。
やがて男の視線にメレディーが気付く。と、同時にメレディーの全ての体の動きが止まる。
注意を取られると言うよりも、縛り付けられたかの様に・・その男の双眸に射付けられた為だった。

最初無表情だった男は、一瞬、仄かな希望に崩れるが、すぐに自嘲的な諦めの笑みを彼女に見せる。
それは諦めなのか迷いなのか、戸惑いなのか、彼女には全く分からなかった。
メレディーは思わず突き動かされたかの様に分離帯から歩み出そうとする。
それに反応する様に、彼女から男は視線を外さず、大きめのコートを羽織りながら、苦しそうに大きく息を吐き、赤黒く染まったブルブルと震える手を上げた。
また、自然と身体が射付けられたかの様に動きを止める。
それと同時に間髪入れず、黄色に塗られたタクシーが彼女と男の間に流れるように滑り込んでくる。
「あっ」
慌てて一歩退く。
突き動かされて歩み出した自分を思い出し、タクシーを呼びとめた男の腕と視線を交互に見つめながら気恥ずかしさに胸に手を当てる。

改めて見る男の表情は生とも死ともつかない、自らの現状や行く末の裁きに、慄然としている。
住む世界の異なる気配にただ、彼女の身体は突き動かされるか、居付けられるかのどちらかだった。
「もう死ぬ事はなく、悲しみ、叫び、苦しみも無い」
いつだったか神父に教わった言葉が頭の中にこだまする。
死とそれに挑むかの様な姿に、彼女は畏怖した。
黙示録の言葉に抗い目の前に立つ男に何かの姿が重なったのかと自らをいぶかしむも、答えは見つからなかった。

止まったタクシーが男の前で扉を開け、乗車を促す。
メレディーはただ、戸惑い、男の赤黒く血に染まった腕と視線と車を交互に見つめながら立ちつく事しか、体を動かす事が出来なかった。

 [ No.19 ]


そして、運命の輪は回り始める。

Handle : アンソニー・ブラスコ   Date : 99/04/12(Mon) 19:50


男は大きな金属製のアタッシュケースを半ば引きずるようにして、通りを歩いていた。
彼が歩を進めるたびに、「ガリッ、ガリッ。」という耳ざわりな音をあたりに響かせているのだが、その足もとに点々とつづく不吉な赤黒いシミが周囲の人間に無関心を装わせていた。
大きめのコートを羽織ると、男は苦しそうに大きく息を吐いた。
そして、砂漠でやっとオアシスにたどり着いた旅人のようにブルブルと震える手を彼の前方のタクシーに向けて上げた。
そうして、運命の輪は密やかに回りだしたのだ。

 [ No.18 ]


ウェットなノイズに包まれて……

Handle : “狂える車輪” アジーム   Date : 99/04/09(Fri) 12:50


威勢のいいカケ声、ありふれた罵声、道行く人々の笑い声、どこからか聞こえる迷子の泣き声、あてもなくさまよう野良犬の遠吠え。
騒然とした人波の中を、アジームは器用にすり抜けながら歩く。


人ゴミは嫌いじゃない。
高層ビル群の林よりは雑然とした下町を、クールで小利口なクグツよりは馬鹿で憎めないレッガーをアジームは好む。どちらかといえばウェットよりな人間なんだろう。
人ゴミの中ですれ違いざまに当たる他人の肩や、罵詈雑言の喧騒に包まれている方が気楽に感じる。そこに人種や身分は関係なかった。
ウェットなノイズの中で暮らすウェットな人間なのだろう。


しばらくして右手に目的の中国料理店を見出した。
外見はオーソドックスで古めかしい造りだが、特にその周りにある中国料理店と違いがあるようには見えない。値段も高すぎず、安すぎずといったところか。

店先に置いてあるメニューディスプレイに浮かび上がったホロのエビチリは、燃え上がるような真紅に染まり、かなり辛そうだ。
山椒の匂いまで漂ってきそうだな、と思って見れば店先の扉が開かれており、その中からいい匂いが外まで広がっていたようだ。

「まずはチンタオビールとエビチリで昼飯とするか」
そう言ってアジームは唇を軽く湿らせ、中に入っていく。

店の柱には年期の入った彫刻で「西江樓」と印されていた。

 [ No.17 ]


Entrance of the New World

Handle : “麗舞”皇・輝   Date : 99/04/05(Mon) 12:36


 見慣れているはずの風景。交わされる懐かしい言葉。
そう、懐かしい。だが、ここはどこだ。
新しくて、懐かしい。そんな奇妙な形容が最も相応しい。
そして俺はこの街に確かに存在している。
それさえ認識できれば俺には十分さ。

 [ No.16 ]


新しい世界

Handle : “Lunatic Rave”MA∀   Date : 99/04/04(Sun) 00:24


 私は誰なんだろう? これは簡単なリドルだ。
俺は俺さ。
 ここはどこなんだろう? これもさほどは難しくない。
少なくともN◎VAやM○●N、ST☆Rではない。
じゃあどこだい? 日本の領土であることは確かだ。
・・・ここなら俺の道が見つかるだろうか?

 [ No.15 ]


寄り道

Handle : “機甲馬賊” 鶴来 夏音   Date : 99/04/03(Sat) 04:04


N◎VAに行く途中に訪れた街。初めて足を踏み入れる場所だが、
新鮮であり何故か懐かしくも思えた。
「美味いものを食べさしてくれるかしら?
M○●NやN◎VAと違う味の・・・・」
少しの期待に背中を押されながら、彼女は雑踏の中に足を進めていく。

 [ No.14 ]


“出現”

Handle : “叫殺者”来崎煉   Date : 99/04/02(Fri) 00:51


・・・ここはどこだ?
私は・・・煉。それだけはわかる。だが他のことは?
わからない。
人の声がする。食べ物のにおいも。
腹が減った。私は飢えているようだ。何か食べたい。

真っ黒い衣装に身をつつんだ狂気の乙女はゆっくりと立ち上がり、チャイナタウンの雑踏の中に消えていった。

ワタシハ、ダレダ?

http://village.infoweb.ne.jp/~fwkv3378/index.html [ No.13 ]


“Melty Doll”

Handle : 石見沢まどか   Date : 99/04/02(Fri) 00:14


「あたし?今ね、LU$Tにいるの。これから、いろいろ見て回ろうと思って……。
うふふ…そうね、今度いっしょに遊びに行こ?」
中華街の入口の付近、携帯電話でおしゃべりをする、一人の女学生の姿があった。
あどけなさを残した舌足らずの彼女の口調は、電話の向こうの男に庇護欲をかきたてた。
だが、すぐにでも逢いたいと未練がましく電話を長引かせる相手の男を、
彼女は舌先三寸で言いくるめ、軽いアポを取る。
そして偽りの、しばしの別れの軽いKISSを送り、K−TAIを切った後、
彼女はヨコハマ中華街の雑踏をゆっくり歩み始めた。

彼女は、久しぶりに胸を踊らせていた。
そこでは、日本軍に押しつけられた秩序など存在しないかのようだった。
今のN◎VAでは決して味わえないような、危険な空気に満ち溢れていた。
この町でどう「遊んで」みるか、どんな自分の「巣」を作ろうか……
それをのびのびと想い描いていると、不意に笑みがこぼれた。

彼女の持つ肢体には、世の男共に犯罪を誘発させかねない要素が、
十分過ぎるほどに満ちている。
それこそが、彼女の持つ最大の武器であり、それ一つで世の男共と金を操ってきた。
女学生とは、彼女の隠れ蓑。
一見清純そうな不良少女は、悪徳の街を舞台にゲームをする。
彼女の名は、石見沢まどか。“Melty Doll”の二つ名を持ち、ニューロエイジを彷徨する子悪魔……。

 [ No.12 ]


嘩!(あれっ!)

Handle : “賭侠”劉 家輝   Date : 99/04/01(Thu) 23:31


・・・背広に丸いサングラスの華僑らしき男が一人、中華街を歩いている。

「・・・ココの中華街には、頻繁に来てる筈なのに、何故か新鮮な感じがするね・・・」

そう呟くと、屋台で買った刈包をパクつき、辺りを見渡す(^^;)(;^^)

「・・・妙に知り合いが多い気がする・・・気のせいか?(−−;」

・・・最近、顔が広くなったのか、自意識過剰なのか、自分でも解らぬ劉であった。

 [ No.11 ]


「え〜と、ここは・・・」

Handle : 久高 風海香   Date : 99/04/01(Thu) 17:40


ポケットロンを片手にショルダーバックを肩にかけ中華街の道中で一人の女性が立っている。
「ここどこなの?もしかして迷っちゃたのかしら??
また三田さんやアインに怒られるぅ〜(T−T)。」
おもむろにポケットロンをしまうと
「データが無いってことはここはヨコハマLUST??
なら迷ったついでにいろいろ見回ったほうがいいわね。
? 、これおいしそう♪」

迷子の表情は消えてすぐ側の食堂に入っていった。

http://www.age.ne.jp/x/y-tomori/index.html [ No.10 ]


昼の喧騒に混じる影...

Handle : ぼ〜いず&が〜る in Blakk   Date : 99/04/01(Thu) 12:51


昼の中華街。昼食場所を探す企業人たちに紛れるように、辺りに
目をやりながら歩く黒服の男女がいた。
工作員A「ふむ…この猥雑な光景は、NOVAの中華街と変わらんな」
工作員B「班長、遂にヨコハマLUSTの謎が明かされましたね。
これは奥が深そうだ…調査のし甲斐があるというものです」
工作員C「私に考えがあります。ちょっといいですか?」
工作員A「なんだね? 端末からLIMNET Yokohamaに侵入するか?」
工作員C「せっかく来たんだから、まずは食事ですよ! あら、LIMNETの情報サービスにはまだお勧めの店が載ってないわ。
えー、せっかく美味しいものが食べたかったのになー」
工作員A&B「……」

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation.htm [ No.9 ]


「Ha! 気がついてみりゃ、まあ慣れたもんさ」

Handle : “狂える車輪” アジーム   Date : 99/04/01(Thu) 02:17


(……まあ中華街なんてのはどこにでもあるものだしよ。
 俺の生まれ故郷の南米にだってあったしな。
 だが、中国人って奴は、なんかイケすかねぇ。
 口元が笑ってても目が笑ってない奴が大半だからな……)

 ぼんやりとそんなことを考えながら、アジームは昼の中華街を歩いていた。
 時刻もちょうどランチタイムをまわった頃。露店や食堂からは美味そうな匂いが流れてきて、道行く人々の胃袋を刺激する。かくいうアジームも先ほどから口内に溢れ出るツバを飲み込みっぱなしだった。

「ま、深く考えても始まらねぇしな」

 三合会と関わるBizの思考は頭の隅に追いやり、まずは腹ごなしでも、と再びレストランや露店の建ち並ぶ通りへと踵を返した。

http://www.dice-jp.com/ys-8bit/ [ No.8 ]


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