ヨコハマ中華街&新山手

[ Chinatown BBS Log / No.233〜No.280 ]


天使消失

Handle : バージニア・ヴァレンタイン   Date : 99/10/13(Wed) 20:56
Style : マネキン◎●・マネキン・ハイランダー   Aj/Jender : 17歳/女
Post : ?


来方の料理に空腹を満たされ、やや落ち着きを取り戻したのか、同世代の少女達はお互いのことを話し合っていた。
「・・・それ以来、私にとってFly me to The Moon.という言葉は大切な言葉になったの。だから将来、NASAに入って宇宙飛行士になるのが夢なのよ。」
「バーニィにとって月へ行く事は目標であり、夢なのね。いいなあ。」
バージニアの話に神妙な顔つきで聞き入っていたモリーが、うらやましそうにいった。
「うんうん。男は当てにしちゃだめよね。」
遊衣が意味不明な相づちを打つ。
「あ・・今なら、降りるのは無理でもシャトルで月の近くまでは行けるんじゃないかな。」
「え?」
「ホント?」
「う・・ウン。多分。」
二人にいっせいに顔をのぞき込まれて照れたように遊衣が頷いた。
「じゃあさ、今度みんなで行こうよ。」
「いいね。」
「素敵ですね。」
どうやらこのグループのリーダー的な位置に納まったらしい遊衣の提案に、皆が顔を輝かせて同意した。
「真理さんや沖さん、それにお世話になった人達も誘ってみんなで行こう。」
バージニアの言葉を耳ざとく聞きつけた来方が、厨房から顔を出して「オレも誘って。」というように自分を指さした。
「しょうがないなぁ。」
バージニアが微笑む。
そんな少女達の様子につられたように沖と九条も口元をゆるめた。

たわいのない会話。
本来なら、彼女達はこういったあたりまえの出会いをすべきだったのではないだろうか。
探偵ゆえの業か、あたたかな空気の中、沖は漠然とそう感じていた。
恋や流行や、そんな何でもない事を熱心に話すような平和な時間を過ごす権利を有しているはずだったのだ。
今のバージニアは本当によく笑い、コロコロと表情が変わる。
まわりを温かな雰囲気にするムードメーカー的な素養をもっているようだ。
今まであまりに急な事が続いていたせいで隠れていたが、こっちが本来の彼女の姿なのだろう。
本当は、活動的な娘なのだ。
沖は、まぶしいものを見るように目を細めた。
彼女達は今、とても普通でそれでいてまぶしく見える。
しかし、それは危うい輝きだ。
彼女達の影には常に死神がデスサイズをたずさえ潜んでいる。
ほんの瞬く間に少女の笑顔を哀しみの表情に、輝く瞳を涙で濡らす可能性が合わせ鏡のように存在しているのだ。
だから美しいのか。
この笑顔を守るため、と正義感を振りかざすつもりは毛頭ない。
しかし、このあたたかな、遠い昔に忘れてきた雰囲気にしばらく浸るのも、案外悪くはないな。
探偵はそうひとりごちた。
と・・・
異変が起きたのはその時だった。
最初、沖は自分のセンチメンタリズムが産んだ幻覚だと思った。
しかし
「バーニィ・・」
モリーの笑顔が凍り付く。
バージニアの体が透けていた。
そして淡い燐光を放ち始める。
「助けて・・」
バージニアがイヤイヤをするように顔を振った。
「!」
モリーと遊衣、目の前にいた二人が最初に行動を起こした。
バージニアの体に手を延ばす。
しかし。
その手が空を掴む。
まるで光の粒子で形作られていた幻のように、バージニアは彼女達の眼前で溶けるように消えた。
災厄の街に舞い降りた赤毛の天使は、来た時と同じように再び彼らの前から姿を消したのだ。
「バーニィィィィ!」
モリーの絶叫に、しかし答える者は誰一人としていなかった。

 [ No.280 ]


“Alea jasta ist”─壊れた眼鏡

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/13(Wed) 20:06
Style : Mistress◎Regger Katana●   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


 余りにも深い感情の奔流が、真理の全身を駆け巡る。しかし、思考だけは奇妙なほど冷静だった。
 倒れふした死の卿の傍ら、真理はゆっくりと立ち上がる。
──その瞳に宿りしは、深い哀しみ。

 IANUSUを使ってシルバーレスキューへと連絡を入れた。
 死の卿が助かるかどうかは、わからない。間に合えばどうにかなるだろう。しかし…間に合わなければ?
──死の卿を死地へと誘ったのは自分なのだ。
(壬生が狙っていたのは私ではないわね。恐らくはじめからアレックスさんを誘っていた……)
 圧倒的な実力差、破壊力。どれもが真理の想像を超えていた。その“力”に恐怖さえ抱いたのだ。
──生かされている。真理は軽く顎に手をあてて、冷たい思考を巡らす。では、何故?
(バージニア・ヴァレンタイン……)
 間違いなく、日本軍大災厄編纂室の狙いは、バージニアの“確保”だろう。
 そして、その為に、真理を利用しようというのだろう──昏く、深き深遠の先へと誘うことで。
「……それも悪くないかも、しれないわね…」
 ひとりごちて、真理は呟く。凄惨ともいえる昏い笑みを宿して。
 たとえ、踊らされていても、許せるはずがないのだ、あの男を。
─その紅の瞳に宿りしは、氷の炎、かつてない闘志。

 どこかで着信音が聞こえた。真理は我にかえり、あたりを見回した。闘う前に邪魔だからといって投げ捨てたハンドバックが、奇跡的に瓦礫の影にあった。かけよりハンドバックを空ける。
 SC-8の6番、沖 直海の与えたチャンネル。着信─“情報”のファイル転送。
──行かなければ、征かなければ。真理を待つもの達のところへ。
 そして、真理が自ら選択したように、バージニア達にも選択を求めなければならない。
 それは、余りにも過酷な選択かもしれないが……。あの少女の微笑みを取り戻すために。
──その生身の瞳に宿りしは厳しい優しさ、かつてない慈悲。
 死の卿の言葉が真理の背中を押していた。
 真理は、アレックスに近寄ると不思議なほど落ち着いた口調で語りかける。
「ブリテンの深き凍れる森より来たりし死の卿、運命の天輪と死神との約定により、よくぞ私の“盾”になって下さいました……ならば、私は貴方との盟約、貴方との約定に従いましょう。─それは私の盟約であり、私の約定でもあるのだから……」
 たとえ倒れふしても離さなかった、死の卿の彗星剣をその手から受け取った。
「数奇な運命に翻弄されようとしている少女を護るため、そして渾沌の街に舞い降りし堕天使に死神との約定の日を、私が貴方とともに、必ずや……」
 彗星剣を口にくわえ、SC-8を右手で持ち操作する。短い文章をただ、一文だけ。
 “Alea jasta ist”犀は投げられた。沖と打ち合わせした、早期の警戒と行動を促す文章。
 
 身を翻し、向かおうとした真理は、一度だけアレックスを見た。
 見えたのは中華街の路地ではない……累々たる屍の道、真理が歩んできた道。
 その道の中に、死の卿が倒れているのが、見えた。
──闘いは、熾烈なものとなろう。相手は渾沌の街に舞い降りし堕天使とその背後にある未知なる“力”
 自分一人だけでは勝てない、護りきれない。その“力”にあがらいしもの達を集めなければ。
 自らのすべてを賭けて、命を賭して。
 これは、バージニアのための闘い、そして、自らの存在を賭けた闘いなのだから。 
──その瞳に宿りしは、ふたつの思い、かつてない決意。

 きびすを返すと、紅玉の戦姫は振り返らなかった。すでに犀は投げられたのだから。
 中華街の路地裏、道なき道を、最短距離と安全を図って─バージニア達の待つ場所へと……。
 深き、深き深淵のなかへ、決して後戻りが出来ぬ一歩を踏み出して。

 倒れた死の卿の傍らに、真理と外界とを隔てる伊達眼鏡の残骸が落ちていた……。

 [ No.279 ]


フェニックス・プロジェクト

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/13(Wed) 17:24
Style : KABUTO,FATE◎●,KABUTO-WARI   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


『…おい、どうしたんだ! 坊主、坊主!』
『お願いだよ…ウェズ兄ちゃん。確か探偵って言っていたよね?…金さえ払えば仕事やってくれるんだよね』
『お前、そんなことより病院に行くぞ。体中が傷だらけ、血塗れじゃないか。一体どうしたんだよ!』
『頼むよ…こいつで妹を捜してくれよ。あいつ、どこかにいっちまったんだよぉ…。俺達ずっと一緒に生きてきたんだ。俺を置いてあいつがどこかに行くわけ無いんだ…。お願いだよぉ、探してくれよぉ…』

 ウェズが編纂室に関わりを持ったそもそものきっかけ、忌まわしき事件は一年以上も昔にさかのぼる。当時、トーキョーN◎VAでは奇妙な誘拐事件が多発していた。妖しげな力を使ったり、強い能力を有しているとストリートやスラムで噂されるような少年少女達が次々と行方を眩ましていたのだ。この事件が発生した当初は様々な噂が飛び交った。綺麗な少年少女を誘拐し人形に代えてしまうサイコなコレクターの起こした事件だとか、能力者の確保のために千早かイワサキ、あるいはレイド&ルーラーが極秘で行った実地試験の暴走の結果なのだとか、少年少女達の間に特殊な病気が流行したせいなのだとか…。
 だが自分の事務所に知り合いの少年が飛び込んでくる前までは何も関わり合いがなかっただろう。ウェズはそう思う。
 ちょうどあれはウェズがあきらという少女とまだ出会う前、コネのクロマクから回されたちんけな仕事を終え、事務所を締めて夕飯でも食べに行こうかとしたときだった。全身を血に染めてその少年がよろけながら入ってきたのだ。なけなしの金を必死でかき集めたのであろう。少年の血塗れの手に抱え込まれた瓶の中には、薄汚れたカッパーが大量に詰まっていた。
 少年はウェズに妹のことを託すとそのまま静かに息を引き取った。稼ぐ手段も知らず、親の顔も知らず、二人きりでストリートで野良犬のように生きてきた兄妹の片割れが、探偵に頼む仕事の報酬を稼ぐのにどのような手段を選んだのか。言葉にしなくても少年の傷まみれ血塗れの体がそれを如実に表していた。
 探偵にできることは死者の最後の頼みを聞いてあげることだけだった。

 この事件に足を踏み入れてからウェズは妙なことに気がついた。この誘拐事件の周囲に企業や裏社会の組織が関わっている様子が全くと言っていいほど見られなかったのだ。巧妙に隠されたところでどこかに関わった組織の臭いが感じるのがこの種の事件の鉄則である。他のどの種の犯罪と比較しても、誘拐事件ほど失敗率の高い事件はない。それは誘拐行為そのものが非常に難易の高い犯罪であるからである。人を殺すのではなく姿をさらう。しかも痕跡を残さず大量にやり遂げるなど一般人ではほぼ不可能なはずなのだが。
 日本軍大災厄史編纂室の話を初めて聞いたのは、彼がこの事件について頭を抱えていたときであった。日本本土からやってきた独立組織。しかし奇妙な事にその噂される目的と行動があまりに不一致なのである。日本が災厄の真相を隠そうとしている自体不明なのに、それでいてどうして少年少女を誘拐せねばならないのか。ウェズが必死にかき集めてきた情報を元に考えた所で何も思い当たるような接点が見あたらなかった。
 だからこれはガセを掴まされたのだと思ったのだ。

 だがさらに奇妙なことが起こった。
 それ故にウェズは編纂室の行動から目を離せなくなってしまったのだ。
 この事件を捜査している間に知り合った千早のエグゼグがいた。末端のエグゼグだったがこの事件に微かに関係していたので一回だけ事情を聞くために顔を合わせた。それだけの関係だった。
 しかしある日、彼は思い詰めたような表情でウェズにこう告げた。

『私はフェニックス・プロジェクトに殺される』

 そして、そのすぐ後にその男は言葉通り死亡したのだ。原因は不明だった。いや、セキュリティ上は位置されたカメラの映像に微かに犯人像が残っていた。その容姿は神狩が殺した月村の容姿によく似ていたのだ。

 そのネタを掴んでからしばらく後に事件はあっけない解決を迎えた。主犯格の男がブラックハウンドとSSSとの共同戦線との3時間の銃撃戦の上に射殺されたのだ。男は千早の下請けの零細なソフト会社の社員。年齢は20歳。異常性癖故に犯行に及んだという事で事件は幕を下ろした。しかし誘拐された少年少女の行方は犯人が射殺されたことで闇の中に消えてしまった。ニューロエイジは非情である。どのような形であれ一旦幕を下ろされた事件に関わる酔狂な人間など、地球上のあらゆる砂の数に比べて小指の上に積もった砂ほどの数でしかないのだ。
 実際ウェズも半分あきらめかけていた。射殺された20歳の青年、あの犯人は人間が考えつく限界の巧妙な知恵で全ての組織を出し抜き、決して満たされぬ己の欲求を満たそうと足掻いたのだと考えようとした。
 だがそれは違うと囁き続ける声があった。
 真実は違うのだと囁き続ける声が。
 心の奥底から溢れ出る声が。

『フェニックス・プロジェクト』

 ウェズがあらゆる手段をとって情報をかき集めようと試みてもその情報は欠片すらも一切漏れて来ない。それどころかありとあらゆるエグゼグ、クロマクが口を塞ぎ、耳を塞いでいる様子だった。このプロジェクトを追いつめた行き先に何が待っているのか、それを知らせてくれる者は何もなかった。

 今、ウェズは自分が一本の線にのっかってしまったことをはっきりと感じていた。
 漆黒の闇の中をただ一筋だけ走っている孤独な一本の線の上に。
 自分を孤独な騎士だと例える気は毛頭ない。
 だが他の人間には逃げる事ができたとしても、自分にはそれができることはおろか考えすらもしない。

 なぜなら自分は………。


 路地裏の壁にもたれながら、口には火の消えたしけた煙草をくわえ、冷め切った表情と誰人をも信じない冷たい瞳を自分の足下の地面に向け、銃を扱う右手を常に開け放ち、その反対の左手を無造作によれよれのフェイトコートのポケットの中に入れている男がいる。
 街に住んでいる人々は彼のことを後ろ指を指しあざ笑う。金の亡者だ、悪徳探偵だ、探偵の面汚しだと。
 だが彼の事務所の机の下の、鍵をかけた大きな引き出しのその中に、血塗れのまるで野良犬のように死んでいった少年の血と涙が染み込んだカッパーが詰まった空き瓶が眠っていることは誰も知らない。
 そして探偵の仕事がまだ終わっていないと言うことも。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/index.html [ No.278 ]


譲れないもの─砕かれた“盾”

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/13(Wed) 03:51
Style : Mistress●Regger Katana◎   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


人には譲れないものが在る。
それゆえに人は時として、命を賭けてしまうのだ……。

「天使を汚しこそすれ、守る事などできはしません。その・・・血塗れの手ではね。」

 ただ一言の言葉。それだけで真理のなかで何かが弾けた。気がつくと自分は叫んでいた、自らの魂の咆哮を。
──血塗れの自分の腕、それは誰よりも深く、深く真理が理解していた。
 闘い、争い、そして立ちふさがるものを殺める。それになんの感慨を抱くというのか?どのような形であれ、闘いの一瞬のなかでしか、生を見出せない自らは、確かに存在するのだから。──血塗れの自分の腕、血塗れの瞳。
だが時として、その返り血にまみれた自らの腕が…重く感じるのだ。
だからこそ、願う。だからこそ、望む。だからこそ、僅かな光を求めて足掻くのだ……。
だからこそ、数奇な運命に翻弄されようとしている少女に、手を差しのべたのだ……。
闘いのなかでしか、生きられない自分を変えられないまま。心を許した僅かな人間にしか、本当に心を開けないまま。
 それを目の前の堕天使は否定したのだ、心を踏みにじった上で……その手では何もつかめないと。
──許せない!
 思考するよりも速く、真理は跳んでいた、昏き微笑みを浮かべ、真理を止めるように手をかざす堕天使に向かって。
 アレックスがなにか叫んだようだったが聞こえなかった。─ただ、その微笑みを右腕の赤き剣で、永遠に消してしまいたくて真理は叫んだ。
 横合いからの衝撃。アレックスが、彗星剣の柄で真理の体をはじき、射線上からずらした。響き渡る金属音、全身を貫く衝撃──あとは何も見えなかった。
 真理を貫いたのは本当に、衝撃波だったのだろうか……。譲れない一線をもつ彼女をつらぬいたものは?
ただ、堕天使の微笑みだけが、真理の脳裏に焼き付いていた。

──許せない、決して許すことが出来ない。護りたい、あの数奇な運命に翻弄されようとしている少女を。
 真理は意識を回復すると、回りを見渡しながらゆっくりと立ち上がった。自分自身のダメージをチェックする。
 全身のダメージはそれほどでもない。まだ、問題なく動ける。これも、守護者が護ってくれた加護なのだろう。ただ…射線上に僅かに残ってしまった傷ついた左腕の感覚は…全くなかったが。
少し離れた場所から、真理を庇う為に突き飛ばした守護者が、夜の焔が宿りし剣を杖の代わりにつき、真理が起きあがるのを待っていた。もし、彼が真理を庇わなければ、間違いなく死んでいただろう。堕天使の挑発に乗り、翻弄された自らが。
 あのすさまじいばかりのプレッシャーは気を失うまえに無くなり、壬生の姿は消えていた……止めを刺せたにも関わらず。
真理は、少し前の状況をおぼろげながらに思い出した。

──間違いなく、真理の左腕を犠牲にした斬撃は、相手の体制を完全にくずし確実に捕らえた。狙ったのは頭、または目だ。戦 闘力を殺ぐ為に……。
 確かに斬撃は壬生を捕らえ、斬った感触は手に残っている。ブラックグラスを飛ばして。
しかし、手に残ったのは硬質のものを斬る感触と、全くの無傷で立ちあがるあの男。

 真理はゆっくりと自らの背後へと首を巡らした。背後には原型をとどめない壁の残骸……。
 はっきりとしない、自らの思考、えもいわれぬ不安と…あの男の背後に在る“力”への恐怖…忍び寄るもの。真理は自らの背後に、視線を巡らした──
「行こう、真理くん。奴はまだ、俺たちに見せたいものがあるらしい」
「……ええ」
 すさまじい破壊力に戦慄を覚えながら、真理は地面から剣を抜き今にも一歩を踏み出そうとする、守護者に答え、歩もうと。
──直撃を受けた壁が原型を留めていない。では、それを受けたアレックスは……。
 真理が言い知れぬ不安を抱いたとき、死の卿は、深き闇の中へと一歩を踏み出す。明らかに様子が変だ。
 次の一歩──地面に突き立てられる剣、夜の焔が剣から消える。立っていられず膝をつくアレックスに真理は、慌てて目の前に駆け寄った。─夜の闇に響くのは…堕天使の哄笑か?
「貴方はなんて馬鹿なことを!!」
 しゃがみこむ様にして、死の卿の顔を覗き込み、真理は叫んだ。死の卿のサイバーアイは…光を失いかけていた。
 首を振り、何とか焦点を合わせた死の卿に、真理はいやいやするように首を振る…死の影がゆっくりと彼を捉えていく。
 手の内よりこなごなになったタリスマンの粉が……風に舞った─。真理は…何を叫んだのか覚えていなかった。

「‥‥、盟約は果たされなければならん。大丈夫、君が死神の迎えを受ける約定の日はまだ来ない。行くんだ。奴が間違っていることを思い知らせてやれ。君は奴の魔術に打ち勝ったんだ。君たちならやれる。そう信じている限りな。奴の約定の日がいつなのか、俺の代わりに教えてやるんだ」
 夜の焔が消えた彗星剣を持ち、はいあがろうとする死の卿の言葉を…真理は呆然と聞いていた。
 その目は…もはや真理を写してはいない。軽く息を吐き出して、死の卿は誰かの名前をつぶやいた……。

「貴方だって、待っている人がいるのでしょう!!起きなさい、アレックス!こんなところで…こんなところで!!」
──どれだけの犠牲を払えば、望みがかなうというのだろう。
絶叫。夜の闇が、余りにも深き闇が、アレックスの上に落ちていった…だが、真理の紅の瞳からは涙は出なかった……。

http://www.freepage.total.co.jp/DeepBlueOcean/canrei.htm [ No.277 ]


[ Non Title ]

Handle : “薄汚れた鑑札”沖 直海   Date : 99/10/12(Tue) 03:21
Style : フェイト◎カブト●レッガー   Aj/Jender : 24/女性
Post : フリーランス


つかの間の平穏。
隠れ家の中で点心をつまみつつ、沖はそんな事を考えた。
(ちなみに自分の分のジャスミン茶と点心は確保済みである)
何かを恐れているのかのように、静まり返ったひとときの空白。

ポケットロンが鳴った。
・・・彼女は、無事、だったのだろうか。
一瞬緊張してポケットロンを取り上げ、応答する。
「・・・はい、沖ですが」
>「今、ピンチですか?」
・・・・・・・いかにも能天気なその聞きなれた台詞に、沖の緊張がガクッと解ける。
「まあ、もうすぐなるでしょうね。
ちょっとお願いがあるんですが。〜店の、路地裏に人が入ってきたら教えてもらえせませんか?」
表通りから隠れ家に入る最初の角の店の名を沖はカルラに告げた。
普通の店に用事がある人間ならまず入ってこない裏通り。
入ってくるとすれば、迷い込んだか・・・ここに用があるかのどちらか。

さて、一番乗りは誰になるのやら。
胸に湧き上がる暗い予感を見ないように、沖は努めて冗談めかして考えた。

http://village.infoweb.ne.jp/~fwje8355/okimasami.htm [ No.276 ]


死の卿と約定の時

Handle : “デス・ロード”アレックス・タウンゼント   Date : 99/10/11(Mon) 23:53
Style : カブト=カブト◎●,バサラ   Aj/Jender : 32?/Male
Post : Guardian of Promised Day


――遥か遠くから響く声。それは、紅玉の戦姫の嘆きの声。
「‥‥、盟約は果たされなければならん。大丈夫、君が死神の迎えを受ける約定の日はまだ来ない。行くんだ。奴が間違っていることを思い知らせてやれ。君は奴の魔術に打ち勝ったんだ。君たちならやれる。そう信じている限りな。奴の約定の日がいつなのか、俺の代わりに教えてやるんだ」
 何とか手で体を支え、這い進もうと試みる。真理の姿が靄の掛かった視界から消えていた。決心してくれたのだろうか? いや、彼女の性格なら‥‥自分を放ってはおけないだろう。
――再び、目の前に迫ってくる冷たい大地。
 世界が踊っていた。千の幻が踊っていた。
 死神に仕えるというデス・ロードが負けたのか?
 俺が‥‥この俺が死神に迎えられる日が来たというのか?

 人は死の前に人生を回想すると言うが、本当だろうか。そして、自分が今見ているものはそれなのだろうか。
――ヌーヴの戦役。銃声の飛び交う戦場。
――深い霧の篭もるブリテンの森。アーサーたちのしがみつく土地。
【どうしたの、アレックス? いい情報を手に入れたのよ。今度こそ、真実を暴いてやるわ!】
 ジュディの声が聞こえた。いや、彼女は死んだはずだ。俺は彼女の元へ行こうとしているのか?
――燃え上がる炎。腕の中で閉じられる瞳。
 俺は彼女を護れなかった。あの緑の瞳を、あの快活な笑顔を。だから俺は死神に仕えることにした。刺客にも依頼人にも容赦しない死神の使いとして。盟約にあらざる死を防ぐために。約定の日を正すために。
――深い霧を払うように響く、戦姫の声。
 あちこちをさ迷い、災厄の街に渡ってきたのも、それを忘れるためだった。だが俺は愚かだった。思い出は、データ・クリスタルより遥かに鮮明なのに。
――自分の顔を覗き込む紅玉の瞳。
 別の幻が目の前で踊っていた。ジュディと同じ、あの闊達な瞳、あの微笑み。だが‥‥それは翠玉ではなく紫水晶の光。彼女は日系人だった。
 そう、俺はN◎VAで彼女に出会ってしまった。彼女には、ブリテンの大地に眠るジュディの面影が宿っているかのようだった。彼女を護るのは死神との盟約のためではなかった。この俺の――
「‥‥‥‥すまん‥‥涼‥‥」
 アレックスの意識はそこで途絶えた。

 [ No.275 ]


死の卿と深淵の鼓動

Handle : “デス・ロード”アレックス・タウンゼント   Date : 99/10/11(Mon) 23:45
Style : カブト=カブト◎●,バサラ   Aj/Jender : 32?/Male
Post : Guardian of Promised Day


 咆哮をあげ、右手の剣もて襲い掛かる紅玉の戦姫。
――壬生の上半身が陽炎のように揺らめいた。奇怪ともいえる動きで腕が霞み、千手観音を付けた同業者のように幾つも腕が見え‥‥
「‥‥?!」
 加速された思考と拡張された知覚と経験から来るプロの勘が危険を告げた。あの堕天使の微笑みに。
「よせ。罠だッ!」
 機械仕掛けの右腕が勝手に動いた。彗星剣の柄で、彼女を突き飛ばす。
――突き出される堕天使の右手。
 IAD(即時行動訓練)を受けた人間は反射的に動けるものだ。自分の正面に掲げられる水晶の盾。表面に凝縮する夜の力。間に合ったのはそこまでだった。
――堕天使の微笑み。
――夜よりも暗い闇。
――深淵より響く鼓動。

(‥‥‥‥奴は?)
 ブラックアウトの時間は数秒だったろうか。気が付くと、鳳の紋章の男は消えていた。遥か遠くで、中央区のネオンが輝いている。
奴が使ってきたのは衝撃波のようなものだったのだろうか? 後ろを振り返ったアレックスは驚いた。射線上にあった壁がほぼ円形に、ぼろぼろに崩れている。
(‥‥わざと逃げ出したのか?)
 意識を取り戻した真理が立ち上がろうとしていた。半瞬前に突き飛ばしていたお陰で、彼女は射線からほぼ外れていた。紅玉の戦姫は護らなければならない。二つの盟約のために。これより始まる大いなる戦いのために。希望の光を、あの瞳から絶やさぬために。
「行こう、真理くん。奴はまだ、俺たちに見せたいものがあるらしい」
――ストリートの闇は濃度を増していた。その闇の中への第一歩。
 強烈な痛み。体じゅうが悲鳴をあげていた。
――次の一歩。
 IANUSが脳内に警報を鳴らし続けていた。闇の公子アズュラーンの囁きが聞こえた。全身のサイバーウェアの機能低下。伝達不全。痛覚遮断がまったく効かない。
――地面に突き立てられる剣。消えゆく夜の炎。
 立っていられなかった。口の中に苦いものがこみあげてきた。アレックスは愕然とした。予想外だ。奴が使ったのはなんだったのだ? たまらず膝をつき、剣の柄にしがみつく。
――深淵より響く堕天使の哄笑。
 目の前で世界が回っていた。全てが回っていた。相手はあの日本軍の手先だ。日本本国から派遣された男だ。どんな技を使ってくるとも分からない。デス・ロードを一撃でここまで打ちのめしたのだ。
 首を振って意識を集中する。視界の焦点が戻ってきた。驚く真理の顔が目に入った。自分の口から出た声がうわずっていた。
「真理‥‥君は先に行け。君を‥‥君を待ってる人間がいるはずだ」
――目の前で振り子の如く揺れるモノ。
 機能の落ちてきた右目がそれを捉える。あれは‥‥お守りだ。そう、首に掛けていたタリスマン。ブリテンの森のドルイドの力が込められている。今まで何度か、彼の命を救ってくれた。
 視界から靄が晴れた。目の前にあるのは地面だった。何時の間にか倒れていたのだ。
 機械仕掛けの右腕はまだ機能していた。何とか動かし、タリスマンを掴む。
 手を開いた。
――Believe the Unbelievable.
 タリスマンが粉々になっていた。身代わり符の魔力ですら効かなかったのだ。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/nova/stajR/alex.htm [ No.274 ]


Traffic JAM

Handle : 羽也・バートン   Date : 99/10/11(Mon) 02:27
Style : ミストレス◎カブト=カブト●   Aj/Jender : 26歳/女性
Post : フリーランス


…つけられている。
先程の闘いでカブトとしての感覚を呼び戻していた羽也は生来の勘も助けにして相手を撒こうとしていた。
だが、羽也自身につけられるような心当たりはない。あるとすれば、名も知らない赤毛の“あの子”がらみのことか…。
どうやら、あの子は無差別に狙われているらしい事が伺える。目の前の男は、賞金稼ぎ…のような感がある。これは、状況として急がなければならないようだった。しかし。
羽也には男を撒けるような技術は持ち得ていない。
…さて、どうするか……?羽也は目の前の男を見据える。
「申し訳ございません。私は貴方の期待するような答えを返せません……」
斬銃拳の言い様に羽也は冷静に返す。だが、その答は彼の予想の範囲内であったらしく。
銃と、短剣を持った男がにやりと笑った刹那。羽也の髪が一房、焼き切れる。男の放った弾丸が彼女の頬を掠め。
――宣戦布告。
微かに、羽也の顔に焦りが浮かぶ。“あの子”の危険を少しでも減らすためにも少しはこういった職金稼ぎなどを削るべきかもしれない。だが、『あの場所で待ち合わせを』という真理との“約束”。一刻も早く、そこへ向かうべきであるのもわかっている。
その時、目の前に。彼女の目の前に降り立った、一つの影。
「くくく・・・厄介な事になっているな。ここは俺に任せてもらおう」
皮肉な笑い声と共に。その声には、聞き覚えがある……。
羽也は彼の名前を呟く。『神狩さん……』と。

 [ No.273 ]


ザンジュウケン、羽也と対決する。

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/09(Sat) 23:50
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


尾行に気づき巻こうとする羽也の前に立ちふさがるザンジュウケン。
その右手にはオートマティックピストル、左手には短い刀が握られている。
「・・・今、巻こうとしましたネ?」
眼鏡の奥の瞳が光る。
「私は先ほどまでたいへん不機嫌デシタ。
しかし・・・」
ゆっくりと歩み寄る。
「アナタを見つけてからとてもハッピーなのですヨ。」
おどけたように羽也の顔を覗きこむ。
「デスから・・・おとなしく案内してくださいヨ。」
返事は判っていたのでザンジュウケンは戦うことにした。

 [ No.272 ]


ネガイ

Handle : “ボディトーク”火鷹 遊衣   Date : 99/10/09(Sat) 14:50
Style : マネキン◎トーキー=トーキー●   Aj/Jender : 17歳/女
Post : フリーの記者


「眼鏡眼鏡…じゃない、カメラカメラ…」
厄災前に使われていたようなギャグを飛ばしながら遊衣は真理の隠れ家のDAKの端末を探り当てる。
「食べないの?」
バージニアが飲茶を口に運びながら問い掛けてきたが
「…この容姿を維持するのも大変なのよ」
とウィンクして応えた。
同い年位の少女は、一瞬だけ、飲茶と自分の体と遊衣の体を見比べたようだった。

「ん〜…よし」
ドアの前を見渡せるように設置してあるカメラの映像をポケットロンに映し出して、遊衣はにっこり笑った。
これで、誰かが訪れたらすぐに映像をキャッチできるし、残す事も出来る。
……まあ、不意の闖入者が真っ正直に玄関から来るとは思わないけど。

……出来るなら。
出来るなら……この映像に最初に映るのは、真理でありますように。
彼女の紅い、印象的な瞳がこちらを見ますように。
願わくば……

遊衣は長い睫を、伏せた。

http://village.infoweb.ne.jp/~fwkw6358/yui.htm [ No.271 ]


深淵の怪物

Handle : “監視者”壬生(ミブ)   Date : 99/10/09(Sat) 12:11
Style : クグツ◎・チャクラ・カゲ●   Aj/Jender : 30代/男
Post : 日本軍大災厄史編纂室 室長


深淵をのぞきこむ時、その深淵もまたこちらを見つめているのだ。

・・・・・・・・・フリードリッヒ・ニーチェ


「何のために戦う?」
壬生は真理の言葉を繰り返し口にした。
それは質問について考えているというより、質問の意味さえ解らないように見えた。
「ナンセンス、ナンセンスな質問ですね。ミス秦 真理。」
「あなたは鳥になぜ飛ぶのかと、魚になぜ泳ぐのかと聞くのですか。」
闇が急激に濃度を増したような、恐怖を呼び覚ます寒気にも似た感覚を彼女は感じていた。
それは彼のまわりに澱のようにわだかまるこの街のもっとも暗い部分が、そのアギトを大きく広げたせいなのかもしれない。
闇を操るアレックスでさえ、その正体を見通せずにいるようだった。
「私に戦う意味など必要ありません。私はあなたが想像もできないような巨大で絶対の力をもった機械の歯車にすぎないのです。」
「ただ、主命を遂行するのみ。」
一歩、また一歩、彼女に近づきながら諭すように壬生は言った。
その口もとがかすかに歪められ、邪悪な笑みを形作った。
「最後の警告です。全てを忘れ、早々にこの場を立ち去りなさい。しょせんあなたには何も守る事などできませんよ。ミス・クリムゾンアイ。」
冷静に隙をうかがっていた真理の顔がかすかに強ばった。
「天使を汚しこそすれ、守る事などできはしません。その・・・血塗れの手ではね。」
「!」
はじかれたように、真理は飛び出していた、咆哮をあげ堕天使の微笑を浮かべる男にとびかかって行く。
男は真理を止めるように右手をかざした。
「よせ、罠だ。」
デスロードが彼女の行くてに立ちふさがった。
ギィウン!
刹那、路地裏に金属音に似た凄まじい轟音が響きわたった。

体がジーンと痺れて感覚がまったくなかった。
目の前の巨大な壁が地面であり、自分が倒れているのだと認識するのにしばらくの間を要した。
「私は死んだの?あの男は?」
壬生の、あの息苦しいまでのプレッシャーは感じられない。
「なぜ?」
首を巡らせると剣を杖のようにして体を起こすアレックスが目に入った。
そうか・・彼がかばってくれたのか。彼が割って入らなければおそらく自分は死んでいたのだろう。
薄れ行く意識の中で真理は堕天使の手から自分を救ってくれた、守護者に感謝の言葉を呟いた。

「衝撃波か・・・」
アレックスは痺れの残る体を起こしながら自分の記憶を確認するように言った。
壬生の挑発に乗った彼女を庇うために飛び出した後、しばらく(おそらく2秒程度だろうが)意識を失っていた。あの男が掌から衝撃波のようなモノを放ったのだろうということは、認識できた。
彼らの背後の壁はグズグズに崩れており、もとが何であったのか見分けもつかないくらい変形した、ゴミのかたまりがそこら辺に転がっている。
凄まじい破壊力だ。
よく助かったものだと我ながら思う。幸い彼女も無事なようだった。
わずかに動かしただけで体中が悲鳴をあげたが、のんびりとダメージの回復を待っているわけにはいきそうになかった。
壬生の姿が消えていた。
あれ程の男が敵の生死を見誤るとは考えがたかった。
なぜ、止めを刺さないのか?
彼の氷のような瞳の奥に微かな炎が揺らめいた。
「来いというのか・・・これ以上彼女に、そしてオレに何を見せようというんだ。」
おそらく、意識をとりもどした真理はすぐにも行動を開始しようとするだろう。
しかし、オレは?
デスロードは自嘲気味に口元を歪める。
愚問だ。この闘いが、もはや自分の闘いでもある事を彼は感じ始めていた。

再び、闇がゆっくりと濃度を増していく。
そして、闇を司る死神の使いと紅の瞳の戦姫はその中に本当の一歩を踏み出そうとしていた。
先の見えない、しかし決して後戻りのできない一歩を。

 [ No.270 ]


ザンジュウケン、妙堂院羽也を追う。

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/09(Sat) 01:02
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


気がつくと“大きい方の殺気”が消えている。
「・・・!?」
眼鏡の奥の瞳が一瞬とまどう。
「どちらかが死んだのカ・・・?」
まずい。ヤツらは仲間のようだった。
もし妖しげな剣士の方がやられていたのならば確実に先を越される。
「まずい、まずい、まずい・・・!」
焦りがあからさまに表情に浮かぶ。
ザンジュウケンは建物の屋根から屋根に跳び移り先ほどの決闘の場へ向かう。
建物との間隔が比較的狭いところを選び、急行する。
その途中・・・
「・・・!」
雑踏から離れた路地裏を走る影を見る。
別にこの街ではおかしな光景ではないだろう。
しかし神経質になっていたザンジュウケンはその人影にすら気を止めた。
見知った顔だ。
先ほど決闘の場にいた女・・・。
彼女はきっとヤツらの仲間だろう。
「くっくっく・・・ツいてる・・・今日はツいてるゾ・・・!」
ザンジュウケンは女をつけることにした。
尾行と呼べるほど器用なものではなかったが・・・。

 [ No.269 ]


腹が減っては戦は出来ぬ

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/08(Fri) 23:21
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


食事を進めながら、沖、九条、美琴、遊衣、風土の5人はお互いの状況を話だす。お互い話しが済むとバージニアが風土に尋ねる。
「私の状況、あなた達の状況、何となくとだけど分かったは。一つ聞きたいんだけど、あなたまだ食べる気なの?」
その視線の先では、風土が15品目の料理に手をかけようとしていた。
他の4人も同様に風土に顔を向ける、沖が用意した料理をほぼ一人で平らげた風土は、口に料理をほおばったまま頷く。風土は最後の一つを平らげると立ちあがり、沖に尋ねる。
「ここに、キッチンは在るかな」
怪訝そうな顔をしながら、沖が答える。
「ええ、あるけど。それが何か?」
「いやなにね、せっかく用意してた料理を俺が全部食べたみたいだから。お詫びにね、何か作ろうかなと思って」
そう答えると、風土はキッチンに向かう。
風土は中華鍋を火にかけながら、リズミカルに包丁を振るう。冷蔵庫から出した野菜を刻みながら、背後に向かって声をかける。
「どうした、何か用かい。料理ならもう少しで出来るから、むこうで座って待ってなよ」
「ねえ、どうしても聞きたいことがあるの」
背後に立ったバージニアが尋ねる。
「面白いって、言ってたわね。どう面白いの?」
「全部だよ。俺にとってこの騒動、ゲームみたいなもんだ」
「ゲーム?」
「そうゲーム。結果では無く、過程が大事なゲームだ。今の一瞬を楽しむ、出来る事をするそんなゲームだ」
「じゃあ、私はこのゲームで一体何をすればいいの?」
「さあ、このゲームで何をすれば良いかなんて誰にも分からないよ。でも今何をすればいいかは、知ってるけどね」
「何をすればいいの?」
「そうだな。とりあえずは、出来あがった料理をテーブルに運ぶ事から始めようか」

 [ No.268 ]


The weight of this sad time

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/08(Fri) 16:47
Style : KABUTO,FATE◎●,KABUTO-WARI   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


 路地裏へと消えていった”オニ”。
 微笑を残して立ち去ったミラーシェイドの女…。
 紅の海に染まって地に伏した名も無き戦士…。
 彼らの背中にウェズはこう呟いた。口にくわえた煙草が震え、周囲に吹く風が何故か一瞬だけ冷たさを増した気がした。そうここには誰もいない。誰も彼の言葉を聴くものなどいないことを知りながら、彼はそれでもこう呟いた。

「人間というのは哀しい生き物だな…。戦わずには生きてゆくことはできないのだから…」

 それは自分に向けた台詞でもある。そう、自分だけは聴いていた。
 『自分に任せろ』と言うことで彼らを追い払ったのは理由がある。周囲の目があるところで死体を探るのはいい気持ちはしないだろう。いかにも自分は怪しいですと公言しているものだ。彼は周囲を素早く知覚すると、常に填めている黒い皮でできた指の部分を切り取った手袋を脱ぎ、その代わりにポケットにあらかじめ入れておいた白い手袋を填め直した。そしてコートを身にまとった軍人らしき死体を手早く、しかも確実に各所を探り始めた。
(…証拠が欲しい。”彼ら”が動いているであろう、確たる証拠が…)
 捜査はすぐに終わった。
 ウェズは死体を元通りにすると、手袋を填め替え、誰かがやってこないうちに素早くその場を後にした。
 彼が立ち去る背中の方の更なる遠くの方角からサイレンの音が響き始めた…。
 ウェズは再び別の大通りに足を向けた。店で呼び子の少年にせがまれて仕方が無く購入した肉まんを一つほおばりながら、周囲をさり気なく警戒している。あれだけ殺し合いが起こっても、黒服の数は相変わらずである。『獲物』を追い求める『狩人』達の数も変わっていない。本来、バージニアのネタはNIK、SSS、ナイトワーデン等信用のおけるところにしか入ってこないはずなのに、この多さはどうしたものだろうか。
 (まぁ…なんだな。『蛇の道は蛇』っていうのは本当だね…)
 肉まんを食べ終わり再びしけた煙草に火を付ける。『狩人』にしか嗅ぐことのできない微かな血の臭いが煙草の独特の香りと相まってウェズの口の中を駆けめぐった。
 この事件の捜査のためにヨコハマに向かう前、彼は密かに三合会の大立者に話を向けてみた。しかし、事が起こる以前からイワサキと話をつけ現在表向きは静観を決め込んでいる事しか判らなかった。つまり彼らは今のところ何が起こっているかタッチはしていないということである。
 千早とイワサキは”天使”を巡る争いの最中であろう。黒服の大半が微かにそういう臭いを漂わせたクグツ達であろう事は事実である。千早とイワサキは勢力はほぼ互角であるが、今のところ千早の方が不利なのは否めない。ここはイワサキの”街”なのだから。N◎VAとは勝手が違うのだ。従ってお互いに牽制し合っているだけで時は過ぎてゆくだろう。
 だが一番問題なのは彼が追っている『本命』。日本軍大災厄史編纂室である。今現在動いている彼らは日本軍を名乗っているが、命令系統が別にある独立した日本政府直属のエージェント、目的は…。

 「災厄に関わる人間の捕獲と抹殺、か…。物騒だねぇ…」
 
 しかしそれだけで霧の向こうに潜む悪魔達が動くとは思えなかった。それだけの理由ならばわざわざ手駒を使わずとも駐留している一部の軍隊を動かせばいいではないか。これはフェイトの勘。手に携え、何度も死地を乗り越えてきた最も信用するに足る切れる”ブレード”の微かなる呟き。

 「The weight of this sad time we must obey.(不幸な時代の重荷は我々が負わねばならぬ)」

 そう呟くと彼は煙草の煙を強く強く吐き出した。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/index.html [ No.267 ]


霧の中に隠された”意図”

Handle : ”LadyViorett”我那覇 美加   Date : 99/10/08(Fri) 07:40
Style : カブト◎=カゼ●=カブトワリ   Aj/Jender : 28/female
Post : フリーのカブト/元”麗韻暴”二代目頭の兼業主婦


「ではここは任せるとしようか・・・俺は少々行くところがるのでな。残念ながら話に付き合うことは出来ん。
縁があればまた会おう・・・」
「途中で服は調達する。これは返しておこう」
路地裏に消えてゆく神狩の背中を見送りながら美加はウェズリィに自分のアドレスを渡す。
「じゃあ、なんかあったら私にも連絡を頂けないかしら?
・・・私の方もわからない点があってね。」
ウェズリィには美加が掛けているミラーシェードから見えないはずの瞳が一瞬困って見えたような気がした。
「ではまた後で会いましょ。
あ、そうそうちょっとした”お茶”なら仕事終わった後で付き合ってもいいわ。
”ダンナ”や”子供達”がいるから長居出来ないけどね。」
最後にクスッと微笑して羽也の後を追いかけていった。

 [ No.266 ]


とりあえずまずは一段落(?)

Handle : 『親愛なる天使』モリー美琴   Date : 99/10/08(Fri) 03:56
Style : カブト=カブト=カブト   Aj/Jender : 14/女性
Post : フリーランス


 タッタッタッタッタッタ………
 バーニィと一緒に路地を駆け抜ける………後ろからは耐えることなく聞こえてくる足音…しかも、増えている………。
 美琴はちらっと走りながら彼女を見た。一生懸命ついてこようとしているが、少し足下がふらついている。
(どうする………?)
路地の隙間を探しながら状況を判断する。
「大丈夫?」
美琴の言葉に彼女はやっとと言った感じでうなずく。もう、長時間歩いている彼女の足は限界に来ているようである。
(こうなったら………)
少し歩調をゆるめ彼女の後ろに回る。
 しかし、足音は彼女の推測に反してだんだん小さくなった。

 そして、足音が聞こえなくなった頃、美琴とバーニィは足を止めた。バーニィは疲れ果てたのだろう、しゃがみ込んで肩で息をしている。
「大丈夫?」
バーニィは深呼吸をして、ゆっくり立ち上がると、笑いかけてきた。
 後ろの方から声が聞こえる。振り向くと、さっき見かけた女性が走ってくる。そして、こっちを見て笑いかけてきた。先程、真理がアドレスを教えていたということを思いだす。
「………あなたは信頼してもいいの?」
それでも少し不審そうに尋ねる美琴に女性はさらに笑いながらうなずいてきた。

 それから、来方も戻ってきて、指定された部屋まで無事にたどり着く。いざというときのために、少しだけ準備を整えてから部屋の中に入った。
 そして、真理に連絡をする………。画面の向こうの彼女はかなり傷ついて疲れていたようだったので、バーニィには見せないようにして用件だけを伝えておく。

 
 

 [ No.265 ]


路地裏へ消えた鬼

Handle : “疾駆の狩人”神狩裕也   Date : 99/10/08(Fri) 01:26
Style : チャクラ◎、カゲ、ヒルコ●   Aj/Jender : 23/男
Post : 狩人


『サテ・・・オレハフタタビネムルゾ。アトハマカセタ』
「くくく・・・ご苦労だったな」
心の中で鬼が話し掛けてくる。この力は強力無比だがあまりに長時間使うわけにいかない・・・体に負担がかかりすぎるのだ。
体の構成が再び変化する。盛り上がった筋肉や裂けた口が人間のそれに戻りはじめる。数秒後、神狩の姿は元のものとなっていた。服が破れてしまっていることをのぞけば、だが。
そして、酷薄に眼の前に来ている男女を見つめる
自称“チンピラ”−もちろんそんな訳はない−の男、そしてワーデンの女カブトだ。用件は大体想像がつく・・・が、今は協力するというわけにもいかなかった。
男が渡してくれたコートを羽織りつつしばらく神経が落ち着くのを待つ。力を使った後は血が騒ぐ・・・闘いの衝動が頭をもたげるが、なんとか自制した。
「ここは俺に任せてトンズラこいた方がいいと思うが?」
そう言った男からポケットロンのアドレスを手渡された神狩は薄い笑みをうかべた。
「ではここは任せるとしようか・・・俺は少々行くところがるのでな。残念ながら話に付き合うことは出来ん。縁があればまた会おう・・・」
「途中で服は調達する。これは返しておこう」
コートをウェズリィに投げ渡し、神狩は跳躍する。一瞬後、その姿は路地裏へと消えていった・・・

 [ No.264 ]


Where do wars and fights come from among you?

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/08(Fri) 00:55
Style : Mistress●Regger Katana◎   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


─冥き闇に包まれた中華街の路地、"Lucifer"の影が真理達の足元まで伸びていた。薄暗い光に照らされてまだ痛む左腕を右手で押さえながら、真理は再び光の宿った視線を、壬生へと向ける。
「貴方の弁、確かにそのとおりね…でも、理にかなっていないところがいくつかあるわ」
 疲れと痛みは消えていないものの、迷いがなくなったことで少しずつ思考が冴え渡って来た。真理は軽く肩を竦めた。
「まず、ひとつ。彼女の乗っていたセスナの残骸が発見されたというけれど、では何故、こちらで彼女が乗り捨てていったセスナが発見されるのでしょうね?…残骸だけ発見されて、行方不明のままなのでしょう?」
 左腕から右手を離し、指を1本立てる。
「ふたつ。どうして災厄中の記録を絶対的にいいきれるのかしら?公的にヴァレンタイン一家が全員死亡していても、生き残りがいたとしても不思議はないわね」
 油断なく盾を構える死の卿に僅かに柔らかく微笑むと、視線を戻し、真理は2本目の指を立てる。
「みっつ。彼女が死ぬ運命にあるとしたら一体どこに貴方がたが追う必要性があるのでしょうね?それこそ無駄でなくて?…災厄の秘密とやらを見たかどうかも分からない、そして暫定的に能力者として扱われているに過ぎない彼女を、貴方がじきじきに追いかける必要性がどこに?…可能性だけで確保しに来るのかしら……違うわね、日本軍大災厄編纂室の室長さん?」
 3本目の指を立てる。真理の渾身の一撃によって僅かにひび割れた、ブラックグラスに隠された感情の見えない瞳を迷うことなく射抜く様に見据えて。
 反論する合間さえ与えないまま、真理は自らが気づいた情報と推測に基づいた、論理的矛盾点を皮肉げに言い放った。
 そして……指を折るのをやめると、伊達眼鏡を外し…下に投げ捨てた。
「……人間は自分の足で立たなくてはならないのよ、今の私のようにね。手助けをすることが出来ても、代わりに扉をあけてあげることはやってはいけないのよ。あの子が自ら選択し、それを望むのなら私はそれを手伝うだけ……そして、その判断を誰もとがめることは出来ない、それはあの子が自ら選んだ道なのだから。私だろうと貴方だろうと」
 そういってふっと笑う─真摯な瞳のまま、迷うことなく。
 死の卿の方へと半歩、間合いを詰めて右手をすうっと前に出し、ゆっくりと横に払った。オメガREDの再起動─
「……さて、どうしますか、壬生室長。貴方以外にも彼女を狙う人間がいるはずね。私達のお相手をしている間に横から攫われていっては大変ではなくて?……それと…」
 一度目を閉じ、"Lucifer"を深く、澄んだ眼差しで見据えると再び口を開いた。
「貴方は何の為に、戦うのかしらね?……返答を」

Where do wars and fights come from among you?
                 ──あなたがたの戦いや争いはいったいどこから起こるのか?
                                    新約聖書、ヤコブの手紙、第四章、1節。

http://www.freepage.total.co.jp/DeepBlueOcean/canrei.htm [ No.263 ]


Something hoped and checked hope... "bloody eye"

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/08(Fri) 00:47
Style : Mistress●Regger Katana◎   Aj/Jender : 24/female
Post : N◎VA三合会


とくん、とくんと心臓の動きに合わせて力なく垂れ下がった左腕から激痛が走る。生気のない蒼白な顔を歪めて、真理は己の身を抱きかかえた。闘気という外的要因を失ったことで全身の痛みと疲れが彼女の体を支配していく。
 むろん、それだけではない。堕天使より放たれた言葉の楔が、真理の精神を傷つけていた。
 元来、真理は感情を理性で考えるタイプの人間だった。現在の様に変わってから、そう間がたっていない。覚えて間もない"情"で動く事、それへの揺さぶりに対しての耐性は余りないのだ。その上、彼女が前の事件より引きずっている精神的な疲労は完全に回復していない…それゆえに中華街に羽也と気分転換を兼ねて買い物に来ていたのだから。
─見抜かれていたのだろう、恐らくは。
寒い、余りにも『ここ』は寒い。動揺に侵食されながら、真理は片腕をかばう様に身を抱える。
つき付けられた言葉の前に『答え』を見失っていた。
真理は伏せていた顔をあげ、光の失いかかった瞳で遠くを見た。遠く見えるはLU$T中央区の白い巨塔、様々なネオン。
視線をゆっくりと落とす。目の前には真理を守る様に無言のまま立つ黒き炎を宿した剣と水晶の盾もつ"死の卿"そして──
─冥き闇に包まれた中華街の路地で、ルシファーがこちらを見ていた。

自分達がやろうとしていたことは、無駄なのか? あの守りたいと望んだ少女を死地へと追いやることしか出来ないのか…。

無力感、絶望、焦燥感。ありとあらゆる負の感情が湧き上がってくる。
バージニアを翻弄する『運命』が、それをつきつけた目の前の『男』が、それに屈し様としている『自分』が、許せなかった。
このまま、冥い流れの中に身を任せてしまいたかった、目の前の堕天使は敵なのだ─そう─思おうとした──
─その時、 堕天使の幻惑の魔術が作り出した深き螺旋の迷宮に迷い、自らの激情に流されようとしていた真理のIANUSに着信─それは、彼女が知る限り尤も優しき貴婦人からの便りだった。
『……羽也さん?』
心優しき親友に、無用な心配はかけたくない。真理は大きく息を吐いて流されようとしていた自分を無理やりにでも落ち着かせる。羽也からの連絡ではあちらも襲撃を受けたらしい─先程、壬生がいっていた月村という男のことだろうか?
『…ええ、それでは』
 言葉少なに連絡を切ろうとする真理に、羽也は真理の迷いと恐れを感じたのだろうか?最後にこう付け加えた。
『真理さん、私は貴方を"信じて"いますよ。ですから、どうか。…どうか、貴方が正しいと思った道をお進みくださいね』
心から信じているであろう心優しき貴婦人の言葉は、螺旋迷宮に迷い込んだ真理の精神に──響いた。
ずきりと左腕が痛み、真理は顔をしかめて思わず左腕を見る。目に入ったのは腕にはまっている品のいい装飾を施した人工紅玉の腕輪…それは彼女の帰りを待っているであろう大切な想い人が、真理へと贈った品。
巻き込まれる事と自分の身を考えない無茶では、真理は達人だと笑う想い人は、それでも真理の行動を必要以上にいつも止めないのだ。止めてしまえば真理ではなくなってしまう、それは守るという事ではないと…大切に想うからこそ。
そして……真理が帰ってくることを望んでいる、待っている。
──信じること、願うこと、守ること、そしてそれを望むこと、望まれること。
それが無駄だと誰がいえるのだろう……そして、真理はいったはずだった。美琴にそしてバージニアに選択をするのは貴女達だと──幻惑の魔術に囚われ、忘れていた事を真理は思い出した。
ゆっくりと、真理は視線を腕輪から上げる。目の前では死の卿が堕天使から無防備だった真理を護るべく、油断なく盾の先を定めている。そう、アレックスは知っていたのだ。幻惑の魔術を破り、立ちあがるのは真理自身でなければならないと。
先程すれ違った勇気在るトーキーの少女の顔が、必ず帰ってきてと呟いた守護天使の顔が、隠れ家で真理を待っているであろう探偵の顔が、そして、数奇な運命に翻弄される少女の顔が──頭に浮かんだ。
望まれている、そして、望んでいる。立ちあがることを。

真理はもう一度己を抱きかかえると目を閉じ、ふっと微笑んだ。
「……アレックスさん、有難う。もう迷わないわ」
そしてゆっくりと目を空けると、その紅の瞳には再び油断なく見据える"力"と確信に満ちた光が宿っていた。

http://www.freepage.total.co.jp/DeepBlueOcean/canrei.htm [ No.262 ]


ザンジュウケン、少女を見失う。

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/07(Thu) 23:33
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


「・・・・Shit!!」
少女を見失った途端、紳士を気取った男は荒荒しい傭兵の表情になる。
「Shit,Shit,Shit!!」
道化のように地団駄を踏む。
「あの時、戦ってりゃよかったんダ!力づくででも・・・!」
眼鏡の奥に狂暴な目を光らせ刃を足元に突き立てる。
「・・・BullShit!!」

 [ No.261 ]


standing order

Handle : ”Sworn Sword”九条 誠   Date : 99/10/07(Thu) 23:21
Style : エグゼク◎●、カリスマ、レッガー   Aj/Jender : male/30代前半
Post : イワサキ


路地裏の一室の前に立ちノブを回し開ける。そして横から銃をいきなり突きつけられる
「手をあげて貰えるかしら?」丁寧に冷酷に言い放たれる。素直に手をあげてボディチェックをされる。
「……これはなんなのかしら? 戦う気?」声にさっきをはらみ始めようとする頃合いを見計らって話しかける。
「取引をしませんか、沖 直海さん?」彼女が息を呑むのが聞こえる。そして続けざまに言う
「どうですか、取引と行きませんか? こちらの材料はバージニア氏および秦氏の保護。こちらとしてはそちらのお仲間にくわえていただければ十分です。どうですか?」ややをしてから固い声で返事が来る。
「わかった...だが銃はこちらに渡してもらいましょうか?」言われたとおりに渡す。
「さて、これで信用していただけましたか?」言い沖の方へと顔を向けて微笑する。
果たして銃口は下げられ部屋の中へと招き入れられる。
「では、詳細に入りますか...」言い初めて話し合う。その途中でどちらからともなくおなかが鳴る。
「……おなかが空きましたね。他の人も来られると思いますけども先に食べてしまいませんか?」

 [ No.260 ]


風を感じる場所で・・・

Handle : ”街角占い屋”カルラ   Date : 99/10/07(Thu) 23:06
Style : バサラ◎ ミストレス● チャクラ   Aj/Jender : 22/male
Post : フリーランス


指に挟んだタバコからはまだ煙が立ち昇っていた。
一人取り残された男の当面の問題はよじ登った電信柱から降りること。
おかげで誰も追いかけることができなかった。
解ったことはただ一つ。
ー中華街が、荒れている。
しかし、そんなことは気にするようでもなく思い出したかのように懐からK−TAIを取り出し、コール。
そう、最初の挨拶はいつもこれだ。
この言葉さえあれば名前を言う必要もない。
「もしもし。・・・今ピンチですか?」

 [ No.259 ]


ヒーローの条件?

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/07(Thu) 23:01
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


3人の少女が路地裏を走る。背後に聞こえる足音の数が、段々増えていくのが分かる。その足音が3人の走るスピードを更に速める。
この路地を抜けたら約束の場所まで後少し、そう思った瞬間それは最悪の形をとって現れた。一台の黒いワゴンが現れると出口をふさぐように、その車体を停止させる。ワゴンから黒服の男達が出てくる、各々その手にはSMGを持ちながら。美琴がバージニアを庇う様に前に出る、その顔には必ず彼女を護るとゆう決意が表れる。
(伏せろ!)その声が頭に響いた時、3人は考える前にその声に従う。3人が身体を伏せると同時に、その頭上を銃弾が飛び交う。銃声が止み、3人が起き上がると目の前には倒れ付した男達の姿が目に入る。背後を見ると銃を構えた来方 風土がいた。
「いい、タイミングだろ?」
手を上げて微笑む、その姿は黒を基調としたボディ・アーマーで固められていた。バージニアが悲しげな目で男達を見る、その姿を見ながら風土は苦笑する。
「安心しろ、誰も死んでないよ。気絶してるだけさ」
その一言にバージニアが安心した様に微笑む。
「さて、行こうか!」

 [ No.258 ]


挨拶

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/07(Thu) 11:40
Style : KABUTO,FATE◎●,KABUTO-WARI   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


 物陰から現れた女にウェズは思わず口笛を吹いた。隠れていたことには気配で気がついていたが女だとは思わなかったのだ。
「ワーデンの”Viorett”? 噂には聞いたことある。しかし結構いい女じゃないか。覗き見料金はもれなくサービスと言うことにしておくぜ。しかしできればデートのおまけ付きだとありがたいんだけどねぇ」
 相変わらずの軽口を叩きながら、さり気なく周囲を警戒しているのは昔からの習慣か。
 それともこの仕事の危険性を肌で感じているからか。
「そうそう。自己紹介がまだだったな。俺はウェズリィ。探偵なんかじゃない、ただのチンピラさ。よろしくな、”LadyViorett”」
「!」
 初めて出会った”チンピラ”に名前がしれている事に驚いたのか、彼女の表情が一瞬だけだが変わった。
「知ってる理由かい?自分のシマ内で目と耳広げるのはチンピラの勤めだからな。N◎VAでの噂は若干だが抑えてあるよ」
 ウェズは驚いた表情の美加に軽くウィンクをした。そして自分の足下に伏している死体を見下ろした。自分が手を下したわけではないが、彼の表情には最高の戦士が刃を交えたときだけに浮かべられる、どこか満ち足りた表情が溢れていた。
 長いモスグリーンのロングコート、下に見えるのはやはり軍服。
 しかもこの方の軍服は早々お目にかかれるものではない。
 ウェズはたわいのない会話を交わしながら、必死で自分の頭の中にある情報を色々検索した。この場合一瞬でも判断を間違えればそれはすなわち死につながる。
(俺の記憶が確かならば…こいつはやはり…)
「俺もさっき通りかかっただけなんで、詳しい話はよく分からないんだがな。それよりさっきまで殺し合っていたそこのお兄ちゃんの方が良く知ってるんじゃないの?」
 苦笑しながらウェズは神狩の方を軽く示した。
「こんだけ派手な騒ぎ起こしたんだ。もうじきシルバーレスキューも来るんじゃないのかい?ここは俺に任せてトンズラこいた方がいいと思うが?だけどできればどこかで落ち合ってゆっくり話をしたいな」
 ウェズは美加と神狩に自分のポケットロンのアドレスを手渡した。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/index.html [ No.257 ]


霧の亡霊

Handle : “銀狼” 神楽 愼司   Date : 99/10/06(Wed) 20:25
Style : カゼ◎、カゼ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢26 / 男性
Post : シルバーレスキュー グラウンドスタッフ


「Fire Ballなら、2年前にオレがツブしてるゼ」シンジの言葉に西江樓の主人が目を細めて笑った。

憶測ともつかない揚大人に纏わる噂は幾らでもある。顔役として長として、事業だけではなくその裏に忍ぶ事象にも少なからずその糸を絡めている。
シンジの運ぶシルバー・レスキューからの薬や医療サービスに身を任せる温和な揚大人よりも、夜の闇に戯れて自らも共に走るヨコハマ・ルシファーの族の様な、今目の前に立つ何かに食らいつく冷たい双眸の彼の方がむしろ、シンジには自然だった。
「昨日、ここの店にお客が来たよ」
「・・・で?」SAPSと繋がるモニターに手を触れながら言葉を返す。
揚大人にはまるで何もかも見えているかの様だった。
「霧の壁を越え様としている_____」彼は、ゆっくりとシンジに近づき、モニターに手を触れた。「一日に二人もだ・・実に忙しい」
揚大人の言葉にシンジは背筋が寒くなる。一体この御仁は俺に何を告げようとしているのか。
揚は手を振れたモニターを慈しむかの様に・・いや、扱いなれた盤に触れるかのごとく馴れた手つきで指で叩く。それはある一点の瞬く輝点を指差していた。
「シンジさん・・・霧のむこうから伸ばされた手を貴方は掴むかい? 言うなら助けを求める契約者の手かどうかもわからん。顔と足元の見えない泡沫の様なものだ」
シンジは苦笑いして肩を竦める。既にこの老人は答えを知っている。
「霧を越えて亡国の天使と悪魔が現れたよ、この街に・・・この私の場所に」凄絶な笑みを浮かべながら揚がシンジを見つめる。
「持ち帰るものを持ち帰るべく来た。無論、このLU$Tに堕ちた天使だ。つくものはついてきているがね」
「仕事は仕事だ。たまたまこの契約が天使についたものから響いてきただけの・・・香りの様なものさ」
「シンジさん、君はいつも私を楽しませてくれる」
揚は静かに肩を揺らして、バイザーの内側に映る契約を見つめながら揚大人に返したシンジの言葉に笑った。
「霧に隠された香りを知る者を狩りに日本から手が回った。LUSTに城を持つ者達がその更なる内へ手を伸ばそうとしているがね。霧の歴史を垣間見る事は我々には許されていない。ましてや霧のむこうの歴史を伝える事象そのものは彼らにとってはナンセンスなものだ」
やはりこの御仁には自分の契約が見えているに違いない。心の中で身を震わせる。
「選択が促される契約なんて生まれて始めてだよ、揚大人。シルバー・レスキューは契約者の命を繋ぐ事が仕事だ。そのなにものでも無いと考えていた。実際はどうかもしれないが______」
「助けの手を伸ばすのも、駆り立てるその手に手を添えるのも、無論自由だ。それ以外の選択肢も未だ残っている訳だがね」
揚大人がシンジの言葉を半ば遮るように声を重ねる。
「遅いんじゃないですか・・・もう」シンジのその言葉を待っていたかの様に彼は微笑んだ。
「考えてみるといい・・・銀狼」

会話はあっさり切れてしまった。揚大人はやはりシンジが千早とイワサキの同時契約の発生を受けている事を知っているのだ。選択があることも知っている。今ごろ、彼も「紅玉の瞳」を巻き込んでいるこの自体に考え込んでいるに違いない。
だが一方でシンジはもっと考え込んでいた。自分がこんなところで何をしているのかが一瞬解らなくなりかける。暗殺や引き込みや狩りを黙認しているものには全ての事件が筒抜けに違いない。無論契約もだ。
霧に隠された真実を取り戻そうと願っている者には、正反対の結果を呼ぶかもしれない。
シンジはふと我に返ると、揚大人の双眸を見つめた。
・・・いや、待てよ。日本が動いたと言うのなら、天使についているものは間違いなく霧の向うを見る前に殺されるだろう。 日本だと・・・? 聞き間違えではないだろうな。

契約条項に目を走らせながらそこに連ねられる名前を記憶と記録からあさる。いつのまにか、ぐっしょりと両手と背中に汗が滲んでいた。
「日本軍大災厄史編纂室・・だと?」
北米やオーストラリアはともかく、ミトラスにまでその手を伸ばしている日本だ。
ましてやこの契約条項に出てくる男達は・・・・。

全てを消し去ってきた霧に潜む悪魔だ。
もし、撃ち合ったり斬りつけ合う事になれば__________________死ぬのは自分だ。
B-MAXの走り抜けるその背を睨み付けながら、シンジはバイクに跨った。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.256 ]


高速機動生命体

Handle : Fire Ball   Date : 99/10/06(Wed) 20:09
Style : カゼ(トループ)   Aj/Jender : ?
Post : 日本軍大災厄史編纂室


「シンジさん。」
西江樓の主人はにこやかな笑みをたたえたまま、神楽の後ろを指さした。
赤・青・黒3色のB−MAXがシンジの前を通り過ぎていく。
それぞれ、ドラッグレーサーのようなボディにFire Ballのロゴと炎をデザイン化したペイントをほどこしている。

浜松発動機製 B−MAX
数年前、新進気鋭の2輪メーカー「浜松発動機」が数々の新機軸を盛り込んで開発した画期的なバイク。
外見は楕円型のカプセルにタイヤを付けたような形をしている。
搭乗者はうつぶせではなく、ライダールームに仰向けに寝そべる形で搭乗する。
震動モーターを利用した、二輪独立操舵・駆動システム。航空機仕様のキャノピーで覆われたキャビンは、ライダーシートの前にパッセンジャーシートを配置するとい大胆なレイアウト。
特に運転席はカプセル状にすることでカウボーイシステムの導入を容易にし、加えて、全周360度の視界を表示する網膜投影式のヘッドセットによって、完全な視界を確保している。
さらに現行のWINDSと自社独自の進化型人工知能システムによる抜群の操作性等々。
しかし、そのごてごてと付加された機能やシステムから車体の大型化はさけられず、硬派なカゼの間では「B−NAXはもうバイクじゃない。」と酷評された。
今では一部の交通機動隊でしか使用されていないハズた。

「トーシロが、アレじゃ怪しいと言ってまわってるようなモンだゼ。」
シンジは吐き捨てるように呟いた。
「ゾクがあんなモンに乗るかよ。・・・それに。」
そして、かつての彼を知るものなら震え上がるような凄みのある笑みを浮かべた。
「Fire Ballなら、2年前にオレがツブしてるゼ。」

 [ No.255 ]


死の卿と鳳の伯

Handle : “デス・ロード”アレックス・タウンゼント   Date : 99/10/06(Wed) 12:45
Style : カブト=カブト◎●,バサラ   Aj/Jender : 32?/Male
Post : Servant of Nite and Death


「ほう‥‥じゃああんたの部下と、俺は似た者同士だったというわけか」
 視線を消すブラックグラスからは、何も送られてこなかった。
 恐らく、さっき感じた力だろう。自分と同じ、夜の力を血に宿した者の予感。だがそれは既に消えていた。鳳の紳士もそのことを分かっているのだ。
 ブラックグラスをあるべき所に嵌め直してからは、スーツの彼に余裕が戻っていた。剣をずらし、相手の様子を窺う。冷静に、的確に、全ての状況を観察しながら。平静な神経に押さえられた魂の奥底の部分が興奮していた。真理の様子を見ても分かる。鳳の紋章を持つこの戦士はただ者ではない。秘せられた帝国の密命を帯びた――とびきり危険な特使なのだ。
「俺を雇い直すかい? 相談には乗るが、死神より高い契約量が払えるかな、ミスタ・ノーブル・バード」
 続く男と真理の会話は、アレックスには分からない点も多かった。だが現在までの状況から、容易に推測がつく。この中華街で重大な事件が継続しており、極めて重大な選択を、男は真理に迫っているのだ。
 ちらりと目をやる。真理の顔色がやや変わっていた。揺るがぬ闘志に溢れていた顔に動揺が混じっている。紅い瞳に込められた氷の刃の光が、男の魔術の前に溶けそうになっていた。
――負けるんじゃない。君の紅玉の瞳は、何にも屈したりしないはずだ。
 アレックスは油断なく、災厄の秘密を守り続ける目の前の男を盾の先に定めた。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/nova/stajR/alex.htm [ No.254 ]


迷走

Handle : ”LadyViorett”我那覇 美加   Date : 99/10/06(Wed) 07:37
Style : カブト◎=カゼ●=カブトワリ   Aj/Jender : 28/female
Post : フリーのカブト/元”麗韻暴”二代目頭の兼業主婦


 物陰から月村と神狩、羽也の対決を見ていた美加は彼らの様子を見ていた。
 もしかしたら今回の依頼で関係ある事があるかもしれないからだ。
 しかしその杞憂は無駄に終わった。
少なくとも神狩と羽也は敵対関係ではなさそうだし、敵対しそうな月村は神狩の手によって倒れた。
 「お見事…。だけど少々頂けないね。服やぶれてるぜ?」
探偵が神狩にコートを手渡す。
彼は煙草を深く吸い、煙草の煙を吐く。
そして、
「タダで覗き見はいけないと思うぜ?」
美加のいる所へ声がかかる。
「・・そう言うつもりではなかったけど、さすが探偵さんね。
私はナイトワーデンから派遣された”Viorett”っていうの。」
 敵対していない事を表示するために武器を下にさげ、両手を上げて彼らの前に現れる。
「今の一件、私が今受けている依頼と関係あるんじゃないかと思って物陰から見ていたのよ。」
 二人の瞳が真意を探る様に美加を見つめていた。

 [ No.253 ]


・・・HOW ARE YOU?

Handle : “薄汚れた鑑札”沖直海   Date : 99/10/06(Wed) 02:17
Style : フェイト◎カブト●レッガー   Aj/Jender : 24歳/女性
Post : フリーランス(NIK)


作業に没頭していた沖が、ふと視線を上げた。
・・・足音・・・
ここは路地裏、通り縋るものはほとんどいない。
それでも皆無とはいえないだろうが、この足音は只の通りすがりではなく、明らかに目的を持ったものの確かな足取りで、この隠れ家に近づいてくる。

手近な椅子の上においてあった大き目のバッグ(念の為に持参していた武器や防具、その合間に中華街に来てから仕入れたドラッグと食料が押し込んである)から、愛用のトンプソンを取り出した。
そのまま、気配を殺してドアの横の壁に張りつく。
相手は一人・・・ならどうにかなる。

沖はそのまま、扉が開くのを待った。
かちゃり。
ノブがまわる・・・

http://village.infoweb.ne.jp/~fwje8355/okimasami.htm [ No.252 ]


攻撃力が上がった!

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/06(Wed) 01:01
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


闇の中を走り抜ける。向き合う二人が見えたような気がするが、無視する。風土が着いた先にあるのは、一軒のインド料理店だった。パシャ、それが店の名前だった。
閉店中の看板を無視して店の中に入ると、薄暗い店の奥から男が出て来る。
「閉店中の看板が読めんのか、さっさと出て行け!」
恐らく体重が100kをくだらない巨漢のインド人が、凄い剣幕で怒鳴る。それを涼しい顔で聞きながら答える。
「ゴードンから、連絡が入ってるはずだけど」
風土のその一言で、巨漢の態度が一変する。怒った熊の様な顔が、借りてきた猫の様に大人しくなる。
「若いとは聞いておったが、こんなにも若いとは」
「以外かい?」
「まあ、以外と言えば、以外じゃな。だが、言われた物は全て用意しておるぞ」
風土は頷くとポケットから、クレッド・クリスを取り出す。男はクレッド・クリスを受け取ると、それを読み取り機にかけて目を丸くする。
「お前さん何者じゃ、ランクAの市民が武器を買いに来る何て聞いた事がないぞ」
「只の、騒動好きな大学生さ」
そう答えると、風土は男からアタッシュケースを受け取る。一度中を点検すると、ケースを手に店をでる。
「さてと、合流するかな」

 [ No.251 ]


螺旋迷宮

Handle : 羽也・バートン   Date : 99/10/06(Wed) 00:15
Style : ミストレス◎カブト=カブト●   Aj/Jender : 26歳/女性
Post : フリーランス


目の前で、繰り広げられた剣戟。鬼と化した神狩に一瞬言葉を失いつつも、彼女は自分のやるべきことを思い出し、彼のサポートに回るべく動きやすいように間合いを取る。もちろん、神狩の邪魔にならぬように気を配りつつ。
しかし、同時に羽也の体に悪寒が走ったのは事実。神狩が上げた勝利の咆哮に思わず、一歩退いてしまったのであるから。
……だがそんなことは、考えてはいけない。今は、そういう時ではない。今は彼女達の方にこそ気を配るべきなのだ。
彼女達を追っていた男とは一応の片がついた。羽也は死者に黙祷をささげる。間接的ではあるが、人を殺してしまった事に後悔の念を覚えて。たとえ、やらなければ殺されるとわかっていても。
鉄扇をしまって、1度目を伏せる。今、何をすべきなのかを思い出す。ここにいるのは、神狩と自分と探偵と、最後に男の死体。
探偵が神狩にコートを手渡す。その様子をひとしきりみてから。
気が付いたら、神狩を支えていたトーキーはいなくなっている。
「…こちらはなんとかなりましたね。…では、私は急いでおりますのでこれにて。」
この状況ではにっこりと笑う事など、出来ない上に不自然だ。羽也はいつもとは違う眼で神狩に語りかける。相手も彼女の様子に少しばかり、目を細めて興味を示したようだ。
内心は、早く真理と連絡を取りたい一心で焦っているのだが。嫌な予感が、羽也の胸を締め付けているのだ。
…はやく、はやく。彼女の元にかけつけたい。焦りが羽也を捕らえようとする。
焦りを振りきるように彼女は凛としてきびすを返し、足早にその場を去る。

それから、真理へポケットロンで連絡。コールは3回。用心のため、IANUSの方へつなぐ。
「真理さん?ええと、こちらは、なんとかなりましたわ。はい、……えぇ」
話している様子から、彼女の心なしかおかしい事に気付く。しかし、時間がないのは事実。
「では、私はあの場所でお待ちしております。あのこのことをよろしくお願いいたしますね。…ご武運を」
切りかけて、少し考える。……今、彼女に言わなければならないこと。声の調子からすると恐らく、迷っている…。
「真理さん、私は貴方を“信じて”いますよ。ですから、どうか。…どうか、貴方が正しいと思った道をお進みくださいね。」
今度はためらいなく通信を切る。溜息一つ。空を見上げて。
そのまま、彼女は路地裏に消える。

 [ No.250 ]


just ice that you'll get.

Handle : ”Sworn Sword”九条 誠   Date : 99/10/06(Wed) 00:06
Style : エグゼク◎●、カリスマ、レッガー   Aj/Jender : male/30代前半
Post : イワサキ


「見失ったか...」呟く。これだから他人の部下は使いたくないんだと思いながら自分の部下に命令し予定していた場所へと車を向かわせる。予想が正しければ彼女はそこへ到着するはずだ。

 中華街へと到着する。一言軽く呟き車から降りてそこの一室へと一人で歩いていった...

 [ No.249 ]


ミッシング・リンク

Handle : “監視者”壬生(ミブ)   Date : 99/10/05(Tue) 22:41
Style : クグツ◎・チャクラ・カゲ●   Aj/Jender : 30代/男
Post : 日本軍大災厄史編纂室 室長


「ミスタ・タウンゼント。」
「あなたはたしか、月村と同じ闇の力を操るのでしたね。」
そう言うと、壬生は感情のこもらない視線をアレックスの端正な面と黒い炎を宿した剣に向けた。
「あなたでも良かったのかもしれませんね・・・」
小暗い笑みをもらし、ひとりごちると改めて真理に向き直った。
「解りませんね。なぜ、死ぬ運命にある少女のために命をかけるのです?」
「あの娘は殺させないわ。」
「ちがう、そうではないのです。」
傷つきながら、なおも闘志を瞳に宿す戦姫を手で制し、彼は続ける。
「我々が手を下さずとも、彼女は死ぬのです。」
「?」
答えの意味がわからず、体を強ばらせる真理の横で、アレックスはどんなスキも見逃すまいと、冷静に状況をうかがっている。
「私は言ったはずです、あなたがたの行動が無意味であると。」
「彼女はここから、元の時代に帰ったにせよ、帰れなかったにせよ、二度と歴史に姿を現すことはありません。 記録では、彼女の乗っていたセスナが残骸で発見されたのみ、とあります。」
「そんな事を信じると思っているの?」
言い返す真理の顔は、しかし言葉とは裏腹に蒼白だった。
全身に満ちていた闘志が急激に萎えて、かわりにゾッとする予感が押し寄せてきた。
私たちの行動は、無駄なのではないか?
それどころか、彼女を元の世界に返す事は、彼女を死地に追いやる事になるのではないか?
様々な疑問が彼女の心を揺さぶる。
「ヴァレンタイン一族は全て災厄時に死に絶えたそうです。」
ルシファーは哀れな女性の心をさらに打ちのめす。
「それでも、彼女を守りますか?」
「元の時代に返すのですか?」

 [ No.248 ]


伏兵・舞台袖にて

Handle : “薄汚れた鑑札”沖直海   Date : 99/10/05(Tue) 12:55
Style : フェイト◎カブト●レッガー   Aj/Jender : 24歳/女性
Post : フリーランス(NIK)


中華街の一角、人目につきにくい裏路地の一室で、和服を纏った女性が一人、ポケットロンを操っていた。
「と、言うわけなんだけど、協力願えるかな?」
「しかたねえなあ、その代わり、高くつくぜ?」
画面に映るのは、一見優男風の、長髪の男。
「今度、奢りでデートしてあげる。あと、噂のお嬢ちゃんの行き先、教えてあげる」
「バージニアか?」
「中華街の外に出たらしいよ、協力者がいるみたい」
「ありがとよ」
通信が切れた。

ごめんね、真黄さん。ちゃんと埋め合わせするからさ。
悪戯っぽく微笑んで、沖は内心手を合わせた。
無論、彼に渡したのは誤情報。バージニアは中華街を出てはいない、おまけに程なくここへ来る。

そのまま、今日もらいたてのアドレスにコール。
「真理さん?こちらはどうにかなると思います。そっち、頑張って下さいね」
「それはかまいませんが、これからどうします?軍を相手取る事になりそうですが・・・?」
「どうせここまで首突っ込んだ以上、徹底的にやらなきゃやられるのはこっちですよ」
たのしげに微笑んで、言葉をつなげる。
「蟻の一穴ってご存知ですか?堤防を崩壊させるのには、小さな穴一つですむ時もある・・・一泡吹かせてやりましょう、日本軍の馬鹿どもに」
「…窮鼠だって猫をかむわね。甘くみていると高くつくということを教えてさしあげましょうか?」
視線を合わせて、微笑みを交わすと通信を切った。
ここ、秦真理の用意した隠れ家が表舞台になるまで、いまだ若干の時間がある。
「それまで、もう一準備、っと・・・」
沖は更にいくつかのアドレスをポケットロンに叩き込み始めた・・・

http://village.infoweb.ne.jp/~fwje8355/okimasami.htm [ No.247 ]


ザンジュウケン、少女を追う

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/05(Tue) 12:39
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


「・・・ほほう」
紅い瞳の女とその加勢の男(二人とも只者では無さそうだ)の戦い振りを観戦していたいところだったが・・・。
ふいに現れた別の女が赤毛の少女の手を引いていってしまった。
「やれやれ・・・もう少し遊んでいたいのデスが・・・」
別の建物の屋根へと跳ぶ。
「傭兵は財布の中身とも相談しなくちゃイケマセンからネ・・・」
ザンジュウケンは右手にオートマティック、左手に脇差といった長さの短めの刀を持ち・・・
「おにごっこは苦手なのデスがネ。」
少女を追う。

 [ No.246 ]


鬼と機械

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/05(Tue) 12:38
Style : Kabuto,Fate◎●,Kabuto-Wari   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


「…なんだかなぁ…」
 こっちから声をかけたから断られたところで文句は言えないのだが。自分の脇を走り去るトーキーを見送りながら、ウェズはそうつぶやいた。
(…ま、いずれどこかで会えるだろうさ)
 そう思いながら銜えた煙草に火を付け、戦況をじっと見つめていた。決着は早々に付いたらしい。予想していたとおりだが。”鬼”と”人”ではやはり鬼の方が有利と言うことか…。
 彼は神狩が落ち着くのを待って話しかけようとした。しかし見たところ服が破れているようだ。容姿もだいぶ変わっている。その変わった容姿になんの驚きも表さずに彼は神狩にこういった。
「お見事…。だけど少々頂けないね。服やぶれてるぜ?」
 自分の着ていたコートを手渡しながら。
 自分の目は今どうなっているだろうか?
 冷たく光る機械の眼になっていなければいいのだが…

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/index.html [ No.245 ]


ヤクソク

Handle : “ボディトーク”火鷹遊衣   Date : 99/10/05(Tue) 02:23
Style : マネキン◎トーキー=トーキー●   Aj/Jender : 17歳/女
Post : フリーの記者


突然現れた探偵の声は、ほとんど遊衣に届いていなかった。
なぜならば彼女は、あんまりにも自分が愚かしくて、かなりの勢いでディープ入っていたからだ。
尊敬する(尊敬しているのだ!彼女なりに)先輩の声が焼きついて、離れない。

「何をしてるんだ、遊衣。おまえが伝えたいのは、そんなモノじゃないだろう?」
「おまえが、命をかけるのは今じゃないはずだ。」

(あたしって……ちょ〜カッコ悪いんじゃん?)
目の前の流血沙汰の前に、自分は明らかにトーキーじゃなかった。
カッコ悪い…それは、遊衣にとってアイデンティティを丸ごと引き剥がされるほどの響きなのだ。

「あの子を追え、遊衣。真実はそこにあるはずだ。」

だから、立ちあがった。
目線を上げると…神狩と目線がぶつかる。
『行け…ここは任せろ』
何も言わないけれど…視線が、彼女の背を押してくれた。
「…ありがとう」
そして遊衣は、彼ににっこりと笑い掛けた。

……かけっこは、小学校以来、1位しか取った事がないのだ……実は。
踵を返して後も見ずに駆け出す。
声をかけた顔見知りの探偵があっけに取られたような顔をしたが…謝ってる暇は無かった。

走る。
浴びた血が払われるほどの勢いで走りぬける。
呆れるほど、彼女の足は速かった。
ヒールが立てるけたたましい響きが、後から追いすがるような速さであった。


……真理、とその人は言った。
道行の途中、見掛けた真理の腕が、奇妙にぶら下がっている。
一瞬だけ、彼女の真紅の瞳と視線が合った。
だから、遊衣は、立ち止まらなかった…彼女の意思が、いやというほど伝わって来たから。
『彼女のところへ…行って』
痛いくらい、感じた。
真理の悲壮な決意も。
そしてそこに、数人の加勢があったことも、同時に気付いていたから…ここは、もう平気だ。……きっと。

そして、なお進む。
遊衣の足は、二人の天使の背中を目が捉えるまで脅威的な速度で走りつづけたのだった。

「ごめんね、あたしも混ぜてくれるかな…?」
不信げな目を向けてくる(当たり前だ)二人に、遊衣は、にっこりと笑い掛けた。

「真理さんと、約束したから、さ」


 [ No.244 ]


覚醒、そして、決着

Handle : “疾駆の狩人”神狩裕也   Date : 99/10/05(Tue) 02:11
Style : チャクラ◎、カゲ、ヒルコ●   Aj/Jender : 23/男
Post : 狩人


よけることは出来ない。神狩はとっさにそう判断した。このまま突っ込んでは先の二の舞だろう・・・今の肉体では。
「さすがだ・・・冥土の土産に見せてやろう。これが真の鬼の力だ!」
ぞわり。
神狩がそう叫ぶと同時に空気の流れが変わった。
体中の遺伝子が組み変わりはじめる。ありとあらゆる筋肉が隆々と盛り上がり、服が弾け跳んだ。肌の色は赤褐色へと変わり、四肢が肉食獣のそれと化す。口は大きく裂け、そこからは鋭い牙が覗いている。

そして、彼は鬼と化した。

「グオオオオオオッ!!」
人ならぬ咆哮をあげ、2mを軽く超す巨体が突き進む。同時に無限の刃がその体を切り裂く。
ぶしゃっ。
再び神狩を血飛沫が覆った。だが、致命傷ではない。肌の硬質さ、再生能力・・・全てが圧倒的だった。それはそうだ。今の彼は人ではなく鬼、人すら狩る肉食獣なのだから・・・
ぎゃんっ!斬撃をものともせず間合いをつめる。狙いはただ一つだ・・・
次の瞬間、鋼鉄の爪が月村の手首をつかむ。実体さえ押さえてしまえば後はどうにでもなる・・・逆転の発想だった。
「みごとだ、鬼よ。・・・先に逝って待っているぞ。」
「ククク・・・地獄デあエルのを楽しみニシテいる」
血に染まった笑みを浮かべ、鬼が答える。そして・・・
ずばっ!強靭な爪が月村の喉を貫いた。
そのまま強敵の命が消える感触をサディスティックに楽しむ。月村の生命の炎が消えた瞬間
「グオオオオオーッ!!」
「鬼が、勝利の叫びを空に向かい叫んだ。血の愉悦をその表情に浮かべたまま。

 [ No.243 ]


無限刃

Handle : “幽剣”月村千角(ツキムラ センカク)   Date : 99/10/05(Tue) 01:09
Style : カタナ◎・カタナ・バサラ●   Aj/Jender : 30歳/男
Post : 日本軍大災厄史編纂室


神狩が立ち上がる。
死んだばずの男が・・・
月村はその様子をじっと観察していた。
彼はサイコキラーではない、エージェントだ。
無用な闘いはせず、すみやかに任務のみを遂行する。
今頃は室長自らが、目的を達しているはずだった。ならば・・・
自分の仕事はすでに終わったのではないか?
そう思う一方で、この男と心行くまで闘ってみたいという渇望にも似た思いがこみ上げてくる。
目の前の男は、姿こそ同じだが、先ほど彼の幽剣の前に倒れ伏した男とはまったく別人だった。おそらく、そのスピード、膂力、そして気迫にいたるまで彼と同等かそれ以上のレベルにあるだろう。
そして、それは同時に男の後方で鉄扇を油断なくかまえる女性にも言えることだった。
友人なのであろう、彼の倒れる前と今とでは、まったく雰囲気が違う。
おそらく、彼女自身が言ったとおり簡単に倒す事はできないだろう。
しかし・・・
「それも良かろう。」
剣客は初めて口元を歪め、自嘲気味に笑った。
「時間がない、我が最高の技で再びおまえを屠ろう。」
「クックックッ、そうでなくては、な。」
神狩が答える、その口元に凄絶な鬼の微笑を浮かべ。
ゴウ!
月村は軽く腰を落とした姿勢で、闇の剣を振るった。
二度・三度、凄まじい風切り音があたりにこだまする。
「?」
神狩は警戒し、身構えるが、何もおこらない。
やがて回転が上がり、月村のまわりを闇の刃が黒い炎のように乱舞した。
「どうした、剣鬼よ。それがおまえの最高の技なのか?」
神狩が挑発する。
たしかに、今飛び込んでいく事は出来ないが・・・
その時だった、ピタリと月村の動きが止まった。
同時に鬼が獲物めがけて跳躍する。
「あっけない最後だな、月村。」
「そうかな?」
あざ笑う神狩に月村は余裕の笑みを浮かべる。
そのまわりに、暗黒の炎のような斬撃の軌跡が再び浮かびあがった!
しかし、彼はすでに刀を振るってはいない。
「なるほど、空間だけではなく、時間も跳ぶというわけか・・」
まるで憶することなく、神狩が言った。
時間差による幽剣、それがその技の正体だった。
無数の斬撃を身にまとい、月村が迫る。
空中にいる神狩はよける事ができない。

そして・・・
再び血しぶきが舞った。
「所詮・・・カミソリで大木を切り倒す事はできない。」
斬撃を浴び、血に染まった顔で鬼が笑う。
月村の手首を握りしめながら。
「たしかに、幽剣は実体のない剣だ。ならば、実体のあるおまえの腕を押さえてしまえば良いのだ。」
片方の腕を月村の首にのばし、神狩が言った。
「みごとだ、鬼よ。・・・先に逝って待っているぞ。」
それが、“幽剣”月村千角の最後の言葉だった。

 [ No.242 ]


裏の路地から

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/10/04(Mon) 16:36
Style : KABUTO,FATE◎●,KABUTO-WARI   Aj/Jender : 2?/Male
Post : Freelans


『いや、起きてよ…誰か……来てよお!!!』
「んじゃ登場するわ…。“ボディトーク”火鷹 遊衣さん?」
「えっ?」
 ウェズの目の前には依然喫茶店で会話を交わした女性…確か彼女はトーキーとか言っていたが…が腕や髪を血に染めて周囲の状況に戸惑いつつ叫んでいた。
 彼がそこを通りかかったのは偶然であった。”天使”を探すという本来の仕事…だがそれは彼のみに与えられた別の目的があるのだが…で裏路地を彷徨っていた所、耳に仕込んである”イア・オブ・ザ・ドラゴン”が叫びを捕らえたのだ。側にいる凛とした雰囲気を漂わせた女性は確か凄腕のカブト。敵らしきものと向かい合っている男性は確かイワサキの…。
「よぉ、お久しぶり。皆さん忙しそうだよね〜」
 相変わらず軽いノリでぺらぺらと話しかける。彼女の緊張を解きほぐそうと、いつもの彼女の調子を取り戻そうと。そしてこう彼女に告げた。
「ここで会うのも何とやらだし…どう、俺雇わない?緊急だけど安くするよ?」

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/cast03.htm [ No.241 ]


死の卿と紅玉の戦姫

Handle : “デス・ロード”アレックス・タウンゼント   Date : 99/10/04(Mon) 12:04
Style : カブト=カブト◎●,バサラ   Aj/Jender : Male/32?
Post : Sphere of Power of Nite


 大きな力‥‥この街に迷い込んだらしい大きな力は移動しているようだった。この欲望の街の夜を、それを求める多くの者たちから逃げるように。
 一度来たことがあるとはいえ、中華街には細かい道も多い。人通りも少なく、迷路に迷い込んだような気さえした。
 誰か若い女の叫び声は消えていた。別の吠えるような声が遠くから聞こえたような気がしたが、声はLU$Tの夜に吸い込まれ、方角は分からなかった。
少し前に電話で依頼を受けた。“紅の瞳”と呼ばれる華僑の娘を護れと。依頼主は九条誠。N◎VAイワサキのコーポレートだ。だいぶ前、彼自身の護衛についたことがあった。まだ、“銀の守護者”が現役だった頃。モスグリーンのスーツのあの男の二振りの刃が、夜のストリートで縦横に振るわれていた頃。
 所属がイワサキというのが気になったが、先の事は考えないことにしていた。運命の天輪すら操るあの部長のことだ、きっと何か企んでいるのだろう。企業という巨人の命令だけではなく、何か個人的な計画を。そして、彼自身も、契約破棄――それどころか依頼人殺害の前歴ある身だ。
 拡張された聴覚が、路地裏に響く剣戟の響きを捉えた。確かな確信と共に、そちらに急ぐ。目に入ったのは路地裏のひとつで対峙する二人組だった。ここで自分が彼女を見つけるのも、九条氏が天輪を巡らせたせいなのだろうか。
 一人は前の仕事で出会った華僑の娘だ。あの時と同じチャイナドレス、長くつややかな髪。左腕がだらりとされ、右手から伸びる剣が力なく相手に向けられている。そう、雰囲気があまりにも違った。今の彼女が纏っている雰囲気は夜会の貴婦人のものではなく――死地に赴く戦姫のものだ。
 そして、彼女の前で屈んでいる銀髪の男。あまり見かけない深緑系のスーツ。カブトとしての勘が彼に告げていた。スーツは着ているが、あれは黒服のお兄ちゃんでも忠信篤いさらりまんでもない。何かもっと別の、もっと危険な相手だ。察するに――大きな犠牲を払った戦姫の一撃が、緑衣の戦士にようやく一矢報いたというところだろうか?
 他の人間が近づいてくるような気配がしたが無視し、軽く手を振って精神を集中する。デス・ロードの回りに夜の力が集い、彼の姿は霞むようにかき消えた。

「また会ったね‥‥君から連絡してもらうまでもなかったかな」
 真理の少し後ろに現れたアレックスは静かに言った。髪を翻し、振り返る紅玉の戦姫。驚きと共に彼を見つめ返す彼女の瞳にはやはり、研がれた氷の刃の光が灯っていた。
「13のカードが欠けていると、どうも落ち着かなくてね」
 手袋を嵌めた手で彼女を制し、目で合図すると前に出る。
「“紅の瞳”の秦真理。ふたつの盟約により、君を護ろう」
 彼女の前で構えられる盾。翻るコート。彼の右手にはいつの間にか、彗星剣が握られていた。
「ひとつは天輪を操るものとの盟約。もうひとつは死神との盟約のために」
 一振りされた剣に、夜の炎が灯る。
 地面に落ちたブラックグラスを拾うと、鳳の紋章の紳士は体裁を取り繕うように立ち上がった。
 彼の背後には遥か遠く、LU$T中央区の光が見えていた。創成建設のネオンが踊っている。だが光は彼だけをを避けているようだった。汚れたダークグリーンのスーツの回りに満ちている何か――闇ではなく、もっと深い領域に属する何かを避けるように。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/nova.htm [ No.240 ]


バーニィと一緒

Handle : 『親愛なる天使』モリー美琴   Date : 99/10/04(Mon) 09:11
Style : カブト=カブト=カブト   Aj/Jender : 14/女性
Post : フリーランス


「詳しくは解からないが、彼女の持つ”力”の為だ。俺の立場は、面白そうだからさ」
風土の言葉に、美琴は返す言葉を失う。そして、バーニィの方を見てため息をついた。
(まあ、大体予想はしてたけど………)
『面白い』と言われたことに憤っているバーニィを落ち着けるように、そっと隣に立ち、肩に手を伸ばした。自分と同じ位の小さな肩………彼女は今、自分達以外に頼れる人はいない………思い上がりかもしれないが、そう感じていた。
「もちろん守るわ。だから、バーニィの望みが叶うように、協力させて」
真理の言葉を受けて、美琴も続ける。そして、バーニィの顔を覗き込んでにっこりと笑いかけた。
 そして、移動を促されたとき
「………!」
空気の変化を感じ、美琴の表情が一瞬にして変わった。今までの幼い、人懐っこい表情は消え、鋭い瞳のカブトがそこにはいた。
 次の瞬間、扉が勢い良く開いた。そこに見える幾つもの顔。どうやら、敵のお出ましらしい。
 美琴は、バーニィを全身で守れる位置に入り、真理と自分のアドレスを交換する。移動先を確認。
「出来うることならあの子に見せたくないのよ」
その言葉に美琴はしっかりうなずいた。
 確かに、今より平和だったであろう世界から来た女性には、余計な傷を負わせるようなことはしたくない。下手をすれば一生消えることのない傷を………。

「選択肢の答えは………あそこでね。バーニィと一緒に待ってるから」
 真理が話し終えてこちらを見る。
 精一杯の笑顔で真理に答える美琴の隣で、バーニィは彼女の言葉の答えを探しているのか、難しい顔をしていた。
「だから………」
美琴はそこで言葉を切り、泣き出しそうに見えるくらい真剣な表情で真理の顔をじっと見つめた。
「必ず来て。あたし達と、そして、あなたの存在を待っている人たちの為に………」
真理は表情を崩して美琴の頬にそっと触れた。そして、しっかりうなずく。

「いくわよ!!」
「バーニィ、こっち!」
 真理の言葉の後に、美琴は初めて会った時の様にバーニィの手をつかんで走った。
 できるだけ目的地に早く、そして、できるだけ彼女にとって安全な道を選ぶ。

 [ No.239 ]


焦り

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/04(Mon) 07:35
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


風土は其の名が現す様に、風のごとく中華街の路地裏を駆ける。イワサキのクグツ達を僅かな時間で倒すと、真理たちと約束の場所へと向かう。そのスピードは疾風の如く、人が出せる限界をはるかに超えたものだった。しかし風土の顔に浮かぶのは、何時もの笑みでは無く焦りであった。
嫌な予感がする、今まで何度も窮地を救ってきた、自らのマヤカシとしての”力”が告げる。急げと!!
その路地を曲がった風土の目に飛び込んで来たのは、左腕をだらりと下げた真理が、ダークグリーンのスーツをまとった悪魔に、渾身の一撃を打ち込む瞬間であった。

 [ No.238 ]


堕天使の腕(かいな)

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/10/04(Mon) 05:31
Style : Mistress●Regger Katana◎   Aj/Jender : 24/femaie
Post : N◎VA三合会


 IANUSUにアイ・オヴ・ザ・タイガーとイア・オブ・ザ・ドラゴンの起動命令。
鳳の紋章を纏いし男を、薄暗い光に照らされた中華街の奥深くの路地で見た瞬間に真理がとった行動は奇しくもトーキーの少女が取った行動と同じだった。
 堕天使のように男が囁く…それは甘美な誘惑に聞こえる。
「……私に協力を?」
男の酷薄そうな茶色の瞳を薄暗い逆光に照らされて睨み返しながら、真理はいった。その紅の瞳に宿るのはバージニアに見せた優しさではなく……冷徹な氷。
「…そうね、確かに魅力的な申し出ではあるわね……私だけでは貴方がたにかなうわけないですもの」
 勝てる相手ではない、一対一の実力においても…情報収集力においても。理性がそう告げている。現に名前を知られているのだ。
 真理はくすくすと笑い、微笑みを薄めた微妙な表情で…朱色のチャイナドレスの背中に冷や汗がにじむのを感じた。
だが、このまま逃げ切れる相手ではない。ならば……ゆっくりと相手との間合いを計る。
「…ですが、ご存知?」
 すうっと、壬生の瞳から視線を僅かにそらして、オーバードライヴの起動命令。真理の表情に凄絶だがどこか美しい笑みが宿る。陽炎のように真理の全身から紫焔が立ち昇るように…見えた。
「望みは自らかなえてこそ、価値があるものよ…どんなに愚かといわれようともね!」
 再び、壬生を見据えて胸のあたりに当てていた右腕をゆっくりと下げ、オメガREDの起動命令。
強襲。真理は一気に疾走して間合いを詰めた。

……実力が違いすぎる。
 軽いステップを踏んで相手の一撃を紙一重で見切る。いや、それが精一杯だった。
緊張が全身を駈け抜ける、視線が相手の一撃を追う、強烈な一撃が真理を襲う。
─近くに積んであったダンボールが弾け跳んだ。
 壬生を仕留められるとはとは思っていない、ここで命を捨てるわけにはいかない。
せめて…少しでも戦闘力を殺いで撤退する活路を見出そうというのだ。
……せめて、あと一人味方がいれば。
 思わず、“死の卿”との約束を思い出すが……
ないものはねだれない。真理は戦慄と恐れを押さえて緊張した面持ちのまま、利き腕でない左腕を一本犠牲にする覚悟を決める。
「……壬生さん、ゴードン・マクマソンという男、ご存知?」
 圧倒的な力量の差からくる一撃をなんとかしのぎながら真理は凄惨に微笑んで囁く。
ぐきり、と左腕から嫌な音がした。

─真理はバージニアが好きだった。困惑した中でも一瞬だけ見せた彼女が強い意思が。
そして、真理は帰る場所があった。ここで死ぬわけにはいかない。
─そして、真理にをこの迷宮に導き、『情報』を囁いた男が、立ち去る前に吐いた台詞を叩き返してやるまでは!
 その為には目の前の堕天使の腕から逃れなければならない。

「私達の行為が無駄かどうか、試してからになさいな!!」
 そのまま左腕を犠牲にしてフェイントのように体制を立て直し堕天使の腕をさばき、叫んだ。
至近距離からオメガR・E・Dを一閃!

裂帛の気合とともに放たれた一閃は……絶望的な状況の中、堕天使に届いたかに見えた。

http://www.freepage.total.co.jp/DeepBlueOcean/canrei.htm [ No.237 ]


真実の行方

Handle : ミゲーレ・アルキテット   Date : 99/10/04(Mon) 01:44
Style : トーキー◎・フェイト・レッガー●   Aj/Jender : 28歳/男
Post : マリオネット報道局契約社員


「あの馬鹿!」
マリオネットの編集部にミゲーレの怒声が響きわたった。
あわてて、口を手で押さえ、「またか・・」という風に顔をしかめる三田に軽く手を振ると、彼は眼前のミラーシェイド型のスクリーンに投影される情景に目を戻した。
そこには、彼の後輩、火鷹遊衣が目にしたシーンが送られて来ていた。
日本軍の剣客の登場。
そして、噂の赤毛の少女。
いったん、斬劇の場を離れたものの彼女は再び現場に戻り、そして事もあろうに(ここでどなり声をあげたのだ)怪我人をかかえ、剣客の前に無防備な姿をさらしていた。
「自分の命を危険にさらしてどうする。」
ぶつぶつと、今度は幾分まわりを気にして声を落とすと、ヤヌスを通話モードにする。
どうやら、怪我人は自力で立ち上がり、再び刺客に向かったようだが・・・
驚異的なスピードで傷を治癒し、立ち上がる神狩を呆然と見送る遊衣の耳に、いつもの馬鹿にしたような口調ではない、真剣なミゲーレの声が聞こえた。
「何をしてるんだ、遊衣。おまえが伝えたいのは、そんなモノじゃないだろう?」
「おまえが、命をかけるのは今じゃないはずだ。」
いつも、余裕の笑みを浮かべている彼の真摯な表情を見たような気がして、遊衣は息をのんだ。
「いいか、オレ達が命を賭けるのは真実を伝える時だ。」
「あの子を追え、遊衣。真実はそこにあるはずだ。」
それから、優しげな口調でこう、付け加える。
「そして・・・おまえの夢も。」

 [ No.236 ]


露払い

Handle : 来方 風土(きたかた かざと)   Date : 99/10/03(Sun) 23:43
Style : バサラ●・マヤカシ・チャクラ◎   Aj/Jender : 21歳/男
Post : フリーランス


「それじゃ、お任せしますか」
そう言うと来方は、わずかに顔を上げ遠くを見る。
「馬鹿な、この距離で気づくはずがない」
男はスコープから目を外す、そして自分自身に言い聞かせる様に頷くと、もう一度スコープを覗く。そのライフルの銃口の先にはターゲットがいるはずだった。
「それが、気づくんだな〜これが」
その声に、男はライフルを背後に向ける。男の視線の先には、ニヤニヤ笑う来方がいた。
「ばかな」
それが、男の最後の言葉となった。引き金が引かれるより素早い一撃が、的確に男の顎を捕らえ、一瞬にして男の気を失わせる。風土は男が気を失ったのを確かめると、はるか先に在る店の方を眺める。
「後8人と」
そう呟くや、風土の姿はその場消える。15階建ての総合ビルの屋上から。

 [ No.235 ]


ザンジュウケン参上・その2

Handle : “バトロイド”斬銃拳   Date : 99/10/03(Sun) 23:37
Style : カタナ◎● カブトワリ チャクラ   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : フリーランス/ソロ


「みーつけた。」
左手で赤ワインのなみなみと注がれたグラスを弄びながら、ザンジュウケンは建物の屋上からその緊迫した場を
見下ろしていた。
「大きな殺気と小さな殺気・・・。隠された小さな殺気の方が怪しかったのデスが・・・」
にやりと笑って右の人差し指で眼鏡を上げる。
「当たり、ですネ。」
本当は戦いたくてウズウズしていた。が・・・
「くっくっく・・・もう少し観戦するのもまた一興。少し楽しんでからにしましょう。」

 [ No.234 ]


闇の中へ

Handle : “疾駆の狩人”神狩裕也   Date : 99/10/03(Sun) 18:53
Style : チャクラ◎、カゲ、ヒルコ●   Aj/Jender : 23/男
Post : 狩人


ごぼり。
口から血が溢れ出る。一体どのようにしてやられたのか・・・剣筋が全く見えなかった。いや、剣筋という概念自体無意味だ。こんな奴には会ったことがない。
眼の前が暗くなって来た。心臓への一撃は致命傷だったようだ。体に力が入らない。
「いや、起きてよ…誰か……来てよお!!!」
自分を抱えている少女の絶叫を聞きつつ、神狩の意識は闇の中へ落ちていった。
・・・・・・・・・
神狩は闇の中をさまよっていた。ここには数回来たことがある。いずれも今回のように瀕死に追い込まれたときだが・・・
『オマエカ・・・ココニクルノハヒサビサダナ』
何者かの声が響く。それは人間の声というよりもむしろ獣が無理をして喋っているような感想を与える物だ。
『オレノチカラガヒツヨウカ?』
「ああ、久々の強敵だ。お前の出番さ・・・」不敵に笑い神狩が答える。
『ズイブントウレシソウダナ?』
「俺とお前は一心同体。解っているだろう?お前が覚醒した時こそが俺の真の姿なのだからな・・・行くぞ」
『ククク・・・ワカッタ』
・・・・・・・・・・
羽也が月村の斬撃を受け止め、来方がその場に現れた頃、火鷹は神狩に変化が起こった事に気が付いた。
どくん、どくん・・・とまりかけていたはずの心臓が再び活発に活動を始める。それに伴い異常な速度で、各部の傷がふさがっていく。
生命の炎が、再び宿った。
「もういい。どいていろ」
火鷹にそれだけ告げ、立ち上がる。
その雰囲気は先ほどまでのものとはまるで違う。神狩が発している鬼気はもはや普通のそれではなかった。あえて言うなれば獰猛な肉食獣のものだ。眼光、身のこなし、殺気・・・全てが本能的な恐怖をもたらす。
「そいつには借りがある。俺にやらせてもらおう」
来方に無作法に告げ、神狩は再び月村に近づいていった。その眼前で立ち止まり、上着を投げ捨てる。
「かかってこい・・・俺の真の力、見せてやろう」

 [ No.233 ]


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