本牧倉庫街

【ウォーカーガレージ:アールヴヘイムにて】

Handle : “Winged Guardian”アシュリール・ガーディア   Date : 2003/02/14(Fri) 22:29
Style : バサラ カブト◎ チャクラ●   Aj/Jender : 21/♀
Post : Cafe Noirウェイトレス


 コロッセオにほど近い雑居ビル群の中にアールヴヘイムという店がある。ウォーカーガレージと呼ばれるこの一帯では珍しくもないウォーカー専門の 修理工場だ。場内では数人の技師が中型バイクほどもあるウォーカーのパーツに繊細な作業を施している。そんな中、本物のバイクに向かっている青年がいた。
「ボクはもうウォーカー専門なのになぁ。」
「カタイこと言うなよ。昔はもっぱらバイクだったじゃないか。」
 ぼやく青年の背中に向かって声をかけたのは長身の女性だ。襟元でシャギーを入れたショートヘアに褐色の肌が快活な印象を与えている。男性的な言葉遣いが逆に良く似合っていた。
「それに、俺はオマエの腕が気に入ってるんだぜ。」
「誉めてくれるのはありがたいけど。ああ、これはちょっと時間が要りそうだよ。」
「そんなにやばいのか?」
 女性が青年の目線の先を覗き込む。が、致命的な症状は見て取れなかった。女性が訝しげな顔を向けると青年は肩を竦めた。
「部品が手元にないんだよ。発注はしてあるから2,3日で届くけどね。」
「もっと早くならないのかよ。」
「適当な部品でよければすぐに仕上がるけど。それでいい?」
「良くないに決まってるだろ。」
「じゃあ部品が届くまで我慢だね。」
 女性は立ち上がって仕方ない、という体で両腕を広げた。女性が見上げた天井には明り取りの天窓があり、LU$Tの空を小さく切り取っていた。

 [ No.1 ]


【ウォーカーガレージ:アールヴヘイムにて2】

Handle : “Winged Guardian”アシュリール・ガーディア   Date : 2003/02/23(Sun) 07:10
Style : バサラ カブト◎ チャクラ●   Aj/Jender : 22/♀
Post : Cafe Noirウェイトレス


 休憩時間を告げるチャイムが鳴り、技師たちが休憩用のスペースへ集まり始めた。女性のバイクを弄っていた青年も手を止めて立ち上がる。

「アシュリールもどうだい?コーヒーぐらいならご馳走するよ。」
「ああ。いただくよ。」

 青年が自販機から缶コーヒーを取り出してアシュリールに投げ渡す。アシュリールは片手で受け取るとプルタブを起こした。

「特車隊の年頭視閲式の記事が載ってるぜ。」
「ああ、これね。絵を見てると良く解るんだが、支部の連中とは全然装備が違うんだよな。」

 テーブルに置いてあった端末を見ていた技師たちの間でウォーカー部隊の話題が持ち上がった。アシュリールが聞くでもなしに聞いていると、青年が会話に加わった。

「支部の本隊と特車隊の装備は色からメーカーまで何もかも違うらしいね。特車隊のほうは殆どが馬渕精機製で装備もウォーカー戦用としては火力が大げさすぎるし。」
「画面ではそぶりを見せてないけど連携も上手くいってないって話だな。」
「今や本隊と特車隊は夫婦で言えば家庭内別居ってやつよ。どっちが先に家を飛び出すか見ものだわな。」

 端末の画面を中心に身勝手な解釈と憶測が飛び交う。アシュリールはそれらを聞きながらふと思ったことを口にした。

「俺なら飛び出す前に相手を叩きのめすけどな。」

 アシュリールの一言で場が一気に静まり返る。何か不適当なことでも言ったのだろうかと思ったがそのままコーヒーの缶を口に運んだ。

「お嬢ちゃん。そいつは行動としては正しいがシャレにはならんぞ。」

 一番年長の技師が苦笑いしながら応えた。その言葉で周囲に和やかさが戻り、再び会話が始まった。

 [ No.2 ]


港の黄昏時(ありえる日常)

Handle : 少年A   Date : 2003/03/02(Sun) 19:29
Style : エキストラ   Aj/Jender : 13/♂
Post : ガクセー


ドボンッ
 ゴミを海に投げ込むと,勢いよい水音がした。
 最初の頃はこの音にビビったもんだが,今じゃこの程度じゃ誰も来やしないのは分かりきっている。
「病気とか大丈夫かな・・・」
 そういえばジョージは今日が初めてだった。ついさっきまで興奮して誰よりも楽しんでいたのにチッチャい奴だ。
「大丈夫,病気は陰性だ・・・きちんとチェックしたからな。」
 タイチ(親父がイワサキ薬品に勤めていることを自慢さえしなければいい友達だ)が家から持ち出してきた医療キットを軽くたたいて威張る。
「ナンパ(強姦)にリスクは付き物さ。お子様にはその辺りがまるで分かってない・・・」
 俺がみんなのリーダーとして新入りのジョージに心得を叩き込もうとしていると,
「マナブ,もう塾の時間だぜ。」
 イジュンが現実に引き戻す。ヤバイ・・・!!塾まで時間がない遅刻したら大変だ。
「でも殺しちゃって良かったのかな・・・」
 ビビリのジョージがブなんかツクサ言っているので俺は言ってやった。
「あんなプーのメスなんか生きてたって社会の役に立たない・・・未来ある俺たちの暇つぶしになって正解なんだ。」
 俺は親父のようなクグツにはならない。千早みたいな大企業のエグゼクになるんだ。だから,これぐらい当然認められる息抜きだ。当たり前のことをなんでこいつは理解できないんだろう?俺はジョージが可哀相に思えた。
「いくぜ」
 ギッたキグナスで俺たちはそこを後にした。

 [ No.3 ]


【ウォーカーガレージ:アールヴヘイムにて3】

Handle : “Winged Guardian”アシュリール・ガーディア   Date : 2003/03/08(Sat) 17:54
Style : バサラ カブト◎ チャクラ●   Aj/Jender : 22/♀
Post : Cafe Noirウェイトレス


 工場の作業が再開し、アシュリールは愛車を青年に任せて事務所へ向かった。店舗を兼ねた事務所の奥では社長の矢作幾郎がトロンのディスプレイの 前で腕組みをしていた。アシュリールはフロアを埋めるウォーカーの縮小模型や3Dホログラムのプロジェクターをかき分けるようにして矢作に近寄った。

「お久しぶりです。」
「何しに来よった、このガキめ。」

 言葉とは裏腹に矢作は満面に笑みを浮かべてアシュリールを歓迎した。畳んであったパイプ椅子を広げてアシュリールに渡し座るよう促す。

「いや、今日はもう帰りますから。先日ウチの店長が話した件ですが、アレについてはいかがですか?」
「そうだな、悪い話ではないと思うが。」
「受けてもらえるんですか?」
「まだ決まったわけじゃない。だが、非常に魅力的な提案だった。」

 店の交渉がうまくいっていることを矢作の言葉から読み取ると、アシュリールは椅子を戻して一礼した。

「ありがとうございます。ではそろそろ失礼します。」
「ああ。イセリアさんによろしく伝えておいてくれ。」

 [ No.4 ]


水上タクシーにて

Handle : “断罪の光”シド・バーゼル   Date : 2003/03/09(Sun) 02:16
Style : カリスマ◎● カゲ カブトワリ   Aj/Jender : 29/♂
Post : 「大陸開放同盟」執行委員長


一見地味ではるのだが、LU$TとN◎VAを結ぶ交通を語る上で、小型船舶による水上タクシーの存在を抜きにすることはできない。特に表通りを堂々と歩けない立場の人間にとっては、最も重要な交通手段なのだ。たとえば、テロリストとか。

「旦那ぁ、冷えるから中で待ってたらどうですかい」
髭面の船長がシドに声を掛ける。彼も違法物品や犯罪者の移送を専門に請け負っている業者の一人だ。
「いや結構」
シドは夕闇に輝くミナトミライの夜景を眺めている。
「旦那も夜景なんぞ眺めるんですかい」
船長もシドの職業を知っている。
「あの光を見るたびに思うのだよ……あれだけの繁栄を生む為に、どれほどの犠牲が生まれているのか、とね」
「ハハハハ、旦那は相変わらずだぁね。で?」
船長は豪快に笑う。演説に付き合わされるのは毎度のことなのであまり気にしていないらしい。
「知っているかい、世界中で、毎日3万とも4万とも言われる数の人間が餓死しているという」
「へえ、こう言っちゃ何ですが意外と少ないもんですなぁ」
「そう。だが同じぐらいの数の人々が凍死または病死……ともかく劣悪な環境と貧困が直接の原因となって死んでいるのだよ」
シドはさらに語り続ける。
「さらには犯罪や紛争に巻き込まれて死ぬ人の数は、それこそ膨大な数に上る。よく権力者が吐く台詞に『偉くなればなるほど、寿命が縮む』というのがあるが、それこそ笑止。連中が一人死ぬ間に、持たざる者が何人死んでいるのか考えたことがあるか」
「はぁ。その格差を埋めるのが旦那の仕事ですかい」
船長は話半分にしか聞いていないようだ。が、シドは気にしていない。
「そ んな単純な話ではないさ。いくら腐肉に群がる蝿を追い払ったとて、腐肉を除かねば蝿はまたそこに沸く。目先の歪みを正しても根本を放置しては意味がないの だよ。そう、例えば目の前の人間を一人助けたぐらいで正義面する連中がいる。何が正義か、笑わせてくれる。それこそ最も恥ずべき行為だ。病んだ世界が視界 に入っていながら、それを当たり前だと甘受し、それでいて現実を……」
演説は延々と続く。

 [ No.5 ]


【ウォーカーガレージ:再びアールヴヘイムへ】

Handle : “Winged Guardian”アシュリール・ガーディア   Date : 2003/03/19(Wed) 00:32
Style : バサラ カブト◎ チャクラ●   Aj/Jender : 22/♀
Post : Cafe Noirウェイトレス


 3日後。再びアールヴヘイムに赴いたアシュリールは青年が整備した愛車の仕上がりに満足そうな笑みを浮かべていた。

「流石だな。預けたときより速く走れそうだ。」
「僕の手にかかればコレくらいはね。」

  青年が胸を張って答える。自分の技量を誇ることをあまりしない彼がそうするのは今回の仕事が会心の出来であるということをアシュリールはよく知っていた。 アシュリールは青年にクレッドクリスを渡すとヘルメットを被り、数日振りの愛車のシートに跨った。青年が備え付けの端末にクリスを通し、代金を引き落とし た後でアシュリールに戻した。

 アシュリールがエンジンを回す。鋭い咆哮が上がってあたりの音を掻き消した。

「すまなかったな。今度はオマエの『専門』で頼むからさ。」
「それってどういうこと?」
「言ったとおりの意味だよ。」

 今ひとつ飲み込めていない様子の青年をそのままに、アシュリールがバイクの轟音と共に去っていった。

(アシュリール、退場)

 [ No.6 ]


波止場のドラッグパーティー

Handle : 拷巣徒雷堕亞=GHOST RIDER=   Date : 2003/04/06(Sun) 22:44
Style : カゼ◎ マヤカシ● カタナ   Aj/Jender : 15〜20
Post : 非行助長集団(いわゆる族)


単車のサークルの中で,
メンバーがヤクをキメて円になる。
【総長】がヤクでトランスに入り,歴代の「先輩」達を呼ぶと,歴代の 「先輩」達の幻影(ヴィジョン)が現れ宙を舞い始める。心地よいエグゾースト音と共に初代総長が空を疾走する頃にはパーティーは最高潮に達し,狩ってきた 女どもは,もはや死体のようになっていた(生きてはいる。生きていないと単車や燃料と交換できないのだから)。
今日入ったばかりのガキどもは,女とヤクで狂ったようにはしゃぎ,そのうちの一人が「先輩」の霊に呼ばれ海に飛び込む。
 全員が爆笑する中,そいつは馬鹿みたいに笑いながら沈んでいき,パーティーはさらに盛り上がっていった。

 [ No.7 ]


「契約成立」

Handle : “氷刃”イセリア・アイスブランド   Date : 2003/06/04(Wed) 20:03
Style : カリスマ● フェイト エグゼク◎   Aj/Jender : 28/♀
Post : “Cafe Noir”店長


 アールヴヘイムのフロアの奥、トロンや工具が雑然と置かれたデスクを挟んでイセリアと矢作が向かい合っていた。矢作はイセリアから手渡された書類に目を落としていたが、やがて顔を上げると満足そうな笑みを浮かべた。

「以前もうかがったとおり、これは我々にとっても非常に面白い仕事です。」
「ありがとうございます。」
「ただし、お互いにとって克服しなくてはならないことが一つだけあるのですが。」
「それは?ぜひ仰って下さい。」
「我々が作り上げるものは一つの作品です。ですからそれに相応しい場所を与えてくれることを約束していただきたい。」
「もちろんです。私もこれらの“妖精”たちをガレージに押し込めておこうとは考えていません。」

 イセリアと矢作の二人が立ち上がって固く握手をした。

 [ No.8 ]


【手向けの花は、暗闇の海に消えて】

Handle : “抜け道屋”燕 ユウジ   Date : 2003/06/10(Tue) 19:26
Style : カゼ◎ レッガー ニューロ●   Aj/Jender : 18/♂
Post : フリーランス/探偵助手


 重く圧しかかるように広がる灰色の雲は、結局夜になっても晴れることは無かった。倉庫街に通じるこの道から臨む海は暗く、深く…。そう、確かあの日も月の無い嫌な夜空だった。
 
 中央区から郊外へと伸びる直通道路は、眼前に本牧倉庫街を見下ろすこのあたりから、大きなカーブを描きながら新東京湾と並走を始める。ガードレールのすぐ向こう側、5,6m下にはもう海が見える場所だ。
 ガードレールすれすれに停めた愛車にもたれかかって、ユウジは目の前を通り過ぎる車を眺めていた。この時間、ここを通る車は決して多くは無い。この時間にここを支配するのはカゼ…走り屋やゾクたちだ。
 3年前のあの日、ここを走り抜けた少年たちがいた。街の中心部から倉庫街までのタイムアタック。ただ速く走り抜けることのみを追求した、命知らずなレース。…そして一人、ここから突き抜けて暗闇の海へ消えた少年がいた。

「ったく…。らしくないことしてるよな、毎年」

 誰に聞かせるでもなく、夜空に呟く一言。そして、真後ろの海へ投げ込む花束。白い花は黒い波にさらわれ、深い海へと消えてゆく。ユウジは自嘲気味に口元をゆがめると、もたれていた愛車から手を離し、ヘルメットに手を伸ばす。

「感謝しろよな…。こうして毎年墓参りしてやってんだから」

 中央区側の車線から、いくつかのヘッドライトがこちらを照らし出す。あの日と同じ顔ぶれが、仲間の消えた海へと向けられていた。

「よし。それじゃ行きますか」

 ユウジは仲間たちを迎えるように、微笑した。

 [ No.9 ]


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