ヨコハマ中華街&新山手


カメラの向こう側と隠れている事実

Handle : 久高 風海香   Date : 99/05/30(Sun) 03:00
Style : トーキー◎=マネキン●=カリスマ   Aj/Jender : 20/female
Post : フリーランスのトーキー


風海香は今までの状況を写し続けていた。
その傍らミゲーレからの情報を思いだし続けながら次のカメラアングルを考える。
『記録上ではカーマインは確実に死亡している。
そして彼を埋葬し、後で死体を回収したのはブリテンだ。』
そして彼がブリデンの貴族の妾腹の子で幼い頃から残酷な性癖があり12歳の時に無差別殺人で警察につかまっている。
本来死刑もしくは終身刑になる所を国が目につけて身元を引き取り、非合法エージェントとして暗躍していた。
後に監査員を殺して脱走。
そして世界中を逃亡していたのだが最後に企業警察に偽装したブリデンのエージェント達によって射殺された・・・
ならどこかでブリデンが動くはずだしここをシマにしてる三合会も黙っているはずがないはずだ。
さっきの『蛇』といい、カーマインの身体の状態といい、まだ何かがそろわない。
おとなしすぎるからだ。
彼らの動きを撮りながら考える。
なぜ?どうしてなのか??
『古の蛇』とは三合会、いや漢民族の物なのか??
そしてカーマインを白くした物は何なのか??
そしてアジームが奪ったアタッシュケース。
いくつかのピースが繋がるがまだ空いたままだ。
下手すると災厄前の香港返還時からからんでくるのか?
データクリスを入れ換えている間に考えていた瞬間、すざましいスパーク音と_共に水蒸気が充満してきてそこから女性を抱えたカーマインが飛び出てきた。
「まだ生きていた?!」
風海香は夕闇の中、中華街を駆けていくカーマインを追って「NEO関帝廟」へ走っていった。

http://www.age.ne.jp/x/y-tomori/cgi-bin/nova/index.html [ No.95 ]


[ Non Title ]

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/29(Sat) 21:57
Style : カゲ◎●・カタナ・ニューロ   Aj/Jender : 28歳/男
Post : ?


「GUAAAAAAAAAAA!」
カーマインの絶叫が辺りにこだました。
煉は動けない死神をその龍のアギトを思わせるサイバーアームに捕らえると、大型の肉食獣がするように一気に噛み裂いた。
ブチン!
驚くほどあっけなく、カーマインの体が下腹の辺りから両断される。
吹き飛んだ上半身が店の奥に消えた。下半身は煉のすぐ側でしばらくバタバタと不気味なダンスを舞っていたが、やがて動かなくなった。
怒りに燃えた破壊の女神は、油断なくあたりを見回すとさらに完全なるとどめを刺すべく店の奥に歩を進める。
と・・・
ジリリリリリリリ
突然、店内のセキュリティが作動し、スプリンクラーが勢い良く水を吹き出した。
たちまち足下に水たまりができあがる。
その人工の豪雨の中、丁度カーマインが吹き飛んだ方向に女がひとり立っていた。
いや、正確には一人ではない、女は背中に何かを背負っている。
それは、人の上半身だった。
「STOP.」
ソレが口を開く。
女の体に巻き付けられた数本のワイヤーが、店内の照明に反射してキラキラと光った。
その内の一本が女の首にうっすらと血をにじませている。
「た・・・すけて。」
女が涙声で言った。サーモンピンクのスーツが水を吸ってどす黒く変色している。
まるで、全身に血を浴びたようだ。
「Don’t move.動くなよ、これからオレ達はデートに出かけるんだ、追いかけてくるなんて野暮な真似はなしにしようぜィ。Baby.」
カーマインの口元に例のアルカイックスマイルが浮かぶ。
煉が動きを止めるのと同時に、女がギクシャクとぎこちない動きで走り出した。
一気に店外まで走り抜けると、動かない煉に振り向きカーマインが歌うように告げる。
「Lady.これは、オレからのご褒美だぁ。」
次の瞬間、店内の水に電流が流された。
凄まじいスパーク音が響き、水蒸気があたりに充満する。
不運な店員の体を使いカーマインは夕闇の中、中華街を駆ける。
その眼前に「NEO関帝廟」の中国風の屋根が浮かび上がった。

 [ No.94 ]


投了

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/05/29(Sat) 14:01
Style : クロマク◎、エグゼク、ミストレス●   Aj/Jender : 26/♀
Post : オフィスレッドフォックス


ライの言葉を聞き、ルージュは眉をしかめた。
“ハンドブック”と結線して確かめるまでもない。
そもそも、ゴードンがここに彼女を派遣した意図が不明だった。だが、これではっきりと分かった。
ゴードンは彼女の能力が必要だったわけではない。ただ、華僑系のエグゼクとしいう存在が必要だったのだ。
(あンの男……)
この場にアーサーと老華僑がいなければ、思いっきり絨毯を踏みつけるところだ。
ルージュは、苦労して笑みを作ってみせた。
「……どうやら、この問題はあなた方にお任せしたほうがよろしいみたいですわね」
「ということは」
アーサーがこちらに目を向ける。
「手を引く、と?」
「ええ。わたくしが命じられたのは、医療用ナノマシンの素体回収ですわ。“あの世のモノ”ではないですもの」
ルージュは肩をすくめた。
もはや、この場に彼女がいても、益となるものは得られないだろう。
駒を詰まれた指し手にとっては、“投了”こそ名誉ある撤退だった。
「飲茶、なかなかのお味でしたわ。機会があれば、また訪れたいですわ」
プラチナムを一枚、テーブルの上に置き、ルージュは身を翻した。入り口へむかう彼女に、ライが影のごとく付き従う。
すでに、ウェイの車が主を出迎えるべく待っていた。ルージュが軽く手をあげると、ウェイは一礼してドアを開く。
「お呼びになった警備員はいかがなされます?」
「この車の警備を。それ以外には、いっさい手出し無用です」
それだけ言って、ルージュは車に乗りこんだ。

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.93 ]


チェックメイト

Handle : “魔人剣”御道ライ   Date : 99/05/29(Sat) 01:22
Style : カタナ◎●・チャクラ・バサラ    Aj/Jender : 31歳/男
Post : 御道総合警備保障


中華街の伏龍が動きはじめ、周りはあわただしい雰囲気に包まれはじめた。
その中で、それまで傍観を決め込んでいた千早のボディガードが動いた。
御道は影のようにルージュの側に寄ると、他の者に聞かれないようにそっと耳元で囁いた。
「急いで、ここを離れた方がいいぞ。」
「?」ルージュが怪訝そうに見る。
「さっきの楊のじじいのくちぶりからすると、鍵を所有していると見て間違いないな。それもかなり前からだ。」
「そんな事はわかっているわ。」ルージュが不機嫌そうに睨む。無理もない、そのせいでつい先ほど痛い目にあったばかりなのだから。
「そんなに前から彼らが持っていたのなら、何故千早が、いや、あの男が気付かなかったんだ?」ルージュが息を飲むのが御道には、はっきりと聞こえた。
「まさか・・・」
「そのまさかだ。」
「アンソニーが千早の職員である以上今回の件を追求されるのは逃れられない。なら、だれかが、裏で糸を引いていたことにすればいい。」
「そしてなぜか、この店ではブリテンのエージェントが三合会の大立者と会っている。」
「大陸出身の千早エージェントもいる。」と、憎々しげにルージュが続けた。
「カーマインの死体を引き取ったのがブリテンだっていう事は、トーキー連中なら調べればすぐに解るだろうしな。」
御道が真剣なまなざしでルージュを見つめた。
「ゴードンとの通話記録を調べてみろ。賭けてもいいが、あんたの“保険”の分も含めて何も残っていないはずだ。」

 [ No.92 ]


Alastor

Handle : "Load of Minster"ユージーン   Date : 99/05/28(Fri) 21:42
Style : カリスマ◎クロマク=クロマク●   Aj/Jender : 27/M
Post : フリーランス/元ブリテン国教会


司教殿。
「・・・ああ、失礼。ぼーっとしていた」
昔はよく呼ばれた、今では皮肉と苦笑を込めて言われるその呼称を聞いてユージーンの思考は現実に引き戻された。今の今まで彼は考え事をしていた。
”神々の神”、古の蛇。
ギリシア語で「復讐者」や「復讐する」という意味の名の『アラストール』。彼がこのヨコハマの地で復活を成しえようとしている。古くはシナイの神で、あらゆる天災を司る荒ぶる神だったという。彼は運命、力の本流を作り出しその力は人知の及ぶところではない。墜ちた天の軍勢の第4副官であったが、結局その力は使われることがなかったらしい。アラストールの究極の破壊の力を持ってしても、光を掲げる神の軍には叶わなかったのか、それともあまりの強大さ故に使われることそのものが恐れられたのか。アラストールはまた、地獄に落ちた罪人を裁く殺戮の天使とも呼ばれている悪魔だという。ならば、彼はここにいるべき存在ではない。彼の裁きの力は、地獄へと墜ちていった罪人に振るわれるべきもの。天国とは言えない、罪人が一人もいないとは決して断言できないこの世界。しかし、この世は地獄ではない。たとえ地獄のようだと言う者がいたとしても。
「情報ですか。何故あなた方がそんなことを聞く?確かに”我々”は一番最後に彼を所有・・・というのも変だが、まあ、所有していた。だが、あなた方とて先程『あれは我ら漢民族のもの』と言った。ならば、こちらに尋ねなければならないような情報などないのでは?」
脚を組み替えて楊を見る。そして相手の出方を計るように視線を反らし、今度はルージュを見やる。先刻、楊に提案を蹴られたのだ。彼女が黙っているわけはあるまい。
腕を組みながら、楊の方へ目を戻す。
「・・・などど子供じみたやり合いをする気はないから、安心してくれ給え。貴方からみれば若輩者に過ぎない私でも、それぐらいは心得ているよ」
大人をからかって反応を見て楽しむ子供のような顔をして、ユージーンが笑う。
ユージーンは古の蛇、アラストールが国家間の問題にまでなりかねないほどの甚大な被害を引き起こす前に、封じられるなり滅ぼされるなりすればそれで良い。カーマインの白鑞化の原因・・・おそらくルージュのいう肉片の回収と関連があることであろうが、この際それは彼にとっては問題外である。何かの折り、交渉が必要になるのかも知れないがそれは今彼がすべき仕事ではない。
自分のスタンスを再確認して、楊に切り出す。
「こちらの持っている情報はそう多くはない。カーマインが最愛の恋人のように大事にしているアタッシュケースには、アラストールと言う名の悪魔が封じられていること。もう一つはかつてブリテンでアラストールを封じるときに使われた記録がある、ということ。この二点が”我々”の持つ情報の全てだ」
「・・・何故、その悪魔の封印が解けたのだ?阻止しようとはしなかったのか」
「仕方なかったようですよ」
「なんだと?」
これだけの惨事を引き起こしておいて、仕方ないの一言で済ますつもりなのか。言外そんな意味をにおわせて楊がきつい口調で問い返す。
「彼は誰も気がつかないうちに封を破ったらしい。何らかの要因が働いたことは確かだろうが、それがなんなのか私は知らない。”我々”が気がついたのはブリテンでのテロが起こる直前だよ。アラストール封印の伝承が残る遺跡がこれでもかというぐらい破壊されていた」
「・・・記録というのは」
ユージーンがアラストールについて簡単な説明をする。楊もそれついては事前に心得ていたようで、説明に軽く頷いた。
「キリスト教化が進んでから後は、アラストールの領分は地獄にやってきた罪人への断罪だ。即ち彼はあくまで死刑執行人であり、裁判官ではないと言うことになる。死刑執行人がわざわざ出向いてきて、これから罪を犯すかも知れない人間にデスサイズを振るうと思うかね?」
「つまり、かつてアラストールを呼んだ・・・召喚した者がいたということだな」
「その通り。記録というのはまさにその召喚儀式に関することだ。昔アラストールの脅威に晒された人々は、その記録を元に彼を封印したということだよ」

http://www.teleway.ne.jp/~most [ No.91 ]


はじまらない話─細やかに砕かれた硝子の破片

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/05/28(Fri) 21:28
Style : カタナ◎レッガー●カリスマ   Aj/Jender : 23/female
Post : N◎VA三合会


静かに、ただ静かに事体だけが目の前を通り過ぎていく。

若き猟犬が、そのハンドルにふさわしく“光の弾丸”を放ち、破壊の女神の鉄の顎がカーマインをとらえる。
DAK越しの西江楼では、千早の美しき女性と、ブリテンの司祭、そして、揚大人の交渉が大詰めをむかえようとしていた。
紺色の人民服に見をつつんだ真理の隣には、猫科の動物を思わせるような、しなやかな男─劉 家輝。
「…このまま、纏ってくれればよいのだけれどね」
僅かにやさしいキスの感触が残る、かすかに鬱血した古傷の後を手でなぞりながらDAK画面から目を離さずに、真理がつぶやく。
「“蛇”が“腕”と邂逅しなければ、ね」
同じく観戦モードを決め込みながら、劉が真理にいった。
「まあ、どちらにせよ要は、渾沌を静められれば、良いのでしょう?」
「ま〜ね…少し、つまらないけど仕方ないか」
肩をすくめて、ぬけぬけという劉に真理はくすりと笑って、
「…あら、退屈してたの?」
「君も人の事いえないでしょう?楽しんでいるんだから」
しっかりと見抜かれていた事に苦笑しながら、真理はDAKの画面を見つめる。
(ブリテンさんも事体の早い収拾を望んでいるはず、早めにこちらに情報を提供していただければ、良いのだけど)
DAK越しの状況に、思わず気がとられた。

背後から、足音と複数の人の気配。ゆっくりと振り向く。
「あら…思ったより早かったのね」
真理の冗談めかした口調に、依頼を受けたフリーランス─ウェズリィが、苦笑を浮かべる。その隣には凛とした雰囲気を漂わせた和服の女性。微笑みを浮かべたまま、真理は、ウェズリィ達の方に歩み寄る。
「お約束の『報告書』だ。どうやらあちこちがかなり派手に動いているようだな。そうそう…現場も大忙しって所だった。黒犬様まで御活躍中だったぜ。しかし…」
「ご苦労様です、内容を確認させていただきますね」
軽口をたたきながら、『報告書』を手渡す、ウェズリィを軽く制し、首筋のスロットに差し込み、内容を確認する。

『“蛇”と周辺の動向について』

細やかな硝子のような情報の破片から、彼の経験と頭脳によって組み立てられたのだろう。─かつて、真理はこの探偵の事を「凄腕」と表したことがある。どうやらその認識は間違ってはいないようだ。
ブリテンや千早の動きに関して、推測を交えながらかなり細かく書いてあった。
その情報の中に、いままで真理が聞いた事のない単語が2つ。

「魔女と“アラストール”」

あまり、信憑性の高くない情報としてかかれたその情報に、真理は釘付けになっていた。
(……これは?)
心の奥底から浮かび上がってくる、不安と不快感。
カーマインと相対した時のような、引き付けられる感覚。

沈黙だけが、あたりを支配していた。
話はまだ、はじまらない。

 [ No.90 ]


[ Non Title ]

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/05/28(Fri) 15:05
Style : カブキ◎、カタナ=カタナ●   Aj/Jender : 27/Female
Post : Kriminal


テナントビルのショウウィンドウに叩きつけられたカーマイン・ガーベラ・・・「蛇」。
そして自分の腕。まるで、蛇のような、腕。
腕である蛇は落ち着きを取り戻さない。
ぶるんぶるんと、まるで暴れ馬のように震える。
「『蛇』よ!」
叫ぶ。
「『蛇』よ!」
脳裏をまた文字がよぎった。
[Mode plus : mode "W"]
左腕が変形を始めた。
「私は!」
左腕が先ほどの右腕のように変形を始める。
右腕同様掌から腕全体が縦に5cmほど開く。
だが、ここからが違った。
開いた中に無数の刃が飛び出す。まるで牙のように。
腕がより大きく開く。その姿はまるで狼の顎。
煉は両腕を振り上げる。
(私は・・・知っている。この腕の使い方を・・・この腕での戦い方を!)
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅっっっ!」
ビルのショウウインドウに叩きつけられ動きのとれないカーマインの身体に両腕が囓りつき・・・そのまま咬み千切る。
白蝋と化したカーマインの身体は二つに千切れ、砕け散った!
「・・・っおおおおおおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぅぅっっ!!」
破壊の女神は天に向かって咆吼する。
そして・・・

 [ No.89 ]


切れた煙草、拾った情報(ネタ)

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/05/28(Fri) 15:02
Style : KABUTO,FATE◎●,KABUTO-WARI   Aj/Jender : 2?歳/男
Post : Fleelans


 話はまだはじまらない。沈黙だけが辺りを包む。どうやら<向こう>には手札がないのか、それとも手札を見せるに値する人物とは思われていないのか。
(まぁ…どちらでもいいさ…ハザード前にどこかのいかれたミュージシャンが言っていたっけ。『Let it Be』ってな)
 ウェズは常にそう思う。所詮一介のチンピラに過ぎぬ自分を信用している者など世の中には誰もいない。それでも構わない。「仕事」は少なければ少ないほど責任は軽くなる。それに比例して財布も軽くなる訳なのだが。あと、ただ少し寂しいだけ。
(責任と財布の中身が反比例すれば楽しいのに……そうすれば俺は文字通り『悪徳探偵』なんだろうなぁ…)
 くだらない思考に入ろうとした瞬間、コートの中に突っ込んでいた手に何かが触れた。空になった煙草の空き箱。古ぼけたジッポ。それとポケットロン。
(そうそう…煙草は切れかかっていたンだっけ、か?ついでにネタも欲しいところ)

「わりぃ…煙草切れちまったみたいだ…そこらで買ってくるわ。ちとまっててな」
 そうその場にいる者に告げ、ウェズは部屋を後にする。

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(…盗聴器を含んだセキュリティは…かかっていないようだな)

 誰もいない場所まで来ると素早く辺りの状況を知覚。その後、<イア・オブ・ザ・ドラゴン>に内蔵されている<バグ・ディレクタ>で盗聴器を探索する…が、何も見つからず。

(…まぁ、こんなもんだろうな。もっとも<向こう>も緊急事態だし、『現場』の様子を一から十まで監視しているに決まっている…多分)

 そう思いながらも素早くポケットロンを操作。SC-8の2番。いつも決まったアドレスにただ一言のメールを送るだけの代物。操作を終えて回線を切るか切らぬかの僅かな間をおいて、すぐ返答が戻ってきた。
 ポケットロンの画面に表示されたのは、太いケーブルを全身に巻き付けた金狼のアイコンだけ。

『やぁ…ウェズリィさん…どうもです。いつもお世話になっておりますが、何かご用でしょうか?』

 どことなく平坦で他人行儀な口調。それは、昔共に仕事していた時とは明らかに異なる。彼が自ら埋め込んだ<演神>がもたらす作用だろうか…?それとももうすっかり「闇の住人」になってしまったと言うことなのだろうか…?しかし今も昔も変わっていないこと。それは彼が凄腕のニューロで有る事。そしてウェズの友人(コネ)である事。

「申し訳ありませんが、先ほど指定したアドレスの画像を頂きたい。今の時点から何らかの『動き』が起こるまで。出来ますか?」
『私は一向に構いませんが…何が起こっているんですか?』
「…”蛇”と人間との技比べ、といった所です」

 彼に向かってずいぶん失礼な言い方だろうとは自分でも思う。しかし彼は大して気にする様子もなく、むしろウェズの告げた『”蛇”と人間との技比べ』という言葉に興味を引かれたらしい。瞬時にして窓が開かれ、画像が表示される。先ほど逃げ出した『現場』の様子。
 ”蛇”に降り注ぐ攻撃。次第に白蝋化していく”蛇”。しかしそれをモノともせず、「トランク」に向かって突進を開始する”蛇”を彼はひたすら目に焼き付け、画像は自動的にデータカードの中に収まってゆく。
 しかし次の瞬間、彼の目は丸くなった。旧式の青い三輪トラック。ストリートでしばしば噂になっている「狂える車輪」。それが「トランク」を奪取した光景だった。
(……ちっくしょ! 美味しいところを持っていきやがって! さすが年の功、だぜ)

「画像拾得はこの時点で停止してください。次に、ここに写っている三輪トラックの所持者は誰なのか。そしてトラックのトレースを頼みます」
『分かりました。それだけでよろしいですか?』
「今のところはそれで結構です。よろしくお願いします」

 そう告げると彼はポケットロンを閉じ、元の場所に移動を開始した。
(…あっ、煙草忘れた…)
 そのことに気付いたのは、彼が再び依頼主の前に現れた時であった。

http://www.mietsu.tsu.mie.jp/keijun/trpg/nova/cast/cast03.htm [ No.88 ]


後悔

Handle : “ゲームマスター”ゴードン・マクマソン   Date : 99/05/27(Thu) 23:26
Style : エグゼグ◎・クロマク・カブキ●   Aj/Jender : 40歳/男
Post : 千早重工統括専務


千早アーコロジー内統括専務執務室

「アハハハハハハハハ」
「どうされましたか?」
突然笑い出した上司の様子を冷たく一瞥すると、サヤは何事もなかったかのように聞いた。
モニター上ではカーマインがローリング・フォーチューンによって最後の希望を持ち去られたところだ。
「ハハハハハ・・・・まったく、この男ときたらいつも僕の予想を裏切ってくれるよ。」
ゴードンがモニターに映った旧式の三輪トラックを指さして笑う。
「ん、どうしたんだいサヤくん。ここは笑う場面ではなかったのかな?」
「何を言っているのですか・・・」
悪びれた様子もない上司の姿にサヤは軽くため息をついた。
そして、少し意地悪そうに続ける。
「・・・あまり専務が残念そうでないものですから。」
「私はてっきり、専務がカーマインの封印を解きたがっているのだとばかり思っていましたわ。」
「君は僕を悪魔の使いか何かだと思っているのかい?」
いかにも心外だと言わんばかりに、ゴードンが大げさに肩を落としてみせる。
「そういうわけでは・・・」
「まあ、いい。そう思われても仕方がないしね。」
秘書の言葉を遮るようにゴードンが言った。
「何も、僕はこの街に災厄を解き放とうと思っているわけではないんだよ。」
「それに、カーマインがあの腕を手に入れたからといって何も変わらないよ。人がもう少し死ぬだけだ。ナノマシンの機能を損なった時点でもう終わっているんだよ。」
淡々と続ける上司の姿にサヤの表情が曇る。
「三合会の動きが思ったより鈍かったが、結果としてアジームがフォローしてくれた形になったわけだし、これはこれで悪くない状態と言えるのじゃあないかな。」
「これだけ多くの人が命を落としても、ですか?」
ゲームマスターの物思いをうち消すように、美貌の秘書が問う。
身の内の微かな怒りに唇を振るわせながら。
「そうだよ。」さらりと、ゴードンが言い放つ。
その面には何の感慨も現れてはいなかった。
「手遅れと言えば、ブリテンで古の蛇の復活を“阻止できなかった”時点で全てが手遅れなんだよ。」
その時初めて、彼の顔が後悔に歪んだ。

 [ No.87 ]


“奪取”

Handle : “狂える車輪” アジーム   Date : 99/05/26(Wed) 16:43
Style : カゼ◎● レッガー=レッガー   Aj/Jender : 48/♂
Post : イエローキャブカンパニー"Go to Heaven(GtH)"


 金と黒で飾られた若い猟犬の頭への一撃、そして黒き疾風が通り過ぎた後、疾風の顎はカーマインの右腕を奪いとった。“人間なら”すでに致命傷に達しているはずだ。そう、人間なら。
 当初は不死身かと思われたカーマインも、一台のヴィークルが追突した後、不死でなくなった。いや、その場に居合わせた全ての者が、奴の身体が白蝋化するのを目撃し、カーマインという悪魔に何かが起ころうとしているのを確信した。そう、奴にも弱点があるのだと。奴にも人間と同じように“死”が訪れるのだと。
 しかしそれも、妄想に過ぎなかった。

 カーマインは駆け出した。その顔は歓喜に溢れ、その目は諦めと、さらなる飛躍とを思わせる狂気の光に満ちている。行く手には黒いパンドラの箱。

 全力で疾走するカーマインに一台のヴィークルが並びかける。くたびれた蒼い三輪トラック。はじめは蒼い空を思わせたであろうスカイブルーの表面塗料は、光を鈍く照り返し、所々の塗料が剥がれサビが浮き出ている。運転席から鼻歌交じりのアジームがニカッとカーマインに笑いかける。一瞬目を見開くカーマイン。

「カーニバルに間に合ったかな、Amigo!」

 そうアジームは叫ぶと運転席側のドアをカーマインに向かって蹴り飛ばした。ギシッという金属音とともにドアが宙を舞い、カーマインの視野を覆う。その一瞬の間をついてアジームはブレーキを全開まで踏み込み、アタッシュケースへと腕を伸ばす。しっかりとアタッシュケースを掴み締めると、自らの方に引き寄せた。
 『メキッ』という何か固いものの砕ける音が、アジームの全身を駆け抜ける。残された数本のワイヤーでドアを断裁したカーマインの左脚から繰り出された蹴り。その一撃はアジームの右の二の腕を折った。憤怒と狂気の笑みを浮かべながらカーマインは勝ち誇った。

「Ha! 嘗めるなよ、若造!」

 二の腕から全身を駆け巡る激痛と勝利を確信したアルカイック・スマイルに対し、激昂の気迫でもってアジームは叫ぶ。アタッシュケースを決して放さぬままヴィークルに引き揚げると、残された左腕と驚異のアクセルワークで猛然とトラックをスピンさせた。
 突然迫り来るトラックの横腹にカーマインはワイヤーを飛ばす。だが対象が大きすぎたのとその迫り来る速さにワイヤーはただ表面を引っ掻いたにすぎず、そして蒼い残像にカーマインは弾き飛ばされ、テナントビルのショーウィンドウに叩きつけられた。
 砕け散った硝子の破片が宙を舞い、陽光に反射してキラキラと光り輝いてる。

 [ No.86 ]


古の者

Handle : メレディー   Date : 99/05/25(Tue) 10:34
Style : ニューロ◎、ニューロ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢22 / 女性
Post : LIMNET電脳情報技師 特級査察官


アンソニーの遺言を載せたタクシーに「それ」が接触するのを確認する。

青白く細かな輝点が紅く染まり始め、細かな集合のそれが一つの輝点へとゆっくりと変容して行く。
『・・着床』
メレディーの歪んでいた口元が少し緩んだ。
だが今度は、紅く染まった輝点を睨み付ける。
まだ解決ではないのだ。「厦」によって齎せられるものは消滅ではない。枷による休眠だ。それが眠りである以上、永遠を信じたいが永遠ではない。
蝋の様に半透明の白い結晶へとゆっくりと姿を変えてゆく「それ」を構造物のディスプレイを通して見つめながら、メレディーは思案する。
彼女が限られた時間の中で手を尽くして集めた情報の中には、「それ」の消滅を促す様な物は何一切無かった。まして、いつ眠りが解けるやもしれない「それ」から目を逸らして更に深度の深い海へと潜る時間も無かった。
メレディーは苛立たしく、自らのアイコンを震わせた。
遅すぎたのだ、自分が気付くタイミングが。
いや、もしかしたらアンソニーが自分に微笑みかけたときに既にそうなっていたのかもしれない。彼が自嘲的な笑みを最後に彼女に見せた時点でそう決まっていたのかもしれない。

彼女の錯綜する思案を止めるかの様に小さな通信回線の構造物が現れる。
幾重にもフィルタリングされているこのエリアに直接回線を張る事の出来る存在は限られている。LIMNET本社に何かしらの深い繋がりが有るか・・・自らを含めた人知を超える何かしらの手段が取られたのか・・・・それとも友人か。
メレディーは躊躇なく、構造物に接触する。
構造物を通して、聞こえてきたのは始めて聞く男の声だった。
『Miss.メレディー 、忙しいところ申し訳ありません。私は劉 家輝様の部下の李小東と申します。“蛇”の件で御話したい事が・・・』

劉 家輝・・・古から続くその名にメレディーの本能が何かを告げる。
「もう死ぬ事はなく、悲しみ、叫び、苦しみも無い」
神父に教わった黙示録の言葉が頭の中にまた蘇る。今この自分と敢えてこの瞬間に接触しようと考える相手は永遠の眠りを「それ」に与えうる者なのだろうか。
「腕」の納められたアタッシュケースへと走り出した「それ」を睨む。
もう、誰にも残された時間が無いのは明らかだった。

『はじめまして・・・李小東』メレディーはゆっくりと言葉を紡ぐ。
『“蛇”に・・永遠の眠りを?』

メレディーは李小東の言葉を聞き逃さぬよう、静かに目を閉じて・・・見えぬ身体の耳を澄ませた。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.85 ]


遅れて着いた招待状

Handle : ”無免許探偵”ウェズリィ   Date : 99/05/25(Tue) 09:11
Style : KABUTO,FATE◎●,KABUTO-WARI   Aj/Jender : 2?/M
Post : Freelans


遅れて着いた招待状

 奇妙な光景だった。カーマイン…いや”蛇”に光の銃弾が撃ち込まれ
る。女の腕に仕込まれたアインハンダーが”蛇”の腕を引きちぎらんと
する。これらの光景は、現実とのその余りにもの遊離故に、シネウェア
で大昔見た映画の中の光景にも似て…それとも…いや、これはまさしく
現実。
 慌ててウェズは自分の思考を元に戻した。
 誰も知覚し得ない遠くの物陰に身を潜めつつ、思考トリガーで右目の
<アイ・オブ・ザ・タイガー>に仕込まれたマイクロビデオレコーダー
を作動。彼らの様子が克明に映像に残される。
 そして再び思考の海に飛びこまんとしたウェズの脳裏をある言葉が走
った。
 根城-タタラ街-で一緒に酒を飲んだ…とあるタタラからのネタ…。

『…そういやよ、アンチャン。<ナノマシン>って聞いたこと、あるか
い?』
『いや、初耳だな?なんだい、そのモノなんとかというのは…?』

 それを含んだ”蛇”のに関する周囲の動向は全て「報告書」の形で自
分の内ポケットにデータチップとして残っている。だいぶ前喫茶店で受
けた女からの『依頼』。その一つ目であるから。

 思考作業と平行して周囲を知覚する。どうやら他の連中は皆カーマイ
ンとBHの男、そして女-来崎煉-に目が向き、自分たちの方に注意を払う
者は誰もいないように見える。もちろん当事者同士はお互いのことしか
見えていない。攻撃するにしても撤退するにしても好機であることは確
か。しかし……、

 (…あのBHの男…“光の弾丸”か…。”最後の猟犬”から聞いた話だ
と…とんだおぼっちゃまだという話だが…腕は立つらしい。少なくとも
時間稼ぎにはなるだろう、多分)

 ”蛇”に容赦なく降り注ぐ攻撃の手。しかし、”蛇”はいっこうに怯
む様子はない。

(…まさかあの”蛇”が<ナノマシン>なの…か…?)

 全く根拠のない、己の直感。しかしそれは多くの場合正しいことであ
るのをウェズは経験上知っていた。もし、それが本当であるのならば通
常攻撃は全く無意味という事に他ならない。

(参ったね。それじゃ俺の技は利かないじゃないのよ…。戦略的撤退を
推奨…か)

 そう決めると反応は早かった。素早く首の横に設置されているスロッ
トから技能クリスタルを引っこ抜き、そこにデータカードを差し込んで
今までの録画データを落とす。そのカードを別のポケットの中にねじ込
むと、彼は隣に向かって小声でつぶやいた。

「…今の内だ。ずらかるぞ奈子。俺の直感が正しければ、あの『化け物
』は誰にも倒せない。今のところは、な」

 ウェズの目に飛び込んできた隣の女…確か名前は「奈子」と言った…
の表情は何かをいいたそうな表情にも、突然の発言に当惑している様に
も見えた。いや、血肉沸き立つ戦闘に参加したがっているのかもしれぬ

 その彼女を小声で促し、脱出を計ろうとした瞬間、コートの中のポケ
ットロンが振動を起こした。特徴的な振動…SC-8の8番。『依頼』を行
った女に解放したチャンネルだった…。

(おいおい…いきなり『依頼』の続きかよ?こんな時に…)

 あまりの突然の展開に困惑しつつも、それでも裏道を走りながら素
早く通信内容に目を通す。こういうことは日常茶飯事だ。送られてき
たのはたった一つのデータ…。しかし、今の彼にはそれだけで十分だ
った。

「…わりぃ、奈子。急な『仕事』がはいっちまった。つきあってくれ
ねーか?報酬はゴールド一枚と…上物のチャイナドレス一着ってこと
で手を打たない?」

 くだらない冗談を吐きながら、ウェズは真っ直ぐデータの指定された
アドレスに向かった。
----------------------------------------------------------------

 そして、今、ウェズは依頼主…確か「秦 真理」とか言っていた…の
前に立っていた。

「お約束の『報告書』だ。どうやらあちこちがかなり派手に動いている
ようだな。そうそう…現場も大忙しって所だった。黒犬様まで御活躍中
だったぜ。しかし…」

 『報告書』のデータチップを渡し、いったん言葉を区切るとウェズは
薄笑いを浮かべてこう軽口を叩いて見せた。

「せっかくデートで”蛇”と人間との戦闘鑑賞としゃれこんでいる最中
に呼び出すなんて、あんたも残酷な女(ひと)だなぁ…。滅多にない見
せ物なのによ」

と。言葉とは裏腹に全然悲しんでいないその軽い口調で報告すると、ウ
ェズは次のように言葉を続けた。

「あんたが俺を呼びだしたと言うことは、次の『依頼』があるのだろ?
あんたを護衛するという…な。でもなぁ、どっちかというと俺はその前
に『相手』を撃ち倒しちまう方が好きなんだがね……。それじゃ駄目か
い?もっとも何かの『方法』があれば、の話だが」

 そう…以前、喫茶店で共に話をしていた時、彼女-秦 真理-に向かっ
て、ウェズはこういったことがある。

『あんたの護衛?別に俺でよければかまわんが…カブトやるつもりは毛
頭ないぜ?俺はガンファイターだから、な』

 [ No.84 ]


LOST

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/25(Tue) 03:00
Style : カゲ◎●・カタナ・ニューロ   Aj/Jender : 28歳/男
Post : ?


ハウンドの若き隊員が希望を取り戻すのとほぼ同時に、破壊の女神が行動を起こした。
煉は数メートルをゆうに跳躍するとサイバーアームの形状を龍のアギトの様に変化させた。
そして星也は必殺の気合いを込めて、白光に輝く弾丸を放つ。
銃声と、何かを噛みつぶすような不気味な音が重なり合った。
「GAAアAアア!」
カーマインの絶叫が響きわたる。
彼は、煉のサイバーアームによって右腕を肩口から食いちぎられ、額に2発の弾丸を受けていた。
相変わらず、血は一滴たりとも流れはしなかったが、先ほどのように再生することもなかった。
致命傷。
二人の心中に微かな安堵感が広がる。
しかし。
彼らは失念していたのだ、コレが生き物などではないということを。
突然、カーマインは弾かれたように走り出した。
まったくダメージを感じさせない驚くべきスピードだ。
そして、目指す先にはあのアタッシュケースがあった。
まるで恋人を待つ純情な少女のように、もの言わぬ“ソレ”は歓喜に身をうち振るわせた。 カーマインもまた、全身を包む喪失感に耐えながら、半身を目指す。
「アラストール!よかろう、おまえの提案を受け入れよう。この身をくれてやる。」
「Shit!そのかわりに、奴らを八つ裂きにする力を再びオレにあたえろ。」

 [ No.83 ]


“刹那”

Handle : “狂える車輪” アジーム   Date : 99/05/24(Mon) 16:31
Style : カゼ◎● レッガー=レッガー   Aj/Jender : 48/♂
Post : イエローキャブカンパニー"Go to Heaven(GtH)"


 状況は激変しつつあった。
 決して止まることはないと思い込んでいた“奴”が、いまや地に跪き、白蝋のごとく身体中を変化させていた。
 ポケットロン越しに時々聞こえたメレディーの呟きの正体は、目の前で具現化へとシフトしつつあった。

 美味しい所だけ掻っ攫うつもりだったアジームも、流石にその光景に一瞬呆気にとられた。そしてその一瞬の間に、金と黒で飾られた若い猟犬の手から、光の弾丸が放たれる。

 光の弾丸は迷うことなくカーマインの眉間を一直線に目指している。

「もっていかれたか……」
 コマ落としのスローモーションを眺めるような時間の中、アジームはそう一人ごちた……

 [ No.82 ]


“発動”

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/05/24(Mon) 15:43
  Aj/Jender : 27/女
Post : CRIMINAL


弾き飛ばされた煉は右腕のアインハンダーを地面に打ち着けて衝撃を吸収、さらに反動を加えてそのままきれいなフォームで着地した。
だがそこで動きが止まる・・・カーマインがBHに死神の鎌を突きつけているのだ。
動けないでいる煉の目の前でカーマインは若いBHを・・・
[mode chanj: mode "S"]
脳裏をよぎる不可解な文字列。
(な・・・に・・・?)
そこで煉の意識は一瞬消える。

「アノおんなァ・・・・アノおんなかァッッ! 何故、これォゥ・・・」
死神の装束が白く染まっていく。猟犬が吼える。
「殺人、器物破損、その他の容疑でおまえを逮捕・・・・いや即刻射殺する!」
若いBHがカーマインに弾丸を撃ち込む。光の槍がカーマインを貫く。
煉はその瞬間、先ほどまでの場所にいなかった。
高度10m。足の“IDA-10”で大きくジャンプ。
アインハンダーにさらに仕込まれたもう一つのサイバーアームを起動する。
バクン!
大きな音を立ててアインハンダーが“顎”を開いた。
掌から腕全体に横一直線に線が走り、縦に5cmほど開く。
そして巨大な腕は獣の顎のように牙を剥き出した。肘に線が入り少し腕が伸びる。
肘から後ろに向かって巨大な鉄柱が飛び出す。
「・・・」
煉は無言。なにも喋らず、上空から腕を前に構えて滑空する。
 キィィィィィィィィン!
腕が音を立てる。まるで唸りをあげるかのように。
腕を振り上げて、振り下ろす。
肘の鉄柱が腕に引き込まれ、変形した腕は前に向かって飛び出していく。
そして、腕の顎がカーマインの右肩をとらえた瞬間。
顎は閉じ、そのまま煉は着地。
顎はカーマインの右肩から先を銜えたままである。
カーマインの腕は千切れている、肩口から、むしり取られたような断面を見せて。
煉は吼えた。
ただ脳裏で彼女は疑問を浮かべている。
(何故・・・私は・・・こんな腕をもっている?)
疑問はあかされない。まだ敵は倒れたとは限らない。
警戒しながら、ゆっくりと煉は振り向いた。
そして・・・

 [ No.81 ]


老兵は死せず・・・

Handle : “賭侠”劉 家輝   Date : 99/05/24(Mon) 00:33
Style : 黒幕◎,歌舞伎●,兜割   Aj/Jender : 27歳/男性
Post : 三合会顔役


しばしの沈黙の後、西江楼の主人が重々しく口を開く。
「慌てなさるな、“司教殿”・・・ワシは“彼女の提案”に乗るとは一言も言っておらんぞ。」
「“敵を知り己を知らば、百戦危うからず”と言うが、おぬしは“自分の手札”すら見えておらんようじゃの・・・。ワシが、そんな空手形も見破れんと思うてか?」
と、ルージュの提案を一蹴する。

・・・気まずい沈黙の中、部屋の扉が二度叩かれ、給仕が扉の外より、楊に事務的な口調で用件を述べる。
「楊大人、劉様より映話が入っております。」
「うむ、こちらに繋いでくれ。」
「承知いたしました。」

給仕が去った2秒後には、DAKの画面が立ち上がり、その向こうに華僑の男女の姿が見える。
『楊大人、“例のモノ”は無事到着いたしました。』
「家輝、真理、“渾沌”の現況は?」
『まだ完全には“覚醒”していませんね・・・まだ“共鳴”してるだけでしょう。』
「では、引き続き、監視と“A計画”の準備を頼む。」
『了解。では・・・』
「まぁ、待て。おぬしも、この“交渉”に参加していかぬか?」
『では、楊大人のお手並み拝見といきますか・・・ウォッチャーで構いませんか?』
「よいよい・・・見ておれ、まだまだ若いものには負けんからのぉ」

楊はそこでDAKとの話を切り、何事も無かったように、先程の会話を続ける。
「・・・さて、ワシ等が欲しいのは、“情報”じゃよ。・・・司教殿は、“先の所有者”ゆえ、何か握っておるのでは無いかの?」

・・・その“年老いた龍”の顔を、弾丸の白光が“天光”の様に包む・・・

 [ No.80 ]


Wiz Magik Prezent, Stray Hound aim the Fung

Handle : “光の弾丸”静元星也   Date : 99/05/23(Sun) 22:15
Style : イヌ◎,マヤカシ,カブトワリ●   Aj/Jender : 22/Male
Post : ハウンドN◎VA本部生活安全課


 ミリセカンド単位で激変する情報。星也の頭はめまぐるしく回転していた。
 警告の後に放った弾丸は頭に命中。その後、軍用サイバーウェアを多数埋め込んだ女性が目標を破壊。だが、死神はすべての傷を瞬時に拭い去り、星也に死の宣言を下した。
 22発の弾丸は尽き、残されたのは3秒の懺悔の時間。恐怖に捕われた星也に振り下ろされようとしていた死の大鎌――
「アノおんなァ‥‥アノおんなかァッッ! 何故、これをォゥ‥‥」
 死神のまとう衣が白く変わっていく。星也の頭脳は急速に冷静さを取り戻していった。あのタクシーに何かの仕掛けがあったのだろう。
“あのオンナ”とは誰なのだろうか? きっと誰か、自分と同じ目的の為に動いていた誰かがいたのだろう。迷える猟犬と同じように、この運命の舞台に偶然居合わせた誰かが。
――懺悔の時間は3秒か。カーマイン、その3秒で、ぼくは取り戻したぞ。
 素早くマガジンを取り替え、MP10にAP弾が装填される。同時に星也の心の中で、凍り付いていたものが次々と蘇ってきた。猟犬としての務め、黒と黄金の騎士の誇り、自分を自分たらしめている想いが。
「繰り返す! 特務警察ブラックハウンドだ!」
 牙を剥いた迷える猟犬は、真っ直ぐに蛇の悪魔を見据えた。
「殺人、器物破損、その他の容疑でお前を逮捕‥‥いや、即刻射殺する!」
 白い輝きに包まれていく銃身。続けて響くバーストファイアの発射音。青白い閃光と共に、光の槍が蛇の悪魔へ飛ぶ。

そして‥‥

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/nova.htm [ No.79 ]


解放の呪文

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/23(Sun) 00:22
Style : カゲ◎●・カタナ・ニューロ   Aj/Jender : 28歳/男
Post : ?


「Boy.次はおまえの番だぜィ。」
死神が再び嗤う。
こいつは、本当に不死身なのか・・・
身の内に黒いシミのように広がっていく恐怖と、死の予感に耐えながら星也は自問した。
何か・・何か手だてがあるはずだ。
わずかな希望にすがる思いで眼前の男を観察する。
それは暗闇で無意識に光を求める、人の本能に似た行為だった。
「Don’t Move!」
星也のもの思いをうち消すようにカーマインが叫んだ。
そのまま、視線をわずかに右方に動かし、続ける。
「Lady Monster.いくらおまえが素早くても、ココまで来る間にこのBoyが死ぬ事になるぜェ。」
煉の動きが止まる。
「OK.イイコだ。もっとも今死ぬか、後で死ぬかの違いだけだがなァ。」
「なめるなぁ!」
次の瞬間、星也は目にも止まらぬ早さで銃をかまえると、何かに突き動かされたようにトリガーを引き続けた。
「オオオオオオオオオオォ!」
MP10の奏でる軽快なスタッカートと星也の絶叫が重なる。
しかし、十数発の弾丸にその身をさらしながら、カーマインは更に一歩ずつ、星也へ向かって歩を進めていった。
「ガチン」
そして、ついに撃鉄が無慈悲な音をたてた。
残弾0。
星也の全身を寒々とした不気味な感覚が包んだ。
「All Light.3秒やろう、懺悔をすませろォ。」
星也にはカーマインの背後にデスサイズを掲げた死神の姿が見えた。
しかし、その大鎌が振りおろされる事はなかった。
タクシーが下腹に響く咆哮を上げ、カーマインに向かって突っ込んで来たのだ。
「Ding Ding.」
カーマインは軽くため息をつくと、オーケストラの指揮者のように指を2・3度振ってみせた。
暴走するタクシーは駒のようにスピンするとカーマインの横をすりぬけ、ブティクのショーウンドウへと突っ込んでいった。
再び、星也へと向き直る。
「Fuuu.まったく、奴らには学習能力がないのか?オレには通用しないと・・・・」
「ナンどいぃええエばァ・・・」
「?」
「Holy Shit!アノおんなの仕業かカ・・・いったい何をシたぁ。」
突然、余裕の笑みを浮かべていたカーマインが苦悶の表情を見せた。
そのまま自分自身を抱きしめるような格好で、がっくりと膝をつく。
ギシギシ・・・
きしむような音をたて、星也の目の前でカーマインの肌が蝋のように白く変色していった。

 [ No.78 ]


銀の鍵の門を越えて・・・

Handle : “賭侠”劉 家輝   Date : 99/05/22(Sat) 18:36
Style : 黒幕◎,歌舞伎●,兜割   Aj/Jender : 27歳/男性
Post : 三合会顔役


「ええ、非常に役に立ちましたよ・・・あとは、その“オリジナル”と、最新の補正データがあれば“完成”です。」
 劉は微笑みを浮かべながら、真理に応え、こう続ける。
「さて、楊の爺さんに連絡しないとね。待ちくたびれてるだろうから・・・と、その前に、『有難う、真理』(^_‐)」
 と礼を言いながら、片目をつぶって悪戯っぽく笑うと、左目の古傷に軽くくちづけた・・・。

 そして、何事も無かったように、隣りの部屋でトロンと工具に囲まれている<腹心>の李小東(リー・シウトン)の方に振り向いて、矢つき早に指示を飛ばすのであった。
「“オリジナル”が届きました。あと、どのくらいで出来ます?」
「容量の関係で、7つに分割しなければいけませんが、データが揃えば2秒で・・・でも、補正データがまだ・・・」
「LIMNETのMiss.メレディーに連絡を・・・さっき確認された彼女のプログラムには、そのデータが組み込まれてる筈ですから。」
「解りました・・・至急、連絡いたします。」

『Miss.メレディー 、忙しいところ申し訳ありません。私は劉 家輝様の部下の李小東と申します。“蛇”の件で御話したい事が・・・』

 [ No.77 ]


ゲームマスター

Handle : サヤ・リトヴィノーヴァ   Date : 99/05/22(Sat) 03:29
Style : クグツ◎・カゲ・カブト●   Aj/Jender : 25歳/女
Post : 千早重工統括専務付秘書


「鍵がそろったようだね。」
アーコロジーの一室、夕闇せまるNOVAの街を眼下に見おろしながら男は独りごちた。
「彼女に鍵を渡したのはあなたですね?ゴードン専務。」
彼の背後に、常に影のように付き従う美貌の秘書が静かに問う。
彼は答えない。
千早統括専務付きの秘書、サヤ・リトヴィノーヴァの短いプラチナブロンドが夕日の中で炎のように赤くゆらめいた。
「アンソニーが保険のためにデータを預けて置いたニューロを始末しておきながら、データと鍵を回収しなかったのはなぜです?」
「こんな茶番を演出して・・・」
「鍵は回収したよ。」
「え?」
それが、あまりに何げない口調であったため、サヤは思わず聞き返してしまった。
「“鍵は回収した”と言ったんだよ。」
そう言って彼は穏やかに微笑んだ。
その時、彼女は初めて目の前の男を心から恐ろしいと思った。
“悪魔”は、実は中華街ではなく、ここに、自分の眼前にいるのではないのか?
その考えに、彼女は戦慄を憶た。

 [ No.76 ]


“鍵”─渾沌の住まう盤上で

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/05/22(Sat) 01:33
Style : カタナ◎レッガー●カリスマ   Aj/Jender : 23/female
Post : N◎VA三合会


打ち込まれた銃弾が"蛇"を打ち倒し、そして再生する。
真理を助けようとしたトーキー風の女性は、注意を逸らしている内に外にいってしまった。
しかし、これで彼女も動くのだろう。
盤上にあるすべての事象が動こうとしているのだから。
ポケットロン(SC−8)を操作し、データだけを送る。
これで、以前手配したフリーランスがここにくるはずだ。

微笑みを薄めた微妙な表情を浮かべて、真理は何気なくその建物の中を見渡した。
ふと、階段の手すりのあたりで目がとまる。
階段の手すりにコートが一つ、何気なくかけてあった。
なにか、気になって手にとって見る。
よくみると、それは真理が良く知っている男が良く着ているものだった。

コツ・コツ・コツ・コツ・
階段を上がって行くと、なにげなく外を見ている男の姿があった。
真理はその姿を確認すると、苦笑して大きくため息。
「…貴方には“先見の明”があるみたいね?」
手にかけてきたコートをその男に手渡す。
「道案内にはなったでしょ?」
一見してものの良いものだとわかるスーツと丸い黒眼鏡をしたその男は、真理のほうに振り向くとにこやかに微笑みかける。
「…貴方は西江楼にいるとばかり思ってたわ」
目の前で繰り広げられる凄惨な事態に場違いなほど、そしてそこから生還してきた真理には、その猫科の動物を思わせるようなしなやかな男の物腰に─そして、その用意周到さに苦笑せざるを得ない。
指で、丸眼鏡を直して、男に微笑み返す。
そして、男にこう切り出した。
「…“渾沌”の現出はまだ完全ではない。これが、私が“接触”した感想よ。そしてその背後で蠢くもの達もいまだ…」
男は、その答えを察していたかのように軽くうなずく。
「…私が手配したフリーランス達が背後で蠢くもの達の情報をここに持ってきてくれるわ。しかし…」
真理は目を閉じて薄く笑う。まだ、左目のあたりの古傷の後が疼いているのだ。
「…用意された盤上にいるものたちの中で“蛇”をとめようとするものたちの協力がなければ、あれは止められない。アンソニーの開発したナノマシンが渾沌を現出させていく。
物理的な一撃だけではあれを止める事は不可能に近い…」
そういって真理は、懐に手を伸ばす。
アンソニー・ブラスコの正気が残した遺産。
データ・チップ。
「コピーは、お役立ちいただけて?」
渾沌を静めるために、用意しなければならなかったもの。
データ・チップに記録されていた、ナノマシンそのもののデータとそれを自己破壊させるウィルス。
「…“蛇”を静めましょう…家輝」
ただ、静かに、古傷のあとを手でなぞりながら、真理は劉の方を見ていた。


 [ No.75 ]


彼女の子守り歌

Handle : メレディー   Date : 99/05/21(Fri) 22:37
Style : ニューロ◎、ニューロ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢22 / 女性
Post : LIMNET電脳情報技師 特級査察官


『・・・枷?』
自分の思考に突然広がる考えにメレディーは慌てて見えぬ身体で後ろを振り向いた。
あったはずだ。何処かに・・・何処に確かにあった筈だ。
古くハザードから続くこの延々と広がる情報の海で、過去に、果てしなく広がりつづけるウィルスの構造物が生まれ、我らの網に穴が穿たれ今では考えられない被害が生まれた事があった筈だ。
だが、誰が生み出したのかは分からないが、ある日、その巨大な構造物を、無害な広がりを持つ事の無い一つの構造物へと移行して縛るウィルスが出現した事件があったはずだ。
メレディーは自らの立つLIMNETの巨大な構造物の開放された回線の構造物へと両手を突っ込む。
・・・思い出せ! 過去にそのウィルスが本当に存在したのであれば、必ず社の所有する場に情報が残っているはずだ。きっとLIMNETとこの広い世界が持つ場の何処に歴史として凍結保存されている筈だ。
ナノマシンはその名の通り「マシン」だ。自分が会話の出来ない相手ではない。
だがその名を知らなければ、その存在にかする事すら出来ない。
・・・思い出さなければ!!
メレディーは焦り、見えぬ視線を泳がせて自らを鼓舞する。
自分の記憶を掘り返す刺激を・・情報を求めてドミネートをそして声を拾い集める事を繰り返す。
あまたの映像と音声が彼女の前に現れては消えた。
そして何処から流れているのか、やがて映像と音声が西江樓の店内へと移った。
「・・・これで各自の要望が出そろったね。楊大人は「ケイオス」を、オフィス・レッドフォックスはMr.カーマインの体の一部を。このままだと私一人が孤立してしまう」
かすれかすれに流れてくるのその映像と音声は、きっと誰かが盗ってためたものを流しているのだろう。
メレディーはその場に居合わせるそうそうたる顔ぶれに寒気を覚えた。
『夏に千早に・・・ブリテンまで・・』
夏?! その名前に思考が奔流となって一気に流れる。
今までは恐れながら見つめた楊大人の顔に、今やメレディーは親しみすら感じた。
思い出したわ!!!
深く埋もれた記憶からを引っ張りだされた「厦」を鍵に仕立て上げ、メレディーは深く、ひたすら深く蒼い情報の海へと潜る。
やがて、北米CDCの所有する巨大な蓄蔵型構造物の中に目的の鍵穴を見つけると、神業を呼び寄せるかの如き早業で構造物から凍結された紅く染まったガラスの錐を取り出した。
紅く燃えるようなその色は、彼女に確信を持たせた。
メレディーはアンソニーの血に染まった見えない腕の血液の情報を素早く読み取る。
「それ」<カーマイン>は彼の身体に収まっていたのだ。自らと区別する事無く同化させる為に彼の遺伝情報に深く交わったに違いない。きっと、この血は「それ」の同化を呼ぶだろう。今や人の遺伝情報などは幾度も読まれた。同化を誘発する情報等の加工は簡単ではないが不可能ではない。超テクで越えられる壁だ。
凍結された「厦」に時限解凍を埋める。そして、温かな鮮血に染まる「それ」の宿主だったアンソニーの情報を包む様に纏わせた。「それ」にとっては甘美な的だ。
ドミネートした回線でメレディーはあたりを見回す。
アンソニーから生まれ、そして彼を殺した「それ」。
その恐怖を遮るように取り囲む戦士がそこにいる。
こう言う時に何と自分は無力なのかと涙する。ウェブの中で持つ彼女の力は、その場の外では自らが考えていたよりも力が無い。今は何よりもそれが悲しかった。
自分に救う力が無いのであれば、せめて眠らせてやりたかった。
今時分の手を経て出来たその核で、「それ」に永遠に眠らせる子守り歌を聞かせてやらなければ。その眠らせる力を持つ戦士が幸運にも対峙し、味方している。

タイムリーな事にLIMNET製の制御プログラムで動く無人タクシーがすぐ側を走っている。
メレディーはメーカーの鍵を使い、その車をカーマインに突進させた。
彼女の作ったアンソニーからの遺言を纏ったプログラムの核を忍ばせ、黄色いタクシーが疾走する。
『・・カーマイン、眠りなさい。その忌まわしき記憶と共に』

奴が少しでも電装に触れれば「それ」に枷がはまるはずだ。
「それ」が広がりを持たなくなる。一つになる。始めて一つの物質になる。
後は、周りを取り囲む戦士達に祈るほかない。

蒼く、静かなLIMNETの構造物の中で、メレディーは呟く様に・・歌い始めた。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.74 ]


古い記憶

Handle : メレディー   Date : 99/05/21(Fri) 22:32
Style : ニューロ◎、ニューロ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢22 / 女性
Post : LIMNET電脳情報技師 特級査察官


視野を広げ、視線を上げる。
メレディーの目の前に蒼白く、無数の格子となって打ち震えるストリングの世界が広がる。
何度も改めて見直してみたが、ドミネートした映像回線が作り上げた目の前の構造物のディスプレイに映る騒動の中心となっている大きな輝点は、変わらず、無数かと思われる小さな輝点の集合体である事に変わりは無かった。

『・・・ナノマシン』
口元がゆっくりと歪んで行くのが自分でも感じられる。
LIMNETの北米研究所の実験で、ナノマシンを利用した中継回線の研究は見た事があった。
それは、無数の極細なナノマシンでそれとは目に見えない霧の様に密度の濃い【場】を作り、有線手段とは異なった手段を取ると言うものだった。
研究員がメレディーを前にして笑っていたのを覚えている。
「これはあくまで我々に特化させた形態だ。君らの言う構造物とまではいかないが、我々の生活の中にあるごく身近なものを生み出すには恰好なテクノロジーだよ」
彼らの言いたい構造物がなんであるかはそれとなくわかってはいた。
彼らの言う建築や製造分野から、果ては医学分野にも適用できる事も知っている。
事実、体外臓器手術等に代わる画期的な手段としての発表があった事も無論知っていた。通常、接触すら出来ない場所や環境に有るものに対しての対処に【極細】は恰好の手段だ。
『・・・だけど・・・これはナンセンスだわ』
ドミネートした映像に映る「それ」<カーマイン>・・いや、アンソニー・ブラスコは致死の銃弾を受け、阿修羅の如き鋼の連撃で霧散した。
だがそれは死ではなく、ただの単なる寸劇に終わり、当たり前の様に「それ」が復元する。
銃弾や衝撃のそれで穿たれた傷はのっぺりとした白い断面を見せ、誰もが期待する収束を導く赤い血は姿を見せない。
彼女は記憶を奥深く探った。「場」を言葉にする時、あの研究員は何と自分に呟いていただろう。
決まった場を持つ我々の肉体は、その内に広がる精神と肉体を形作っている。その場を枷を無くすマヤカシとバサラのそれはさほど理論がかけ離れたものでないのだと言っていた。
ならば、ナノマシンのそれはどうなのだ・・・
蒼く・・白く明滅する「それ」の輝点はある時は広がり、あるときは集束する。
まるで枷とは無縁な存在だった。
通常のクラックでは歯も立たず、常識的なハックでは対象が多すぎてまるで意味を成さない。
彼女の傍らにある映像回線の構造物の様に、決まり決まった必要性に準じた型を促す情報も決まりも、それをまとめる枷も無いのだ。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.73 ]


風海香とミゲーレの会話

Handle : ミゲーレ・アルキテット   Date : 99/05/20(Thu) 22:54
Style : トーキー◎・フェイト・レッガー●   Aj/Jender : 28歳/男
Post : マリオンネットワーク


「カーマインを追っているんだって?」
通話の相手はかなり不機嫌そうだった。
「ええ。」
特に隠す必要もないので、素直に答えてやる。
どうせ三田のオヤジさんから聞いているはずだ。
「はぁ・・・」
ため息が聞こえる。
通話相手はマリオネットの同僚だった。
ミゲーレ・アルキテットという黒髪の男だ。
兄が秋河会の幹部だかなんだかで、やたらとレッガー連中に顔がきく。
そのくせ、本人はまったくレッガーくさくない絵にかいたような陽気なイタリアンだ。
何かと風海香を半人前あつかいする。
さしずめ過保護の兄貴といったところか。
いつもの、困ったように髪の毛をかく様子を思いだし、何だか可笑しくなった。
「何がおかしい・・」
その様子を見とがめて、ミゲーレが睨む。
「いいか、コレはやばいヤマだ。カーマインが、じゃねぇ。アレは確かにやばいが、オレ達には関係のない世界のモンだ。」
その関係のない世界にどっぷりとはまっている事は伏せておこう。
「やばいのは、アレの背後の連中だ。オレは事件の最初から調べていてこの事をつきとめた。」
「いいか、この件からすぐ手を引くんだ。カーマインはブリテンの・・・」
一通り話し終わると、気がすんだのか再びため息をついた。
ほんとに良く喋る男だ。
彼の話した内容はたしかに衝撃的だったが、自分の好奇心を止める事はできそうにない。
それは彼も知っていたようだった。
「もう、何を言っても無駄なんだろう?」
うなずく。
「いいか、やばくなったら他人を盾にしてでも逃げろ。いいな。」
さらに何かを言おうとするミゲーレを手で制し、ポケットロンのスゥイッチを切った。
現場では先ほど自分たちを助けてくれた東洋系の女性が若い警官と共に死神と対峙しているところだった。

 [ No.72 ]


TERROR

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/20(Thu) 22:10
Style : カゲ◎●・カタナ・ニューロ       Aj/Jender : 28歳/男
Post : ?


カーマインは動かなかった。
目の前の若い警官から、先ほど一蹴した者達とは明らかに違う未知数の力を感じ取っていた。
もしかしたら自分を滅ぼすことのできるなんらかの力を有しているのかもしれないと、彼の本能が警告を発していたのだ。
星也もまた、決して臆してはいなかったものの、さすがにあの現実離れした光景をみせられた直後では攻め手を見いだせないでいた。
しかし、均衡は突然崩れた。
「おおおおおお!」
獣じみた咆哮を上げて、一つの影がカーマインへ踊りかかっていったのだ。
どこか人間離れした雰囲気をもつ、東洋系の美女だ。
「OK!楽しもうぜィ。」
彼女の接近をすでに感じ取っていたのか、カーマインが無数のワイヤーをのばす。
しかし、星也の放った弾丸がその動きを止めた。
乱入者の目にどこかカーマインと同質の光を見、一瞬躊躇った星也だったが、改めてカーマインに銃口をむけ、トリガーをしぼった。
彼女、来崎煉が敵ではないと警官としての勘が告げたのだ。
頭部に銃弾を受け、動きの鈍ったわずかな間に煉は必殺の間合いへと到達した。
軍用のサイバーアーム、アイハンダーと彼女の持つ人外のパワーをのせた無数の拳がカーマインの前面へと叩き込まれる。
先ほど大型トラックを一瞬でスクラップに変えた凄まじい連撃。
「バシャ」
水面を叩いたような音とともに、カーマインの全身が弾けた。
さらに細かくさながら霧のように四散したそれは、やがて彼らの視界から完全に消え失せた。
うって変わった静寂が場を支配する。
刹那。
「ゴッ!」
鈍い音とともに煉が右方へと弾け飛ぶ。
彼女の背後に実体化したカーマインが、後頭部めがけて右腕を薙いだのだ。
カーマインに染みついた血の匂いを嗅ぎ取り、とっさに右腕でブロックはしたものの、煉は10メートルは吹き飛ばされた。
空中で猫のように身軽に受け身をとると、そのまま何事も無かったようにカーマインへと向き直る。
「ほう・・・」
瞬く間に再生を終えた死神がニタリ、と嗤った。
そして、無造作に目の前の星也に詰め寄る。
「Boy.次はおまえの番だぜェ。」
チリチリとなじみの無い感覚が星也の全身を駆けめぐっていた。
それが紛れもない恐怖であることを彼はまだ知らなかった。

 [ No.71 ]


Smile and Conceal one's

Handle : "Load of Minster"ユージーン     Date : 99/05/20(Thu) 02:38
Style : カリスマ◎クロマク=クロマク●   Aj/Jender : 27/M
Post : フリーランス/元英ブリテン国教会司祭


・・・確かに言いたいことを言ったな。
目の前で繰り広げられる千早と夏(ということにしとこう)の交渉劇をまるきり第三者のような視点で眺めながら、ユージーンは先刻「欲張りなブリテン」と言われたことを思い返していた。ああ、確かに欲張りと言われるかも知れない。
“渾沌”・・・すなわち「ケイオス」の奪還を望む夏、肉片でもいいからとカーマインの肉体の一部を手に入れようとしている千早。ユージーンの目的は基本的な部分で夏と同じものといえるかも知れない。だが、こちらは回収までする義理は、実はない。逆に手元にないほうがよほど良いのだ。物騒極まりない「古の蛇」などどこか他のところが持っていってくれるなら、それに越したことはない。もちろん、こちら側にも提示したい条件はあるが。
席を立ち、たぶん自分のでは無いのだろう、ところどころ錆が浮き決して見た目が良いとは言えない−−だが、どんな高級車も及ばない”経験”を重ねた−−蒼い3輪トラックへ向かっていったアジームを目で見送る。彼の行く手にはやはり一騒動起こるのであろう。出来れば"Rolling Fortune"のお手並みを拝見したいものだ、と叶わないことを考えた。
化粧を直しに、と席を立ったルージュが戻ってきた。つい、と水底の静寂を重ねたような翠の瞳が彼女を捕らえる。
「取り引きは、お受けになりますか?」
席に着いて薄い微笑みを浮かべながらルージュが切り出す。楊が何かを言いかけたとき、それを遮るようにユージーンが口を開いた。
「・・・これで各自の要望が出そろったね。楊大人は「ケイオス」を、オフィス・レッドフォックスはMr.カーマインの体の一部を。このままだと私一人が孤立してしまう」
困ったように肩を竦めてみせる。しかし翠の湖面に波紋の揺らぎは微塵もない。葉の間から差し込む木漏れ日のような、さほど強烈ではない、だが存在感を主張する光が閃く。
「では、荒ぶる「ケイオス」は楊大人へ、肉体の方は他に欲しいという方がいるのかも知れないがLady.ルージュへ。・・・これでよろしいかな?」
「待て、それでは全てを放棄するというのか?」
楊が声をあげる。最初にあれだけの主張をしておきながら、今度は一切の要求を撤回するという。何かしらの思惑があっての発言、と言うことは容易に想像がつくのだろうが、流石に全てのものを相手に譲るというのには驚いたようだ。
「私は一人で立ち回るには寂しがり屋でしてね。出来るだけあなた方の意向には沿おうと思う。まあ、全てを放棄・・・という訳ではないよ、それをしてしまっては私がここにいる理由がなくなる。しかし”完全な”カーマインを引き取ることは困難なようだ」
軽く息をついて、一呼吸おく。
「まず、楊大人。「ケイオス」を貴方に譲るとしましょう。そうなれば「ケイオス」・・・古の蛇はどうなるのか?封じられるのであれば何処に、どのような形でなのか。できればその時、私を場に加えて欲しい。彼を封じず、使うのであれば何に使うのか。この場合はまた別に交渉を申し込ませて頂きたい。そして最後・・・これが一番重要だが、今後彼がなにか重大な出来事を引き起こしたとしても、かつての所有者である”我々”は一切責任を負わない、・・・以上のことを要求する」
静かに、滔々と自らの欲するところを語る。膝の上ではユージーンの長い指を絡ませたり解いたりしている。誰の質問も挟み込ませぬよう、彼は続ける。口元にはわずかな笑み。自信のためか、それとも心の内の計算を悟らせないためか。
「次に、Lady.ルージュへ。こちらはそう複雑な話ではない。なぜ彼の「肉体」ではなく「肉片」でもいいのか、それだけを教えていただきたい」
再び”言いたいこと”を言いおえて、ユージーンが先刻よりもより明確な判断を下せる表情を見せた。すなわち言うだけ言った者が相手の出方を待つ、どこか楽しげな顔。傍らに立つアルバートが、そんな主人の様子を見逃すはずもなく極々小さな苦笑を浮かべた。
「言ってしまえば、私の欲しいものは情報と、”封じた”という確かな事実だよ」
背もたれに深く体を預けて、二人の言葉を待つ。その間、ユージーンは別のことを考えた。
(蛇が動き出した。・・・それにつられて他のモノが蠢動を始めないと良いが・・・)
思わず外を見やる。カーマインに一人の女性が突っ込んでいった。お互い尋常ならざる殺気を発しているのが室内にいるユージーンにも伝わってきた。そして隙のない雰囲気をまとって黒と金の騎士が銃を構えていた。銃口をカーマイン・・・古の蛇に向けて。大破したトラックが視界を遮らんばかりに黒煙をあげている。あそこに立っていた女性達は無事だったろうか。
ふと、昔の小説の一文を思い出す。
赤い戦場と、白い戦場。
・・・・・God bless you in red field.
そして白き戦場にある我が身にも御身の栄光を授け給え・・・あまりあてにはしていないが。
還俗したとはいえ、元牧師とは思えないようなことを考えてから視線を円卓に戻すと、御道と目があった。”紅狐”の雇われボディガードは、名乗ったときと同じように(幾分不敵さを交えつつ)他意のない笑顔を見せる。
円卓を囲む面々、そして外でそれぞれの思惑を秘めて戦う者達。
このような状況でなければ、すぐにでも専属として雇うための交渉を始めるのに。
自らが”戦場”と認識した場で、そこに集う人間達を見ながらユージーンは心の中で深いため息をついた。



http://www.teleway.ne.jp/~most [ No.70 ]


“破壊”

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/05/20(Thu) 01:09
Style : カブキ◎、カタナ=カタナ●   Aj/Jender : 27/女
Post : Criminal


「HAAAA!HAHAハァHAHAハァ!」
ノイズ混じりの哄笑をあげるカーマイン・ガーベラ。煉は何故かその邪悪な血を持つモノを“蛇”として認識した。
「“蛇”よ」
語りかける。小さな声で。
「お前は“何”なんだ!」
かすれた声を漏らす若いBH。
「“何”・・・か」
呟く。
(こいつは・・・私の前で人を・・・殺そうとした。私はこいつを許せない。いや、許さない!)
「“蛇”よ!」
叫ぶように呼びかける。
「お前は私の敵だ」
右腕の“アインハンダー”にこびりついたトラックのブレーキオイルを振り払って、構える。
「お前は、私の、敵だ!」
繰り返す。“修羅”の殺気を解き放つ。再び、内なる獣を解き放つのだ。
「おおおオオおおおおオオおおおおおオオオオぉぉォォォぉォォ!」
絶叫。全身に力がみなぎる。
「オォーケィィ! 楽しもうぜェ」
再生を終えた“蛇”・・・カーマイン・ガーベラはアルカイック・スマイルを浮かべたまま、ゆっくりと姿勢を変える。
そして煉は己の内なる獣とともに“蛇”に向かって大きく跳躍した・・・。

 [ No.69 ]


ささやかな勇気と大きな決断

Handle : 久高 風海香   Date : 99/05/19(Wed) 22:57
Style : トーキー◎=マネキン●=カリスマ   Aj/Jender : 20/female
Post : フリーランスのトーキー


「逃げるのよ!!」
チャイナ系の女性を助けようとして手を伸ばす。

それから後の出来事はアっという間に過ぎた。

瞬間彼女が私を抱えてビルの奥へと疾ぶと同時に
ビルの入り口に黒衣の女性が立ち塞がり突っ込んできたトラックを両腕を使って破壊する。

派手な破壊音を立ててトラックを粉砕してしまった光景を見て風海香は思わずその黒衣の女性を見とれてしまっていた。
そしてはっと気付きIANUSUにすべてのニュースチャンネルを映す様に指示する。
『アチャ〜、しまったなぁ』
事件現場に今いるトーキーが、HOTなNEWZを提供してないのだから。
ミゲーレやジェドなんかはもう紙面を組み上げてしまっているだろう。

「…だいじょうぶ?」
助けたつもりが逆に助けられ手しまった彼女から声をかけられる。
改めてその顔を眺めて見ると人をひきつける美貌を持っていて真紅に染まった瞳が印象的だった。
風海香の心に何かがささやく。
『コノヒトハLU$T三合会ノヒトナノ?!』
「? の殺人鬼が暴れ出した時、たまたま貴女がカメラを構えているのを見かけて、この
ままじゃ危ないって思ったから止めようとして動いたところを見つかったみたいね…ご
めんなさい、貴女を危険な目に? わせてしまって…」
すまなさそうに微笑みかける。
「…申し訳ないのだけれど、私を写すのは勘弁していだだけないかしら?…私も色々と
? って、報道されてしまうと私の命に関わってきてしまうの……ごめんなさい」
彼女は本当にすまなさそうに頭を下げる。
風海香はそれを慌てて止める。
「そんな・・逆に助けられたのは私だし・・・・、
それにアナタを撮る撮らないはここから生きて戻れたらという条件になるけどね。」
と苦笑する。
「それにまだこの事件の顛末まで見届けてないわ。」
彼女の注意が自分からそれると? 口へと走り始める。
三合会がこの事件にどこかとつるんでいようが一枚噛んでいようがこの際一切関係ない。
ただ私は見届けたいのだ。
自分にとって大事な決断の為に・・・
その考えを遮るようにビルから出た彼女のポケットロンにコールが入った。

http://www.age.ne.jp/x/y-tomori/cgi-bin/nova/index.html [ No.68 ]


シルバーウィッチ

Handle : “銀の魔女”エヴァンジェリン・フォン・シュティーベル   Date : 99/05/19(Wed) 20:40
Style : バサラ◎・マヤカシ・カゲ●   Aj/Jender : 外見年齢20代/女
Post : ?


「フン、蛇も意外と役にたってくれるナ。」
一人の女性が廃ビルの屋上から中華街の惨劇を見おろしていた。
マントのような時代がかった黒いコート、それと同色の仕立ての良いスーツ。
まるで闇を纏っているかのようだ。
しかし・・・
彼女から発されているこの寒々とした雰囲気は、何だ。
着衣と対照的な長く美しい銀髪も、名工の手による女神を思わせる白い美貌も、観る者に暖かな気持ちを微塵も感じさせはしなかった。
触れれば斬れる刃、魂をも凍てつかせるブリザード。
そういう雰囲気をもった女だった。
歳の頃は20代くらいに見えるが、眼下の惨状を無表情に見おろすマリンブルーの瞳には老婆のような老成した光さえうかがわれた。
「まあいい、ヤツにはもうしばらく暴れていてもらおう。」
彼女はそう一人ごちると、ゾッとするような微笑みを浮かべた。
「蛮族共はどんな叫び声を上げて死ぬのかナ。」

 [ No.67 ]


Queen&Jakk

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/05/19(Wed) 15:07
Style : クロマク◎、エグゼク、ミストレス●   Aj/Jender : 26/♀
Post : オフィスレッドフォックス


「それで? 具体的にどういった契約を結びたいのですかな」
笑いをおさめた楊大人が尋ねた。愉快そうな表情は、とうに消えている。
ルージュは、ゆっくりと口を開いた。
「いただきたいものは二つ。
一つは、“渾沌”とやらに関する情報。
もう一つは、あそこで暴れているカーマインの“一部”。つまめる程度の肉片なら、くださってかまわないでしょ」
「……それで? そちらからは、何をいただけるのですかな」
「この件に関して、千早の実動部隊が“無茶”しないようにすること。
それと、こちらで把握しているカーマインの情報……物理的に彼を殺す方法は、ぜひ知りたいでしょう?
暴れた挙げ句に西江樓を破壊されちゃたまりませんものね」
ちら、とルージュは外に目をやった。まだ騒動はおさまっていないようだ
「さて、ちょっと失礼」
「……どちらへ?」
「化粧をなおしてきますわ」
そう言って、ルージュは席を立った。ライが付き添おうとするのを、手を振ってとどめる。

トイレのドアを閉めてから、ルージュは、ほっと息をついた。
どうやら、いざとなれば楊大人は千早と事をかまえる覚悟らしい。自分の組織に自信があるのか、それとも切り札のエースでも用意しているのか……
いずれにせよ、向こうの方が手駒が多いのはたしかだ。
「ポーンだけでチェスをやらされている気分だわ」
いや、それとも、彼女自身もチェスの駒なのかもしれない。クィーンぐらいには扱ってもらえるかもしれないが、それでも駒は駒。
指し手は、自分ではなく、あの男だろう。
「あいつ、きっと楽しみながらやってるのよ。そう思わなくって、ウェイ?」
物影に向かって声をかけた。そこにたたずんでいた人物……王衛<ワン・ウェイ>がうなずく。
「はい、大姐」
「ごめんなさいね、こんな所によびつけて」
そう言って微笑みながら、ルージュは自分の首筋にある、IANUSのコネクトを指差した。
ウェイはうなずくと、手首からコードを引き出し、ルージュの首筋に差し込む。
ちりっ、とかすかな刺激の後、ウェイの声が流れ込んできた。結線での会話。面倒だが、盗聴される恐れがない。
【大姐がおのぞみなら、いずこへでも】
【ありがとう。カーマインの様子は?】
【ぴんぴんしています。先ほど、頭部と胸部に銃弾を受けましたが……】
ルージュは顔をしかめた。
【……心も身体も、ヒトじゃないらしいから。普通の方法じゃ殺せないのかもしれないわね】
【それで、これからどうなさいます?】
【楊大人には取り引きをもちかけたわ。是<Yes>なら、“今度はゲームマスター”に掛け合わなくちゃ】
【不是<No>なら……】
【その時のために、貴方を呼んだのよ。車は?】
【用意してあります】
【うちのオフィスの“警備員”は?】
【準備できています】
【じゃあ、そのまま待機しておいて。交渉で片付くのなら、そうしたいし……あのご老人は敵にまわしたくないものね】
【……大姐】
【なに?】
【わたくしがついていなくて、大丈夫ですか?】
ルージュは、ウェイの眼を見た。子供っぽい、すねたような色が一瞬見える。ルージュはくすりと笑い、言った。
【貴方を信頼しているから、もっと重要な役回りをしてもらうのよ。大丈夫、御道氏の腕は折り紙つきだもの】
【……はい】
【じゃあ、そろそろ戻るから。いざという時はよろしく】
ウェイはうなずくと、ルージュからそっとワイヤを引き抜いた。

ルージュが席に戻ってくると、何か言いたげに、アーサーがちらりと眼をやった。
(そう言えば、この御仁とも取り引きしないとね)
内心でそうつぶやきながら、しかし、彼女は西江樓の主人に向かい、口を開いた。
「取り引きは、お受けになりますか?」

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.66 ]


銀の鍵

Handle : “賭侠”劉 家輝   Date : 99/05/19(Wed) 03:34
Style : 黒幕◎,歌舞伎●,兜割   Aj/Jender : 27歳/男性
Post : 三合会顔役


「・・・さすがに、すべて“計画通り”って訳にはいかないね・・・。」
 ビルの窓から、騒ぎを見下ろしていた劉が呟く。

・・・予想より、少し“覚醒”が早かった。
“鍵”が無ければ“門”は開かぬ・・・そして、未だ“鍵”は届いていない。
 彼に出来るのは、待つ事と、“彼等”に期待する事だけ。

彼の背後で“運命の扉”が開く・・・

 [ No.65 ]


ノスフェラトゥ

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/18(Tue) 23:51
Style : カゲ◎●・カタナ・ニューロ     Aj/Jender : 28歳/男
Post : ?


ブライトの放った弾丸は確実にカーマインの頭部をとらえていた。
三合会の襲撃を退けた後の、ほんのわずかなスキをついた絶妙のタイミング。
「いい腕だ。」
その様子を静かに観ていた御道の口からひかえめな、そして最大限の賞賛が漏れた。
パアアン。
渇いた炸裂音とともにカーマインの側頭部が弾けた。
次いでビチャビチャと何かがアスファルトを打ついやな音が聞こえた。
さらにもう一発。
今度は心臓のあたりが弾ける。
頭部の半分を失い、胸に大穴を穿たれたそれは、もはや人間というより悪趣味なオブジェのようだった。
野次馬達から思わず安堵のため息がもれた、そして歓声がまきおこる。
トーキー達はこの事件の見出しと紙面の構成を2秒で組み上げ、本社のナンバーをコールし始めた。援軍の到着を寿命の縮む思いで待っていたSSSの隊員は、ようやく金縛りがとけたようにぎこちない足取りで現場に近づいていった。
スネークの死と共にようやくこの事件も終わるかに見えた。
しかし・・・
「ヒイイイイイィ」
つかの間の幕間が終わりを告げ。
突然の絶叫が第2幕の幕開けを告げた。
一人の女性が震える指でカーマインの死体を指さしている。
そして・・・
彼らは見た、見てしまった。
死んだはずの、いや、死んでいて当然であるはずのカーマインの口元が三日月型につり上がり、あのアルカイックスマイルを形づくるのを。
そして、ゴボゴボと耳障りなノイズのまじった嬌笑が聞こえてきた。
「HAAAA!HAHAハァHAHAハァ!」
それは、現実ではあり得ない、悪夢の中の光景だった。
ブルブルと飛び散った肉片が身震いするように蠢き、フィルムの巻き戻しのように傷口へと戻っていく。
しかも不思議な事にカーマインの傷口からは一滴の血も流れてはいない。
それどころか、当然見えて然るべき骨格や内臓、血管さえも傷口にはなかった。
ただ、容器の中の左腕と同じ、あののっぺりとした白い断面だけが覗いていたのだった。
そして肉片と思われていた物も、よく見れば粘度の高い液体のようだ。
それがスライムのようにのたうち、カーマインへと戻っていく様は、ひどく滑稽で、それゆえ不気味でもあった。
「・・・だ。」
「お前は“何”なんだ!」
言い様のない不安と恐怖にさらされながら、それでもカーマインから目をそらさないでいる若いブラックハウンドの口から、掠れた声が漏れた。

 [ No.64 ]


やさしさと“微笑み”の行方

Handle : “紅の瞳”秦 真理   Date : 99/05/18(Tue) 22:51
Style : カタナ◎レッガー●カリスマ   Aj/Jender : 23/female
Post : N◎VA三合会


死神の見えざる手によってコントロールを奪われたトラックは、タービンエンジン独特の甲高いエンジン音をあたりに響かせながら、弾かれたようにスピードを上げて、自分のいる方に向かってくる。
緊張が全身を駆け抜ける。
それと同時に、頭の芯が妙に冷静になっていく。
こんな状態になったのは、ひさしぶりだ。
(しかし……)
目を薄く細めながら、真理はひとりごちる。

かすかな、違和感。
自分に微笑みかけたのは、"SNAKE"ではなかったのか?

にげまどう通行人をはねとばしながら、自分達にむかってくるトラックを冷静に─驚くほど、冷静に、見つめて真理は腰を低く落とし、いつでも横に飛べる体制を取ろうとした。ぎりぎりまで引き付けて、飛ぶつもりで。

確かに"SNAKE"は自分に微笑みかけた。
しかし、何かが違う。

「逃げるのよ!!」
はっと気がつくと先ほど、止めようとしていたトーキー風の女性が真理の手をひっぱった。わずかに体制が崩れる。
そのままその女性が真理を引っ張りトラックをよけさせようとする。
自分はその女性を見捨てるつもりだったのに、その女性は自分を助けようとした事に、わずかに苦笑がもれた。
そのまま、その女性にひっぱられるように、近くのビルの中に駆け込む。
それと同時にトラックが派手な音を立てて突っ込んで来る。
その時、真理は間違いなく、裂帛の意志を感じた。

(私ハ・・・モウ・・・誰モ! 誰モ! 誰モ死ナセタクハナイ!)

ビルにトラックが飛び込もうかという刹那。
オメガREDを収納し、真理は手を引いていた女性をかかえて、ビルの奥へと疾ぶ。
その時、しなやかな野獣のような黒衣の女性が、ビルとトラックのあいだに入ったのを、真理は確かにかたすみに捕らえていた。

私に微笑みかけたのは、"SNAKE"ではない。
では、誰だ?

派手な破砕音をたてて、トラックはビルに衝突するまえに、黒衣の女性によって破壊された。くるりときびすを返し、"SNAKE"の方に向き直る黒衣の女性。一度だけ目があう。その瞳になかにあるのは闘いへの意志。しかし、わずかにこちらを気遣うような光があるのを真理はみのがさなかった。
なぜ、この2人は赤の他人を助けようとするのだろう?
私が死んだところで困るわけではないだろうに。
しかし、我が身の危険を顧みず他人を助けようとするのは"自分にはない強さ"といわないだろうか?
やさしさを恐れずに人に向ける事のできる強さ──
左目にかすかな違和感を感じて、指を左目の当たりに持っていく。その時、いつもつけている左の義眼のカラーコンタクトが飛んでしまっている事に気がついた。
血のように紅く、昏い瞳。
血と闘いと策謀を好む"紅の瞳""bloody.eye"
やさしさと対極にあるものが、その瞳のなかに潜む。

「…だいじょうぶ?」
外から死角になるような位置に移動して自らの横にいる、トーキー風の女性─風海香に気遣うような表情を"作って"話し掛ける。
「あの殺人鬼が暴れ出した時、たまたま貴女がカメラを構えているのを見かけて、このままじゃ危ないって思ったから止めようとして動いたところを見つかったみたいね…ごめんなさい、貴女を危険な目にあわせてしまって…」
すまなさそうに微笑みかける。
人を引き付けてやまない絶対的な魅力が潜む、やさしい微笑み。
真理に天が与えた、才覚の一つだった。
「…申し訳ないのだけれど、私を写すのは勘弁していだだけないかしら?…私も色々とあって、報道されてしまうと私の命に関わってきてしまうの……ごめんなさい」
本当にすまなさそうに頭を下げる。
ここにいれば、わずかな時間とはいえ時間を稼ぐ事ができるはずだ。
このまま"SNAKE"がねらった獲物を見逃してくれればだが。
その間に、整理しなければいけない事が山ほどあった。
微笑みを薄めた微妙な表情を浮かべて風海香から視線だけを動かし、わずかに見える外の様子を伺うと、"SNAKE"がアタッシュケースの"中身"と感動の再会を果たしていた。激しい狂気に満ちたアルカイックスマイルを浮かべて。

万が一の事を考えて、西江楼の楊大人を先日尋ねて行った事は、どうやら正解だったらしい。そこで、もらった情報や指示も。

アンソニー・ブラスコが堕ちていった狂気。
カーマインの持つ殺人の快楽に満ちた狂気。
まるでそれに導かれるように、様々な能力を持つ人間が裂帛の意志を持つ人間が集まってくる。
狂気に相反するやさしさも。
まるで、誰かにしくまれた舞台のように──
そして、"渾沌"を内封する"SNAKE"

自分に微笑みかけたのは"SNAKE"ではない。
では、いったい誰なのだろう?
やさしさと"微笑み"の行方は、いったいどこにあるというのだろうか?

 [ No.63 ]


Watching the Short-Movie.

Handle : メレディー   Date : 99/05/18(Tue) 16:05
Style : ニューロ◎、ニューロ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢22 / 女性
Post : LIMNET電脳情報技師 特級査察官


青白い蜘蛛の糸の様に細かく張り巡らされたウェブを目的のエリアに向かってメレディーは疾走する。
途中、ダレカンのデコードした黄色く輝く錐を拾い、目標のデータの構造物に自らのアイコンを接続する。同時に超高速の処理で構造物がメレディーにデコーダーを介在して情報を叩き付けてきた。

メレディーガミタモノ。
カノジョノメモリーニセツナキザマレタオトコノキオク。
それは犯罪者の心理に深く入りこみすぎたがために、その狂気の顎に捕らわれてしまった男の記憶だった。
男はは強く願っていた。
彼に、いや、彼らに会いたいと。
会って、自分が今感じているものが彼らの中に存在しているという確信がほしかった。男の前には無数の微細な命があった。
男はそこに黒い雫を落とす。
それはみる間に浸透して行き、やがて人の形を形成しはじめた。
そして、現れたモノは彼に手をのばす。
まるで赤ん坊が母親にするように。
しかし、ソレの愛情は通常のものとは違っていた、すなわち狂気。
のばされた手は想像を絶する力で男の左腕を根本から引きちぎった。
男・・アンソニーの絶叫がこだまし、構造物が忠実にデコードして投げつけてくる情報は、強烈なノイズとなってメレディーの全身をかけ巡った。
だが、彼女を震撼させたものは痛みの恐怖ではなく、その死の間際にあってさえ、アンソニーが感じていたおぞましい恍惚感だった。
やがてその彼の恍惚感は、メレディーの中にも恐怖とも深い悲しみと哀れみとも付かない、静かな狂気で彼女を打ちつける。
耐えきれず彼女はあたりを揺るがすかの様な叫びを強烈なノイズで打ち放った。
今や彼女の中であの場所から逃走する時に感じていた恐怖感とは全く異質な何かが、生まれようとしている。
だが、その恐怖と叫びのノイズは彼女をトレースするダレカンにも少なからず届いた様だった。
『おい、メレディー! どうした!』
メレディーはその声には応えず、構造物の打ちつけるノイズを無意識にカットし、構造物の持つ他のデータ領域の海の中から、アンソニー・ブラスコのキーで繋がるめぼしい情報の流れを見つけ、それに見えない手を更に突っ込む。
だが彼女の突っ込んだ手を弄ぶ情報の流れからは、幾らも気をひく情報が無かった。
何とか探し出したものは、アンソニーが携わっていた開発に絡む情報と、立件こそされていないものの、彼の所属する組織に絡む、ハッキングのニュースぐらいだった。
メレディーはゆっくりと自分の信号を落ち着かせ様と格闘した。
だが、幾ら整えようとしても、アンソニーの記憶から伝わった恐怖は拭い去れなかった。
いまや、まるで発作の様に酷い頭痛で彼女の意識を朦朧とさせている。
メレディーはあまりの頭痛に見えない身体が思わず立ち竦む様な感覚を感じる。
そして更にそれに畳み掛けるかの様に、彼女の視野の中にポケットロン回線での通信画面の小さな構造物が展開された。
青白い光の明滅と、ポケットロン特有の音が彼女に回線を受諾して、構造物を開く様にと急き立てている様だった。
『おい、メレディー、信号が不安定だぞ!』
メレディーは朦朧とした意識の中、ダレカンの声に応えようとするが、だが、身体はそれとは別に勝手に構造物を開こうと手を伸ばしていた。
メレディーのアイコンの手が構造物に触れると同時にポケットロンの回線が起動する。
開いた構造物から聞こえてくる声は若干ではあるが彼女が自分の意識を掴む助けになる声だった。
『Haha,Yo-Amigo!! メレディーのお嬢さん、お目覚めかい?』
NOVAで嫌と言うほど聞き馴れたその声は、メレディーの恐怖感を幾分洗い流し、頭痛を少しばかり静める。
メレディーは見えない身体のかぶりを振る様にし、必死に意識を掴む。
LIMNETの秘守回線に繋がったポケットロンの輝点が、一気に全視界に展開されたLU$Tのマップに重なり、瞬いている。メレディーは無意識にその地区の周りのカメラをドミネートした。
『あぁ・・・、ダレカン、私・・行かなきゃ』
『おい! メレディー!!』
『い・・行かなきゃ・・』
時折離れそうになる意識を両手いっぱいに握り締めながら、メレディーはアジームの声の聞こえる構造物へと呟く。
『アジーム・・・彼が、アンソニーが』
『あぁ、分かっているメレディー』アジームの声が低く、メレディーの構造物の中へと響いてくる。『腕が・・・奴の腕が厄介だぜ』

「アジーム・・」
ドミネートした複数のカメラの視界の重なるエリアの輝点の一つはとても大きく、良く見ればそれは、無数かと思う様な小さな輝点の集まりへと構造を変えている。
ナノ単位・・・と言う訳ね。その輝点を見つめながら、思わず彼女の口元が歪む。
「私、何が出来るのかしら」
メレディーのアイコンが変容して行く。
アジームは回線の向うで少し苦笑いした様だった。
『私・・・何をすれば良いのかしら』
声に出さずに心で叫び、メレディーは見えぬ身体の両目を大きく見開いた。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.62 ]


Trace-root.

Handle : メレディー   Date : 99/05/18(Tue) 15:38
Style : ニューロ◎、ニューロ●、タタラ   Aj/Jender : 推定年齢22 / 女性
Post : LIMNET電脳情報技師 特級査察官


タクシーをおり、施設に入り結線するとメレディーは担いでいたリュックから簡易なCD/DCコンバーターを組み込んだ端末のシールドケーブルを肘の内側に突き刺した。やがて腕のあたりからチリチリとした感覚が生まれ、LIMNETの業務用保守回線への接続完了を彼女に告げた。
数回のコールの後、左目の視界に重なるディスプレイに現れたのは案の定、査察官のダレカンだった。
「おいおい、誰だぁ?! 何年も前に閉鎖している工事用回線使う奴は・・・」画面の男は慌てながらヘッドセットを頭にあてようとしていたが、やがてその視線がディスプレイを見つめるメレディーの視線と重なると少しばかり驚いた様に、やがて困ったような顔をした。「・・・メレディー、久しぶりの再会を喜びたい所だが、閉めた回線開くのはやめてくれよ。ルーティングする身にもなって_____」
「ダレカン、今そっちに送っている奴、デコードしてNOVAに送って頂戴」
ダレカンの言葉を遮ってメレディーは畳み掛ける。その言葉が終わると同時に彼は短い悲鳴を上げた。
「おい! メレディー! 人の端末に勝手にデータを置くなよ! 全く何処で人のシールドIPを_____」
「お願い、ダレカン。時間が無いの」スピーカーではなく、頭に直接響くダレカンの高い声に目を閉じながら、メレディーはデータの転送が終わった事を確認し、更に続けた。「ついでにLU$Tの局内のDBにちょっと触わらせて欲しいの」
「おい、メレディー。いいか、良く聞いてくれ。お前さんが使っているこの回線は工事用の秘守回線だ、管轄が違う! それにお前と俺がこうして今、この回線を使っていること自体が服務規定違反だ!!」
ダレカンの気勢にメレディーはちょっと口をつぐんだ。だが、ここで退く訳には行かなかった。
「・・・メレディー・・・どうした、お前らしくも無い」彼は頭を掻きながら傍らの端末を叩いているようだった。「レベルは何処まで必要なんだ? 大体事情も話さずに回線を空けられる訳無いだろう。何かあったのか?」
メレディーは少しばかり悩んだ。
しかし、血にまみれて倒れ込むあの男の姿を思い出し、心の声が誰彼となく話す事ではないと告げていた。それに、もう時間が無い。
「▼D-102▲ 秘守任務です。査察官命令として検索回線の部分開放を求め、貴官の協力を要求します」
ダレカンはこめかみを細かく震わせ、しかしながら努めて冷静にその言葉に応える。
「こいつぁ貸しだからな、貸し!」
ダレカンが神技の様な速さで傍らでキーを叩くのが見える。
「秘守回線部分開放! 防壁は限定的に保留! いいかメレディー、深く潜るなよ! DBの事を言っているんじゃねぇぞ! データには深く潜るな! 服務規定第13条を忘れるな!!」
やがて目の前にダイブアラートが瞬く。
メレディーはそれに合わせてスイッチングし、視野全体にスクリーンを投影する。
ここから先はあの男の過去の・・・今まで生きてきた足跡とメレディーの二人だけの対話だ。メレディーは姿を見る事の出来ない感覚だけの自分の両手を合わせた。
目の前には、蒼い網状のストリングが行き交い、そこらかしこで光点となって彼女を誘っていた。
「ありがとう・・・ダレカン」姿の見えない自分の今の表情を想像しながら自嘲気味にメレディーは笑った。ダレカンはそんな彼女を知るのか知らないのか、諦めきった声で呟いた。
「礼を言う暇あるなら、終わってから酒でも奢れ。いいBarを知っているんだ」
メレディーは今度ははっきりと笑った。
「わかったわ、好きなだけ奢ってあげる」
「shoot the MOVIEって店だ。忘れるなよ! こっちでもトレースだけはするからな、潜り過ぎるなよ」
「わかったわ・・・・また後で_______ね___」

深く、蒼い情報の海へとメレディーはダイブする。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.61 ]


Stray Hound against DEATH

Handle : “光の弾丸”静元星也   Date : 99/05/18(Tue) 11:59
Style : イヌ◎,マヤカシ,カブトワリ●   Aj/Jender : 22/Male
Post : Blakk Hound T.N.P.D. NOVA Divijion


「Hey,オレはBrotherとの感動の再会中だァ。お前らも祝ってくれよォォォ!!」
 通行人を巻き込み、狂ったように踊り回る2台のヴィークル。建物に激突し、死の舞踏を終わらせた役者に、向かって、カーマインは両手を広げて称賛の声を浴びせた。
「次はオレとお前の番だァ。最高の踊りを見せてやろうじャ――」
 アタッシュケースに収められた己が半身に再び向き直った時。拡張された知覚が、次の邪魔者を捉えた。
「動くな!」
 血の海の先で、ひとり死神の前に立ちはだかった人物。油断なく、慣れた手つきでオートピストルを構えている黒のジャケットの男。まだ若い、日系人らしき若者だった。
「特務警察ブラックハウンドだ。武器を捨て、あらゆる行動を直ちに停止しろ!」
 死神を真っ直ぐに見据える真摯な瞳。欲望の街にも呑まれることのない、強い意志をもった瞳。ジャケットから漏れた黄金の光は、黒の猟犬のあかし。
 正しい戦術からいえば、特殊警察用の新型アシストアーマーを用意すべきだったかもしれない。白い閃光と幻を放つ銃ではなく、対サイバーサイコ用の重ライフルを使うべきだったかもしれない。遮蔽を取って応援を待つべきだったかも知れないし、管轄外の事件には最初から知らん振りを決め込むべきだったかもしれない。
 だが星也は、蛇の姿をした死神に立ち向かわなくてはならなかった。黒と黄金の騎士の務めとしてだけではなく――自分自身の誇りのために。
「カーマイン‥‥ガーベラ?」
 星也の脳裏に、ハウンド本部でオペレーターの御堂葵に見せてもらったデータベースの画像が蘇った。カーマイン・ガーベラ。Status:Dizeazed。検死も済み、外人墓地ゆき。引き取ったのはブリテン側だったはずだ。
「‥‥?!」
 銃弾を目標に導く赤い十字架が、瞳の中で焦点を結んだ時。星也の体に流れる血――姉には発現しなかった血の力が、死神のもうひとつの姿をぼんやりと捉えた。
 作り物の笑みを浮かべるのは蛇の頭。背後に広がるのは黒き天使の翼。欲望の街LU$Tの人間の心に潜む悪意でなく――本物の悪魔。
 退魔師ではない星也は星幽界を見通すことはできなかった。だがぼんやりと、一瞬だけ確かに“視”えた。そして、黒いケースの中の腕は――

 その時、対峙する猟犬と死神の間に、どこからか一発の銃弾が飛んできた。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/over/20000.htm [ No.60 ]


Az soon az

Handle : ブライト・バートン   Date : 99/05/18(Tue) 01:29
Style : カブトワリ◎●カゼ、ニューロ   Aj/Jender : 26yrs/Male
Post : フリーランス/元傭兵


目の前の状況は”2秒”前とは激変している。

壊されたトラックと2台の車。
スネークに立ち向かおうとするBHの隊員らしき人物。

……さてと、そろそろ動くかな。
自分の目で周りを見渡す。助けになるモノは?
同時に周りのカメラをドミネート。
四方八方からスネークを観察。
隙を探す、が隙は見つからない。

……さすがは、一中隊一人で壊滅させただけはあるな。と思いつつも恐怖は感じない。
「さてと”仕事”をしようかな?」
と言ってイントロンしながら銃を用意。
感覚の半分をWebに残りをマンデインに置く。
 そうしながら、いつものパンサーの視点からスネークに狙いを付けて引き金を引いた……。

 [ No.59 ]


Her Biz

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/05/18(Tue) 01:12
Style : クロマク◎、エグゼク、ミストレス●   Aj/Jender : 26/♀
Post : オフィスレッドフォックス


「それが我々漢民族のモノであるという唯一つの真実だ」
楊の言葉に、ルージュは顔を伏せた。
「イロイロとご存知のようですわね……でも」
ふっと、唇のはしに笑みを浮かべる。
「貴方がただけで、千早に対抗するおつもり?」
「……もちろん」
少しの間を、ルージュは見逃さなかった。
不安なのだ。千早ほどの企業を相手に回すのは。だからこそ、わざわざ円卓についてきたのだ。
「我々、ですか。その中にわたくしも入っていると考えてさしつかえないのかしら?」
「……なにをおっしゃりたいのですかな」
「ビズの契約を結ぼうということですわ」
「貴女は千早の人間なのでしょう?」
「あら」
ルージュはすっと目を細めた。黒い瞳に、光が躍る。
「ここにいるのは、オフィス・レッドフォックスのルージュですわ」
楊大人は目をまるくした。ついで、くすくすと笑い出し、そして、呵呵大笑。
「面白い、実に面白い。ですが、危険はないのですか?」
その問いに、ルージュは意味ありげに微笑んで応えた。

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.58 ]


“円卓”

Handle : “狂える車輪” アジーム   Date : 99/05/17(Mon) 23:44
Style : カゼ◎● レッガー=レッガー   Aj/Jender : 48/♂
Post : イエローキャブカンパニー"Go to Heaven(GtH)"


「Haha! ブリテンさんは欲張りだな」
 奥のVIPルームの扉が開かれたかと思うと、中から出てきた男は苦笑混じりに一声を放った。紅いミラーシェードの奥に隠された瞳は、新しい玩具を与えられた子供のように無邪気な光を浮かべている。
 アジームはそのままルージュ、ユージン、御道の座るテーブルに歩み寄り、残された最後の席を傍らの西江樓の主に譲る。そして自分はその傍らに立ち、テーブルに左手載せ体重を預ける。
 この無礼な行動にルージュはキツイ表情を一瞬見せるが、平静を保つことに成功したようだ。ユージーンは出身のブリテンを思わせるような氷の表情を顔面に貼り付けたまま。唯ひとり“魔人剣”と呼ばれる男はニヤッと笑いを浮かべた。

「全部を一人占めなんて、ズルイよなぁ。左腕の一本ぐらい分けてくれたってそれほど変わるものじゃないだろう。そうは思わないか、ライの旦那よ?」
 御道は笑みを浮かべたまま肩をゆするだけだった。
 場をただただややこしくするのアジームを見越したのか、苦笑しながら楊が口を開く。

「“あれ”は元はあんたらのモノかもしれんが、今はもう“別物”へと成り代っておる。その左腕に憑りついた“渾沌”の欠片が、カーマインという男を呑み込もうしているのだ」
「封印されていたはずの“渾沌”の欠片が、何故今その封を解かれ、はたまた何故彼奴に憑りついたのかは、わしも分からん。ただ確かなことは、彼奴の左腕に“渾沌”の欠片が在り、それが我々漢民族のモノであるという唯一つの真実だ」
 最後の言葉には彼の並々ならぬ気迫を感じさせる。そして最後の一節は馮露珠へと向けられていた。
「とまあ、そういうことでな。あの左腕は回収させてもらうってことだ。悪く思うなよ、Amigo?」
 楊の後をついだアジームがその言葉を言い終わらぬ内に、表の状況に変化が起こった。

 今にもアタッシュケースから左腕を取り出そうとしていたカーマインをシェードを下ろした2台の黒いセダンが襲いかかる。カーマインだけではなくアタッシュケースをも踏み潰さんとする勢いで迫るヴィークルに対し、彼は悠然とアタッシュケースを跨ぎ、無感動に左脚と右腕を襲撃者の方に向けた。
 グシャッという何かがひしゃげるような音と、甲高い金属音が辺りに轟く。アクセルを全開まで踏み込まれ、濛々と白煙を上げるタイヤ。左脚と右腕はヴィークルのボンネットを突き破っているが、カーマインはそれを例のアルカイックスマイルを浮かべながら、平然と見下ろしている。彼は微動だにしなかった。
 次の瞬間、ぼそりと何か呟いたかと思うと、彼を今にも押しつぶそうとしているヴィークルが突然全速でバックし始めた。シェード越しに中の中華系の男達が慌てふためく姿を狂気の笑みで眺めるカーマイン。コントロールを失った2台のヴィークルはそのまま後退しつづけて、遠巻きに恐る恐る眺めていた野次馬を捲き込みながら建物へとぶつかってゆく。

「やっこさん、ニューロの能力でももってやがるのか? 厄介なことだな」
 テーブルから離れ、その様子を他人事のようにアジームは眺める。席に着いていた面々も視線をそちらの方に向けていた。
「やれやれ。やっぱり俺が仕事しなきゃならねぇのか。楊さんよ、車借りていくぜ」
 そういってアジームはキーホルダーをクルクル廻しながらコートをはためかせて店を出ていった。店の前には年代物の3輪トラックが留めてある。元は空の抜けるような蒼い色だったであろうそれは、あちこちのペンキが剥がれ表面にサビが浮き出ていた。そんなことにも気に留めず、アジームは車に乗り込んでアクセルを吹かせ始める。

「・・・あのニューロの能力だけは厄介ものだな。ここはお一つ御助力願うとするか」
 独りでそう茶化しながら懐からポケットロンを取り出し、この“状況”を初めから観ていた女性のナンバーを呼び出した。

http://www.dice-jp.com/ys-8bit/ [ No.57 ]


Little did I dream of meeting you here.

Handle : "Load of Minster"ユージーン   Date : 99/05/15(Sat) 04:40
Style : カリスマ◎クロマク=クロマク●   Aj/Jender : 27/M
Post : フリーランス/元英ブリテン国教会司祭


「さ、まずはおかけになって下さいな」
大輪の紅い花を思わせる艶然とした、しかしどこか底の見えない深さを感じさせる笑顔がユージーンを迎えた。
「ローゼンベルグ夫人・・・ルージュ・・・なるほど、なぜ気がつかなかったのか我ながら情けないことだ。・・・改めて『はじめまして』。Lady・馮露珠」
笑みを浮かべる和らいだ表情に、わずかな苦笑の色が見えた。まさか彼女のような人間の名前を聞いて、すぐに何者かがわからなかったとは。ましてや相手は女性である。彼女のことについて思い当たる節がなかったとは・・・。
「それで・・・なにかご用でしょうか?それとも飲茶のお相手でも?」
「それもよろしいのだけれど・・・」
その時、店内に一人の男が入ってきた。
ほんの一瞬だけ、店の仲の空気が変わる。”魔人剣”のハンドルをもつ御道ライ。すっとアルバートがライからユージーンを遮る形で横に立った。
「紹介するわ。彼は・・・」
「“魔人剣”の御道ライさんですね?先日中華街のバーでお見かけしましたよ。」
アルバートの邪魔にならないよう気をつけながら、優雅な身のこなしで立ち上がり、握手を求める。あまたの死線を越えてきたであろう手がユージーンの手を握った。
「オレの事は御道でもライでも、好きなように呼んでくれ。」
てらいのない、真っ直ぐな笑顔が向けられる。だが、目の前にいるこの男の中には確実に”魔人剣”の名に相応しい”力”と”格”があるのだ。
(先に声をかけておくべきだったな)
わずかに目を細めて静かに微笑み返しながら、心の中で小さな溜息をもらす。どうも彼の”目”は事情を知っているようだ。こちらも早々に人材を現地調達しなくては。
「こちらこそよろしく、Mr.ライ」
ふと何気なく、外の様子に目をやった。先ほどまで騒いでいたカーマインが、今はじっと地面を見つめている。アスファルトからの照り返しなどものともせず、視線はただ一点を見つめていた。
あの、アタッシュケースだ。
誰にも聞こえないほど密やかにアルバートが息を飲む。
ユージーンが再び席に腰をおろした。
「さて、と」
深く座って、ゆったりとした動作で脚を組む。膝の上に肘をつき、顎に手を添えた。
「本当の所はもっと再会を喜びたいところですが、そうもいかないようだ。単刀直入に聞かせていただく。あなた方の望みはなにかな、ルージュ」
まるで明日の天気を問うかの如く気安い言い方である。光を内包し透過させるアイスバーググリーンの瞳がルージュを見つめる。
「私の方の望みは一つだ。”完全”なカーマインを引き取らせてもらえればそれでいい。二つで一つであろうと、一つづつバラバラでもね。まあ、あまり派手な騒ぎになるのは困りものだが・・・」
ユージーンの長い指が外の通りの一点を指す。指し示す先は、躍動の時を待つ蛇の足下にあるパンドラの箱。ただし、あの中にあるのは”災厄”だけなのだが。
「さしあたってはあれを回収するのがいいと思うね、お互い」
女性に向ける最上級の表情でルージュに言う。相手から瞳をそらさず、優雅さとプライドを絶妙に絡ませた笑みを口の端に刻んで。
「誰か知らないかな、見えざるものの真実を見抜ける龍眼の持ち主を」

http://www.teleway.ne.jp/~most [ No.56 ]


魔人剣

Handle : “魔人剣”御道ライ   Date : 99/05/14(Fri) 21:58
Style : カタナ◎●・チャクラ・バサラ    Aj/Jender : 31歳/男
Post : 御道総合警備保障


西江樓の扉が静かに開き、男が現れた。
2メートル近い巨体だというのに、微塵も鈍重ざを感じさせない滑るような足運びだ。
長く黒い蓬髪をオールバック気味に後ろでまとめ、髪と同色の傷だらけのコートをはおっている。
コートの裾から長大な日本刀の柄が覗いた。
そこに微かな紫電が走ったように見えたのは、気のせいだろうか。
「やっかいな事になっているようだが・・・放っておいていいのか?」
男、“魔人剣”御道ライは窓外の死神にあごをしゃくってみせた。
ルージュが艶やかに笑う。
それはまるで、
「彼と闘いたいのは、あなたの方でしょう?」
と言っているようだった。
御道が照れたように肩をすくめる。
「たしかに、血が騒いでいるがね。オレが引き受けたのはアンタの護衛だからな。」
「化け物退治は別料金だ。」
まるで何でもない事のように言ってのけた。
「たのもしいこと・・・」
ルージュがあきれたように嘆息した。
「それに・・・憑き物落としは専門外だしな。」
「?」
「何を・・・」
言っているの?と言おうとして、まだユージーンに彼を紹介していないことに気付いた。
「紹介するわ。彼は・・・」
「“魔人剣”の御道ライさんですね?先日中華街のバーでお見かけしましたよ。」
ルージュを穏やかに制して、ユージーンが言った。
まるで長年の友人に会ったような落ち着きぶりだ。
「オレの事は御道でもライでも、好きなように呼んでくれ。」
「あらためてよろしくたのむよ。」
そう言って御道は無防備で少年のような笑みを浮かべた。
“魔人剣”と"Load of Minster"、二人の対照的な手が握手を交わす。
後に幾度となく顔を会わす事になる二人の、これが最初の出会いだった。

 [ No.55 ]


半身

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/13(Thu) 20:50
Style : カゲ◎●・カタナ・ニューロ   Aj/Jender : 28歳/男
Post : ?


「バカン」
カーマインが一瞥しただけで、アタッシュケースが勢いよく開いた。
「Brother.会いたかったぜェ。」
中をのぞき込むと彼は耳までさけるか、と思えるようなアルカイックスマイルを浮かべた。そこには透明な円筒形の容器に入った人間の左腕が納められていた。
中は液体で満たされているのか、腕は中央を漂っている。
それは丁度肩口の辺りまであったが、奇妙なのは切り口だった。
何かで溶かし取ったように、本来骨や血管があるべき場所には何もなかった。
ただ、ヌルリとした不気味な白い断面だけが覗いていた。
カーマインの言葉にこたえるように腕はビクリビクリと身じろぎを繰り返す。
「Don’t worry.もうすぐだ、もうずぐあいつらを八つ裂きにしてやれるぞ、Brother。」
今まさに、死神はおのが半身を取り戻し、さらなる力を手に入れようとしていた。

 [ No.54 ]


Forget Me?

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/05/11(Tue) 00:11
Style : クロマク◎、エグゼク、ミストレス●   Aj/Jender : 26/♀
Post : オフィスレッドフォックス


「飲茶のコース……そうね、四人ぶん、お願い」
ウェイターにそう言い、ルージュは立ち上がった。
おともを連れたアーサーが、西江樓へと入ってくる。
赤い絨毯を踏みながら、悠然と歩いてくる様子は、数年前とまったく変わるところがなかった。
「おひさしぶりですわね」
微笑んでそう声をかけるルージュ。アーサーは怪訝そうに眉をひそめたが、はたと気づいたのか、かすかに眼を見開いた。
「思いだされました?」
くすりと口元に笑みをこぼして、言う。
「二年前、新香港のヴィクトリアピーク。あの頃はローゼンベルグ夫人と名乗ってましたもの」
すっと手をのばして、自分のテーブルを指す。
「さ、まずはおかけになってくださいな」

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.53 ]


“到着”・・・?

Handle : “不明者”来崎煉   Date : 99/05/10(Mon) 04:20
Style : カブキ◎、カタナ=カタナ●   Aj/Jender : 27/女
Post : Criminal


駆ける・・・駆ける駆ける駆ける。
疾風のように・・・駆ける。
視界に飛び込んできたのは・・・
チャイナ系の女性に向かって突っ込んでいくトラック。
本能を理性が上回る瞬間。
(助ケロ!)
獣ではない思考。本能的な理性。不明な感情。
(私ハ・・・モウ・・・誰モ! 誰モ! 誰モ死ナセタクハナイ!)
疾走。
チャイナ系の女性はトーキー風の女性に連れられて手近なビルに入った。
だがそのビルにトラックが突っ込んでいく。
大きく跳躍。
トラックとビルの間に飛び込んで・・・
瞬間。
「・・・っだああああああっらぁぁぁああああああああああああ!」

どごっ! がんっ! がんっ! どごっ! どごっ! がんっ! どごむっ!

強力な武器である両腕を縦横無尽に振り回し、トラックを打撃・斬撃・刺突。
「ああああああああああああああっ!」

 どごむっ!

 トラックの前面を粉砕して腕が潜り込む。
 ぎぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!

 ビルにぶつかる寸前・・・全力で踏みしめた両足でトラックが止まる。
 止めたトラックから腕を引き抜いて、大地を踏みしめる。
 ぐるりときびすを返し、また血の匂いを嗅ぐ・・・。
 何も語らず、何も見ない。
 ただ、獣のように血の匂いを追いかける・・・

 [ No.52 ]


Run Hard

Handle : "Load of Minster"ユージーン   Date : 99/05/10(Mon) 01:14
Style : カリスマ◎クロマク=クロマク●   Aj/Jender : 27/M
Post : フリーランス/元英ブリテン国教会司祭


「私の側に赤枝の騎士団のような面々がいれば、さぞ心強いことだろうよ」
駆け出していった静元の残した言葉に独り言のように呟いた。何処となく冗談めかしたその口調は、辺りの緊張した雰囲気にあまりにもそぐわないものだった。
「そろそろ移動した方がいいかな」
「・・・さっきからそう申し上げているんですが」
「璃琳や他にも連絡をしておくか」
外からは間違ってもこちらに向かってきて欲しくない音がこれでもかというほど聞こえてくる。確かその先にいたのは二人の女性だったはず、是非とも助かってもらいたいものだが・・・幸運が彼女たちと真摯な目をした青年の上にあらんことを。
「アル、出してくれ・・・いや、待て」
K-TAIを取り出し、車の発進を指示したその時、道路の向こう側から蒼白な顔に決死の表情を浮かべたどこぞのウェイター風が一直線にユージーンの乗る車に向かって駆けてきた。あまりにもーいっそ滑稽なほどー真剣過ぎる表情に、警戒の姿勢をとったアルバートの緊張が根こそぎ奪われていくのが目に見えてわかった。正体不明の殺人鬼らしき男が嬌声をあげ、トラックが滅茶苦茶に暴走する中を通ってくるのだから当たり前といえば当たり前なのだが。
「・・・大丈夫かね」
彼が到着するのにあわせてウィンドウを開ける。思わず苦笑を頬に浮かべながら。
「あの・・・伝言を・・預かりまして・・・」
極度の緊張と全力疾走で荒くなった息を何とか宥めながらウェイターの青年が言葉を続ける。
「・・・“オフィス・レッド・フォックス”のルージュ様が、あなたとお話がしたいと申しております」
「“オフィス・レッド・フォックス”のルージュ・・・どこの者だ?」
「さあ、そこまでは・・・」
「大事なところだと思うんだがね」
「ウィルフレット様、彼に文句を言っても仕方ないでしょう」
「え、えーとですね、ルージュ様は向こうの西江樓にいらっしゃいますが」
青年が通りの向こう側にある中華飯店を指す。
「ルージュ・・・直接あって話をしたいと?」
「いえ、なにも・・・」
「しっかりし給え、メッセンジャー。さて、どうするか・・・金を積まなくてもテーブルにつけるなら、それに越したことはないんだが・・・」
「大丈夫でしょうか?」
「Well...Maybe yes,Maybe no」
目を細めて、ユージーンが薄く微笑む。翡翠の目に、硬質な光が一瞬閃いた。
黒と黄金の騎士がいってしまったのが悔やまれるが、しかたあるまい。有能な人材を現地調達できると思ったのだが・・・
「・・・まあ、円卓に向かうとするか。ミスター・メッセンジャーも乗り給え。目の前とはいえ、さすがに今外を歩くのは気が引けるのでね。ああ、これはナビゲーター料」
さっさと話を勧められてあたふたするウェイターを乗せ、その手にシルバーを一枚握らせる。呆気にとられてユージーンを見つめるウェイター。バックミラーでその様子をみていたアルバートが困った主だという風にため息をついた。
1分とかからないドライブへ、セダンは走り出した。

http://www.teleway.ne.jp/~most [ No.51 ]


[ Non Title ]

Handle : 久高 風海香   Date : 99/05/09(Sun) 04:41
Style : トーキー◎=マネキン●=カリスマ   Aj/Jender : 20/female
Post : フリーランスのトーキー


「All right. イイだろう。相手をしてやろう。まずは、オレからのプレゼントだ受け取ってくれィ。」

『まずい、気づかれた!?』

トラックは自分とチャイナ系の女性を目指して突っ込んでくる。

『マズい。どうする。すぐ側に人がいる。どっちに対して?!。』

頭の中で色々考えがよぎる。

『助けなきゃ!!』

柄にも似合わない事はわかってる。
本職の人間にはかなわない事だけど、もし私のせいでまったく関係ない人まで殺されるの御免だ。

風海香はしっかりとカメラを抱えると近くにいたチャイニーズ系の女性の所に走っていった。
IANUSUには映像を撮るように指示している。
カメラは回しっぱなしだ。

トラックが彼女に近づこうとしている時
「逃げるのよ!!」
風海香は叫んだ。
そして彼女の手を引っ張り近くのビルに走りこむ。

それと同時にトラックが派手な音を立てて突っ込んできた。

http://www.age.ne.jp/x/y-tomori/cgi-bin/nova/index.html [ No.50 ]


RED FOX

Handle : “紅狐”馮露珠   Date : 99/05/09(Sun) 00:37
Style : クロマク◎、エグゼク、ミストレス●   Aj/Jender : 26/♀
Post : 千早重工渉外部→オフィスレッドフォックス


「そうそう、例の“鍵”の入手を急いで下さい。」
注文だけ言って、マクマソン氏との映話は切れた。
(……言いたいこと言ってくれるじゃありませんこと)
こめかみを押さえながら、窓の外に目をやると、くだんのトーキーにトラックが突っ込もうとしている。
(……ホント、困った事になりそう)
思わずため息がでる。問題は山積みで、選択肢は限られ、そのうえ時間制限つき。
(トラックの方は、まずペケよね)
結論はあっさりと出た。あちらの問題は、どこぞの物好きがなんとかするだろう。回収はそれからでも遅くない。
急いでくれ、とはマクマソン氏の都合であり、ルージュ自身がそれに命かけねばならない義理はない。
(じゃ、あちらのアーサーの方に、とりあえずマルつけましょうか)
そう決めた時に、ウェイターがやって来た。湯気のたゆたう蒸し篭を載せたお盆を手にし、一礼する。
「小包籠、おもちいたしました」
「謝謝」
そう言うと、シルバーを1枚取り出してみせた。おどろきでウェイターの目が丸くなる。
「 ついでに、ひとつ頼まれてくださらない?」
「……は、はい。なんの御用でしょうか」
「メッセンジャーボーイ。通りのあちらにいらっしゃる英国紳士によ」
「なんて伝えるんですか?」
「“オフィス・レッド・フォックス”のルージュがお話ししたいと申しております……そう伝えて下さればいいわ」
ルージュは微笑んだ。懐の深く、底のうかがいしれない、華僑らしい笑みで。

http://www.trpg.net/user/luckybell/ [ No.49 ]


Stray Hound Rushed

Handle : “光の弾丸”静元星也   Date : 99/05/08(Sat) 23:29
Style : イヌ◎,マヤカシ,カブトワリ●   Aj/Jender : 22/Male
Post : ハウンドN◎VA本部生活安全課


「駐車違反ではないですが‥‥高級車をここに止めるのはお勧めできませんね」
 目の前の男に星也は若干の驚きを感じていた。革のジャケットの下の黄金のバッジに一瞬で気付いた注意力。これだけの時間で自分の名を洗い出した記憶力。向こうで起こっている惨状など目に入らないかの如き、穏やかな翡翠の瞳。
“ウィルフレット”と運転手がこの車の主を呼んだ時、若干の間があったのを星也は聞き逃さなかった。警官としての勘が告げていた。この貴族風の男はきっと、本当はウィルフレットではないのだろう。ウィルフレットの名の下に隠された多くの秘密を持っているのだろう。
「ええ、今は非番ですよ。でも、とんでもない狩りの現場に出くわしたようです、ウィルフレット卿」
 殺人鬼と、それに対峙したチャイナ系の女性の方に視線を移し、愛用のMP10を抜く。
 凍てつく氷も稲妻の光も、メーザー特有の人工的な光も、全てを放つことのできる銃。撃ち出された幻の弾丸に戦意を喪失した犯罪者も多かった。瞳の中で、赤い十字照星が焦点を結び――
「‥‥?!」
 その時星也はタービン音に気付いた。大型車のエンジン音。突然無人のトラックが動き出していた。
 奴の仲間だろうか? 今までまったく姿が見えなかった。それとも、バディをハッキングしたのか‥‥
「ウィルフレット卿、もしいるのなら、近衛騎士団を呼んでおいてください」
 それだけ言い残して星也は駆け出した。トラックの走り出した先で、立ちすくんでいる人間たちがいる。加速され、拡張された知覚が、その中の一人の女性の手に持ったカメラを捉えていた。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/repo/990504.htm [ No.48 ]


重力が衰える時

Handle : “ゲームマスター”ゴードン・マクマソン   Date : 99/05/08(Sat) 14:16
Style : エグゼグ◎・クロマク・カブキ●   Aj/Jender : 40歳
Post : 千早重工統括専務


「早くなさらないと、面倒なことになりますわよ」
ルージュの問いに、しかしモニター上の相手は顔色一つ変えずにこう答えた。
「困ったものですね。」
すこしも困った風もなく、続ける。
「デモンストレーションとしては、いささか派手すぎますね。もっとも・・・上の連中は喜ぶでしょうが。」
あなたも、その“上の連中”の一人でしょう。
ルージュは心の中で苦笑した。
それにしても・・・・彼女は思う。
どうしてこの男は、いつも、こうも楽しそうなのだろう。
仮にも(直属の、ではないにせよ)数十人の部下の命が一瞬にして奪われたというのに、全く動じた様子がない。
それどころか、気にもとめていないように見える。
まるで、チェスの駒でも取られたくらいに・・・・
ああ・・・そうか。
そこで、ようやく彼のハンドルに思いいたり、得心した。
「しかし、変ですね。」
「?」
彼女の物思いをうち消すように、“ゲームマスター”ゴードン・マクマソンは言った。
「私のところでも“SNAKE”はモニターしてますが、いささか人間くさくないですか?とても、疑似人格とは思えない。」
「これはブリテンの方とコンタクトを取る必要がありますね。Missルージュ。」
そう言うと、ゴードンはあらためてニッコリと笑った。
そして、思い出したようにわざとらしく付け加える。
「そうそう、例の“鍵”の入手を急いで下さい。」
彼女の眼前で、まさにその“鍵”を持った女性の方に暴走するトラックが突進していった。
・・・ホント、困った事になりそう。
ルージュは小さく呟いた。

 [ No.47 ]


第2幕

Handle : “ザ・スネーク”カーマイン・ガーベラ   Date : 99/05/07(Fri) 21:19
Style : カゲ●◎・カタナ・ニューロ   Aj/Jender : 28歳
Post : ?


「HA!HA!HA!HA!」
狂ったような嬌笑があたりに響きわたった。
そして、呼応するようにカーマインの右腕からのびた単分子ワイヤーが、まるで無数のSNAKEのように波打った。
それは、これから始まるであろう饗宴への、血に飢えた蛇たちの渇望の舞いであったのかもしれない。
と・・・笑い声が始まった時と同じく、突然止んだ。
その目がこちらに近づいてくる2人の女性、秦と風海香へと向けられる。
「Baby.そんなにオレがほしいのかいィ。」
異様に長い舌で口の端を舐めながら、うっとりと呟く。
「All right. イイだろう。相手をしてやろう。まずは、オレからのプレゼントだ受け取ってくれィ。」
カーマインが楽しげにそう言うと、近くに止まっていた トラックが突然動きだした。
死神の見えざる手によってコントロールを奪われたトラックは、タービンエンジン独特の甲高いエンジン音をあたりに響かせながら、弾かれたようにスピードを上げた。
逃げまどう数人の通行人を血祭りにあげながら、まるで意思をもった巨大な獣のように まっすぐに秦、そして風海香のいる方に突き進んでいった。

 [ No.46 ]


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