shoot_the_MOVIE

[ shoot the MOVIE BBS Log / No.101〜No.150 ]


 あなたは、立ち止まる。
 こんなところに、バーがあったかな……?
 目の前の古びた看板には『shoot the MOVIE』。あなたは、小首を傾げながらも、重い扉を押して中に入る。
 たまには、こういう寂びれた店で飲むのも悪くないだろう。
 程よく薄暗い店内には、静けさを引き立てるようにピアノの音が流れていた。思っていたよりも中は広く、想像していたような物憂い雰囲気はない。
「いらっしゃいませ」
 初老のバーテンダーが、メニューを差し出した。彼の黒いベストの銀の刺繍と豊かな白髪が、動きに添って柔らかく光った。
「リッツォ、いいですよ。続けてください」
 バーテンダーの視線の先で、ピアノを弾いていた青年が、椅子に座りなおす。どうやら彼がボーイらしい。眉をぴょこんと持ち上げて、おどけた表情をして見せる。
 あなたは、黒い革で覆われたメニューを開く。『風と共に去りぬ』『ライムライト』『道』『ベン・ハー』『サイコ』『ゴットファーザー』『スター・ウォーズ』『ブレードランナー』『レオン』『タイタニック』……。
「これは? どうやら、ハザード前の映画のようですが?」
 あなたの問いに、バーテンダーは端正な顔を和ませた。
「おっしゃる通りです。ここでは、主に映画細工のカクテルを楽しんでいただいております」
「よーするに、映画のイメージのカクテル、てことですね。もちろん、それに載ってない映画でも大丈夫です。マスター、凝り性だから、なんでも作っちゃいますよ。何を差し上げましょう?」
 リッツォと呼ばれた南欧系の青年が口を挟んだ。バーテンダーに目顔でたしなめられるが、こたえた風もない。
 さて、あの映画はあるかな?
 そしてあなたは、メニューに指を滑らせ始める。

河童

Handle : 櫻庭誠一郎   Date : 99/08/19(Thu) 23:38
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 烏龍茶、蓬(ヨモギ・リキュール)を軽くステア。ソーダで満たす。

「お待たせしました」

 木々繁る山中。清廉な水を満たす深き池から、緑に染まった陽光を仰ぎ見た。そんな像が心に浮かぶ。闇が人間に近しかった頃共存してきた、古き神の末裔の記憶が心をよぎる。その夢は、和風で好ましく青臭い透き通ったカクテルが消えるまで続いた。

 [ No.101 ]


わたしはキルロイ…

Handle : ”キルロイ”エアハート   Date : 99/08/23(Mon) 16:02
Style : カブトワリ◎、カゼ=カゼ●   Aj/Jender : 20/F
Post : フリーランス/”鋼鉄の竜騎兵”副長


不意にポケットロンが鳴る。
「はい。」
さっきの依頼人だ。
『決して捕まるな』と言いたかったらしい。
その言葉にわたしは鋭い微笑みを返す。

わたしは決して捕まらない。そして、見つからない。
なぜならわたしは”キルロイ”だから。

 [ No.102 ]


ライフ・イズ・ビューティフル (RE:じゃあ………)

Handle : 櫻庭誠一郎   Date : 99/08/26(Thu) 23:05
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 ドライジン、ローザ・ディ・トスカーナ、コアントロー、フレッシュ・レモン・ジュース。グレナデン・シロップをティースプーン一杯。シェイクしてカクテルグラスに注ぐ。ライム・スライスで巻いた、赤いミニ薔薇を飾る。

「お待たせしました」

 生花からではなく、典雅な桃色のカクテル自身から、薔薇の香りが漂っている。
 このカクテルの為に櫻庭が手にしたリキュールの一本に、淡いピンクの液に満たされた、華奢なビンがあった。ラベルには、細い線で薔薇の絵。ローザ・ディ・トスカーナ。グラッパと呼ばれる、イタリア産のワインを作った際の葡萄の絞り粕で作ったブランデーに、薔薇の香りを配合して作ったリキュールだ。

 絞り粕が原料でも、このような幻想的なリキュールが作られる。不幸な婚約や強制収容所の現実を原料にして、美しい空想世界が作られる。豊かな想像力と創造力を持てば、確かに、人生は美しいかもしれませんね。
 櫻庭は、静かにグラスを女性の前に差し出した。

 [ No.103 ]


ファイアスターター

Handle : ”炎剣”小嶋 真奈美   Date : 99/08/30(Mon) 13:00
Style : カタナ◎,チャクラ●,バサラ   Aj/Jender : 16/♀
Post : フリーランス


銀のグラスで揺れる炎に目を落とす。
炎の向こうに、「力」という数奇な運命を持ってしまった少女の姿を思い浮かべながら。
(あなたの力はなんだったの?
 両親との絆?
 両親と自分を不幸に落とし入れた忌むべきもの?
 それとも・・・・・本当にただの力?)
いつしか炎の向こうの少女の姿は真奈美自身へ変わっていく。

炎が消えて、真奈美はそのカクテルをゆっくりと飲み始めた。

「ありがとう、おいしかったわ。」
カクテルを飲み終えると、真奈美は席を立つ。
「また来るからね。」
勘定をすませるとそう言い残して店を出た。

「さてと、仕事の時間ね。」
夜空を見上げて真奈美がつぶやく。
そして今日もどこかで炎が、誰かを焼き尽くす・・・・

 [ No.104 ]


常に先へ…

Handle : ”キルロイ”エアハート   Date : 99/09/03(Fri) 16:29
Style : カブトワリ◎、カゼ=カゼ●   Aj/Jender : 20/F
Post : ”鋼鉄の竜騎兵”副長


「ごちそうさま。」バーテンダーに一言。
そろそろ帰ろう。少しこちらに長くいすぎた。隊長に嫌味言われないうちに戻っておこう。

『いや。帰るのではない、戻るのではない。わたしは”行く”のだ。』
自分で自分の考えを否定する。
わたしはキルロイ。常に先へ向かうだけ。戻ることは許されない。

ヘルメットをつかみ、わたしは次にむかう場所へ続く扉を開く。
その先は、おそらく『戦場』。

----『キルロイ、ここに来たれり』----

 [ No.105 ]


楽しい夜に……

Handle : 西九条陸人   Date : 99/09/18(Sat) 07:20
Style : エグゼク◎ ミストレス 黒幕●   Aj/Jender : 20 男
Post : 管理センターWumb


 口を付けたグラスを置き、彼はいつもの微笑を湛えたまま慣れた仕草でロンから『名刺』を取り出そうとして、小さく声を上げた。
 どうかなさいましたか?という表情を向けた隣の美女……彼にとっては彼女の容姿の造型よりもむしろ、自分と同じ知識の造詣に心を引かれ、魅力的だと思っているわけだが……に少し困ったような顔を向ける。
「養子縁組が成立したみたいなんで、どうやら住所とか姓名、かわるみたいなんですよ」
 大変ですよね、とまるで他人事のようにため息をついて、グラスを舐める。
「ここのアドレスだけはかわらないと思いますので、どうぞ」
 そうして差し出したのは最も多くのプライベートを過ごすラボ。薬品の臭いと化学式が交差する彼のお気に入りの場所。
 ただしそれが「普通」の感覚の人間には一歩引かれるということを彼は知らない。
「それではまた、お会いしましょう」
 空のグラスをなおし、スツールから立ち上がる。

「ごちそう様、とてもよい時間を過ごせました。ありがとうございます、マスター」
 云って支払いを済ませる。
 勿論、あやめの分も。そう「躾」られているから。

 [ No.106 ]


”マネキン”

Handle : ”katze Biancco”フィアナ=トレイシィ   Date : 99/09/20(Mon) 13:22
Style : マネキン◎●   Aj/Jender : 20代後半?/F
Post : フリー


「ここね…」
一人の女性が店に入ってくる。
純白の悩殺的なドレスに身を包み、挑発的な足取りで。
照明の光に鮮やかなブロンドの髪がきらめく。

そのまままっすぐカウンターへ。そしてバーテンに一言。
「こんばんわ。」

メニューに目を通すこともせず、彼女はオーダーを口にした。
「『マネキン2』。あなたも一杯おつきあいして下さる?」
妖しげな、という表現がぴったりの笑みを浮かべつつ。

 [ No.107 ]


失われたモノ

Handle : メレディー   Date : 99/09/22(Wed) 16:06
Style : ニューロ◎、ニューロ、ハイランダー●   Aj/Jender : UNKNOWN/Female
Post : フリー


何も答えの用意されている事ではなかった。
急に降り出した霧の様な雨を投げてくる空を見上げる。

今この自分が立つ場所が何処で、マトリックスでどんな座標をコンソールに瞬かせるのか。
何をする為にこの場所に自分がいるのか。
何故自分はこの場所へと歩いてきたのか。

特に混乱している訳でもなく、妙に落ち着いている訳でもないのに自分の中から喪失した何かが、喉の渇きともつかない、うまく言葉に出来ない静かな衝動を浮き出させていた。
それはまるで視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚等の感覚を無くしたかの様な喪失感だ。
溜め息を吐きながら、辺りを見回す。
程なくビルの一角に古ぼけた看板を見つけた。
『___ここの辺りの雨にはあまり濡れるもんじゃないよ』
診療院のDr.EVEの言葉に背を押される様に、足早にその入り口の軒先へと向かう。
重い扉を開け、仄かな光に照らされた店内の奥のカウンターからかかる声に彼女は答えた。

「・・・いらっしゃいませ。何をお持ちしましょう」
若いバーテンの声と共に仄かにあまいアルコールの香りが身体を包む。
メレディーは堰きでる思いを押さえた。
「無くした物が・・忘れてきてしまったものがあるの」
もう一人の店員が始めて顔を上げる。
メレディーは自分が以前に見た映画の名を思い浮かべた。
「『シックス・センス』を・・下さい」

スツールに座りながら、彼女は呟いた。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.108 ]


おじゃまっしま〜すっ

Handle : 沙羅   Date : 99/09/24(Fri) 21:20
  Aj/Jender : 17歳/女性
Post : 噺家


「もう………どこに行ったのかしら?」
 雨の降りしきる中、彼女は相方を捜していた。逃走癖のあるおちゃめなネコ耳………。
 もうどれくらい探しただろうか? 彼女の体は既に雨で冷え切っていた。少しでも立ち止まると、震えが体を支配する。
クシュン………小さなくしゃみをしたとき、視界の隅に入る扉………。
 彼女は何かに誘われるようにそちらへ歩み寄り、そして扉を開ける………。そしていすに腰掛け、口を開く。
「すみません。「7月7日、晴れ…」いただけますか? 

 [ No.109 ]


マネキン

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/09/26(Sun) 23:24
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


>あなたも一杯おつきあいして下さる?
 華やかな女性の誘いに、老バーテンダーは片手を胸に当てて軽く頭を下げ、返礼とした。

「『マネキン2』ですね。かしこまりました」

 ストロベリー・クリーム・リキュール、黄桃のピューレ、グレナデン・シロップ、バニラ・アイスクリーム、氷をブレンダーにかける。やわらかな曲線のカクテルグラスに注ぐ。グレナデン・シロップで、グラスの縁に半円を描き、ストローをさす。
  
「お待たせしました」

 不透明の幸せそうなサーモン・ピンクで満たされたグラス。その縁には、甘い赤の口紅の痕。人形となった愛らしい娘のように、意識していない健康的な可憐さをにじませる。

 [ No.110 ]


シックス・センス (RE:失われたモノ)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/09/27(Mon) 23:26
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


 どこか頼りなげな女性の前に、純白のタオル、続いて湯気の立つミルクが現れた。

「シックス・センスですね。かしこまりました。コールド・カクテルになりますので、美味しくお召し上がりになるために、まずホット・ミルクで体を温めて頂きます」

 ミルクを飲ませるのは、カクテルをより良く感じさせるため。こちらの都合で飲ませるのだから、精神的にも、金銭的にも負担をかけるつもりはない。
 押し付けがましくならない程度に、言葉に経験をつんだバーテンダーの誇りを漂わせる。

 目の前の女性を案じつつ、櫻庭はリキュールに手を伸ばした。
 ドライ・ジン、レモン・ジュース、ホワイト・キュラソー。ウォッカをティースプーン1杯。シェイクし、氷と共に、冷やしたオールド・ファッションド・グラスに注ぐ。

「お待たせしました」

 キリキリに冷やされたカクテルの冷気で、グラスの表面に細かい水滴がついている。ミスト、と呼ばれるカクテルのスタイルだ。
 ほの白い鈍い光を放つ何かが、霧の向こうで、もやっている。
 櫻庭は、彼女の心の霧を晴らすマルコムが現れることを祈りながら、グラスをそっと差し出した。 

 [ No.111 ]


7月7日、晴れ (RE:おじゃまっしま〜すっ)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/09/27(Mon) 23:30
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


「どーぞ」
 ボーイが、ふかふかしたバスタオルを持ってきた。差し出すと見せて、そのまま少女の頭にかぶせた。ごしごしとこする。
「あーあー、こんなに冷たくなって」
 心配しているのか面白がっているのか分からない口調。
 さすがに、櫻庭が強く青年の名を呼ぶ。カウンターを離れ、ホットミルクのカップを女性の席まで運んでくる。丁寧にお詫びすると、カクテル作りに戻った。

 テキーラ、ブルー・キュラソー、ライム・ジュース、ミドリ。シェイクして、クラッシュド・アイスを詰めたゴブレットに注ぐ。星型にカットしたレモン・ピールを飾り、ストローを付ける。

「お待たせしました」
 
 澄みきった青に、黄色の星々が映える。若々しいライムの香りがたちこめる。
 先ほどのボーイが、厄災前の日本のミュージシャン「DREAMS COME TRUE」の曲を奏ではじめた。

 [ No.112 ]


………(ふるふる)。

Handle : 沙羅   Date : 99/09/28(Tue) 18:44
  Aj/Jender : 17歳/女性
Post : 噺家


目の前に立ち上る湯気とやさしい香り………。
彼女はカップにそっと口をつけた。熱くもなくぬるくもないちょうど良い温度………。
彼女はゆっくりとそれを飲み、そして、溜め息をついた。
「どうしてなんだろうね………」
溜め息とともにこぼれる言葉。
彼は相方なだけなのに…それだけなはず…だったのに………。しかし、彼はそれには気
づいていない。いや、気づかせてはいけないのだ。
ピアノの音が流れ、彼女は何も言わずに目の前に来たカクテルをほぼ一気に飲み干した。
そして、むせる………。
「………ごめんなさい………胸の底から温まるような物…いただけます……? 今度は…
ちゃんと味わって…飲む…から………」
彼女は目に涙を溜めてむせながら、マスターに言った。
その涙はむせた為なのか、それとも………。

 [ No.113 ]


忘れようとしたもの、失ったもの。

Handle : メレディー   Date : 99/09/28(Tue) 19:47
Style : ニューロ◎、ニューロ、ハイランダー●   Aj/Jender : UNKNOWN/Female
Post : フリー


目の前に差し出された白いタオルに顔を埋める。
温かなカップに誘われるように左手が伸びる。
しばらくの間触れる事の無かった温かさが手の平から彼女に埋め込まれたプラグ、神経回路、全てにゆっくりと広がって行く。

やがて部屋をピアの音が満たして行く。
その音に身を投じる様にメレディーはタオルに顔を埋めた。
そしてピアノの音にかき消される程度に静かに・・・咽び泣いた。

もう、あの男の事は忘れなければならないのか。
名前も思い浮かばない、その想像だけに存在する影に・・・メレディーは心の中で呟いた。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.114 ]


魔法をかけたのは…

Handle : ”katze Biancco”フィアナ=トレイシィ   Date : 99/10/01(Fri) 13:44
Style : マネキン◎●   Aj/Jender : 20代後半?/F
Post : フリー


「じゃあ、乾杯。」
フィオナはバーテンダーを見つめ、そっとグラスを向けた。

「悪い魔法使いに魔法をかけられ、美しい少女は愛する者と離ればなれ…
 その体は人形に、その心は雨となり…。」

呟きつつ、グラスを傾ける。

「…しかし少女は悠久の時の果てに真実の愛を手に入れる…。
 うらやましい話ね。」

グラスを見つめるフィオナの目の奥には一抹の寂しさが漂っていた。

 [ No.115 ]


まいったな・・・

Handle : 石目 夷吟   Date : 99/10/03(Sun) 00:40
Style : 益世狗◎、狩魔●、黒幕   Aj/Jender : 42歳/男性
Post : イワサキN◎VA支社


 新たに入ってくる客は濡れていた。外はひどい雨らしい。
 もう少し、時間を潰していかねばなるまい。
「ハイスクール・ハイ頼めるかな?」
 災厄前の冗談が今じゃ現実だ。
 こんな時代に私は教師たり得るのか?
 自問自答しつつ石目はマスターに声をかけた。
 

http://member.nifty.ne.jp/Macallan/ [ No.116 ]


スリ (RE:………(ふるふる)。)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/10/04(Mon) 23:04
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


「・・・・・・・かしこまりました」

 卵白と卵黄を別々に泡立てる。ブレンダーに卵、ブランデーをしみ込ませた角砂糖をいれ、ブレンド。温めておいたタンブラーに注ぎ、熱い牛乳で満たす。

「お待たせしました。これは『スリ』と申します」
 老バーテンダーは、なだめるように語りかけた。耳を傾けていなければ、音楽かと思うような穏やかな調子と深い声。

「スリを職業とする男を想い、更正させようとする女がおりました。男は、女の想いを無視します。自分の技術を、より磨くために。
 男は仕事の為に2年の逃亡生活を送るのですが、故郷に戻ったところで、捕らえられます。女は、想いを伝えるため、彼のいる牢獄に現れました。鉄格子越しに、男は語ります。
 『僕達は、なんと回り道をしたことか』と。
 このカクテルは、さまようミシェルを受け入れる、ジャンヌの聖母のような深い愛です。ゆっくりと、お召し上がりください」

 [ No.117 ]


ハイスクール・ハイ (RE:まいったな・・・)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/10/04(Mon) 23:06
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 グレナデン・シロップとピーチ・リキュール、オレンジ・ジュースをシェイク。氷を入れたコリンズ・グラスに注ぐ。ホワイト・キュラソーとグレープフルーツ・ジュースをシェイクし、静かに注ぎ足す。マドラーを付け、混ぜずに出す。

「お待たせしました。かき混ぜてお召し上がりください」

 グラスの底に沈む炎を、無気力で白けた液体が押さえこんでいる。マドラーで混ぜると、炎が上まで登り、全体を暖かい色に変えていく。
 変わったのはバリー高校の生徒か、それともクラークか?

 [ No.118 ]


ハイスクール・ハイを飲み(情熱の再燃)

Handle : 石目 夷吟   Date : 99/10/10(Sun) 07:02
Style : 益世狗◎、狩魔●、黒幕   Aj/Jender : 42歳/男性
Post : イワサキN◎VA支社


 マドラーで情熱をかきたてる・・・しらけすらが沸き上がる情熱に味を与える。
 石目は自分が癒されていくのを感じた。
 今まで自分が傷ついていたことにすら気付いていなかったというのに。
「ありがとう・・・」
 心の底から自然と言葉が出る・・・本当に心の奥底から。

 そして、あわてて周囲をうかがう。そして安堵。
(社の人間には見られたくない姿だ・・・いなくて良かった。)
 静かに味わいつつ、石目は他の客・・・悩める人々をゆっくり観察し始めた。
 (そう・・・すべては流転し変化するものだったけな)

http://member.nifty.ne.jp/Macallan/ [ No.119 ]


では、またそのうちに・・・

Handle : 石目 夷吟   Date : 99/10/27(Wed) 07:36
Style : 益世狗◎、狩魔●、黒幕   Aj/Jender : 42歳/男性
Post : イワサキN◎VA支社


「お邪魔いたしました。ここはいつも心落ち着く場所だ・・・。
 では、またそのうちに・・・。」
 コートを羽織り、店の外に出る。
 雨はあがっていたが、冷気が身をさす・・・。
(明日も仕事か・・・溜まっているアレは誰かに押し付けてしまおう・・・)
 吐く息が白かった。

http://member.nifty.ne.jp/Macallan/ [ No.120 ]


人形に戻る時刻

Handle : ”Katze Biancco”フィオナ=トレイシィ   Date : 99/11/08(Mon) 18:47
Style : マネキン=マネキン◎カリスマ●   Aj/Jender : 20代後半?/F
Post : フリーランス


フィオナはふと時計に目をやる。
「あら、もうこんな時間なのね…。」

「そろそろ、帰るわ。ごちそうさま。」
代金より少し多めにキャッシュを置き、フィオナは席を立つ。

「わたしが、人間に戻れる日は、来るのかしらね…。」
バーテンにそう言い残し、フィオナは店を後にする。
人形めいた優雅な動きで。

 [ No.121 ]


グレゴリー坊や (ありふれた事件)

Handle : リッツォ・カッシーロ   Date : 99/11/29(Mon) 01:34
Style : カゼ◎ レッガー=レッガー●   Aj/Jender : 25歳/男性
Post : shoot the MOVIE ボーイ兼ピアニスト


 木曜日。外では、どしゃどしゃと音をたてて、雨が振り続いている。
 いつもは、午前5時の閉店時間を過ぎても、客のいる限り暖かに灯っている扉の明かりが、時間通りに静かに消えた。最後の客を10分前に見送って、店には老バーテンダーとボーイの二人。

「今日は早かったすね」
 ボーイが、蝶ネクタイを緩めながら、陽気な声をあげた。
 櫻庭は、微苦笑を浮かべながら、ジン、トニック・ウォーター、ボーイの順に目を走らせた。リッツォは片眉をぴょこんと挙げて、賛成の意を示す。笑みを口に刻んだまま、バーテンダーは肩をすくめる。「感心できませんね」というポーズ。

 青年が、ピアノに向かった。『ゴッド・ファーザー 愛のテーマ』。何かを吐き出すように、叩き付けるように、弾く。
 マスターの手の中で、いつものカクテルが生まれる。薄いジン・トニックに、紐で角砂糖を結びつけたオリーブの実を落しこむ。カクテル名「グレゴリー坊や」。角砂糖が重し、オリーブが坊やのおぞましいカクテル。角砂糖が溶けるにしたがって、坊やが水面に浮いてくる。映画『ありふれた事件』で、殺人鬼ベンが披露したレシピだ。

 ・・・・・・叔父貴、あんたも必ずこうなる。
 ピアノに置かれたグラスに、リッツォの顔が映り込む。オリーブにヒタと据えられた歓喜を夢見る漆黒の瞳。

 カン、と、小さな音が響いた。夢から覚めた目が、傍らの老人を捉えた。
 櫻庭が、自分のグラスに軽く当てたグラスを、さも不味そうにすすっている。これまで、決して飲もうとはしなかった、「グレゴリー坊や」。

「・・・・・・。お前が何をするつもりかは知らないが。10年も思い続けていることなら、仕方がない。私も付き合おう。・・・・・・。お前は、私の、養い子だ」

 青年の、ぽかんと開いた口が、笑みの形に変わる。浮かびきっていない坊やを長い指で引き出して、ポリポリかじる。その行儀の悪さに、思わず眉をひそめた養父のしかつめらしい顔に、笑いがこみ上げる。
 ひとしきり笑い、笑い涙をふきながら、リッツォは、もう一杯、別のものを頼もうかどうか、考えた。生涯初めての、坊やの後のもう一杯。

 外では、どしゃどしゃと音をたてて、雨が振り続いている。しかし、厚い雲の向こうで、そろそろ朝日が昇る時間だ。

 [ No.122 ]


[ Non Title ]

Handle : “水刃”水谷 東児   Date : 99/12/10(Fri) 15:46
Style : バサラ● カタナ イヌ◎   Aj/Jender : 26歳/Male
Post : BH ヨコハマ支部


 入り口で入るべきかどうか迷っている一人の男。
少し考えた後、小さく肩をすくめてつぶやく。
「ま、N◎VAとは違うしな。」
胸の「黄金の狗」を指先で弾いて、彼はドアをくぐった。

 カウンターに座り、店の落ち着いた雰囲気を味わっていると様々なことが思い出される。
BH本部爆破に始まる革命、日本軍進駐に伴う組織の改変、その前後の数々の事件、そして・・・。
「昔のことを言ってもしょうがないか」
東児は思わず苦笑した。

ふと気がつくと、眼前にバーテンが立っている。
(そういや、注文がまだだったか)
メニューを一瞥し、バーテンダーに注文を告げる。
「狼・男たちの挽歌最終章を頼む」

 [ No.124 ]


狼・男たちの挽歌最終章

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/12/18(Sat) 23:07
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 若いイヌに応えながら、櫻庭は目だけで2つのことを確認した。1つは、リッツォが、入り口で彼から脱がせたジャケットを、他の客にバッジが分からないように掛けたこと。もう1つは、大切なお客さまたちが、「黄金の狗」に気付かなかったこと。

 その間にも、手はよどみなく動いた。
 砂糖でコーラルスタイルにしたオールド・ファッションド・グラスに氷を入れる。ウォッカ、貴妃ライチ・リキュール、カシス・リキュール、クランベリー・ジュース、フレッシュ・レモン・ジュースをシェイク。グラスに注ぐ。

「お待たせしました」

 砕けたガラスのような砂糖の帯も、カクテルの真紅に染まっている。口当たりの良さと爽快さが、やがてしたたかな酔いへと変わっていく。

 [ No.125 ]


メトロポリス

Handle : 千早 秋次   Date : 99/12/21(Tue) 16:34
Style : クグツ◎、マネキン●、カリスマ   Aj/Jender : 22/男
Post : 千早重工・総務部(お客様相談係)


出張帰り。
・・・今日は直帰してもイイカンジ。
お客様あてに持ってきた重いお菓子もおいてこれたし、クレームもなんとか治まったし。
N◎VAとは違う空気に、なんだかウキウキしてくる。

「せっかくLU$Tまで来たのに・・。このまま帰るのもアレだなぁ。」

目を上げると、『shoot the MOVIE』の看板
映画好きの血が騒ぐ。
惹かれるようにドアをくぐり、メニューを覗き込む。
「うはぁ。。」
思わず感嘆の声。
静かに流れるピアノの音にしばし耳を傾けてから、秋次はバーテンダーにイタズラっぽい笑顔を向けた。

「ココにないけど、『メトロポリス』ってできますか?」

http://www07.u-page.so-net.ne.jp/xb3/megpet/nova/n_cha/aki.html [ No.126 ]


メトロポリス

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 99/12/23(Thu) 23:14
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 タンカーレスペシャルドライジン、ベネディクティンDOM、グランマニエルージュ、ライムジュース・コーディアル。シェークして、ワイン・グラスに注ぐ。8枚の半円形にスライスされカクテルピンで留められた林檎と、らせん状に細く剥いたレモン・ピール、ライム・ピールを飾る。

 カクテルの華麗な黄金の輝きが、扇状に広げられた林檎を照らしている。絡み合った2枚のピールが躍動している。

 厄災前、1926年。サイレント期と呼ばれた時代。アイデア、スケール、特殊撮影の全てで時代を超え、SF映画の金字塔となった作品。
 丁寧に吟味されたレシピ。豊かな香りを引き出すよう計算されたワイン・グラス。華を添えるデコレーション。
 
「お待たせしました」

 どこまで、映画に迫れたか? 櫻庭は、祈るような気持ちで青年の評価、表情の変化を待った。

 その表情は、会計の際に、もう一度変わるだろう。「メトロポリス」は、採算を度外視したカクテルだ。倒産するほどの巨額を投じ、この傑作を残したウーファ社に敬意を表して。

 [ No.127 ]


夢と現実

Handle : ”玩具姫”富野 美弥子   Date : 100/01/25(Tue) 16:08
Style : タタラ=タタラ◎、ミストレス●   Aj/Jender : 21/F
Post : 玩具会社”ミヤトミ”


 扉が開くと、白衣の女性が入ってきた。
どことなく、疲れているようだ。

その女性はカウンターに着くと、一言、こう言った。
「”TOYS”お願いできますか?」 

 [ No.128 ]


TOYS (Re:夢と現実)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 100/01/31(Mon) 23:13
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 ボルスブルー、ジン、ジンジャエール。軽くステアし、寄り添った2枚のライム・ピールで飾る。

「お待たせしました」

 内から光るパワフルな青の中で、豊かに泡があがる。お子様向けの外見に反し、ジン独特の苦味が存在を主張する。
 ボルスブルーとジンジャエールの甘味がなくては、ドライ・ジンは少しハード過ぎるだろう。しかし、ジンなしでは、甘すぎて呑めない。甘さを良しとする子供時代の味覚を失った大人には。

 [ No.129 ]


甘い夢、苦い現実

Handle : ”玩具姫”富野 美弥子   Date : 100/02/05(Sat) 11:54
Style : タタラ=タタラ◎、ミストレス●   Aj/Jender : 21/F
Post : 玩具会社”ミヤトミ”


「…ありがとうございます…。」出されたカクテルを悲しげな目で見つめ、一口。

グラスを置いた美弥子の目から大粒の涙がこぼれる。
「今度こそ…今度こそって…思ってたのに…。」

『悪ぃな…。10戦は…出来そうにねぇや…。』

『美弥子ー!お前また落ち込んでんじゃねえだろうなぁ!?俺がこのくらいでくたばるわけねえだろ!泣いてる暇あったら魔蠍の方修理してやれ!俺はもう乗らねえけどな!』
あの日の光景が美弥子の頭の中によみがえる。

「…もう、やめます。もう、甲殻は、忘れます。…忘れたくないけど…。」グラスに向かって美弥子は小さな声でつぶやく。

 [ No.130 ]


リベンジ

Handle : メレディー・ネスティス   Date : 2000/03/01(Wed) 16:52
Style : ニューロ◎、ニューロ、ハイランダー●   Aj/Jender : 22 / Female
Post : フリー(LIMNET雇用契約凍結)


ふと、メレディーは視線を上げる。
そうだ、そう言えばあんな映画もあったわ。あんな風に
生きて行くのもいいわよね。と一人心の中で呟く。
「ねぇ、マスター」
メレディーは目の前のグラスをゆっくりと飲み干しなが
ら、その両目をカウンターの中でグラスを磨く男の視線
に重ねる。
「リベンジって言う映画の事、ご存知?」

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.131 ]


リベンジ

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/03/05(Sun) 23:04
Style : ストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「リベンジ、でございますか。・・・・・・そう、あの美しい海と空は、一見の価値がございました」
 静かに微笑んで、老マスターは言葉を継いだ。

「残念ながら、あまりお勧めはできませんね。あなた様に、「リベンジ」は、お似合いとは言いがたいですから」
 目前の切ないほど若々しい女性からそらした眼で、磨き終わったグラスを灯りに透かす。それは、一点の曇りなく輝いていた。

 [ No.132 ]


ゆらめき

Handle : 【フラットライン】 メレディー・ネスティス   Date : 2000/03/06(Mon) 12:13
Style : ニューロ=ニューロ◎、ハイランダー●   Aj/Jender : 22/Female
Post : フリー(LIMNET雇用契約凍結)


「残念ながら、あまりお勧めはできませんね。あなた様に、「リベンジ」は、お似合いとは言いがたいですから」
 そんな老マスターの言葉に、カウンターで静かにグラスを見つめながらメレディーは微笑んだ。
「嬉しいな、そんな風に言ってもらえるなんて。私、女っけ無いから」
 首の付け根のプラグのあたりに手をやりながら、気恥ずかしさを紛らわせようとする。
「でもね、マスター。私、あの映画好きなのよ」空いたグラスを見つめる。「あの映画の中で、主人公が親友にさらわれたヒロインを捜し求めて、血まみれの復讐を続けるじゃない? そして、最後の最後でクロマクの親友と対峙するじゃない。あの最後のやり取りは男にしか出来ないわね。女の私じゃ出来ないわ」
 グラスに残った水滴をメレディーは指でなぞる。
「映画の最後で、教会のベットに眠る自分のところに、血まみれの最愛の相手がたどり着いてくれたにも関らず、言葉も満足に出せなくて、痛い程に自分の死期を悟っていたとしたら、私はあのスクリーンの彼女の様に、彼に言葉を告げる事が出来るかしら」
 老マスターが、視線をグラスから手元の氷の固まりを見つめた。
「言葉って不思議よね」
「・・・」
「私、プラグを初めて埋め込んだ時にはもう人が言葉を喋る事なんて無いのかもって考えてた」メレディーはグラスを握る手に力を込めた。「でもそれは大きな間違えね」
 言葉も行動も、何もかもが後手に回り、足りるべき物が足りなかった。
 最後にあの男が自分の前から去る時、微笑んだのは何故なのだろう。自分が無くした記憶の断片にそそがれる血の香りとその暖かさ。
 一体自分は何を無くしたと言うのか。
「今日飲んだこのグラスは、そんな自分への戦いの終わり。 もう二度とこんな思いはしない様にしたいわ」
 メレディーは、思い付いたようにグラスを握る手を解き、カウンターに軽く肘を突いた。
 そうだこんな時は体でも動かして、すっきりしよう。
 彼女は電子の記憶の海から、鮮烈な舞のイメージをすくいあげる。
「セントオブウーマン知っていますか? 災厄前のアル・パチーノって言う目の見えない男性がダンスを踊るシーンがあるんです」メレディーはスツールを離れて静かにメロディーを響かせるピアノに歩み寄る。
「あのスクリーンの様に踊るパートナーを見つけるのは女の楽しみよね」
 小さく呟きながらピアノのメロディーに合わせて静かに、ゆっくりと身体をゆらす。
 それは踊っているかの様にも見えるが、蝋燭か何かの炎がゆらめく様にも見える。
 メレディーはピアノに手をつき、心地よい音に目を閉じて耳を澄ませる。
 こんなにゆっくりできた時間はいつ以来なのだろう。まるで初めて遊びを覚えたような気分だ。

「『セントオブウーマン夢の香り』 もう一杯頂けますか?」

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.133 ]


たまの休日には。

Handle : 妙堂院由耶   Date : 2000/03/07(Tue) 04:16
Style : ミストレス◎フェイト●カリスマ   Aj/Jender : 37歳/女性
Post : クイーンズハーツ調査室室長


仕事を抜け出して。ちょっと足を伸ばしてみた。そうして気がついたらいつのまにかここに足を踏み入れていた…。
店内を見まわし…。カウンターに腰掛ける。
「………よぉ。」
そう一言。さて、向こうは自分のことを覚えていてくれるのか?そんな期待と不安を胸に。
しかし、おくびにもそんな表情は出さず。
「“ジャンヌ・ダルク”…。貰えるかい?」
…純粋であるがゆえに。“神”を一途に信じ。そうして、頑なだった乙女。
誰かとそれを重ね合わせて、彼女は苦笑。
煙草に火をつけ、紫煙をくゆらせる…。
苦笑が、皮肉げないつもの微笑みに変わるまで時間はかからなかった。

 [ No.134 ]


セントオブウーマン 夢の香り (RE:ゆらめき)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/03/11(Sat) 07:36
Style : ストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 彼女の夢を壊さぬよう、静寂を保ってカクテルを作り出す。
 ストレガ、アマレット・フローリオ。ホット・ストレート・ティを注ぎ足し、シナモン・スティックを添える。

「お待たせしました」
 
 熱い紅茶から溢れる、艶やかなアーモンド、まろやかなバニラ、清純な柑橘系の香りが辺りを新たな夢にいざなう。シナモンが、タンゴに合わせてくるりと回った。

「・・・・・・。あなた様なら、きっと、見つけられますよ。足が絡まっても、共に踊り続ける相手を」

 [ No.135 ]


ジャンヌ・ダルク (Re:たまの休日には。)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/03/13(Mon) 23:36
Style : ストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」
 初対面のときより深い笑顔で応える。端正な目元が一瞬崩れ、柔らかいしわが刻まれる。

 アルマニャック、ドライ・ベルモット、チェリー・マニエ、クランベリー・ジュース。シェイクしてカクテル・グラスに注ぎ、十字架型のライム・ピールを飾る。

「お待たせしました」

 向こう側が透けて見えないほどの深い暗い赤の上に、翠の十字架が輝いている。
 家族を殺され、復讐心がもたらした幻想にとりつかれ。神と自分の分化すらできていない、大人になりきれない少女。ジャンヌが自己を確立する為に流した血は、あまりにも多かった。

 [ No.136 ]


新しい玩具

Handle : ”玩具姫”富野 美弥子   Date : 2000/03/14(Tue) 15:06
Style : タタラ=タタラ◎ミストレス●   Aj/Jender : 21/F


しばらくの間うつむいていた美弥子。
「…踏み出さなきゃ…。」何かを決意した目で彼女は顔を上げる。

「『トイ・ストーリー』を。」美弥子はバーテンに向かって言う。

 [ No.137 ]


トイ・ストーリー (Re:新しい玩具)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/03/21(Tue) 23:07
Style : ストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 チャールストン・ブルー、パルフェ・ラムール、ライチ・ジュース。シェイクしてグラスに注ぎ、シャンパンで満たす。カラー・トッピング・チョコをふたつまみ。

「お待たせしました」

 薄い青の世界の中で、さまざまな色の甘いトッピングが互いに触れ合っては離れていく。おもちゃ箱をひっくり返したような、乱雑でいて幻想的な世界の縮図がそこにあった。

 [ No.138 ]


魔女、ストレガ

Handle : 【フラットライン】 メレディー・ネスティス   Date : 2000/03/23(Thu) 13:00
Style : ニューロ=ニューロ◎、ハイランダー●   Aj/Jender : 22/Female
Post : フリー(LIMNET雇用契約凍結)


「お待たせしました」
 温かなホット・ストレート・ティに垣間見えるストレガとアマレット・フローリオから感じる何とも言えない感覚。それをシナモンの舌触りと香りがはっきりとした姿を見せてくる。
 メレディーは思わず微笑んだ。
 何時もこちらが問い掛ける以上の答えをこの店はかえしてくれるのだ。時を楽しむ上でこれ以上の幸福があるのだろうか? それは大人になった彼女が久しく子供の頃の感情を思い出す瞬間だった。
 ここは秘密の店なのだ。私にとって大切な帰る場所の一つなのだ・・・
 
 熱い紅茶から溢れる艶やかなアーモンド。そして、まろやかなバニラ。辺りの空間を満たすような柔らかな香りに、清純な柑橘系の香りも加わりメレディーを新たな夢にいざなう。
 彼女は指でシナモン・スティックに触れ、グラスの中で踊るタンゴに合わせて自らのうちに広げる電脳の海へと身をよせる。そして、目の前に広がる蒼いグリッドで、くるくると身を躍らせた。
「・・・・・・。あなた様なら、きっと、見つけられますよ。足が絡まっても、共に踊り続ける相手を」
老マスターの暖かな声がメレディーの踊るグリッドにさざなみのように広がり、彼女のアイコンを微かに震わせる。

 幾重も時間が経たぬうちに、メレディーは自らのアイコンを躍動させ、現実には数秒ともたっていない瞬間を・・・電脳の海を疾駆する。
 ストレガ。 災厄前のイタリアと言う国で古い時代に『魔女』と呼ばれた言葉。その魔女の力を得るようにメレディーは、老マスターの注いだ夢の頂きへと馳せる。
 目の前の黒い電脳空間に幾重にも重なった蒼いグリッドを超越した速度でメレディーは駆け上がる。

 還える時が来た。自らの求めるそのグリッドの先へ。
 後々に世界に知れ渡る北米全土を震わせたあの事件に、なぜ彼女が現れたのか。今この店で過ごしたこの時間から始まった事は__________________________誰も知らない。

http://www.din.or.jp/~niino/ [ No.139 ]


私は誰だ

Handle : “Kaz-Masa”   Date : 2000/03/24(Fri) 08:55
Style : カゲムシャ◎●、エグゼク=エグゼク   Aj/Jender : 35/♂
Post : 不明


色褪せたコートに身を包み、彼は静かに、まるでかすかな音を立てるのさ恐れるかのように、ゆっくりとした動きで店に入ってきた。
無造作に束ねられた長い髪を除けば、彼には特に人の目を引くような特徴は持ち合わせていなかった。
正確に言えば、彼は周囲の空気に溶けこみ、誰からも注意を向けられることなく存在していた。

彼はいつの間にかカウンターに座っていた。そしてメニューを眺めながら、満足げに微笑を浮かべた。
まるで、逡巡することを楽しんでいるように。

しばらく考えた末、彼は結局、最初から頼もうと思っていたものを注文することにした。
視線をを上げると、カウンターの向こうのバーテンダーと目が合う。
「では、『影武者』をお願いします」
彼はカクテルが出されるまで、何もしないことにした。それが彼にとっての、最高の贅沢だから。

 [ No.140 ]


影武者 (Re:私は誰だ)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/03/27(Mon) 20:39
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 ドライ・ジン、ドライ・ベルモット。パスティスをティ・スプーン一杯。ステアしてカクテル・グラスに注ぐ。ピンに刺したオリ−ブを沈める。

「お待たせしました」

 男性の前のグラスは、マティーニに見えた。しかし、《se pastiser(仏・似せて作る)》を語源にもつパスティスを潜ませ、カクテルの王は強いアニスの香りを放っていた。

 [ No.141 ]


To Infinity and Beyond! 

Handle : ”玩具姫”富野 美弥子   Date : 2000/03/28(Tue) 16:10
Style : タタラ=タタラ◎ミストレス●   Aj/Jender : 21/F
Post : (有)ミヤトミ


「きれいですね…。」薄い青の中ではじける色彩。
グラスを傾け、一口。懐かしさをそそる甘さ。

「彼らみたいなすてきなおもちゃを作れたらどんなにすばらしいだろう…。」小さく呟く。

「わたしにも、できますよね、先輩。」さらに小さく。

そしてまた一口。

 [ No.142 ]


幕が開く前に

Handle : “Kaz-Masa”   Date : 2000/03/29(Wed) 11:59
Style : カゲムシャ◎●、エグゼク=エグゼク   Aj/Jender : 35/♂
Post : 不明


「どうも」
彼は出されたグラスを手に取りしばし眺め、それから口をつけた。
「王に似て、王に非ざる者…か」
自分は、自分であり続けることが出来るか。それは彼のような特殊な生き方をする者にとって、深刻な問題である。
似せて作られたものは、所詮偽者、まがい物と見られる。だからカゲムシャ達は、出来る限り本物に近づこうとする。自分自身を殺して、息苦しい仮面を被る。

(姉さん。
私がこんな所で、限られた自由を楽しんでいるのを知ったら――いやもう知っているかもしれないが――貴方は鼻で笑うだろう。
『下らない』とね。
でも、私も一人の人間であり、自我を持つ存在であるのはどうしようも無いことなんだよ。
多分、貴方にはそんな心情は理解できないだろう。つまり貴方は私になれないということさ。
無論、しばらくは貴方の影でいようと思うけどね)

彼はふと時計を見やる。刻限が近い。
カウンターにキャッシュを置き、彼は静かに席を立った。
そして来た時同様、空気に溶け込むようにその場を去って行った。

 [ No.143 ]


奇妙な観光客

Handle : ”壊し屋”望月 兵衛   Date : 2000/04/01(Sat) 11:37
Style : レッガー=レッガー◎●、チャクラ   Aj/Jender : 男性
Post : 秋川会系一色組


 「・・・映画の名前を言えばいいんだな?・・・じゃあ、”ワイルドバンチ”ってのをつくってくれや」
 そう言いながらスツールに腰を下ろしたのは・・・どう贔屓目に見ても真っ当な商売を営んでいるようには見えない男だった。
 着ている背広は安物ではあるが趣味は悪くない。五分刈り頭に角張った顔立ちも、好意的に見れば(難しいが)実直そうな顔、と表現できないこともない。・・・左頬から首筋にかけて走る、大きな傷さえなければ。
 しかも徹底したことに、その首まわりは別の、まだ乾き切らない傷によってぐるりと取り巻かれているのだ。・・・まるで、切り落とされた首をもう一度乗せたように。 
 まともな店なら門前払いどころか、警察を呼ばれそうな面相である。この店がどうするかは別の話だが。
 「・・・この街には初めてで?」 黙々とカクテルを造るバーテンダーに代わり、若いボーイが如才なく尋ねる。
 「・・・当たりだ。今日来たばかりだよ」男は別段嫌な顔もせず答える。一応、社交性はあるらしい。
 「ビジネスで?」
 「・・・いや」男は差し出されたカクテルを口に運びながらにやりと笑った。「ただの観光さ」

 [ No.144 ]


ワイルドバンチ (Re:奇妙な観光客)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/04/03(Mon) 23:06
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 オールド・パー、ドランブイ、イエガーマイスター。無骨なオールド・ファッションド・グラスに注ぎ、大ぶりの氷を入れる。軽くステア。

「お待たせしました」

 頑迷な甘味と腹を殴りつけてくる苦味。陽の落ちた直後のような色のカクテルは、コクと癖が強く、飲むものをてこずらせる。
 自分達が時代に取り残され、滅んでいくことを知りながら、そうした生き方しかできない、最後の西部の男たち。グラスの中に、「死の舞踏」へ向かう「死への行進」をする彼らの姿があった。

 [ No.145 ]


思い出の・・・

Handle : ヴァイオレンス・ヴァイオレット   Date : 2000/04/05(Wed) 02:22
Style : カゼ=カゼ=カゼ◎●   Aj/Jender : 44/女
Post : 元GAGA


ここにくると落ち着く。わざわざN◎VAからヴィークルをとばした甲斐があった。
思い出の場所。唯一、あの人のいない、一人での思い出。
あの人の浮気性は今に始まったことじゃない。
私も、ただ黙って耐えてきたわけじゃない。
ケンカもした。手が出たこともある。
それでも、どうしても泣きたいときはここに来た。
この店なら、私に勇気をくれるから・・・

永遠の想いなんてありえない・・・
愛をささやく夫の顔を思い浮かべる。
他の女にも同じ事を言うのだろうか?
それでも、信じたい。あの言葉が偽りでないことを。
永遠の愛があることを・・・
「マスター。アンネと王様を」

 [ No.146 ]


再び、夜の中へと

Handle : ”壊し屋”望月 兵衛   Date : 2000/04/06(Thu) 09:27
Style : レッガー=レッガー◎●、チャクラ   Aj/Jender : 男性
Post : 秋川会系一色組


 かなりコクと癖の強いはずの酒を男はぐいと飲み干す。目をつぶっているのは胃を焼く刺激に耐えているのか、それとも楽しんでいるのか。
 やがて男はゆっくりと目を開くと、微かに満足げな吐息を漏らした。
 「・・・いい、酒だ。不思議だな・・・この酒を飲んでいると、昔のN◎VAを思い出す」
 「けっこー、多いんですよね。ウチにくるお客さんで、昔のN◎VAは良かった、って言う人。お客さんも、そのクチですか?」
 例のボーイが半ばからかうように話しかける。バーテンダーのとがめるような視線など、もちろんどこ吹く風だ。
 「たわけ。”災厄”前の年寄りでもあるめえし」男は苦笑いしながら言う。ボーイのあまりに罪のない口調に怒るに怒れない、といったところか。「おれに言わせりゃ、昔も今もN◎VAはN◎VAだよ。たとえ、”光の軍勢”がやってきたって、な。ただ・・・」
 「ただ?」
 男は空のグラスをそっと目の前にかざす。「・・・こんな酒は、飲めなくなった」
 だが、男がそんな感傷的な様子を見せたのも一瞬のことだった。
 「・・・さて、そろそろおいとまするよ。観光とは言え、なかなか忙しくってな」
 「こんな夜中に観光を?」
 男はにやりと笑った。・・・先ほどまでの笑いとは違う、”耳まで裂けるような”笑み。「おうよ。風情があんだろ?」
 180を越す長身が猫のように音もなくスツールから滑り降りる。意外に長くしなやかな指が必要なだけのクレッド・クリスをカウンターに置く。”足のつかない”支払い方法。
 男の羽織る、薄汚れたフェイト・コートが夜風に揺れる。
 「じゃあな」
 挨拶は短く、そしてドアが閉まる音は意外に小さかった。

 [ No.147 ]


いざ、無限の未来へ!

Handle : ”玩具姫”富野 美弥子   Date : 2000/04/06(Thu) 11:54
Style : タタラ=タタラ◎ミストレス●   Aj/Jender : 21/F
Post : (有)ミヤトミ


静かにカクテルをかたむけていた美弥子。
そのカクテルも、もうあと一口。
くるりと手首を返し、残った甘い星を飲み干す。

「先輩も…行ったんだもんね。わたしも、負けてられない。」

「ごちそうさまでした!」少し多めに支払いを済ませ、白衣を脱いで肩にかけた美弥子は店の外に出る。

「もう一度…『To Infinity and Beyond!!』」
思い切り飛び跳ねる美弥子の頬を心地よい夜風が軽くなでていった。

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Toys/1745/ [ No.148 ]


預言者

Handle : “人形遣い”和知 真弓   Date : 2000/04/07(Fri) 12:34
Style : Mistress,Karisma◎,Exek●   Aj/Jender : 27/female
Post : 岩崎製薬LU$T支社 営業部広報課 課長


 流れるように、踊るように。
 漆黒の男物のスーツに身を包んだ女性は、短く切った髪を軽くかきあげると、店内をゆっくりと見渡した。
 店の雰囲気を吟味し、満足げな吐息を漏らす。
 すれ違う“人影”に、軽く、会釈し、カウンターの空席へと優雅に腰掛けた。
 覚えがある“人影”とすれ違った気がしたが、知らぬ顔をするのが、敬意を払うべき人物への彼女なりの、最大の礼と思えて。

「…よい、店だね。最近、暇が無くてヨコハマを出歩けなかったのだけど……」
 
 目に映った、見知った顔、見知らぬ顔。
 様々な影たちとの落ち着いた邂逅の場に思えて、女性は落ち着いた深く優しい雰囲気をもつ、マスターに視線を向けて、そう、呟く。
 どこか、懐古主義を思わせる店のメニューは、災厄前の映画の名のついた、洒落たカクテル。
 今のこの「個人的」な有意義な時間を過ごすのに、何がよいか、女性は想いをめぐらせた。今の気分には、何が良いか?

「……そうだね、『十戒』を貰えるかな?」
 預言者に率いられ、エジプトを脱する、選ばれた民。
 その神は、民を解放するが為に、幼子を殺すという見せしめを行い、預言者に力を授け、追いかけてきた軍隊を奇跡で預言者が割った海の中に没し、そして、偶像を崇拝した自らの民さえ、罰という名の制裁を降らせる。

 千早重工とのヨコハマの利権を巡り、熾烈な果てしない水面下の抗争を繰り広げる、男装の麗人は、自らの所業にも思えて、自嘲気味な笑みを漏らした。

 [ No.149 ]


アンナと王様 (Re:思い出の・・・)

Handle : 櫻庭 誠一郎   Date : 2000/04/11(Tue) 23:08
Style : ミストレス◎、タタラ=タタラ●   Aj/Jender : 62歳/男性
Post : shoot the MOVIE マスター&バーテンダー


「かしこまりました」

 タンブラーに氷を入れる。ピウダ・デ・ロメロ・アネホ(テキーラ)、レモンジュースを注ぐ。軽くステアし、シャルル・ヴァノー・パルフェ・タムールをバー・スプーンの背を伝わらせてグラスの底に沈める。マドラーを添えて出す。
  
「お待たせしました」

 グラスの中は、テキーラの赤みを帯びた黄から、紫へのグラデーション。
 櫻庭は、慇懃に一礼した。いつもの通り、独り言のような響きで語りかける。
「このカクテルに使われているテキーラは、ロメロ未亡人、と申します。夫の創業したテキーラのブランドを、彼の死後、永遠に残るものとしたご婦人です。この美しいヴァイオレットは、パルフェ・タムール。完全なる愛という意味でございます。
 ・・・・・・。かき混ぜて、未亡人に、完全な愛を与えてください。あなた様の御手で」

 老バーテンダーは語り終え、静かに下がった。後は、愁い顔の女性次第。2つの色が交じり合い、あの国王のような高潔な青が現れることを祈るだけ。

 [ No.150 ]


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