「あんた、いいヒントをくれたよ」
邑守に言う。
「俺は、椎原は死ぬ。そこの黄と相討ちになって、倒されたんだ」
「お、おい、はやまるなよ!」
「なに言ってるんだ。一度死んで、行方をくらませばいいって言ったのはあんただろう」
「馬鹿野郎! 生き返れるかどうか、わかんねえんだぞ!」
「いずれにしろ、死ぬには変わらないんだ。だったら、俺は生き残る方を選ぶさ」
海を、見るために。俺は死にたくない。いつも思っていた。いつか、かならず海を見ると。
「狂ったのか!」
そうさ、俺はどうかしている。そんなことわかっていた、歌舞伎町にやってきたあのころから、ずっと。
俺は、この瞬間のために、生きてきたんだ。
そして、死があるからこそ、俺は生きようとした。
だから俺は、また戻ってくるんだ。
俺は引き金を引いた。
意識が、飛んだ。
了
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