b2d 14

 俺は銃をかまえている黄よりも速く、引き金を引いた。
「大哥……」
 不意に手に現れた黒星にあっけにとられたまま、黄は額を撃ち抜かれ、背後の床に脳漿をまき散らした。
 
 
「やっちまった……」
 つぶやいたのは、邑守だった。
「あんた、どうするつもりだ。てめえの仲間をやっちまって」
「椎原さん……」
 葉子の声も、邑守の声も、俺の耳には届いていない。ただ黄の死体を見下ろし、俺は人形のようにただ突っ立っていた。
 黄を殺した。俺の運命はその瞬間に決まったようなものだった。黄の死が分かった時には、俺は歌舞伎町から消えることになる。そしてもう二度と、この地上には戻ってこれないだろう。
 脳裏にはりついたままの、邑守の言葉が、俺の中で繰り返される。
 いったん死ぬ。
 死ぬ……。
「お、おい! なにするんだ!」
「椎原さんっ」
 俺は、銃口を自分のこめかみに当てていた。

NEXT  BACK