「燕白天が、きみを捜している」
葉子の顔色がさっと変わった。やはり燕のことも知っているらしい。その時、葉子の背後に人影が立った。
「おい。おまえは燕の手下だな」
カウンターにいた狼男だった。俺を鋭い眼でにらみつける。
「邑守さん、大丈夫だから座っていて」
葉子がなだめると、邑守と呼ばれた狼男はこちらをにらみながらもカウンターへと戻っていった。
「いいのか。俺は、きみを連れてこいと燕から言われている。あの男が助ける前に、俺はきみを連れ出すことができる」
「椎原さんはそんなことしないわ」
「なぜそう思う」
「銃を抜いていないから」
「俺という人種を分かっていない。この姿はかりそめだ。俺自身はいつでも弾を撃つことができるんだ。俺は燕が怖い。死にたくないから、あの狼男を撃って、きみを連れていくこともできる」
邑守の腰がスツールから上がりかけた。葉子はそれを手で制した。
「燕白天は、あたしを道具にする気なんでしょう?」
「そうだな。きみを傀儡にして、半魔を使おうとしている。上海の動きを抑えるためにだ」
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