「大哥、老板が呼んでる。来れるか」
「食事中だ」
「いつものところで大哥を拾う。十分後ね」
一方的に電話は切れた。舌打ちする。老板の呼び出しは絶対だ。行かなきゃ殺される。二度と蘇れないように。俺は金をテーブルに置き、立ち上がった。
北京の吸血鬼を束ねる燕家の総領、燕白天は剃刀をイメージさせる。顔を見るたびにその切れ味は研ぎ澄まされているかのように思えた。まだ若い。風貌もそれなりに若いが、大陸の長老たちの中では最年少であるのだと黄から聞かされた。若く、しかも切れる。その才覚ひとつで、吸血鬼たちの世界でのし上がってきた英傑だけに、黄のような若い吸血鬼たちからはカリスマ視されていた。その燕白天が、俺の前に立っていた。
「仕事だ。その女を連れてきてくれ」
黄が、燕から渡された写真を俺に見せた。葉子だった。
「どういうことですか?」
「その女は人間だが、半魔と通じている。我々と人間とを見分けることができるようだ。つまりは、パイプを持っているということだ。私はそのパイプが欲しい」
「半魔を使うのですか」
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