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「おまえを使ってみて、有用だということがよく分かった。この女を捜してこい。だが気をつけろ、先刻、おまえたちが殺した高の分家がおまえたちを捜しているようだ。上海も動いている。もうすぐ歌舞伎町に巨大な波が襲いかかることになる」
「そう望んでいたのは、老板じゃないですか」
「そうだ。それが私の好機だから」
 燕白天の微笑に、俺の背に悪寒が走った。
 
 
 午前五時。俺たちは風林会館前の交差点にいた。カーラジオから、朝焼けに似合わない黎明が聞こえている。俺と黄はバックシートでぼんやりと信号が変わるのを眺めている。黄が黎明の歌に鼻歌を合わせながら冷やかすように言った。
「大哥、黎明にちょっと似てるね。女の子、泣かせる顔ね」
 俺は黄を無視した。黄は俺の見張り役だ。兄貴、などと呼んでくれてはいるが、しょせんは燕の腹心、何を考えているのか分からない。
「大哥は老板に助けられてるね」
 唐突に話題を変えてきた黄に、思わず顔を向けた。
「老板が欲しいの、大哥の腕と、人間とのコネね。それなかったら、大哥みたいなメチャクチャな人、殺されてるよ」

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